説明

レベルワウンドコイルの管供給方法

【課題】管が損傷し難いレベルワウンドコイルの管供給方法を提供する。
【解決手段】管3をコイル状に多層に整列巻きしたレベルワウンドコイル1を、その軸方向2を垂直方向に向けて配置し、管3をコイル1の外層から巻き解き、巻き解かれた管3をコイル1の上方に配置したガイド4を通して供給するレベルワウンドコイルの管供給方法において、コイル1の上方において、コイル1の平面視内側にガイド4を配置し、コイル1の上面1cとガイド入口4aとの間の垂直方向の距離Aについて、巻き解く管3に外側に向かう力が作用する、第1所定距離である50mm乃至第2所定距離である950mmからなる所定範囲を設定し、距離Aが所定範囲となるようにコイル1とガイド4とを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンなどの空調冷凍機の伝熱管(内面溝付管および平滑管など)、建築物の給湯・給水配管などに使用される銅又は銅合金管などをコイル状に多層に整列巻きし、この多層コイルを、その軸方向を垂直方向に向けて配置して巻き解くレベルワウンドコイルの管供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レベルワウンドコイルは、図4(イ)に示すように、管3をボビン7に多層に整列巻きしたのち、図4(ロ)に示すようにボビン7を構成する側板7a、内筒7bを取り外した状態のコイル1であり、このコイル1は、その軸方向2を垂直方向に向けた状態で焼鈍(調質)、保管、搬送が行われ、さらに、図4(ハ)に示すように巻き解き(アンコイル)が行われる(特許文献1)。図4(イ)で8はターンテーブル、図4(ハ)で6は段積みした複数のレベルワウンドコイル1を仕切る板材(緩衝材となるドーナツ紙など)、4は進路変更用ガイド、9はパレットである。
【0003】
前記レベルワウンドコイルは、コイル最内層に位置する管の巻き始め端部(管端)を上側にして配置し、前記管端を引き上げ、コイル上方に配置した湾曲した筒状のガイド4に通してその進路を変更し、使用先に供給する。コイル1から引き出された管3は螺旋状にループ(巻き癖)を形成しているが、この巻き癖は上方に引き上げられ、さらにガイド4を通過するうちに、徐々に消失する。
【0004】
前記レベルワウンドコイル1は、図5に示すように、管3をコイル状に整列巻きして1層目コイル(最内層コイル)1bを形成し、1層目コイル1bの上に2層目コイルを1層目コイル外面の管間の凹部に嵌め込んで整列巻きし、以後同様にして2層目コイルの上に3層目コイル、3層目コイルの上に4層目コイル(最外層コイル)1aを整列巻きして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−2012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレベルワウンドコイル1の管供給方法(図4(ハ)参照)では、管3を巻き解く際に管3がコイル1から離れ難く管3同士が擦れ合って傷が生じたり、折れたりすることがあった。またコイル1離れが悪かった箇所の近辺は巻き癖が消失し難く、ガイド4入口で擦れて傷が付くことがあった。この問題を、管3の巻回方法を規定して改善する方法が提案された(特許文献1)が、十分な効果が得られていない。
【0007】
このようなことから、本発明者等は、レベルワウンドコイルから管を損傷させずに良好に供給する方法について検討した。その結果、レベルワウンドコイルの上方に配置するガイドの上下位置により、管の巻き解かれ方が影響されることを知見し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の目的は、管が損傷し難いレベルワウンドコイルの管供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載発明は、管をコイル状に多層に整列巻きしたレベルワウンドコイルを、その軸方向を垂直方向に向けて配置し、前記管を前記コイルの外層から巻き解き、前記巻き解かれた管を前記コイルの上方に配置したガイドを通して供給するレベルワウンドコイルの管供給方法において、前記ガイドを、前記コイルの上方において、該コイルの平面視内側に配置し、前記レベルワウンドコイルの上面とガイド入口との間の垂直方向の垂直距離について、巻き解く前記管に外側に向かう力が作用する、第1所定距離乃至第2所定距離からなる所定範囲を設定し、
前記垂直距離が前記所定範囲となるように前記コイルと前記ガイドとを配置する
レベルワウンドコイルの管供給方法である。
【0010】
請求項2記載発明は、請求項1記載のレベルワウンドコイルの管供給方法において、前記垂直距離が前記所定範囲を超える場合、前記コイルと前記ガイド間に、予備ガイドを設け、前記レベルワウンドコイルの上面と前記予備ガイドとの間の垂直方向の垂直距離を所定範囲となるように前記予備ガイドを配置することを特徴とするレベルワウンドコイルの管供給方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、レベルワウンドコイルの上面とガイド入口との間の垂直方向の距離を適正に規定したので、管がレベルワウンドコイルから離れ易く良好に巻き解かれる。従って管はコイルから巻き解かれるとき、或いはガイドを通過する際に損傷(傷付き、折れ、変形など)しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の管供給方法の第1実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】本発明の管供給方法の第2実施形態を示す斜視説明図である。
