説明

ロッカー室管理システム

【課題】ロッカーを利用する者の利便性の向上を図ったロッカー室管理システムを提供する。
【解決手段】入退室管理部2は、複数のロッカー31,32,33が配置されたロッカー室20への利用者の入退室を管理する。演算部4は、ロッカーを利用者に仮に割り当てた場合にとり得る割当パターンを求める。演算部4は、ロッカー室20への各利用者の入退室の履歴に基づいて、各割当パターンについて、ロッカーの利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの各利用者間で、各利用者のロッカー室20での滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求める。演算部4は、とり得る割当パターンのうち重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカー室に設置されたロッカーを利用者に割り当てるロッカー室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に会社のオフィス等には、複数のロッカーが設置されたロッカー室が設けられている。ロッカーを利用者に割り当てる方法には、明確なルールが無いことが多い。例えば、空いているロッカーを新入社員に割り当てたり、同じ部や課でまとめたりする方法が殆どである。
【0003】
下記の特許文献1には、貸与された物品の盗難や紛失を防止することを目的としたロッカールームシステムが開示されている。また、下記の特許文献2には、塾、学校、又は会社等に通う管理対象者の出退状況を連絡先に通知する出退管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−247391号公報
【特許文献2】国際公開第2006/011557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロッカーを利用する時に利用者が占有する領域は、殆どの場合、ロッカーの設置間隔に比べて広い。そのため、隣接するロッカーの利用者が鉢合わせし、互いに気を遣わねばならない状況が生じることがある。特にロッカー室内の通路が狭い場合には、利用者同士が接触することもあるため、隣接するロッカーの利用者は互いに避けながらロッカーを利用する必要がある。例えば自分のロッカーの前で着替えている場合であっても、隣接するロッカーの利用者の存在や動きに気をつけながら、接触しないように着替える必要がある。また、ロッカー室の出入口と自分のロッカーとの間に、ロッカーを利用している利用者が既に存在する場合には、その利用者を避けながら自分のロッカーに向かう必要がある。このとき、ロッカーを既に利用している利用者は、自分の前又は後ろを通過する他の利用者の動きに気をつけながらロッカーを利用する必要がある。また、複数の利用者が同時に各自のロッカーを利用するとロッカー室が混雑するため、狭いスペース内で互いに気を遣いながらロッカーを利用したり、着替えたり、通路を通ったりする必要がある。そのため、各利用者の作業効率が低下するおそれがある。以上のように、利用者に対してロッカーを無作為に割り当てると、利用者に不便を強いるおそれがある。
【0006】
なお、上述した特許文献1に記載のロッカールームシステムは、物品の盗難や紛失の防止を図るものであり、ロッカーを利用する者の利便性は考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、ロッカーを利用する者の利便性の向上を図ったロッカー室管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のロッカーが配置されたロッカー室への利用者の入退室を管理する入退室管理手段と、ロッカーを利用者に仮に割り当てた場合にとり得る割当パターンを求め、前記ロッカー室への各利用者の入退室の履歴に基づいて、前記とり得る割当パターンについて、ロッカーの利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの各利用者間で、各利用者の前記ロッカー室での滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、前記とり得る割当パターンのうち前記重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める演算手段と、を有することを特徴とするロッカー室管理システムである。
【0009】
また、本発明に係るロッカー室管理システムであって、前記演算手段は、前記とり得る割当パターンについて、互いに隣接するロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、前記とり得る割当パターンのうち前記重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るロッカー室管理システムであって、前記演算手段は、前記複数のロッカーの位置関係に応じた重み付け処理を、前記重複する時間帯の長さに対し行い、前記重み付け処理後の時間帯の長さに基づいて割当パターンを求める、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るロッカー室管理システムであって、前記演算手段は、前記重み付け処理として、左右方向に並んで配置されたロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに第1の重み付け係数を乗算し、上下方向に重ねて配置されたロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、前記第1の重み付け係数よりも大きい第2の重み付け係数を乗算し、前記重み付け処理後の時間帯の長さに基づいて割当パターンを求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ロッカーの利用者の移動領域に沿って配置されたロッカーの各利用者間で、各利用者のロッカー室での滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、その重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める。そのことにより、ロッカーの利用者の利便性を向上させることが可能な割当パターンを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るロッカー室管理システムを示すブロック図である。
【図2】ロッカー室への入退室の履歴を示す表である。
【図3】ロッカーの割当パターンを示す図である。
【図4】ロッカー室への入退室の履歴を示す図であり、重複する滞在時間の長さを説明するための図である。
【図5】ロッカーの割当パターンごとの重複度を示す表である。
【図6】二段重ねのロッカーを模式的に示す図である。
【図7】ロッカー室におけるロッカーの配置例を示す図である。
【図8】ロッカー室におけるロッカーの配置例を示す図であり、利用者の動線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、本実施形態に係るロッカー室管理システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るロッカー室管理システムを示すブロック図である。本発明の実施形態に係るロッカー室管理システム1は、ロッカー室20内に設置されたロッカーを利用者に割り当てるための割当パターンを求める。
