説明

ワイヤーコンベア

【課題】折曲線材の端部に残存する鋭利な切断面によって、製造時及び使用時に作業者が指をけがしたり、ゴム手袋を切損したりするおそれがなく、また、フックが折損して搬送物中に混入するおそれがなくて安全且つ衛生的なワイヤーコンベアを提供することを課題とする。
【解決手段】金属製線材にて上開きの凹陥部3、4と下開きの凹陥部4、3とを交互に連設し、両端の凹陥部の末端を横方向に延ばし、更に折り返すことによってフック5を形成した折曲線材2を設け、折曲線材2の凹陥部を他の折曲線材の対応する凹陥部に嵌め込むことによって多数の折曲線材を連結して構成されるワイヤーコンベアであって、フック5の外側辺6を内側方向に湾曲又は折曲させることにより、切断面7であるフック5の外側辺の端面が内側方向に向くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤーコンベアに関するものであり、より詳細には、各種食品や機械の生産ライン、加工ライン、洗浄ライン等における搬送ラインを構成するための、チョコベルトと通称される金属線材製のワイヤーコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ワイヤーコンベアは、一般にステンレス製の線材を折曲した折曲線材を連結していくことにより構成される。即ち、折曲線材は一般に、例えば図4に示されるように、線材を下向き縦方向、横方向、上向き縦方向、横方向の順に折曲して成るやや裾広がりの凹陥部21を横に何個か連設し、両端にフック22を設けて形成される。
【0003】
上記折曲線材は、その凹陥部21を別の折曲線材の凹陥部21に嵌め入れることにより多数連結され、以て、適宜長さのワイヤーコンベアが構成される。このワイヤーコンベアは一般に、各折曲線材を直接駆動スプロケットに掛回すことにより循環駆動され、各折曲線材が、それに連結されている後続の折曲線材を引張ることにより、全体的に緊張し、表面の搬送面が平坦な状態となる。
【0004】
ところで上記折曲線材の製造に際しては、上記折曲加工に先立って線材を所定長さに切断するが、その両端の切断面に対してその後何ら加工を施すことはないため、その鋭利な切断面23がそのまま残ることになる。その状態のまま、折曲装置によって上記折曲加工を行い、両端にフック22を形成する。その際フック22の先端部は、凹陥部21形成の場合と同じかそれよりも少し広角度に折曲されるため、その切断面23は、手指に触れやすく、引っ掛かりやすい状態となっている(図5(A)参照)。
【0005】
そのため、ワイヤーコンベアを製造するに当たり、折曲線材同士の組み付け作業を行う際等に、作業者が指を切る事故が少なからず発生している。また、ワイヤーコンベアの使用時においても、その進行方向が図4において矢印a方向である場合はそれ程ではないが、逆の矢印b方向の場合(ワイヤーコンベアを正逆双方向に進行させる場合がある。)には、やはり切断面23が手指に触れやすい状態となるために、作業者の薄いゴム手袋が簡単に切損したり、指を切ったりする事故が頻繁に発生している。
【0006】
かかる事故発生の対策として、フック22をより深く曲げて、切断面23がより内方に向くようにすることが考えられる(図5(B)参照)。しかし、その場合は、組み付け間隙が狭くなるために、折曲線材同士の組み付け作業がやりにくくなり、また、折曲線材間における遊びが少なくなるために、ワイヤーコンベアのスムーズな動きが損なわれるという問題が起こる。そればかりか、フック22が深く曲げられることにより、その折曲部から折損しやすくなり、その交換修理に手間がかかるだけでなく、折損したフック22の端片が搬送物に混入するおそれがあり、殊に搬送物が食品の場合に大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−131401号公報
【特許文献2】特開2003−212324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のワイヤーコンベアの場合には、折曲線材の端部に鋭利な切断面が残存するため、これにより製造時及び使用時において作業者が指をけがしたり、ゴム手袋を切損したりする事故が少なからず発生していたが、かかる事故に対処するための有効な手段は提供されていなかった。
【0009】
本発明はかかる背景の下になされたもので、折曲線材の端部に残存する鋭利な切断面が内側に向いた状態となるため、これにより製造時及び使用時において作業者が指をけがしたり、ゴム手袋を切損したりするおそれがなくなり、しかも、折曲線材の連結に支障がなく、更に、フックが折損しにくく、フックが折損して搬送物中に混入するおそれがなくて安全且つ衛生的であり、また、メンテナンスに手間とコストがかからないワイヤーコンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、金属製線材を下向き縦方向、横方向、上向き縦方向、横方向の順に折曲していくことによって上開きの凹陥部と下開きの凹陥部とを交互に連設し、両端の前記凹陥部の末端を横方向に延ばし、更に折り返すことによってフックを形成した折曲線材を設け、前記折曲線材の凹陥部を他の折曲線材の対応する凹陥部に嵌め込むことによって多数の折曲線材を連結して構成されるワイヤーコンベアであって、前記フックの外側辺を内側方向に湾曲又は折曲させることにより、切断面である前記フックの外側辺の端面が内側方向に向くようにしたことを特徴とするワイヤーコンベアである。
【0011】
一実施形態においては、前記切断面と垂直線のなす角が、0〜30度の範囲に設定され、また、前記折曲線材の各凹陥部を形成するための折曲角が、70〜75度の範囲に設定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述したとおりであり、本発明に係るワイヤーコンベアは、各折曲線材の両端に形成されるフックの外側辺を内側方向に湾曲又は折曲させることにより、切断面である前記フックの外側辺の端面が内側方向に向くようにしたものであって、フック端部の鋭利で引っ掛かりやすい切断面が内側に向いて外方に露出しないため、折曲線材の組み付け等の作業中や食品工場等における使用時(正方向走行時、逆方向走行時に関わらず)において、作業者がその切断面に触れて指をけがしたり、ゴム手袋を切損したりするおそれがなくなり、ワイヤーコンベアの製造時及び使用時における作業者の安全が確保される効果がある。
