説明

ワクチン組成物

【課題】ワクチン成分のいずれか1つの免疫学的機能を著しく干渉しないことを特徴とする、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌及び髄膜炎菌による感染を予防又は治療することができる多価ワクチンの提供。
【解決手段】アルミニウムアジュバント塩に吸着されていないインフルエンザ菌b型の莢膜多糖の複合体、および2種以上の他の細菌性多糖を含む多価ワクチン組成物。また、全細胞百日咳成分、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、B型肝炎表面抗原、インフルエンザ菌b型の莢膜多糖の複合体、および髄膜炎菌A型もしくはC型(またはその両者)の莢膜多糖の複合体を含む多価ワクチン組成物。さらに、全細胞百日咳成分、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、および低用量のインフルエンザ菌b型の莢膜多糖の複合体を含む多価ワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しい混合ワクチン製剤に関する。複数の病原体に対する防御を付与し、投与コストを下げ、並びに許容率及び達成範囲率を高めるために、必要とされる免疫処置回数を最小限にするためには、混合ワクチン(複数の病原体に対する防御を提供する)が非常に望ましい。文献によく記載されている抗原の競合(又は干渉)現象により、多成分系ワクチンの開発が複雑になっている。抗原の干渉とは、複数の抗原を投与すると、これらの抗原を個別に投与する場合に観察される免疫反応に比べて一定の抗原に対する反応がしばしば減少する、という観察結果を指す。
【背景技術】
【0002】
百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、並びに任意によりB型肝炎ウイルス及び/又はインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae)を防御することができる混合ワクチンは公知である(例えば、国際特許出願公開番号WO 93/24148号及びWO 97/00697号参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、そのワクチンを投与すると、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌及び髄膜炎菌(N. meningitidis)(そして好ましくはさらにA型肝炎ウイルス及び/又はポリオウイルス)による感染を予防又は治療することができる多価ワクチンであって、その多価ワクチンの成分がワクチン成分のいずれか1つの免疫学的機能を著しく干渉しないことを特徴とする、現在までに最も望まれている多価ワクチンの製造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、一つの態様において、本発明は、
(a) 死菌(killed)全細胞百日咳菌(Pw)、又は2種以上の無細胞百日咳成分(Pa)のいずれか[好ましくは前者]、
(b) 破傷風トキソイド(TT)、
(c) ジフテリアトキソイド(DT)、
(d) B型肝炎表面抗原(HepB)、
(e) インフルエンザ菌b型(Hib)の莢膜多糖と担体タンパク質との複合体、並びに
(f) 髄膜炎菌A型(MenA)および髄膜炎菌C型(MenC)からなる群より選択される細菌の莢膜多糖と担体タンパク質との複合体の1種以上の複合体、
を含むことを特徴とする、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌、及び髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対する防御を宿主に付与するための多価免疫原性組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】第III段階後の抗PRPのRCCを示す。
【図2】第III段階後の抗PD IgGのRCCを示す。
【図3】第III段階後の抗PSAのRCCを示す。
【図4】第III段階後の抗PSCのRCCを示す。
【図5】第III段階後の抗MenC SBAのRCCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
破傷風トキソイド(TT)を調製する方法は、当分野で周知である。例えばTTは、好ましくは、破傷風菌の培養物からトキシンを精製した後、化学的に無毒化して生成されるか、或いはこのトキシンの組換え類似体又は遺伝的に無毒化された類似体を精製することにより作製される(例えば、EP 209281号に記載されている)。また、「破傷風トキソイド」は、全長タンパク質の免疫原性フラグメントも包含する(例えばフラグメントC。EP 478602号を参照されたい)。
【0007】
ジフテリアトキソイド(DT)を調製する方法もまた当分野において公知である。例えばDTは、好ましくは、ジフテリア菌の培養物からトキシンを精製した後に化学的に無毒化して生成されるか、或いはこのトキシンの組換え類似体又は遺伝的に無毒化された類似体を精製することにより作製される(例えば、CRM197、又は米国特許第4,709,017号、同第5,843,711号、同第5,601,827号、及び同第5,917,017号に記載されるような他の変異体)。
