説明

ロータリスイッチ

【課題】クリック機構を構成する部品点数が少なく、組み立てが容易なロータリスイッチを提供すること。
【解決手段】ロータリスイッチであって、回動操作部材(10)と、ホルダー(40)と、回動検出器(52)とを備え、回動操作部材(10)は、回動軸回りに回動する本体(31)と、この本体(31)につながるように当該本体(31)と一体的に成形されており、被係止部の撓み変位を許容するように弾性変形が可能な可動片(34)とを有し、ホルダー(40)は、凹凸部を含み、この凹凸部が被係止部を撓み変位させることが可能な位置に回動操作部材(10)を保持し、凹凸部は、複数の係止凹部を有し、被係止部はその撓み変位を伴いながら互いに離間する係止凹部の間を乗り越え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者にクリック感を与えることが可能なロータリスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回動操作部材を回動操作した際の操作感を操作者に付与するクリック機構を備えたロータリスイッチが知られている。例えば特許文献1には、回動操作されるダイヤルノブと、このダイヤルノブを回動可能に保持するスイッチケースと、ダイヤルノブの回動操作に応じて操作者に節度感を与える節度機構とを有し、この節度機構は、ダイヤルノブの回動操作に伴って回動するとともに凹凸パターンを具備する節度山部材と、凹凸パターンに弾接される節度ピースと、この節度ピースが凹凸パターンに弾接するように当該節度ピースを付勢する付勢部材と、この付勢部材が圧縮された状態で当該付勢部材を保持するプランジャケースとを有するロータリスイッチが開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載の節度機構は、プランジャケース内に付勢部材が圧縮された状態で配置されており、その付勢部材の先端に保持された節度ピースが常時凹凸パターンに弾接する構成となっている。そして、ダイヤルノブを回動操作するとそれに伴って節度山部材も回動し、節度ピースが凹凸パターンの各節度谷に順次係合していく。このことが操作者に操作感、すわなち、クリック感をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のロータリスイッチは、節度機構を構成する部品点数が多くて構造が複雑である上、その組立作業も容易ではなかった。このロータリスイッチは、クリック感を発生させるために節度山部材に弾接させる部品として、節度ピース、付勢部材及びプランジャケースという多くの部品を必要とし、構造が複雑である。さらに、これらの部品をそれぞれ個別に管理する必要もある。また、これらの部品を用いて節度機構を組立てるには、プランジャケースに付勢部材及び節度ピースを収納し、これら付勢部材及び節度ピースが節度山部材に対して所定の位置となるように位置決めする作業を要する。この作業は、節度ピース及び付勢部材がともに非常に小さな部品であることも相まって、きわめて煩雑なものであった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、クリック機構を構成する部品点数が少なく、組み立てが容易なロータリスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、ロータリスイッチであって、特定の回動軸回りに回動操作される回動操作部材と、前記回動操作部材を回動可能に保持するホルダーと、前記回動操作部材の回動操作を検出する回動検出器とを備え、前記回動操作部材は、回動操作により前記回動軸回りに回動する本体と、この本体につながるように当該本体と一体的に成形されており、当該本体に対して所定方向に相対的に撓み変位可能な被係止部を含んでこの被係止部の撓み変位を許容するように弾性変形が可能な可動片とを有し、前記ホルダーは、前記回動軸を取り囲む全周にわたって形成され、かつ、前記回動操作部材の回動操作に伴って前記被係止部を前記本体に対して前記所定方向に繰り返し撓み変位させる形状の凹凸部を含み、この凹凸部が前記被係止部を撓み変位させることが可能な位置に前記回動操作部材を保持し、前記凹凸部は、それぞれが前記被係止部を係止可能な形状を有して前記回動軸周りの全周にわたって間欠的に配置された複数の係止凹部を有し、前記被係止部はその撓み変位を伴いながら互いに離間する係止凹部の間を乗り越え可能であるロータリスイッチを提供する。
【0008】