【0015】
ロッカー室20はロッカーが配置された部屋であり、例えば会社のオフィス等に設けられている。ロッカー室20の壁には、利用者の出入口となる扉21が設けられている。図1に示す例では、3つのロッカー(ロッカー31,32,33)が一列に並んでロッカー室20内に設置されている。具体的には、ロッカー32を間にして、ロッカー32の一方側にロッカー31が設置され、ロッカー32の他方側にロッカー33が設置されている。例えば、扉21に対向する位置に、ロッカー31,32,33が一列に並んで設置されている。
【0016】
本実施形態に係るロッカー室管理システム1は、入退室管理部2と、入退室履歴記憶部3と、演算部4と、位置情報記憶部8と、出力部9とを備える。また、演算部4は、重複度算出部5と、統計処理部6と、割当パターン決定部7とを備える。
【0017】
入退室管理部2は、ロッカー室20に対する利用者の入退室を管理する。入退室履歴記憶部3は、入退室管理部2によって得られた利用者の入退室履歴情報を記憶する。入退室管理部2は、記憶媒体情報読取部22,23と、扉21の図示しない電気錠とに接続されている。
【0018】
記憶媒体情報読取部22,23は、利用者が所持する記憶媒体に記憶された記憶媒体情報を読み取る。記憶媒体情報読取部22は、扉21の付近であって、ロッカー室20の外側に設置されている。また、記憶媒体情報読取部23は、扉21の付近であって、ロッカー室20の内側に設置されている。利用者が所持する記憶媒体は、例えばカードや携帯端末である。記憶媒体に記憶された記憶媒体情報は、記憶媒体を所持するユーザ本人であることを証明する情報(ID)であり、例えば複数の文字を含むID番号や図形などを含む情報である。記憶媒体情報読取部22,23は、記憶媒体に対し接触又は非接触で記憶媒体情報を読み取り、その記憶媒体情報を入退室管理部2に出力する。本実施形態では、記憶媒体情報読取部22,23が記憶媒体情報を読み取る場合について説明したが、本実施形態はこの構成に限定されない。例えば、ユーザ本人であることを証明する情報であれば、記憶媒体情報読取部22,23は、指紋又は静脈等の生体情報を読み取り、その生体情報を入退室管理部2に出力するようにしてもよい。
【0019】
入退室管理部2は、ロッカー室20の利用者の個人情報を記憶している。利用者の個人情報は、例えばID番号と、ID番号に対応する入退室許可居室番号とを含む情報である。入退室許可居室番号とは、入退室が許可される居室に番号を付したものである。
【0020】
入退室管理部2は、記憶媒体情報読取部22,23が読み取った記憶媒体情報と、入退室管理部2に記憶されている個人情報とを照合して、利用者の入退室を管理する。具体的には、利用者の入室時に、入退室管理部2は、ロッカー室20の外側の記憶媒体情報読取部22から記憶媒体情報である例えばID番号を受信する。そして、入退室管理部2は、記憶媒体情報読取部22から出力されたID番号と、入退室管理部2に記憶されているID番号とを照合し、一致したID番号に対応する入退室許可居室番号に基づいて入室の確認を行う。ロッカー室20の入退室許可居室番号がある場合、入退室管理部2は、利用者の入室を確認するとともに、扉21の電気錠に解錠指令を出力する。このとき、記憶媒体情報読取部22は、利用者の入室が許可された旨を音声又はランプ等の表示により報知してもよい。一方、ロッカー室20の入退室許可居室番号がない場合、入退室管理部2は、利用者の入室を許可せず、扉21の電気錠は施錠状態のままとなる。このとき、記憶媒体情報読取部22は、利用者が入室を許可されていない旨を音声又はランプ等の表示により報知してもよい。
【0021】
利用者の退室時に、入退室管理部2は、ロッカー室20の内側の記憶媒体情報読取部23から記憶媒体情報であるID番号を受信する。そして、入退室管理部2は、記憶媒体情報読取部23から出力されたID番号と、入退室管理部2に記憶されているID番号とを照合し、ID番号が一致することにより退室の確認を行う。ID番号が一致した場合、入退室管理部2は、利用者の退室を確認するとともに、扉21の電気錠に解錠指令を出力する。このとき、記憶媒体情報読取部23は、利用者の退室が許可された旨を音声又はランプ等の表示により報知してもよい。
【0022】
入退室管理部2は、利用者の入室を確認した時点と退室を確認した時点とに基づいて、その利用者がロッカー室20に滞在していた滞在時間帯(利用時間帯)を求め、入室時点、退室時点、及び滞在時間帯を示す情報を利用者の入退室履歴情報として管理する。入退室履歴記憶部3は、各利用者の入退室履歴情報を記憶する。例えば、入退室管理部2は、利用者の入室を確認した時刻(入室時刻)と退室を確認した時刻(退室時刻)とに基づいて、その利用者がロッカー室20に滞在していた滞在時間帯を求める。この場合、入室時刻と退室時刻との間の時間帯が、滞在時間帯に該当する。入退室履歴記憶部3は、入室時刻、退室時刻、及び滞在時間帯を示す入退室履歴情報を記憶する。なお、ロッカー室20の内側に記憶媒体情報読取部23を設けず、記憶媒体情報読取部22のみを外側に設けて、入室時のみ照合を行ってもよい。この場合、入退室管理部2は、入室時刻に所定時間を加えた時刻を退室時刻として推定し、入室時刻と推定された退室時刻とに基づいて、利用者がロッカー室20に滞在していた滞在時間帯を求める。入室時刻に加える所定時間は、予め入退室管理部2に設定されていてもよいし、操作者が図示しない入力部を用いて所定時間を示す値を入力するようにしてもよい。例えば、利用者の過去の滞在時間の長さを、所定時間としてもよい。
【0023】
図2を参照して、各利用者の入退室履歴の一例について説明する。図2は、ロッカー室への入退室の履歴を示す表である。一例として、ロッカー室20の利用者を、利用者A,B,Cの3人とする。図2の表は、利用者A,B,Cの一日におけるロッカー室20への入退室の履歴を示している。例えば、利用者Aは、08:30(入室時刻T1)にロッカー室20に入室し、08:35(退室時刻T2)にロッカー室20を退室している。その後、利用者Aは、20:45(入室時刻T3)にロッカー室20に入室し、20:50(退室時刻T4)にロッカー室20を退室している。また、利用者Bは、08:34(入室時刻T1)にロッカー室20に入室し、08:39(退室時刻T2)にロッカー室20を退室している。その後、利用者Bは、20:49(入室時刻T3)にロッカー室20に入室し、20:54(退室時刻T4)にロッカー室20を退室している。また、利用者Cは、08:32(入室時刻T1)にロッカー室20に入室し、08:37(退室時刻T2)にロッカー室20を退室している。その後、利用者Cは、20:43(入室時刻T3)にロッカー室20に入室し、20:48(退室時刻T4)にロッカー室20を退室している。例えば会社に勤める従業員(利用者の一例)は、図2に示す入退室履歴の例のように、出社時にロッカー室20を利用し、その後、退社時に再びロッカー室20を利用することが想定される。入退室履歴記憶部3は、利用者Aの入退室履歴情報(入室時刻T1,退室時刻T2,入室時刻T3,退室時刻T4)と、利用者Bの入退室履歴情報(入室時刻T1,退室時刻T2,入室時刻T3,退室時刻T4)と、利用者Cの入退室履歴情報(入室時刻T1,退室時刻T2,入室時刻T3,退室時刻T4)とを記憶する。
