説明

ワクチン接種用組成物

本発明は、(a)少なくとも1つの免疫原、(b)遮蔽ビヒクル、及び(c)PosIntro若しくはカチオン性ISCOMの形態の又は少なくとも1つのサポニンを含有する免疫原送達系を含有する少なくとも1つの免疫原の個体への経皮送達用の新規な組成物、及び該組成物の調製方法を提供する。本発明は、これらの組成物を含有する構造物をさらに提供する。該組成物及び構造物は、免疫応答を生ずる方法、病気の状態の治療又は予防方法、及びワクチン接種方法に用いることができる。遮蔽ビヒクルは、例えば、架橋することができる親水コロイド接着物質若しくはヒドロゲル接着物質などの圧力感受性接着物質であり、あるいは遮蔽ビヒクルは非接着性であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの免疫原の経皮送達用の新規な組成物、及びこの組成物を含有する構造物、該組成物の調製、並びに応答の生成方法、病気状態の治療又は予防方法、ワクチン接種方法、及びそのような組成物での免疫原の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮薬物送達(TDD)は、禁煙治療でのニコチン、狭心症治療での硝酸イソソルビド又はニトログリセリン、及びホルモン代償療法でのエストラジオールなどの多くの薬物のための周知で、経済的に重要で、かつ魅力的な投与経路である。経皮投与は、典型的には、角質層(stratum corneum)(角質層(horny layer))を超え、皮膚の表皮及び真皮又は粘膜を介して、患者の全身循環へと薬物を経皮通過させるための薬剤の送達を伴う。経皮送達は、薬物徐放のために薬物を患者の皮膚又は粘膜に暴露することよって行われる。実際は、薬物を含有するTDDパッチを体の表面に接着することができる。TDD投与は、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤などの薬物を皮膚に投与することによっても行うことができる。
【0003】
経皮薬物送達は、皮膚接着特性を有することが好ましいが必ずしも必要ではない薬物用ビヒクルの使用を伴う。シリコーン、ポリウレタン、アクリレート、及びポリイソブチレンイソプレン接着物質など、圧力感受性接着物質系とも称される非常に多くの接着物質系が一般に用いられる。これらの接着物質は、一般には非吸収性であり、遮蔽性及び皮膚接着性が高く、したがって患者との不適合性を引き起こすことができる。より良好に患者に許容される水吸収能を有する他の接着物質系は、例えば、親水コロイド接着物質、ヒドロゲル接着物質、架橋ヒドロゲル接着物質などである。
【0004】
米国特許第4367732号は、例えば包帯の目的に好適な皮膚バリアで使用するため、親水コロイドに分散した種々の樹脂粘着付与剤及び可塑剤と配合したマトリクス分子としてのスチレン−オレフィン−スチレンブロックコポリマーを含有する親水コロイド接着物質を記載している。米国特許第6153215号は、皮膚又は傷への薬物送達用の親水コロイド接着物質の使用を記載している。
【0005】
英国特許出願第2115431号は、マトリクスとしての少なくとも1つの水不溶性架橋ポリマー及びさらに可塑剤を含有する圧力感受性の親水性エラストマー接着物質を記載している。接着物質は、包帯及び造瘻術用具などの種々の物に有用である。国際公開公報第93/00076号は、球状粒子及び任意選択により1つ以上の接着性生物ポリマーを含有する薬物用担体系を記載している。
【0006】
米国特許第5410016号は、薬物のi.a.調節放出又は接着性の形成として使用するため、生分解性の単量体又はオリゴマー伸長を有する親水性オリゴマーを含有する重合かつ架橋されたマクロマーのヒドロゲルを記載している。米国特許第6410645号は、少なくとも4つの共有結合された高分子ブロックを含有するゲル形成マクロマーを記載している。マクロマーは、架橋して組織表面上にゲルを形成することができ、薬物送達及び組織コーティングを含む種々の医学上の用途に有用である。
【0007】
ワクチン接種での経皮送達の使用は、今まで文献にほとんど記載されていない。さらに、薬物の経皮送達には、多くの異なるパラメーター(そのうちの1つは、送達される分子のサイズである)が影響する。経皮送達は、通常、1ナノメートル未満のサイズの非常に小さな分子に対してだけ成される。例えば、約1.5〜2ナノメートルの分子サイズを有するインスリンは、皮膚膜を通過できるようになるために非常に複雑化していることが報告されている。
【0008】
経皮ワクチン接種経路が提供されれば、例えば筋内、皮内、又は皮下注射による侵襲性投与に代わる重要なものとなる。そのような注射は、種々の不利益を与える。該注射は、注射を繰り返す場合は特に、ストレス、痛み、及び炎症を引き起こすであろうし、感染の危険性が含まれ、あるいは許容性に乏しいであろう。さらに、馴れていない患者又は許可を受けていない患者は注射を投与はしないであろう。さらに、当局によるワクチン登録に対する申請をする場合、副作用がないことについて要求される書類作成は経皮投与用よりも侵襲性投与用ワクチンの方が明らかに徹底している。
【0009】
本発明の関連におけるワクチン接種は、個体にワクチンを与えることによって非病原状態下の該個体において免疫応答を誘導する方法である。
【0010】
現在までに述べられている経皮ワクチン接種経路は、(i)皮膚の下部、すなわち、角質層を機械処理によって除去する(削り取る)工程、及び(ii)ワクチン適用前に皮膚を湿らせる工程、あるいは(iii)ワクチンをガーゼパッドに吸収し、通常の硬膏剤とともに皮膚上に塗布する工程を含み、これらの 技術は、例えば、Transcutaneous immunization, Glenn GM, Kenney RT. New Generation Vaccines, 3rd Ed. Vol. (in press)及びAdvances in vaccine delivery: transcutaneous immunization, Glenn GM, Scharton-Kersten T, and Alving CR. Expert Opinion inInvestigational Drugs. Vol. 8 (6) (1999): 797-805、国際公開公報第99/43350号、並びに米国特許第2001/0006645A1号にさらに記載されている。
【0011】
本発明の目的は、免疫原の遮蔽下で個体に経皮送達し、これにより注射などの侵襲性投与に関連する副作用を回避するための新規な組成物及びより賢明かつより簡潔で安全な方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、国際特許出願第PCT/DK02/00229号に記載されるPosintro又は例えば国際公開公報第98/36772号、国際公開公報第92/06710号、及び国際公開公報第98/56420号に記載されるISCOMなどの送達系を用いることによって送達が成される、そのような組成物及び方法を提供することである。
【0013】
本発明による遮蔽ビヒクル及び原理は、増強された免疫原送達を仲介することができ、粘膜、角質層、又は内皮細胞膜下に潜む免疫活性細胞(抗原提示細胞としばしば呼ばれる)に対する免疫原相乗因子として作用することができることが驚くべくことに発見された。与えられる送達系及び/又はアジュバントは、約5〜50、例えば、最も一般的には10及び40ナノメートル(nm)の間の中間サイズまたはさらに大きなサイズの粒子形状と推測することができるので、そのような比較的大きな粒子がこの増強特性を示すことができることは予想外の観察である。薬物、ホルモン、及びタンパク質の送達に関する観察に基づき、一般には、1又は数ナノメートルより大きい化合物は言及した細胞膜を透過することができないと予想されている。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
本発明は、第1の態様では、a)少なくとも1つの免疫原、b)遮蔽ビヒクル、及びc)PosIntro又はISCOMの形態の免疫原送達系を含有する、少なくとも1つの免疫原の個体への経皮送達用の組成物に関する。
【0015】
本発明に関連して、経皮送達との用語には、皮膚表面及び粘膜組織を介する送達が含まれる。
【0016】
第2の態様では、本発明は、a)少なくとも1つの免疫原、b)圧力感受性接着物質の形態の遮蔽ビヒクル、及びc)少なくとも1つのサポニン及び少なくとも1つのステロールを含有する免疫原送達系を含有する、少なくとも1つの免疫原の個体への経皮送達用の組成物に関する。
【0017】
本発明との関連で用いる通り、遮蔽又は遮蔽ビヒクルとの用語は、水を37℃で被覆に接触させ、かつ、相対湿度を周囲環境中15%として逆さのパディントン(Paddington)カップ(British Pharmacopoeia 1993, addendum 1996, page 1943)を用いた実験室試験で、15000g/m2(×24時間)未満の透湿度を与える皮膚又は粘膜表面の被覆のいずれをも意味する。実用する場合、例えば、12.000g/m2(×24時間)未満、好ましくは10.000g/m2(×24時間)未満、より好ましくは6.000g/m2(×24時間)未満又は3.000g/m2(×24時間)未満、さらにより好ましくは1.000g/m2(×24時間)未満、800g/m2(×24時間)未満、500g/m2(×24時間)未満、300g/m2(×24時間)未満、又は200g/m2(×24時間)未満の非常に低い値を用いる。十分な遮蔽とは、該試験による値が100g/m2(×24時間)未満であることを意味する。
【0018】
遮蔽は、例えば水に対する透過性がほとんどか全くないフィルム又は箔材料の形態の被覆のいずれもよっても得ることができる。最良の性能は、そのような被覆が接着物質によって体の表面に固定されたときに得られる。
【0019】
好ましい接着物質は、水分を吸収し、それをマトリクス中で保持することができる。これにより、皮膚又は粘膜中の水分含有量を増す能力が材料に付与される。皮膚中の水分レベルが高くなることよって、薬物の透過能力が増加する。このことは文献に記載されており、例えば、 Henning Gjelstrup Kristensen: Almen farmaci, Institut for Farmaci, Danmarks Farmaceutiske Hojskole, 3. udgave (2000), page 332-333を参照されたい。さらに、接着物質配合物に増強剤を添加することにより、薬物の透過率を上げることができる。粘膜送達の場合、内皮層の透過抵抗性は皮膚の角質層の透過抵抗性と比較して小さいので、増強剤は何の役割も果たさないであろう。他方では、粘膜送達用であっても、増強剤を添加することが適切であるであろう。
【0020】
本発明の組成物を含有する非常に多くの構造物を用いることができる。これは、添付の図に示されている。
【0021】
本発明は、第3の態様において、任意選択によりワクチン製剤内に含有される免疫原及び免疫原送達系をビヒクルの溶液に分散又は浸漬するかあるいは表面に塗布することによって遮蔽ビヒクルのマトリクス中又は表面上に導入する工程、及び任意選択により組成物を滅菌及び/又は乾燥及び/又は密封する工程を含む、本発明の組成物の調製方法も提供する。
【0022】
第4の態様において、本発明は、本発明の組成物を含有する構造物を提供する。
【0023】
他の態様において、本発明は、本発明の組成物を個体に投与する、個体での免疫応答の生成方法、個体での病気の状態の治療又は予防方法、及び個体のワクチン接種方法を提供する。
【0024】
最後に、本発明は、遮蔽ビヒクルを含有する免疫原経皮送達用組成物の調製のための免疫原の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の組成物中の遮蔽ビヒクルは、圧力感受性接着物質であることが好ましく、吸収性の圧力感受性接着物質であることがより好ましい。そのような接着物質は、具体的には、親水コロイド接着物質、ヒドロゲル接着物質、又は架橋ヒドロゲルの群に見出すことができるが、限定するものではない。これらの接着物質系を以下でさらに説明する。
【0026】
親水コロイド接着物質
親水コロイド接着物質は、ヒトの体への固定が意図される医用装置に広範に用いられる接着物質のカテゴリーである。接着物質は、吸収性の親水性ポリマー粒子、いわゆる親水コロイドが埋包されている接着物質マトリクスからなる二相材料である。粒子状親水コロイドの量及びタイプは意図する用途に従って合わせることができ、ベース接着物質はアグレッシブであるか容易に除去可能することができ、さらに好適な増強剤とともに充填することができるので、原理は非常に柔軟である。非常に多種のタイプの接着物質原料も親水コロイド接着物質に用いることができる。そのような接着物質原料は、当業者によく知られているポリアクリレート、ポリイソブチレン、スチレンエンドブロックを有するブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニルなどを含む化合物又はブレンドであることができる。
【0027】
ヒドロゲル接着物質
親水コロイド接着物質とは対照的に、ヒドロゲル接着物質はほぼ完全に水分感受性である。このことは、接着物質の性質の変わる下で環境中に存在する水分を接着物質が継続的に吸収することを意味する。具体的には、最初の吸収によって水分のある表面に良好に接着する。これは、多くの目的のために、その使用に有害であろう。しかしながら、1回のみの適用のためであり、かつ、重量のあるものを担わないことが求められている場合、水分のある環境中でも該接着物質は良好な代替物である。
【0028】
接着物質は、通常は疎水性マトリクスが親水性に変化した従来の接着物質として分類される。これは、親水性ポリマーの骨格構造物を多価アルコール及び粘着性付与親水性オリゴマーなどの親水性可塑剤と合わせて用いて接着物質の十分な粘着性を確実にすることにより達成される。さらに、材料の粘着性の向上のため、ある種の架橋を接着物質に物理的又は化学的に導入することができる。接着物質は、粘膜への固着に特に好適である。
【0029】
ヒドロゲル
