説明

レーダ装置、および、物体導出方法

【課題】レーダ装置の部品点数の増加を防止し、発熱を抑制する技術を提供する。
【解決手段】
所定周期の第1送信波および第2送信波と、第1送信波が物体に反射した第1反射および第2送信波が物体に反射した第2反射波とに基づき、一の信号処理周期で物体に係る検知点を導出する。そして、所定条件を満たした場合に、所定周期よりも長い特定周期に変更した第1送信波、および、第1反射波に基づき一の信号処理周期で検知点を導出し、特定周期に変更した第2送信波、および、第2反射波に基づき、次の信号処理周期で検知点を導出する。これにより、物体の角度の導出処理をほとんど遅延させることなく、レーダ装置の発熱を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置の物体導出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置のアンテナから送信波を出力する際、所定周期の送信波の出力時間を比較的長くすることで、物体の導出精度を向上させていた。また、送信波が物体に反射した反射波をアンテナで受信した後に、反射波と送信波とに基づいて、レーダ装置の信号処理装置が物体の位置等を導出する。そして、物体の時間ごとに変化する位置等の情報を早いタイミングで更新するために、信号処理装置の物体導出の周期を比較的短い周期としていた。
【0003】
しかし、アンテナから出力される送信波の出力時間を長くした場合、レーダ装置内部の各装置の消費電力が増加し発熱することで、レーダ装置内部の温度が上昇してレーダ装置の物体の導出精度が低下するときがあった。
【0004】
また、信号処理装置の物体導出の周期を短い周期とすることで、間欠的に動作する信号処理装置の動作タイミングが早くなる。その結果、信号処理装置の消費電力が増加し発熱することで、レーダ装置内部の温度が上昇してレーダ装置の物体導出精度が低下するときがあった。
【0005】
このような場合、レーダ装置内部の発熱を抑制し温度を低下させるために、レーダ装置に放熱部材を設けていた。具体的には、レーダ装置内部の各基板に放熱シートなどを設けてレーダ装置の筐体への熱伝導率を向上させたり、筐体に放熱フィンを設けてレーダ装置内部の温度を低下させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−177055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レーダ装置に放熱部材を設けると製造のコストアップに繋がる。また、例えば、レーダ装置を車両に搭載する場合、車両の多機能化に伴いレーダ装置の小型化させる必要があるのに対し、放熱部材を設けることにより部品点数が増加してレーダ装置が大型化する場合があった。
【0008】
本発明は、レーダ装置の部品点数の増加を防止し、発熱を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、物体に係る検知点の少なくとも角度を導出するレーダ装置であって、所定周期で第1送信波を出力する第1送信手段と、前記所定周期で第2送信波を前記第1送信波を出力するタイミングと異なるタイミングで出力する第2送信手段と、前記第1送信波が前記検知点に反射した第1反射波と、前記第2送信波が前記検知点に反射した第2反射波とを受信する受信手段と、前記第1送信波および前記第2送信波と、前記第1反射波および前記第2反射波とに基づき前記検知点の角度を導出する第1導出処理を行う導出手段とを備え、前記第1送信手段は、所定条件を満たした場合に、前記所定周期よりも長い周期である特定周期で前記第1送信波を出力し、前記第2送信手段は、前記所定条件を満たした場合に、前記特定周期で前記第2送信波を出力するとともに、前記特定周期で送信される第1送信波の一の出力タイミングと次の出力タイミングとの略中間のタイミングで前記第2送信波を出力し、前記導出手段は、前記所定条件を満たした場合に前記第1導出処理に替えて、前記第1送信波と前記第1反射波とに基づく前記検知点の角度を導出し、かつ、前記第2送信波と前記第2反射波とに基づく前記検知点の角度を導出する第2導出処理を行う。
【0010】
また、本発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記特定周期は前記所定周期の2倍の周期である。
【0011】
さらに、本発明は、請求項1または2に記載のレーダ装置において、前記第1送信波のビームパターンは、前記第2送信波のビームパターンと異なるビームパターンであって、前記導出手段は、前記第1反射波の信号レベルと、前記第2反射波の信号レベルとの信号レベル差に応じて、前記角度に前記検知点が存在するか否かを判定する折り返し判定を行うものであって、前記第1導出処理を行う場合は、前記所定周期内に前記受信手段により受信される前記第1反射波と第2反射波とに基づき前記折り返し判定を行い、前記第2導出処理を行う場合は、前記特定周期内に前記受信手段により受信される前記第1反射波と第2反射波とに基づき前記折り返し判定を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導出手段は、所定条件を満たした場合に送信周期が所定周期よりも長い特定周期に変更され、第1導出手段に替えて、第1送信波と第1反射波とに基づく検知点の角度を導出し、かつ、第2送信波と第2反射波とに基づく検知点の角度を導出する第2導出処理を行うことで、物体の角度の導出処理をほとんど遅延させることなく、レーダ装置の発熱を抑制できる。
【0013】
また、本発明によれば、特定周期は所定周期の2倍の周期であることで、レーダ装置の処理負荷を増加させることなく、かつ、物体導出の処理速度をほとんど低下させずにレーダ装置の発熱を抑制できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、導出手段は、第1反射波の信号レベルと、第2反射波の信号レベルとの信号レベル差に応じて、角度に検知点が存在するか否かを判定する折り返し判定を行うものであって、第1導出処理を行う場合は、所定周期内に受信手段により受信される第1反射波と第2反射波とに基づき折り返し判定を行い、第2導出処理を行う場合は、特定周期内に受信手段により受信される第1反射波と第2反射波とに基づき折り返し判定を行うことで、車両の制御にはほとんど影響がないように折り返し判定を行うタイミングを遅延させて、レーダ装置の発熱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、レーダ装置の構造を示す図である。
【図2】図2は、レーダ装置のブロック図を主に示す図である。
【図3】図3は、第1導出処理に関するタイミングを示すタイムチャートである。
【図4】図4は、第1導出処理に関するFM−CW方式の信号を示す図である。
【図5】図5は、第2導出処理に関するタイミングを示すタイムチャートである。
【図6】図6は、第2導出処理に関するFM−CW方式の信号を示す図である。
【図7】図7は、信号処理装置の処理フローチャートである。
【図8】図8は、信号処理装置の処理フローチャートである。
【図9】図9は、信号処理装置の処理フローチャートである。
【図10】図10は、物体に係る検知点の角度スペクトラムを示す図である。
【図11】図11は、第1送信波、および、第2送信波のビームパターンを示す図である。
【図12】図12は、2種類のビームパターンにおける受信レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下に示す実施の形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0017】
<第1の実施の形態>
