説明

ロボット制御装置およびその制御方法

【課題】操作者の意図とは異なる方向へのアクチュエータの動作を防ぐことができると共に、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも簡単に対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】操作装置30を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なハンドガイドロボット1を制御するロボット制御装置において、ハンドガイドロボット1による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定し、制御装置40により、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御し、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット制御装置およびその制御方法に係り、特に、操作者の意図とは異なる方向へのアクチュエータの動作を防ぐことができると共に、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも簡単に対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場等において、重量物・長尺物ワークの組み立てなどの2人以上の作業員を必要とする作業は多く存在する。このような作業の省力化のため、ハンドガイド装置を持つロボットやアクチュエータを備えたパワーアシスト装置に関する研究・開発が進められている(例えば、特許文献1および特許文献2)。このパワーアシスト装置は、少なくともロボットハンドまたはアクチュエータの手先に取り付けられたグリッパ・加工機等のエンドエフェクタ、並びに、作業者が制御操作するための入力デバイスを備えている。
【0003】
このようなパワーアシスト装置において、操作者は入力デバイスを介してロボットハンドまたはアクチュエータを操作するが、その入力デバイスとして、例えば多軸入力が可能な力覚センサ、或いはジョイスティックやトラックボール等の位置偏差を利用するものなどが用いられている。この多軸入力は(ボタン操作やレバー操作などの)単軸入力に比べて操作可能な自由度が多い反面、操作者の意図とは異なる方向にも入力が受け付けられることがある。
【0004】
これに対処するべく非特許文献2では、操作者の手ぶれによる意図とは異なる方向へのアクチュエータの動作を防ぐ手法を提案している。この従来技術は、力覚センサを入力デバイスとしたハンドガイドシステムにおいて、作業の主方向(例えば搬送作業であれば、搬送前の場所から搬送先への方向)を設定し、主方向への入力に対してはアクチュエータの制御ゲインを大きくし、その他の方向への入力に対しては制御ゲインを小さくするものである。これにより、主方向以外の方向へは操作しづらくすることができ、また大きな力を加えることによって微調整を行うことも可能としている。
【0005】
また他方で、特開2009−34754号公報に開示の「パワーアシスト装置およびその制御方法」(特許文献3)では、ワークの位置決め作業に対する作業者の負担を軽減することを目的として、一連の作業タスクを複数の作業区間に分割して、「作業者の操作許容可否」および「パワーアシスト装置の自律動作可否」を作業区間毎に設定する手法が提案されている。ここで、「作業者の操作許容可否」は自由度を持つ各作動方向に対して駆動/解除されるブレーキ機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3872387号公報
【特許文献2】特開2008−213119号公報
【特許文献3】特開2009−34754号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS B 8433−1(5.10.3 ハンドガイド)
【非特許文献2】武居直行,村山英之,藤本英雄、「操作方向に依存して可変する手ぶれ補正アシスト」第26回日本ロボット学会学術講演会予稿集、RSJ2008AC3C3-04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した非特許文献2に開示されたハンドガイドシステムにおいては、操作できる主方向が予めプログラムされているため、動作中に主方向(または決められた軌道)以外の方向へ操作することが難しく、また、操作者の意図で操作できる主方向を変更することはできないという事情があった。そのため、多品種生産を行う現場など、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合には、(移動方向、移動量、或いはグリッパの開閉等のエンドエフェクタの操作タイミングなどの)システム操作に現場作業者の高度な判断を必要とし、対応しづらいという問題があった。さらに、作業自体が複雑でハンドガイドロボットを様々な方向に操作する必要がある場合にも対応しづらい。
【0009】
他方で、上述した特許文献3に開示された技術は、ワークの搬送経路として適当な軌道上の点(即ち位置)で作業区間を区切り、各作業区間で自由度を規制するものであることから、作業中に搬送経路を外れて作業することが難しく、また、操作者の意図で操作できる搬送経路を変更することはできないという事情があった。そのため、多品種生産を行う現場など、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合に、対応しづらいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、操作者の意図とは異なる方向へのアクチュエータの動作を防ぐことができると共に、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも簡単な設定変更で対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定する設定手段と、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度を制御テーブルとして設定する設定手段と、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記入力手段の操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式を制御テーブルとして設定する設定手段と、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記マニピュレータの可動範囲を制御テーブルとして設定する設定手段と、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のロボット制御装置において、前記分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることで前記ロボット装置による一連の作業を形成するものであって、前記工程切替手段は、作業工程を1工程進める工程進みスイッチと、作業工程を1工程戻す工程戻りスイッチと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のロボット制御装置において、作業対象物の姿勢および位置を検出する検出手段を備え、前記工程切替手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、現在の作業工程を認識することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のロボット制御装置において、前記制御手段は、操作者の操作指示に応じ各作業工程毎の制御テーブルに基づきマニピュレータを駆動制御する第1の制御モードと、制御プログラムに基づきマニピュレータを駆動制御する第2の制御モードと、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のロボット制御装置において、前記第1の制御モードおよび前記第2の制御モードの切替は、手動または自動で行われることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定する設定ステップと、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載の発明は、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度を制御テーブルとして設定する設定ステップと、