説明

ロタウイルスナノ粒子を用いた組み換え複合抗原の製造方法

【課題】異種ウイルス抗原エピトープが搭載されたロタウイルス複合抗原発現用コンストラクト、上記複合抗原を含むワクチン組成物を提供する。
【解決手段】ロタウイルスの抗原とともに、それとは異なるA型肝炎ウイルス等のウイルス抗原のエピトープを同時に含有する複合抗原、また該複合抗原を含むワクチン組成物、更にロタウイルス複合抗原発現用の組換えバキュロウイルスを含むコンストラクト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロタウイルスナノ粒子を用いた組み換え複合抗原の製造方法に関する。より詳細には、ロタウイルス複合抗原発現用コンストラクト、上記発現コンストラクトで形質転換された宿主細胞、上記ロタウイルス複合抗原を含むワクチン組成物、上記ロタウイルス複合抗原を有するロタウイルスのウイルス類似粒子(Virus like particle: VLP)、及び上記ウイルス類似粒子を含むワクチン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロタウイルス(Human Rotavirus, HRV)は乳幼児に下痢を誘発する主要ウイルスであって、韓国をはじめ世界中の5歳以下の小児の95%が少なくとも一度以上感染され、世界的に毎年発生する約125,000,000人の下痢患者の約40%を占めることと知られており、公衆保健学的に非常に重要な病因体である(Patel et al. 2011. Pediatr Infect Dis J 30:S1-S5)。これらウイルスは被膜がなく、直径75nmの正二十面体状で外部カプシド(outer capsid)、内部カプシド(inner capsid)、コアタンパク質(core protein)の3重層のタンパク質カプシド(triple layered protein capsid)から構成されており、11個の分節から構成されたdsRNAウイルスと知られている。それぞれの分節は6個の構造たんぱく質(VP1, VP2, VP3, VP4, VP6, VP7)と6個の非構造たんぱく質(NSP1〜6)中の一つを暗号化している(Estes and Cohen, 1989. Rotavirus gene structure and function. Microbiol Rev 53:410-449)。ロタウイルスはVP6の抗原性によってA群からG群まで7つの群に分類され、世界的に最もありふれたA群はさらに、免疫原性タンパク質であるVP7によるG型(Glycoprotein type)とVP4によるP型(Protease-sensitive type)とに細分され、現在23種のG型と32種のP型が報告されている。ヒトにおいてはG1〜G4、G6、G8〜G10とG12など9個の血清型と、P[3]、P[4]、P[6]、P[8]〜P[11]とP[14]など8個の遺伝子型が感染を起こし、各血清型同士は互いに交差防御できない特徴がある(Banyai et al. 2009. Arch Virol 154:1823-1829; Matthijnssens et al., 2009. Future Microbiol 4:1303-1316)。
【0003】
米疾病管理センター(CDC)の報告によると、ロタウイルス下痢症で米国において必要となる医療費だけでも1年に1千万ドルに達し、国内の場合、急性膓炎で入院する乳幼児患者の70%がこれらウイルス感染に起因することが明らかにされている。したがって、世界保健機関(WHO)は開発途上国ではロタウイルス発生を減少させ、先進国では医療費の削減を目標としてロタウイルスに対するワクチンの開発を最優先の課題としているのが実状である(Parashar et al. 2003. Emerg Infect Dis 9:565-572)。
【0004】
一方、A型肝炎ウイルス(Human Hepatitis A virus, HAV)は、最近、米西部地域、中東地域、一部アジア地域で感染率が増加の傾向にあり、世界的にA型肝炎の拡散が懸念されている実状にある。わが国でも、最近、免疫力の弱い10代及び20代の若年層においてA型肝炎が急速に増えてきており、最も頻繁な感染患者の年齢は5〜14歳であって、主に患者の約30%が15歳以下であることが報告されている。米国で1982〜1993年に調査した結果によると、A型肝炎は47%でB型肝炎の37%より多く、血清学的検査の結果、米国全体人口の約33%が過去A型肝炎に罹患された経験があることが明らかにされている(Gust et al. 1992. Vaccine 10:S56-S8)。A型肝炎ウイルスはPicornaviridae科に属する大きさ27nmのRNAウイルスであって、平均28日の潜伏期の後に高熱、倦怠感、食慾不振、吐き気、腹痛、濃尿、黄疸等の臨床症状を特徴とする急性肝疾患を誘発し、ロタウイルスと同じく被膜がなく、直径27nmの正二十面体状で7.5kbの一本鎖RNAゲノムを持っており、一つの長いORF(P1-3)を保有するものと知られている(Totsuka et al. 1999. Intervirology 42:63-68)。
【0005】
A型肝炎の主な伝播経路は、ロタウイルス同様に糞便-経口通路であり、汚染した食物や飲水によって伝染する。A型肝炎患者は約11〜22%が入院治療を受けるようになり、大人が入院する場合、約27日間欠勤することになり、発病したとき患者1名当り平均11人の接触者に対する予防療法が施行されなければならない。米国の場合、A型肝炎患者1名当り必要となる直・間接費用は大人では1,817〜2,459ドル、18歳以下では433〜1,492ドル程度と推定されたことがある(WHO. 2000. MMWR Wkly Epidemiol Rec 75:38-44)。国内でA型肝炎はソウル、仁川、京畿など首都圏を中心に全国に亘って急増しており、疾病管理本部の疫学調査によると、2007年度にA型肝炎は2,233件発生したが、2008年度1月から6月まで1,575件が発生し、去年に比べて過半を超えて速やかに増加している実状にある(Korea CDC, 2010)。
【0006】
本明細書全体に亘って多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として組み込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、異種ウイルス抗原エピトープが搭載された組み換えロタウイルス複合抗原を一つの発現ベクターシステムを用いて発現させることができるベクターシステム及び、これを用いて上記組み換えロタウイルス複合抗原を含有するロタウイルスのウイルス類似粒子を生産する方法を開発するために鋭意研究した。その結果、A型肝炎ウイルス抗原エピトープ及びロタウイルス抗原を同時に発現させることができるバキュロウイルス発現ベクターシステムを構築し、これを宿主細胞に形質転換してウイルス複合抗原を成功的に発現させて免疫原性を確認した。また、上記複合抗原と追加的なウイルス構造タンパク質とを共同発現させることにより、上記複合抗原を持つロタウイルスのウイルス類似粒子を成功的に生産し、この類似粒子の免疫原性も確認し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、異種ウイルス抗原が含まれたロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記ロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトで形質転換された宿主細胞を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、上記ロタウイルス複合抗原を含むワクチン組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、上記ロタウイルス複合抗原の生産方法を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、A型肝炎ウイルス抗原及びロタウイルス抗原の複合抗原タンパク質を持つロタウイルスのウイルス類似粒子を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、上記ロタウイルスのウイルス類似粒子を含むワクチン組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、上記ロタウイルスのウイルス類似粒子を含むワクチン組成物を生産する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面によってさらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)異種ウイルスの抗原及びロタウイルスの抗原が連結された複合抗原をコーディングするヌクレオチド配列;及び(b)上記複合抗原をコーディングする配列に作動的に連結されたプロモーターを含むロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトを提供する。
【0017】
本明細書において使用される用語「複合抗原」は、二つ以上の異なる抗原またはエピトープを同時に含むキメラ(chimeric)抗原を意味する。
【0018】
本発明の最大の技術的特徴の一つは、ロタウイルス抗原に異種ウイルスの抗原エピトープが連結され、異種ウイルス抗原エピトープが搭載されたロタウイルス複合抗原を発現させることができる発現コンストラクトシステムを確立した点にある。
【0019】
本明細書において使用される用語「発現コンストラクト」は、発現目的のヌクレオチド配列及びこの配列の発現を誘導する配列(例えば、プロモーター)を含む、発現のための最小限のエレメント(element)を意味する。当該発現コンストラクトは、好ましくは、転写調節配列-発現目的のヌクレオチド配列-ポリアデニル化配列を含む。
【0020】
本明細書において使用される用語「プロモーター」は、真核細胞において目的遺伝子の転写(transcription)を誘導することができる転写調節配列を意味する。上記真核細胞において作動可能なプロモーター配列は、サイトメガロウイルスの即時初期型プロモーター、SV40のプロモーター(SV40後期型プロモーター及びSV40初期型プロモーター)、HSV(herpes simplex virus)のtkプロモーター、アデノウイルス2主要後期型プロモーター(Adeno 2 major late promoter PAdml)、アデノウイルス2初期型プロモーター(PAdE2)、AAV(human parvo virusassociated virus)のp19プロモーター、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)プローモータ、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、マウスのメタロチオネイン(metallothionein)プロモーター(MTプロモーター)、MMTV LTRプロモーター、HIVのLTRプロモーター、β-アクチンプロモーター、EF1アルファプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター及びヒトGM-CSF遺伝子のプロモーター、また、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンまたはヒトメタロチオネイン由来のプロモーターがあるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において用語「作動的に連結された」は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これによって上記調節配列は上記他の配列の転写及び/またはトランスレーションを調節するようになる。