【0008】
無細胞百日咳菌の成分(Pa)は当分野において周知である。例として、百日咳トキソイド(PT)、線維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(pertactin;PRN)及び凝集原2及び3が挙げられる。これらの抗原は、部分的に又は高純度で精製される。好ましくは、2種以上の無細胞百日咳菌の成分がワクチン中で使用される。
より好ましくは、上記に例示した無細胞百日咳菌の成分のうち2種、3種、4種又は5種全てが、ワクチン中に使用される。最も好ましくは、PT、FHA及びPRNが含まれる。PTは、様々な方法、例えば百日咳菌の培養物からトキシンを精製した後に化学的に無毒化することにより、或いは(例えば、米国特許第5,085,862号に記載されるように)PTの遺伝的に無毒化された類似体を精製することにより作製することができる。
【0009】
本発明に適する死菌全細胞百日咳菌(Pw)を調製する方法は、DT-TT-Pw-HepB及びDT-TT-Pa-HepBワクチンの作製に適した製剤化方法として、国際特許出願公開番号WO 93/24148号に開示されている。
【0010】
細菌性莢膜多糖複合体は、少なくとも1種のT-ヘルパーエピトープを含む任意の担体ペプチド、担体ポリペプチド又は担体タンパク質を含み得る。好ましくは、使用される担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、組換え型ジフテリアトキシン(米国特許第4,709,017号、国際特許出願公開番号WO 93/25210号、WO 95/33481号、又はWO 00/48638号のいずれかに記載されるようなもの)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)に由来するニューモリシン(pneumolysin)(好ましくは化学的に無毒化されたもの、又は無毒化変異体)、髄膜炎菌に由来するOMPC、及びインフルエンザ菌に由来するプロテインD(PD)(EP 594610号)からなる群より選択される。周知の担体抑制(carrier suppression)作用のため、本発明の組成物の各々において、組成物中に含まれる多糖抗原(‘n’種の抗原)を2種以上の担体と複合体化させるのが有利である。従って、(n−1)種の多糖をある1つのタイプの担体に(別々に)担持させ、残り1種を他のタイプの担体に担持させるか、或いは(n−2)種の多糖をある1つのタイプの担体に担持させ、残り2種を他の2つのタイプの担体に担持させる、等が考えられる。例えば、4種類の細菌性多糖複合体を含むワクチンにおいては、1種、2種又は4種全てを異なる担体と複合体化させることができる。しかし、プロテインDは、組成物中で様々な(2種、3種若しくは4種以上の)多糖に対して際立った担体抑制作用もなく使用され得るので、本発明の組成物中で担体として有益に使用される。最も好ましくは、HibはTT複合体として、並びにMenA、MenC、MenY及びMenWはTT複合体又はPD複合体のいずれかとして存在する。またプロテインDはインフルエンザ菌に対する防御を提供することができる他の抗原を提供するので、これも有効な担体である。
【0011】
多糖は、任意の公知方法により担体タンパク質に結合させることができる(例えば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmor等による米国特許第4,474,757号)。好ましくは、CDAP複合体化(conjugation)により行う(国際特許出願公開番号WO 95/08348号)。
【0012】
CDAPでは、多糖-タンパク質複合体の合成のために、好ましくはシアン化試薬1-シアノ-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)が使用される。シアン化反応は、アルカリ感受性多糖の加水分解を回避する比較的穏かな条件下で実施することができる。この合成により、担体タンパク質に直接結合させることができる。
【0013】
上記免疫原性組成物は、次のリストから選択される1、2、3、4、5、6、又は7種の成分を更に含んでもよい:髄膜炎菌Y型多糖[MenY](好ましくは複合体)、髄膜炎菌W型多糖[MenW](好ましくは複合体)、チフス菌(Salmonella typhi)のVi多糖、髄膜炎菌(好ましくは血清型B)外膜小胞、1種以上の髄膜炎菌(好ましくは血清型B)外膜(表面に露出した)タンパク質、死菌弱毒化A型肝炎ウイルス(HepA-好ましくは「Havrix」(商品名)[スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズ社(SmithKline Beecham Biologicals)製]として知られる製品)、及び組成物の抗原のどれに対しても実質的な干渉問題を生じない不活化ポリオウイルス(IPV − 好ましくはワクチン技術において標準的である1型、2型、及び3型、最も好ましくはソークポリオワクチンを含む)。
【0014】