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項11に記載の発明は、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記入力手段の操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式を制御テーブルとして設定する設定ステップと、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、請求項12に記載の発明は、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記マニピュレータの可動範囲を制御テーブルとして設定する設定ステップと、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、請求項13に記載の発明は、請求項9〜請求項12の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法において、前記分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることで前記ロボット装置による一連の作業を形成するものであって、作業工程を1工程進める工程進みスイッチと、作業工程を1工程戻す工程戻りスイッチと、を備え、前記工程切替ステップは、前記工程進みスイッチまたは前記工程戻りスイッチの押下により行われることを特徴とする。
【0024】
また、請求項14に記載の発明は、請求項9〜請求項13の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法において、作業対象物の姿勢および位置を検出する検出ステップを備え、前記工程切替ステップは、前記検出ステップの検出結果に基づき、現在の作業工程を認識することを特徴とする。
【0025】
また、請求項15に記載の発明は、請求項9〜請求項14の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法において、前記制御ステップは、操作者の操作指示に応じ各作業工程毎の制御テーブルに基づきマニピュレータを駆動制御する第1の制御モードと、制御プログラムに基づきマニピュレータを駆動制御する第2の制御モードと、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項16に記載の発明は、請求項15に記載のロボット制御装置の制御方法において、前記第1の制御モードおよび前記第2の制御モードの切替は、手動または自動で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ロボット装置による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定し、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとし、操作者からの作業工程切替指示を受け付けるので、操作者の意図とは異なる方向への動作を防ぐことができると共に、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも作業工程切替または簡単な設定変更で対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を実現することができる。
【0028】
また,各作業工程毎の最大速度、変換式または可動範囲を設定する制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとしたので、該作業工程に適した速度で作業を行うことができ、また、誤動作を抑制すると共に操作性・作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例に係るロボット制御装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】実施例のロボット制御装置における操作装置30の外観を例示する斜視図である。
【図3】実施例1のロボット制御装置における制御装置40の構成図である。
【図4】移動・設置作業における作業工程(実施例1)を例示する説明図である。
【図5】面合わせ作業における作業工程(実施例2)を例示する説明図である。
【図6】はめあい作業を説明する説明図である。
【図7】はめあい作業における作業工程(実施例3)を例示する説明図である。
【図8】実施例4のロボット制御装置における制御装置40aの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のロボット制御装置およびその制御方法の実施例について、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4の順に図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置として、ハンドガイドロボットを例示し、該ハンドガイドロボットを制御するロボット制御装置について説明する。本発明は該ハンドガイドロボットに限定されることなく、少なくともマニピュレータを備えて部分的に操作者との協働作業を行う(操作者が手動操作を行い得る)ものであれば、他のロボット装置にも適用可能である。
【実施例1】
【0031】
図1は本発明の実施例1に係るロボット制御装置の概略構成を示す構成図である。同図において、本実施例のロボット制御装置は、制御対象としてのマニピュレータ1(以下では、総称してハンドガイドロボット1とも記す)と、操作装置30と、制御装置40と、を備えて構成されている。
【0032】
マニピュレータ1は、6個のロータリアクチュエータ(駆動装置;図示せず)およびリンク(剛体の構造物)を備えている。各リンク12,13,14および基台部の間は回動(屈曲)または旋回可能なジョイント(連結部)22,23,24を介して接続され、それぞれロータリアクチュエータによって相対駆動されるようになっている。なお、6個のロータリアクチュエータは、制御装置40から出力される制御信号に基づき制御され、空間6自由度の位置および姿勢が決定されることとなる。また、以下の説明では、ロータリアクチュエータをアクチュエータと略称する。
【0033】
このマニピュレータ1において、第1リンク12(即ち、基端側のリンク)は、第1ジョイント22を介して基端側の基台部11に接続され、また第2ジョイント23を介して先端側の第2リンク13に接続されている。なお、基台部11は、後述の座標系におけるz軸回りの回転のみを行う回転ジョイント21を介して台座に設置されている。
【0034】
また、第2リンク13は、第2ジョイント23を介して基端側の第1リンク12に接続され、また第3ジョイント24を介して先端側の第3リンク14に接続されている。さらに、第3リンク14は、第3ジョイント24を介して基端側の第2リンク13に接続され、第3リンク14の先端側にはグリッパ(把持部)16が設置されている。
【0035】
このマニピュレータ1先端のグリッパ(把持部)16によりワークを把持し、運搬、加工、或いは図1に例示するようにワークW1を他のワークW2へのはめあい(組み立て)を行うものである。
【0036】
また、操作者が当該ハンドガイドロボット1を操作するための操作装置30も第3リンク14の先端側に設置されている。図2には、本実施例のロボット制御装置における操作装置30の外観を例示する斜視図を示す。
【0037】
操作装置30には、操作者が意図しない装置動作を防止するためのイネーブルスイッチ31と、マニピュレータ1を手動操作するための操作桿32および力覚センサ33と、手動操作が可能である旨を報知する表示灯L1と、各種ボタンスイッチB1〜B5と、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35と、を備えている。
【0038】
イネーブルスイッチ31は、操作子が押された状態でのみ当該操作装置30によるマニピュレータ1の操作を可能とし、操作子が押されない状態ではマニピュレータ1の操作を不可能とするためのスイッチである。イネーブルスイッチ31としては、例えば、初期位置(非押圧位置)、押圧位置(中間位置)および押し込み位置の3点動作が可能である3点式スイッチが使用されている。なお、イネーブルスイッチ31の操作子に外力が加えられないときには、初期位置(非押圧位置)に復帰する。
【0039】