3つ目の主な薬物送達用接着物質の群は、架橋されていることが好ましいが必ずしも必要ではないヒドロゲルに基づく。この群は、ある程度、ヒドロゲル接着物質に対応する。しかしながら、最も重要なことは、ヒドロゲルの可塑剤は専らあるいは主に水であるが、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの多価アルコールも含むことができることである。さらに、分子骨格は化学的に架橋されていることが好ましい。
【0030】
ヒドロゲルの骨格ポリマーは、本質的には親水性ポリマーのいずれでもあることができ、好ましくは架橋に好適であることができるそのようなポリマーである。アクリル酸などのアクリル樹脂又はメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリビニルピロリドンの誘導体、及びそれらのコポリマーのカテゴリー由来のポリマーが好ましい。しかしながら、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキシドは、その他のしばしば用いられる架橋網目中の親水性ポリマーである。
【0031】
ヒドロゲル送達系の利点は、経皮送達される化合物の溶解性が高くてもよいことであり、ヒドロゲルから皮膚に導入される高い水含有量によって経皮透過の増加がもらたされることである。経皮送達される化合物が親水性化合物であるとき、この説明がなされる。
【0032】
本発明の一実施態様において、免疫原及び免疫原送達系は遮蔽ビヒクルに分散され、この分散は均一であることが好ましい。これは「モノリシック」系を示す図1に図示されている。
【0033】
免疫原及び免疫原送達系は、別の実施態様において、遮蔽ビヒクルの表面上に分散することもできる。遮蔽によって皮膚のバリア機能が減少し、遮蔽ビヒクル表面における高濃度の免疫原及び免疫原送達系によって即効性がより高い免疫原の送達がもたらされるので、これはより効果があり、最大の経皮送達をもたらす。
【0034】
本発明の組成物は長期にわたって安定であるので、免疫原及び免疫原送達系を接着物質材料から分離することで組成物内における成分が交換されることを回避することが好ましいであろう。この実施態様において、接着物質が可塑剤などの残渣を組成物中に残留したり、親水性又は疎水性の免疫原/抗原が接着物質全体に拡散してしまうことも回避される。
【0035】
安定性の問題を解決するこの実施態様において、例えば乾燥又は凍結乾燥された親水性ポリマー物質などの非接着性ビヒクル中又はグリース様組成物中に免疫原及び免疫原送達系を埋包することができ、使用直前に可能性として活性化することができる。この活性化は、系に水溶液又は他の適切な溶媒/希釈剤を導入することによって成してもよい。いずれの場合でも、被覆によって、好ましくは圧力感受性接着物質によって、系を体に固定することができる。したがって、本発明の組成物は、別の好ましい実施態様において、非接着性遮蔽ビヒクル及び該ビヒクルから分離した皮膚固定のための第2の接着物質を含有する。
【0036】
安定性の問題を解決するための他の方法は、ワクチン用ビヒクルと第2の接着物質との間にフィルムバリアを配置することであってもよい。
【0037】
組成物は、速度調節膜、好ましくは網目状フィルム、目の荒いネットなどの多孔性かつ圧力感受性材料の速度調節膜も含有することができる。図3に図示される通り、バリアによって患者の皮膚又は粘膜からモノリシック系を分離することができる。
【0038】
遮蔽ビヒクル又は皮膚固定用の第2の接着物質は、被覆、例えば、パッド、包帯若しくはパッチ、又は当該技術分野で既知である任意の他の一般的な被覆として構成することができる。
【0039】
本発明の組成物は、経皮薬物送達用の増強剤も含有することができる。皮膚及び粘膜を介する透過に関連する増強剤は、薬物又はワクチンの皮膚又は粘膜を超えて送達を容易にする化合物群である。皮膚に関して、透過の律速層は、皮膚の非常に外側の層である角質層(角質層)と考えられている。薬物又はワクチンの標的が皮膚自体であっても体全体であっても、これを通過しなければならない。このことは、皮膚が選択されたバリアである場合には透過性を向上させるために増強剤を使用することが特に重要であることも示している。
【0040】
経皮薬物送達に用いる典型的な増強剤は、アルコール、アミン、リン脂質、脂肪酸、界面活性剤、及びポリオールである。いくつかの特定の対象化合物は、低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ラウリン酸、オレイン酸、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、N−メチル−ピロリドン、アジピン酸ジオクチル、及びグリセロール、又はそれらの低分子量誘導体である。増強剤に対して要求されるものは、存在するすべての成分、すなわち、接着物質又はヒドロゲルのマトリクス及びワクチン成分との適合性である。
【0041】
免疫原及び免疫原送達系は、さらに別の実施態様において、互いに分離している。
【0042】
ワクチンの適用及びワクチン接種
本発明の関連におけるワクチン接種は、個体へのワクチン投与によって非病原状態下の該個体で免疫応答を誘導する方法である。
【0043】
免疫原及び抗原
本発明の組成物はいくつかの成分を含むことができるが、少なくとも1つの免疫原を常に含む。誘導される免疫応答が、例えば病原微生物に由来する1つ以上の抗原に対して指向されるような形式で免疫原を選択することが好ましい。しかしながら、免疫応答が指向される抗原は非微生物起源であり、そのような抗原の例は合成抗原、該個体に由来する抗原、又は任意の種に由来する抗原である。
【0044】
誘導される免疫応答によって、該抗原がその一部である病原微生物に対して該個体で保護が与えられることが好ましい。誘導される免疫保護は、該治療個体の該病原微生物への後の暴露に対して作用することができる。しかしながら、ワクチン接種された該個体は、ワクチンを与える時より前に該病原微生物によって感染されていてもよい。この場合、保護免疫応答は直ぐに機能発揮することができる。
【0045】
誘導される免疫応答とは、与えられた免疫応答によって該病原微生物がすべて排除されることとなる完全な保護であってもよいが、保護は一部分であり、該病原微生物の増殖を減少するだけであってもよい保護応答であると理解される。さらに、保護との用語は、該病原微生物によって誘導された不健康の状態、すなわち、本発明によって治療される状態及び/又は予防される状態の減少又は排除だけに関するものであり、保護は、該病原体の全部又は一部の排除だけに限定してはならない。そのような作用様式の例は、個体の感染中に該病原微生物によって生じた病原成分に対して指向される保護免疫応答であることができる。そのような病原成分の例には、細菌毒素、例えば、破傷風毒素が含まれるが、限定するものではない。
【0046】
本発明に関連して、免疫原は、個体で免疫応答を引き起こすことが可能である成分又は成分の産物によって免疫応答を引き起こすことができる該成分である。免疫応答を得るために、免疫原をワクチン製剤内に含有することを必要とすることができる。
【0047】
本発明との関連で用いられる通り、抗原は、免疫応答によって認識されることができる成分、成分のフラグメントが免疫応答によって認識されることができる該成分、又は成分の産物若しくは成分の産物のフラグメントが免疫応答によって認識されることができる該成分である。
【0048】
免疫原又は抗原は、本発明に関しては、本発明により治療又は予防することが望ましい状態と生来的に関連する成分に由来することが好ましい免疫原又は抗原である。したがって、通常は細胞内に存在しないか治療される個体の細胞とは関連せず、かつ、特定の状態を治療又は予防するために標的になることが望ましい免疫原又は抗原は、その特定の状態に関する免疫原又は抗原とみなす。
【0049】
免疫原又は抗原は、治療される種に由来しない免疫原又は抗原であることが好ましい。しかしながら、本発明の特定の実施態様において、外来免疫原又は外来抗原は治療される種に由来してもよい。これらの実施態様において、免疫原又は抗原は、通常は該個体細胞に存在又は関連しているはずはない。
【0050】
好ましい一実施態様において、免疫原又は抗原は、免疫原及び/又は抗原はヒトに由来せず、例えば、免疫原又は抗原は、ヒトに投与される場合には自己免疫原とみなさない。
【0051】
本発明の一実施態様において、免疫原及び/又は抗原はポリペプチド又はペプチドを含み、例えば、免疫原及び/又は抗原はポリペプチド又はペプチドから本質的になる又はからなることができる。免疫原又は抗原は、1つ以上の異なるポリペプチド及び/又はペプチドを含むこともでき、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ、例えば5つ、例えば6つ、例えば7つ、例えば8つ、例えば9つ、例えば10、例えば11以上の異なるポリペプチドを含むことができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施態様において、免疫原及び/又は抗原は、生物、好ましくは微生物、又は生物の一部、好ましくは微生物の一部を含む又はからなることができ、したがって、免疫原又は抗原は、例えば100を上回る、例えば500を上回る、例えば1000を上回る、例えば2500を上回る非常に多くの異なるポリペプチドを含むことができる。
【0053】
免疫原又は抗原が1つ以上のポリペプチド及び/又はペプチドから本質的になる又はからなることができることも本発明内に含まれる。
【0054】
免疫応答を生ずるため又は免疫応答を可能にするために、ポリペプチドを処理してフラグメントにすることができ、該ポリペプチドのフラグメントは免疫応答によって正確に認識される化合物であることができる。
【0055】
本発明に関連して用いられるポリペプチドは、例えばリン酸化、アセチル化、メチル化、グリコシル化などの翻訳後修飾又は他の任意の翻訳後修飾をさらに含むことができる。具体的には、本発明の一実施態様において、免疫原及び/又は抗原は、グリコシル化ポリペプチド及び/又はペプチドを含むことができる。
【0056】
本発明の好ましい一実施態様において、免疫原及び/又は抗原は脂質部分に化学結合されたペプチド又はポリペプチドなどのリポペプチドを含み、例えば、免疫原及び/又は抗原は脂質部分に化学結合されたペプチド又はポリペプチドから本質的になる又はからなることができる。
【0057】
本発明の別の実施態様において、免疫原又は抗原は核酸配列を含むことができ、例えば、免疫原又は抗原は核酸配列から本質的になる又はからなることができる。免疫原又は抗原は、1つ以上の異なる核酸配列を含むことができ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ、例えば5つ、例えば6つ、例えば7つ、例えば8つ、例えば9つ、例えば10、例えば11以上の異なる核酸配列を含むことができる。いくつかの実施態様において、免疫原又は抗原は1つ以上の核酸配列から本質的になる又はからなる
【0058】
核酸配列は、ポリペプチド及び/又はペプチドをコードすることができることが好ましい。核酸配列がポリペプチド及び/又はペプチドをコードする場合、ポリペプチド及び/又はペプチド及び/又はそのフラグメントは免疫応答によって認識される化合物を構成することが好ましい。
【0059】
したがって、以下のシナリオが起こることができる:i)核酸配列が標的細胞に対して標的とされる、ii)核酸配列が標的細胞にインターナライズされる、iii)ポリペプチド及び/又はペプチドが標的細胞内で生成される、iv)ポリペプチド及び/又はペプチド及び/又はそのフラグメントが細胞表面に提示される。
【0060】
免疫原内に含有される又は免疫原内に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチド及び/又はペプチドは、ヒトの体に対して外来であることが好ましい。抗原内に含有される又は抗原内に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチド及び/又はペプチドは、ヒトの体に対して外来であることが好ましい。
【0061】
さらに別の本発明の実施態様において、免疫原及び/又は抗原は、多糖類及び/又はオリゴ糖を含む。多糖類及びオリゴ糖は、同一であっても異なってもよい少なくとも2つの単糖を含む。オリゴ糖の経験式は(CH2O)nであり、サイズは三炭糖(n=3)から七炭糖(n=7)の範囲である。本発明の範囲内の多糖類は分枝状多糖類であってもよい。
【0062】
本発明の好ましい一実施態様において、免疫原又は抗原はウイルスに由来する。本発明の別の好ましい実施態様において、免疫原又は抗原は細菌に由来する。さらに本発明の別の好ましい実施態様において、免疫原又は抗原は寄生生物に由来する。本発明の別の好ましい実施態様において、免疫原又は抗原は真菌に由来する。しかしながら、免疫原又は抗原は、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物から成る群から選択される1つ以上の免疫原及び/又は抗原の混合物を含むこともできる。
【0063】
免疫原及び/又は抗原は、例えば、弱毒化ウイルス、弱毒化細菌、弱毒化真菌、又は弱毒化寄生生物であることができる。あるいは、免疫原又は抗原は、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物から成る群から選択される不活化又は死滅した微生物であることができる。それらの混合物も本発明の範囲内に含まれる。
【0064】
弱毒化は、例えば、異常な宿主中で数世代培養された後に、あるいは突然変異誘発により、あるいは組換えDNA技術を用いた微生物操作により、病原性が失われた変異体を選択することによって行うことができる。当業者に既知である任意の他の好適な方法も弱毒化に用いることができる。
【0065】
微生物の不活化及び/又は死滅は、多くの方法、例えば、熱不活化、照射、化学的不活化、又は当業者に既知である他の方法のいずれによっても行うことができる。
【0066】
免疫原又は抗原はさらに、ウイルス、細菌、及び寄生生物から成る群から選択される微生物の一部のみを含むことができる。例えば、そのような一部は、ウイルスカプシド、ビロソーム、細菌又は酵母の細胞膜の結合物であることができる。あるいは、免疫原又は抗原は、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物に由来する1つ以上の分子(例えばポリペプチド、ペプチド、又は核酸配列など)のみを含むことができる。