【0024】
演算部4は、ロッカー室20の各利用者の入退室履歴に基づいて、ロッカーを各利用者に割り当てるための割当パターンを求める。演算部4は、各利用者のロッカー室20での滞在時間帯が各利用者間で重複する時間帯の長さを求め、その重複する時間帯の長さに基づいて割当パターンを求める。換言すると、演算部4は、各利用者が互いに重複してロッカー室20に滞在した時間の長さを求め、その時間の長さに基づいて割当パターンを決定する。例えば、演算部4は、ロッカーの利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者を対象にし、各利用者のロッカー室20での滞在時間帯(利用時間帯)が各利用者間で重複する時間帯(以下、「重複時間」と称する場合がある)の長さを求め、各利用者間での重複時間の長さが短くなる割当パターンを求める。ここで、利用者の移動領域は、利用者が存在する可能性が高い領域であり、例えば、ロッカー室20での利用者の動線が該当する。利用者の移動領域(動線)に沿った位置に配置されたロッカーの一例として、互いに隣接するロッカーが挙げられる。すなわち、互いに隣接するロッカーは、利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの概念に含まれるものとする。一例として、隣接するロッカーの利用者を対象にし、各利用者のロッカー室20での滞在時間帯(利用時間帯)が各利用者間で重複する時間帯の長さを求め、各利用者間での重複時間の長さが短くなる割当パターンを求める場合について説明する。以下、演算部4に含まれる重複度算出部5、統計処理部6、及び割当パターン決定部7について説明する。
【0025】
重複度算出部5は、ロッカー室20の各利用者の入退室履歴に基づいて、各利用者のロッカー室20での滞在時間帯(利用時間帯)が各利用者間で重複する時間帯(重複時間)の長さを求める。換言すると、重複度算出部5は、各利用者が互いに重複してロッカー室20に滞在した時間の長さを求める。重複度算出部5は、重複時間の長さを利用者ごとに求める。ここで、重複時間の長さを、重複度とする。重複度算出部5は、利用者にロッカーを仮に割り当てた場合にとり得るすべての割当パターンを求め、各割当パターンについて、ロッカーの利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの各利用者間で、各利用者の滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を利用者ごとに求める。一例として、重複度算出部5は、各割当パターンについて、隣接するロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を利用者ごとに求める。
【0026】
まず、重複度算出部5は、ロッカー室20に設置された各ロッカーの位置を示す位置情報(座標情報)と、各利用者の個人情報(例えばID番号)とに基づいて、利用者にロッカーを仮に割り当てた場合にとり得るすべての割当パターンを求める。利用者の個人情報は入退室管理部2によって管理されているため、重複度算出部5は、各利用者の個人情報を入退室管理部2から取得する。また、ロッカー室20に設置された各ロッカーの位置を示す位置情報(座標情報)は、位置情報記憶部8に予め記憶されている。例えば、位置情報記憶部8には、ロッカーを識別するための識別情報(例えば番号)と、ロッカーの位置を示す位置情報とが対応付けられて記憶されている。なお、ロッカー室20の出入口である扉21の位置を座標系の原点とし、その原点を基準にして各ロッカーの位置(座標)を求めればよい。また、位置情報記憶部8には、扉21の位置を示す位置情報と、ロッカー室20の壁の位置を示す位置情報とが記憶されていてもよい。
【0027】
一例として、図1に示す3つのロッカー31,32,33を、3人の利用者A,B,Cに割り当てる場合について説明する。図3に、ロッカー31,32,33を利用者A,B,Cに仮に割り当てた場合の割当パターンを示す。図3は、ロッカーの割当パターンを示す図である。ロッカー31,32,33は、ロッカー32を中心にして対称に配置されているため、割当パターンには3つの割当パターン1,2,3がある。具体的には、割当パターン1では、利用者Aにロッカー31が割り当てられており、利用者Bにロッカー32が割り当てられており、利用者Cにロッカー33が割り当てられている。また、割当パターン2では、利用者Bにロッカー31が割り当てられており、利用者Aにロッカー32が割り当てられており、利用者Cにロッカー33が割り当てられている。また、割当パターン3では、利用者Bにロッカー31が割り当てられており、利用者Cにロッカー32が割り当てられており、利用者Aにロッカー33が割り当てられている。
【0028】
重複度算出部5は、利用者A,B,Cの入退室履歴に基づいて、割当パターン1,2,3について、隣接するロッカーの利用者間で滞在時間帯(利用時間帯)が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。一例として、図4を参照して、割当パターン1における利用者A,B,Cの重複度を求める方法について説明する。図4は、ロッカー室への入退室の履歴を示す図であり、滞在時間帯が重複する重複時間の長さを説明するための図である。
【0029】
(利用者Aについて)
割当パターン1では、利用者Aにロッカー31が割り当てられている。ロッカー31に隣接するロッカーはロッカー32であり、ロッカー32は利用者Bに割り当てられている。従って、利用者Aについては、利用者Bが重複度の計算の対象となる。重複度算出部5は、利用者Aについては、利用者Bとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度α)を求める。
【0030】
利用者Aについての重複度αは、以下に示す式のように、
1分(利用者Aの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯と、利用者Bの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯とが重なる時間の長さ)+1分(利用者Aの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯と、利用者Bの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯とが重なる時間の長さ)=2分、となる。
【0031】
より詳しく説明すると、図2及び図4に示すように、利用者Aの第1の滞在時間帯は、入室時刻T1(08:30)から退室時刻T2(08:35)までの時間帯であり、利用者Bの第1の滞在時間帯は、入室時刻T1(08:34)から退室時刻T2(08:39)までの時間帯である。従って、利用者Aと利用者Bとでは、08:34から08:35までの間で、1分間、滞在時間帯が重複している。また、利用者Aの第2の滞在時間帯は、入室時刻T3(20:45)から退室時刻T4(20:50)までの時間帯であり、利用者Bの第2の滞在時間帯は、入室時刻T3(20:49)から退室時刻T4(20:54)までの時間帯である。従って、利用者Aと利用者Bとでは、20:49から20:50までの間で、1分間、滞在時間帯が重複している。従って、利用者Aについての重複度αは、2分(1分+1分)となる。