また、表示灯L1は、イネーブルスイッチ31の操作子が押圧位置にあるときに点灯し、マニピュレータ1の手動操作が可能である旨を操作者に対して報知し、またイネーブルスイッチ31の操作子が押し込み位置へ移動したときは消灯し、マニピュレータ1の手動操作が不可能となっている旨を操作者に対して報知する。なお、操作者の意図しない力加減によって、イネーブルスイッチ31の操作子が押圧位置(中間位置)から外れた際にも表示灯L1は消灯し、操作者は手動操作が不可能になったことを認識できる。
【0040】
また、操作桿32および力覚センサ33は一体化したものであり、操作者が操作桿32に対して加える力、即ちx,y,zの3軸並進方向の力成分並びに回転3軸回りのモーメント成分を6軸力覚センサ33により同時に検出して、電気信号に変換する。
【0041】
なお、マニピュレータ1の手動操作時には、操作者はイネーブルスイッチ31および操作桿32を左右それぞれの手で握る姿勢を取らざるを得ない構造となっている。このような構造とすることで、操作桿32を持たない手を不用意に危険なところに持っていくような事故を未然に防ぐことができる。
【0042】
また、各種ボタンスイッチB1〜B5として、例えば、非常停止ボタンスイッチ、自動/協働動作モード切替ボタンスイッチ、グリッパ開閉ボタンスイッチ等がある。ここで、本実施例のハンドガイドロボット1は、ハンドガイドロボット1が自律的に動作する自動動作モードと、ハンドガイドロボット1を操作者が操作する協働動作モードを備えており、自動/協働動作モード切替ボタンスイッチはこれら動作モードの遷移を行うためのスイッチである。なお、自動動作モードでは、教示・プレイバックやセンサ処理等による認識・判断に従って実現できる作業を行う。
【0043】
また、本実施例のロボット制御装置は、ハンドガイドロボット1による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定し、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御する点に特徴がある。
【0044】
ここで、分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることでハンドガイドロボット1による一連の作業を形成するものであるが、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35は、作業者が操作中に作業工程を切り替える際に使用するものである。つまり、工程進みボタンスイッチ34の押下により作業工程は1工程だけ先に進められ、また工程戻りボタンスイッチ35の押下により作業工程は1工程だけ前に戻される。
【0045】
なお、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35を、各種ボタンスイッチB1〜B5とは別に操作桿32の先端部分に配置しているのは、これらボタンスイッチが操作中に使用されるものであり、操作者が操作桿32を握った状態から即座にこれらボタンスイッチを押下できるようにするためである。
【0046】
また、図3に本実施例のロボット制御装置における制御装置40の構成図を示す。同図に示す制御装置40は、補正部41、第1座標変換部42、自由度制御部43、力−速度変換部43a、第2座標変換部44、指令生成部45、工程管理部46および記憶部47を備えた構成である。
【0047】
記憶部47では各種制御パラメータを記憶している。制御パラメータの1つとして、作業工程単位で、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について個別に制限または非制限が設定される作業リストがある。特許請求の範囲にいう制御テーブルは、この作業工程毎の作業リスト群である。
【0048】
操作者は、当該ハンドガイドロボット1を用いて作業を行うに先立って、一連の作業を複数の作業工程に分割し、作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度についての制限/非制限を決定して、制御装置40の記憶部47に制御テーブルとして登録する。
【0049】
具体的に、作業リストは、後述の自由度制限部43において、操作桿32に加えられた力成分およびモーメント成分にそれぞれゲイン係数を掛け合わせて操作量を生成する際の各軸のゲイン係数である。各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、制限する場合には「ゲイン係数=0」を、また非制限の場合には「ゲイン係数=1」を設定することとなる。なお、制御テーブルの登録設定は、例えば、操作パネル(図示せず)等を介して入力する入力ソフトを用いて行えば良い。
【0050】
また、工程管理部46は、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35からのON信号に基づき、現時点の作業工程番号を管理する。工程進みボタンスイッチ34の押下(ON)により作業工程番号はインクリメントされ、また工程戻りボタンスイッチ35の押下(ON)により作業工程番号はデクリメントされる。
【0051】
なお、作業工程番号の初期値は例えば「1」であり、N個の作業工程に分割したとすると、現時点の作業工程番号がNの時に工程進みボタンスイッチ34が押下されてもインクリメントされない。また、作業工程番号を初期値に戻すリセットボタンスイッチ等を用意しておくのが望ましい。
【0052】
次に、補正部41は、力覚センサ33により検出されるx軸,y軸およびz軸の3軸並進方向の力成分並びに回転3軸回りのモーメント成分を入力して、ゼロ点補正を行う。このゼロ点補正は、6軸の検出成分毎に操作者が操作桿32を握って力覚センサ33に力を加える直前の値を力覚センサ33の初期値として保持しておき、該初期値を参照して行われる。
【0053】
また、第1座標変換部42は、力覚センサ33により検出される検出成分、即ち力覚センサ33に加えられた3軸並進方向の力成分Sx,Sy,Szおよび回転3軸回りのモーメント成分Sθx,Sθy,Sθzを、操作者が操作桿32に加えた成分、即ち3軸並進方向の力成分Fx,Fy,Fzおよび回転3軸回りのモーメント成分Mx,My,Mzに変換する。つまり、図1に示す力覚センサ33のセンサ座標系Pから操作者の操作入力座標系Oへの座標変換である。
【0054】
例えば、操作者がx軸方向に入力したとしても、力覚センサ33はx軸並進方向の力成分とy軸回りモーメント成分を検出することから、操作者の握り手位置と力覚センサ33測定面との位置関係に基づきこの第1座標変換部42による補正を行う必要がある。
【0055】
また、自由度制御部43は、操作者が操作桿32に加えた成分、即ち3軸並進方向の力成分Fx,Fy,Fzおよび回転3軸回りのモーメント成分Mx,My,Mzと、現時点での作業リスト{Gx,Gy,Gz,Gθx,Gθy,Gθz;1または0}と、に基づき、各軸の操作量、即ち3軸並進方向の操作量Fx_c,Fy_c,Fz_cおよび3軸回りの回転操作量Mx_c,My_c,Mz_cを生成する。
【0056】
具体的に、以下に示す演算が行われる。
【0057】
(数1)
x軸並進方向の操作量Fx_c=Gx・Fx
y軸並進方向の操作量Fy_c=Gy・Fy
z軸並進方向の操作量Fz_c=Gz・Fz
x軸回りの回転操作量Mx_c=Gθx・Mx
y軸回りの回転操作量My_c=Gθy・My
z軸回りの回転操作量Mz_c=Gθz・Mz (1)
また、力−速度変換部43aは、各軸の操作量、即ち3軸並進方向の操作量Fx_c,Fy_c,Fz_cおよび3軸回りの回転操作量M_c,My_c,Mz_cそれぞれに、特性変換関数αを掛け合わせて、操作桿32における速度入力量、即ち3軸並進方向の速度入力量Vsx,Vsy,Vszおよび回転3軸回りの速度入力量Vsc,Vsb,Vsaを生成する。ここで、特性変換関数αは、許容最大操作量Imaxと最大速度Vmaxに基づき、α=Vmax/Imaxとして定義される。
【0058】
具体的に、以下に示すような変換式に基づく演算が行われる。
【0059】
(数2)
x軸並進方向の速度入力量Vsx=α・Fx_c
y軸並進方向の速度入力量Vsy=α・Fy_c
z軸並進方向の速度入力量Vsz=α・Fz_c
x軸回りの速度入力量Vsc=α・Mx_c
y軸回りの速度入力量Vsb=α・My_c
z軸回りの速度入力量Vsa=α・Mz_c (2)
また、第2座標変換部44は、力−速度変換部43aで生成された操作桿32における速度入力量、即ち3軸並進方向の速度入力量Vsx,Vsy,Vszおよび回転3軸回りの速度入力量Vsc,Vsb,Vsaを、マニピュレータ1の手先位置(TCP:エンドエフェクタ中心点)での操作量(速度入力量)、即ち3軸並進方向の操作量Cx,Cy,Czおよび3軸回りの回転操作量Cc,Cb,Caに変換する。つまり、図1に示す操作者の操作入力座標系Oへの座標変換からツール座標系(エンドエフェクタ座標系)Qへの座標変換である。
