説明

レジスト剥離剤及びレジスト剥離性能評価方法

【課題】剥離性能に優れたレジスト剥離剤の提供及び剥離性能に優れたレジスト剥離剤を選別するためのレジスト剥離剤の評価方法を提供する。
【解決手段】炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸エチレンと炭酸プロピレンの混合物に、80容量%以下となる量のエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを添加したレジスト剥離剤、レジスト剥離剤を選別するための評価方法は、基板表面にネガ型レジストを塗布し、プリベーグ、露光を行ったレジスト被膜試料を作成する工程と、前記レジスト被膜試料とレジスト剥離剤を接触させてレジスト被膜の除去速度を計測する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト剥離剤及びレジスト剥離性能評価方法に関する。更に詳しくは、本発明は、半導体及び液晶等で用いられるシリコン基板及びガラス基板上の金属配線形成等の工程において、エッチング操作後に、不要になったレジストの剥離に用いられる剥離性能に優れたレジスト剥離剤及び剥離性能に優れたレジスト剥離剤を選別するためのレジスト剥離剤の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノボラック樹脂からなるレジストの剥離剤としては、例えばモノエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、N−メチルピロリドン等のアミン類や、これらのアミン類にジメチルスルホキシド、水等を添加した組成の複雑な剥離剤が多く用いられている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
これらのアミン系の剥離剤は、ノボラック樹脂と感光剤との架橋点を切断したり、感光剤を構成する樹脂と塩を形成してレジスト皮膜を可溶化することで、レジスト皮膜を基板から剥離する。しかし、アミン系の剥離剤は、各成分の蒸気圧がそれぞれ異なるため、成分の蒸発により剥離剤の組成が変動して剥離能力が低下するという問題がある。さらに、繰り返し使用することでレジスト剥離物の溶解量が増加し、その剥離能力は徐々に低下する。また、アミン系の剥離剤は、Cu等の金属配線に対する腐食性が大きいという問題もある。
【0004】
アミン系以外の剥離剤では、例えば、炭酸エチレンや炭酸プロピレンを使用し、剥離後のレジスト剥離物が溶解した液にオゾンガスを吹き込んでレジスト剥離物のみを分解し、剥離剤をリユースする方法が実用されている。(例えば、特許文献2参照。)
一方、炭酸エチレンや炭酸プロピレンは、エチレングリコールやプロピレングリコールとともにアミン系、アンモニアーアクリロニトリル系剥離剤に補助溶媒として使用される場合もある。(例えば、特許文献3、4参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2911792号明細書
【特許文献2】特許第3914842号明細書
【特許文献3】特表2004−502980号公報
【特許文献4】特開2006−258890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノボラック樹脂からなるレジストの剥離剤としては、アミン類を主成分とするアミン系の剥離剤が用いられているが、アミン系の剥離剤は、Cu等の金属配線を腐食する可能性があるため、表面に微細な金属配線層を有する基板のレジスト剥離剤としては不適当な場合がある。また、アミン系の剥離剤には組成の複雑な剥離剤が多く、成分の蒸発により剥離剤の組成が変動して、繰り返し使用しているうちに剥離能力が低下するという問題がある。
【0007】
ところで、上述したレジスト剥離剤はいずれもノボラック樹脂からなるレジストに対して、高い剥離性能を有するため、例えば、他の成分を添加してより高い剥離性能を有するレジスト剥離剤を研究開発しようとしても、対象となるレジスト膜は厚さが数μm程度であり、試験等で剥離剤にレジスト皮膜の試料を浸漬しても瞬時に溶解が起こってしまうため、その剥離性能を比較し、優劣を判定することが難しいという問題があった。
【0008】
このため、ガラス基板上に塗布したレジスト皮膜のさらにその上に不溶性のポリイミドテープを貼付し、上面からのレジスト溶解を防いだレジスト皮膜試料を作製し、それを評価対象のレジスト剥離剤に浸漬し、テープ側面からレジスト剥離剤が浸入した距離を剥離性能と関連する指標としてレジスト剥離剤の優劣を判定することが行われていた。
【0009】
しかし、この方法では、レジスト剥離剤の浸入距離が、レジスト皮膜とその下のガラス基板との間の密着性やレジスト皮膜とその上に貼付されたポリイミドテープとの密着性の影響を受けるため、浸入距離の大きいものが実際のレジスト皮膜に対してどの程度の剥離性能を有するのか定量的な比較ができないという問題があった。