本発明の免疫原性組成物は、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして好ましく製剤化される。それにより組成物の個別の成分が、その組成物の他の個々の成分によりその個々の成分の免疫原性が実質的に損なわれないように製剤化されることになる。「実質的に損なわれない」とは、免疫感作を行ったときに、抗原が単独で投与された時に得られる力価の60%を超える、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える、更により好ましくは90%を超える、最も好ましくは95〜100%を超える抗体力価が各成分に対して得られる、という意味である。
【0015】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは各抗原の成分ごとの血清防御がヒト被験者の許容割合(%)の基準を超える抗体力価を付与するように、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化される。これは、集団全体におけるワクチン効力の評価において重要な試験である。それを超えると宿主が抗原に対してセロコンバージョン(抗体陽転)を起こすと考えられている関連抗体力価を有する抗原は周知であり、そのような力価はWHOのような機関により公表されている。好ましくは統計学的に有意な被験者サンプルの80%超がセロコンバージョンを起こし、より好ましくは90%超、更に好ましくは93%超、及び最も好ましくは96〜100%がセロコンバージョンを起こす。
【0016】
本発明の免疫原性組成物には好ましくはアジュバントが加えられる。適切なアジュバントとしては、水酸化アルミニウムゲル(アルム)又はリン酸アルミニウムのようなアルミニウム塩が挙げられるが、カルシウム、鉄若しくは亜鉛の塩、又はアシル化チロシン、又は、アシル化糖、カチオン若しくはアニオンにより誘導体化された多糖、又はポリフォスファゼンの不溶性懸濁液でもよい。
【0017】
アジュバントは、免疫反応の細胞性免疫を促進するためのTH1型の反応の選択的誘導物質となるように選択することも可能である。
【0018】
高レベルのTh1型サイトカインは、所定の抗原に対する細胞性免疫反応の誘導を促進する傾向がある。一方で、高レベルのTh2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫反応の誘導を促進する傾向がある。
【0019】
Th1反応を優勢に促進する適切なアジュバント系は、モノホスホリル脂質A又はその誘導体、特に、3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA、及びモノホスホリルリピドA(好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))とアルミニウム塩との組合せを含む。増強系としては、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ、特に、国際特許出願公開番号WO 94/00153号に開示されたようなQS21と3D-MPLとの組合せ、又は、国際特許出願公開番号WO 96/33739号に開示されたようなQS21がコレステロールで抑制される低反応原性組成物が含まれる。QS21、3D-MPL及び水中油型エマルション中のトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤が国際特許出願公開番号WO 95/17210号に記載されている。ワクチンは、サポニンを、より好ましくはQS21を更に含んでもよい。また製剤は、水中油型エマルション、及びトコフェロールを含んでもよい(国際特許出願公開番号WO 95/17210号)。オリゴヌクレオチドを含む非メチル化CpG(国際特許出願公開番号WO 96/02555号)もまた、TH1反応の選択的誘導物質であり、本発明において使用するのに適している。
【0020】
アルミニウム塩は上記免疫原性組成物において用いるための好ましいアジュバントである。特にHepBは、他の成分と混合する前にリン酸アルミニウムに吸着させておくことが好ましい。本発明の組成物においてアジュバント(特にアルミニウム塩)のレベルを最小限にするために、多糖複合体にアジュバントを加えなくてもよい。
【0021】
また本発明は、薬学的に許容される賦形剤と共にワクチンの成分を混合する工程を含むワクチン製剤の製造方法も提供する。
【0022】
本発明の特に好ましいDTPw組成物は、TT、DT、Pw、HepB(好ましくはリン酸アルミニウムに吸着されたもの)、Hib(好ましくはTTとの複合体及び/又は吸着されていないもの)、MenA(好ましくはプロテインDとの複合体)、及びMenC(好ましくはプロテインDとの複合体)を含む。好ましくは、ワクチンは、2つの容器、つまり液体状のDTPw-HepBを含む第1の容器及び凍結乾燥状態のHib-MenA-MenCを含む第2の容器に入れて提供される。容器の中身は、一回の注射で宿主に投与する前に即時に混合することができる。
【0023】
本発明の更なる態様において、医薬に使用するための本明細書中に記載される免疫原性組成物又はワクチンを提供する。
【0024】