【0013】
また、フック形成時に折曲線材の端部を過度に曲げることがないためにフックの強度が保たれ、以て、フックが折損しにくく、フックが折損して搬送物中に混入するおそれがないために安全且つ衛生的であり、また、メンテナンスに手間とコストがかからないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るワイヤーコンベアの構成例を示す平面図である。
【図2】本発明に係るワイヤーコンベアにおける折曲線材の端部の連結状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るワイヤーコンベアにおけるフックの構成例を示す正面図及び側面図である。
【図4】本発明に係るワイヤーコンベアにおけるフックの他の構成例を示す正面図である。
【図5】従来のワイヤーコンベアの構成例を示す平面図である。
【図6】従来のワイヤーコンベアにおけるフックの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係るワイヤーコンベアの構成例を示す平面図であり、そこに示されるように、本発明に係るワイヤーコンベア1は、ステンレス等の金属製線材2を下向き(又は上向き)縦方向、横方向、上向き(又は下向き)縦方向、横方向の順に折曲していくことによって、下開きの凹陥部3と上開きの凹陥部4とを適宜数交互に連設し、両端の凹陥部3の末端を横方向に延ばし、更に折り返すことによってフック5を形成した折曲線材2を設け、折曲線材2の凹陥部3、4を他の折曲線材2の対応する凹陥部3、4に嵌め込むことにより、折曲線材2を多数連結して構成されるものである。
【0016】
折曲線材2には、折曲線材2同士の組み付けを可能にするため、従来のものと同様に、凹陥部3、4の両側に存する縦辺8の中間部に、折曲線材2の太さに対応する分、逆台形状に凹む凹部9が形成される(図3(B)参照)。
【0017】
従来のワイヤーコンベアの折曲線材における端部のフック22は、単に、線材の端部を凹陥部21形成の場合と同じか、それよりも少し広めの角度に折曲することにより形成されていた(図6(A)参照)。そのため、フック22の外側辺24は直線状態のままであり、その結果、その切断面23は真上又は若干内方に向いた状態となり、手指に触れやすい状態に露出することとなっていた。
【0018】
そこで、本発明に係るワイヤーコンベア1の折曲線材2における端部のフック5は、その外側辺6を内側方向に湾曲(図3(A))又は折曲(図4)させることにより、切断面7であるフック5の外側辺6の端面が内側方向に向くようにしたのである。かくして、この折曲線材2を組み合わせて構成されるワイヤーコンベア1の場合は、その進行方向が正逆いずれの方向の場合であっても、切断面7は、内に向いたものとなって手指に触れにくく、引っ掛かりにくいものとなるので、フック5の向きに関係なく、安全に使用可能となる。換言すれば、ワイヤーコンベア1に方向性の制限がなくなるのである。
【0019】
両端の凹陥部3の外側縦辺8とフック5端部の切断面7との間隙dは、組み付ける折曲線材2が容易に通過し得る間隔とされることは言うまでもない(図3(A)参照)。一実施形態においては、各凹陥部3、4を形成するための折曲角αが70〜75度の範囲にされる。また、切断面7と垂直線のなす角βが、0〜30度の範囲に設定される。切断面7と垂直線のなす角βをこの範囲にした場合は、切断面7は確実に内側方向に向いたものとなって手指に触れにくく、引っ掛かりにくいものとなり、フック5の向きに関係なく、安全に製造又は使用することが可能となる。
【0020】
このように、本発明に係るワイヤーコンベア1の折曲線材2の端部フック5は、その切断面7が内側方向に向いているために手指に触れにくく、引っ掛かりにくいものとなる。そのため、それを組み上げることによるワイヤーコンベア1の製造作業中や搬送等の取り扱い時において、あるいは、食品工場等における作業中に、作業者がその切断面7に触れて指をけがしたり、ゴム手袋を切損したりするおそれがなくなり、作業者の安全が確保される。
【0021】
また、フック5形成のために折曲線材2の端部を過度に曲げることがないので、フック5端部の強度が保たれて折損しにくくなり、フック5の端部が折損して搬送物中に混入するおそれがないために安全且つ衛生的であり、また、このワイヤーコンベア1を用いた作業ラインのメンテナンスに手間とコストがかからないという効果がある。
【0022】
この発明をある程度詳細にその好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなく異なる実施形態を構成することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 ワイヤーコンベア
2 折曲線材
3 凹陥部
4 凹陥部
5 フック
6 外側辺
7 切断面
8 縦辺
9 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製線材を下向き縦方向、横方向、上向き縦方向、横方向の順に折曲していくことによって上開きの凹陥部と下開きの凹陥部とを交互に連設し、両端の前記凹陥部の末端を横方向に延ばし、更に屈曲することによってフックを形成した折曲線材を設け、前記折曲線材の凹陥部を他の折曲線材の対応する凹陥部に嵌め込むことによって多数の折曲線材を連結して構成されるワイヤーコンベアであって、
前記フックの外側辺を内側方向に湾曲又は折曲させることにより、切断面である前記フックの外側辺の端面が内側方向に向くようにしたことを特徴とするワイヤーコンベア。
【請求項2】
前記切断面と垂直線のなす角が、0〜30度の範囲に設定された、請求項1に記載のワイヤーコンベア。
【請求項3】
前記折曲線材の各凹陥部を形成するための折曲角が、70〜75度の範囲に設定された、請求項1又は2に記載のワイヤーコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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