説明

レベルワウンドコイル

【課題】コイル(管)を巻き解く際、管に傷、折れ曲り、変形が生じ難く、またコイルが崩れ難いレベルワウンドコイルを提供する。
【解決手段】管2をコイル状に多層に整列巻きしたコイルを、その軸方向が垂直方向に向くよう板材8上に配置し、最内層コイル3の管2の端部を引き出して巻き解くレベルワウンドコイル1において、最外層コイル6側の管端部分6aを最外層コイル6の下側に配置して最外層コイル6を支持したレベルワウンドコイル。このレベルワウンドコイルは、最内層コイル3を巻き解く際のn−1層目コイル5の下部の管2に発生する傷、折れ曲がり、変形が防止され、n−1層目コイル5を巻き解く際に発生するn層目コイル6の崩れが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンなどの空調冷凍機の伝熱管(内面溝付管および平滑管など)、建築物の給湯・給水配管などに使用される銅又は銅合金管などをコイル状に多層に整列巻きし、その軸方向が垂直になるように配置して巻き解かれるレベルワウンドコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
レベルワウンドコイルは、図3(イ)に示すように管1をボビン10に多層に整列巻きしたのち、図3(ロ)に示すようにボビンを取り外した状態のコイル11であり、このコイル11は、その軸方向7を垂直方向に向けた状態で焼鈍(調質)、保管、搬送が行われ、さらに、図3(ハ)に示すように巻き解き(アンコイル)が行われる(特許文献1)。
図3(イ)で10aはターンテーブル、図3(ロ)で10bはボビン10を構成する側板、10cは内筒である。図3(ハ)で8は段積みした複数のレベルワウンドコイル11を仕切る板材(緩衝材となるドーナツ紙など)、12は巻き解かれる管2を案内するガイド、13はパレットである。
【0003】
前記レベルワウンドコイル11は、図4に示すように、管1をコイル状に整列巻きして1層目コイル13を形成し、1層目コイル3の上に2層目コイル4を1層目コイル3外面の管間の凹部に嵌め込んで整列巻きし、以後同様にして2層目コイル4の上に3層目コイル5、3層目コイル5の上に4層目コイル6を整列巻きして構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−2012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記レベルワウンドコイル11を、最内層コイル3下部の管端部3aを引き出して巻き解くとき、レベルワウンドコイルの最外層コイル(n層目コイル)6の下端が板材8から離れているため、レベルワウンドコイルの重量がn−1層目コイル5に集中して、このコイル15の下部の管5aが傷ついたり、折れ曲がったり、変形したりすることがあった。またn−1層目コイル5を巻き解き始めると、最外層コイル6が落下して崩れてしまい巻き解きができなくなることがあった。
本発明は、コイルを巻き解く際、管に傷、折れ曲り、変形が生じ難く、またコイルが崩れ難い、レベルワウンドコイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載発明は、管をコイル状に多層に整列巻きしたコイルを、その軸方向が垂直方向に向くよう板材上に配置し、前記コイルの最内層コイルの管の端部を引き出して巻き解くレベルワウンドコイルにおいて、前記レベルワウンドコイルの最外層コイル側の管端部分が最外層コイルの下側に配置されて前記最外層コイルが支持されていることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0007】
請求項2記載発明は、請求項1記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最外層コイル側の管端部分が最外層コイルの下部と板材とに接していることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0008】
請求項3記載発明は、請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最内層コイルの管の端部が最内層コイルの下部に位置し、奇数層目コイルの巻数をmとしたとき、偶数層目コイルの巻数が(m−1)であり、コイルの層数が偶数であることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0009】
請求項4記載発明は、請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最内層コイルの管の端部が最内層コイルの上部に位置し、奇数層目コイルの巻数をmとしたとき、偶数層目コイルの巻数が(m+1)であり、コイルの層数が奇数であることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0010】
請求項5記載発明は、請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、各層のコイルの巻数が同一であり、コイルの層数が奇数であることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0011】
請求項6記載発明は、請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、各層のコイルの巻数が同一であり、コイルの層数が偶数であることを特徴とするレベルワウンドコイルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレベルワウンドコイルは、管をコイル状に多層に整列巻きした多層コイルを、その軸方向が垂直方向に向くよう板材上に配置し、最内層コイルの管の端部を引き出して巻き解くレベルワウンドコイルにおいて、前記レベルワウンドコイルの最外層コイル側の管端部分を最外層コイルの下側に配置して前記最外層コイルを支持するものなので、レベルワウンドコイルを最内層から巻き解く際にn−1層目コイルの下部の管に発生する傷、折れ曲がり、変形、およびn−1層目コイルを巻き解く際に発生するn層目コイルの崩れなどが防止され生産性が向上する。前記n層目コイルは、最外層コイル側の管端部分が最外層コイルの下部と板材とに接することにより支持される。
本発明は、n層巻きのレベルワウンドコイルの最外層コイル(n層目コイル)およびn−2層目コイルの下端が板材から離れており、n−1層目コイルが下から上に巻き解かれる場合においてその効果が発現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、図を参照して具体的に説明する。
図1(イ)〜(ニ)は本発明の実施形態を示す縦断面図である。