本発明の更に他の態様において、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌、及び髄膜炎菌による感染によって引き起こされる疾患を治療又は予防するための医薬の製造における本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
【0025】
また、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌及び髄膜炎菌によって引き起こされる疾患に対する免疫をヒト宿主に付与する方法であって、本発明の免疫原性組成物の免疫防御量を該宿主に投与する工程を含むことを特徴とする方法も提供する。
【0026】
本発明のワクチン調製物は、全身又は粘膜経路からの前記ワクチンの投与によって、感染し易い哺乳動物を保護又は治療するために使用することができる。これらの投与としては、筋肉内、腹腔内、皮内、若しくは皮下経路からの注射、又は口腔/食道、気道、尿生殖器管からの粘膜投与による注入が含まれる。
【0027】
各ワクチン用量中の抗原の量は、一般的なワクチンにおける重大な副作用を伴うことなく免疫防御反応を誘導する量として選択される。そのような量は、具体的にどの免疫原が使用されるのか、及びそれがどのように提示(投与)されるのかによって変わる。一般に、各用量は、多糖を0.1〜100μg、好ましくは0.1〜50μg、より好ましくは0.1〜10μg含み、そのうち1〜5μgが最も好ましい範囲であると考えられる。
【0028】
ワクチン中のタンパク質抗原の含有量は、一般的には1〜100μgの範囲であり、好ましくは5〜50μg、最も一般的には5〜25μgの範囲である。
【0029】
初回ワクチン接種に続いて、被験者は1回又は数回の追加抗原免疫処置を適切な期間をあけて受けることができる。
【0030】
ワクチン調製物は、Vaccine Design(“The subunit and adjuvant approach”(Powell M.F. & Newman M.J.編)(1995)Plenum Press New York)に一般に記載されている。リポゾーム内への封入は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0031】
面白いことに、本発明者らは、TT、DT、Pw及びHibを含むワクチンの場合、インフルエンザ菌b型の莢膜多糖抗原に対して少なくとも同等の抗体力価を得るために、驚いたことにこの混合ワクチンにおいて(用量0.5mLあたり10μgの標準用量と比較して)かなり低用量のHibを使用することができることも見い出した。
これは予想に反するものである。
【0032】
従って、本発明の更なる実施形態において、死菌全細胞百日咳菌(Pw)、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、及び担体タンパク質とインフルエンザ菌B型(Hib)の莢膜多糖との複合体(好ましくはTT、DT又はCRM197との複合体)を含む多価免疫原性組成物を提供する。この多価免疫原性組成物において用量0.5mLのバルクワクチン(bulk vaccine)あたりの複合体の量は1〜8μgであり、及び複合体の免疫原性は、これより多量の複合体を含む組成物と同じか又は改善されている。任意により、B型肝炎表面抗原も含み得る。
【0033】
好ましくは、用量0.5mLのバルクワクチンあたりの複合体の量は、(複体中の多糖が)10μg未満、より好ましくは1〜7μg又は2〜6μg、最も好ましくは約2.5μg、3μg、4μg、又は5μgである。最も好ましくは、DTPwワクチンと混合する前に、Hib複合体をアルミニウムアジュバント塩に吸着させない。
【0034】
本発明者らが行った更なる観察は、Hib複合体が更に1種(特に2種以上)の追加的な細菌性多糖を含むワクチンとして投与され、且つワクチンのHib多糖(及び好ましくは全ての多糖)がアジュバント(好ましくはアルミニウム塩)に吸着されていない場合、Hib複合体を含む混合ワクチンは、宿主において(一価の
非吸着型Hib複合体ワクチンと比較して)著しく高い抗Hib抗体力価を引き出す、という事実である。
【0035】
本発明の更なる独立した態様は、担体タンパク質とインフルエンザ菌B型(Hib)の莢膜多糖との複合体を含む多価免疫原性組成物の提供であり、前記組成物は、細菌性多糖であってそれらが由来する細菌による感染に対して宿主に防御を付与することができるものを更に1種(ただし特に2種以上、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13種を超える)を含むこと、及び組成物中のHib多糖がアルミニウムアジュバント塩に吸着される(及び好ましくは前記多糖のいずれも吸着されない)ことを特徴とするものである。最も好ましくは、組成物中にアルミニウムアジュバント塩は存在しない。
【0036】
「アルミニウムアジュバント塩に吸着」されない抗原とは、新しいアルミニウムアジュバント塩への抗原の特別な又は専用の吸着工程が、組成物の製剤化プロセスに含まれないことを意味する。
【0037】
Hibは、少なくとも1種のT-ヘルパーエピトープ(その例は上述されている)及び好ましくは破傷風トキソイドを提供することができる任意の担体と複合体化させてもよい。
【0038】