【0067】
さらに、免疫原又は抗原は、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物に由来するポリペプチド、ペプチド、又は核酸配列のフラグメントのみを含む、ポリペプチド、ペプチド、又は核酸配列などの分子を含むことができる。そのような分子は、1つ以上のフラグメントを含むことができる。そのような分子はキメラであることもでき、例えば、ウイルス、細菌、真菌及び/又は寄生生物に由来しないさらにフラグメント又は別のウイルス、細菌、真菌及び/又は寄生生物に由来するフラグメントをさらに含むことができる。
【0068】
さらに、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物に由来するポリペプチド、ペプチド、又は核酸配列は例えば組換えDNA技術を用いて操作されていてもよく、例えば、ポリペプチド、ペプチド、又は核酸配列が、天然に存在する分子ではなく、むしろその誘導体又は変異体である。変異体には、分子の特性に依存してアミノ酸又は核酸の置換、欠失、及び/又は付加を含む変異体が含まれる。
【0069】
ウイルスは、本発明によれば、例えば、アデノ関連ウイルス、アデノウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、バキュロウイルス、水痘、サル痘、鶏痘、コロナウイルス、サイトメガロウイルス、ジステンパー、腸内ウイルス、エプスタインバーウイルス、ネコ白血病ウイルス、フラビウイルス、口蹄疫疾患ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、ヘルペス種、単純ヘルペス、インフルエンザウイルス、HIV−1、HIV−2、HTLV1、インフルエンザA及びB、クンジンウイルス(Kunjin virus)、ラッサ熱ウイルス、LCMV(リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス)、レンチウイルス、麻疹ウイルス(Measles)、メンゴウイルス、麻疹ウイルス、ミクソウイルス、パピローマウイルス、パロウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ポコウイルス(Poko virus)、ポリオウイルス、ポリオーマ腫瘍ウイルス、仮性狂犬病(pseudorabies)、狂犬病ウイルス、レオウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、レトロウイルス、ライノウイルス、牛疫(Rinderpest)、ロタウイルス、セムリキ森林ウイルス、センダイウイルス、シミアンウイルス40、シンドビスウイルス、SV5、ダニ媒介性脳炎ウイルス、トガウイルス(風疹、黄熱、デング熱)、ワクシニアウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、及び水疱性口内炎ウイルスから成る群から選択することができる。
【0070】
ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、モルビリウイルス、ミクソウイルス及びパラミクソウイルス、フラビウイルス、パピローマウイルス、並びに肝炎ウイルスから成る群から選択されることが好ましい。
【0071】
細菌は、本発明によれば、例えば、アクロモバクター・キシロソキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)、アシネトバクター・カルコアセティクス(Acinetobacter calcoaceticus)、好ましくはアシネトバクター・アニトラタス(A. anitratus)、アシネトバクター・ヘモリチカス(A. haemolyticus)、アシネトバクター・アルカリゲネス(A. alcaligenes)、及びアシネトバクター・ルオフィイ(A. Iwoffii)、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)、アエロモナス・ハイドロフィリア(Aeromonas hydrophilia)、アルカリゲネス(Alcaligenes)種、好ましくはアルカリ大便菌(A. faecalis)、アルカリゲネス・オドーラン(A. odorans)、及びアルカリゲネス脱窒菌(A. denitrificans)、アリゾナ・ヒンシャウイ(Arizona hinshawii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・メラニノゲニカス(Bacteroides melaninogenicus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)、ブルセラ(Brucella)種、好ましくはウシ流産菌(B. abortus)、ブタ流産菌(B. suis)、マルタ熱菌(B. melitensis)、及びイヌ流産菌(B. canis)、
【0072】
肉芽腫カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium granulomatis)、カンピロバクターfetus sspインテスティナル(Campylobacter fetus ssp. intestinalis)、カンピロバクターfetus sspジュジュニ(Campylobacter fetus ssp. jejuni)、クラミジア(Chlamydia)種、好ましくはオウム病クラミジア(C. psittaci)及びトラコーマクラミジア(C. trachomatis)、クロモバクテリウムviolaceum(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター(Citrobacter)種、好ましくはシトロバクター・フロインディ(C. freundii)及びシトロバクター・ディバーサス(C. diversus)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ジフィシル(Clostridium difficile)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、好ましくはコリネバクテリウム・ウルセランス(C. ulcerans)、コリネバクテリウム・ヘモリチカム(C. haemolyticum)、及び結核菌(C. pseudotuberculosis)、Q熱リケッチア(Coxiella burnetii)、エドヴァルシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、エイケナラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター(Enterobacter)、好ましくはエンテロバクター・クロアカ(E.cloacae)、エンテロバクター・アイロゲネス(E. aerogenes)、エンテロバクター・ハフニエ(E. hafniae)(ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)とも命名されている)及びエンテロバクター・アグロメランス(E. agglomerans)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、大腸菌(Escherichia coli)、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、野兎病菌(Francisella tularensis)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター種、クレブシエラ種、好ましくは肺炎杆菌(K. pneumoniae)、臭鼻菌(K. ozaenae)、又は鼻硬腫菌(K. rhinoscleromatis)、
【0073】
レジオネラ種、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、モラクセラ(Moraxella)種、好ましくはモラ・アクセンフェルド菌(M. lacunata)及びモラクセラ・オスロエンシス(M. osloensis)、ウシ結核菌(Mycobacterioum bovis)、癩菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ(Mycoplasma)種、好ましくは肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ノカルジア(Nocardia)種、好ましくは ノカルジア・アステロイデス(N. asteroides)及びノカルジア・ブラシリエンシス(N. brasiliensis、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ペプトコッカス・マグナス(Peptococcus magnus)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、肺炎球菌(Pneumococci)、プロテウス(Proteus)種、好ましくはプロテウス・ミラビリス(P. mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(P. vulgaris)、プロテウス・レットゲリ(P. rettgeri)、及びプロテウス・モルガニー(P. morganii)(それぞれプロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)及びモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)とも呼ばれる)、プロビデンシア(Providencia)種、好ましくは プロビデンシア・アルカリファシエンス(P. alcalifaciens)、プロビデンシア・スチュアルティイ(P. stuartii)、及びプロビデンシア・レットゲリ(P. rettgeri)(プロテウス・レットゲリとも呼ばれる)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、鼻疽菌(Pseudomonas mallei)、類鼻疽菌(Pseudomonas pseudomallei)、リケッチア(Rickettsia)、ロシャリメア・ヘンセレ(Rochalimaia henselae)、サルモネラ(Salmonella)種、好ましくは腸炎菌(S. enteridis)、チフス菌(S. typhi)、及びサルモネラ・デルビー(S. derby)、最も好ましくはサルモネラDT104タイプのサルモネラ種、セラシア(Serratia)種、好ましくは霊菌(S. marcescens)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、
【0074】
フレクスナー赤痢菌(S. flexneri)、ボイド赤痢菌(S. boydii)、及びソンネ赤痢菌(S. sonnei)、スピリルム・マイナー(Spirillum minor)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、連鎖球菌(Streptococcus)、好ましくは大便連鎖球菌(S. faecalis)、ヘシュウム連鎖球菌(S. faecium)、及びデュラン連鎖球菌(S. durans)、B群連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ピンタ・フランベンジア(Treponema carateum)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、フランベジア・トレポネーマ(Treponema pertenue)、好ましくは梅毒トレポネーマ、ウレアプラズマ(Ureaplasma urealyticum)、コレラビブリオ(Vibrio cholera)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、及びペスト菌(Yersinia pestis)から成る群から選択することができる。
【0075】
寄生生物は、本発明によれば、例えば、マラリア(Malaria)(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae))、住血吸虫属(Schistosomes)、トリパノソーマ属(Trypanosomes)、リーシュマニア属(Leishmania)、フィラリア・ネマトデス(Filarial nematodes)、トリコモナス症(Trichomoniasis)、肉胞子虫症(Sarcosporidiasis)、テニア属(Taenia)(無鉤条虫(T. saginata)、有鉤条虫(T. solium))、リーシュマニア属(Leishmania)、トキソプラスマ(Toxoplasma gondii)、胞子虫症(Coccidiosis)(旋毛虫(Trichinella spirals))、又は胞子虫症(アイメリア(Eimeria)種)から成る群から選択することができる。
【0076】
免疫原及び/又は抗原は、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、及びシジオイデス症(Coccidioidomycosis)から成る群から選択される真菌にさらに由来することができる。
【0077】
しかしながら、免疫原及び/又は抗原は、例えば脊椎動物を含む動物のいずれにも由来することが可能である。例えば、免疫原及び/又は抗原は、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、及びマッコウクジラミオグロブリンから成る群に由来する成分を含む又はから本質的になることができる。他の例には、ハチ毒及びヘビ毒、並びに吸血動物(特に昆虫)により産生される生物活性成分(例えば、血液凝固阻害成分)に由来する免疫原及び/又は抗原が含まれるが、限定するものではない。