【0032】
(利用者Bについて)
割当パターン1では、利用者Bに中央のロッカー32が割り当てられている。ロッカー32に隣接するロッカーはロッカー31,33であり、ロッカー31は利用者Aに割り当てられており、ロッカー33は利用者Cに割り当てられている。従って、利用者Bについては、利用者A,Cが重複度の計算の対象となる。重複度算出部5は、利用者Bについては、利用者Aとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度αB1)と、利用者Cとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度αB2)とを求め、重複度αB1と重複度αB2とを加算することにより、利用者Bについての重複度αを求める。
【0033】
利用者Bについての重複度は、以下に示す式のように、
1分(利用者Bの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯と、利用者Aの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯とが重なる時間の長さ)+1分(利用者Bの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯と、利用者Aの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯とが重なる時間の長さ)+3分(利用者Bの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯と、利用者Cの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯とが重なる時間の長さ)+0分(利用者Bの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯と、利用者Cの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯とが重なる時間の長さ)=5分、となる。
【0034】
利用者Aについての計算で説明したように、利用者Aと利用者Bとでは滞在時間帯が2分間重複しているため、利用者Aと利用者Bとの間の重複度αB1は、2分(1分+1分)となる。一方、利用者Bの第1の滞在時間帯は、入室時刻T1(08:34)から退室時刻T2(08:39)までの時間帯であり、利用者Cの第1の滞在時間帯は、入室時刻T1(08:32)から退室時刻T2(08:37)までの時間帯である。従って、利用者Bと利用者Cとでは、08:34から08:37までの間で、3分間、滞在時間帯が重複している。また、利用者Bの第2の滞在時間帯は、入室時刻T3(20:49)から退室時刻T4(20:54)までの時間帯であり、利用者Cの第2の滞在時間帯は、入室時刻T3(20:43)から退室時刻T4(20:48)までの時間帯である。従って、利用者Bと利用者Cとでは、第2の滞在時間帯においては滞在時間帯が重複していない。従って、利用者Bの利用者Cとの間の重複度αB2は、3分となる。よって、利用者Bについての重複度αは、5分(1分+1分+3分+0分)となる。
【0035】
(利用者Cについて)
割当パターン1では、利用者Cにロッカー33が割り当てられている。ロッカー33に隣接するロッカーはロッカー32であり、ロッカー32は利用者Bに割り当てられている。従って、利用者Cについては、利用者Bが重複度の計算の対象となる。重複度算出部5は、利用者Cについては、利用者Bとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度α)を求める。
【0036】
利用者Cについての重複度αは、以下に示す式のように、
3分(利用者Cの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯と、利用者Bの入室時刻T1〜退室時刻T2までの時間帯とが重なる時間の長さ)+0分(利用者Cの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯と、利用者Bの入室時刻T3〜退室時刻T4までの時間帯とが重なる時間の長さ)=3分、となる。
【0037】
利用者Bについての計算で説明したように、利用者Bと利用者Cとでは滞在時間帯が3分間重複しているため、利用者Cについての重複度αは、3分(3分+0分)となる。
【0038】
重複度算出部5は、割当パターン1における利用者A,B,Cの重複度と同様に、割当パターン2,3のそれぞれにおける利用者A,B,Cの重複度を求める。そして、重複度算出部5は、各割当パターンにおける各利用者の重複度を示す重複度情報を統計処理部6に出力する。上述した例では、重複度算出部5は、割当パターン1における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度を示す重複度情報と、割当パターン2における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度を示す重複度情報と、割当パターン3における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度を示す重複度情報とを統計処理部6に出力する。
【0039】
割当パターン1,2,3における利用者A,B,Cの重複度を、図5に示す。図5は、ロッカーの割当パターンごとの重複度を示す表である。図5の表に示すように、割当パターン1では、利用者Aの重複度αは2分であり、利用者Bの重複度αは5分であり、利用者Cの重複度αは3分である。また、割当パターン2では、利用者Aの重複度αは8分であり、利用者Bの重複度αは2分であり、利用者Cの重複度αは6分である。また、割当パターン3では、利用者Aの重複度αは6分であり、利用者Bの重複度αは3分であり、利用者Cの重複度αは9分である。
【0040】
統計処理部6は、重複度算出部5によって求められた重複度情報を受けて、重複度の平均値や分散を求める。例えば、統計処理部6は、同じ割当パターンにおける利用者A,B,Cのそれぞれの重複度α,α,αの平均値や分散を求める。具体的には、統計処理部6は、割当パターン1における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度α,α,αの平均値と分散とを求める。また、統計処理部6は、割当パターン2における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度α,α,αの平均値と分散とを求める。また、統計処理部6は、割当パターン3における利用者A,B,Cのそれぞれの重複度α,α,αの平均値と分散とを求める。割当パターン1,2,3における重複度の平均値と分散とを、図5に示す。例えば割当パターン1については、重複度の平均値は3.33分となり、重複度の分散は1.56分となる。統計処理部6は、各割当パターンにおける重複度の平均値と分散値とを示す統計情報を、割当パターン決定部7に出力する。なお、統計処理部6は、各割当パターンにおける重複度の平均値のみを求め、平均値を示す統計情報を、割当パターン決定部7に出力してもよい。
