説明

ワイヤレス電力伝送装置

【課題】送電装置と受電装置の間でのワイヤレス通信を、ワイヤレス電力伝送のための高周波を用いることなく、しかも通信回路を設けることによる装置の複雑化を抑制する。
【解決手段】
送電装置1は、送電コイル3に高周波電力を供給する送電部5、及び送電部の動作を制御する送電制御部6を備え、受電装置2は、受電コイル4が受電した高周波電力を所定の電力形式に変換する電力変換部10、及び電力変換部から入力される受電状態に関する情報に関わる制御を行う受電制御部12を備える。受電装置は、可視光または可聴音をキャリアとする通信により送電装置へ情報を送信する情報送信部13を備え、送電装置は、受電装置から送信された情報を受信する情報受信部7を備え、情報送信部は、可視光または可聴音を、送電装置以外の外部からも認識可能な状態で放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイル間の電力の伝送を非接触(ワイヤレス)で行うワイヤレス電力伝送装置に関する。特に、携帯電話やディジタルカメラなどの小型機器に対する電力伝送に適したワイヤレス電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や産業用機器、携帯用電子機器等へのワイヤレス電力伝送技術が注目を浴びている。特に、電動歯ブラシや電気シェーバー等の水まわりで使う電化製品やコードレス電話機、携帯電話機等には、この技術が重宝され、一部の製品において採用されている。
【0003】
現在実用化されているワイヤレス電力伝送装置としては、送電装置に設けられた1次側コイル(送電コイル)と、受電装置に設けられた2次側コイル(受電コイル)との間での電磁誘導を利用した電磁誘導型ワイヤレス電力伝送装置がある。この装置においては、電力の伝送効率を高めるために、送電装置と受電装置の機器に設けられた各々のコイルを近接させて配置させる必要がある。すなわち、電力を無線伝送できる距離が短いという課題を有する。
【0004】
そこで、数m離れた機器にワイヤレスで電力を供給する技術として、送電コイルと受電コイルとの間で、電界または磁界の共鳴を利用して電力伝送を行う共鳴型ワイヤレス電力伝送技術も検討されている。
【0005】
電磁誘導型のワイヤレス電力伝送装置では、使用する周波数が10kHz〜数百kHz、共鳴型のワイヤレス電力伝送装置では、使用する周波数が数百kHzから数十MHzであることが望ましい。
【0006】
一方、ワイヤレス電力伝送装置の送電装置と受電装置の間で、安全に効率良く電力を伝送するためには、送電装置と受電装置の間で、要求電力、送信電力、受信電力、温度、二次電池の充電状態、その他の情報に関する通信を行うことが望ましい。そのような送電装置と受電装置の間での通信は当然、ワイヤレスで行うことが望ましい。通信方法としては、電力伝送用の電磁波をキャリアとして使用する方法、または、電力伝送用の高周波とは別のキャリアを使用する方法がある。
【0007】
しかしながら、ワイヤレス電力伝送用には上述のとおり高周波を用いるため、通信のキャリアとして使用する場合、電波法上の問題が発生する。すなわち、ワイヤレス電力伝送の高周波をキャリアとして通信を行うと、無線通信とみなされ、電波法第100条第1項に規定されている高周波利用設備に該当しなくなり、認可が必要となる。この問題を回避するためには、電力伝送用の高周波とは別のキャリアを使用する必要がある。
【0008】
特許文献1に開示されたワイヤレス電力伝送装置は、光、あるいは音波を利用して、電力伝送用の高周波を用いることなく、送電装置と受電装置の間でワイヤレス通信を行うように構成されている。また、受電装置は、送電装置から送信される送信電力の受電レベルを検出する受電レベル検出部を有し、その検出結果に基づく情報をワイヤレス通信により送電装置に送信する。それにより、通信される情報に基づく効率の良い電力伝送が可能となる。
【0009】
なお、特許文献1では、受電レベル検出部が、受信した電力に対応する電流量に応じて発光量が変化する発光素子と、発光素子の発光量に応じた検出信号を出力する光電変換素子とから構成される。しかし、受電レベル検出部の発光素子は、送電装置と受電装置の間でのワイヤレス通信のキャリアとして用いられることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−268310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された上述のワイヤレス電力伝送装置の場合、光、あるいは音波を利用して、電力伝送用の高周波を用いることなく、送電装置と受電装置の間でワイヤレス通信を行うので、電波法上の問題を回避して、高周波利用設備の要件に適合可能である。しかし、そのためには、電力伝送用の高周波回路とは別に、通信のためだけの回路が必要であり、装置の複雑化、大型化、及びコスト増大の問題を免れることができない。