<1.レーダ装置の構造>
図1は、レーダ装置1の構造を示す図である。図1のレーダ装置1はレドーム2、アンテナ基板3、アンテナシャーシ4、RFシャーシ5、RF基板6、ベースバンド基板7、および、ケース8を主に備えている。
【0018】
レーダ装置1は、送信アンテナ(例えば、図2に示す送信アンテナ13)から送信波を出力し、送信波が物体に反射した反射波を受信アンテナ(例えば、図2に示す受信アンテナ14)で受信して、当該物体の角度などを導出する。
【0019】
レドーム2は、アンテナ基板3を保護する部材であり、例えば樹脂で生成される。また、レドーム2はアンテナ基板3に設けられた送信アンテナ13から出力される送信波と、アンテナ基板3に設けられ受信アンテナ14により受信される物体に係る検知点からの反射波とを透過する。
【0020】
アンテナ基板3は、送信アンテナ13および受信アンテナ14を備えている。そして、送信アンテナ13から出力される送信波が検知点に反射して、当該検知点からの反射波を受信アンテナ14が受信する。また、アンテナ基板3の送信アンテナ13および受信アンテナ14は、マイクロストリップラインを有するプリント基板からなる平面アンテナで構成されている。
【0021】
なお、アンテナ基板3に設けられた送信アンテナ13からの送信波の一周期内の出力時間の増加、および、出力周期の短縮の少なくともいずれか一方が行われることで、アンテナ基板3に設けられた送信アンテナ13などの各部の消費電力が増加する。その結果、送信アンテナ13などの各部が発熱し、レーダ装置1の温度が上昇することで、物体の導出精度が低下する場合がある。
【0022】
アンテナシャーシ4は、アンテナ基板3と面接続され、アンテナ基板3を支持する。RFシャーシ5は、RF基板6と面接続され、RF基板6を支持する。
【0023】
RF基板6は、信号生成部(例えば、図2に示す信号生成部11)、発振器(例えば、図2に示す発振器12)、および、ミキサ(例えば、図2に示すミキサ15)を備える。RF基板6の信号生成部11などの各装置の動作時間、および、動作頻度の少なくともいずれか一方が増加することで、これらの各装置の消費電力が増加する。その結果、これらの各装置が発熱し、レーダ装置1の温度が上昇することで、物体の導出精度が低下する場合がある。
【0024】
ベースバンド基板7は、AD(Analog to Digital)変換器(例えば、図2に示すAD変換器16)、および、信号処理装置(例えば、図2に示す信号処理装置10)を主に備えている。そして、信号処理装置10の一周期内の処理時間の増加、および、処理周期の短縮の少なくともいずれか一方が行われることで、信号処理装置10の消費電力が増加する。その結果、信号処理装置10が発熱し、レーダ装置1の温度が上昇することで、物体の導出精度が低下する場合がある。
【0025】
ケース8は、アンテナ基板3、アンテナシャーシ4、RFシャーシ5、RF基板6、および、ベースバンド基板7を収容する筐体であり、例えば金属で生成される。
【0026】
<2.ブロック図>
図2は、レーダ装置1のブロック図を主に示す図である。レーダ装置1は、例えば、車両(例えば、図11に示す車両19)に搭載され、車両19の周辺の他の車両などの物体に係る検知点を導出する。検知点の導出結果は、車両19の各部に制御信号を出力する車両制御装置(例えば、図2に示す車両制御装置100)に送信され、車両19のアクセル開度の調整、および、車両19のユーザが装着するシートベルトの引き締めなどの車両19の制御に用いられる。
【0027】
レーダ装置1は、信号処理装置10、信号生成部11、発振器12、送信アンテナ13、受信アンテナ14、ミキサ15、AD変換器16、および、内部温度センサ21を主に備えている。
【0028】
信号処理装置10は、送信アンテナ13から出力された送信波に対応する送信信号と、受信アンテナ14が受信した反射波に対応する受信信号とに基づいて、物体に係る検知点の角度(例えば、図11に示すレーダ装置1を搭載した車両19に対する検知点の角度)を導出する。また、信号処理装置10は検知点の角度以外にも車両19に対する検知点の距離および、車両19に対する検知点の相対速度を導出する。
【0029】
また、信号処理装置10は、後述する内部温度センサ21、および、車速センサ22の少なくも一のセンサから出力されるセンサ情報が所定条件を満たした場合、すなわちレーダ装置の内部温度が高温を示す温度(例えば、90℃以上)になった場合に、送信アンテナ13から出力される送信波の出力周期を所定周期よりも長い周期である特定周期に変更する制御を行う。そして、信号処理装置10は、センサ情報が所定条件を満たした場合に、検知点の導出処理方法を一の処理方法から他の処理方法へ変更する。出力周期の変更、および、導出処理方法の変更については後に詳述する。
【0030】
信号生成部11は、後述する送信制御部107の制御信号に基づいて、三角波状に電圧が変化する変調信号を生成する。
【0031】
発振器12は、信号生成部11で生成された変調信号に基づき所定の周波数帯の信号(例えば、76.5GHz)を周波数変調し、送信信号として送信アンテナ13に出力する。
【0032】
送信アンテナ13は、送信信号に対応する送信波を車両19の外部に出力する。レーダ装置1は送信アンテナ13a、および、送信アンテナ13bの2本の送信アンテナを有している。送信アンテナ13aと送信アンテナ13bとはアンテナパターン形状が互いに異なっている。そのため、後に詳述するように、送信アンテナ13aから出力される送信波(以下、「第1送信波」ともいう。)のビームパターンと、送信アンテナ13bから出力される送信波(以下、「第2送信波」ともいう。)のビームパターンとは異なるビームパターンとなる。
【0033】
また、送信アンテナ13a、および、13bは、後述する切替部131のスイッチングにより所定周期で発振器12との接続を切替られ、発振器12と接続された送信アンテナから送信波が車両19の外部に出力される。そのため、第1送信波の出力タイミングと、第2送信波の出力タイミングとは異なるタイミングとなる。
【0034】
切替部131は、発振器12と送信アンテナ13との接続を切替えるスイッチであり、送信制御部107の制御信号により送信アンテナ13a、および、送信アンテナ13bのいずれか一方の送信アンテナと発振器12とを接続する。
【0035】
受信アンテナ14は、送信アンテナ13から送信された送信波が検知点に反射した反射波を受信する複数のアレーアンテナである。詳細には、第1送信波が検知点に反射した反射波(以下、「第1反射波」ともいう。)を受信アンテナ14が受信する。そして、送信アンテナ13bから第1送信波とは異なるタイミングで出力された第2送信波が検知点に反射した反射波(以下、「第2反射波」ともいう。)を受信アンテナ14が受信する。本実施の形態では、受信アンテナ14a(ch1)、14b(ch2)、14c(ch3)、および、14d(ch4)の4本の受信アンテナを備えている。なお、受信アンテナ14a〜14dのそれぞれのアンテナは等間隔に配置されている。
【0036】
ミキサ15は、各受信アンテナごと(ミキサ15a〜15d)に設けられている。ミキサ15は、受信信号と送信信号とを混合する。そして、受信信号と送信信号との混合により送信信号と受信信号との差分のビート信号が生成される。ビート信号は、AD変換器16に出力される。
【0037】
AD変換器16は、アナログ信号であるビート信号を所定周期でサンプリングして、複数のサンプリングデータを導出する。サンプリングされたデータは量子化され、アナログデータのビート信号はデジタルデータに変換される。そして、AD変換器16は変換したデジタルデータを信号処理装置10に出力する。なお、AD変換器16もミキサ15と同様に各受信アンテナごと(AD変換器16a〜16d)に設けられている。