【0041】
割当パターン決定部7は、統計処理部6によって求められた統計情報に基づいて、ロッカーを利用者に割り当てるための割当パターンを決定する。例えば、割当パターン決定部7は、各割当パターンにおける重複度の平均値や分散を比較し、重複度の平均値や分散が最小となる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力する。割当パターン決定部7は、重複度の平均値と分散とが共に最小となる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力してもよいし、重複度の平均値が最も小さくなる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力してもよい。重複度が小さいということは、利用者の移動領域に沿って配置されたロッカーの利用者間(例えば、隣接するロッカーの利用者間)で、重複する滞在時間帯の長さが短いことを意味している。割当パターン情報は、例えば、ロッカーの識別情報(例えば番号)と利用者の個人情報(例えばID番号)との対応付けを示す情報である。
【0042】
図5に示す例では、割当パターン1における重複度の平均値及び分散が、割当パターン2,3における重複度の平均値及び分散よりも小さい。そのため、割当パターン決定部7は、割当パターン1を、利用者にロッカーを割り当てるための割当パターンに決定し、割当パターン1を示す割当パターン情報を出力部9に出力する。図3に示す例では、割当パターン1を示す割当パターン情報は、ロッカー31の識別情報(例えば番号)と利用者Aの個人情報(例えばID番号)との対応付け、ロッカー32の識別番号と利用者Bの個人情報との対応付け、及び、ロッカー33の識別情報と利用者Cの個人情報との対応付けを示している。
【0043】
出力部9は、演算部4によって求められた割当パターンを表示したり、割当パターン情報を記憶したり、割当パターン情報をロッカー室管理システム1の外部に出力したりする。例えば、出力部9は表示装置で構成されており、演算部4によって求められた割当パターンを表示してもよい。または、出力部9は記憶装置で構成されており、割当パターン情報を記憶してもよい。または、出力部9は紙等に印刷を行うプリンタで構成されており、割当パターンを紙等に印刷してもよい。または、出力部9は、ネットワークインターフェース等の通信装置で構成されており、割当パターン情報をロッカー室管理システム1の外部に送信してもよい。上述した例では、出力部9は、割当パターン1を示す割当パターン情報を割当パターン決定部7から受けて、割当パターン1におけるロッカーと利用者との対応関係を示す表や図を、表示したり印刷したりする。例えば、出力部9は、ロッカー31の識別情報と利用者Aの個人情報との対応、ロッカー32の識別情報と利用者Bの個人情報との対応、及びロッカー33の識別情報と利用者Cの個人情報との対応を示す対応表や図を、表示したり印刷したりする。
【0044】
上述した構成を有するロッカー室管理システム1によると、利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者間で重複度を求め、その重複度が最小となる割当パターンを求めることにより、利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者間で、利用時間帯(滞在時間帯)が重なり難くなる割当パターンを求めることができる。一例として、隣接するロッカーの利用者間で重複度を求め、その重複度が最小となる割当パターンを求めることにより、隣接するロッカーの利用者間で利用時間帯(滞在時間帯)が重なり難くなる割当パターンを求めることができる。従って、ロッカー室を管理する管理者等は、ロッカー室管理システム1によって得られた割当パターンに従って各ロッカーを各利用者に割り当てることにより、利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者間(例えば、隣接するロッカーの利用者間)で利用時間帯が重なり難くなるように、各ロッカーを各利用者に割り当てることが可能となる。例えば、管理者等は、出力部9によって印刷又は表示された割当パターンを参照しながら、各ロッカーを各利用者に割り当てることにより、利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者間(例えば、隣接するロッカーの利用者間)で利用時間帯が重なり難くなるように、各ロッカーを各利用者に割り当てることが可能となる。その結果、利用者同士で気を遣わなければならない状況が生じ難くなるため、利用者の心的負荷を軽減することが可能となる。特にロッカー室20内の通路が狭い場合であっても、隣接するロッカーの利用者間で利用時間帯が重なり難くなるため、利用者同士の接触が生じ難くなる。このように、本実施形態に係るロッカー室管理システム1によると、ロッカー利用者の利便性を向上させることが可能な割当パターンを求めることができる。
【0045】
なお、ロッカーの利用者のなかには、孤独を好む者もいれば群集を好む者もいる。例えば、孤独及び群集の好みの傾向を数値で表し、割当パターン決定部7は、孤独を好む利用者と他の利用者との重複度が低くなり、かつ、群集を好む者同士の重複度が高くなるような割当パターンを出力するようにしてもよい。これにより、各利用者の好みの傾向を満たしつつ、ロッカーを利用者に割り当てることが可能となる。
【0046】
(複数段のロッカー)
上述した例では、一段のロッカーを対象にした場合について説明したが、ロッカーが二段以上に重ねられている場合についても、上述した実施形態と同様にロッカーの割当パターンを求めることができる。図6を参照して、二段重ねのロッカーを対象にしてロッカーの割当パターンを決定する場合について説明する。図6は、二段重ねのロッカーを模式的に示す図である。
【0047】
一例として、6つのロッカー31,32,33,34,35,36を、6人の利用者A,B,C,D,E,Fに割り当てる場合について説明する。図6に、ロッカー31,32,33,34,35,36を、利用者A,B,C,D,E,Fに仮に割り当てた場合の割当パターンの1つを示す。例えば、一段目にはロッカー34,35,36が一列に配置され、一段目のロッカーの上にはロッカー31,32,33が一列に配置されている。より具体的には、一段目のロッカー34の上には二段目のロッカー31が配置され、一段目のロッカー35の上には二段目のロッカー32が配置され、一段目のロッカー36の上には二段目のロッカー33が配置されている。
【0048】
上述したように、位置情報記憶部8には、各ロッカーの位置を示す位置情報が記憶されている。複数段のロッカーの場合、各ロッカーの位置情報には、ロッカー室20内の平面上の位置を示す位置情報と、高さ方向(上下方向)の位置を示す位置情報とが含まれる。高さ方向の位置によって、一段目のロッカーと二段目のロッカーとを区別することができる。例えば、ロッカー31の位置情報とロッカー34の位置情報とでは、ロッカー室20内の平面上の位置を示す情報は同じであるが、高さ方向の位置を示す情報が異なるため、演算部4は、ロッカー31とロッカー34とを区別することができる。
【0049】