【0060】
さらに、指令生成部45は、ツール座標系Qに座標変換された3軸並進方向の操作量Cx,Cy,Czおよび3軸回りの回転操作量Cc,Cb,Caに基づき手先速度指令を生成し、アクチュエータに出力してマニピュレータ1を動作させる。
【0061】
次に、具体的な作業を図4に例示して、本実施例のロボット制御装置の制御方法について説明する。図4は、移動・設置作業における作業工程を例示する説明図である。
【0062】
図4(a)に示すように、第1フェンス並びに窓の開いた第2フェンスに挟まれた自動動作エリアにハンドガイドロボット(マニピュレータ)1が設置されている。この作業例におけるハンドガイドロボット1による一連の作業は、自動動作エリア内の台座に載置されている直方体形状のワークW1を第2フェンスの窓をくぐって移動させ、第2フェンスの操作者側のハンドガイド・エリアの台座に載置されている箱形状のワークW2の凹部にはめ込むものである。
【0063】
図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態まで、即ちグリッパ16により自動動作エリア内のワークW1を把持して、ハンドガイド・エリアの所定位置まで移動するまでの作業工程は、自動動作モードで行われる。
【0064】
ここで、ワークW1がハンドガイド・エリアの所定位置に到達した段階で、ハンドガイドロボット(マニピュレータ)1は自動動作モードから協働動作モードへ遷移する。なお、現時点が自動動作モードまたは協働動作モードの何れの動作モードであるかは、表示灯などの報知手段を介して操作者に報知される。
【0065】
次に、協働動作モード下で、操作者の操作に従ってワークW1をワークW2の凹部にはめ込む設置作業が行われる。ここでは、一連の設置作業を、ワークW1をワークW2凹部の開口面近傍まで移動する第1作業工程と、ワークW1の底面(または側面)とワークW2凹部の開口面(または凹部の側面)とを平行にする第2作業工程と、ワークW1底面の1つの角部とワークW2凹部の開口面の対応する角部との位置を合わせる第3作業工程(図4(c)参照)と、ワークW1底面の各辺とワークW2凹部の開口面の各辺との位置を合わせる第4作業工程と、ワークW1をワークW2の凹部にはめ込む第5作業工程(図4(d)参照)と、に分割するものとする。
【0066】
また、予め操作者が制御装置40の記憶部47に登録設定する制御テーブル、即ち作業工程毎の作業リスト{Gx,Gy,Gz,Gθx,Gθy,Gθz}は、次の通りである。
【0067】
(数3)
第1作業工程の作業リスト:{1,1,1,0,0,0}
第2作業工程の作業リスト:{0,0,0,1,0,1}
第3作業工程の作業リスト:{1,1,1,0,0,0}
第4作業工程の作業リスト:{0,0,0,1,0,0}
第5作業工程の作業リスト:{0,0,1,0,0,0} (3)
まず、第1作業工程では、第1作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、x軸,y軸およびz軸の3軸並進のみ操作可能で、c軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW1をワークW2凹部の開口面近傍まで移動する。
【0068】
次に、第2作業工程では、第2作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、c軸およびa軸の2軸回転の操作のみ操作可能で、x軸,y軸およびz軸の3軸並進並びにb軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW1の底面(または側面)とワークW2凹部の開口面(または凹部の側面)とを平行にする。
【0069】
次に、第3作業工程では、第3作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、x軸,y軸およびz軸の3軸並進のみ操作可能で、c軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW1底面の1つの角部とワークW2凹部の開口面の対応する角部との位置を合わせる。
【0070】
次に、第4作業工程では、第4作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、c軸回転の操作のみ操作可能で、x軸,y軸およびz軸の3軸並進並びにb軸およびa軸の2軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW1底面の各辺とワークW2凹部の開口面の各辺との位置を合わせる。
【0071】
さらに、第5作業工程では、第5作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、z軸並進のみ操作可能で、y軸およびz軸の2軸並進並びにc軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW1をワークW2の凹部にはめ込む。
【0072】
操作者は、各作業工程(第1作業工程〜第4作業工程)を終了したと判断して次の作業工程(それぞれ第2作業工程〜第5作業工程)に進む際には、工程進みボタンスイッチ34を押下する。また、各作業工程(第2作業工程〜第5作業工程)を作業している最中に、例えば前作業工程の終了状態が不完全であったと判断した場合などには、工程戻りボタンスイッチ35を押下することにより作業工程を1工程だけ前に戻すことが可能である。
【0073】
以上説明したように、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、操作装置30(入力手段)を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なハンドガイドロボット1を制御するロボット制御装置において、ハンドガイドロボット1による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定し、制御装置40により、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとし、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける。
【0074】
このように、各作業工程において予め操作者が非制限として設定した軸方向への移動または軸回りの回転のみが操作可能となるので、操作者の手ぶれ等による意図とは異なる方向へのアクチュエータの動作を防ぐことができ、作業に必要のない方向へ操作されてしまうことを抑制することができる。
【0075】
また、操作中に操作者の判断で作業工程を変更できるため、作業対象の変更(大きさの違いなど)や、作業のリトライに対応しやすく、また操作者は予め決められた手順に従って工程を変更するので、ミスが少なく、品質を均一化しやすい。結果として、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも作業工程切替または簡単な設定変更で対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を実現することができる。
【0076】
また、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることでハンドガイドロボット1による一連の作業を形成するものであって、作業工程を1工程進める工程進みボタンスイッチ34と、作業工程を1工程戻す工程戻りボタンスイッチ35と、を備え、工程切替は工程進みボタンスイッチ34または工程戻りボタンスイッチ35の押下により行われる。
【0077】
例えば、各作業工程を作業している最中に、前作業工程の終了状態が不完全であったと判断した場合などには、工程戻りボタンスイッチ35の押下により前作業工程に戻ることができ、現時点でのワークW1の状態(姿勢および位置)から状態の修正を行うことができる。なお、状態修正後は,工程進みボタンスイッチ34の押下により元の作業工程へ進めて元の作業工程へ復帰し、作業を継続することが可能である。
【0078】
これは、作業工程の分割を作業内容(軸方向への移動または軸回りの回転の内どの軸の自由度が必要であるか)に基づいて行っているためである。特許文献3に開示された技術(即ち、ワークの搬送経路として適当な軌道上の点(即ち位置)で作業区間を区切って各作業区間で自由度を規制するもの)において、作業途中に状態を修正したい場合などには、前作業工程が開始される軌道上の点にまで戻して改めて該作業工程の作業を行う必要があるのと対照的である。
【0079】