【0012】
従って、本発明は、送電装置と受電装置の間でのワイヤレス通信を、ワイヤレス電力伝送のための高周波を用いることなく、しかも通信回路を設けることによる装置の複雑化を抑制可能なワイヤレス電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のワイヤレス電力伝送装置は、送電装置の送電コイルと受電装置の受電コイル間の非接触の結合を介して、前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送するように構成され、前記送電装置は、前記送電コイルに高周波電力を供給する送電部、及び前記送電部の動作を制御する送電制御部を備え、前記受電装置は、前記受電コイルが受電した高周波電力を所定の電力形式に変換する電力変換部、及び前記電力変換部から入力される受電状態に関する情報に関わる制御を行う受電制御部を備えている。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1構成のワイヤレス電力伝送装置は、前記受電装置は、可視光または可聴音をキャリアとする通信により前記送電装置へ情報を送信する情報送信部を備え、前記受電制御部は、前記情報送信部による通信の動作を制御し、前記送電装置は、前記受電装置から送信された情報を受信する情報受信部を備え、前記送電制御部は、前記情報受信部による通信の動作を制御し、前記情報送信部は、前記可視光または前記可聴音を、前記送電装置以外の外部からも認識可能な状態で放出するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2構成のワイヤレス電力伝送装置は、前記送電装置は、可視光または可聴音をキャリアとする通信により前記受電装置へ情報を送信する送電側情報送信部、及び前記受電装置から送信された情報を受信する送電側情報受信部を備え、前記送電制御部は、前記送電側情報送信部及び前記送電側情報受信部による通信の動作を制御し、前記受電装置は、前記送電装置から送信された情報を受信する受電側情報受信部、及び前記送電装置へ情報を送信する受電側情報送信部を備え、前記受電制御部は、前記受電側情報受信部及び前記受電側情報送信部による通信の動作を制御し、前記送電側情報送信部は、前記可視光または前記可聴音を、前記受電装置以外の外部からも認識可能な状態で放出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイヤレス電力伝送装置によれば、光、あるいは音波を利用して、電力伝送用の高周波を用いることなく送電装置と受電装置の間でワイヤレス通信を行うので、電波法上の問題を回避して高周波利用設備の要件に適合可能である。しかも、送電装置と受電装置の間の通信に用いる可視光または可聴音を、使用者への報知手段と兼用するので、通信のためだけの回路が不要であり、装置の複雑化を抑制してコスト増大を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1におけるワイヤレス電力伝送装置の構成を示すブロック図
【図2】同ワイヤレス電力伝送装置の送電制御部の動作を示すフローチャート
【図3】同ワイヤレス電力伝送装置の受電制御部の動作を示すフローチャート
【図4】実施の形態2におけるワイヤレス伝送装置の構成を示すブロック図
【図5】同ワイヤレス電力伝送装置の動作を示すフローチャート
【図6】図5のフローチャートに示された動作の一部をより具体的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のワイヤレス電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を採ることが可能である。
【0019】