重複度算出部5は、図1に示す例と同様に、利用者にロッカーを仮に割り当てた場合にとり得るすべての割当パターンを求める。そして、重複度算出部5は、各利用者の入退室履歴に基づいて、隣接するロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。重複度算出部5は、各割当パターンについて、利用者A,B,C,D,E,Fの重複度を求める。例えば利用者Bに割り当てられたロッカー32には、ロッカー31,33,34,35,36が隣接しているため、利用者Bについては、利用者A,C,D,E,Fが重複度の計算の対象となる。従って、重複度算出部5は、利用者Bについては、利用者A,C,D,E,Fとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。重複度算出部5は、他のロッカーの利用者についても同様に重複度を求める。そして、重複度算出部5は、各割当パターンについて各利用者の重複度を求める。上述した例と同様に、統計処理部6は、重複度の平均及び分散を求め、割当パターン決定部7は、重複度の平均値等に基づいて割当パターンを決定する。例えば、割当パターン決定部7は、重複度の平均値が最小となる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力する。
【0050】
また、重複度算出部5は、各ロッカーの位置関係に応じた重み付け処理を行うことにより重複度を求めてもよい。具体的には、重複度算出部5は、各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、各ロッカーの位置関係に応じた重み付け係数を乗算することにより、各利用者の重複度を求める。例えば、上下方向に重ねて配置されたロッカーの各利用者は、同じ位置でそれぞれのロッカーを利用することになる。そのため、利用者の不便さがより増すことになる。従って、左右方向(平面方向)に隣接して配置されたロッカーに対する第1の重み付け係数(例えば「1」)よりも、上下方向(高さ方向)に重ねて配置されたロッカーに対する第2の重み付け係数を大きくすることが好ましい。例えば、重複度算出部5は、左右方向に隣接して配置されたロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、第1の重み付け係数(例えば「1」)を乗算し、上下方向に重ねて配置されたロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、1よりも大きい第2の重み付け係数を乗算することにより、重複度を求める。そのことにより、上下方向に重ねて配置されたロッカーの利用者の不便さを考慮に入れた重複度を求めることができる。
【0051】
一例として、利用者Aについての重複度αを求める場合について説明する。例えば利用者Aに割り当てられたロッカー31には、ロッカー32,34,35が隣接しているため、利用者Aについては、利用者B,D,Eが重複の計算の対象となる。従って、重複度算出部5は、利用者Aについては、利用者B,D,Eとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求める。利用者Aと利用者B,Eとの間については、ロッカー31とロッカー32,35とが左右方向(平面方向)に隣接しているため、重複度算出部5は、第1の重み付け係数を「1」として、利用者Aと利用者B,Eとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。一方、利用者Aと利用者Dとの間については、ロッカー31とロッカー34とが上下方向に重ねて配置されている。従って、重複度算出部5は、利用者Aと利用者Dとの間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、重複する時間帯の長さに1よりも大きい第2の重み付け係数を乗算することにより重複度を求める。ロッカー31とロッカー34とは隣り合っているだけではなく、上下に重ねて配置された関係にあるため、利用者A,Dは、同じ位置でそれぞれのロッカーを利用することになる。そこで、利用者A,D間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、1よりも大きい第2の重み付け係数を乗算することにより、利用者A,Dの不便さを考慮に入れた重複度を求めることができる。
【0052】
また、重複度算出部5は、隣接するロッカーの数に応じた重み付け処理を行うことにより重複度を求めてもよい。隣接するロッカーの数が多くなるほど、利用可能なスペースがより狭くなったり、他の利用者と接触する機会が多くなったりするおそれがある。そのため、利用者の不便さがより増すことになる。従って、重複度算出部5は、隣接するロッカーの数が多い利用者の重複度ほど、大きい重み付け係数を乗算することが好ましい。
【0053】
例えば、ロッカー32,35は、隣接するロッカーの数がロッカー31,33,34,36よりも多い。この場合、重複度算出部5は、ロッカー32,35の利用者B,Eの重複度には、ロッカー31,33,34,36の利用者A,C,D,Fの重複度よりも大きい重み付け係数を乗算する。例えば、重複度算出部5は、利用者B,Eについて求められた重複時間の長さに、1よりも大きい重み付け係数を乗算することにより重複度を求める。そのことにより、隣接するロッカーの数による利用者の不便さを考慮に入れた重複度を求めることができる。
【0054】
なお、1つのロッカーを複数の者が共用する場合がある。例えば、ロッカーの数よりも利用者の数が多い場合には、1つのロッカーを複数の利用者に割り当てる場合がある。この場合、上下方向に重ねて配置されたロッカーの各利用者の重複度と同様に、重み付け処理を行うことが好ましい。1つのロッカーを他の利用者と共用する利用者は、同じ位置でロッカーを利用することになるため、利用者の不便さがより増すことになる。例えば、重複度算出部5は、同じロッカーが割り当てられている利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、1よりも大きい重み付け係数を乗算することにより重複度を求める。そのことにより、1つのロッカーを共用する複数の利用者の不便さを考慮に入れた重複度を求めることができる。
【0055】
次に、図7を参照して、ロッカーの別の配置例について説明する。図7は、ロッカー室の別の例を示す図である。上述した例では、図1に示すように3つのロッカー31,32,33がロッカー室20に設置されている場合について説明したが、ロッカーの数が多い場合であっても、本実施形態に係るロッカー室管理システム1によって、ロッカーの割当パターンを求めることができる。
【0056】
例えば図7に示すように、ロッカーA,B,C,D,E,Fが一列に配置され、ロッカーG,H,I,J,K,Lが一列に配置され、ロッカーM,N,O,P,Q,Rが一列に配置されている場合について説明する。ロッカーA〜Fで構成される列をロッカー列50Aとし、ロッカーG〜Lで構成される列をロッカー列50Bとし、ロッカーM〜Rで構成される列をロッカー列50Cとする。ロッカー列50Aとロッカー列50Bとは、所定距離を隔てて対向して配置されている。すなわち、ロッカー列50Aとロッカー列50Bとは、通路を隔てて対向して配置されている。また、ロッカー列50Cは、他のロッカー列を間にして、ロッカー列50A,50Bから離れた位置に配置されている。ロッカー列50Cは、ロッカー室20の壁から所定距離を隔てて壁に対して対向して配置されている。