この発明のロータリスイッチによれば、回動操作部材及びホルダーのみで、回動操作部材の回動操作に伴って操作者に操作感を与えるクリック機構を構成することができる。具体的には、回動操作部材が、回動軸回りに回動する本体と、この本体につながるように当該本体と一体的に成形されており、当該本体に対して所定方向に相対的に撓み変位可能な被係止部を含んでこの被係止部の撓み変位を許容するように弾性変形が可能な可動片とを有し、ホルダーが、可動片の被係止部を所定方向に繰り返し撓み変位させる形状の凹凸部を有するので、回動操作部材の回動操作に伴って、可動片が自身の弾性によりその被係止部をホルダーの係止凹部に対して繰り返し弾性接触させることができ、これにより操作者にクリック感を与えることができる。よって、従来のようなクリック機構を構成するための部品、すなわち、回動操作部材やホルダーとは別体の節度ピースや付勢部材を含まないため、部品点数が削減されて構造が簡素化される。さらに、ホルダーは、凹凸部が被係止部を変位させることが可能な位置に回動操作部材を保持するので、回動操作部材がホルダーに保持されるように両者が組み立てられるだけで、クリック機構を備えたロータリスイッチが構成される。
【0009】
また、本発明において、前記可動片は、前記回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状を有しており、前記被係止部が撓み変位するようにその周方向の少なくとも一方の端部が前記本体につながっていることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、可動片を回動操作部材の本体からその径方向に延びるように当該本体と一体的に成形する場合に比べて、回動操作部材を径方向へ大型化させることなく可動片の長さを確保することができる。そして、可動片の長さを確保した結果、当該可動片は弾性変形しやすくなるので、被係止部が撓み変位しやすくなる。
【0011】
この場合において、前記凹凸部は、前記ホルダーの前記回動軸と直交する面における前記回動操作部材側に形成されており、前記本体は、前記凹凸部に対向するとともに当該本体の径方向に突出した支持部を有し、前記可動片は、前記被係止部が前記回動軸方向に沿って撓み変位するように前記支持部につながっていることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、ホルダーに対して回動操作部材がその回動軸方向から組み付けられるだけで、ホルダーはその凹凸部が被係止部を撓み変位可能な位置に回動操作部材を保持することができる。さらに、可動片は、回動軸方向に撓み変位するように支持部につながっているものの、回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状を有して凹凸部と対向しているので、被係止部が互いに隣接する係止凹部間を乗り越える際に当該可動片に発生するねじり応力を低減することができる。
【0013】
さらにこの場合において、前記支持部は、所定の間隔を隔てて設けられた一対の第1支持部及び第2支持部からなり、前記可動片は、前記被係止部が撓み変位するようにその両端がそれぞれ前記第1支持部及び第2支持部につながっていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、可動片は、その両端が支持部に支持されるので、その強度を高めることができる。
【0015】
また、本発明において、前記可動片は、その中間に前記被係止部が位置しており、前記回動軸と前記被係止部とを含む平面に対して対称な形状を有することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、回動操作部材を正逆のいずれの方向に回動操作した場合であっても、操作者に安定した同一のクリック感を与えることができる。
【0017】
また、本発明において、前記可動片は、前記被係止部が撓み変位したときに、前記被係止部が撓み変位していない状態における当該被係止部と前記第1支持部又は前記第2支持部との間の寸法と、前記被係止部が撓み変位した状態における当該被係止部と前記第1支持部又は前記第2支持部との間の寸法との差を吸収するように折り畳み方向に弾性変形する折畳部を有することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、両端が第1支持部及び第2支持部にそれぞれつながっている可動片において、簡易に被係止部を撓み変位可能とする構造が得られる。
【0019】
さらにまた、前記本体は、前記第1支持部及び第2支持部を含んで径方向に突出した形状の壁部を有することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、各支持部は壁部に含まれることからその剛性が高まるので、被係止部が撓み変位した際にこれら各支持部に加わる負荷を低減させることができる。その結果、可動片は、より安定した状態で第1支持部及び第2支持部に支持される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、クリック機構を構成する部品点数が少なく、組み立てが容易なロータリスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態のロータリスイッチの斜視図である。