【0010】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、半導体及び液晶等で用いられるシリコン基板及びガラス基板上の金属配線形成等の工程において、エッチング操作後に、不要になったレジストの剥離に用いられる剥離性能に優れたレジスト剥離剤を選別するためのレジスト剥離剤の評価方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前記評価方法を用い、レジスト剥離性能に優れ、かつ、Cu、Al等の金属配線に対する腐食性のない、レジスト剥離剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる従来の評価方法を改善すべく研究を進めたところ、シリコン基板の表面に、ヘキサメチルジシラザンを塗布後、化学増幅ネガ型レジストを塗布し、プリベーク、露光、ポストベーク処理を行ったレジスト皮膜試料を用いることで得られたレジスト皮膜の剥離までの計測時間が各レジスト剥離剤を比較するのに十分可能な程度にまで遅くなり、その剥離性能を比較し、優劣を判定する評価が可能となるとの知見を得た。
【0012】
本発明者らは、上述の方法を用いて、炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類にエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを添加した剥離剤が炭酸エステル類単一の剥離剤に比べ、剥離性能が向上することを見出した。エチレングリコールやプロピレングリコールは炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類に対して剥離促進作用を有するのである。
【0013】
本発明のレジスト剥離剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸エチレンと炭酸プロピレンの混合物に、80容量%以下となる量のエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを添加したことを特徴とする。
本発明のレジスト剥離剤は、40℃における粘度が15cP以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のレジスト剥離性能評価方法は、基板表面にネガ型レジストを塗布し、プリベーグ、露光を行ったレジスト被膜試料を作成する工程と、前記レジスト被膜試料とレジスト剥離剤を接触させてレジスト被膜の除去速度を計測する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジスト剥離剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類単一のレジスト剥離剤よりも剥離性能に優れているので、剥離時間を短縮することが可能であり、従来よりも低い温度でのレジスト剥離が可能である。また、露光量が多く架橋(硬化)が進み、剥離しにくい状態となったレジストに対しても実用的なレジスト除去速度を維持し、露光ムラが起こったレジストであっても迅速に剥離することができる。さらに、Cu、Al等の金属配線に対する腐食性もない。
【0016】
また、本発明のレジスト剥離性能評価方法によれば、レジスト剥離剤の剥離性能の優劣を容易に判定することができ、優れた剥離性能を有するレジスト剥離剤の研究開発を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レジスト感度曲線を示すグラフである。
【図2】エチレングリコールの割合と除去速度との関係を示すグラフである。
【図3】エチレングリコール又はプロピレングリコールの割合と除去速度との関係を示すグラフである。
【図4】エチレングリコール又はプロピレングリコールの割合と粘度との関係を示すグラフである。
【図5】エチレングリコール又はプロピレングリコールの割合とシリコン基板に対する接触角の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のレジスト剥離剤は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸エチレンと炭酸プロピレンの混合物に、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを80容量%以下、好ましくは1〜70容量%、より好ましくは10〜35容量%の量を添加混合する。ここで、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量割合は、混合される全物質の混合前の合計容量に対して添加するエチレングリコール等の容量割合である。
【0019】
エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量が1〜70%であれば、露光ムラに起因する過露光等により架橋、硬化の進んだレジストであっても除去速度に優れる。エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量が10〜35容量%である場合には除去速度が極めて早く、露光量が少ないフォトリソグラフィプロセスでの高いレジスト除去速度を要する工程においても、優れた剥離性能を実現することができる。