すなわち、第2構成のワイヤレス電力伝送装置において、1台の前記送電装置から、複数の前記受電装置の各々に対してワイヤレス電力伝送を行うことが可能なように構成され、複数の前記受電装置は各々固有番号を有し、前記送電装置は、ワイヤレス電力伝送のために配置された複数の前記受電装置との間の通信により、前記受電装置の各々の前記固有番号を取得した後、前記固有番号を指定して前記受電装置との間の通信を行うように構成することができる。
【0020】
また、前記可視光をキャリアとする通信は、情報が、発光強度、色、点滅周期、文字または記号の少なくとも一種により表される構成とすることができる。
【0021】
また、前記可聴音をキャリアとする通信は、情報が、自然言語、楽曲または音声符号の少なくとも一種により表される構成とすることができる。
【0022】
以下に、本発明の各実施の形態におけるワイヤレス電力伝送装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
<実施の形態1>
実施の形態1におけるワイヤレス電力伝送装置の構成を、図1にブロック図で示す。この装置は、送電装置1と受電装置2により構成される。送電装置1は、高周波電力をワイヤレス給電するための送電コイル3を有する。受電装置2は、送電コイル3が供給する高周波電力を受電するための受電コイル4を有する。なお、送電コイル3と受電コイル4の結合形態は、電磁誘導、電波、電場または磁場の共鳴によるもの等、適宜採用することができる。
【0024】
送電装置1において、送電コイル3には送電部5が接続され、送電部5を構成する電力伝送回路(不図示)が発生する高周波電力が供給される。送電部5に接続された送電制御部6により、電力伝送回路の動作が制御される。
【0025】
送電制御部6には、情報受信部7、及び操作部8が接続されている。情報受信部7は、受光部9を介した光通信により受電装置2から情報を受信する。操作部8は、ユーザーによるワイヤレス電力伝送の開始の指示等の操作のための機能を提供し、押しボタンスイッチなどにより構成することができる。
【0026】
送電制御部6は、情報受信部7及び操作部8から入力される情報に基づいて、送電部5を制御し、ワイヤレス電力転送の可否や電力量などを制御する。送電制御部6はマイコンによって構成することが好ましいが、FPGAや電子回路によって構成することもできる。
【0027】
受電装置2において、受電コイル4には電力変換部10が接続され、受電コイル4が吸収した高周波電力に対する検波や平滑を行い、必要とする電力形式に変換する。電力変換部10が変換した電力は、電力出力端子11から外部へ出力される。電力変換部10は、受電コイル4が電力の伝送を受けているときには、受電に関する情報、例えば受電電力値を示す信号を受電制御部12に出力する。図示は省略するが、受電装置2が、例えば携帯電話に組み込まれている場合であれば、電力出力端子11から供給される電力は、二次電池の充電のために消費される。
【0028】
受電制御部12には、情報送信部13が接続されている。情報送信部13は、発光部14を介した光通信により送電装置1に対して情報を送信する。受電制御部12は、電力変換部10が変換した電力の電圧・電流などの情報に基づいて、受電装置2の動作を制御する。受電制御部12はまた、情報送信部13を使って送電装置1の動作に必要な情報を送信する。
【0029】
情報送信部13に設けられた発光部14からの可視光は、送電装置1に対して情報を送信するために情報受信部7に設けられた受光部9に向けて放射されるだけでなく、使用者確認部15において使用者からも視覚で認識できるように放射される。光通信による情報は、発光部14からの可視光の発光強度、色、点滅周期、文字または記号等の少なくとも一種により表されるように構成される。従って、発光部14からの可視光を視認することにより、使用者は動作の状況を確認することができる。
【0030】
発光部14は、情報送信部13により駆動されて、情報により変調された光を発光する。発光部14には、例えばLEDを使うことができ、発光強度、色、点滅周期などを変化させることによって情報通信を行うことができる。発光部14が発生する可視光としては、例えば、波長360ナノメートル以上830ナノメートル以下の光を用いればよい。また、発光部14として、液晶パネルなどの2次元の発光要素を用いることにより、送電を要求するときには「送電」、停止を供給するときには「停止」、異常状態では「異常」などの文字列を表示することもできる。
【0031】