【0038】
信号処理装置10は、処理変更部101、フーリエ変換部102、ピーク抽出部103、角度演算部104、距離・相対速度演算部105、折り返し判定部106、および、送信制御部107の機能を主に備えている。以下、各機能について説明する。
【0039】
処理変更部101は、内部温度センサ21などからのセンサ情報が所定条件を満たした場合に、所定周期(例えば、40ms周期)で出力される第1送信波と、所定周期で出力される第2送信波との出力周期を所定周期から所定周期よりも長い特定周期(例えば、80ms周期)に変更する制御信号を送信制御部107に出力する。例えば、内部温度センサ21により検出されたレーダ装置1の内部温度が90℃を超える場合、送信アンテナ13a、および、送信アンテナ13bの送信波の出力周期を40msから80msに変更する制御信号を送信制御部107に出力する。
【0040】
また、処理変更部101は、センサ情報が所定条件を満たした場合に、送信アンテナ13aから第1送信波が出力された直後に送信アンテナ13bから出力する第2送信波の出力タイミングを、別の出力タイミングに変更する。例えば、送信アンテナ13aからの一の第1送信波の出力タイミングと次の第1送信波の出力タイミングとの略中間のタイミングで第2送信波を出力するように変更する制御信号を送信制御部107に出力する。
【0041】
さらに、処理変更部101は、センサ情報が所定条件を満たした場合に、第1送信波および第2送信波と、第1反射波および第2反射とに基づき検知点の角度を導出する導出処理(以下、「第1導出処理」ともいう。)に替えて、次に説明する導出処理に変更する。つまり、処理変更部101は、第1送信波と第1反射波とに基づく検知点の角度を導出し、第2送信波と第2反射波とに基づく検知点の角度を導出する導出処理(以下、第2導出処理」ともいう)に変更する。
【0042】
ここで、第2導出処理は、一周期の処理の中で、第1送信波および第2送信波と、第1反射波および第2反射波とに基づいて検知点を導出する第1導出処理と異なり、次のように検知点の導出を行う。つまり、一の周期で第1送信波と第1反射波とに基づく検知点の角度の導出処理を行い、一の周期の次の周期で第2送信波と第2反射波とに基づく検知点の角度の導出処理を行う。このように第1送信波および第1反射波と、第2送信波および第2反射波とに基づく検知点の角度の導出処理を別々の処理タイミングで行うことで、物体の角度の導出処理をほとんど遅延させることなく、レーダ装置1の発熱を抑制できる。
【0043】
また、処理変更部101は、第1導出処理から第2導出処理への変更に伴い、後述する折り返し判定部106による検知点が導出された角度に存在するか否かを判定する処理タイミングを変更する。これにより車両19の制御には影響がほとんどないように折り返し判定を行うタイミングを遅延させて、レーダ装置1の発熱を抑制できる。なお、折り返し判定部106の処理タイミングの変更の詳細については後述する。
【0044】
フーリエ変換部102は、AD変換器16から出力されたデジタルデータに対して高速フーリエ変換処理を行う。これにより、周波数を基準とした信号レベルを示す変換データが取得される。
【0045】
ピーク抽出部103は、フーリエ変換部102で変換されたデータの信号の中で信号レベルが所定の閾値を超える信号(以下、「ピーク信号」という。)を抽出する。
【0046】
角度演算部104は、ピーク信号の情報に基づき物体に係る検知点の角度を演算する。角度の演算は、各受信アンテナ14a〜14dにおける受信信号の位相差を用いて検知点の角度を推定する、例えば、ESPRITなどのアルゴリズムが用いられる。そして、相関行列の固有値、および、固有ベクトルに基づいて検知点の角度が演算される。
【0047】
距離・相対速度演算部105は、変換データ中のピーク情報に基づき周波数が上昇する区間におけるピークと周波数が下降する区間におけるピークとのペアリングを行い、ペアリングしたピーク周波数に基づいて検知点とレーダ装置1を搭載した車両19との距離、および、検知点と車両19との相対速度の情報を演算する。ここで、距離は次の(1)式、相対速度は次の(2)式により求められる。また、Rは距離、fupは周波数が上昇する区間におけるピーク信号の周波数、fdnは周波数が下降する区間におけるピーク信号の周波数、ΔFは送信波の変調幅(例えば、200MHz)、fmは変調周波数、fは中心周波数(例えば、76.5GHz)、cは送信波の伝搬速度である。
【0048】
【数1】

また、相対速度は次の数式により導出され、Vは相対速度を示す。
【0049】
【数2】

折り返し判定部106は、角度演算部104で演算された検知点の角度に当該検知点が存在するか否か、換言すれば検知点の角度に位相折り返しが生じているか否かを判定する。即ち、各受信アンテナにおける受信波の位相差を基に検知点の角度を推定する場合、受信波の位相差がn°の場合とn+360°の場合とを区別できず、どちらであってもn°と推定してしまう。
【0050】
例えば、受信波の位相差が360°の場合は検知点が自車両の正面から約47°の角度をもった位置に存在することになるが、角度演算部104での演算結果は0°、即ち自車両の正面に検知点が存在すると誤検出してしまう。そこで、この位相折り返しが生じているかを判定するために送信アンテナ13aから出力される第1送信波のビームパターンと、送信アンテナ13bから出力される第2送信波のビームパターンとを異なるビームパターンとしている。
【0051】
ビームパターンの違いにより同じ物体からの反射波であっても、物体の存在する角度に応じて第1反射波と第2反射波との信号レベルが異なる。このようにビームパターンの異なる複数の送信波に対応するそれぞれの反射波の信号レベル差に応じて、角度演算部104で演算された検知点の角度に位相折り返しが生じているかを判定し、その確かさを判定する。
【0052】
送信制御部107は、信号生成部11に変調信号を生成する制御信号を出力する。つまり、処理変更部101の処理変更状況に応じて後述する図3、図4、図5、および、図6に示す第1送信波および第2送信波の出力周期等を制御する。なお、第1送信波および第2送信波の出力周期は処理変更部101の制御信号により変更される。また、送信制御部107は、切替部131の送信アンテナ13の切替を制御する。つまり、発振器12から出力される送信信号を送信波として送信アンテナ13aおよび13bのうちのいずれの送信アンテナから車両19の外部に送信するかを決定する。
【0053】
内部温度センサ21は、レーダ装置1の内に設けられたセンサである。内部温度センサ21はレーダ装置1内部の各装置の温度を検出するセンサであり、レーダ装置1内部の温度情報を信号処理装置10に出力する。
【0054】
車速センサ22は、車両19に設けられたセンサである。車速センサ22は車両19の走行速度を示す車速パルスをレーダ装置1の信号処理装置10に出力する。
【0055】
車両制御装置100は、レーダ装置1からの検知点の角度、距離、および、相対速度の情報を受信し、受信した情報に応じて車両19のアクセル開度の調整、および、車両19のユーザが装着するシートベルトの引き締めなどを行う制御信号を車両各部に出力する。
【0056】
<3.第1導出処理に関するタイムチャート>
図3は、第1導出処理に関するタイミングを示すタイムチャートである。図3は、送信アンテナ13a、および、送信アンテナ13bの送信波の出力開始および出力終了のタイミングと、受信アンテナ14の反射波の受信開始および受信終了のタイミングと、信号処理装置10の物体導出処理の開始および終了のタイミングとを示すものである。
【0057】