【図2】図1に示すロータリスイッチを表面側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示すロータリスイッチを裏面側から見た分解斜視図である。
【図4】図1に示すロータリスイッチの平面図である。
【図5】図4に示すロータリスイッチのV−V線における断面図である。
【図6】図5に示すロータリスイッチの可動片の挙動を説明する図である。
【図7】図4に示すロータリスイッチのVII−VII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態について、図1ないし図7を参照しながら説明する。ここで、図2では、後述する可動片34の全体が把握できるようにインナー30の一部を省略しており、図6では、可動片34の挙動の説明に不要な細部は省略している。
【0024】
図1ないし図3に示すように、本実施形態のロータリスイッチは、特定の回動軸回りに回動操作される回動操作部材10と、この回動操作部材10を回動可能に保持するホルダー40と、回動操作部材10の回動操作を検出可能な検出部材50と、回動操作部材10の回動力を検出部材50に伝達する回動力伝達部材60とを有する。なお、以下の説明において、回動軸方向における操作者が操作する側、すなわち、後述するダイアル20の端壁22側を表面側又は前端側とし、その反対側を裏面側又は後端側とする。
【0025】
回動操作部材10は、操作者により回動操作されるダイアル20と、このダイアル20と共回りするように当該ダイアル20と接続されたインナー30とを有する。なお、ダイアル20とインナー30とは一体成形されてもよい。
【0026】
ダイアル20は、回動操作のために把持される円筒状の被把持部21と、この被把持部21の前端側の開口を塞ぐ端壁22とを有する。なお、被把持部21は円筒状に限らず、角筒状等であってもよい。
【0027】
インナー30は、回動操作により回動軸回りに回動する本体31と、この本体31につながるように当該本体31と一体的に成形された可動片34と、回動操作部材10に加えられる回転力を回動力伝達部材60に伝達する伝達部35とを有する。
【0028】
本体31は、被把持部21に内嵌されてダイアル20と接続される円筒状のダイアル接続部32と、このダイアル接続部32の外周面よりも回動軸と直交する径方向の外側に全周にわたって突出する壁部33とを有する。この壁部33は、可動片34を支持する支持部33aを有する。本実施形態では、支持部33aとして、可動片34の両端をそれぞれ支持する第1支持部33bと第2支持部33cとからなるものを示すが、これらの支持部のうちいずれか一方は省略されてもよい。また、いずれか一方の支持部を有していれば、壁部におけるその他の部分は省略されてもよい。なお、被把持部21と本体31とは、図示しない固着手段により固着されており、ダイアル20の回動操作に伴ってインナー30も回動する。
【0029】
可動片34は、本体31の壁部33に対して回動軸方向に相対的に撓み変位可能な被係止部34aを含み、この被係止部34aの撓み変位を許容するように弾性変形が可能な形状を有する。具体的に、可動片34は、被係止部34aに加え、折畳部34b,34bと腕部34c,34cとを有する。折畳部34b,34bは、折り畳み方向に弾性変形する部分であり、この部分が折り畳まれることにより被係止部34aの撓み変位を許容する。腕部34c,34cは、被係止部34aと各折畳部34b,34bとを連結する部分である。また、この可動片34は、その中間に被係止部34aが位置し、回動軸と当該被係止部34aとを含む平面に対して対称な形状を有する。さらに可動片34は、回動軸を中心とする周方向に沿って延びるとともに、壁部33の外径内に収まる形状を有する。なお、可動片34は、本体31と一体的に成形されており、当該本体31に対して相対的に回動軸方向に撓み変位可能な形状であれば、回動軸と被係止部34aとを含む平面に対して対称な形状に限られず、また、回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状に限られない。
【0030】
被係止部34aは、その裏面側が略円弧状となっており、後述する凹凸部43a上を滑らかに摺接することが可能となっている。折畳部34b,34bは、被係止部34aが撓み変位したときに、被係止部34aが撓み変位していない状態における当該被係止部34aと第1支持部33b又は第2支持部33cとの間の寸法と、被係止部34aが撓み変位した状態における当該被係止部34aと第1支持部33b又は第2支持部33cとの間の寸法との差を吸収するように折り畳み方向に弾性変形可能な形状を有する。具体的に、折畳部34b,34bは、第1支持部33b又は第2支持部33cから当該第1支持部33b又は第2支持部33cと同一平面上に突出する部分と、この部分から回動軸方向の表面側に向かって傾斜するように立ち上がる部分とを有する。なお、折畳部としては、このような形状に限定されず、支持部につながる部分と腕部との間を薄肉とし、この部分で折り畳まれる形状等であってもよい。