【0078】
免疫原及び/又は抗原は、一実施態様において、担体分子に結合したハプテンを含むことができ、例えば、免疫原及び/又は抗原は、担体分子に結合したハプテンから本質的になる又はからなることができる。あるいは、免疫原及び/又は抗原の産物は、担体分子に結合したハプテンを含む又はから本質的になる又はからなることができる。ハプテンは、担体分子に共役した際に免疫原性となるが単独では免疫原性がほんのわずかしか持たない化学的に区分される小化合物である。ハプテンの例は、タンパク質担体に結合した細菌細胞壁成分、例えば、細菌毒素又は解毒された細菌毒素であるが、限定するものではない。
【0079】
免疫原及び/又は抗原は、別の実施態様において、多価免疫原及び/又は抗原であることができる。多価抗原及び/又は免疫原は、例えば、T非依存性2型抗原、合成ポリマー、及び多量体ペプチド抗原から成る群から選択することができる。しかしながら、免疫原及び/又は抗原は、当業者に既知である他の多価抗原及び/又は免疫原のいずれであることもできる。
【0080】
免疫原及び/又は抗原は、MHC分子により提示されることができるペプチドを含むことが好ましく、例えば、外来免疫原及び/又は外来抗原は、MHC分子により提示されることができるペプチドから本質的になる又はからなることができる。あるいは、免疫原及び/又は抗原の産物は、MHC分子により提示されることができるペプチドを含むことができ、例えば、免疫原及び/又は抗原の産物は、MHC分子により提示されることができるペプチドから本質的になる又はからなることができる。
【0081】
MHC分子により提示されることができるペプチドは、当業者に既知であるそのようなペプチドのいずれであることができる。そのようなペプチドの好ましい例は、以下のデータベースに列記されている:Brusicによって編集された「MHCPEP-A database of MHC binding peptides (v. 1.3)」(V. Brusic, G. Rudy, A. P. Kyne and L. C. Harrison; MHCPEP, a database of MHC-binding peptides: update 1997; Nucleic Acids Research, 1998, Vol. 26, No. 1, pp. 368-371)。
【0082】
さらに、抗原及び/又は免疫原は、先に言及した免疫原及び抗原の2つの以上の混合物を含むことができる。
【0083】
抗原は、免疫原に対して生じた免疫応答によって認識されることが好ましい。したがって、抗原及び免疫原は、好ましくは互いに類似していなければならない。
【0084】
それらは、単独で又は他の分子とともに同じ相互作用分子と結合することができる化合物を含むように互いに類似していることがより好ましい。あるいは、それらは、成分のフラグメントが単独で又は1つ以上の他の分子とともに同じ相互作用分子と結合することができる該成分を含む。この関連に含まれる相互作用分子は、免疫系成分であることが好ましい。例えば、相互作用分子は、抗体及びT細胞受容体から成る群から選択することができる。
【0085】
本発明の一実施態様において、抗原及び免疫原は同じものであり、免疫原及び抗原が同一であることを意味する。本発明の別の実施態様において、抗原は免疫原のフラグメントである。本発明のさらに別の実施態様において、免疫原は抗原のフラグメントである。本発明のさらに別の実施態様において、抗原は免疫原に擬している。
【0086】
免疫応答
免疫原及び/又は抗原に対する免疫応答は、本発明による組成物又はワクチン製剤を治療固体へに与える前に個体において存在していてもよい。例えば、そのような免疫応答は該個体が感染された後に生じていてもよい。したがって、本発明による方法には、現在又は将来の作用形式(例えば、細胞性応答、対してホルモン応答)、組成物(例えば、抗体クラス、抗体サブクラスなど)、特異性(例えば、免疫原及び/又は抗原の新しい又は異なるサブ部分の認識)、及び/又は親和性に関して、存在する免疫応答を増強する方法及び/又は存在する免疫応答を偏らせる方法が含まれる。
【0087】
しかしながら、多くの場合、本発明による組成物又はワクチン製剤を治療する個体に与える前には、個体は免疫原及び/又は抗原に対する免疫性はない。したがって、本発明による方法には、個体で免疫原及び/又は抗原に対する免疫応答を生ずる方法が含まれる。
【0088】
該方法は、i)個体を免疫原で免疫感作する工程;及びii)該個体で免疫原に対する免疫応答を生ずる工程を含むことが好ましい。
【0089】
好ましい実施態様において、免疫原は、個体に投与され、個体の細胞にインターナライズされ、該細胞中で処理され、該細胞の表面上に提示される。
【0090】
免疫原性決定基は、特異的な抗体応答を含む免疫応答を生ずる任意の物質を表す。したがって、抗原決定基はいずれも免疫原性決定基であるが、すべての免疫原性決定基が本明細書中に用いられるこれらの用語の意味の範囲内にある抗原決定基ではない。免疫原は、本明細書中に記載されるワクチン製剤中に含有させることができる。
【0091】
本発明による炎症性応答としばしば称される免疫応答は、治療される個体の免疫系の任意成分によって仲介することができる。
【0092】
免疫系は、特異的及び非特異的な免疫応答の双方を発揮することができる(Klein, J., et al., Immunology (2nd), Blackwell Science Inc., Boston (1997))。一般に、所与の抗原に対して細胞表面上で特異的な受容体を提示するB及びTリンパ細胞は、特異的な免疫性を生ずる。免疫系は、2通りの方法で異なる抗原に応答することができる:1)B細胞刺激及び抗体又は免疫グロブリンの産生を含むホルモン仲介免疫[他の細胞も抗体応答の生成に関与する、例えば、抗原提示細胞(APC;マクロファージを含む)及びヘルパーT細胞(Th1及びTh2)]、及び2)細胞障害性Tリンパ球(CTL)を含むT細胞を一般に伴うが他の細胞もCTL応答の発生に関与する(例えば、Th1及び/又はTh2細胞及びAPC)細胞仲介免疫(CMI)。
【0093】
非特異的免疫は、とりわけ、マクロファージ又は好中球による細胞食作用(外来粒子又は抗原の飲み込み)及びナチュラルキラー(NK)細胞活性などの種々の細胞及び機構を包含する。
【0094】
非特異的免疫は、進化による発展性が少ない機構(例えば、重要な宿主防衛機構である細胞食作用)に依存しており、特異的免疫応答の特徴である特異性又は記憶について獲得した性質を示さない。非特異的免疫は、脊椎動物系にとってより先天的である。さらに、非特異的免疫に関与する細胞は、B及びT細胞と重要な形で相互作用して免疫応答を生じさせる。
【0095】
特異的及び非特異的免疫の間の鍵となる相違点は、B及びT細胞特異性に基づく。これらの細胞は特異的な抗原による活性化後にそれらの応答を優先的に獲得し、将来にその特異的な抗原に暴露される事象で記憶を示すための機構を有する。結果として、ワクチン接種(特異性及び記憶を伴う)は、有害な病原体に対する保護の有効なプロトコルである。
【0096】
細胞仲介は、細胞溶解プロセスであってよいし、細胞溶解プロセスを含んでもよい。しかしながら、本発明による細胞障害性及び/又は炎症性応答は、細胞障害性T細胞により仲介されることが好ましい。そのような細胞障害性T細胞は、本発明による抗原若しくは抗原のフラグメント又は抗原の産物若しくは抗原の産物のフラグメントと結合することができるT細胞受容体を発現することが好ましい。
【0097】
しかしながら、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、ナチュラルキラー細胞により仲介されてもよい。さらに、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、例えば、好中球により仲介されてもよいし、細胞障害性及び/又は炎症性応答は好酸球により仲介されてもよい。
【0098】
さらに、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、抗体依存性細胞仲介細胞障害性(ADCC)機構により仲介されてもよい。そのような機構は、本発明による抗原若しくは抗原のフラグメント又は抗原の産物若しくは抗原の産物のフラグメントと結合することができる抗体を伴うことが好ましい。
【0099】
本発明の一実施態様において、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、先天的な免疫系により仲介されてもよい。例えば、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、補体カスケードにより仲介されてもよい。例えば、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、抗体によるオプソニン化プロセスにより仲介されてもよい。例えば、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、補体系の1つ以上の成分によるオプソニン化プロセスによって仲介されてもよい。
【0100】
具体的には、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、従来の補体経路による標的細胞の細胞表面上での抗体のオプソニン化により仲介されてもよいし、あるいは細胞障害性及び/又は炎症性応答は、代替補体経路である補体因子の活性化により直接に開始されてもよい。
【0101】
一方又は両方の補体経路の活性化後、膜末端が付着した複合体が形成されてもよく、該複合体によって標的細胞は溶解及び排除されてもよい。本発明の好ましい一実施態様において、細胞溶解プロセスは膜付着複合体の形成から生ずることができる。
【0102】
本発明による補体経路を活性化することができる抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgM抗体アイソタイプから成る群から選択される抗体であることができる。
【0103】
抗体依存性細胞仲介細胞障害性(ADCC)機構は、補体経路以外の他の抗細胞エフェクターを含むことができる。例えば、標的細胞に結合した抗体は、標的細胞に対して、好酸球の細胞溶解活性を指向することができる。そのような実施態様において、抗体はIgEであることが好ましい。
【0104】
さらに、細胞障害性及び/又は炎症性応答は、本明細書で先に言及した2つ以上の機構の組み合わせにより仲介されてもよい。例えば、それは、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、好酸球、抗体依存性の細胞仲介細胞障害性及び細胞溶解性機構から成る群から選択される2つ以上により仲介されてもよい。
【0105】
免疫原送達系
本発明による免疫原送達系は、個体の標的細胞を標的とすることができる(該標的細胞は標的とされ及び/又は排除されることが望ましい)任意の免疫原送達標的系であることができる。多くの異なる免疫原送達標的系が当業者に既知であり、特定の必要性に応じて好適な免疫原送達標的系を選択することができる。
【0106】
好ましい実施態様において、免疫原及び免疫原送達系はワクチン製剤内に含有される。製剤当業者に既知であるワクチンはいずれも、本発明に関連して用いることができる。
【0107】
本発明の一実施態様において、免疫原送達系はカチオン性ISCOMである。
【0108】
Posintro又はISCOMは、例えば、係属中の国際特許出願第PCT/DK02/00229号(これを参照により本明細書中に全部取り入れる)に記載される任意の化合物であることができる。
【0109】
本発明の範囲内のPosIntroは、i)少なくとも1つの第1のステロール及び/又は少なくとも1つの第2のステロール(少なくとも1つの第2のステロールは、核酸静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用により、外来抗原、好ましくは核酸と接触することができ、少なくとも1つの第1のステロール及び/又は少なくとも1つの第2のステロールは、少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は少なくとも1つの第2のサポニンと複合体を形成することができる)、及びii)少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は少なくとも1つの第2のサポニン(少なくとも1つの第2のサポニンは、静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用により、遺伝的決定基と接触することができ、少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は少なくとも1つの第2のサポニンは、少なくとも1つの第1のステロール及び/又は少なくとも1つの第2のステロールと複合体を形成することができる)、及び任意選択によりiii)静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用によって遺伝的決定基と接触するのための少なくとも1つの接触基(但し、第2のステロールが複合体中に存在しない場合、少なくとも1つの接触基が存在する)、さらに任意選択によりiv)少なくとも1つの親油性部分を含有する複合体である。
【0110】
本発明によるPosintroは、好ましい一実施態様において、免疫刺激複合体(iscom)として既知となっているものと類似した鳥籠に似たマトリクスの形態の微粒子構造を採ることができる。iscom構造の他に、ステロール及びサポニンの間の相互作用によって、例えば、格子状のもの、蜂巣状のもの、桿状のもの、及び無定形粒子などの実体を含む種々の異なる構造的実体が生ずると報告されおり、その構造的実体はすべて本発明に包含される。
【0111】