【0022】
本発明の発現コンストラクトには転写終結配列として、ポリアデニル化配列が含まれても良く、例えば、ウシ成長ホルモンターミネーター(Gimmi, E. R., et al., Nucleic Acids Res. 17:6983-6998(1989))、SV40由来のポリアデニル化配列(Schek, N, et al., Mol. Cell Biol. 12:5386-5393(1992))、HIV-1 polyA(Klasens, B. I. F., et al., Nucleic Acids Res. 26:1870-1876(1998))、β-グロビンpolyA(Gil, A., et al, Cell 49:399-406(1987))、HSV TK polyA(Cole, C. N. and T. P. Stacy, Mol. Cell. Biol. 5:2104-2113(1985))またはポリオーマウイルスpolyA(Batt, D. B and G. G. Carmichael, Mol. Cell. Biol. 15:4783-4790(1995))を含むが、これに限定されるものではない。
また、本発明の発現コンストラクトには選択標識として、当業界で通常用いられる抗生物質耐性遺伝子を含んでも良く、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン(G418)、ネオマイシンまたはテトラサイクリンに対する耐性遺伝子を含む。
【0023】
本発明の組み換え複合抗原発現コンストラクトは多様な形態に作製されても良く、代表的にプラスミド(plasmid)またはウイルスベクター(viral vector)システムに作製されることができる。好ましくは、本発明の発現コンストラクトはウイルスベクターシステムであり、例えば、アデノウイルス(adenovirus)、アデノ関連ウイルス(adenoassociatedvirus)、レトロウイルス(retrovirus)、レンチウイルス(lentivirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、バキュロウイルス(baculovirus)などのベクターシステムに適用されることができるが、これに限定されない。本発明の最も好ましい実現例によれば、上記発現コンストラクトはバキュロウイルス転移ベクターに作製されることができる。
【0024】
本発明の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス複合抗原の発現コンストラクトにおいて上記異種ウイルスはA型肝炎ウイルスである。
【0025】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記A型肝炎ウイルスの抗原はドメイン2(Domain 2, D2)またはドメイン3(Domain 3, D3)である。より好ましくは、上記A型肝炎ウイルス抗原のドメイン2(D2)とドメイン3(D3)は、それぞれ配列表における第2配列と第3配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0026】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス抗原はVP7タンパク質部位である。より好ましくは、上記ロタウイルス抗原VP7タンパク質部位は、配列表における第1配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0027】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス抗原と上記A型肝炎ウイルス抗原とはペプチドリンカー(peptide linker)によって連結される。
【0028】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記ペプチドリンカー(peptide linker)はLeu-Glu-Pro-GlyまたはLys-Asp-Glu-Leuである。上記Lys-Asp-Glu-Leuは、ER(endoplasmic reticulum)に組み換えタンパク質の残留(retention)を促進することによりMHCクラスIによる抗原提示効果を向上する。
【0029】
本発明の具体的な一実施例によれば、上記本発明のロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトは、図1に示されるDNA構成要素を含む。
【0030】
本発明の他の一様態によれば、本発明は、上記ロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0031】
本発明のロタウイルス複合抗原の発現コンストラクトで形質転換されることができる宿主細胞は、好ましくは動物細胞であり、より好ましくは酵母(yeast)、昆虫細胞、哺乳動物細胞であり、最も好ましくは昆虫細胞株である。昆虫細胞としては、例えば、Sf21(Spodoptera frugiperda 21; Invitrogen)、Sf9(Spodoptera frugiperda 9;Invitrogen)、Tn5(Trichoplusia ni 5; Invitrogen)などを用いることができるが、これに限定されない。
【0032】
本発明において上記発現コンストラクトを動物細胞に形質転換する方法は、当業界に公知された多様な方法を用いることができ、例えば、微小注入法(Capecchi, M.R., Cell, 22:479(1980))、リン酸カルシウム沈澱法(Graham, F.L. et al., Virology, 52:456(1973))、電気穿孔法(Neumann, E. et al., EMBO J., 1:841(1982))、リポソーム媒介形質感染法(Wong, T.K. et al., Gene, 10:87(1980))、DEAE-デキストラン処理法(Gopal, Mol. Cell Biol., 5:1188-1190(1985))、遺伝子衝撃(Yang et al., Proc.Natl. Acad. Sci., 87:9568-9572(1990))、酢酸-リチウムDMSO法(Hill et al., Nucleic Acid Res., 19, 5791(1991))などが挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
本発明の他の一様態によれば、本発明は、A型肝炎ウイルス抗原とロタウイルス抗原とが相互連結された組み換えロタウイルス複合抗原を提供する。
【0034】
本発明のまた他の一様態によれば、上記組み換えロタウイルス複合抗原を有効成分として含むワクチン組成物を提供する。
【0035】
本発明の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス抗原はVP7タンパク質部位であり、上記A型肝炎ウイルス抗原エピトープはドメイン2(Domain 2, D2)またはドメイン3(Domain 3, D3)である。
【0036】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス抗原VP7タンパク質部位は、配列表における第1配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0037】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記A型肝炎ウイルスの抗原エピトープのD2とD3はそれぞれ、配列表における第2配列と第3配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0038】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記ロタウイルス抗原と上記A型肝炎ウイルス抗原エピトープとはペプチドリンカーによって連結され、より好ましくは、上記ペプチドリンカー(peptide linker)はLeu-Glu-Pro-GlyまたはLys-Asp-Glu-Leuである。
【0039】
本発明の組み換えロタウイルス複合抗原タンパク質は、下記実施例において立証されるように、ロタウイルスに対する抗体誘導能のみならず、A型肝炎ウイルスに対する抗体誘導能を保有する。
【0040】
本発明のワクチン組成物は、(a)A型肝炎ウイルス抗原を含む組み換えロタウイルス複合抗原タンパク質の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む。本発明のワクチン組成物は、A型肝炎ウイルス及びロタウイルス感染によって誘発される多様な疾患の予防に用いられることができる。本明細書において用語「薬剤学的有効量」は、上記疾患に対する予防効果を達成するのに十分な量を意味する。
【0041】
本発明のワクチン組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油などを含むが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は、上記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでも良い。
【0042】
本発明のワクチン組成物は、非経口投与が好ましく、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、または局所投与を用いて投与することができる。
【0043】
本発明のワクチン組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、疾病症状の程度、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、普通に熟練された医者は、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0044】
本発明のワクチン組成物は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化されることで、単位用量形態で製造されかまたは多用量容器内に入れて製造されることができる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であっても良く、分散剤または安定化剤をさらに含んでも良い。
【0045】
本発明の他の一様態によれば、本発明は、次のステップを含むA型肝炎ウイルス抗原を含むロタウイルス複合抗原の生産方法を提供する:(a) (i)A型肝炎ウイルスの抗原及びロタウイルスの抗原が連結された複合抗原をコーディングするヌクレオチド配列;及び(ii)上記複合抗原をコーディングする配列に作動的に連結されたプロモーターを含むロタウイルス複合抗原発現用組み換えバキュロウイルスで形質転換された宿主細胞を培養するステップ:及び(b)上記ステップ(a)で培養された培養物から組み換えロタウイルス複合抗原タンパク質を分離及び精製するステップ。
【0046】
本発明において形質転換された宿主細胞の培養は、当業界で公知された通常の動物細胞の培養方法を用いることができる。