【0031】
伝達部35は、壁部33に対して回動軸の方向に異なる位置に設けられる。具体的に、この伝達部35は、壁部33の裏面側の外縁に沿って当該壁部33の全周にわたって形成された外歯車であり、壁部33の外径内に収まる形状を有する。
【0032】
ホルダー40は、当該ホルダー40に対する回動操作部材10の相対的な回動を許容するように当該回動操作部材10を保持するものである。このホルダー40は、回動軸の周囲に所定の空間を形成するように当該空間を取り囲む形状を有する内筒部41と、回動軸に対してこの内筒部41よりも外側に形成された外筒部42と、内筒部41の後端部と外筒部42の後端部とをつなぐ底壁43とを有する。
【0033】
内筒部41は、その前端側に形成された爪41aと、この爪41aの周方向の両側に形成されており当該爪41aが径方向に撓むのを許容するスリット41bと、その後端側に形成されており後述する回路基板51の表面側に当接される基板当接部41cとを有し、ダイアル接続部32に内嵌されるようにその径が設定されている。爪41aは、内筒部41がダイアル接続部32に対して当該ダイアル接続部32の裏面側から内嵌されたときに当該ダイアル接続部32の前端と係合可能な形状を有する。本実施形態では、内筒部41は円筒形であり、爪41aは、内筒部41の周方向に沿って90度間隔の4箇所に形成されている。
【0034】
外筒部42は、内筒部41と同心円状をなす部分と、この部分から回動軸と直交する径方向の外側に向かって突出する外筒突出部42aとを有する。
【0035】
底壁43は、凹凸部43aと底壁突出部43dとを有する。凹凸部43aは、底壁の表面に形成されており、被係止部34aを本体31に対して回動軸方向に繰り返し撓み変位させる形状を有する。底壁突出部43dは、外筒突出部42aにつながっている。この底壁突出部43dは、後述する回動力伝達部材60の伝達軸62を挿通可能な形状の伝達軸挿通穴43eを含む。そして、外筒突出部42aと底壁突出部43dとで回動力伝達部材60を配置する回動力伝達部材配置部を構成する。この底壁43は、回動軸と直交する方向、すなわち、壁部33と平行な平面を有する。
【0036】
凹凸部43aは、複数の係止凹部43bと、互いに隣接する係止凹部43b間に形成された複数の凸部43cとからなる。複数の係止凹部43bは、それぞれが被係止部34aを係止可能な形状を有しており、回動軸周りの全周にわたって間欠的に配置されている。複数の凸部43cは、被係止部34aを回動軸方向に撓み変位させることが可能な形状を有する。また、ホルダー40は、この凹凸部43aが被係止部34aを撓み変位させることが可能な位置に回動操作部材10を保持する。これにより、被係止部34aは、所定の係止凹部43bからそれと隣接する係止凹部43bへ向かって移動するときに、回動軸方向の撓み変位を伴いながら凸部43cを乗り越え、当該隣接する係止凹部43bと係合する。そして、このときに、操作者にいわゆるクリック感が伝わる。
【0037】
検出部材50は、所定のパターンを有する回路基板51と、この回路基板51に実装されており回動操作部材10の回動操作を検出する回動検出器52とを有する。回路基板51は、伝達軸62をその裏面側へ挿通可能な伝達軸挿通孔51aを有する。回動検出器52は、伝達軸62を内嵌することが可能な形状の伝達軸嵌合孔52aを有する。具体的に、伝達軸嵌合孔52aは、略D字形状を有する。この形状は、伝達軸62の回転軸と直交する方向の断面形状と対応している。そして、回動検出器52は、伝達軸嵌合孔52aに挿通された伝達軸62の回動に伴って出力信号を変化させる。
【0038】
回動力伝達部材60は、伝達部35と噛合することにより回動操作部材10の回動に伴って回動する伝達歯車61と、この伝達歯車61とつながっており伝達軸挿通穴43e、伝達軸嵌合孔52a及び伝達軸挿通孔51aに挿通される伝達軸62とを有する。伝達歯車61の回転中心と伝達軸62の回転中心とは一致している。
【0039】
次に、このロータリスイッチの組み立て工程を説明する。以下に説明するように、本実施形態のロータリスイッチは、一方向からの組み立てが可能となっている。
【0040】
まず、回路基板51とこれに実装された回動検出器52とを有する検出部材50を準備する。そして、この検出部材50の表面側に基板当接部41cを当接させてホルダー40を当該検出部材50に固定する。その際、ホルダー40の伝達軸挿通穴43eの位置と、伝達軸嵌合孔52a及び伝達軸挿通孔51aの位置とが軸方向に重なるように固定する。
【0041】
次に、ホルダー40の爪41aがダイアル接続部32の前端側で係合する位置まで、当該ダイアル接続部32をホルダー40の内筒部41に外嵌する。このとき、爪41aは、その挿入時に、ダイアル接続部32の内周面に押されることにより内側に撓み変位し、挿入完了時に、その弾性により中立位置に復帰してダイアル接続部32の前端に係合する。また、この状態で、可動片34の被係止部34aが凹凸部43aに当接する。