【図3】本発明の管供給方法の第3実施形態を示す斜視説明図である。
【図4】(イ)〜(ハ)はレベルワウンドコイルの斜視説明図である。
【図5】レベルワウンドコイルの縦断面部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、軸を垂直方向に向けて配置したレベルワウンドコイルから管端を引き出し、この管端を、前記コイルの上方に配置したガイドに通して管を供給する際、レベルワウンドコイルの上面とガイド入口との間の垂直方向の距離が短いときは前記管には外側に向かう力が作用し、長いときは中心に向かう力が作用することを知見し、この知見を基にさらに検討を重ねてなされたものである。
【0014】
以下に、本発明を、図を参照して具体的に説明する。
図1は本発明の管供給方法の第1実施形態を示す斜視説明図である。
この管供給方法は、レベルワウンドコイル1を、その軸方向2を垂直方向に向けて配置し、最外層コイル1aの管端を引き出して巻き解く際、レベルワウンドコイル(上段コイル)1のガイド上面1cとガイド4の入口4aとの間の垂直方向の距離Aが短いため、巻き解かれる管3に外方に向かう力が作用し、管3はコイルから容易に離れる。従って巻き解く際に管3に摺り傷や折れ曲がりなどが生じない。また巻き癖も均一に生じて消失し易く、ガイド4と擦れて傷が付くこともない。
【0015】
本発明において、レベルワウンドコイルの上面とガイド入口4aとの間の垂直方向の距離Aを950mm以下に規定する理由は、距離Aが950mmを超えては、管3がコイルから容易に離れるという効果が十分に得られないためである。距離Aは600mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましい。
【0016】
距離Aが短くなり過ぎると逆に管が抜け難くなるので、距離Aは50mm以上とするのが良い。好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上である。
【0017】
請求項1記載発明において、レベルワウンドコイルは、その最外層の管端が下側に位置していても上側に位置していても良い。また最外層の巻数は1層当りの巻数を超えない範囲で任意である。層数は奇数、偶数どちらでも良い。
【0018】
図2は本発明の管供給方法の第2実施形態を示す斜視説明図である。
この管供給方法は、レベルワウンドコイル1を、その軸方向2を垂直方向に向けて配置し、最内層コイル1b(図5参照)の管端を引き出して巻き解く方法であり、ここではレベルワウンドコイル(上段コイル)1のコイル上面1cとガイド4の入口4aとの間の垂直方向の距離Bが長いため、巻き解かれる管3に内方に向かう力が作用して管3はコイル1から容易に離れ、巻き解く際に管3に摺り傷や折れ曲がりなどが生じない。また巻き癖も均一に生じて消失し易く、ガイド4と擦れて傷が付くこともない。
【0019】
離Bを700mm以上に規定する理由は、距離Bが700mm未満では巻き解かれる管3に内方に向かう力が十分に作用せず、そのため管3のコイル離れが悪く、管3に摺り傷や折れ曲がりなどが生じるためである。また巻き癖が消失し難くガイド4と擦れて傷が付くことがあるためである。距離Bは850mm以上、更には900mm以上が好ましい。
【0020】
距離Bは長いほど管の折れや擦り傷を抑制できるが、長すぎると管をガイドに挿通し難くなる。距離Bは3000mm以下が好ましく、2000mm以下がより好ましい。
【0021】
本発明において、最外層から巻き解く方法は最内層から巻き解く方法に較べて次の2点で有利である。(1)設備の高さを低くできる。(2)最外層の巻き数は任意であり余尺による歩留低下が生じない。即ち、最内層から巻き解く方法では、最外層(n層)が板材6に接していないときは、n−1層を下から巻き解くとき最外層が崩れてしまうため最外層は満巻き状態にしておく必要があり、余尺が発生する。
【0022】
本発明において、ガイドの形状は、管状に限定されず、ロール状などでも同様の効果が得られる。
【0023】
レベルワウンドコイルを3段、4段というように複数積み上げて各段外層から巻き解く場合、上段から下段へと巻き解くにつれて距離Aが長くなり、本発明の規定値を満たさなくなる場合がある。この場合は、ガイドまたはコイルを上下方向に移動させて両者を接近させる必要があり、この作業は手間が掛かる。請求項記載発明はこの問題を改善した管の供給方法である。
【0024】
即ち、この管供給方法は、図3に示すように、ガイド4下方に予備ガイド5を設けておき、管3をこの予備ガイド5を通したのちガイド4に通す方法である。この方法では、距離Aはコイル上面1cと予備ガイド入口5aとの間の垂直方向の距離になる。この方法によればガイド4或いはコイル1を上下に移動させる必要がなく、距離Aを容易に短縮できる。
【0025】
前記予備ガイドの形状はリング状、円筒状、多角形状、円錐状、多角錐状など任意である。前記予備ガイド5の入口の形状はガイド4の入口の形状と同じにしておくのが好ましい。
【0026】
前記予備ガイドは、所定間隔を開けて複数設けておいても良いが、上下方向に移動可能にしておくと1個の予備ガイドで済む。