別の実施態様において、免疫原送達系はリポソームを含む。本発明の意味の範囲内のリポソームは、一般に、典型的には1つ以上の同心円層(例えば、単分子層、二分子層、多分子層)の形態の親油性部分を含む両親媒性化合物の球状若しくは回転楕円状のクラスター又は凝集物である。本明細書中では、それらを脂質小胞と称してもよい。リポソームは、例えば、イオン性脂質及び/又は非イオン性脂質から調製することができる。非イオン性脂質から調製されたリポソームは、ニオソームと称してもよい。少なくとも一部分はカチオン性脂質又はアニオン性脂質から調製されたリポソームは、コヒレート(cochleates)と称してもよい。
【0112】
リポソームは、例えば、Lipford and Wagner (1994) in Vaccine, vol.12, no.1, p.73-80(これを参照により本明細書中に取り入れる)により記載されるようにして調製することができる。本発明に属するリポソーム組成物の調製における使用に適合することができる一般的なリポソーム調製技術は、例えば、米国特許第4,728,578号、第4,第728,575号、第4,737,323号、第4,533,254号、第4,162,282号、第4,310,505号、及び第4,921,706号;英国特許出願第GB2193095A号;国際出願第PCT/US85/01161号及び第PCT/US89/05040号; Mayer et al., Biochimica et Biophysica Acta, 858: 161-168 (1986); Hope et al., Biochimica et Biophysica Acta, 812: 55-65 (1985); Mayhew et al., Methods in Enzymology, 149: 64-77 (1987); Mayhew et al., Biochimica et Biophysica Acta, 755: 169-74 (1984); Cheng et al, Investigative Radiology, 22: 47-55 (1987); 及び Loposome Technology, Gregoriadis, G., ed., Vol.1, pp. 29-31, 51-67 and 79-108 (CRC Press Inc., Boca Raton, Fla. 1984)に記載され、その各々の内容を参照により本明細書に取り入れる。
【0113】
したがって、リポソーム組成物は、例えば、溶媒透析、フレンチプレス、押出し、(凍結融解してもしなくてもよい)、逆相蒸発、簡単な凍結融解、音波処理、キレート透析、均質化、溶媒注入、マイクロ乳化、自発形成、溶媒蒸発、溶媒透析、フレンチプレス細胞技術、界面活性剤の調節透析など(各々は種々の様式で組成物を調製することを伴う)を含む、当業者に明らかな種々の慣用的な任意リポソーム調製技術を用いて調製することができる。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, 53: 37-46 (1990)を参照のこと(その開示内容を参照により本明細書に取り入れる)。
【0114】
好適な凍結融解技術は、例えば、1989年11月8日に出願された国際公開公報第PCT/US89/05040号(その開示内容を参照により本明細書に全部取り入れる)に記載されている。凍結融解技術を伴う方法は、リポソームの調製に関連していることが好ましい。リポソームの調製は、生理食塩水溶液、リン酸緩衝水溶液、又は滅菌水などの溶液中で行うことができる。リポソームは、例えば、Wig-L-Bug(登録商標)(クレセント・デンタル社(Crescent Dental)、イリノイ州ライオンズ(Lyons))、ミクソマット(Mixomat)(デグッサ社(Degussa AG)、フランクフルト、ドイツ)、キャプミックス(Capmix)(エスペ・ファブリック医薬品GMBH・アンド・カンパニー社(Espe Fabrik Pharmazeutischer Praeparate GMBH & Co.)、ゼーフェルト(Seefeld)、オベレイ(Oberay)、ドイツ)、シラマット・プラス(Silamat Plus)(ビバデント社(Vivadent)、ルヒテンステイン(Lechtenstein))、又はビブロス(Vibros)(クウェール・デンタル社(Quayle Dental)、サセックス(Sussex)、イングランド)などの振盪装置の使用によって行うことができる振盪又はボルテックスを伴う種々の方法によっても調製することができる。マイクロフリューダイザー(Microfluidizer)(登録商標)(マイクロフリューディクス社(Microfluidics)、マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn))などの慣用的な微乳化装置も用いることができる。
【0115】
本発明の一実施態様において、免疫原送達系は生分解性ミクロスフィアを含むことができる。別の実施態様において、免疫原送達系はカプセル化系を含むことができる。好ましい一実施態様において、免疫原送達系はコヒレートを含むことができる。さらに別の実施態様において、免疫原送達系はナノ粒子を含むことができる。さらなる実施態様において、免疫原送達系はヒドロゲルを含むことができる。さらなる実施態様において、免疫原送達系は微結晶を含むことができる。
【0116】
組成物及びワクチン製剤は、1つ以上の免疫原又は抗原を含むことができ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ、例えば5つ、例えば6つ以上の異なる抗原を含むことができる。免疫原及び抗原は、本明細書中の上記の免疫原及び抗原から選択することができる。
【0117】
本発明による組成物は、慣用的な非毒性の薬学的に許容できる担体及び賦形剤を含有することができる。薬学的に許容できる賦形剤は、アジュバント、透過性アジュバント、乳化剤、酸化防止剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート化剤、ゲル形成剤などを含むことができ、製剤調製の当業者によって理解されている様式で慣用の薬学的慣行に従ってすべて選択される。
【0118】
本発明による組成物及びワクチン製剤は、アジュバントをさらに含有することが好ましい。本発明によるワクチン製剤は、担体をさらに含むことができる。担体又はアジュバントは、当該技術分野で既知である担体又はアジュバント(それらの機能同等物を含む)のいずれであってもよい。機能が同等である担体は、同様の条件下で用いた場合に同じ抗原を本質的に同じ立体コンフォーメーションで提示することができる。機能が同等であるアジュバントは、同様の条件下で用いた場合に組成物の効力を同様に増加させることができる。
【0119】
該製剤は、好ましいアジュバントの1つの群を表すハプテン決定基を含む抗原決定基を含む免疫原性決定基の免疫原性を増強及び/又は調節する効力が高くかつ非毒性のアジュバントを含有することが好ましい。さらに、そのようなアジュバントは、より早期の、より効力が高い、又はより長期の免疫応答も発揮することが好ましい。そのようなアジュバントは、免疫原供給源が限定されている場合又は産生コストがかかる場合に有用であろう。
【0120】
本発明に属するアジュバントは、その起源(それが鉱物、細菌、植物、合成、又は宿主産物であるか)によってグループ分けすることができる。この分類下での第1の群は、アルミニウム化合物などの鉱物アジュバントである。アルミニウム塩で沈殿する抗原又はアルミニウム化合物に混合若しくは吸着する抗原は、動物及びヒトでの免疫応答を増強するために広範に用いられてきた。アルミニウム粒子は、免疫感作後7日のウサギの所属リンパ節で実証されており、別の有意な機能は、抗原を節自身のT細胞含有領域に対して指向することであろう。アジュバントの効力は流入領域リンパ節の示唆と相関することが示されている。抗原をアルミニウム塩とともに投与することによってホルモン免疫が増強することが多くの研究によって確認されている一方、細胞仲介免疫は、遅延型過敏反応によって測定したところ、ほんの少し増加するようである。水酸化アルミニウムは、補体経路を活性化すると述べられている。この機構は、局所炎症性応答並びに免疫グロブリン産生及びB細胞記憶の一翼を担うことができる。さらに、水酸化アルミニウムは、急速な異化作用から抗原を保護することができる。主にその優れた安全性の報告によって、アルミニウム化合物は、現在、ヒトで用いられる唯一のアジュバントである。
【0121】
アジュバントの別の大きな群は、細菌を起源とするものである。細菌を起源とするアジュバントは精製及び合成することができ(例えば、ムラミルジペプチド、脂質A)、宿主メディエーターがクローン化されている(インターロイキン1及び2)。最近の数十年間に、細菌を起源とするいくつかの活性成分のアジュバント:百日咳菌(Bordetellapertussis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、リポ多糖類、フロイント完全アジュバント(FCA)、及びフロイント不完全アジュバント(ディフコ・ラボラトリー社(Difco Laboratories)、ミシガン州デトロイト)、及びメルクアジュバント65(メルク・アンド・カンパニー社(Merck and Company, Inc.)、ニュージャージー州ローウェー))の化学精製において有意な発展がもたらされた。本発明によるさらに好適なアジュバントは、例えば、タイターマックス・クラシカル・アジュバント(Titermax Classical ajuvant)(シグマ・アルドリッチ社)、ISCOM、QuilA、ALUN(米国特許第58767号及び第5,554,372号を参照のこと)、脂質A誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリクス、GMDPなど、及び免疫賦活剤と組み合わせたものである(米国特許第5,876,735号)。
【0122】
百日咳菌は、T−リンパ球集団に対する作用を介して細胞仲介免疫を調節する能力を有するゆえに、本発明の関連におけるアジュバントとしての対象となる。リポ多糖類及びフロイント完全アジュバントでは、アジュバント活性部分が同定及び合成されており、これによって構造機能相関研究が可能となる。これらも本発明による免疫原性組成物に含まれるとみなす。
【0123】
脂質Aを含むリポ多糖類及びその種々の誘導体は、リポソーム又は他の脂質乳剤と併用される強力なアジュバントであることが見出されている。ヒトで一般使用できるほど毒性が十分に低い誘導体を作成することができるかは未だ確かではない。フロイント完全アジュバントは、ほとんどの実験研究における標準である。
【0124】
急速な異化作用から抗原を保護するために、鉱油をワクチン製剤に添加することができる。
【0125】
多くの他のタイプの材料を本発明による免疫原性組成物中でアジュバントとして用いることができる。それには、サポニンなどの植物の産物、キチン質などの動物の産物、及び多数の合成化学物質が含まれる。
【0126】
本発明によるアジュバントは、目的とするそれらの作用機構により分類することができる。ほとんどのアジュバントは1つ以上の機構により機能するようなので、このタイプの分類は幾分恣意的となることはやむを得ない。アジュバントは、抗原の局在化及び送達を介して、あるいはクロファージ及びリンパ球などの免疫系を構成する細胞に対する直接の効果によって、作用することができる。本発明によるアジュバントが免疫応答を増強する別の機構は、抗原デポーが作られることによる。これは、アルミニウム化合物、油性乳剤、リポソーム、及び合成ポリマーアジュバントの活性の一因となっているようである。リポ多糖類及びムラミルジペプチドのアジュバント活性は主にマクロファージの活性化によって仲介されるようであるのに対し、百日咳菌はマクロファージ及びリンパ球の双方に対して作用する。本発明による免疫原性組成物に導入する場合に有用であることができるアジュバントのさらなる例は、米国特許第5,554,372号に記載されている。
【0127】
好ましい一実施態様において、本発明によるアジュバントは、アルミニウム化合物、フロイント不完全アジュバント、タイターマックス・クラシカル・アジュバント、及び油性乳剤から成る群から選択される。
【0128】
組成物又はワクチン製剤が担体をさらに含有する本発明の実施態様も提供する。担体はアジュバントとは独立して存在することができる。抗原及び担体の共役及び/又は共免疫感作(coimmunisation)の目的は、例えば、抗原の分子量を増加して抗原の活性又は免疫原性を増加すること、抗原に安定性を付与すること、決定基の生物活性を増加すること、あるいは血清半減期を増加することであることができる。担体タンパク質は、抗原提示に好適な任意タンパク質を含む任意の慣用的な担体であることができる。慣用的な担体タンパク質には、キーホールリンペットヘモシアニン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、若しくはヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、卵白アルブミン、免疫グロブリン、又はインスリンなどのホルモンなどが含まれるが、限定するものではない。
【0129】
本発明による組成物又はワクチン製剤は、生物活性成分をさらに含むことができる。生物活性成分は、直接的又は間接的に個体の免疫応答に影響を及ぼすことができる任意成分であることができる。生物活性成分は、サイトカイン及びケモカインから成る群から選択されることが好ましい。
【0130】
サイトカインは、例えば、IL−2、IL−4、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21、IFN−γ、IFN−α、GM−CSF、C−CSFから成る群から選択することができる。本発明の組成物は、種々の方法で作成することができる。
【0131】
接着物質のモノリシック使用のために、ワクチン製剤内に任意選択により含有される免疫原及び免疫原送達系を、この分散液を特定の親水コロイドに噴霧することにより、接着物質のマトリクスに均一な分散として導入してすることができ、その後、これらを接着物質マトリクス内で混合する。噴霧の際には、親水コロイド粒子を混合回転して免疫原及びその送達系がムラなく分散されることを確保しなければならない。第2の工程では、親水コロイドを比較的低い温度で混合して熱可塑性の溶融接着物質とし、第3の工程では、慣用的なコーティング技術によって最終ブレンドを好ましい厚さでコーティングする。