また、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、操作者の操作指示に応じ各作業工程毎の制御テーブルに基づきマニピュレータを駆動制御する第1の制御モード(協働動作モード)と、制御プログラムに基づきマニピュレータを駆動制御する第2の制御モード(自動動作モード)と、を備え、第1の制御モードおよび第2の制御モードの切替は、手動または自動で行われる。
【0080】
例えば、教示・プレイバックやセンサ処理等による認識・判断に従って実現できる作業は第2の制御モード(自動動作モード)でハンドガイドロボット1が自律的に作業を行い、教示や認識・判断が難しい作業は第1の制御モード(協働動作モード)で操作者の手動により作業を行う。このように作業の種類・難易度に応じてモードを切り替えることでより効率的にハンドガイドロボット1を活用することができる。
【実施例2】
【0081】
次に、本発明の実施例2に係るロボット制御装置およびその制御方法について、図5を参照して説明する。図5は、面合わせ作業における作業工程を例示する説明図である。なお、ロボット制御装置の構成については実施例1(図1〜図3参照)と同等である。また、本実施例は協働動作モード下での作業のみを説明することとし、該作業の前後について動作モードは限定されない。
【0082】
本実施例では、操作者の操作に従ってワークW21の1つの面をワークW22の1つの面に面合わせする作業が行われる。ここでは、一連の面合わせ作業を、ワークW21をワークW22の面合わせする側の面近傍まで移動して、ワークW21の面合わせする側の面の1つの角部をワークW22の面合わせする側の面に点接触させる第1作業工程(図5(a)から図5(b)まで)と、ワークW21の面合わせする側の面の1つの辺をワークW22の面合わせする側の面に線接触させる第2作業工程(図5(b)から図5(c)まで)と、ワークW21の面合わせする側の面をワークW22の面合わせする側の面に面接触させる第3作業工程(図5(c)から図5(d)まで)と、に分割するものとする。
【0083】
また、予め操作者が制御装置40の記憶部47に登録設定する制御テーブル、即ち作業工程毎の作業リスト{Gx,Gy,Gz,Gθx,Gθy,Gθz}は、次の通りである。
【0084】
(数4)
第1作業工程の作業リスト:{1,1,1,0,0,0}
第2作業工程の作業リスト:{0,0,0,0,1,1}
第3作業工程の作業リスト:{0,0,0,1,0,0} (4)
まず、第1作業工程WP21では、第1作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、x軸,y軸およびz軸の3軸並進のみ操作可能で、c軸,b軸およびa軸の3軸回転(x軸,y軸およびz軸の軸回りの回転)の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW21をワークW22の面合わせする側の面近傍まで移動して、ワークW21の面合わせする側の面の1つの角部をワークW22の面合わせする側の面に点接触させる。
【0085】
次に、第2作業工程WP22では、第2作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、b軸およびa軸の2軸回転の操作のみ操作可能で、x軸,y軸およびz軸の3軸並進並びにc軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW21の面合わせする側の面の1つの辺をワークW22の面合わせする側の面に線接触させる。
【0086】
次に、第3作業工程WP23では、第3作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、z軸並進のみ操作可能で、y軸およびz軸の2軸並進並びにc軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW21の面合わせする側の面をワークW22の面合わせする側の面に面接触させる。
【0087】
操作者は、各作業工程(第1作業工程および第2作業工程)を終了したと判断して次の作業工程(それぞれ第2作業工程および第3作業工程)に進む際には、工程進みボタンスイッチ34を押下する。また、各作業工程(第2作業工程および第3作業工程)を作業している最中に、例えば前作業工程の終了状態が不完全であったと判断した場合などには、工程戻りボタンスイッチ35を押下することにより作業工程を1工程だけ前に戻すことが可能である。
【0088】
以上説明したように、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、実施例1と同等の効果を奏し、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも作業工程切替または簡単な設定変更で対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を実現することができる。
【実施例3】
【0089】
次に、本発明の実施例3に係るロボット制御装置およびその制御方法について、図6および図7を参照して説明する。ここで、図6は、はめあい作業を説明する説明図であり、図7は、はめあい作業における作業工程を例示する説明図である。なお、ロボット制御装置の構成については実施例1(図1〜図3参照)と同等である。また、本実施例は協働動作モード下での作業のみを説明することとし、該作業の前後について動作モードは限定されない。
【0090】
本実施例では、ハンドガイドロボット1のグリッパ16に把持され、面の4角にそれぞれ穴部を備えるワーク31を、固定され、一方の面の4角にそれぞれ突起状の軸を持つワーク32にはめ合わせる作業を行う。
【0091】
ここでは、協働動作モード下での一連の設置作業を、ワークW31をワークW32の軸近傍まで搬送する第1作業工程と、ワークW31の面方向とワークW32の面方向とを平行にする第2作業工程と、ワークW31の1つの穴部とワークW32の1つの軸との位置を合わせる第3作業工程と、合わせた軸中心にワークW31を回転させて、残りの穴部とワークW32の対応する軸との位置を合わせる第4作業工程と、ワークW31の各穴部をワークW32の各軸にはめ込む第5作業工程と、に分割するものとする。
【0092】
また、予め操作者が制御装置40の記憶部47に登録設定する制御テーブル、即ち作業工程毎の作業リスト{Gx,Gy,Gz,Gθx,Gθy,Gθz}は、次の通りである。
【0093】
(数5)
第1作業工程の作業リスト:{1,1,1,0,0,0}
第2作業工程の作業リスト:{0,0,0,1,0,1}
第3作業工程の作業リスト:{1,0,1,0,0,0}
第4作業工程の作業リスト:{0,0,0,0,1,0}
第5作業工程の作業リスト:{0,1,0,0,0,0} (5)
まず、第1作業工程WP31では、第1作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、x軸,y軸およびz軸の3軸並進のみ操作可能で、c軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW31をワークW32の軸近傍まで搬送する。
【0094】
次に、第2作業工程WP32では、第2作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、c軸およびa軸の2軸回転の操作のみ操作可能で、x軸,y軸およびz軸の3軸並進並びにb軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW31の面方向とワークW32の面方向とを平行にする。
【0095】
次に、第3作業工程WP33では、第3作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、x軸およびz軸の2軸並進のみ操作可能で、y軸並進並びにc軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW31の1つの穴部とワークW32の1つの軸との位置を合わせる。
【0096】
次に、第4作業工程WP34では、第4作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、b軸回転の操作のみ操作可能で、x軸,y軸およびz軸の3軸並進並びにc軸およびa軸の2軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者は合わせた軸中心にワークW31を回転させて、残りの穴部とワークW32の対応する軸との位置を合わせる。
【0097】