【0047】
細胞培養時に使用される培地は、形質転換された宿主細胞が有効に用いられる炭素原、窒素原、無機塩などを含めば、天然培地または合成培地を使用することができる。使用できる炭素原は、グルコース、フルクトース、スクロースのような炭水化物;澱粉、澱粉の加水分解物;酢酸及びプロピオン酸のような有機酸;メタノール、エタノール、プロパンのようなアルコールなどを含む。窒素原は、アンモニア;塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムのような無機酸または有機酸のアムモニウム塩;ペプトン、肉エキス(meat extract)、酵母エキス、とうもろこし浸漬液、カゼイン加水分解物、大豆エキス、大豆加水分解物;多様な醗酵した細胞及びこれらの分解物などを含む。無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどを含む。
【0048】
本発明において用いられる培地は、動物細胞の培養に通常用いられるいずれの培地でも良く、例えば、Eagles's MEM(Eagle's minimum essential medium, Eagle, H. Science 130:432(1959))、α-MEM(Stanner, C.P. et al., Nat. New Biol. 230:52(1971))、Iscove's MEM(Iscove, N. et al., J. Exp. Med.147:923(1978))、199培地(Morgan et al., Proc. Soc. Exp. Bio. Med., 73:1(1950))、CMRL 1066、RPMI 1640(Moore et al., J. Amer. Med. Assoc. 199:519(1967))、F12(Ham, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 53:288(1965))、F10(Ham, R.G. Exp. Cell Res. 29:515(1963))、DMEM(Dulbecco's modification of Eagle's medium, Dulbecco, R. et al., Virology 8:396(1959))、DMEMとF12の混合物 (Barnes, D. et al., Anal. Biochem. 102:255(1980))、Way-mouth's MB752/1 (Waymouth, C. J. Natl. Cancer Inst. 22:1003(1959))、McCoy's 5A(McCoy, T.A., et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 100:115(1959))及びMCDBシリーズ(Ham, R.G. et al., In Vitro 14:11(1978))などが用いられる。培地に関する説明は、R. Ian Freshney, Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique, Alan R. Liss, Inc., New Yorkに詳細に記載されており、この文献は本明細書に参照として組み込まれる。
【0049】
培養は、通常、振とう培養または回転機の回転といった好気的条件下で行う。培養温度は、好ましくは15ないし40℃で行い、培養時間は一般的に5時間ないし7日間行う。培地のpHは、培養中に好ましくは3.0ないし9.0の範囲を維持する。培地のpHは無機または有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどで調節することができる。培養中には必要な場合、アンピシリン及びテトラサイクリンのような抗生物質を添加することができる。
【0050】
上記培養された形質転換細胞から発現された複合抗原タンパク質を分離する方法は、当業界で通常用いられる分離及び精製方法を採用して実施することができる。例えば、硫酸アンモニウムまたはPEGなどを用いた溶解度による分離(solubility fractionation)、分子量による限外ろ過分離、様々なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために作製されたもの)による分離など、多様な方法が用いられ、通常は、上記方法の組合わせを用いて分離及び精製する。
【0051】
本発明の一様態によれば、本発明は、(a)ロタウイルスのVP2、VP4及びVP6のポリペプチド、及び(b)異種ウイルス抗原エピトープ及びロタウイルス抗原VP7の融合タンパク質を含むロタウイルスのウイルス類似粒子を提供する。
【0052】
本発明の好ましい実現例によれば、上記異種ウイルスはA型肝炎ウイルスである。
【0053】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記融合タンパク質はA型肝炎ウイルス抗原D2及びロタウイルス抗原VP7の融合タンパク質D2-VP7である。
【0054】
本発明の好ましい実現例によれば、上記VP2ポリペプチドは配列表における第4配列を含み、上記VP4ポリペプチドは配列表における第5配列のアミノ酸配列を含み、上記VP6ポリペプチドは配列表における第6配列のアミノ酸配列を含み、上記D2ポリペプチドは配列表における第2配列のアミノ酸配列を含み、上記VP7ポリペプチドは配列表における第1配列のアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記融合タンパク質D2-VP7はD2ポリペプチドとVP7ポリペプチドとがペプチドリンカーLeu-Glu-Pro-GlyまたはLys-Asp-Glu-Leuによって連結される。
【0056】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明は、(a)ロタウイルスのVP2、VP4及びVP6のポリペプチド、及び(b)A型肝炎ウイルス抗原エピトープD2及びロタウイルス抗原VP7の融合タンパク質であるD2-VP7を含むロタウイルスのウイルス類似粒子を有効成分として含むワクチン組成物を提供する。
【0057】
本発明においてロタウイルスのウイルス類似粒子を含むワクチン組成物に関する説明は、上記ロタウイルス複合抗原において説明したものと同様であるため、重複記載はしない。
【0058】
本発明のまた他の一様態によれば、本発明は、次のステップを含むA型肝炎ウイルス抗原を含むロタウイルスのウイルス類似粒子の生産方法を提供する:(a)(i)プロモーターに作動的に連結されたVP2コーディングヌクレオチド配列を含む第1の組み換えバキュロウイルス;(ii)プロモーターに作動的に連結されたVP4コーディングヌクレオチド配列を含む第2の組み換えバキュロウイルス;(iii)プロモーターに作動的に連結されたVP6コーディングヌクレオチド配列を含む第3の組み換えバキュロウイルス;及び(iv)プロモーターに作動的に連結された融合タンパク質D2-VP7コーディングヌクレオチド配列を含む第4の組み換えバキュロウイルスで形質転換された宿主細胞を培養するステップ;(b)上記宿主細胞の培養物からロタウイルスのウイルス類似粒子を分離及び精製するステップ。
【0059】
本発明の好ましい実現例によれば、上記VP2ポリペプチドは配列表における第4配列のアミノ酸配列を含み、上記VP4ポリペプチドは配列表における第5配列のアミノ酸配列を含み、上記VP6ポリペプチドは配列表における第6配列のアミノ酸配列を含み、上記D2ポリペプチドは配列表における第2配列のアミノ酸配列を含み、上記VP7ポリペブチドは配列表における第1配列のアミノ酸配列を含む。
【0060】
本発明の他の好ましい実現例によれば、上記融合タンパク質D2-VP7はD2とVP7とがペプチドリンカーLeu-Glu-Pro-GlyまたはLys-Asp-Glu-Leuによって連結される。
【0061】
本発明においてロタウイルスのウイルス類似粒子を生産する方法は、上記ロタウイルス複合抗原タンパク質を生産する方法において説明したものと同様であるため、重複記載はしない。
【発明の効果】
【0062】
本発明は、異種ウイルス抗原エピトープが搭載されたロタウイルス複合抗原発現用コンストラクト、上記ロタウイルス複合抗原を含むワクチン組成物、ロタウイルス複合抗原を含むロタウイルスのウイルス類似粒子、及びロタウイルスのウイルス類似粒子を含むワクチン組成物に関する。本発明によれば、ロタウイルスの抗原とともにロタウイルスと異なる異種ウイルスのエピトープを同時に含む複合抗原と、該複合抗原を含むロタウイルスのウイルス類似粒子を安価で大量生産することができ、ロタウイルス及び異種ウイルスに対する新規複合ワクチンの研究及び開発に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明者らが構築したA型肝炎ウイルス抗原及びロタウイルス抗原を含む組み換え複合抗原を同時に発現するバキュロウイルス発現ベクターシステムの具体的な構成を示す。
【図2a】本発明の組み換えバキュロウイルスで感染された昆虫細胞株Sf9において組み換え複合抗原タンパク質が正常に発現される結果を示す。図2aは、SDS-PAGEによる総タンパク質分析結果である。レーン(lane)1は非感染(unifected)であり、レーン2はD2/VP7複合抗原、レーン3はD3/VP7複合抗原をそれぞれ発現する結果である。
【図2b】本発明の組み換えバキュロウイルスで感染された昆虫細胞株Sf9において組み換え複合抗原タンパク質が正常に発現される結果を示す。図2bは、抗V5抗体を用いたウエスタンブロット分析結果を示す。レーンNは非感染(unifected)であり、レーン1はD2/VP7複合抗原、レーン2はD3/VP7複合抗原をそれぞれ発現する結果である。
【図3】昆虫細胞株Sf9において本発明の組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7の発現様相を示す。レーン1は非感染sf9細胞(uninfected sf9 cell)であり、レーン1〜10はそれぞれウイルス感染後1ないし10日後の結果である。
【図4a】本発明の組み換え複合抗原タンパク質がA型肝炎ウイルス及びロタウイルス特異的抗体によって認知されて免疫原性を持つことを示すウエスタンブロット結果である。図4aは、ロタウイルスWa株に特異的な抗体を含む抗ロタウイルスウサギ血清を用いて測定した結果である。レーン1は非感染sf9細胞であり、レーン2はD2/VP7複合抗原、レーン3はD3/VP7複合抗原を測定した結果である。
【図4b】本発明の組み換え複合抗原タンパク質がA型肝炎ウイルス及びロタウイルス特異的抗体によって認知されて免疫原性を持つことを示すウエスタンブロット結果である。図4bは、A型肝炎ウイルス特異的抗体を含むA型肝炎ウイルス感染患者の血清を用いて測定した結果である。レーン1は非感染sf9細胞であり、レーン2はD2/VP7複合抗原を測定した結果である。
【図5a】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7の免疫原性をELISAによって測定した結果を示す。組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに注射して免疫化させた後、兔疫血清を分離してこれを抗体価測定に使用した。図5aは、ロタウイルスWa抗原に対して上記製造したウサギ兔疫血清の抗体価を測定した結果である。グラフにおいて、
【0064】
【数1】