より詳細には、図3の信号S1は、所定周期T1(例えば、40ms周期)の信号であり、第1送信波の出力開始および出力終了のタイミングを示す信号である。また、信号S2は、信号S1と同じ所定周期T1の信号であり第2送信波の出力開始および出力終了のタイミングを示す信号である。また、信号S3は、信号S1およびS2と同じ所定周期T1の信号であり、受信アンテナ14の反射波の受信開始および受信終了のタイミングを示す信号である。さらに、信号S4は信号S1〜S3と同じ所定周期T1の信号であり信号処理装置10の物体導出処理の開始および終了のタイミングを示す信号である。以下、各信号の処理タイミングについて具体的に説明する。
【0058】
信号S1は時間t1でON状態となり、時間t1の後の時間t2でOFF状態となる。つまり、第1送信波の出力が時間t1で開始され、時間t2で終了する。また、信号S1は時間t6で2回目のON状態となり、時間t6の後の時間t7でOFF状態となる。このように信号S1は時間t1から時間t6の所定周期(例えば40ms周期)T1でON、OFFの状態を繰り返す。
【0059】
信号S2は時間t2でON状態となり、時間t2の後の時間t3でOFF状態となる。つまり、第2送信波の出力が時間t2で開始され、時間t3で終了する。また、信号S2は時間t7で2回目のON状態となり、時間t7の後の時間t8でOFF状態となる。このように信号S2は時間t2から時間t7の所定周期(例えば40ms周期)T1でON、OFFの状態を繰り返す。
【0060】
信号S3は時間t1でON状態となり、時間t3の後の時間t4でOFF状態となる。つまり、受信アンテナ14の第1反射波および第2反射波の受信が時間t1で開始され、時間t4で終了する。また、信号S3は時間t6で2回目のON状態となり、時間t8の後の時間t9でOFF状態となる。このように信号S3は時間t1から時間t6の所定周期(例えば40ms周期)T1でON、OFFを繰り返す。
【0061】
信号S4は時間t1でON状態となり、時間t4の後の時間t5でOFF状態となる。つまり、第1送信波および第2送信波と、第1反射波および第2反射波とに基づく検知点の角度、距離、相対速度の導出、および、第1反射波および第2反射波とに基づく折り返し判定の処理が時間t2で開始され、時間t5で終了する。これは、折り返し判定の処理は、第1反射波および第2反射波の2種類の反射波に基づいて行われるためである。また、信号S4は時間t6で2回目のON状態となり、時間t9の後の時間t10でOFF状態となる。このように信号S4は時間t1から時間t6の所定周期(例えば40ms周期)T1でON、OFFの状態を繰り返す。
【0062】
<4.第1導出処理に関するFM−CW方式>
次に、図3を用いて説明した処理をFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式に基づいて図4を用いて説明する。なお、本実施形態では、FM−CW方式を例に説明を行うが、周波数が上昇する区間と周波数が下降する区間のような複数の区間を組み合わせて検知点の角度等を導出する方式であれば、FM−CW方式に限定されない。
【0063】
図4は、第1導出処理に関するFM−CW方式の信号を示す図である。また、図4は、縦軸を周波数[単位GHz]、横軸を時間[単位ms]とする図である。図中の送信信号TX1、および、送信信号TX2は、中心周波数をf(例えば、76.5GHz)として、一の所定周波数(例えば76.4GHz)から他の所定周波数(例えば、76.6GHz)まで上昇した後に、他の周波数から一の所定周波数まで下降をするように200MHzの間で一定の変化を繰り返す。つまり、一周期の中で一の所定周波数から他の所定周波数まで周波数が上昇する区間(以下、「UP区間」ともいう。)と、他の所定周波数から一の所定周波数まで下降する区間(以下、「DOWN区間」ともいう。)がある。
【0064】
図4に示す送信信号TX1(時間t1から時間t2)は、所定周期の信号S1の時間t1から時間t2までの出力に対応する信号である。送信信号TX2(時間t2から時間t3)は、所定周期の信号S2の時間t2から時間t3までの出力に対応する信号である。
【0065】
そして、所定周期の第1送信波が出力される時間t1から出力が終了される時間t2までの間に、一のUP区間と一のDOWN区間の組み合わせが2回含まれる。したがって、一のUP区間と一のDOWN区間とをFM−CW方式の1周期とした場合、1回の第1送信波の出力で2周期分の周波数変調が行われていることとなる。また、1回の第2送信波の出力で2周期分の周波数変調が行われていることとなる。
【0066】
また、受信信号RX(時間t1から時間t4)は、所定周期の信号S3の時間t1から時間t4の出力に対応する信号である。そして、送信信号TX3(時間t6)は、所定周期の信号S1の時間t6からの出力に対応する信号である。また、受信信号RXa(時間t6)は、所定周期の信号S3の時間t6からの出力に対応する信号である。
【0067】
なお、図4に示すように信号処理装置10により時間t1から時間t5まで第1送信波および第2送信波と、第1反射波および第2反射波とに基づき、検知点の角度、距離、相対速度の導出が行われる。すなわち、UP区間およびDOWN区間の第1送信波および第1反射波の2周期分と、UP区間およびDOWN区間の第2送信波および第2反射波の2周期分と(計4周期分)に基づいて、検知点の角度、距離、相対速度の導出が行われる。さらに、時間t2から時間t5の間で第1反射波および第2反射波とに基づき折り返し判定の処理が行われる。
【0068】
<5.第2導出処理に関するタイムチャート>
図5は、第2導出処理に関するタイミングを示すタイムチャートである。第1導出処理が第2導出処理に変更されたことに伴い、図3に示した第1導出処理における送信アンテナ13a、送信アンテナ13b、受信アンテナ14、および、信号処理装置10の処理タイミングが処理変更部101の制御信号により変更される。
【0069】
図5の信号S11は、信号S1の所定周期T1を2倍の周期とした特定周期T2(80ms周期)の信号である。つまり、所定周期T1よりも長い特定周期T2で第1送信波が出力される。
【0070】
また、信号S12は信号S2の所定周期T1を2倍の周期とした特定周期T2の信号である。ここで、信号S12は、信号S11の一周期の略中間の位置でON状態となる。つまり、第1送信波の一の出力タイミング(時間t1)と次の出力タイミング(時間t17)との略中間のタイミング(時間t6)で第2送信波が出力される。
【0071】
また、信号S13は信号S3の周期と同じ所定周期T1の信号である。ここで、信号S3は一の周期中で第1反射波および第2反射波を受信するため、一の周期中でON状態となる時間が時間t1から時間t4となる。これに対して、信号S13は一の周期で第1反射波を受信し、一の周期の次の周期で第2反射波を受信するため、一の周期中で信号S13がON状態となる時間は、信号S3の場合と比べて短くなる。具体的には信号S13は、時間t1から時間t4よりも前の時間の時間t12までON状態となり、時間t12から時間t6までOFF状態となる。
【0072】
さらに、信号S14は信号S4の周期と同じ周期の信号である。ここで、信号S4は一の周期中で第1送信波および第2送信波と、第1反射波および第2反射波とに基づいて検知点の角度、距離、相対速度を導出するとともに折り返し判定を行う。このため、一の周期中でON状態となる時間が時間t1から時間t5となる。これに対して、信号S14は一の周期で第1送信波と第1反射波とに基づく検知点の角度を導出する。そして、一の周期の次の周期で第2送信波と第2反射波とに基づく検知点の角度を導出する。このため、一の周期中で信号S14がON状態となる時間は信号S4の場合と比べて短くなる。
【0073】