さらに、第5作業工程WP35では、第5作業工程の作業リストに応じたマニピュレータ1の駆動制御により、y軸並進のみ操作可能で、x軸およびz軸の2軸並進並びにc軸,b軸およびa軸の3軸回転の操作は不可能となる。この駆動制御で操作者はワークW31の各穴部をワークW32の各軸にはめ込む。
【0098】
操作者は、各作業工程(第1作業工程〜第4作業工程)を終了したと判断して次の作業工程(それぞれ第2作業工程〜第5作業工程)に進む際には、工程進みボタンスイッチ34を押下する。また、各作業工程(第2作業工程〜第5作業工程)を作業している最中に、例えば前作業工程の終了状態が不完全であったと判断した場合などには、工程戻りボタンスイッチ35を押下することにより作業工程を1工程だけ前に戻すことが可能である。
【0099】
以上説明したように、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、実施例1と同等の効果を奏し、作業対象および作業内容の変更が頻繁に起こる場合でも作業工程切替または簡単な設定変更で対応でき、多品種生産に好適なロボット制御装置およびその制御方法を実現することができる。
【実施例4】
【0100】
次に、本発明の実施例4に係るロボット制御装置およびその制御方法について説明する。
【0101】
実施例1〜実施例3に例示したロボット制御装置は、ハンドガイドロボット1による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定し、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することに特徴があったが、本実施例では、該特徴にさらに以下の特徴が加わる。
【0102】
すなわち、各作業工程毎に,各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度、操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式、並びに、マニピュレータの可動範囲それぞれを制御テーブルとして設定し、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御する点である。
【0103】
本実施例のロボット制御装置の概略構成は実施例1の構成(図1参照)と同等である。また、図8に本実施例のロボット制御装置における制御装置40aの構成図を示す。同図に示す制御装置40aは、補正部41、第1座標変換部42、自由度制御部43、力−速度変換部43a、可動範囲制限部43b、第2座標変換部44、指令生成部45、工程管理部46および記憶部47aを備えた構成である。
【0104】
記憶部47aでは各種制御パラメータを記憶している。制御パラメータとしては、実施例1と同様に、作業工程単位で、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について個別に制限または非制限が設定される自由度作業リスト(実施例1の作業リストに該当する)がある。また本実施例では、この自由度作業リストの他に、各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度、並びに、操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する特性変換について、作業工程単位で個別に設定される操作特性作業リストと、マニピュレータ1の可動範囲について、作業工程単位で個別に設定される操作範囲作業リストと、を備えている。特許請求の範囲にいう制御テーブルは、この作業工程毎の作業リスト群である。
【0105】
操作者は、当該ハンドガイドロボット1を用いて作業を行うに先立って、一連の作業を複数の作業工程に分割し、作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度についての制限/非制限を決定し、また作業工程毎に,各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度、操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式、並びに、マニピュレータの可動範囲それぞれを決定して、制御装置40aの記憶部47aに制御テーブルとして登録する。
【0106】
具体的に、自由度作業リストは、後述の自由度制限部43において、操作桿32に加えられた力成分およびモーメント成分にそれぞれゲイン係数を掛け合わせて操作量を生成する際の各軸のゲイン係数である。各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、制限する場合には「ゲイン係数=0」を、また非制限の場合には「ゲイン係数=1」を設定することとなる。
【0107】
また、操作特性作業リストは、後述の力−速度変換部43aにおいて、各軸の操作量および特性変換関数に基づき操作桿32における速度入力量を生成する際の特性変換関数を規定する最大速度および最大角速度並びに変換式である。本実施例では、x軸,y軸およびz軸の3軸並進方向への移動における最大速度Vmax[mm/sec]と、3軸回りの回転における最大角速度Vmax[deg/sec]と、該作業工程における変換式の種別と、をそれぞれ設定するものとする。なお、軸単位で設定可能であることは言うまでもない。
【0108】
ここでは、変換式の種別として、A:「速度入力=α・(操作量)」、B:「速度入力=β・(操作量)」またはC:「速度入力=γ・(操作量)」の内何れか1つを選択可能とするものとする。なお、特性変換関数α、βおよびγは、許容最大操作量をImaxとし、最大速度をVmaxとするとき、それぞれα=Vmax/Imax、β=Vmax/Imaxおよびγ=Vmax/Imaxとして規定される。また、制御テーブルの各作業リストへの登録設定は、例えば、操作パネル(図示せず)等を介して入力する入力ソフトを用いて行えば良い。
【0109】
また、操作範囲作業リストは、作業工程単位で個別に設定されるマニピュレータ1の可動範囲である。より具体的には、マニピュレータ1先端のグリッパ(把持部)16により把持されるワークの外部周囲の可動範囲を想定して、マニピュレータ1の手先位置(TCP)(または該ワークの所定の基準点)についての可動範囲(可動空間)を設定する。この可動範囲内か否かの判断は後述の可変範囲制限部43bにおいて行われる。なお、判断を行うための演算量は増えるが、外部周囲の可動範囲を設定して判断を行うことも可能である。
【0110】
また、工程管理部46は、実施例1と同様に、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35からのON信号に基づき、現時点の作業工程番号を管理する。工程進みボタンスイッチ34の押下(ON)により作業工程番号はインクリメントされ、また工程戻りボタンスイッチ35の押下(ON)により作業工程番号はデクリメントされる。
【0111】
次に、補正部41は、実施例1と同様に、力覚センサ33により検出されるx軸,y軸およびz軸の3軸並進方向の力成分並びに回転3軸回りのモーメント成分を入力して、ゼロ点補正を行う。
【0112】
また、第1座標変換部42は、実施例1と同様に、力覚センサ33により検出される検出成分、即ち力覚センサ33に加えられた3軸並進方向の力成分Sx,Sy,Szおよび回転3軸回りのモーメント成分Sθx,Sθy,Sθzを、操作者が操作桿32に加えた成分、即ち3軸並進方向の力成分Fx,Fy,Fzおよび回転3軸回りのモーメント成分Mx,My,Mzに変換する。つまり、図1に示す力覚センサ33のセンサ座標系Pから操作者の操作入力座標系Oへの座標変換である。
【0113】
また、自由度制御部43は、操作者が操作桿32に加えた成分、即ち3軸並進方向の力成分Fx,Fy,Fzおよび回転3軸回りのモーメント成分Mx,My,Mzと、現時点での自由度作業リスト{Gx,Gy,Gz,Gθx,Gθy,Gθz;1または0}と、に基づき、各軸の操作量、即ち3軸並進方向の操作量Fx_c,Fy_c,Fz_cおよび3軸回りの回転操作量Mx_c,My_c,Mz_cを生成する。具体的に、実施例1の式(1)と同様の演算が行われる。
【0114】
また、力−速度変換部43aは、操作特性作業リストで指定された変換式において、各軸の操作量、即ち3軸並進方向の操作量Fx_c,Fy_c,Fz_cおよび3軸回りの回転操作量M_c,My_c,Mz_cそれぞれに、指定された特性変換関数α、βまたはγを掛け合わせて、操作桿32における速度入力量、即ち3軸並進方向の速度入力量Vsx,Vsy,Vszおよび回転3軸回りの速度入力量Vsc,Vsb,Vsaを生成する。
【0115】
例えば、操作特性作業リストにおいて変換式Bが指定されているとき、以下に示すような変換式に基づく演算が行われる。