【0065】
は陰性対照群であって陰性ウサギ血清の抗体価であり、
【0066】
【数2】

【0067】
は陽性対照群であってロタウイルスWa株に対するウサギ免疫血清の抗体価であり、
【0068】
【数3】

【0069】
は組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7のウサギ兔疫血清の抗体価である。吸光度(OD value)は左側に表示し、希釈倍数は下側に表示した。
【図5b】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7の免疫原性をELISAによって測定した結果を示す。組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに注射して免疫化させた後、兔疫血清を分離してこれを抗体価測定に使用した。図5bは、A型肝炎ウイルスHM175抗原に対して上記製造したウサギ兔疫血清の抗体価を測定した結果である。グラフにおいて、
【0070】
【数4】

【0071】
は陰性対照群であって陰性ウサギ血清の抗体価であり、
【0072】
【数5】

【0073】
は陽性対照群であってA型肝炎ウイルスHM175抗原に対するウサギ免疫血清の抗体価であり、
【0074】
【数6】

【0075】
は組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7のウサギ兔疫血清の抗体価である。吸光度(OD value)は左側に表示し、 希釈倍数は下側に表示した。
【図6a】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに接種して得た兔疫血清とウイルスとの反応度を共焦点顕微鏡で測定した結果を示す。図6aのパネルAはロタウイルスWa株で感染させたMA104細胞と免疫化させていない正常ウサギ血清との反応度を測定した結果であり、パネルBはロタウイルスWa株で感染させたMA104細胞と組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7に対するウサギ兔疫血清との反応度を測定した結果である。
【図6b】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに接種して得た兔疫血清とウイルスとの反応度を共焦点顕微鏡で測定した結果を示す。図6bのパネルAはA型肝炎ウイルスHM175で感染させたFRhK-4細胞と免疫化させていない正常ウサギ血清との反応度を測定した結果であり、パネルBはA型肝炎ウイルスHM175株で感染させたFRhK-4細胞と組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7に対するウサギ兔疫血清との反応度を測定した結果である。
【図7a】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに接種して得た血清が、ロタウイルス及びA型肝炎ウイルスに対する中和抗体を形成することを示す結果である。図7aのパネルAはロタウイルスWa株で感染させたMA104細胞であり(陽性対照群)、パネルBはロタウイルスWa株で感染させたMA104細胞に正常ウサギ血清を加えた結果であり(陰性対象群)、パネルCはロタウイルスWa株で感染させたMA104細胞に組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7に対するウサギ抗血清(320倍希釈)を加えた結果である。
【図7b】組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7をウサギに接種して得た血清が、ロタウイルス及びA型肝炎ウイルスに対する中和抗体を形成することを示す結果である。図7bのパネルAはA型肝炎ウイルスHM175株で感染させたFRhK-4細胞であり(陽性対照群)、パネルBはA型肝炎ウイルスHM175株で感染させたFRhK-4細胞に正常ウサギ血清を加えた結果であり(陰性対照群)、パネルCはA型肝炎ウイルスHM175株で感染させたFRhK-4細胞に組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7に対するウサギ抗血清(160倍希釈)を加えた結果である。
【図8】A型肝炎ウイルス抗原を含有するロタウイルスのウイルス類似粒子(VLP)を観察した結果である。パネルAはロタウイルスVP2タンパク質、VP6タンパク質、VP4タンパク質、及びA型肝炎ウイルス抗原D2とロタウイルスVP7とが連結された組み換え複合抗原タンパク質から構成されたロタウイルスのウイルス類似粒子(VLP)を観察したものであり、パネルBはVP2タンパク質とVP6タンパク質とから構成されたロタウイルスのコア類似粒子(CLP: core like particle)である。
【図9】本発明のロタウイルスのウイルス類似粒子(VLP)がウサギから生産されたロタウイルスVP2、VP4、VP6タンパク質に対する特異抗体によって認知されて免疫原性を持つことを示すウエスタンブロットの結果である。
【図10a】ロタウイルスのウイルス類似粒子(VLP)の免疫原性をELISAによって測定した結果である。組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7を含むロタウイルスのVLPをマウスに注射して免疫化させた後、得た兔疫血清を分離してこれを抗体価の測定に用いた。図10aは、ロタウイルスWa抗原に対して、上記製造したロタウイルスVLPのマウス兔疫血清の抗体価を測定した結果である。
【0076】
【数7】

【0077】
は陰性対照群であって陰性マウス血清の抗体価であり、
【0078】
【数8】

【0079】
は陽性対照群であってロタウイルスWa株に対するマウス兔疫血清の抗体価であり、
【0080】
【数9】

【0081】
はロタウイルスVLPのマウス兔疫血清の抗体価である。吸光度(OD value)は左側に表示し、希釈倍数は下側に表示した。
【図10b】ロタウイルスのウイルス類似粒子(VLP)の免疫原性をELISAによって測定した結果である。組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7を含むロタウイルスのVLPをマウスに注射して免疫化させた後、得た兔疫血清を分離してこれを抗体価の測定に用いた。図10bは、A型肝塩ウイルスHM175抗原に対して、上記製造したロタウイルスVLPのマウス兔疫血清の抗体価を測定した結果である。
【0082】
【数10】