【0057】
重複度算出部5は、図1に示す例と同様に、利用者にロッカーを仮に割り当てた場合にとり得るすべての割当パターンを求め、各割当パターンについて、利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの利用者間(例えば、隣接するロッカーの利用者間)で、滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。例えばロッカーBにはロッカーA,C,G,H,Iが隣接しているため、ロッカーBの利用者については、ロッカーA,C,G,H,Iの利用者が重複度の計算の対象となる。従って、重複度算出部5は、ロッカーBの利用者と、ロッカーA,C,G,H,Iの利用者との間で、滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。重複度算出部5は、他のロッカーの利用者についても同様に重複度を求める。そして、重複度算出部5は、各割当パターンについて各利用者の重複度を求める。上述した例と同様に、統計処理部6は、重複度の平均値及び分散を求め、割当パターン決定部7は、重複度の平均値等に基づいて割当パターンを決定する。例えば、割当パターン決定部7は、重複度の平均値が最小となる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力する。
【0058】
以上のように、ロッカーの数が多くなっても、本実施形態に係るロッカー室管理システム1によると、利用者の移動領域に沿って配置されたロッカーの利用者間(例えば、隣接するロッカーの利用者間)で、利用時間帯が重なり難くなる割当パターンを求めることが可能となる。
【0059】
上述した実施形態では、隣接するロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求めたが、対象領域を広げてもよい。一例として、隣接よりも広い利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者間で、滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求める場合について説明する。図7及び図8を参照して、利用者の動線を基準にして重複度を求める方法について説明する。図8は、ロッカー室におけるロッカーの配置例を示す図であり、利用者の動線を説明するための図である。
【0060】
ロッカー室20に入室した利用者は、扉21から自分のロッカーに向かっていくことが想定される。このとき、扉21と自分のロッカーとの間に、ロッカーを利用している利用者が既に存在する場合には、その利用者を避けながら自分のロッカーに向かう必要がある。また、ロッカーを既に利用している利用者は、自分の前又は後を通過する他の利用者の動きに気をつけながらロッカーを利用する必要がある。すなわち、利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複すると、利用者に不便を強いるおそれがある。
【0061】
例えば、ロッカーMの利用者は、ロッカーN,O,P,Q,Rの付近を通過しなければ、扉21からロッカーMに到達できない。そのため、ロッカーM〜Rの利用者は、滞在時間帯が重複すると不便を強いられるおそれがある。また、ロッカーAの利用者は、ロッカーB〜Lの付近を通過しなければ、扉21からロッカーAに到達できない。そのため、ロッカーA〜Lの利用者は、滞在時間帯が重複すると不便を強いられるおそれがある。そこで、本実施形態に係るロッカー室管理システム1は、利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求め、その重複度に基づいてロッカーの割当パターンを求める。
【0062】
まず、重複度算出部5は、上述した例と同様に、各ロッカーの位置を示す位置情報と、各利用者の個人情報とに基づいて、利用者にロッカーを仮に割り当てた場合にとり得るすべての割当パターンを求める。また、重複度算出部5は、扉21の位置を示す位置情報と、ロッカー室20の壁の位置を示す位置情報とを位置情報記憶部8から取得する。重複度算出部5は、目標のロッカー以外のロッカーと、ロッカー室20の壁とを避けて、目標のロッカーと扉21とを結ぶ最短の線を求める。そして、重複度算出部5は、その最短の線に沿った領域を、目標のロッカーの利用者の移動領域(動線)として仮定する。利用者の移動領域(動線)は、ある程度の幅を有していてもよい。例えばロッカーAについては、ロッカーAと扉21とを結ぶ線40Aが、他のロッカーと壁とを避けつつ最短の線となるため、重複度算出部5は、その最短の線40Aに沿った領域をロッカーAの利用者の移動領域(動線)として仮定する。すなわち、ロッカーAの利用者は、ほぼ線40Aに沿って扉21からロッカーAに向かうことが予想される。また、ロッカーFについては、ロッカーFと扉21とを結ぶ線40Fが、他のロッカーと壁とを避けつつ最短の線となるため、重複度算出部5は、その最短の線40Fに沿った領域をロッカーFの利用者の移動領域(動線)として仮定する。また、ロッカーMについては、ロッカー列50Cに沿った線40Mが、他のロッカーとロッカー室20の壁とを避けつつ最短の線となるため、重複度算出部5は、その最短の線40Mに沿った領域をロッカーMの利用者の移動領域(動線)として仮定する。重複度算出部5は、他のロッカーの利用者についても同様に移動領域(動線)を仮定する。
【0063】
そして、重複度算出部5は、各利用者の入退室履歴に基づいて、利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。重複度算出部5は、いずれかの利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者を1つのグループに含ませ、同じグループに含まれる利用者については、互いに重複度の計算の対象として各利用者の重複度を求める。例えばロッカーA〜Lは、ロッカーAの利用者の動線(線40A)に沿って配置されているため、ロッカーA〜Lの利用者は、同じグループ61に含まれる。また、ロッカーM〜Rの利用者は、ロッカーMの利用者の動線(線40M)に沿って配置されているため、ロッカーM〜Rの利用者は、同じグループ62に含まれる。すなわち、互いに対向するロッカー列に含まれるロッカーの利用者、又は、壁に対向するロッカー列に含まれるロッカーの利用者は、1つのグループに含まれると考えることができる。例えば、互いに対向するロッカー列50A,50Bに含まれるロッカーA〜Lの利用者は、1つのグループ61に含まれると考えることができる。また、ロッカー室20の壁に対向するロッカー列50Cに含まれるロッカーM〜Rの利用者は、1つのグループ62に含まれると考えることができる。
【0064】
ロッカーA〜Lの利用者はグループ61に含まれるため、重複度算出部5は、ロッカーA〜Lの利用者については、自分を除くロッカーA〜Lの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。例えばロッカーAの利用者については、同じグループ61に含まれるロッカーB〜Lの利用者が重複度の計算の対象となる。そのため、重複度算出部5は、ロッカーAの利用者については、ロッカーB〜Lの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。また、ロッカーFの利用者については、同じグループ61に含まれるロッカーA〜E,G〜Lの利用者が重複度の計算の対象となる。そのため、重複度算出部5は、ロッカーFの利用者については、ロッカーA〜E,G〜Lの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。