【0020】
炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類にエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを上記容量%添加混合することによって、本発明のレジスト剥離剤は、40℃での粘度は15cP以下、好ましくは10cP以下、さらに好ましくは5cP以下である。本発明において、粘度は回転式粘度計(装置名:Viscomate Model VM−10A、CBC社製)で測定した値である。
【0021】
本発明のレジスト剥離剤によれば、除去速度の向上を実現することができ、40℃で粘度15cP以下の液体であることから、取扱いも簡便である。従って、本発明のレジスト剥離剤によれば、従来よりも剥離時間を短縮することが可能であり、従来よりも低い温度でのレジスト剥離が可能である。さらに、炭酸エステル類とエチレングリコール等の混合物であるため、Cu、Al等の金属配線に対する腐食性もない。
【0022】
エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量が80容量%を超えると、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを添加しない炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類単一のものよりレジスト剥離性能が低下し、レジスト除去速度が後述する実用的な除去速度以下となり必要な剥離性能が得られないため好ましくない。レジスト剥離剤の40℃での粘度が15cPを超えると、フォトリソグラフィプロセスにおけるレジストの使用量やリンス水の使用量の大幅な増大を招き、レジスト剥離剤としての実用性に劣るおそれがある。
【0023】
エチレングリコールはプロピレングリコールに比べて剥離速度向上への寄与が大きいため、エチレングリコールとプロピレングリコールの混合物を添加量10%以下の少量で添加する場合には、エチレングリコール単一の場合より相対的に多く添加することが好ましい。
【0024】
前記炭酸エチレン、炭酸プロピレンからなる炭酸エステル類の中でも、レジスト剥離性能や安全性、入手の容易さの観点から炭酸エチレン又は炭酸エチレンと炭酸プロピレンの混合物が特に好ましい。
【0025】
エチレングリコール及びプロピレングリコールが炭酸エステル類に対して剥離促進作用を有する正確な機構については明らかではないが、本発明者は次のように推測し、その作用を実施例により明らかにした。
理由1:炭酸エステル類に一定割合のエチレングリコール等のグリコール類を添加混合すると、炭酸エステル類単一の場合に比べ、SP値がノボラック樹脂からなるレジストのSP値に近くなり、相溶性が増す。
理由2:シリコン基板への濡れ性が向上し、一部溶解したレジストとシリコン基板の界面から剥離剤が浸入しやすくなる。
【0026】
なお、SP値とは溶解度パラメーターであり、物質の構造を元に算出することができる。本発明では、「SP値基礎・応用と計算方法第6刷p67〜71(株式会社情報機構発行)」及び「A Method for Estimating both the Solubility parameters and Molar volumes of liquids(Robert F. Fedors)Polymer Engineering and Science,14,2,p147-154(1974)」に記載されたFedor推算法を用いた。
【実施例】
【0027】
次に実施例について説明する。
なお、実施例で使用した各物質の略号を以下に示す。
HMDS:ヘキサメチルジシラザン
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
EC:炭酸エチレン
PC:炭酸プロピレン
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
MEA:モノエタノールアミン
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0028】
1)レジスト感度の確認
シリコン基板の表面に、HMDSをスピンコーター(ACTIVE製300A)を用いて、回転数3000rpm、回転時間20秒の条件で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で1分間ベークした。
次に、このシリコン基板に化学増幅ネガ型レジスト(東京応化工業製TSMR−iN009PM)を、スピンコーターを用いて、回転数4000rpm、回転時間20秒の条件で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で1分間プリベークした。
プリベーク後のレジスト皮膜の膜厚を段差計(アルバック製:DekTak6M)で測定したところ、初期膜厚は1.5μmであった。
膜厚測定後、レジスト皮膜を露光機(ミカサ製マスクアライメント装置M−1S)を用いて、4秒間隔で4〜64秒まで18点露光した。(露光強度:0.182mW/cm
露光後、ホットプレートを用いて130℃で1分間ポストベークした。