受光部9には、フォトダイオード等、周知のフォトセンサを用いることができる。受光部9で光電変換された情報は、電気信号として情報受信部7に供給され、処理される。また、受光部9として、二次元CCDなどの二次元の広がりを持った素子を用い、文字認識を組み合わせることによって文字列などの情報を受信することもできる。
【0032】
以上の構成により、送電コイル3は、送電部5が生成した高周波電力を磁界および電界として放射し、受電コイル4が、送電コイル3から放射された磁界および電界を高周波電力として吸収することにより、ワイヤレスで電力の伝送が行われる。また、情報受信部7、及び情報送信部13により、受電装置2から送電装置1に向けて、要求電力、送信電力、受信電力、温度、二次電池の充電状態、その他の情報をワイヤレスで通信して、安全に効率良く電力を伝送することが可能である。ワイヤレスでの通信は光通信により行われるので、電力伝送用の高周波を用いることなく、電波法上の問題を回避して高周波利用設備の要件に適合可能である。
【0033】
しかも、受電装置2の発光部14からの光は、使用者確認部15において使用者から視覚的に認識できる。それにより、使用者に知らせるべき内容、例えば、電力伝送中であるか、あるいは終了したか、等の情報を、受電制御部12による情報送信部13の制御により表示可能である。従って、情報送信部13及び発光部14は、情報通信のためだけではなく、使用者への通知機能のための回路と兼用されることになり、ワイヤレス電力伝送装置の複雑化、大型化、及び高価格化を抑制することが可能となる。
【0034】
次に、上記構成のワイヤレス電力伝送装置の送電装置1の動作について、図2を参照して説明する。送電装置1が動作を開始すると、先ず、送電制御部6は、操作部8により電力伝送を開始する操作が行われたか否かを判断する(ステップS101)。開始操作が行われていなければ、行われるまで送電制御部6は待機する(ステップS101、N)。操作部8により電力伝送を開始する操作が行われると(S101、Y)、発電開始操作に応じて送電制御部6は、送電部5を制御し高周波電力を発生させて、ワイヤレス電力伝送を開始する(S102)。
【0035】
送電制御部6は、ワイヤレス電力伝送に使う高周波を発生させた後、指定時間が経過するまで待機する(S103)。待機時間は、受電装置2が動作を開始した後、後述のように、発光部14を発光させる制御を始めるまでに要する期間を含むように設定される。待機時間が経過後、送電制御部6は、受光部9が受電装置2の発光部14による発光を検知しているか否かを、情報受信部7からの信号に基づいて判断する(S104)。
【0036】
電力伝送を開始した当初は、受電装置2は発光部14を発光させており、受光部9はその発光を検知し、情報受信部7は発光検知の信号を出力する。それにより、送電制御部6は、発光検知と判断し(S104、Y)、ワイヤレス電力伝送を継続する。受光部9が発光部14からの発光を受光しなくなったとき、情報受信部7からの信号に基づいて、送電制御部6は発光非検知と判断し(S104、N)、ワイヤレス電力伝送を停止する(S105)。
【0037】
次に、上記構成のワイヤレス電力伝送装置の受電装置2の動作について、図3を参照して説明する。受電装置2が動作を開始すると、受電制御部12は、電力変換部10からの信号に基づき、送電装置1がワイヤレス電力伝送を行っているか否か、すなわち受電しているか否かを判断する(S201)。受電していなければ(S201、N)、受電している状態になるまで待機する。
【0038】
電力変換部10から、受電状態を示す信号が出力された場合(S201、Y)、受電制御部12は、情報送信部13を制御して発光部14を点灯させる(S202)。この点灯が、上述のとおり、受光部9により受光されて、送電制御部6は受電装置2の発光部14による発光の検知状態と判断する。
【0039】
次に、受電制御部12は、受電装置2が電力を必要としているか否かを判断する(S203)。この判断を行うための構成の図示は省略するが、一般的に用いられているどのような構成を採用してもよい。例えば、受電装置2が携帯電話に組み込まれ、二次電池の充電のために電力が伝送される場合であれば、二次電池の充電状態を検出し、それに応じて電力の要否を判断する。
【0040】
受電制御部12は、受電装置2が受電を必要としているものと判断した場合(S203、Y)は、発光部14の点灯を維持するように情報送信部13を制御する。受電装置2での受電が不要になったものと判断したとき(S203、N)には、発光部14を消灯するように情報送信部13が制御される(S204)。この動作により、上述のとおり、送電装置1はワイヤレス電力伝送を停止する。