【0083】
は陰性対照群であって陰性マウス血清の抗体価であり、
【0084】
【数11】

【0085】
は陽性対照群であってA型肝塩ウイルスHM175抗原に対するマウス兔疫血清の抗体価であり、
【0086】
【数12】

【0087】
はロタウイルスVLPのマウス兔疫血清の抗体価である。吸光度(OD value)は左側に表示し、希釈倍数は下側に表示した。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例】
【0089】
[実験方法]
1.実験材料
昆虫細胞株であるSf9(Spodoptera frugiperda)細胞株を韓国細胞主銀行(KCLB; Korean Cell Line Bank, Korea)から確保し、バキュロウイルス生成のために使用した。Sf9細胞は250mLスピナーフラスコ(spinner flask)を用いて90rpm、27℃条件下で10%FBS(fetal bovine serum)が含有されたTNM-FH培地において成長及び保持し、トリパンブルー色素排除実験(trypan blue exclusion)を基盤に血球計算器(hemocytometer)を用いて細胞数及び細胞生存率を測定した。血清型G1P[8]Waロタウイルス株とHM175A型肝炎ウイルス株ゲノムから抗原エピトープ遺伝子を確保し、組み換えバキュロウイルス製造のためにBac-N-Blueバキュロウイルス発現ベクターシステム(Invitrogen)を用いた。
【0090】
2.試薬及び実験動物
制限酵素XhoI及びT4 DNA ligaseはNew England Biolabsから購入した。バキュロウイルスの転移ベクター(transfer vector)pBlueBac4.5/V5-Hisとバキュロウイルス発現システムBac-N-BlueTMはInvitrogenから購入した。プラスミドミニプレップキット(plasmid miniprep kit)はBioneerから購買して使用した。A型肝炎ウイルスの人体感染患者からの抗血清及びWaロタウイルス株に対するウサギ血清を免疫原性分析のために使用した。6〜8週齢のSPFニュージーランドWhite femaleウサギを動物実験のために使用し、実験前の2週間、順応させた。
【0091】
3.ロタウイルス及びA型肝炎ウイルスのエピトープ含有組み換えバキュロウイルスの同時発現システムの構築
ロタウイルス(HRV)のカプシド(capsid)構成成分であるVP7遺伝子は、Wa(G1P[8])ロタウイルスズRNAからRT-PCRによって合成したcDNAに基づいて合成した。A型肝炎ウイルス(HAV)のドメイン2(D2, amino acid from 767 to 842)及びドメイン3(D3, amino acid from 1403 to 1456)遺伝子は、HM175A型肝炎ウイルス株RNAからRT-PCRによって合成したcDNAに基づいて合成した。プライマー(primer)に人為的に導入させたXhoI制限酵素部位を用いてA型肝炎ウイルスとロタウイルスエピトープとを同時に含有する2種類の組み換え複合抗原をエンコードするDNA画分を得た:(1)HAV D2及びHRV VP7(D2/VP7)、(2)HAV D3及びHRV VP7(D3/VP7)。これら組み換え遺伝子をPCRによって増幅した後、バキュロウイルス転移ベクターpBlueBac4.5(Invitrogen)内にクローニングして組み換えバキュロウイルス転移ベクターを作った。製造した組み換え転移ベクターは塩基配列分析をして正確なクローニング可否を確認した。製造した組み換えバキュロウイルス転移ベクターは、Bac-N-BlueTM linearizedバキュロウイルスDNAと血清のない培地を使用して準備したCellfectin(登録商標) II試薬と混合し、常温で15分反応させた後、ここに昆虫細胞Sf9細胞株(2×106 cells/5ml, 60mm-plates)を添加した。混合液は10%FBSが含有されたTNM-FH培地に置換し、その後、標準プラーク分析(standard plaque assay)によって組み換えバキュロウイルスを確認した。
【0092】
4.SDS-PAGE及びウエスタンブロットによる発現タンパク質の確認
組み換え複合抗原タンパク質発現サンプルは10%SDS-PAGE上で分離し、Coomassie Brilliant Blue R-250(Bio-Rad)染色法を用いて確認した。発現されたタンパク質の存在を確認するために、すべてのタンパク質成分はImmuno-BlotTM PVDF membrane(Bio-Rad)に移した後、このメンブレイン(memebrane)を5%脱脂乳を用いてブロッキング(blocking)した。1次抗体としてウサギから製造したロタウイルスWa抗血清とA型肝炎患者血清をTBS-T(Tris-buffered saline; 20mM Tris-HCl, 500mM NaCl, 0.1% Tween20, pH 7.9)溶液内で準備し、準備された1次抗体を使用して1時間反応させ、peroxidase-conjugated goat anti-rabbit IgG(1:2000 dilution in TBS-T, Invitrogen)を2次抗体として使用して反応させた。発現タンパク質はECL(electrochemiluminescence)技法を用いてX線フィルム(Kodak)に露出した後、確認した。
【0093】
5.ウサギの免疫接種
50μgの組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7を2匹のニュージーランドホワイト(New Zealand white)ウサギに完全フロイントアジュバント(complete Freund’s adjuvant)とともに筋肉注射した後(Day 0)、28日にさらに不完全フロイントアジュバント(incomplete Freund’s adjuvant)とともにブースティング(boosting)した。40日後、耳静脈から血液を採取し、 血清を分離した後、抗体形成有無をELISA技法を用いて確認した。
【0094】
6.ELISAによる特異抗体の検出
分離精製したロタウイルスWa抗原とA型肝炎ウイルスHM175抗原(Abcam, UK)をウェル(well)当たり0.1μgの濃度でコーティング溶液(0.1M Na2CO3, 0.1M NaHCO3, pH 9.4)内に準備した後、96ウェル免疫プレート(immuno plate)に4℃で一晩中コーティングした。コーティングされたプレートをPBS-T(1×PBS with 0.05% Tween20)200μlで3回洗浄した後、5%(w/v)脱脂乳を使用してブロッキングした。ウサギから収集した兔疫血清を段階別に希釈した後、37℃で1時間反応させた。洗浄後、peroxidase-conjugated goat anti-rabbit IgG(diluted in PBS-T, 5%脱脂乳含有)をウェル当たり100μlずつ添加した後、37℃で1時間反応させた。基質溶液としてOPD(ortho-phenylenediamine)を添加した後、5分間反応させ、1M H2SO4 50μlを各ウェルに添加して反応を中止させた。次いで、ELISA reader(NanoQuant)を用いて492nmで吸光度を測定することにより、抗体濃度を定量した。
【0095】
7.ウイルス-抗体反応による抗体特異性の確認
7−1.ロタウイルスに対する抗体特異性
96ウェルガラスプレート(Nunc)に培養された細胞株(MA104)に10倍希釈したWaロタウイルス溶液100μlを添加し、ウイルス培地(1mg/mlトリプシンが0.5%添加されたEagle's培地)を100μl添加して細胞変性効果(cytopathic effect)が出現する時点まで反応させた。培養した培地を除去し、80%アセトンを入れて10分間反応させて細胞を固定した後、PBS(pH 7.2)で3回洗浄し、1次抗体としてウサギから得た組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7兔疫血清をPBSで50倍希釈して100μl入れて37℃で1時間反応させた。PBSで3回洗浄し、2次抗体として50倍希釈したFITC-conjugated Goat Anti-Rabbit IgG(Invitrogen)50μlを入れて37℃で1時間反応させた後、さらにPBSで3回洗浄し、80%グリセロール(Glycerol, Sigma)を添加して反応を終了した。次いで、共焦点顕微鏡(Confocal Microscope, Carl Zeiss)下で観察し、ウサギから得た抗体がロタウイルスに対して特異性を示すのかを確認した。
【0096】
7−2.A型肝炎ウイルスに対する抗体特異性