ポストベーク後、レジスト皮膜をTMAH2.38wt%水溶液(東京応化社製、商品名NMD−3)を用いて、60秒間現像し、レジスト感度を確認した。
【0029】
図1にレジスト感度曲線を示す。
(なお、図1の規格化残膜の数値は、100%残膜したときの厚さを1として目盛ってある。規格化残膜の数値は、段差計(アルバック製:DekTak6M)による測定結果をもとにした。)
図1よりレジスト皮膜は露光量が0.9mJ/cmより大きくなると、架橋が起こり、3mJ/cm以上のとき、露光量に対してほとんど変化しなくなることから、100%残膜させる最小の露光量は3mJ/cmであることがわかる。ここで、最適露光量を3mJ/cmと決定した。
【0030】
2)レジスト皮膜試料の作製
レジスト被膜試料1
シリコン基板の表面に、HMDSをスピンコーター(ACTIVE製300A)を用いて、回転数3000rpm、回転時間20秒の条件で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で1分間ベークした。
次に、このシリコン基板に化学増幅ネガ型レジスト(東京応化工業製TSMR−iN009PM)を、スピンコーターを用いて、回転数4000rpm、回転時間20秒の条件で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で1分間プリベークした。
プリベーク後のレジスト皮膜の膜厚を段差計(アルバック製:DekTak6M)で測定したところ、初期膜厚は1.5μmであった。
膜厚測定後、レジスト皮膜を露光機(ミカサ製マスクアライメント装置M−1S)を用いて、露光した。(露光強度:0.182mW/cm、露光量:3mJ/cm
露光後、ホットプレートを用いて130℃で1分間ポストベークした。これをレジスト被膜試料1とした。
【0031】
レジスト被膜試料2
レジスト被膜試料1と同様にレジストを塗布しプリベーグし、初期膜厚を測定した。初期膜厚はレジスト被膜試料1と同じ、1.5μmであった。
膜厚測定後、レジスト皮膜を露光機(ミカサ製マスクアライメント装置M−1S)を用いて、露光した。(露光強度:0.182mW/cm、露光量:5.1mJ/cm
露光後、ホットプレートを用いて120℃で105秒間ポストベークした。これをレジスト被膜試料2とした。
【0032】
3)レジスト剥離性能評価
上述の方法で作製したレジスト皮膜試料1、2をホットスターラーで40℃に加温した評価対象のレジスト剥離剤30mLに浸漬させ、目視により、レジスト皮膜がシリコン基板から完全に剥離されるまでの時間を計測し、レジスト皮膜の膜厚をその剥離時間で除算することで、レジスト除去速度を求めた。
【0033】
4)レジスト除去速度
図2にEGの割合とEC及びEC:PC=1:1混合液のレジスト被膜試料1に対するレジスト除去速度との関係を示す。(EGの割合は、混合前のEC又はECとPC及びEGの容量の合計を100容量%としたときの割合である。)
図2より、炭酸エステル類単一の場合より、炭酸エステル類とEGの混合液である剥離剤の方が、除去速度が速くなることが確認できる。また、EGの割合が20容量%のときにレジスト除去速度が最も速くなることが分かる。
【0034】
図3にECに混合したEG又はPGの割合と混合液のレジスト被膜試料2に対するレジスト除去速度との関係を示す。(なお、EG又はPGの割合は、混合前のEC及びEG又はPGの容量の合計を100容量%としたときの割合である。)
図3では露光量を5.1mJ/cmとし、図2よりさらに架橋が進んだ場合のレジスト除去速度を評価している。すなわち、図3では、架橋が進んで剥離しにくい状態となったレジストの除去速度を示すものであり、図2より全体的に除去速度は減少している。特に、炭酸エステル類単一の場合のレジスト除去速度は大きく減少している。
【0035】
なお、フォトリソグラフィプロセスにおける処理速度等を考慮した場合、実用的なレジスト除去速度は、最低で1μm/分が必要であり、1.5μm/分のレジスト剥離剤が好ましく用いられている。図3では、炭酸エステル類単一の場合、レジスト除去速度が1μm/分を下回るが、炭酸エステル類とEG又はPGの混合液である剥離剤の場合には、実用的な最低速度以上を得られることが確認された。これは、仮に露光プロセスにおいて過露光部分等の露光ムラが生じた場合、炭酸エステル類単一の剥離剤では実用的な最低速度しか得られず、剥離できない部分が生じるが、炭酸エステル類とEG又はPGの混合液である剥離剤の場合には、剥離残しを生じずプロセスを実行できることを示唆するものである。
【0036】
更に、図3より、ECに混合するEGの割合が20容量%のとき、PGの割合が60容量%のときにレジスト除去速度が最も大きくなることがわかる。実用的なレジスト除去最低速度である1μm/分を得るためEG又はPGの割合は1〜80容量%が好ましい。
【0037】
より実用的なレジスト除去速度である1.5μm/分を得るため、炭酸エステル類にEGを混合する場合にはその割合は1〜70容量%、PGを混合する場合にはその割合は10〜70容量%がより好ましい。EGとPGの混合物を添加する場合には、EGとPGの混合物中のEGの割合(EGとPGの混合物中のEGの割合は、混合されるEGとPGの合計容量に対するEGの容量の割合である。)が25容量%のときには、混合物の添加量は8〜70容量%、50容量%のときには混合物の添加量は6〜70容量%、75容量%であるときには、混合物の添加量は3〜70容量%であれば、より実用的なレジスト除去速度である1.5μm/分を得ることができる。