【0041】
以上のように、光通信による情報に基づいてワイヤレス電力伝送の制御を行い、同時に使用者に対して、例えば、ワイヤレス電力転送を行っているか否かについての情報を提供することができる。
【0042】
<実施の形態2>
実施の形態2におけるワイヤレス電力伝送装置の構成を、図4にブロック図で示す。本実施の形態では、基本的な機能のための構成は実施の形態1と同様であり、送電装置1と受電装置2の間の通信のための構成のみが実施の形態1と相違する。従って、図1に示した要素と同一の要素については、同一の参照番号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0043】
送電制御部6には、送電側情報受信部16、送電側情報送信部17、及び操作部8が接続されている。送電側情報送信部17は、実施の形態1における情報送信部13と同様、発光部18が発生する可視光を介した光通信により受電装置2に対して情報を送信する。操作部8は、ユーザーによるワイヤレス電力伝送の開始の指示等の操作のための機能を提供し、押しボタンスイッチなどにより構成することができる。
【0044】
送電制御部6は、送電側情報受信部16及び操作部8から入力される情報に基づいて、送電部5を制御し、ワイヤレス電力転送の可否や電力量などを制御する。送電制御部6はまた、送電側情報送信部17を使って、送電装置1の動作に必要な情報、例えば、受電装置2での受電電力量を通知させる指示を送信する。
【0045】
受電制御部12には、受電側情報送信部19、及び受電側情報受信部20が接続されている。受電側情報受信部20は、実施の形態1における情報受信部7と同様、受光部21が受光する可視光を介した光通信により送電装置1から情報を受信する。受電制御部12は、受電側情報送信部19を使って送電装置1の動作に必要な情報を送信する。例えば、上述のように、受電装置2での受電電力量を通知させる指示を受信した場合であれば、受電側情報送信部19から受電電力量を送信する。
【0046】
ここで、受電側情報送信部19と送電側情報受信部16の間の通信は、可視光を介した光通信により行ってもよいが、それには限定されず、電波法上の問題を回避可能な他のどのような通信方法を用いてもよい。図示とは異なるが、例えば、受電制御部12により電力変換部10を制御して、受電コイル4からの高周波電力の受電状態と遮断状態を選択することにより、受電状態と遮断状態の時間系列の組合わせにより通信を行うことができる。
【0047】
送電側情報送信部17に設けられた発光部18からの可視光は、受電装置2に対して情報を送信するために受電側情報受信部20の受光部21に向けて放射されるだけでなく、使用者確認部22において使用者からも視覚で認識できるように放射される。光通信による情報は、発光部18からの可視光の発光強度、色、点滅周期、文字または記号の少なくとも一種により表されるように構成される。従って、発光部18からの可視光を視認することにより、使用者は動作の状況を確認することができる。
【0048】
発光部18及び受光部21は、実施の形態1における発光部14及び受光部9と同様の条件に基づいて構成することができる。なお、受電側情報送信部19と送電側情報受信部16の間の通信を光通信により行う場合は、そのための発光部が発生する光は、可視光に制限されることはない。
【0049】
以上の構成により、ワイヤレスで電力の伝送が行われ、また、送電側情報受信部16、送電側情報送信部17、受電側情報送信部19及び受電側情報受信部20により、送電装置1と受電装置2の間で、要求電力、送信電力、受信電力、温度、二次電池の充電状態、その他の情報をワイヤレスで通信して、安全に効率良く電力を伝送することが可能である。ワイヤレスでの通信は、電力伝送用の高周波を用いることなく、電波法上の問題を回避可能である。
【0050】
しかも、送電装置1の発光部18からの光は、使用者確認部22において使用者から視覚的に認識できる。それにより、使用者に知らせるべき内容、例えば、電力伝送中であるか、あるいは終了したか、等の情報を、送電側情報送信部17の制御により表示可能である。従って、送電側情報送信部17及び発光部18は、情報通信のためだけではなく、使用者への通知機能のための回路と兼用されることになり、ワイヤレス電力伝送装置の複雑化、大型化、及び高価格化を抑制することが可能となる。