96ウェルガラスプレート(Nunc)に培養された細胞株(FRhk-4)に10倍希釈したHM175A型肝炎ウイルス溶液100μlを入れてウイルス培地(2%ウシ血清が添加されたEagle's培地)を100μl添加して、細胞変性効果(cytopathic effect)が出現する時点まで反応させた。培養した培地を除去し、80%アセトンを添加して10分間反応させて細胞を固定した。PBS(pH 7.2)で3回洗浄し、1次抗体としてウサギから得た組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7兔疫血清をPBSで50倍希釈し100μl入れて、37℃で1時間反応させた。PBSで3回洗浄し、2次抗体として50倍希釈したFITC-conjugated Goat Anti-Rabbit IgG(Invitrogen)50μlを添加して37℃で1時間反応させた後、さらにPBSで3回洗浄し、80%グリセロール(Glycerol, Sigma)を入れて反応を終了した。次いで、共焦点顕微鏡(Confocal Microscope, Carl Zeiss)下で観察して、ウサギから得た抗体がA型肝炎ウイルスに対して特異性を示すのかを確認した。
【0097】
8.中和抗体の形成
ウサギから得た組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7兔疫血清を56℃で30分間反応させて補体を不活性化させた後、TCID50でWaロタウイルスとHM175A型肝炎ウイルス溶液の力価を測定した。96ウェルプレートに100doses TCID50/25μl(HAVは1:10, rotavirusは1:640でEagle's培地で希釈)を含有した各ウイルス溶液50μlを混ぜた後、ウサギから収集した血清を10倍希釈した後に段階別に2倍ずつ希釈して、各ウェル当たり50μlを入れて、均一に混ぜた後、37℃で1時間反応させた。細胞が培養されたプレートに各ウイルス-兔疫血清混合液を50μlずつ入れて、保持培地(HAVはEagle's培地と2%のウシ血清、rotavirusはEagle's培地とトリプシン1mg/ml)を50μl加えた後、5日間培養した。次いで、倒立顕微鏡(Leica)を用いて細胞変性程度を確認し、ACTG Laboratory Technologist Committeeマニュアル(Revised Version 1.0, 2004. 5. 25)によって兔疫血清の中和抗体の形成有無と抗体価を測定した。
【0098】
xk = dose of the highest dilution.
r = sum of the number of “-” responses.
d = spacing between dilutions.
n = wells per dilution.
Spearman-Karber formula : M = xk + d [0.5 (1/n) (r)]
9. ロタウイルスのウイルス類似粒子(virus like particle)の合成実験
9−1.細胞感染
10%FBSと0.1%Pluronic F-68を含有したTNM-FH培地250mlで約3×106cells/ml程度に培養したSf9細胞を遠心濃縮し、VP2、VP4、VP6及びD2-VP7をコーディングするポリヌクレオチドを含む計4種の組み換えバキュロウイルスを、5pfu/cellのMOIをもって混合して同時に感染させた。3〜4時間くらい遠心チューブでウイルスを吸着させた後、細胞感染液を遠心分離して、上澄み液培地を新鮮な培地に取り替えた。このとき、培地は10%FBSと0.1%Pluronic F-68を含有した220ml Grace’s insect培地を使用した。その後、27℃で5〜7日間培養した。
【0099】
9−2.ロタウイルスのウイルス類似粒子の純粋分離及び精製
感染された細胞培養液を12,000rpmで30分間超高速遠心分離して細胞培養上澄み液を得た。VLP(virus like particle)を含んでいる培養上澄み液に35%スクロースクッション(sucrose in TNC buffer, 10mM Tris-HCl, pH 7.5, 140mM NaCl, 10mM CaCl2)1.5mlを添加し、SW28ロータ(Beckman Coulter)を用いて25,000rpmで90分間遠心分離することにより、VLP沈殿物を得た。収得したVLP沈殿物は4mlのTNC緩衝液に浮遊させ、0.42g CsCl/mlを添加してSW50.1ロータ(Beckman Coulter)を用いて35,000rpmで18時間遠心分離を行った。遠心分離した後、確認された2つのバンド、すなわち下位バンド(VLP)と上位バンド(CLP)とを使い捨て注射器を用いて回収し、各6mlのTNC緩衝液に浮遊させた後、SW41ロータ(Beckman Coulter)を用いて35,000rpmで120分間遠心分離を行った。VLPペレット(pellet)をTNC緩衝液に浮遊させた後、電子顕微鏡分析を通じてVLPの存在を確認した。
【0100】
9−3.免疫接種
精製した下位バンド(VLP)と上位バンド(CLP)各50μgを各2 匹のマウス(Balb/c)に完全フロイントアジュバント(complete Freund’s adjuvant)とともにマウスの背中の皮の皮下2〜3箇所に分けて注射した後、14、35、56日後にさらに不完全フロイントアジュバント(incomplete Freund’s adjuvant)とともにブースティング(boosting)した。60日後、静脈から血液を採取して血清を分離した後、抗体形成有無をELISA技法を用いて確認した。
【0101】
実験結果
1.ロタウイルスとA型肝炎ウイルスとの組み換え複合抗原タンパク質の同時発現のためのベキュロウイルスベクターシステムの構築
図1は、本発明で作製したA型肝炎ウイルス(HAV)とロタウイルス(HRV)との組み換え複合抗原タンパク質同時発現システムの模式図である。図1に示されるように、D2/VP7とD3/VP7と名づけられた計2種のロタウイルスとA型肝炎ウイルスエピトープとを同時に含有する組み換え複合抗原タンパク質の発現システムを構築した。組み換え抗原タンパク質はOverlap extension PCRを用いてそれぞれ1,215bpと1,149bpに該当する増幅産物を確保し、これらをそれぞれバキュロウイルス転移ベクター(transfer vector)であるpBlueBac4.5(Invitrogen)に挿入した。製造した2種の組み換えバキュロウイルスの転移ベクターに対してDNA塩基配列分析を実施し、クローニングした塩基配列がインフレーム融合(in-frame fusion)されたことを確認した。
【0102】
2.Sf9昆虫細胞株における組み換え複合抗原タンパク質の同時発現
構築された2種の組み換えバキュロウイルス発現ベクターを昆虫細胞株Sf9(Spodoptera frugperda 9)に取り入れ、発現有無を総細胞タンパク質分析を通じて確認した。その結果、予想された大きさの2種の組み換え複合抗原タンパク質産物がそれぞれの昆虫細胞株において発現されることを確認した(図2a参照)。特に、これらタンパク質の存在を確認するためにV5-抗体を用いて確認したところ、該当産物の大きさに該当する特異的なタンパク質産物を確認することができた(図2b参照)。この結果は、本発明において構築されたロタウイルス抗原とA型肝炎ウイルス抗原とを同時に含有する組み換え複合抗原タンパク質発現システムによって組み換え複合抗原タンパク質が安定的に発現されたことを示す。昆虫細胞株Sf9において組み換え複合抗原タンパク質の経時的な発現様相を調べるために、D2/VP7を発現する組み換えバキュロウイルスを細胞当たり5pfuで初期感染させて10日間観察したところ、感染後2日目に最高発現量を示し、その後漸進的に減少して10日目に最小量を示した(図3参照)。これは組み換えバキュロウイルスの感染後、10日を周期に正常な細胞溶解が誘導されたことを示す。
【0103】
3.組み換え複合抗原タンパク質の免疫原性
発現された2種のロタウイルス及びA型肝炎ウイルスの抗原を含有する組み換え複合抗原タンパク質が免疫原性を持つかを調べた。まず、人体感染患者のA型肝炎ウイルス抗血清(HAV anti-serum from Human Patient)及びウサギから生産されたロタウイルス特異抗体(Rabbit IgG against HRV Wa strain)を使用して2種の組み換え複合抗原タンパク質に対してウエスタンブロットを行った。図4aに示されるように、発現された2種の組み換え複合抗原タンパク質は、いずれもロタウイルス特異抗体に陽性反応を示した。一方、3人の人体感染患者から得たA型肝炎ウイルス抗血清を使用してウエスタンブロットした場合、D2/VP7においてのみ陽性反応を確認することができた(表1参照)。図4bに示される結果のように、組み換え複合抗原D2/VP7が3人の人体感染患者から得たA型肝炎ウイルス抗血清によって認知されることを確認した。
【0104】
【表1】