【0038】
表1に、ECに混合したEGの割合(EGの割合は、混合前のECとEGの容量の合計を100容量%としたときの割合である。)と、混合液のSP値を算出した結果を示す。ノボラック樹脂のSP値は、25.71(J/cm3)1/2と算出された。一般的に、溶質と溶媒のSP値が近い場合には溶解しやすい。表1より、ECとEGの混合液のSP値とノボラック型樹脂のSP値が最も近くなるのは、EG割合が20容量%であり、このときに最も除去速度が高いことが図2、3より分かる。これらから、ECとEGを混合すると、ノボラック樹脂との溶解性や親和性が増してレジスト除去速度が向上することが分かる。
【表1】

【0039】
図4にECに混合したEG又はPGの割合と、混合液の40℃での粘度(cP)との関係を示す。粘度は、回転式粘度計(装置名:Viscomate Model VM−10A、CBC社製)にて測定した。
【0040】
表1に一般的なアミン系の剥離剤と比較したレジスト被膜試料1に対するレジスト除去速度を示す。
【表2】

【0041】
表2より一般的なアミン系剥離剤よりもECにEGを20容量%添加したレジスト剥離剤ではレジスト除去速度が1.5倍高く、EC:PC=1:1混合液にEGを20容量%添加したレジスト剥離剤ではレジスト除去速度が1.7倍高くなることがわかる。
【0042】
5)シリコン基板に対する接触角
シリコン基板の表面に、HMDSをスピンコーター(ACTIVE製300A)を用いて、回転数3000rpm、回転時間20秒の条件で塗布し、ホットプレートを用いて100℃で1分間ベークした。このシリコン基板表面の接触角を、接触角計(装置名:DM−301、協和界面科学社製)を用いて、混合液2μLを滴下して行った。
図5にECに混合したEG又はPGの割合と混合液(剥離剤)のシリコン基板に対する接触角の関係を示す。
図3〜5より、シリコン基板に対する混合液の接触角が小さいときに、除去速度が大きくなることがわかる。
【0043】
6)金属配線に対する腐食性評価
ガラス基板にCu及びAlをスパッタリングした模擬金属配線試料を60〜80℃に加温した評価対象のレジスト剥離剤200g中に撹拌下で100分間浸漬させた。浸漬後、レジスト剥離剤中に溶出した金属量をICP−MSで測定し、その結果からCu、Alの1分間あたりのエッチングレートを求めた。
【0044】
表3に結果を示す。
【表3】

【0045】
表3よりECにEGを20容量%添加したレジスト剥離剤及びEC:PC=1:1混合液にEGを20容量%添加したレジスト剥離剤は一般的なアミン系剥離剤に比べCu、Alに対する腐食性が低いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸エチレン、炭酸プロピレン又は炭酸エチレンと炭酸プロピレンの混合物に、80容量%以下となる量のエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを添加したことを特徴とするレジスト剥離剤。
【請求項2】
前記エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量が、1〜70容量%であることを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離剤。
【請求項3】
前記エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールの添加量が10〜35容量%であることを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離剤。
【請求項4】
40℃における粘度が15cP以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のレジスト剥離剤。
【請求項5】
基板表面にネガ型レジストを塗布し、プリベーグ、露光を行ったレジスト被膜試料を作成する工程と、
前記レジスト被膜試料とレジスト剥離剤を接触させてレジスト被膜の除去速度を計測する工程と、
を有することを特徴とするレジスト剥離性能評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194536(P2012−194536A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14428(P2012−14428)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月27日 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/kakoronbunshu/−char/jaを通じて発表
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】