具体的には信号S14は時間t1から時間t5よりも前の時間の時間t13までON状態となり、時間t13から時間t6までOFF状態となる。これにより、物体の角度の導出処理はほとんど遅延させることなく、レーダ装置の発熱を抑制できる。また、処理変更部101が第1送信波および第2送信波の出力周期を2倍の周期に変更するものの、物体導出処理に関する処理周期は変更しないため、信号処理装置10の処理負荷は増加することはない。また、信号処理装置10の物体導出の処理速度をほとんど低下させることなく、レーダ装置1の発熱を抑制できる。
【0074】
次に、信号S14における折り返し判定は、第1反射波と第2反射波とが受信アンテナ14に受信されたことにより行われる。そして、第1導出処理における信号S4では、一の周期中の信号処理で第1反射波および第2反射波が受信されるため、一の周期中で折り返し判定部106による折り返し判定が行われる。これに対して、第2導出処理における信号S14では、一の周期(奇数周期)で第1反射波が受信され、次の周期(偶数周期)で第2反射波が受信される。このため、折り返し判定部106が折り返し判定を行うのは、信号S14における偶数周期中のON状態の場合である。例えば、信号S14が時間t6でON状態となり、時間t16でOFF状態となるまでの間に折り返し判定が行われる。これにより、車両19の制御には影響がほとんどないように折り返し判定を行うタイミングを遅延させて、レーダ装置1の発熱を抑制できる。
【0075】
以下、各信号の処理タイミングについて具体的に説明する。信号S11は時間t1でON状態となり、時間t1の後の時間t2でOFF状態となる。つまり、送信アンテナ13aからの第1送信波の出力が時間t1で開始され、時間t2で終了する。また、信号S11は時間t17で2回目のON状態となり、時間t17の後の時間t18でOFF状態となる。このように信号S1は時間t1から時間t17の特定周期(80ms周期)T2でON、OFFの状態を繰り返す。
【0076】
信号S12は時間t6でON状態となり、時間t6の後の時間t14でOFF状態となる。つまり、送信アンテナ13bからの第2送信波の出力が時間t6で開始され、時間t14で終了する。また、信号S12は時間t21で2回目のON状態となり、時間t21の後の時間t22でOFF状態となる。このように信号S2は時間t6から時間t21の特定周期T2でON、OFFの状態を繰り返す。
【0077】
信号S13は時間t1でON状態となり、時間t2の後の時間t12でOFF状態となる。つまり、受信アンテナ14の第1反射波の受信が時間t1で開始され、時間t12で終了する。また、信号S13は時間t6で2回目のON状態となり、時間t14の後の時間t15でOFF状態となる。つまり、受信アンテナ14の第2反射波の受信が時間t6で開始され、時間t15で終了する。このように信号S3は時間t1から時間t6の所定周期(40ms周期)T1でON、OFFを繰り返す。
【0078】
信号S14は時間t1でON状態となり、時間t12の後の時間t13でOFF状態となる。つまり、時間t1から時間t13の間で、第1送信波と第1反射波に基づく検知点の角度、距離、相対速度が導出される。また、信号S14は時間t6で2回目のON状態となり、時間t15の後の時間t16でOFF状態となる。つまり、時間t6から時間t16の間で第2送信波と第2反射波に基づく検知点の角度、距離、相対速度が導出される。また、時間t6から時間t16の間で第1反射波(直前の時間t1から時間t12の間で受信したもの)および第2反射波(今回の時間t6から時間t15の間で受信したもの)とに基づき折り返し判定の処理が行われる。このように信号S14は時間t1から時間t6の所定周期T1でON、OFFの状態を繰り返す。
【0079】
<6.第2導出処理に関するFM−CW方式>
次に、図5を用いて説明した処理をFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式に基づいて図6を用いて説明する。
【0080】
図6は、第2導出処理に関するFM−CW方式の信号を示す図である。図6は、第1導出処理に関するFM−CW方針の信号を示す図として説明した図4と一部が異なり、他の部分は同じ内容を示す図面である。図6と図4との主な相違点は、送信信号の出力タイミングである。
【0081】
図6に示す送信信号TX11(時間t1から時間t2)は、特定周期の信号S11の時間t1から時間t2までの出力に対応する信号である。送信信号TX12(時間t6から時間t14)は、特定周期の信号S12の時間t6から時間t14までの出力に対応する信号である。ここで、時間t6は図4で示した所定周期の第2送信波の出力が開始される時間t2よりも後の時間であり、時間t14は図4で示した所定周期の第2送信波の出力が終了する時間t3よりも後の時間である。このように送信信号TX11と送信信号TX12とが時間的に連続して出力されず、送信信号TX11が出力された後、切替部131により送信アンテナ13aから送信アンテナ13bに切替えられ、所定時間の間隔をあけて送信信号TX12が出力される。
【0082】
また、受信信号RX1(時間t1から時間t12)は、所定周期の信号S13の時間t1から時間t12までの出力に対応する信号である。また、受信信号RX2(時間t6から時間t15)は、所定周期の信号S13の時間t12から所定時間の間隔をあけて時間t6から時間t15までの出力に対応する信号である。
【0083】
また、信号処理装置10により時間t1から時間t13まで特定周期の第1送信波と第1反射波に基づき検知点の角度、距離、相対速度が導出される。すなわち、UP区間とDOWN区間の第1送信波および第1反射波の2周期分の送信波および受信波に基づいて、検知点の角度、距離、相対速度が導出される。
【0084】
また、時間t6から時間t16の間で特定周期の第2送信波と第2反射波に基づき検知点の角度、距離、相対速度が導出される。すなわち、UP区間とDOWN区間の第2送信波および第2反射波の2周期分の送信波および受信波に基づいて、検知点の角度、距離、相対速度が導出される。
【0085】
なお、第1導出処理がUP区間およびDOWN区間の4周期分で物検知点の導出処理を行っていたのに対して、第2導出処理では、UP区間およびDOWN区間の2周期分で検知点の導出処理を行う。このため、第1導出処理と比べて検知点の角度等の導出の精度が若干低下する。
【0086】
しかし、第1導出処理から第2導出処理に切り替わるのは、レーダ装置1の内部温度が高いときである。そして、このようにレーダ装置1の内部温度が高くなるのは、例えば、車両19が停止しているときであり、車両19の停止中は走行中ほど高い検知点の導出精度を要求されるものではない。そのため、第1導出処理から第2導出処理に切替えて、レーダ装置1による検知点の導出の精度が若干低下しても実用上は問題がない。
【0087】
さらに、時間t6から時間t16の間で第1反射波(直前の時間t1から時間t12の間で受信したもの)および第2反射波(今回の時間t6から時間t15の間で受信したもの)とに基づく折り返し判定の処理が行われる。
【0088】
<7.処理フローチャート>
図7は、信号処理装置10の処理フローチャートである。まず、ステップS101にて処理変更部101での処理を変更するための所定条件、即ちレーダ装置の内部温度が所定の高温状態になっているか否かを判断する。即ち、信号処理装置10の処理変更部101は、レーダ装置1の内部温度センサ21、および、車両19に設けられた車速センサ22から出力されたセンサ情報のうち少なくとも一のセンサ情報が所定条件を満たした場合(ステップS101がYes)は、ステップS102の処理に進む。
【0089】