【0051】
上記構成のワイヤレス電力伝送装置の送電装置1及び受電装置2の基本的な動作は、図2及び図3を参照して説明した実施の形態1の動作と同様である。相違点は、送電側情報送信部17から受電側情報受信部20に対する情報の送信に関する動作である。
【0052】
上述のとおり、送電制御部6は、送電部5を制御し高周波電力を発生させて、ワイヤレス電力伝送を開始した後、受電装置2での受電が必要であることを示す通信を受信している限り、電力伝送を継続する。その際、送電制御部6は、受電装置2での受電の状態に応じた適切な制御を行わなければならない。そのため、上述のように、送電側情報送信部17を使って、送電装置1の動作に必要な情報、例えば、受電装置2での受電電力量を通知させる指示を送信する。それに応じて、受電装置2は、受電側情報送信部19から受電電力量を送信する。このように、送電側情報送信部17と受電側情報受信部20との間の通信により、送電装置1から受電装置2に対する指示の送信等、受電側情報送信部19と送電側情報受信部16の間での通信を補って、より適切な通信を行うことが可能となる。
【0053】
<実施の形態3>
実施の形態3におけるワイヤレス電力伝送装置について、図5及び図6を参照して説明する。本実施の形態におけるワイヤレス電力伝送装置の構成は、図4に示した実施の形態2の装置と同様であり、その動作も、基本的には実施の形態2の場合と同様である。
【0054】
本実施の形態は、1台の送電装置に対して、複数台(N台、Nは整数)の受電装置を配置してワイヤレス電力伝送を行う(1対N)ことを可能としたものである。その際、送電装置と受電装置の間で双方向通信を行うことにより、電力伝送を適切に制御可能としたことが特徴である。従って、ワイヤレス電力伝送は、必ずしもN台の受電装置に対して同時に行うものではない。すなわち、N台の異なる受電装置を区別して、各々に対して適切な条件でワイヤレス電力伝送を可能とする。なお、以下の記載では、N台の受電装置の各々を表すために、受電装置[k](kは1〜Nの整数)と記述する。
【0055】
1台の送電装置と、受電装置[k]の各々の間では、実施の形態1の場合と同様、ワイヤレス電力伝送を適切に制御するための通信が行われる。その際、複数の受電装置[k]が同時に通信を行うことによる衝突を回避するために、送電装置が受電装置の識別情報を使って受電装置を指定して通信する必要がある。すなわち、実施の形態2のように送電装置から受電装置への通信が必要となる。また、受電装置が不特定の場合は、送電装置が複数の受電装置の識別情報を読み取る必要があり、その通信では衝突が発生する。
【0056】
以上の問題を回避するため、本実施の形態では、受電装置[1]〜受電装置[N]の各々の固有番号を指定した通信が可能な構成とする。そのため、下記の(1)及び(2)の条件を充足させることを前提とする。
【0057】
(1)受電装置[k]には、各々の固有番号を割り振っておく。
【0058】
(2)送電装置は、受電装置[k]の固有番号を指定して通信を行う。受電装置[k]は、送電装置が自分の固有番号を指定したときのみに通信を行う。
【0059】
この前提に基づき、送電装置からの電力伝送を受けるために複数の受電装置[k](kは必ずしも1〜Nの全てではない)が配置された状態における、送電装置と各受電装置[k]との間の通信の一例について、図5のフローチャートを参照して説明する。この例では、送電装置は、配置された全ての受電装置[k]の固有番号を取得し、その固有番号を用いることにより、複数の受電装置[k]との間で衝突を発生させることなく通信を行う。そのため、受電装置が不特定の場合は、通信に先立ち固有番号の問い合わせを行う。
【0060】
図5は、配置された複数の受電装置[k]の各々における、送電装置からの通信を受信したときの処理の手順を示す。受電装置[k]は、送電装置からの通信を受信したとき(ステップS301)、固有番号の問い合わせか否かを判断する(S302)。固有番号の問い合わせであれば(S302、Y)、固有番号の返答の処理(S303)を行う。この処理は、複数の受電装置[k]の固有番号を送電装置が取得するために行われる。その内容については、図6を参照して後述する。
【0061】