【実施例1】
【0027】
銅管(以下、単に管と記す。)3をコイル状に整列巻きしたレベルワウンドコイル1を3段積みし、上段コイルの最外層コイル1aの管端を上方に引き出しガイド4を通して使用先に供給し(図1参照)、コイルからの銅管の離れ具合およびガイド通過後の銅管の品質を調査した。上段コイルの上面1cと円筒状のガイド入口4aとの間の垂直方向の距離Aは630mm、上、中、下段の各コイルの寸法は高さ310mm、内径300mm、外径560mmであり、ドーナツ紙6の厚みは10mmであった。上段コイルの上面とガイド入口4aとの間の距離Aは630mmであった。
【実施例2】
【0028】
実施例1に引き続き、中段コイルの最外層コイル1aの管端を上方に引き出しガイド4を通して使用先に供給し、実施例1と同じ調査を行った。中段コイルの上面とガイド入口4aとの間の距離Aは950mmであった。
【実施例3】
【0029】
実施例2に引き続き、下段コイルの最外層コイル1aの管端を上方に引き出し、これをリング状予備ガイド5とガイド4にこの順に通して使用先に供給し(図4参照)、実施例1と同じ調査を行った。下段コイルの上面と予備ガイド入口5aとの間の垂直方向の距離Aは310mmであった。予備ガイド入口5aの内径はガイド入口の内径と同じにした。
【0030】
[比較例1]
下段コイルの最外層コイル1aの管端を上方に引き出し、これを直接ガイド4に通した他は実施例3と同じ方法で管3を使用先に供給し、実施例1と同じ調査を行った。下段コイルの上面とガイド入口4aとの間の距離Aは960mmであった。
【実施例4】
【0031】
管をコイル状に整列巻きしたレベルワウンドコイルを3段積みし、上段コイルの最内層コイル1bの管端を上方に引き出し、ガイド4を通して使用先に供給し(図1参照)、上段コイルの供給が終了後、中段コイルと下段コイルの供給をこの順に行い、実施例1と同じ調査を行った。上段コイルの上面1cとガイド入口4aとの間の垂直方向の距離Bは700mm、中段コイルの距離Bは1020mm、下段コイルの距離Bは1340mmであった。
【0032】
[比較例2]
管をコイル状に整列巻きしたレベルワウンドコイルを3段積みし、上段コイルの最内層コイル1b(図5参照)の管端を上方に引き出しガイド4を通して使用先に供給し(図3参照)、実施例4と同じ調査を行った。ここでは上段コイルの上面1cとガイド入口4aとの間の垂直方向の距離Bは690mmとした。
【0033】
実施例1〜4および比較例1、2の結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、本発明例品(No.1〜6)はいずれも、コイルからの銅管の離れ具合が極めて良好または良好であり、巻き癖も消失し易く、ガイド通過後の銅管は損傷が全くないか、あっても実用上問題ない程度で、品質が極めて良好または良好であった。
【0036】
これに対し、比較例品のNo.7は距離Aが長すぎたため、No.8は距離Bが短かすぎたためいずれも銅管がコイルから離れ難く、銅管を引き出すとき銅管同士が擦れ合って大きの傷が生じた。また銅管がコイルから離れ難いため巻き癖が消失し難い箇所が生じ、その箇所がガイドと擦れてやはり大きめの傷が生じた。
【符号の説明】
【0037】
1 レベルワウンドコイル
1aレベルワウンドコイルの最外層
1bレベルワウンドコイルの最内層
1cレベルワウンドコイルの上面
2 レベルワウンドコイルの軸方向
3 管
4 ガイド
4aガイドの入口
5 予備ガイド
5a予備ガイドの入口
6 板材(ドーナツ紙)
7 ボビン
7aボビンを構成する側板
7bボビンを構成する内筒
8 ターンテーブル
9 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管をコイル状に多層に整列巻きしたレベルワウンドコイルを、その軸方向を垂直方向に向けて配置し、前記管を前記コイルの外層から巻き解き、前記巻き解かれた管を前記コイルの上方に配置したガイドを通して供給するレベルワウンドコイルの管供給方法において、
前記ガイドを、前記コイルの上方において、該コイルの平面視内側に配置し、
前記レベルワウンドコイルの上面とガイド入口との間の垂直方向の垂直距離について、巻き解く前記管に外側に向かう力が作用する、第1所定距離乃至第2所定距離からなる所定範囲を設定し、
前記垂直距離が前記所定範囲となるように前記コイルと前記ガイドとを配置する
レベルワウンドコイルの管供給方法。
【請求項2】
前記垂直距離が前記所定範囲を超える場合、
前記コイルと前記ガイド間に、予備ガイドを設け、
前記レベルワウンドコイルの上面と前記予備ガイドとの間の垂直方向の垂直距離を所定範囲となるように前記予備ガイドを配置することを特徴とする
請求項1に記載のレベルワウンドコイルの管供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−68497(P2011−68497A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257047(P2010−257047)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【分割の表示】特願2005−273234(P2005−273234)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】