【0105】
上記結果は、構築された2種の組み換え複合抗原タンパク質のうちD2/VP7が、ロタウイルスとA型肝炎ウイルスに対していずれも免疫原性を保有していることを示す。
【0106】
D2/VP7組み換え複合抗原タンパク質の免疫原性を再度確認するために、該当抗原をウサギに免疫接種して抗原特異的な抗体が形成されるのかを調べた。図5a及び図5bの結果から分かるように、D2/VP7組み換え複合抗原タンパク質は、ロタウイルスWa株及びA型肝炎ウイルス抗原に対する特異的な抗体形成を誘導した。
【0107】
さらに、D2/VP7組み換え複合抗原に特異的な抗体がロタウイルスとA型肝炎ウイルスに特異的に反応するかを確認するために、各ウイルスで感染させた培養された細胞とD2/VP7組み換え複合抗原の接種によって誘導された兔疫血清とを反応させた。図6a及び図6bに示される結果のように、D2/VP7組み換え複合抗原の接種によって得たウサギ兔疫血清が各ウイルスに特異的に反応することを確認した。かかる結果は、D2/VP7組み換え複合抗原が、A型肝炎ウイルスとロタウイルスに特異的な抗体の生成を誘導するということを証明するものである。
【0108】
4.組み換え複合抗原タンパク質の中和抗体形成能
D2/VP7組み換え複合抗原に特異的な抗体がロタウイルスとA型肝炎ウイルスに対して中和力を持つかを確認するために、各ウイルスを細胞に感染させて培養した後、これをD2/VP7組み換え複合抗原に対する抗血清と反応させた。その結果、陽性対照群と比べて細胞変性効果(Cytopathic effect)の出現が、ロタウイルスの場合、希釈倍数320倍、A型肝炎ウイルスの場合、希釈倍数160倍まで減少して、抗血清が各ウイルスを抑制する中和力があることを確認することができた(図7a及び図7b参照)。下記表2は、ウサギに接種して得た組み換え複合抗原タンパク質D2/VP7の抗血清のTCID50を測定した結果を示す。
【0109】
【表2】