固有番号の問い合わせでなければ(S302、N)、ステップS304に進む。固有番号を問い合わせていないことは、送電装置が、配置された全ての受電装置[k]の固有番号を既に取得した状態であることを意味する。この場合、送電装置は、固有番号を伴って特定の受電装置[k]に対して通信を行っている。ここでは、送電装置からの通信内容が、受電装置[k]における受電電力量の情報を要求する指示であるものとする。
【0062】
ステップS304では、受電装置[k]の各々において、送電装置からの通信に含まれる固有番号が、各自の固有番号と一致しているか否かが判断される。一致していない受電装置[k](S304、N)は、応答しない(S305)。一致している受電装置[k](S304、Y)は応答し、受電電力量の情報を送信する(S306)。図示しないが、送電装置は順次、固有番号を変更して以上の手順を繰り返し、各受電装置[k]の受電電力量の情報を取得する。
【0063】
次に、ステップS303の処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。この処理におけるS307aとS307bのループは、図5の受信(S301)の繰り返しの度に、固有番号の先頭ビットから順次下位ビットに向かって、ビット毎の1、0を順次指定した通信が繰り返されることを示している。受信(S301)の繰り返し毎に、各受電装置[k]では、問い合わせを受けた上位iビットが、各自の固有番号と一致している否かを判断する(S308)。
【0064】
図5の最初の受信(S301)では、送電装置からの通信は、例えば、固有番号の先頭ビットが「1」の機器を指定する内容となる。図6において、各受電装置[k]では、先頭ビットが「1」か否かを判断する(S308)。一致していない受電装置[k](S308、N)は、応答しない(S309)。一致している受電装置[k](S308、Y)は、応答する(S310)。すなわち、一致していることを示す情報を送電装置に送信する。
【0065】
応答があれば、先頭1ビットが「1」の受電装置[k]が存在するので、図5の次の受信(S301)では、送電装置からの通信は、上位2ビットが「11」の機器を指定する内容となる。応答が無ければ、先頭1ビットが「1」の受電装置[k]が存在しないので、図5の次の受信(S301)では、送電装置からの通信は、先頭1ビットが0の機器を指定する内容となる。このように上位ビットから1ビットずつ固有番号を確認し、固有番号の全ビットを確認することで、配置された全ての受電装置[k]の固有番号を取得することができる。
【0066】
配置された全ての受電装置[k]の固有番号を取得できたら、図5において固有番号の問い合わせを行うことなく(S302、N)、上述のような、固有番号を伴った特定の受電装置[k]との間での通信が行われる。
【0067】
<実施の形態4>
実施の形態4におけるワイヤレス電力伝送装置は、基本的には、図1及び図4にブロック図で示したものと同様に構成される。本実施の形態は、図1における情報送信部13と情報受信部7の間の通信、あるいは図4における送電側情報送信部17と受電側情報受信部20の間の通信を、キャリアとして可視光に代えて可聴音を用いることを特徴とする。
【0068】
従って、図1の情報送信部13及び図4の送電側情報送信部17は、発光部14、18に代えて可聴音を発生する音響発生部を備え、図1の情報受信部7及び図4の受電側情報受信部20は、受光部9、21に代えて受音部を備える。
【0069】
可聴音としては、例えば、周波数20ヘルツ以上2万ヘルツ以下の音波を用いることができる。また、音波通信による情報は、自然言語、楽曲または音声符号の少なくとも一種により表されるように構成される。それにより、音響発生部からの可聴音を聴取することにより、使用者は動作の状況を確認することができ、上述の各実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のワイヤレス電力伝送装置によれば、送電装置と受電装置の間でのワイヤレス通信を、簡素な構成により実現可能であるため、電動歯ブラシ、電気シェーバー等の電化製品や、コードレス電話機、携帯電話機等に対するワイヤレス電力伝送に有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 送電装置
2 受電装置
3 送電コイル
4 受電コイル
5 送電部
6 送電制御部
7 情報受信部
8 操作部
9、21 受光部
10 電力変換部
11 電力出力端子
12 受電制御部
13 情報送信部
14、18 発光部
15 使用者確認部