図1(イ)に示すレベルワウンドコイル1は、管2を整列巻きして1層目コイル3を形成し、この1層目コイル3の上に2層目コイル4を前記1層目コイル3外面の管間の凹部に嵌め込んで整列巻きし、以後同様にして、2層目コイル4の上に3層目コイル5、3層目コイル5の上に4層目コイル6を整列巻きした複数層のコイルからなり、かつ、奇数層目のコイル3、5の巻き数をmとしたとき、偶数層目のコイル4、6の巻き数が(m−1)であり、コイル層数が偶数であるレベルワウンドコイルである。
【0014】
そして、このレベルワウンドコイル1は、コイル軸方向7が垂直で、且つ最内層コイル(n−3層目コイル)3の管の端部(巻き解き開始部)2aを下側にして板材8上に配置されており、最外層コイル6側の管端部分6aが最外層コイル6の下側に配置されて最外層コイル(n層目コイル)6が支持されている。ここでは管端部分6aは最外層コイル6の下部と板材(ドーナツ紙)8とに接している。
【0015】
このレベルワウンドコイルによれば、最内層コイル3が巻き解かれる際のレベルワウンドコイルの重量は、n−1層目コイル5の下端部分と最外層コイル6側の管端部分6aとで支持されるため、n−1層目コイル5下部の傷、折れ曲がり、変形などが防止される。またn−1層目コイル5が巻き解かれる際のn層目コイル6の崩れは、管端部分6aがn層目コイル6の下部と板材8に接して配置されているので防止される。
【0016】
図1(ロ)に示すレベルワウンドコイルは、奇数層目コイルの巻き数をmとしたとき、偶数層目コイルの巻き数が(m+1)であり、かつコイル層数が奇数であること以外は図1(イ)に示したものと同じであり、図1(ハ)に示すレベルワウンドコイルは、コイルの巻き数が各層同数であり、コイル層数が奇数であること以外は図1(イ)に示したものと同じであり、図1(ニ)に示すレベルワウンドコイルは、コイルの巻き数が各層同数であり、コイル層数が偶数であること以外は図1(イ)に示したものと同じであり、いずれも最外層コイル6側の管端部分6aが最外層コイル6の下側に配置されて最外層コイル6が支持されているので、図1(イ)に示したものと同じ効果が得られる。
【0017】
図1(イ)〜(ニ)に示したレベルワウンドコイルは、(1)最外層コイル(n層目コイル)とn−2層目コイルの下端が板材から離れており、かつ(2)n−1層目コイルが下から上に巻き解かれる点で共通している。本発明は前記(1)、(2)の条件を満たすレベルワウンドコイルに適用してその効果が発現される。
【0018】
本発明において、最外層コイル側の管端部分は、最外層コイルの下側に半周以上配置するのが、レベルワウンドコイルの重量を支え、かつ最外層コイルの崩れを防止するために望ましい。4分の3周以上、さらには1周以上配置することがより望ましい。
【0019】
本発明において、最外層コイル側の管端部分6aの端部6bは、図2(イ)に示すように板材8に粘着テープ9などにより固定する。図2(ロ)は、管端部分6aを最外層コイル6の下部と板材9とに接して1周巻き付け、さらにレベルワウンドコイルに沿って上方に2周巻き付けて緩みが生じないようにしてから、その端部6bを板材8に固定したものである。レベルワウンドコイルに2周巻き付けた管端部分6cはシートで覆って包装を兼ねても良い。端部6bの固定には粘着テープを用いる他、任意の方法が適用できる。
【0020】
外層管端を管終端検知に用いる場合、管端検知までの距離分を、管端部分(6a+6bまたは6a+6b+6c)に加えて余分に巻き付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(イ)〜(ニ)は本発明のレベルワウンドコイルの第1〜第4実施形態を示す縦断面説明図である。
【図2】(イ)、(ロ)は本発明における最外層コイルの管端部分の実施形態を示す斜視説明図である。
【図3】(イ)〜(ハ)はレベルワウンドコイルの斜視説明図である。
【図4】従来のレベルワウンドコイルの縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 本発明のレベルワウンドコイル
2 管
3 n−3層目コイル
4 n−2層目コイル
5 n−1層目コイル
6 n層目コイル(最外層コイル)
6a最外層コイル側の管端部分で最外層コイルを支持する部分
6b最外層コイル側の管端部分の端部
6c最外層コイル側の管端部分でレベルワウンドコイルに巻付けられる部分
7 レベルワウンドコイルの軸方向
8 板材(ドーナツ紙)
9 粘着テープ
10ボビン
10aターンテーブル
10bボビンを構成する側板
10cボビンを構成する内筒
11従来のレベルワウンドコイル
12ガイド
13パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管をコイル状に多層に整列巻きしたコイルを、その軸方向が垂直方向に向くよう板材上に配置し、前記コイルの最内層コイルの管の端部を引き出して巻き解くレベルワウンドコイルにおいて、前記レベルワウンドコイルの最外層コイル側の管端部分が最外層コイルの下側に配置されて前記最外層コイルが支持されていることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項2】
請求項1記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最外層コイル側の管端部分が最外層コイルの下部と板材とに接していることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項3】
請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最内層コイルの管の端部が最内層コイルの下部に位置し、奇数層目コイルの巻数をmとしたとき、偶数層目コイルの巻数が(m−1)であり、コイルの層数が偶数であることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項4】
請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、前記最内層コイルの管の端部が最内層コイルの上部に位置し、奇数層目コイルの巻数をmとしたとき、偶数層目コイルの巻数が(m+1)であり、コイルの層数が奇数であることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項5】
請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、各層のコイルの巻数が同一であり、コイルの層数が奇数であることを特徴とするレベルワウンドコイル。
【請求項6】
請求項1、2記載のレベルワウンドコイルにおいて、各層のコイルの巻数が同一であり、コイルの層数が偶数であることを特徴とするレベルワウンドコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−70026(P2007−70026A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257873(P2005−257873)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】