【0042】
続いて、その伝達軸62が伝達軸挿通穴43e、伝達軸嵌合孔52a及び伝達軸挿通孔51aに挿通されるように回動力伝達部材60を回動力伝達部材配置部に配置する。このとき、インナー30の伝達部35と回動力伝達部材60の伝達歯車61とが噛合する。なお、回動力伝達部材60の配置は、インナー30の組み立てに先行してもよく、あるいは、インナー30の組み立てと同時であってもよい。
【0043】
最後に、ダイアル20の被把持部21をインナー30のダイアル接続部32に外嵌して両者を一体とする。このとき、被把持部21と本体31とは、図示しない固着手段により固着される。
【0044】
次に、本実施形態のロータリスイッチの動作を説明する。
【0045】
ダイアル20の被把持部21を把持して当該ダイアル20を回動操作すると、このダイアル20とともにインナー30が共回りする。なお、ダイアル20及びインナー30、すなわち、回動操作部材10は、ホルダー40に対して相対的に回動する。
【0046】
図6に示すように、ダイアル20を回動操作することにより、可動片34の被係止部34aが凹凸部43aの所定の係止凹部43bから抜け出し、隣接する係止凹部43bへ至る途中の凸部43cに乗り上げる。このとき、可動片34の係合部34aは撓み変位し、折畳部34bは折り畳み方向に弾性変形する。また、この状態の可動片34には、ひずみエネルギーが蓄積されている。
【0047】
そして、さらにダイアル20を回動操作することにより、被係止部34aがその撓み変位を解消させながら隣接する係止凹部43bと係合する。このとき、可動片34に蓄積されていたひずみエネルギーが解放されるので、操作者は明瞭なクリック感を感じる。
【0048】
また、可動片34の被係止部34aが所定の係止凹部43bからそれと隣接する係止凹部43bに至るようにダイアル20を回動操作することにより、伝達部35と噛合する伝達歯車61が回動し、この回動力が回動検出器52へと伝達される。このとき、回動検出器52は、所定の信号を出力する。つまり、回動操作部材10の操作によって操作者がクリック感を感じるごとに、回動検出器52の出力が切り替えられる。
【0049】
以上のように、本実施形態のロータリスイッチでは、回動操作部材10が、回動軸回りに回動する本体31と可動片34とを有し、ホルダー40が、可動片34の被係止部34aを回動軸方向に繰り返し撓み変位させる形状の凹凸部43aを有するので、回動操作部材10及びホルダー40のみで、回動操作部材10の回動操作した際のクリック感を操作者に与えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、可動片34は、回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状を有するので、可動片を回動操作部材の本体からその径方向に延びるように当該本体と一体的に成形する場合に比べて、回動操作部材を径方向へ大型化させることなく可動片の長さを確保することができる。そして、可動片34の長さを確保した結果、当該可動片34は弾性変形しやすくなるので、被係止部34aが撓み変位しやすくなる。
【0051】
また、本実施形態では、可動片34は、回動軸方向に撓み変位するように支持部33aにつながっているものの、回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状を有して凹凸部43aと対向しているので、可動片が本体からその径方向に延びるように当該本体と一体的に成形する場合に比べて、その被係止部34aが互いに隣接する係止凹部43b間を乗り越える際に当該可動片34に発生するねじり応力を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、可動片34は、その中間に被係止部34aが位置しており、回動軸と当該被係止部34aとを含む平面に対して対称な形状を有するので、回動操作部材10を正逆のいずれの方向に回動操作した場合であっても、操作者に安定した同一のクリック感を与えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、可動片34は、折り畳み方向に弾性変形が可能な折畳部34b,34bを有するので、両端が第1支持部33b及び第2支持部33cにそれぞれつながっている可動片34において、簡易に被係止部34aを撓み変位可能とする構造が得られる。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、可動片34は、その被係止部34aが壁部33に対して回動軸方向に相対的に撓み変位可能である例について示したが、被係止部34aが壁部33に対して径方向に相対的に撓み変位可能となるように、その被係止部34aが径方向に突出する方向に壁部33につながる構成であってもよい。この場合、凹凸部43aは、例えばホルダー40の外筒部42の内面に全周にわたって設けられればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、回動操作部材10側に可動片34及び支持部33aを、ホルダー40側に凹凸部43aをそれぞれ設けた例について示したが、回動操作部材10側に凹凸部を、ホルダー40側に可動片及び支持部を設けてもよい。この場合、壁部33の裏面側に凹凸部が設けられ、かつ、被係止部34aが表面側に突出するように底壁43の表面側に可動片及び支持部が設けられればよい。