【0116】
(数6)
x軸並進方向の速度入力量Vsx=β・Fx_c
y軸並進方向の速度入力量Vsy=β・Fy_c
z軸並進方向の速度入力量Vsz=β・Fz_c
x軸回りの速度入力量Vsc=β・Mx_c
y軸回りの速度入力量Vsb=β・My_c
z軸回りの速度入力量Vsa=β・Mz_c (6)
また、第2座標変換部44は、力−速度変換部43aで生成された操作桿32における速度入力量、即ち3軸並進方向の速度入力量Vsx,Vsy,Vszおよび回転3軸回りの速度入力量Vsc,Vsb,Vsaを、マニピュレータ1の手先位置(TCP:エンドエフェクタ中心点)での操作量(速度入力量)、即ち3軸並進方向の操作量Vtx,Vty,Vtzおよび3軸回りの回転操作量Vtc,Vtb,Vtaに変換する。つまり、図1に示す操作者の操作入力座標系Oへの座標変換からツール座標系(エンドエフェクタ座標系)Qへの座標変換である。
【0117】
また、可動範囲制限部43bは、各軸についての速度入力量の積分から現在位置を確認して、現操作量(速度入力量)に基づく移動後にマニピュレータ1の手先位置(TCP)が操作範囲作業リストに設定された可動範囲内にあるか否かを判断する。該判断の結果、例えばx軸方向について可動範囲外にある場合には、x軸方向の操作量をCx=0として出力する。
【0118】
さらに、指令生成部45は、可動範囲制限部43bから出力された3軸並進方向の操作量Cx,Cy,Czおよび3軸回りの回転操作量Cc,Cb,Caに基づき手先速度指令を生成し、アクチュエータに出力してマニピュレータ1を動作させる。
【0119】
次に、本実施例のロボット制御装置の制御方法について説明する。本実施例は、実施例2の説明に用いた面合わせ作業における各作業工程(図5参照)に対して、自由度作業リスト(実施例2の作業リストに該当する)、操作特性作業リストおよび操作範囲作業リストそれぞれを制御テーブルとして設定し、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御するものである。
【0120】
自由度作業リストは、実施例2で説明した式(4)の作業リストをそのまま用いる。また操作特性作業リストおよび操作範囲作業リストは、次の通りである。
【0121】
(数7)
第1作業工程の操作特性作業リスト:{250,30,A}
第2作業工程の操作特性作業リスト:{100,10,B}
第3作業工程の操作特性作業リスト:{100,10,B}
第1作業工程の操作範囲作業リスト:{可動範囲21}
第2作業工程の操作範囲作業リスト:{可動範囲22}
第3作業工程の操作範囲作業リスト:{可動範囲22} (7)
ここで、操作特性作業リストにはそれぞれ{最大速度,最大角速度,変換式の種別}が記され、操作範囲作業リストには{可動範囲の識別番号}が記されている。
【0122】
まず、第1作業工程W21では、自由度作業リストの設定に対応してx軸,y軸およびz軸の3軸並進のみ操作可能である。また、操作特性作業リストにより最大速度が相対的に高速(最大速度250[mm/sec]および最大角速度30[deg/sec])に設定され、変換式としてA:「速度入力=α・(操作量)」の線形関数が設定されている。また、操作範囲作業リストにより可動範囲21が設定されている。この可動範囲21は、操作ミスによりワークW21がワークW22に衝突しないような可動範囲である。この駆動制御で操作者はワークW21をワークW22の面合わせする側の面近傍まで移動して、ワークW21の面合わせする側の面の1つの角部をワークW22の面合わせする側の面に点接触させる。
【0123】
次に、第2作業工程W22では、自由度作業リストの設定に対応してb軸およびa軸の2軸回転の操作のみ操作可能である。また、操作特性作業リストにより最大速度が相対的に低速(最大速度100[mm/sec]および最大角速度10[deg/sec])に設定され、変換式としてB:「速度入力=β・(操作量)」の2次関数が設定されている。また、操作範囲作業リストにより可動範囲22が設定されている。この可動範囲22は、2つのワークW21およびW22の接触が許容される可動範囲である。この駆動制御で操作者はワークW21の面合わせする側の面の1つの辺をワークW22の面合わせする側の面に線接触させる。
【0124】
次に、第3作業工程W23では、自由度作業リストの設定に対応してz軸並進のみ操作可能である。また、操作特性作業リストおよび操作範囲作業リストの設定は第2作業工程と同一である。この駆動制御で操作者はワークW21の面合わせする側の面をワークW22の面合わせする側の面に面接触させる。
【0125】
ここで、自由度作業リストに応じたマニピュレータの駆動制御による効果は実施例1および実施例2で述べた通りである。ここでは、操作特性作業リストおよび操作範囲作業リストに応じたマニピュレータの駆動制御による効果について説明する。
【0126】
まず、第1作業工程W21では、最大速度を相対的に高速に設定し、その代わり、操作ミスによりワークW21がワークW22に衝突しないように可動範囲が設定されている。これにより、衝突を心配せずにワークW21をワークW22に近づけることができ、操作性を向上させ、作業時間を短縮できる。
【0127】
また、第2作業工程W22および第3作業工程W23では、ワークW21をワークW22に接触させるため、2つのワークW21およびW22の接触が許容される可動範囲を設定するが、その代わり、最大速度が相対的に低速に設定されている。このように、最大速度を低速に設定しているため、微調整が行い易くなる。
【0128】
以上説明したように、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、操作装置30(入力手段)を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なハンドガイドロボット1を制御するロボット制御装置において、ハンドガイドロボット1による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度を制御テーブルとして設定し、制御装置40aにより、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとし、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける。
【0129】
このように、各作業工程において予め操作者が設定した各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度制限下での操作が可能となるので、操作者の手ぶれやはずみ等による誤操作などを防ぐことができ、また、最大速度の低速設定により微調整が行い易くなり、結果として、誤動作を抑制できると共に、操作性を向上させることができる。
【0130】
また、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、作業工程毎に入力手段の操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式を制御テーブルとして設定し、制御装置40aにより、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとし、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける。
【0131】
例えば、変換式として線形関数および非線形関数(2次関数、3次関数等)が選択設定可能なケースを想定する。非線形で次数が大きいほど操作者の操作量は増えるが、その分微調整が行い易くなることから、おおざっぱな移動などは線形関数を用い、微調整の必要なところでは非線形関数を用いるなどすれば、作業工程の内容に応じた設定が可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0132】
また、本実施例のロボット制御装置およびその制御方法では、作業工程毎にマニピュレータの可動範囲を制御テーブルとして設定し、制御装置40aにより、各作業工程毎の制御テーブルに応じてマニピュレータを駆動制御することとし、操作者からの作業工程切替指示を受け付ける。このように、各作業工程において予め操作者が設定したマニピュレータの可動範囲に操作範囲が制限されるので、操作者のはずみ等による行き過ぎ動作等を防ぐことができる。
【0133】
また、最初の大まかな位置合わせで接触させないようにでき、作業工程が進む毎に動作制限範囲が小さくなるように設定することで、作業領域を徐々に収束させることができ、無駄な動きを抑制することができる。例えば、作業工程切り替え時のワークの位置を基準位置として、該基準位置からの相対的な可動範囲を設定するようにすれば、アクセスするワーク供給位置がずれるケースや、緩やかに動くワークにも対応できる。