ここで、センサ情報を出力するセンサは、例えば、内部温度センサ21、および、車速センサ22であり、内部温度センサ21はレーダ装置の内部温度を直接検出するものであり、車速センサ22はレーダ装置の内部温度を間接的に検出する。これらのセンサのいずれか一のセンサのセンサ情報を用いてもよいし、複数を組み合わせてもよい。また、内部温度センサ21のセンサ情報が所定条件を満たす場合とは、例えばレーダ装置1の内部温度が90℃を超える場合である。また、車速センサ22のセンサ情報が所定条件を満たす場合とは、例えば車両19の走行速度が20km/hを下回る場合である。
【0090】
ここで、レーダ装置の内部温度を検出するために車速を使う理由について説明する。車両が走行中の間は、空気の流れによりレーダ装置が空冷されるため大きな温度上昇は起きないが、車両の走行状態が低速になったり停止したりすると空冷効果がなくなるため、レーダ装置の温度が上昇する。従って、車速が低速状態を示す例えば20km/h以下になるとレーダ装置の内部温度が上昇することを間接的に検出できる。尚、車速センサ22を条件判定に使う場合は、車速が低速になったからといって、直ちにレーダ装置の内部温度が上昇するものではないため、20km/h以下となっている継続時間も条件に含めることが望ましい。例えば、20km/h以下の状態が1分間続いた場合に所定条件を満たすと判断することが望ましい。
【0091】
ステップS102では、処理変更部101の制御信号により送信制御部107が第1送信波および第2送信波の出力周期を所定周期から特定周期に変更して、ステップS103の処理に進む。なお、センサ情報が所定条件を満たさない場合(ステップS101がNo)は、第1送信波および第2送信波の出力周期を所定周期のまま変更することなく、ステップS103の処理に進む。
【0092】
ステップS103では、所定周期および特定周期のいずれかの周期で、送信アンテナ13aが第1送信波を出力し、送信アンテナ13bが第2送信波を出力して、ステップS104の処理に進む。
【0093】
ステップS104では、第1送信波および第2送信波が物体に反射した第1反射波および第2反射波の少なくも一の反射波を受信アンテナ14が受信して、ステップS105の処理に進む。
【0094】
ステップS105では、受信アンテナ14で受信した第1反射波および第2反射波の少なくも一の反射波に対応する受信信号と第1送信波および第2送信波の少なくとも一の送信波に対応する送信信号とをミキサ15が混合し、送信信号と受信信号との差分であるビート信号を生成してステップS106の処理に進む。
【0095】
ステップS106では、アナログ信号であるビート信号をAD変換器16がAD変換を行い、デジタルデータに変換してステップS107の処理に進む。
【0096】
図8に示すステップS107では、デジタルデータに対してフーリエ変換部102が高速フーリエ変換処理を行って変換データを生成して、ステップS108の処理に進む。
【0097】
ステップS108では、高速フーリエ変換した変換データの信号のうち所定の閾値を超えるピーク信号をピーク抽出部103が抽出して、ステップS109の処理に進む。
【0098】
ステップS109では、相関行列の固有値、および、固有ベクトルに基づいて検知点の角度を演算して、ステップS110の処理に進む。
【0099】
ステップS110では、変換データ中のピーク周波数に基づいて検知点とレーダ装置1を搭載した車両19との距離、および、検知点とレーダ装置1を搭載した車両19との相対速度を距離・相対速度演算部105が演算して、ステップS111の処理に進む。
【0100】
なお、信号処理装置10で行われる処理のうちステップS107からステップS110の処理は、ステップS101における所定条件を満たさない場合(ステップS101がNo)は、第1導出処理に対応した処理として行われ、ステップS101における所定条件を満たした場合(ステップS101がYes)は、第2導出処理に対応した処理として行われる。
【0101】
図9に示すステップS111では、処理変更部101により第1送信波および第2送信波の出力周期が所定周期から特定周期に変更されている場合(ステップS111がYes)は、ステップS112の処理に進む。
【0102】
ステップS112では、信号処理装置10の処理周期が偶数周期の場合、即ち送信アンテナ13bによる送信波と受信波により検知点の情報を算出する処理を行なう場合(ステップS112がYes)ステップS113の処理に進み、折り返し判定部106が折り返し判定の処理を行った後、ステップS115の処理に進む。なお、信号処理装置10の処理周期が奇数周期の場合、即ち送信アンテナ13aによる送信波と受信波により検知点の情報を算出する処理を行なう場合(ステップS112がNo)、折り返し判定部106は折り返し判定は行わずに、ステップ115の処理に進む。
【0103】
ステップS111に戻り、処理変更部101により第1送信波および第2送信波の出力周期が所定周期のままの場合(ステップS111がNo)はステップS114の処理に進み、折り返し判定部106は折り返し判定処理の処理を行った後、ステップS115の処理に進む。
【0104】
ステップS115では、信号処理装置10が検知点の情報(距離、相対速度、角度)を車両制御装置100に出力する。これにより、検知点に対応する物体の位置等に応じた車両制御を行うことができる。
<8.角度演算処理>
次に、角度演算部104による角度演算処理について図10を用いて説明する。図10は、物体に係る検知点の角度スペクトラムを示す図である。図7は縦軸を信号レベル[単位dBv]、横軸を角度[単位deg]とする図である。スペクトラムUSはUP区間における検知点の角度を示すものであり、閾値shを超えた信号である角度ピークPhu1、および、角度ピークPhu2は相関行列の固有値、および、固有ベクトルから導出された検知点の角度を示す。
【0105】
また、スペクトラムDSはDOWN区間における検知点の角度を示すものであり、閾値shを超えた信号である角度ピークPhd1、および、角度ピークPhd2は相関行列の固有値、および、固有ベクトルから導出された検知点の角度を示す。
【0106】
次に、角度演算部104はUP区間の角度スペクトラムUSと、DOWN区間の角度スペクトラムDSとを信号レベルおよび角度に基づきペアリングする。そして、角度演算部104は、角度ピークPhu1およびPhd1の信号レベル、および、角度が略同一のピークであるため、角度ピークPhu1とPhd1とをペアリングする。また、角度演算部104は角度ピークPhu2およびPhd2の信号レベル,および,角度が略同一のピークであるため、角度ピークPhu2とPhd2とをペアリングする。
【0107】
その結果、次の(3)式により角度演算部104は2つの角度ピークの平均を導出して、2つの検知点のそれぞれの角度を演算する。これによりレーダ装置1を搭載した車両19に対する検知点の角度を正確に取得できる。なお、数式のθmは検知点の角度を示し、θupは角度ピークphu1(phu2)に対応する角度を示す。また、θdnは角度ピークPhd1(Phd2)に対応する角度を示す。
【0108】
【数3】

<9.折り返し判定処理>
次に折り返し判定処理について、図11、および、図12を用いて説明する。図11は第1送信波、および、第2送信波のビームパターンを示す図である。なお、以下においては、図中に示すxy座標軸を用いて、方向を適宜示す。このxy座標軸は車両19に対して相対的に固定されるものであり、車両19の車幅方向がx軸方向、車両19の進行方向がy方向にそれぞれ対応する。詳細には、車両19の左方向が−x方向、車両19の右方向が+x方向となる。また車両19が前進する方向が+y方向、車両19が後退する方向が−y方向となる。
【0109】
図11に示すビームパターンBSは送信アンテナ13aから出力される第1送信波のビームパターンである。ビームパターンBSは、車両19の車幅方向(x軸方向)の車体の略中心から車両19の直進方向に伸びる中心軸CLを中心に左右対称の破線で示す領域(A領域)を有する。