【0132】
親水コロイド接着物質に関しては、放出速度は、そのような均一に分散された免疫原又はワクチン成分よりも非常に遅い。放出速度は、均一に分散した免疫原/免疫原送達系又はワクチン成分を含有する架橋ヒドロゲルではより速いようである。免疫原送達系がPosIntro、すなわち、ナノ粒子である場合、これらを接着物質表面に塗布することが好ましい。これは分散水溶液で行われ、PosIntroが均一に分散した等方的物質となることが好ましい。PosIntroの含有量が高い表面は、材料の放出側であることが意図される。
【0133】
他の実施態様において、免疫原送達系及び免疫原は乾燥状態で用いられる。これは、これらの成分の簡単な乾燥又は凍結乾燥によって得ることができる。しかしながら、より良好なバルク特性を作り出すために、親水性ポリマーなどの処理補助剤を用いることが好ましい。そのような剤は、多糖類及びセルロース材料又はポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールなどの合成ポリマーであってもよいが、それらに限定するものではない。乾燥溶液によって、処理のタイプに依存して、脆弱なパッドが作り出されてもよいし、多孔性構造が作り出されてもよい。経皮薬物送達用の可塑剤及び/又は適切な増強剤を添加することによって、より良好な特性を得ることができる。免疫原及び送達系を架橋材料に浸漬し、第2の工程で乾燥することができる。
【0134】
最終製品は一般に減菌されている。これは、選択した減菌方法に応じて選択された適切に密封したパッキングを含む。好ましい減菌方法は、ベータ又はガンマ照射である。しかしながら、ヒドロゲル及びエチレンオキシドの滅菌に対して加圧滅菌を用いることができ、あるいは親水コロイド及びヒドロゲル接着物質に対してプラズマ滅菌を用いることができる。加圧滅菌は、親水性ポリマーをベースとする凍結乾燥パッド又は乾燥パッドに不適切な唯一の方法である。
【0135】
本発明の構造物は、一実施態様において、1つ以上の区画を有し、別の実施態様において、少なくとも2つの区画を有し、第1の区画は、免疫原及び免疫原送達系を含有する凍結乾燥パッドを含有し、第2の区画は水溶液を含有する。
【0136】
フィルム及び放出用ライナー
実用的な使用のため、本発明の構造物は被覆フィルム及び/又は放出用ライナーを含む。免疫原又はワクチン成分を含有する被覆、例えば、パッチ、パッド、又は包帯は、組織に接触しない側にバリアを含む。そのようなバリアは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどの高分子材料のフィルムであることができるが、それらに限定すべきではない。バリアは、金属箔又はさらに薄いセラミクスで作成されたものであることができる。したがって、バリアフィルムの選択は本発明に非常に重要である。薄い高分子フィルムが好ましいために、該バリア材料に要求されるものは可撓性及び適合性が典型的であろう。
【0137】
パッチの反対側を保護するため、例えばシリコーンなどをベースとする放出用ライナーが好ましいが、他の材料も用いることができる。それらは、紙のシート又はプラスチックフィルムをベースとすることができる。架橋ヒドロゲルの場合、プラスチックフィルムが好ましく、シリコン処理は通常必要ない。
【0138】
例えば2つの構成要素を含有する構造物又は水含有区画を含有する構造物のための本発明に従って好適である他のフィルムは当業者にとって常套のものであることができ、プラスチックで作られた多層バリアフィルムを用いることが好ましい。
【0139】
本発明の組成物によって治療される状態及び予防される状態は、個体の免疫応答が特異的に誘導された後に該個体自身の免疫系が疾患を引き起こす作用物質を認識することによって疾患の進行を減少又は排除することができる個体の病気の状態である。典型的には、状態は、病原微生物が該個体に感染することよって引き起こされる疾患であるが、限定するものではない。
【実施例】
【0140】
実施例1
ワクチン(免疫原/免疫原送達系)の調製
(実験用破傷風ワクチン)
メガ(Mega)10(N−デカノイル−N−メチルグルカミド)をシグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich)(ミズーリ州セント・ルイス)から購入し、20%保存溶液として用いた。コレステロール、DC−コレステロール(シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セント・ルイス)及びホスファチジルコリン(エピクロン(Epikuron)200S、ルーカス・メイヤーGmbh社(Lucas Meyer Gmbh)、ドイツ)を各成分に関して1%w/vの濃度で20%メガ10に溶解し、−20℃で保存した。QuilAサポニンをスーパーフォス・バイオセクター社(Superfos Biosector)(フリズリクソン(Frederikssund)、デンマーク)から得た。QuilAをミリQ水(15mg/ml)に溶解し、濾過滅菌し、使用するまで−20℃で溶液中で保存した。
【0141】
破傷風−PosIntro(商標)は、QuilA、コレステロール/DC−コレステロール、及びホスファチジルコリンを破傷風毒素(リスト・バイオロジカル・ラボラトリー社(List Biological Laboratories, Inc.))と合わせることにより調製した。PosIntro(商標)微粒子を35℃で攪拌しながら4時間形成し、続いてスライド−A−ライザー(Slide‐A‐Lyzer)(登録商標)カセット(ピアス社(Pierce)、イリノイ州ロックフォード)又は分子量カットオフ10,000の透析管(ビスキング社(Visking)、ロンドン、英国)中でリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)に対して透析した。QuilAの反応混合物中の濃度は1.1mg/mlであり、コレステロール、DC−コレステロール、及びホスファチジルコリンの濃度は0.03%w/vであった。別に述べない限り、メガ10の最終濃度は4%w/vであった。反応混合物中の破傷風毒素の濃度は、実験に依って、0.1〜0.5mg/mlの範囲であった。
【0142】
実施例2
破傷風−PosIntro(商標)の精製
ショ糖勾配をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.2)中の25%(w/v)ショ糖から調製した。ポリアロマー(Polyallomer)(商標)遠心管(サイズ13×51mm、ベックマン・インストラメンツ社(Beckmann Instruments))にショ糖溶液4.5mlを充填し、−20℃で保存した。使用する際、必要な数の管を、4℃において、典型的には一晩、ゆくっくり解凍して、勾配を形成した。破傷風−PosIntro(商標)調製物を0.5ml未満の体積で塗布する前に、勾配を少なくとも1時間室温で平衡にした。遠心を、ベックマン・インストラメンツロータータイプSW55Ti中で20℃において50,000rpmにて3時間行った。無傷の微粒子をダイオードアレイUV検出器(パーキン・エルマー社(Perkin Elmer))により回収し、210nmでモニタリングした。
【0143】
精製した破傷風−PosIntro(商標)微粒子をまずスライド−A−ライザー(登録商標)カセット(ピアス社、イリノイ州ロックフォード)中でリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)に対して透析し、ショ糖を除去した。スライド−A−ライザー(登録商標)カセット(ピアス社、イリノイ州ロックフォード)に対する逆透析によって、ワクチン調製物の濃度をさらに上げた。選択された液体ワクチン製剤は、透過型電子顕微鏡により可視化したところ、35〜50nmのサイズを有するPosIntro(商標)微粒子に埋包された破傷風毒素を含有していた。破傷風毒素の濃度は4.2mg/mlであったのに対し、QuilAの濃度は12mg/mlであった。
【0144】
実施例3
アミノ酸分析
ウオーター・コーポレーション社(Water Corporation)のピコ・タッグ系(Pico-Tag System)(商標)をPosIntro(商標)微粒子のタンパク質含有量の決定に用いた。ピコ・タッグ・ワークステーションにて、6N HCl及びフェノールを用い、150℃で1時間加水分解を行い、続いてピコ・タッグプロトコルに従ってフェニルイソチオシアナート(PITC)で誘導体化した。定量測定を得るために、1:1のジクロロメタン(DCM)及びアセトニトリル(ACN)によって室温で10分間処理し、その後、溶媒/希釈剤を真空中で蒸発させることにより、PosIntro(商標)構造を破壊した。
【0145】
実施例4
ワクチン用ビヒクルとしての親水コロイド接着物質(免疫原及び送達系)
親水コロイドビヒクルを以下の通りに作成する:Z型ブレードのミキサーに、粘着付与性樹脂(アルコン(Arkon)P90、アラカワ社(Arakawa))45gを140℃で導入する。5分間混合した後、ブロックコポリマーであるスチレン−イソプレンエラストマー(クラトン(Kraton)TR1107、シェル社)32.5g及びアジピン酸ジオクチル5gを添加する。さらに10分後、アジピン酸ジオクチル7gをさらに添加し、混合物を均一になるまでブレンドする。最後に、カルボキシメチルセルロース(アクアソーブ(Aquasorb)、ヘラクレス社(Hercules))30gを添加する。混合物をシリコーン紙にコーティングされたポリウレタンフィルム(30μm)にホットメルトコーティングによって0.5mm厚にコーティングする。
【0146】
実施例に記載されるようにして調製したワクチン溶液(0.100mg/cm2と等価なワクチン)を接着物質の表面の15mmの円形領域にムラなく塗布した後、乾燥し、続いて放出用ライナーで積層化した。最後に、パッチを接着物質から打抜き、中心にワクチン領域を有する直径30mmの丸いパッチとした。
【0147】
パッチを個々にパッキングし、電子ビーム照射により滅菌した。
【0148】
実施例5
ワクチン用ビヒクルとしての親水コロイド接着物質
アジピン酸ジオクチルを以下のように換えること、すなわち、アジピン酸エステルの最初の添加をパラフィン油10gに換え、2番目の添加をパラフィン油15gに換えることを除いて実施例4に記載されるようにして、親水コロイド接着物質を作成する。均一な塊状物を、放出紙に積層化されたポリウレタンフィルムにおいて400μm厚にホットメルトコーティングする。実施例1に記載されるようにして調製したワクチン溶液を、接着物質の目の荒い表面に対して10mmの円形領域中に0.100mg/cm2と等価な量でムラなく噴霧する。
【0149】
乾燥後、放出用ライナーを目の荒い表面に積層化し、中心にワクチン領域を有する30mmのサイズの最終的なパッチを積層から打抜く。最後に、パッチをパッキングし、30kGyでのガンマ照射により滅菌する。
【0150】
実施例6
ワクチン用ビヒクルとしての架橋ヒドロゲル
ポリビニルピロリドン(プラスドン(Plasdone)K120、ISP)15g、ポリエチレングリコール5g、及び脱鉱化水80gの均一ブレンドを皿に注ぎ込んで0.5mm厚の層とする。目の荒い構造のポリエステル不織布をこの層の最上部に置き、0.5mmの均一ブレンドの層をさらに加える。最後に、30μm厚のポリウレタンフィルムの層を構造物の最上部に塗布する。次いで、架橋のため、皿を30kGyでベータ照射する。
【0151】
架橋後、構造物を皿から取り去り、逆さにする。ポリウレタンフィルムと反対側の新しい最上部の表面上に、実施例1に記載されるようにして調製されたワクチン層を0.050mg/cm2の濃度で噴霧する。
【0152】
最終構造物を打抜いてパッチとし、金属化したバリア積層フィルムの密封パッキング中にパッキングする。
【0153】
実施例7
ワクチン用ビヒクルとしての架橋ヒドロゲル
20/15/65の比のPVPK90(プラスドン(Plasdone))、グリセロール、及び水の均一化ブレンドに、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(サルトマー社(Sartomer)から購入)1.0部及び0.5%の量の架橋光開始剤(CIBA社から購入したダロキュア(Darocure)1173)をさらに添加する。該ブレンドに、実施例1に記載されるようにして調製され、かつ、乾燥体で決定される0.05%に対応するワクチンをさらに導入する。
【0154】
該ブレンドをポリエチレンフィルム(バリアフィルム)に1mm厚でコーティングし、コーティングの最上部に25μm厚のポリウレタンフィルムを積層化する。次の工程で、コーティング及び積層化された材料をUV光(フュージョンUVシステム社(Fusion UV Systems,Inc))で60秒間硬化する。
【0155】
積層を打抜いてパッチとし、パッキングする。
【0156】
実施例8
ワクチン用ビヒクルとしての凍結乾燥された架橋ヒドロゲル
実施例4で作成したパッチを標準の実験室設備で凍らし(−40℃)、凍結乾燥する(24時間)。得られた多孔性パッドを実施例1のワクチンを含んでいない親水コロイド接着パッチの中心に適用すると、少なくとも5mmの接着物質を含まない周囲が残る。該パッチの一方の外側の表面をポリウレタンフィルムで被覆し、他方を放出用ライナーで被覆する。
【0157】
パッチを気密ポーチ中に個々にパッキングし、ベータ照射により滅菌する。
【0158】
実施例9
ワクチン用ビヒクルとしての凍結乾燥したセルロース誘導体
実施例1に記載されるようにして調製したワクチン(0.025%)を、ヒドロキシエチルセルロース(ナトロソル(Natrosol)250M、ヘラクレス製薬社(pharm, Hercules, Inc))の5%水溶液、及び0.5%PEG300、さらに0.1%グリセロールと混合する。得られたブレンドを直径15mmのウェル中に注入して0.5mm厚の層とする。ウェル及び注入物を有するトレイをフリーザー(−20℃)に移し、凍結後(24時間)、トレイを凍結乾燥するために凍結乾燥機に移す。
【0159】
実施例8の親水コロイド接着物質をベースとする打抜いた接着パッチの中心に、ウェルのパッドを移す。接着物質は、接着物質を含まない0.5cmの外側の縁を有する。最後に、放出用ライナーをパッチの最上部に塗布する。