16 送電側情報受信部
17 送電側情報送信部
19 受電側情報送信部
20 受電側情報受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の送電コイルと受電装置の受電コイル間の非接触の結合を介して、前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送するように構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルに高周波電力を供給する送電部、及び前記送電部の動作を制御する送電制御部を備え、
前記受電装置は、前記受電コイルが受電した高周波電力を所定の電力形式に変換する電力変換部、及び前記電力変換部から入力される受電状態に関する情報に関わる制御を行う受電制御部を備えたワイヤレス電力伝送装置において、
前記受電装置は、可視光または可聴音をキャリアとする通信により前記送電装置へ情報を送信する情報送信部を備え、前記受電制御部は、前記情報送信部による通信の動作を制御し、
前記送電装置は、前記受電装置から送信された情報を受信する情報受信部を備え、前記送電制御部は、前記情報受信部による通信の動作を制御し、
前記情報送信部は、前記可視光または前記可聴音を、前記送電装置以外の外部からも認識可能な状態で放出するように構成されていることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置。
【請求項2】
送電装置の送電コイルと受電装置の受電コイル間の非接触の結合を介して、前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送するように構成され、
前記送電装置は、前記送電コイルに高周波電力を供給する送電部、及び前記送電部の動作を制御する送電制御部を備え、
前記受電装置は、前記受電コイルが受電した高周波電力を所定の電力形式に変換する電力変換部、及び前記電力変換部から入力される受電状態に関する情報に関わる制御を行う受電制御部を備えたワイヤレス電力伝送装置において、
前記送電装置は、可視光または可聴音をキャリアとする通信により前記受電装置へ情報を送信する送電側情報送信部、及び前記受電装置から送信された情報を受信する送電側情報受信部を備え、前記送電制御部は、前記送電側情報送信部及び前記送電側情報受信部による通信の動作を制御し、
前記受電装置は、前記送電装置から送信された情報を受信する受電側情報受信部、及び前記送電装置へ情報を送信する受電側情報送信部を備え、前記受電制御部は、前記受電側情報受信部及び前記受電側情報送信部による通信の動作を制御し、
前記送電側情報送信部は、前記可視光または前記可聴音を、前記受電装置以外の外部からも認識可能な状態で放出するように構成されていることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置。
【請求項3】
1台の前記送電装置から、複数の前記受電装置の各々に対してワイヤレス電力伝送を行うことが可能なように構成され、
複数の前記受電装置は各々固有番号を有し、
前記送電装置は、ワイヤレス電力伝送のために配置された複数の前記受電装置との間の通信により、前記受電装置の各々の前記固有番号を取得した後、前記固有番号を指定して前記受電装置との間の通信を行うように構成された請求項2に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項4】
前記可視光をキャリアとする通信は、情報が、発光強度、色、点滅周期、文字または記号の少なくとも一種により表される請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項5】
前記可聴音をキャリアとする通信は、情報が、自然言語、楽曲または音声符号の少なくとも一種により表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤレス電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115859(P2013−115859A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257453(P2011−257453)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)