【0110】
また、ビームパターンBWは、送信アンテナ13bから出力される第2送信波のビームパターンである。ビームパターンBWは、ビームパターンBSと同様に中心軸CLに対して左右対称の一点鎖線で示す領域を有する。なお、ビームパターンBWの領域は、A領域と重なる領域以外の車両右側(+x方向)の領域をB領域とし、A領域と重なる領域以外の車両左側(−x方向)の領域をC領域とする。また、ビームパターンBWはビームパターンBSと比べてブロードなビームパターンとなっている。このようにビームパターンが異なるのは、送信アンテナ13aのアンテナパターンと送信アンテナ13bのアンテナパターンとが異なるアンテナパターンであるためである。
【0111】
図12は、2種類のビームパターンにおける受信レベルを示す図である。図12は縦軸を信号レベル[単位dBv]、横軸を角度[単位deg]とする図である。また、横軸の中心位置を0度とし右側を+の角度、左側を−の角度として示している。さらに、±5degを境として、図11に示した各ビームパターンの領域に対応している。つまり、+5degから−5degの範囲がA領域に対応している。また、+5degを超える角度範囲がB領域に対応している。さらに、−5degを下回る角度範囲がC領域に対応している。
【0112】
そして、検知点がA領域内に存在する場合は、ビームパターンBSに対応する第1送信波を出力したとき、第1反射波の信号レベルは、A領域に対応する受信信号RXSに示すレベルとなる。また、ビームパターンBWに対応する第2送信波を出力したとき、第2反射波の信号レベルは、A領域に対応する受信信号RXWに示すレベルとなり、受信信号RXSの信号レベルが受信信号RXWよりも大きくなる。この場合、折り返し判定部106は、検知点が角度演算部104が導出した角度(A領域内の角度)に存在すると判定する。
【0113】
ここで、一の角度に検知点が存在するとして導出されたにもかかわらず、実際には検知点が一の角度に存在しない理由について再度詳細に説明する。例えば、複数のアレーアンテナで検知点からの反射波を受信する場合、基準となる一のアンテナ(以下、「基準アンテナ」ともいう。)と隣接する他のアンテナ(以下、「隣接アンテナ」ともいう。)とでは検知点の存在する角度に応じて反射波の受信するタイミングの時間差(位相差)が生じる。
【0114】
レーダ装置1を搭載した車両19の真正面(図11に示す中心軸CL上の位置)を0度とし、車両19の右側(+x方向)を+(プラス)の角度とし、左側(−x方向)を−(マイナス)の角度とすると、プラスおよびマイナスのいずれかの角度の値が大きいほど、基準アンテナに対する隣接アンテナの反射波の位相差が大きくなる。そして、位相差が360度を超えた場合、角度演算部104が、位相差が360度を下回る場合の検知点の角度と、位相差が360度を上回る場合の角度とを同じ角度に存在する検知点として導出する場合がある。
【0115】
例えば、基準アンテナに対する隣接アンテナの位相差が60度の場合には車両19に対する検知点の角度が+5degの図11に示すA領域内に存在すると仮定する。この場合に、基準アンテナに対する隣接アンテナの位相差が420度のときは、車両19に対する検知点の角度は+5degよりも大きい角度(例えば,+30deg)となり、図11に示すB領域内に存在することとなる。しかし、位相が360度を超えると基準アンテナに対する隣接アンテナの位相差420度が、位相差60度として演算され、B領域に存在する検知点がA領域に存在するとして導出される。このため、検知点がA領域の角度(例えば、+5deg)に存在するとして導出されたにもかかわらず、実際には検知点がA領域の角度に存在せずに、B領域の角度(例えば、+30deg)に存在する。
【0116】
図12の説明に戻り、検知点がB領域内に存在する場合は、第1反射波の信号レベルおよび、第2反射波の信号レベルは、B領域に対応する受信信号RXSおよび受信信号RXWに示すレベルとなる。そして、受信信号RXSの信号レベルは受信信号RXWよりも小さくなる。この場合、仮に角度演算部104が当該検知点の存在する角度をA領域の角度と導出したとしても、折り返し判定部106は、検知点が角度演算部104が導出した角度(A領域の角度)ではなく、B領域の角度に存在する検知点であると判定する。
【0117】
また、検知点がC領域内に存在する場合は、第1反射波の信号レベルおよび、第2反射波の信号レベルは、C領域に対応する受信信号RXSおよび受信信号RXWに示すレベルとなる。そして、受信信号RXSの信号レベルは受信信号RXWよりも小さくなる。この場合、仮に角度演算部104が当該検知点の存在する角度をA領域の角度と導出したとしても、折り返し判定部106は、検知点が角度演算部104が導出した角度(A領域内の角度)ではなく、C領域の角度に存在する検知点であると判定する。このように折り返し判定部106は、第1反射波に基づく信号レベルと、第2反射波に基づく信号レベルとの信号レベル差に応じて、角度に検知点が存在するか否かの判定を行う。
【0118】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。なお、上記実施の形態で説明した形態、および、以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0119】
上記実施の形態において、レーダ装置1は、車両19に搭載する以外の各種用途(例えば、飛行中の航空機および航行中の船舶の監視の少なくともいずれか1つ)に用いてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態において、レーダ装置1は、複数のアレーアンテナを備え、アンテナの位置を固定として、検知点の角度を電気的に導出する電子スキャンレーダ装置について説明したが、電子スキャンレーダ装置以外にもアンテナの位置を動的い変化させて検知点の角度を導出するメカスキャンレーダ装置であってもよい。
【0121】
また、上記実施の形態において、送信アンテナを2本、受信アンテナを4本として説明しているが、各アンテナの本数がこれ以外の本数でもよく、例えば、送信アンテナが3本、受信アンテナが5本であってもよい。つまり、少なくとも送信アンテナが2本以上であればよい。
【0122】
また、上記実施の形態において、レーダ装置1は、受信アンテナ14と送信アンテナ13とをそれぞれ独立に設けているが、受信アンテナが送信アンテナを兼ねるようにしてもよい。この場合、各アンテナは送信波を送信した直後に受信状態に切り替わり、送信波が物体に反射した反射波を受信することが可能となる。
【0123】
また、上記実施の形態において、レーダ装置1は、受信アンテナ14ごとに専用の処理回路(ミキサ15、および、AD変換器16)を設けてもよいが、全受信アンテナによる受信信号をまとめて処理する回路を設けてもよい。この場合、時分割で処理回路が対応する受信アンテナ14を受信アンテナ14aから14dに順次切替える制御が必要となるが、レーダ装置1の回路構成をコンパクトにできる。
【0124】
また、上記実施の形態において、第1送信波のビームパターンBSと第2送信波のビームパターンBWについて説明したが、それぞれのビームパターンの形状が異なれば、各送信アンテナのビームパターンは上記実施の形態で説明したビームパターン以外でもよい。換言すれば、アンテナのアンテナパターンを上記実施の形態のビームパターンに対応するアンテナパターン以外のアンテナパターンとしてもよい。
【0125】