【0110】
5.ロタウイルスのウイルス類似粒子の電子顕微鏡写真
上記実施例に記載の方法によって合成したロタウイルスのウイルス類似粒子を電子顕微鏡で観察した。その結果、D2/VP7組み換え複合抗原を含有するロタウイルスのウイルス類似粒子が正常に形成されていることが確認できた(図8参照)。
【0111】
6. ロタウイルスのウイルス類似粒子の免疫原性
製造したロタウイルスのウイルス類似粒子に対する免疫原性有無を調べるために、10%SDS-PAGE上で分離し、ウサギから生産されたロタウイルス特異抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果、該当産物の大きさに該当する特異的なタンパク質産物を確認した(図9参照)。ロタウイルスのウイルス類似粒子の免疫原性を再確認するために、上記製造したウイルス類似粒子をマウスに免疫接種して抗原特異的な抗体形成の有無を調べた。その結果、陰性対照群と比べてウイルス特異的な抗体が誘導されることを確認した(図10参照)。
【0112】
7.実験の結論及び期待効果
本発明においては、A型肝炎ウイルスエピトープ(D2, D3, D4)とロタウイルスエピトープ(VP2及びVP7)とを組み合わせた計2種の組み換え複合抗原タンパク質D2-VP7及びD3-VP7を発現することができるバキュロウイルス発現ベクターシステムを構築し、これら複合抗原タンパク質を昆虫細胞であるSf9細胞株において発現した。これら発現された組み換え複合抗原タンパク質に対する免疫原性を、ウサギ及び人体感染患者の血清を用いたウエスタンブロット分析法を通じて確認した。また、免疫原性が確認された候補の組み換え複合抗原タンパク質をウサギに直接投与して血清を得て、この血清に対してELISA分析を行ってウイルス特異抗体が形成されたことを証明することで免疫原性を再確認した。さらに、ウサギ免疫接種で形成された抗血清が、A型肝炎ウイルスとロタウイルスの活性をいずれも抑制する中和抗体能力を持っていることを確認した。また、作製したロタウイルス-A型肝炎ウイルスの組み換え複合抗原を含有するロタウイルスのウイルス類似粒子をマウスに免疫接種した結果、A型肝炎ウイルスとロタウイルスの両方に対して特異的な抗体が形成された。本発明の複合抗原タンパク質発現システムは、A型肝炎ウイルス及びロタウイルス由来の抗原タンパク質の同時及び大量発現、キメラウイルス類似粒子の合成、A型肝炎ウイルス及びロタウイルスに対する複合免疫ワクチンの開発と多様なウイルス抗原を含有する複合ウイルス類似粒子ワクチンの開発に適用することができる。
【0113】
以上のように本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい実現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれの等価物によって定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ウイルスの抗原及びロタウイルスの抗原が連結されたロタウイルス複合抗原。
【請求項2】
前記異種ウイルスは、A型肝炎ウイルスである、請求項1に記載のロタウイルス複合抗原。
【請求項3】
前記ロタウイルスの抗原はVP7タンパク質であり、前記A型肝炎ウイルスの抗原はドメイン2(D2)またはドメイン3(D3)である、請求項2に記載のロタウイルス複合抗原。
【請求項4】
前記VP7タンパク質は配列表における第1配列のアミノ酸配列を含み、前記D2は配列表における第2配列のアミノ酸配列を含み、前記D3は配列表における第3配列のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のロタウイルス複合抗原。
【請求項5】
前記ロタウイルスの抗原と前記A型肝炎ウイルスの抗原とは、Leu-Glu-Pro-GlyまたはLys-Asp-Glu-Leuのペプチドリンカー(peptide linker)によって連結されている、請求項4に記載のロタウイルス複合抗原。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の組み換え型のロタウイルス複合抗原を含むワクチン組成物。
【請求項7】
(i)異種ウイルスの抗原及びロタウイルスの抗原が連結された複合抗原をコードするヌクレオチド配列と、
(ii)前記複合抗原をコードする配列に動作可能に連結されたプロモーターと
を含む請求項1に記載のロタウイルス複合抗原発現用コンストラクト。
【請求項8】
請求項7に記載のロタウイルス複合抗原発現用コンストラクトで形質転換された宿主細胞。
【請求項9】
(a)請求項8に記載の宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記工程(a)で培養された細胞から組み換えロタウイルス複合抗原タンパク質を分離及び精製する工程と
を含むロタウイルス複合抗原の生産方法。
【請求項10】
(i)ロタウイルスのVP2、VP4及びVP6のポリペプチド、及び(ii)請求項1ないし5のいずれか一項に記載のロタウイルス複合抗原とを含むロタウイルスのウイルス類似粒子。
【請求項11】
請求項10のロタウイルスのウイルス類似粒子を含むワクチン組成物。
【請求項12】
(i)プロモーターに動作可能に連結されたVP2コーディングヌクレオチド配列を含む第1の組み換えバキュロウイルス;
(ii)プロモーターに動作可能に連結されたVP4コーディングヌクレオチド配列を含む第2の組み換えバキュロウイルス;
(iii)プロモーターに動作可能に連結されたVP6コーディングヌクレオチド配列を含む第3の組み換えバキュロウイルス;及び
(iv)プロモーターに動作可能に連結されたロタウイルス複合抗原コーディングヌクレオチド配列を含む第4の組み換えバキュロウイルスを含み、
前記ロタウイルス複合抗原は、異種ウイルスの抗原及びロタウイルスの抗原が連結されたものである、請求項10に記載のロタウイルスのウイルス類似粒子の発現用コンストラクト。
【請求項13】
(a)請求項12に記載のコンストラクトで形質転換された宿主細胞を培養する工程と、
(b)前記工程(a)で培養された細胞からロタウイルスのウイルス類似粒子を分離及び精製する工程と
を含む請求項10に記載のロタウイルスのウイルス類似粒子を生産方法。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【公開番号】特開2011−234716(P2011−234716A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102474(P2011−102474)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510176787)チュン−アン ユニバーシティ インダストリー−アカデミー コーオペレイション ファンデイション (1)
【氏名又は名称原語表記】Chung−Ang University Industry−Academy Cooperation Foundation
【住所又は居所原語表記】Chung−Ang Univ.,Heukseok−dong,Dongjak−ku,Seoul 156−756,Republic of Korea
【Fターム(参考)】