【0160】
パッチを気密パッキングでパッキングし、ベータ照射によって滅菌する。使用の際、ワクチンの放出を向上するために中心のパッドを水で濡らす。
【0161】
実施例10
水収容物でパッキングされたワクチン用ビヒクルとしての凍結乾燥されたセルロース誘導体
実施例9に記載されるパッチを2つの区画を有する構造物中にパッキングする。第1の区画は放出用ライナーを有するパッチを含むが、いずれの場合も、放出用ライナーは、ワクチンを含有する凍結乾燥されたパッドを有する中心領域を被覆しない。第2の区画は水収容物である。2つの区画は、分離している被覆フィルムが区画の間に破壊可能な窪みを含む形で一緒に密封される。水区画が加圧されると、窪みが破壊され、凍結乾燥されたパッド中に水が拡散する。
【0162】
密封の破壊はパッチの使用直前に行う。
【0163】
実施例11
ワクチン用ビヒクルとしてのヒドロゲル接着物質
ヒドロゲル接着物質を以下のようにして作成する。PVP K−90 100gをエタノール400gに溶解する。溶液にプロピレングリコール20g、及び通常の乾燥ポテトスターチ60g、さらに水40gを加熱下でさらに添加する。混合物が均一になったと思われるときに、該混合物をポリビニルアルコール(50μm)のフィルム裏地において1mmの層でコーティングし、乾燥する。得られたフィルムは300μmの範囲内である。
【0164】
第2の工程で、実施例1に記載するようにして調製されたワクチンを0.05mg/cm2に対応する濃度で噴霧する。製品を乾燥し、打抜いてパッチとする。
【0165】
実施例12
ワクチン用ビヒクルとしてのヒドロゲル接着物質
ヒドロゲル接着物質をホットメルト混合原理に従って作成する。PVPK25 30g、PVA(デュ・ポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(DuPont de Nemours & Co)から購入したエルバノール(Elvanol)HV)4.0g、及びグリセロール36gをz型ブレードミキサー中で100℃においてブレンドする。混合物が均一になったと思われるときに、脱鉱化水30gをさらに添加する。最終ブレンドを放出紙及び50μmのポリエチレンフィルムの間で300μm厚にプレスする。
【0166】
実施例13
ワクチン用ビヒクルとしてのヒドロゲル接着物質
ポリビニル−ピロリドン(PVPK90)20gを0.1Mクエン酸/クエン酸塩緩衝液(pH6.0)75g中のポリエチレングリコールジメタクリレート1000(PEG−DMA1000)(架橋剤)4g及びペルオキソ二硫酸ナトリウム(NaPS)1g(光開始剤)と混合した。プロピレングリコールは可塑剤として添加することができた(以下の組成物表を参照のこと)。
【0167】
好適な金型にポリマー溶液を分取し、該金型中で厚さを0.5〜5mm厚の範囲にすることができる。裏地が必要な場合には、金型の底を被覆している裏地フィルム被覆上にポリマー溶液を分取した。
【0168】
次いで、ポリマー溶液をUV光の下で硬化した。ヒドロゲルを単一のUVランプ(詳細:200W/cm、マイクロ波動力源「D」−スペクトル型ランプ、0.4m/分のコンベヤー速度を有する)下でUV硬化した。望ましい直径のヒドロゲルを切断することができるシート状ヒドロゲルを得た。
【0169】
【表1】

【0170】
最終接着物質を、実施例1に記載されるようにして調製されたワクチンにより0.05mg/cm2のレベルまで接着物質側に噴霧する。材料を乾燥し、新たな放出用ライナーを塗布し、パッチを作成する。
【0171】
実施例14
蛍光顕微鏡による角質層のPosIntro透過の可視化
胸を小さくする手術をインフォームド・コンセント後に行った37歳の女性から、ヒトの皮膚を得た(地方の倫理委員会により承認済み)。バイオプシーパンチを用いて、皮膚を8mmの生検に切断した。各外植片を、12ウェルの型式用の細胞培養物挿入物に注入されたアガロースゲル中で直径8mmの孔あけ中に置いた。アクリジン染色されたPosintro粒子(10μl、300μg/ml)を表皮層(角質層)の最上部に球状の小滴として注意深く塗布した。ダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)及び10%FCSを用い、37℃、5%CO2、気相液相界面で外植片を3日間培養した。生検をOCT(ティシュー・テック社(Tissue Tek))中で凍結固定し、4μMの切片を凍結ミクロトーム(ライカ社(Leica)、ドイツ)中で切断した。UMWIB2広帯域干渉バリアフィルターを用いたオリンパスBX60蛍光顕微鏡中で蛍光シグナル(緑)が検出された。
【0172】
図11Aは、Posintro粒子の塗布部位の断面図を示している(100倍)。基底膜は線によって示されている。
【0173】
図11Bは、図11と同じものを示している(200倍)。矢印は、ランゲルハンス細胞に起因し得るより高い蛍光強度を有する領域を示している。
【0174】
図11Cは、図11A及びBと同じスライドであるが、PosIntro粒子の塗布部位から離れている対照断面図を示している。上の線は角質層の始まりを示し、下の線は基底膜を示している。
【0175】
実施例15
表皮中のランゲルハンス細胞へのPosIntroホーミングの可視化
上記のように実験を繰り返し、TRITC標識したCD1a抗体(ダコ社(Dako)、デンマーク)によってランゲルハンス細胞を可視化した。図12に示す通り、表皮中のランゲルハンス細胞の位置は、Posintroの蓄積領域と非常に相関している。
【0176】
図12Aは、角質層の透過しているアクリジン染色されたPosintro粒子を示している。矢印は、より強く染色された領域を示している。
【0177】
図12Bは、図12Aと同じ断面図を示しており、TRITC−CD1は図12A中の矢印によって示される位置にランゲルハンス細胞が存在していることを示す。
【0178】
実施例16
角質層を介するPosIntro透過の共焦点顕微鏡を用いた可視化
インキュベーションの1日後、蛍光標識したPosIntroが上皮側に塗布された外植片を、氷冷イソペンタン中で、99%エタノール中のドライアイス上に凍結固定した。凍結した外植片を半分に分け、凍結金型中のO.C.T.化合物(ティシュー・テック社、サクラ(Sakura))に埋包した。
【0179】
外植片を20μm厚に凍結切断し、基底膜をマウス抗ヒトコラーゲンIV一次抗体(ダコ社(DAKO)、M0785)で4℃において一晩標識した。翌朝、アレキサ・フルール(Alexa Flour)488ヤギ抗マウス二次抗体(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes)、A−11001)で二次標識を行った。最後に、スライドをマイヤーの酸性ヘマトキシリンで1分間染色した。
【0180】
488nm及び543nmレーザーを備えるツァイス(Zeis)LSM310共焦点顕微鏡によって、スライドを顕微鏡評価した。アレキサ・フルール488で二次標識した基底膜及びアクリジンオレンジで標識したPosIntroを488nmレーザーで励起した。ヘマトキシリンのコントラストを、543nmレーザーにより、透過した非共焦点画像として収集した。
【0181】
共焦点画像はすべて、40倍の乾燥対象物(平均では2×8倍)を用い、自動的に輝度及びコントラストの増強が行われ、さらに手動によりコントラストの増強で行った、20〜30μmの凍結切片の表面下の8〜15μmの単一光学断面図として集めた。各々の写真は、2つの共焦点単一光学断面図及び1つの透過した非共焦点画像を合わせたものを表している。
【0182】
図13Aは、アクリジンPosIntroとともに24時間インキュベーションした後の皮膚生検の共焦点鏡検を示している(40倍)。基底膜の存在は、FITC標識したコラーゲンIV抗体により示される。
【0183】
図13Bは、図13Aと同じであるが80倍のものを示しており、表皮を介した角質層の透過及びPosintro粒子凝集の分布を示している。
【0184】
図13Cは、アクリジンPosIntroのない図13A及びBの生検を示している。
【0185】
実施例17
GFP−PosIntroによる線維芽細胞培養物のトランスフェクション
L929線維芽細胞を2ウェルのチャンバースライド(Nunc、Roskilde(ロスキレ)、デンマーク)上に置き、90%ダルベッコー修飾イーグル最低必須培地及び10%ウシ胎児血清を含有する培地中で増殖した。セミ・コンフルエント細胞を、2.5μg/mlGFP−プラスミド(gW1Z)及び10μg/mlDC−PosIntroを含有する無血清トランスフェクション培地(オプチメム(Optimem)−1、ギブコ(Gibco)BRL−インビトロゲン社(Invitrogen)、英国)中で3時間トランスフェクションした。調整培地をGFP−プラスミド単独で又はGFP−プラスミド及び10μg/mlリポフェクチン(ギブコ−インビトロゲン社、英国)でトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を、蛍光顕微鏡によって評価する前に24時間培養した。
【0186】
図14に図示される通り、DC−PosIntro及びGFP−プラスミドでトランスフェクションした後に、明るい蛍光のGFP発現培養物が得られた。トランスフェクション効率は約1%であった(リポフェクチンでトランスフェクションされた培養物に対する10〜20%と比較して)が、トランスフェクション後の細胞の外見は、リポフェクチンで処理した培養物と比較して、DC−PosIntroによる方が非常に健全であった。
【0187】
実施例18
経皮B型肝炎表面抗原ワクチン接種
Poslintroが配合された組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg)を3匹のウサギに接種した。免疫感作後3週間して、バイオメリユークス社(bioMerieux)のバイダス(Vidas)HBs抗原修飾in vitro診断系に基づく競合アッセイにより、HBsAg特異的抗体について静脈血液試料を測定した。
【0188】
組換えHBs抗原をアルデブロン社(Aldevron)(米国)から得た。米国仮出願第60/308,609号に記載されるものと同様の手順により、抗原をPosintroに埋包した。しかしながら、埋包前に、HBs抗原とパーメティック酸(palmetic acid)とを5:1のモル比でカップリングした。抗原30μgを実施例13に従って調製した厚さ2mm及び直径1cmの3つのヒドロゲル2パッチに分けて、各動物に接種した。
【0189】
免疫感作後24時間して、動物の毛を全体的に剃り、免疫感作部位を洗浄した。免疫感作パッチを各動物の背における3つの異なる位置に置き、コムフィール(Comfeel)(商標)という透明な包帯(コロプラスト社(Coloplast)、デンマーク)のさらなる層により担持した。できる限り、パッチを24時間そのままの状態としたが、動物が活動するため、この期間中にパッチが皮膚から部分的にほどけた。
【0190】
免疫感作後3週間して、静脈血液試料を採取し、HBsAgに特異的な抗体力価を測定した。ウサギ血清の連続希釈物を正常なヒト血奬中の一定量の組換えHBsAgと混合することにより(バイオメリユークス社のS1標準、バイダスHBs抗原キット)、抗体を測定した。混合物を10分間インキュベーションした後に、バイオメリユークス社のHBs抗原診断キットによりバイダス系で測定した。抗体力価は、正常な陰性血清を添加したときと比較して、HBsAgの検出レベルが50%未満まで減少する最高点の希釈として与える。すべての動物は、免疫感作する前に、HBsAgに特異的な抗体に対して陰性試験を行った。
【0191】
【表2】

【0192】
表2
B型肝炎表面抗原(HBsAg)の力価。抗体力価は、HBs抗原の特異的な検出が少なくとも50%阻害される血清の最高希釈である100倍希釈として与える。試験値は、最大値を1.14とする任意単位である。
【0193】
実施例19
経皮破傷風ワクチン接種
ウサギの群(動物5匹)に、サポニンが配合された経皮破傷風ワクチン、又は実施例2に例示される通りPosintro粒子に埋包された経皮破傷風ワクチン、及び実施例13に示された寸法を有するヒドロゲル2パッチに埋包された経皮破傷風ワクチンを接種した。免疫感作後3週間して血液試料をELISAより測定し、抗体力価を決定した。力価は、吸光度の読み取りが5倍希釈での力価の50%未満に減少する最高希釈(5倍)として、図15に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、この場合には圧力感受性接着物質(2)であるビヒクル中にワクチンが局所的又は均一に付与され、該接着物質が一方の外側で被覆フィルム(1)に積層され、その反対側で放出用ライナー(3)に積層されている簡単なモノリシック系を図示している。
【図2】図2は、図1のリザーバー系と非常に類似しているが、ワクチンを含有するビヒクル(2)が接着物質の縁(4)により囲まれているリザーバー系を図示している。(1)は被覆フィルムであり、(3)は放出用ライナーである。
【図3】図3は、薄い放出調節バリア(5)(好ましくは多孔性かつ圧力感受性の接着物質)が放出用ライナー(3)及びビヒクル(2)の間に塗布されていることを除き、図1の原理と同一の積層調節系を図示している。
【図4】図4は、図2及び図3の間のハイブリッド型を図示している。この系において、ワクチン用ビヒクル(2)は典型的には液体(水)である。
【図5】図5は、ワクチンを含有するビヒクル(2)が接着物質(6)から分離され、製品をヒト組織に固定することだけが意図された系を図示している。ビヒクル(2)には、放出用ライナーから取り除かれてその後に使用される直前に、放出用ライナー(3)の中心の窪みで接着物質部分に軽く圧力が加えらる。(1)は被覆フィルムである。
【図6】図6は、水リザーバー系を図示している。この概念では、ワクチンを含有するビヒクル(2)は、凍結乾燥されたパッドであり、放出用ライナー(3)に固定されることによって支持接着物質(6)から分離している。該ライナーは、中心に位置する破壊に弱いポイント(点線)を有する。さらに、水(7)を含有する収容物(8)を放出用ライナー(3)の上部表面に結合又は接着する。構造物に加圧することによって、第1の工程においてビヒクルが接着物質(6)に接着し、第2の工程としてライナー(点線)(3)の壊れやすいポイントが破壊されて凍結乾燥されたビヒクルを有する区画に水が進入することが可能となり、このことが行われることでビヒクルがゲルに戻る。