【0134】
〔変形例〕
以上説明した実施例1、実施例2、実施例3および実施例4では、作業者が操作中に行う作業工程の切り替えを、工程進みボタンスイッチ34および工程戻りボタンスイッチ35を用いて行ったが、他の態様も可能である。
【0135】
すなわち、ハンドガイドロボット1のグリッパ16に把持されるワークの姿勢および位置を検出する検出手段と、作業工程が切り替わった旨、或いは工程管理部46による現作業工程番号を報知する報知手段を備えた構成である。
【0136】
検出手段によるワークの姿勢・位置検出に基づき、ある作業工程中にワークが所定の状態(姿勢および位置)に達したと判断されるとき、自動的に次の作業工程に進み、同時に報知手段により作業工程が次に進んだ(軸方向への移動または軸回りの回転についての自由度が変わった)旨を操作者に報知するようにする。また、現作業工程の作業工程番号を常時表示するようにしても良い。
【0137】
本変形例のロボット制御装置およびその制御方法によっても、実施例1〜実施例4と同等の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 マニピュレータ(ハンドガイドロボット)
11 基台部
12 第1リンク
13 第2リンク
14 第3リンク
16 グリッパ(把持部)
21 回転ジョイント
22 第1ジョイント
23 第2ジョイント
24 第3ジョイント
30 操作装置
31 イネーブルスイッチ
32 操作桿
33 力覚センサ
L1 表示灯
B1〜B5 ボタンスイッチ
34 工程進みボタンスイッチ
35 工程戻りボタンスイッチ
40,40a 制御装置
41 補正部
42 第1座標変換部
43 自由度制御部
43a 力−速度変換部
43b 可変範囲制限部
44 第2座標変換部
45 指令生成部
46 工程管理部
47,47a 記憶部
W1,W2,W21,W22,W31,W32 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定する設定手段と、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度を制御テーブルとして設定する設定手段と、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項3】
入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記入力手段の操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式を制御テーブルとして設定する設定手段と、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項4】
入力手段を介した作業者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記マニピュレータの可動範囲を制御テーブルとして設定する設定手段と、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替手段と、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御手段と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項5】
前記分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることで前記ロボット装置による一連の作業を形成するものであって、
前記工程切替手段は、作業工程を1工程進める工程進みスイッチと、作業工程を1工程戻す工程戻りスイッチと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
作業対象物の姿勢および位置を検出する検出手段を有し、
前記工程切替手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、現在の作業工程を認識することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、操作者の操作指示に応じ各作業工程毎の制御テーブルに基づきマニピュレータを駆動制御する第1の制御モードと、制御プログラムに基づきマニピュレータを駆動制御する第2の制御モードと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記第1の制御モードおよび前記第2の制御モードの切替は、手動または自動で行われることを特徴とする請求項7に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数の作業工程に分割し、該作業工程毎に各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの自由度について、個別に制限または非制限を制御テーブルとして設定する設定ステップと、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、
を有することを特徴とするロボット制御装置の制御方法。
【請求項10】
入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、各軸方向への移動における最大速度および各軸回りの回転における最大角速度を制御テーブルとして設定する設定ステップと、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、
を有することを特徴とするロボット制御装置の制御方法。
【請求項11】
入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記入力手段の操作量と各軸方向への移動および各軸回りの回転それぞれの動作速度との関係を規定する変換式を制御テーブルとして設定する設定ステップと、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、
を有することを特徴とするロボット制御装置の制御方法。
【請求項12】
入力手段を介した操作者の操作指示に応じてマニピュレータにおける各軸方向への移動または各軸回りの回転を制御可能なロボット装置を制御するロボット制御装置の制御方法であって、
前記ロボット装置による一連の作業を複数に分割した作業工程毎に、前記マニピュレータの可動範囲を制御テーブルとして設定する設定ステップと、
操作者からの作業工程切替指示を受け付ける工程切替ステップと、
各作業工程毎の制御テーブルに応じて前記マニピュレータを駆動制御する制御ステップと、
を有することを特徴とするロボット制御装置の制御方法。
【請求項13】
前記分割した作業工程は、各作業工程を所定順に進めることで前記ロボット装置による一連の作業を形成するものであって、
作業工程を1工程進める工程進みスイッチと、作業工程を1工程戻す工程戻りスイッチと、を有し、
前記工程切替ステップは、前記工程進みスイッチまたは前記工程戻りスイッチの押下により行われることを特徴とする請求項9〜請求項12の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法。
【請求項14】
作業対象物の姿勢および位置を検出する検出ステップを有し、
前記工程切替ステップは、前記検出ステップの検出結果に基づき、現在の作業工程を認識することを特徴とする請求項9〜請求項13の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法。
【請求項15】
前記制御ステップは、操作者の操作指示に応じ各作業工程毎の制御テーブルに基づきマニピュレータを駆動制御する第1の制御モードと、制御プログラムに基づきマニピュレータを駆動制御する第2の制御モードと、を有することを特徴とする請求項9〜請求項14の何れか1項に記載のロボット制御装置の制御方法。
【請求項16】
前記第1の制御モードおよび前記第2の制御モードの切替は、手動または自動で行われることを特徴とする請求項15に記載のロボット制御装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−269418(P2010−269418A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124212(P2009−124212)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】