【0065】
また、ロッカーM〜Rの利用者はグループ62に含まれるため、重複度算出部5は、ロッカーM〜Rの利用者については、自分を除くロッカーM〜Rの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。例えばロッカーMの利用者については、同じグループ62に含まれるロッカーN〜Rの利用者が重複度の計算の対象となる。そのため、重複度算出部5は、ロッカーMの利用者については、ロッカーN〜Rの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。また、ロッカーRの利用者については、ロッカーM〜Qの利用者が重複度の計算の対象となる。そのため、重複度算出部5は、ロッカーRの利用者については、ロッカーM〜Qの利用者との間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さ(重複度)を求める。
【0066】
そして、重複度算出部5は、各割当パターンについて各利用者の重複度を求める。上述した例と同様に、統計処理部6は、重複度の平均値及び分散を求め、割当パターン決定部7は、重複度の平均値等に基づいて割当パターンを求める。例えば、割当パターン決定部7は、重複度の平均値が最小となる割当パターンを示す割当パターン情報を出力部9に出力する。
【0067】
以上のように、利用者の移動領域(動線)に沿って配置されたロッカーの利用者間で重複度を求め、その重複度が最小となる割当パターンを求めることにより、利用者の移動領域に沿って配置されたロッカーの利用者間で利用時間帯が重なり難くなる割当パターンを求めることができる。本実施形態で求められた割当パターンを用いて利用者にロッカーを割り当てることにより、利用者の移動領域に沿って配置されたロッカーの利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0068】
なお、重複度算出部5は、利用者の移動領域(動線)から所定距離内に含まれるロッカーの利用者を同じグループに含ませ、その同じグループに含まれる利用者について、互いに重複度の計算の対象としてもよい。
【0069】
また、利用者の動線を基準にして割当パターンを求める処理において、図6に示すようにロッカーが二段以上に重ねられている場合や、1つのロッカーを複数の利用者に割り当てる場合には、重複度算出部5は、上述したように、重み付け処理を行うことにより重複度を求めてもよい。
【0070】
なお、入退室管理部2、重複度算出部5、統計処理部6、及び割当パターン決定部7は、例えばハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現されてもよい。具体的には、入退室管理部2、重複度算出部5、統計処理部6、及び割当パターン決定部7のそれぞれの機能は、記憶媒体に記憶された入退室管理プログラム、重複度算出プログラム、統計処理プログラム、及び割当パターン決定プログラムがメインメモリに読み出されてCPU(Central Processing Unit)により実行されることによって実現される。入退室管理プログラム、重複度算出プログラム、統計処理プログラム、及び割当パターン決定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されることも可能であるし、データ通信として通信により提供されることも可能である。ただし、入退室管理部2、重複度算出部5、統計処理部6、及び割当パターン決定部7は、ハードウェアで実現されてもよい。また、入退室管理部2、重複度算出部5、統計処理部6、及び割当パターン決定部7は、物理的に1つの装置により実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 ロッカー室管理システム、2 入退室管理部、3 入退室履歴記憶部、4 演算部、5 重複度算出部、6 統計処理部、7 割当パターン決定部、8 位置情報記憶部、9 出力部、20 ロッカー室、21 扉、22,23 記憶媒体情報読取部、31,32,33 ロッカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロッカーが配置されたロッカー室への利用者の入退室を管理する入退室管理手段と、
ロッカーを利用者に仮に割り当てた場合にとり得る割当パターンを求め、前記ロッカー室への各利用者の入退室の履歴に基づいて、前記とり得る割当パターンについて、ロッカーの利用者の移動領域に沿った位置に配置されたロッカーの各利用者間で、各利用者の前記ロッカー室での滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、前記とり得る割当パターンのうち前記重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める演算手段と、
を有することを特徴とするロッカー室管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のロッカー室管理システムであって、
前記演算手段は、前記とり得る割当パターンについて、互いに隣接するロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さを求め、前記とり得る割当パターンのうち前記重複する時間帯の長さが最小となる割当パターンを求める、
ことを特徴とするロッカー室管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のロッカー室管理システムであって、
前記演算手段は、前記複数のロッカーの位置関係に応じた重み付け処理を、前記重複する時間帯の長さに対し行い、前記重み付け処理後の時間帯の長さに基づいて割当パターンを求める、
ことを特徴とするロッカー室管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載のロッカー室管理システムであって、
前記演算手段は、前記重み付け処理として、左右方向に並んで配置されたロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに第1の重み付け係数を乗算し、上下方向に重ねて配置されたロッカーの各利用者間で滞在時間帯が重複する時間帯の長さに、前記第1の重み付け係数よりも大きい第2の重み付け係数を乗算し、前記重み付け処理後の時間帯の長さに基づいて割当パターンを求める、
ことを特徴とするロッカー室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221382(P2012−221382A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88657(P2011−88657)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】