【図7】図7は、水をビヒクルに送るために、水を含有する区画(7及び8)が壊れやすい放出用ライナー(3)を未だ有するビヒクル(2)近くで密封されていることを除き、図6と同等の原理を図示している。
【図8】図8は、ビヒクル(2)が支持接着物質(6)において固定されている図6と同等の原理をさらに図示している。膜(10)は、放出用ライナー(3)及び水を含有する区画(8)の外側フィルムへと密封され、ビヒクルから区画を分けており、点線では外部加圧による破壊に弱くなっている。膜及び放出用ライナー(3)は、放出用ライナーの窪みを介して一体であり、同じものであってもよい。
【図9】図9は、図1から図5の上記原理のいずれかに対する2つの構成要素のパッキングを図示している。第1の構成要素はフィルム(1)及び放出用ライナー(3)上の接着物質支持層(6)からなり、第2の構成要素はポーチ(10)中のビヒクル(2)からなる。
【図10】図10は、図6から図8の水含有構造物の場合における図9と同等の2つの構成要素の原理を図示している。この場合では、ポーチ材料(10)は、一緒に密封されており、ビヒクルと水収容物との間の点線によって図示されている通り、方向性ある破壊と外部加圧による水の送達を行うために壊れやすくしてある。
【図11A】図11Aは、Posintro粒子の塗布部位の断面図を示している(100倍)。基底膜は線によって示されている。
【図11B】図11Bは、図11と同じものを示している(200倍)。矢印は、ランゲルハンス細胞に起因し得るより高い蛍光強度を有する領域を示している。
【図11C】図11Cは、図11A及びBと同じスライドであるが、PosIntro粒子の塗布部位から離れている対照断面図を示している。上の線は角質層の始まりを示し、下の線は基底膜を示している。
【図12A】図12Aは、角質層の透過しているアクリジン染色されたPosintro粒子を示している。矢印は、より強く染色された領域を示している。
【図12B】図12Bは、図12Aと同じ断面図を示しており、TRITC−CD1は図12A中の矢印によって示される位置にランゲルハンス細胞が存在していることを示す。
【図13A】図13Aは、アクリジンPosIntroとともに24時間インキュベーションした後の皮膚生検の共焦点鏡検を示している(40倍)。基底膜の存在は、FITC標識したコラーゲンIV抗体により示される。
【図13B】図13Bは、図13Aと同じであるが80倍のものを示しており、表皮を介した角質層の透過及びPosintro粒子凝集の分布を示している。
【図13C】図13Cは、アクリジンPosIntroのない図13A及びBの生検を示している。
【図14】図14は、DC−PosIntro及びGFP−プラスミドでトランスフェクションした後に、明るい蛍光のGFP発現培養物が得られたことを示す。
【図15】図15は、サポニン及びPosintroが配合された破傷風ワクチンを接種した後の抗体力価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの免疫原、b)遮蔽ビヒクル、及びc)Posintro又はISCOMの形態の免疫原送達系を含有する、少なくとも1つの免疫原の個体への経皮送達用の組成物。
【請求項2】
前記遮蔽ビヒクルが圧力感受性接着物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a)少なくとも1つの免疫原、b)圧力感受性接着物質の形態の遮蔽ビヒクル、並びにc)少なくとも1つのサポニン及び少なくとも1つのステロールを含有する免疫原送達系を含有する、少なくとも1つの免疫原の個体への経皮送達用の組成物。
【請求項4】
前記経皮送達が皮膚表面又は粘膜組織を介する送達を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記遮蔽ビヒクルが吸収性の圧力感受性接着物質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記遮蔽ビヒクルが親水コロイド接着物質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記遮蔽ビヒクルがヒドロゲル接着物質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記遮蔽ビヒクルが架橋ヒドロゲル接着物質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記免疫原及び前記免疫原送達系が前記遮蔽ビヒクル中に好ましくは均一に分散している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫原及び前記免疫原送達系が前記遮蔽ビヒクルの表面上に分散している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記遮蔽ビヒクルが非接着性遮蔽ビヒクルであり、該ビヒクルから分離している皮膚固定用の第2の接着物質をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記遮蔽ビヒクルが乾燥又は凍結乾燥され、親水性ポリマー物質又は油脂様組成物を含有する担体を含有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記遮蔽ビヒクル又は前記第2の接着物質がパッド、パッチ、又は包帯などの被覆である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
水又は他の適切な溶媒/希釈剤のリザーバーをさらに含有する、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記水リザーバーは破壊することができ、前記水又は溶媒/希釈剤は前記遮蔽ビヒクルに吸収することができる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
速度調節膜をさらに含有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記免疫原及び/又は前記免疫原送達系が互いに分離している、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
経皮薬物送達用の増強剤をさらに含有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
誘導される免疫応答が1つ以上の抗原に対して指向されるように前記少なくとも1つの免疫原を選択する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記1つ以上の抗原が、微生物、好ましくは、ウイルス、細菌、寄生生物、及び/又は真菌などの病原微生物に由来する、あるいは非微生物、例えば、脊椎動物などの動物に由来する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記免疫原及び/又は抗原がウイルスに由来する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
前記1つ以上の抗原が合成抗原、前記個体に由来する抗原、又は任意の種に由来する抗原である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記誘導される免疫応答により、前記抗原が一部である病原微生物に対する前記個体での保護が与えられる、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項24】
前記誘導される免疫応答が、前記病原微生物への前記個体の後の暴露に作用してもよい、請求項19〜20又は23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記誘導される免疫応答が、前記個体の感染中に前記病原微生物により産生される病原成分、例えば、破傷風毒素などの細菌毒素に対して指向される、請求項19〜20又は23〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記免疫原及び/又は抗原が、i)1つ以上の同一又は異なるポリペプチド及び/又はペプチド(該ポリペプチド及び/又はペプチドは任意選択により翻訳後修飾を含む)、ii)脂質基に化学結合したポリペプチド及び/又はペプチドなどの1つ以上の同一又は異なるリポペプチド、iii)ポリペプチド及び/又はペプチドをコードすることができる1つ以上の同一又は異なる核酸配列、又はiv)1つ以上の同一又は異なる多糖類及び/又はオリゴ糖、あるいはそれらの組み合わせを含む又はからなり、該免疫原及び/又は抗原はさらに処理してフラグメントとすることができる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記免疫原及び前記免疫原送達系がワクチン製剤内に含有される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記免疫原送達系がPosintro又はISCOMである、請求項3に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫原送達系が、i)少なくとも1つの第1のステロール及び/又は少なくとも1つの第2のステロール(前記少なくとも1つの第2のステロールは、静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用により、外来抗原、好ましくは核酸と接触することができ、前記少なくとも1つの第1のステロール及び/又は前記少なくとも1つの第2のステロールは、少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は少なくとも1つの第2のサポニンと複合体を形成することができる)、及びii)少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は少なくとも1つの第2のサポニン(前記少なくとも1つの第2のサポニンは、静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用により、遺伝的決定基と接触することができ、前記少なくとも1つの第1のサポニン及び/又は前記少なくとも1つの第2のサポニンは、少なくとも1つの第1のステロール及び/又は少なくとも1つの第2のステロールと複合体を形成することができる)、及び任意選択によりiii)静電的相互作用及び疎水性相互作用から選択される相互作用によって遺伝的決定基と接触するのための少なくとも1つの接触基(但し、第2のステロールが前記複合体中に存在しない場合、前記少なくとも1つの接触基が存在する)、さらに任意選択によりiv)少なくとも1つの親油性部分を含有する複合体である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
任意選択によりワクチン製剤内に含有される前記免疫原及び前記免疫原送達系を、前記遮蔽ビヒクルの溶液に分散又は浸漬するか表面に塗布することにより、前記遮蔽ビヒクルのマトリクス中又は表面上に導入する工程、及び任意選択により前記組成物を滅菌及び/又は乾燥及び/又は密封する工程を含む、前記請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項31】
前記免疫原及び前記免疫原送達系を前記ビヒクルへの導入前に乾燥又は凍結乾燥する工程をさらに含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上の経皮薬物送達用の増強剤及び/又は1つ以上の可塑剤を添加する工程をさらに含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物を含有する構造物。
【請求項34】
1つ以上の区画を有する、請求項33に記載の構造物。
【請求項35】
少なくとも2つの区画を有し、第1の区画は、前記免疫原及び前記免疫原送達系を含有する凍結乾燥されたパッドを含有し、第2の区画は、水又は他の適切な溶媒/希釈剤を含有する、請求項33又は34に記載の構造物。
【請求項36】
少なくとも2つの分離した構成要素を含有する、請求項33〜35のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項37】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物を前記個体に投与する、個体での免疫応答の生成方法。
【請求項38】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物を前記個体に投与する、個体での病気状態、例えば、病原微生物による前記個体の感染によって引き起こされる疾患の治療又は予防方法。
【請求項39】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物を前記個体に投与する、個体のワクチン接種方法。
【請求項40】
遮蔽ビヒクルを含有する免疫原経皮送達用組成物の調製のための免疫原の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−503072(P2006−503072A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540544(P2004−540544)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000654
【国際公開番号】WO2004/030696
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503366944)ノルディック ワクチン テクノロジー アクティーゼルスカブ (2)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】