説明

ローダミン化合物

【課題】高い鮮明性及び発色性の特徴を有し、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性に優れたローダミン化合物及びその染料組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるローダミン化合物及びその油性または水性染料組成物。


(式(1)においてR、R、R、R10は水素原子またはアルキル基を表す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは炭素数1〜3のアルキレン基等を表す。R11はカルボキシ基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なローダミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ローダミンB、ローダミン3B、ローダミン6G等のローダミン染料は、レッドあるいはバイオレットの染料として広く使用されており、各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用、染色用など幅広い用途での応用がなされている。一般に色材に要求される特性は用途によって異なるものの、着色物が光や熱等に対し堅牢である事が特に強く要求される。
【0003】
一般にローダミン染料は鮮明で発色性が優れる反面、耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性が劣るという欠点がある。このため、ローダミン染料の鮮明性及び発色性を有し、且つ高堅牢な染料が要望されているが、これらの性能を兼ね備えたローダミン染料は見出されていない。特許文献1にはローダミン化合物のカチオン部位と過塩素酸イオンとから成るローダミン染料が記載されているが、本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載されているローダミン染料は耐光性、耐熱性、耐水性、耐湿熱性等の堅牢性が不十分であった。また、特許文献2にはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを有するカチオン染料についての記載はあるが、ローダミン染料の記載は無く、また染料組成物の耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性に関する記載もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US20030031955
【特許文献2】特開平8−253705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐光性、耐熱性、耐湿熱性及び耐水性等の堅牢性に優れる新規なローダミン染料並びに該染料を用いた染料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前述したような課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するローダミン染料が、従来に比べ飛躍的に耐熱性等の堅牢性が向上する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表される化合物、
【化1】

(式(1)においてR、R、R、R10はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。ただしRとRまたはRとR10のうち一方または両方は互いに結合しており、それぞれ5〜6員環を形成して結合していても良い。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基または炭素数2〜3のアルケニレン基を表す。R11はカルボキシ基またはカルボン酸エステルまたはアミノカルボニル基を表す。)、
(2)式(1)のR、およびRとR10はそれぞれ互いに結合して6員環を形成し、R、R、R、Rは水素原子、RおよびRはエチレン基、R11はカルボキシ基、カルボン酸エステルまたはアミノカルボニル基である(1)に記載の化合物、
(3)(1)または(2)に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物、
(4)(1)または(2)に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工すると、従来品よりも堅牢性に優れた特性を示すものである。すなわち、本発明のローダミン染料は染料着色体に好適に利用でき、カラーフィルターやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化合物は、前記式(1)で表される。
【0010】
式(1)においてR、R、R、R10はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。ただしRとRまたはRとR10のうち一方または両方は5〜6員環を形成して結合していても良い。
【0011】
式(1)のR、R、R、R10においてアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有して良く、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0012】
式(1)のR、R、R、R10においてRとRおよびRとR10の両方は互いに結合しており、それぞれ5〜6員環を形成していることが好ましく、特にいずれも無置換の6員環を形成していることが最も好ましい。
【0013】
式(1)においてR、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。
【0014】
式(1)のR、R、R、Rにおいてアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有して良く、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0015】
式(1)のR、R、R、Rにおいて、R、R、R、Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、特に水素原子であることが好ましい。
【0016】
式(1)においてRおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基または炭素数2〜3のアルケニレン基を表す。
【0017】
式(1)のRおよびRにおいて炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基が好ましい。これらのアルキレン基はハロゲン原子や置換基を有しても良く、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシル基、カルボキシエチル基、シアノ基、シアノエチル基、メトキシ基、メトキシエチル基、エトキシ基、エトキシエチル基、プロポキシ基、プロポキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、等が挙げられる。
【0018】
式(1)のRおよびRにおいて炭素数2〜3のアルケニレン基としては、エテニレン基、プロペニレン基が挙げられる。これらのアルケニレン基はハロゲン原子や置換基を有しても良く、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシル基、カルボキシエチル基、シアノ基、シアノエチル基、メトキシ基、メトキシエチル基、エトキシ基、エトキシエチル基、プロポキシ基、プロポキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、カルバモイル基、等が挙げられる。
【0019】
式(1)のRおよびRは炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、特にエチレン基であることが好ましい。
【0020】
式(1)においてR11はカルボキシ基またはカルボン酸エステルまたはアミノカルボニル基を表し、特にカルボキシ基であることが好ましい。
【0021】
式(1)においてR11におけるカルボン酸エステルとしては、例えばメチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、イソブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、等が挙げられる。これらのカルボン酸エステル基は置換基を有して良く、例えば、ヒドロキシエチルエステル基、ヒドロキシプロピルエステル基、ヒドロキシブチルエステル基、2−スルホエチルエステル基、カルボキシエチルエステル基、シアノエチルエステル基、メトキシエチルエステル基、エトキシエチルエステル基、ブトキシエチルエステル基、トリフルオロメチルエステル基、ペンタフルオロエチルエステル基、等が挙げられる。
【0022】
式(1)においてR11におけるアミノカルボニル基としては、例えばメチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、イソブチルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロペンチルアミノカルボニル基、ヘキシルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、等が挙げられる。これらのアミノカルボニル基は置換基を有して良く、例えば、ヒドロキシエチルアミノカルボニル基、ヒドロキシプロピルアミノカルボニル基、ヒドロキシブチルアミノカルボニル基、2−スルホエチルアミノカルボニル基、カルボキシエチルアミノカルボニル基、シアノエチルアミノカルボニル基、メトキシエチルアミノカルボニル基、エトキシエチルアミノカルボニル基、ブトキシエチルアミノカルボニル基、トリフルオロメチルアミノカルボニル基、ペンタフルオロエチルアミノカルボニル基、カルバモイル基、等が挙げられる。
【0023】
本発明の化合物は、例えば、株式会社技報堂発行の細田豊著「理論製造染料化学」(373〜375頁)に記載された公知の合成法で得ることができる。また、対イオンが塩素イオン等である市販品を購入し、対応する塩または酸を加え塩交換する事によっても合成する事もできる。
【0024】
本発明の化合物を塩交換により合成する場合は、例えば、対イオンが塩素イオンである染料を反応溶媒(例えば、水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N,N−ジメチルホルアミド(以下DMFと略記)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記)等の水溶性極性溶媒が挙げられ、これらの溶媒は単独、または混合してもよい。)に溶解し、対応する塩または酸を0.5〜3等量程度加え、所定温度(例えば0℃〜100℃)で攪拌し、容易に合成でき、析出した結晶をろ取する事により得られる。
【0025】
本発明の前記式(1)で示される具体例を、以下の表1−1〜表1−3に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
表1−1