【符号の説明】
【0057】
10 操作部
20 ダイアル
21 被把持部
22 端壁
30 インナー
31 本体
32 ダイアル接続部
33 壁部
33a 支持部
33b 第1支持部
33c 第2支持部
34 可動片
34a 被係止部
34b 折畳部
34c 連結部
35 伝達部
40 ホルダー
41 内筒部
41a 爪
41b スリット
41c 基板当接部
42 外筒部
42a 外筒突出部
43 底壁
43a 凹凸部
43b 係止凹部
43c 凸部
43d 底壁突出部
43e 伝達軸挿通穴
50 検出部材
51 回路基板
51a 伝達軸挿通孔
52 回動検出器
52a 伝達軸嵌合孔
60 回動力伝達部材
61 伝達歯車
62 伝達軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリスイッチであって、
特定の回動軸回りに回動操作される回動操作部材と、
前記回動操作部材を回動可能に保持するホルダーと、
前記回動操作部材の回動操作を検出する回動検出器とを備え、
前記回動操作部材は、回動操作により前記回動軸回りに回動する本体と、この本体につながるように当該本体と一体的に成形されており、当該本体に対して所定方向に相対的に撓み変位可能な被係止部を含んでこの被係止部の撓み変位を許容するように弾性変形が可能な可動片とを有し、
前記ホルダーは、前記回動軸を取り囲む全周にわたって形成され、かつ、前記回動操作部材の回動操作に伴って前記被係止部を前記本体に対して前記所定方向に繰り返し撓み変位させる形状の凹凸部を含み、この凹凸部が前記被係止部を撓み変位させることが可能な位置に前記回動操作部材を保持し、
前記凹凸部は、それぞれが前記被係止部を係止可能な形状を有して前記回動軸周りの全周にわたって間欠的に配置された複数の係止凹部を有し、前記被係止部はその撓み変位を伴いながら互いに離間する係止凹部の間を乗り越え可能であるロータリスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリスイッチにおいて、
前記可動片は、前記回動軸を中心とする周方向に沿って延びる形状を有しており、前記被係止部が撓み変位するようにその周方向の少なくとも一方の端部が前記本体につながっているロータリスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載のロータリスイッチにおいて、
前記凹凸部は、前記ホルダーの前記回動軸と直交する面における前記回動操作部材側に形成されており、
前記本体は、前記凹凸部に対向するとともに当該本体の径方向に突出した支持部を有し、
前記可動片は、前記被係止部が前記回動軸方向に沿って撓み変位するように前記支持部につながっているロータリスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリスイッチにおいて、
前記支持部は、所定の間隔を隔てて設けられた一対の第1支持部及び第2支持部からなり、
前記可動片は、前記被係止部が撓み変位するようにその両端がそれぞれ前記第1支持部及び第2支持部につながっているロータリスイッチ。
【請求項5】
請求項4に記載のロータリスイッチにおいて、
前記可動片は、その中間に前記被係止部が位置しており、前記回動軸と前記被係止部とを含む平面に対して対称な形状を有するロータリスイッチ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のロータリスイッチにおいて、
前記可動片は、前記被係止部が撓み変位したときに、前記被係止部が撓み変位していない状態における当該被係止部と前記第1支持部又は前記第2支持部との間の寸法と、前記被係止部が撓み変位した状態における当該被係止部と前記第1支持部又は前記第2支持部との間の寸法との差を吸収するように折り畳み方向に弾性変形する折畳部を有するロータリスイッチ。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のロータリスイッチにおいて、
前記本体は、前記第1支持部及び第2支持部を含んで径方向に突出した形状の壁部を有するロータリスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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