また、上記実施の形態において、図5を用いて説明した第2導出処理に関する信号S11およびS12の周期を所定周期T1の2倍の周期の周期T2(80ms周期)としたが、周期T2は80ms以外の周期であってもよい。つまり、所定周期T1の2倍以外の周期で所定周期T1よりも長い周期であればよい。さらに、信号S13の周期を所定周期T1(40ms)としたが、40ms以外の周期であってもよい。この場合、信号S11および信号S12の周期に応じて、信号S13の周期の長さを調整してもよい。また、信号S14の周期を所定周期T1(40ms)としたが、40ms以外の周期であってもよい。この場合、信号S11および信号S12の周期に応じて、信号S14の周期の長さを調整してもよい。
【0126】
また、上記実施の形態において、第2送信波を出力する送信アンテナ13bの送信波の出力タイミングを別の出力タイミングに変更する例として、送信アンテナ13aからの一の第1送信波の出力タイミングと次の第1送信波が出力されるタイミングとの略中間のタイミングで送信するように変更する制御信号を送信制御部107に出力することについて述べた。これ以外にも送信アンテナ13aからの一の第1送信波の出力タイミングと次の第1送信波が出力されるタイミングの間であれば、一の第1送信波の出力タイミングと次の第1送信波が出力されるタイミングの略中間のタイミング以外で第2送信波を出力してもよい。
【0127】
また、上記実施の形態において、第1送信波および第2送信波の出力周期等を変更する所定条件として、内部温度センサ21、および、車速センサ22の少なくとも一のセンサ情報が所定条件を満たした場合であることについて述べたが、レーダ装置の内部温度を推定できるものであれば他のセンサを用いてもよい。例えば、これ以外の所定条件として、車両19に設けられた温度センサが検出した外気温を条件としてもよい。この場合例えば、温度センサが検出した外気温が30度を超える場合に、処理変更部101の所定条件を満たすとしてしてもよい。
【0128】
さらに、所定条件を満たすか否かの判断を、処理変更部101が車両19および車両19に備えられた装置から得られる情報を用いて行ってもよい。例えば、処理変更部101が車両19の走行する時間帯、天候、車両19に搭載されたナビゲーション装置からの出力情報、および、車両19のライトの点灯状態のいずれか一の条件により判断してもよい。
【0129】
そして、時間帯に対して所定条件を満たすか否かの判断は、昼間は夜間と比べて外気温が高く明るいため、ドライバーの視界の見通しも良い。そのため、昼間はレーダ装置1の内部温度が高いと推定して第1送信波および第2送信波の出力周期を特定周期とし、第2導出処理で検知点を導出するように変更してもよい。これに対して、夜間は外気温が下がり暗いためドライバーの視界の見通しも昼間に比べて悪くなる。そのため、夜間はレーダ装置1の内部温度が昼間ほどは高くならないため第1送信波および第2送信波の出力周期を所定周期とし、第1導出処理で検知点を導出するようにしてもよい。
【0130】
また、夜間はドライバーの見通しも悪くなるため、物体の検出精度を低下させないように第2導出処理への切替えを禁止して、第1導出処理により検知点を導出するようにしてもよい。
【0131】
また、天候に対して所定条件を満たすか否かの判断は、雨および雪のいずれかの天候の場合は、ドライバーの視界の見通しも悪くなるため、第1送信波および第2送信波の出力周期を所定周期とし、第1導出処理で検知点を導出するようにしてもよい。つまり、雨および雪のいずれかの天候の場合はドライバーの見通しも悪くなるため、物体の検出精度を低下させないように第2導出処理への切替えを禁止して、第1導出処理により検知点を導出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1・・・・・レーダ装置
10・・・・信号処理装置
11・・・・信号生成部
12・・・・発振器
13・・・・送信アンテナ
14・・・・受信アンテナ
15・・・・ミキサ
16・・・・AD変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に係る検知点の少なくとも角度を導出するレーダ装置であって、
所定周期で第1送信波を出力する第1送信手段と、
前記所定周期で第2送信波を前記第1送信波を出力するタイミングと異なるタイミングで出力する第2送信手段と、
前記第1送信波が前記検知点に反射した第1反射波と、前記第2送信波が前記検知点に反射した第2反射波とを受信する受信手段と、
前記第1送信波および前記第2送信波と、前記第1反射波および前記第2反射波とに基づき前記検知点の角度を導出する第1導出処理を行う導出手段と、
を備え、
前記第1送信手段は、所定条件を満たした場合に、前記所定周期よりも長い周期である特定周期で前記第1送信波を出力し、
前記第2送信手段は、前記所定条件を満たした場合に、前記特定周期で前記第2送信波を出力するとともに、前記特定周期で送信される第1送信波の一の出力タイミングと次の出力タイミングとの略中間のタイミングで前記第2送信波を出力し、
前記導出手段は、前記所定条件を満たした場合に前記第1導出処理に替えて、前記第1送信波と前記第1反射波とに基づく前記検知点の角度を導出し、かつ、前記第2送信波と前記第2反射波とに基づく前記検知点の角度を導出する第2導出処理を行うこと、
を特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
前記特定周期は前記所定周期の2倍の周期であること、
を特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーダ装置において、
前記第1送信波のビームパターンは、前記第2送信波のビームパターンと異なるビームパターンであって、
前記導出手段は、前記第1反射波の信号レベルと、前記第2反射波の信号レベルとの信号レベル差に応じて、前記角度に前記検知点が存在するか否かを判定する折り返し判定を行うものであって、前記第1導出処理を行う場合は、前記所定周期内に前記受信手段により受信される前記第1反射波と第2反射波とに基づき前記折り返し判定を行い、前記第2導出処理を行う場合は、前記特定周期内に前記受信手段により受信される前記第1反射波と第2反射波とに基づき前記折り返し判定を行うこと、
を特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
物体に係る検知点の少なくとも角度を導出する物体導出方法であって、
(a)所定周期で第1送信波を出力する工程と、
(b)前記所定周期で第2送信波を前記第1送信波を出力するタイミングと異なるタイミングで出力する工程と、
(c)前記第1送信波が前記検知点に反射した第1反射波と、前記第2送信波が前記検知点に反射した第2反射波とを受信する工程と、
(d)前記第1送信波および前記第2送信波と、前記第1反射波および前記第2反射波とに基づき前記検知点の角度を導出する第1導出処理を行う工程と、
を備え、
前記工程(a)は、所定条件を満たした場合に、前記所定周期よりも長い周期である特定周期で前記第1送信波を出力し、
前記工程(b)は、前記所定条件を満たした場合に、前記特定周期で前記第2送信波を出力するとともに、前記特定周期で送信される第1送信波の一の送信タイミングと次の送信タイミングとの略中間のタイミングで前記第2送信波を出力し、
前記工程(d)は、前記所定条件を満たした場合に前記第1導出処理に替えて、前記第1送信波と前記第1反射波とに基づく前記検知点の角度を導出し、かつ、前記第2送信波と前記第2反射波とに基づく前記検知点の角度を導出する第2導出処理を行うこと、
を特徴とする物体導出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−79890(P2013−79890A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220668(P2011−220668)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】