表1−2

表1−3

表1−1〜表1−3において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0027】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明の化合物及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明の化合物を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調製などの目的で必要に応じて前記式(1)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0028】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に本発明の化合物を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、NMP、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、等が挙げられる。
【0029】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種類の油溶性有機溶媒に本発明の化合物を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド、スルホラン、NMP、2−ピロリドンなどの極性有機溶媒、等が挙げられ、これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する色素化合物に対して10〜100質量%の間で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0031】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することが好ましい。
【0032】
本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、防腐・防黴剤、pH調整剤等を含んでも良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐・防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0033】
また本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への色素の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤などを含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【0034】
本発明の化合物は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。尚、実施例中、「部」は特定しない限り「質量部」を表す。また、耐湿熱性や耐水性等の評価は染料着色体の色度(L値、a値、b値)を分光光度計「(株)島津製作所製商品名UV−3150」により測定し評価した。
【0036】
実施例1(表1における化合物No.1の合成)
2000mlビーカーに、Rhodamine640(Exciton社製)1部、水1000部、メタノール316部を仕込み、35℃で30分攪拌した。これにDMF4.2部にトリストリフルオロメタンスルホニルメチドのセシウム塩(セントラル硝子製)1部を溶解させた溶液を滴下し、室温で一晩攪拌した。析出した染料をろ取、1%メタノール水で洗浄、乾燥し、染料(本発明の化合物)1.3部を得た。極大吸収波長(シクロヘキサノン):581nm。
【0037】
実施例2(油性染料組成物及び染料着色体の作成)
化合物No.1の0.05部をテトラフルオロプロパノール10部に溶解させフィルター(GLクロマトディスク 13N、0.2μm、ジーエルサイエンス社製)を通して油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をガラス基盤にスピンコートし、80℃で30分乾燥し、染料着色体を作成した。
【0038】
なお、以下の表3における比較例1は、下記式(100)の過塩素酸塩化合物を使用し、同様に染料着色体を作成したものである。
【化2】

【0039】
耐熱性試験
上記の方法で得られた染料着色体を、80℃の条件の恒温熱風乾燥機中に24時間放置した。試験前後の染料着色体を分光光度計でL値、a値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため優れている事を示す。
色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
耐熱試験における測色の測定値及び色差を以下の表2〜表4に示す。
【0040】
化合物No.1の染料着色体の測色結果を以下の表2に示す。
(表2)
L値 a値 b値
試験前 89.30 3.70 −16.01
試験後 91.35 3.80 −10.43
試験前後差 −2.05 −0.10 −5.58
【0041】
比較例1の染料着色体の測色結果を以下の表3に示す。
(表3)
L値 a値 b値
試験前 80.77 −2.59 −29.61
試験後 84.25 −1.03 −21.13
試験前後差 −3.48 −1.56 −8.48
【0042】
上記の表2及び表3から化合物No.1及び比較例1の染料着色体の色差を求めた結果を以下の表4に示す。
(表4)
色 差
化合物No.1 5.9
比較例1 9.3
【0043】
表4の結果から明らかなように、比較例1の染料着色体の試験前後の色差が9.3と大きな値を示すのに対し、本発明の染料着色体は色差5.9と小さな値を示し、耐熱性に極めて優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)においてR、R、R、R10はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。ただしRとRまたはRとR10のうち一方または両方は互いに結合しており、それぞれ5〜6員環を形成して結合していても良い。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。R5およびR6はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基または炭素数2〜3のアルケニレン基を表す。R11はカルボキシ基またはカルボン酸エステルまたはアミノカルボニル基を表す。)。
【請求項2】
式(1)のRとR、およびRとR10はそれぞれ互いに結合して6員環を形成し、R、R、R、Rは水素原子、RおよびRはエチレン基、R11はカルボキシ基、カルボン酸エステルまたはアミノカルボニル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物。

【公開番号】特開2013−107954(P2013−107954A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252507(P2011−252507)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】