好ましくは、他の細菌性多糖を、担体タンパク質(その例は上述されている)と複合体化させる。特定の実施形態では、特に担体がCRM197である場合には、インフルエンザ菌B型の莢膜多糖及び他の多糖は同一の担体と複合体化させない(Hibは他の多糖の何れとも同じ担体を共有しない)。これらの例の好適な実施形態では、組成物中の多糖の少なくとも1種をプロテインDと複合体化させるが、これは本発明の実施にとって必須ではない。むしろ、Hib及び他の多糖のいずれも、プロテインDと複合体化させる必要はない。
【0039】
上記発明の特定の実施形態では、Hib及び他の細菌性多糖(及びその複合体)
のみが組成物中に存在するその唯一の抗原である。
【0040】
宿主に対して防御を付与することができる多糖の量(有効量)は、当業者が容易に決めることができる。一般に、各用量は多糖を0.1〜100μg、好ましくは0.1〜50μg、好ましくは0.1〜10μgを含み、そのうち1〜5μgが最も好ましい範囲であると予想される。Hib複合体は、好ましくは3〜15μg、より好ましくは4〜12μg、最も好ましくは5〜10μgの量(複合体中の多糖の量)で存在する。好適な実施形態において、用量0.5mLあたり組成物中に全量で2μg以上の他の多糖(特に複合体化したもの)が存在し、好ましくは3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、25、30、35、40、45又は50μg以上が含まれる。好ましくは用量0.5mLあたり100μg以下の他の多糖が含まれる。
【0041】
好ましくは、他の細菌性多糖は、髄膜炎菌血清群Aの莢膜多糖(MenA)、髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖(MenC)、髄膜炎菌血清群Yの莢膜多糖(MenY)、髄膜炎菌血清群Wの莢膜多糖(MenW)、B群連鎖球菌群Iの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IIの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IIIの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IVの莢膜多糖、B群連鎖球菌群Vの莢膜多糖、黄色ブドウ球菌5型の莢膜多糖、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)8型の莢膜多糖、チフス菌に由来するVi多糖、髄膜炎菌LPS、カタル球菌(M. catarrhalis)LPS、及びインフルエンザ菌LPSからなる群より選択される。LPSとは、天然のリポ多糖若しくはリポオリゴ糖、又は多くの公知の方法(例えば、国際特許出願公開番号WO 97/18837号又はWO 98/33923号を参照されたい)のいずれかによりリピドA部分が無毒化されたリポ多糖のいずれか、或いは前記LPSから誘導されるO-多糖を含む任意の分子を意味する。髄膜炎菌LPSとは12種の公知の免疫型(L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、又はL12)のうちの1種以上を意味する。
【0042】
特に好適な組合せは:1) Hib複合体、MenA複合体、及びMenC複合体;2) Hib複合体、MenY複合体、及びMenC複合体;並びに3) Hib複合体、及びMenC複合体を含む、又はそれらからなる組成物である。上記複合体の各々におけるPSの量は、ヒト用量0.5mLあたりそれぞれ5μg、又は10μgであり得る。任意により、上記組成物は、包括的な髄膜炎ワクチンを作るために、髄膜炎菌血清型Bの外膜小胞、1種以上の髄膜炎菌血清型Bの外膜(表面に露出した)タンパク質、又は1種以上の髄膜炎菌LPS(上記に定義)も含み得る。好ましくは、MenA、MenC、及びMenYは、TT又はPDのいずれかとの複合体である。
【0043】
また他の細菌性多糖は、血清型:1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F又は33F等の肺炎球菌に由来する莢膜多糖のいずれかから(好ましくは8種以上、より好ましくは11種以上、最も好ましくは13種以上)選択され得る。好ましくは、肺炎球菌多糖は複合体化させたものである(最も好ましくはPD複合体)。
【0044】
例えば、少なくとも4つの血清型(例えば、6B、14、19F及び23Fを含む)に由来する、又は少なくとも7つの血清型(例えば、4、6B、9V、14、18C、19F、及び23Fを含む)に由来する肺炎球菌多糖が、上記リストから選択され得る。より好ましくは8種以上の血清型(例えば、少なくとも11種の血清型)に由来する多糖が組成物中に含まれる。例えば、一実施形態において、組成物は、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fに由来する11種の莢膜多糖(好ましくは複合体化されている)を含む。本発明の好適な実施形態では、少なくとも13種の多糖抗原(好ましくは複合体化されている)が含まれるが、他の多糖抗原、例えば23価(血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F等)のものも本発明により想定される。
【0045】
(例えば肺炎を予防するための)高齢者のワクチン接種の場合、上述の好ましい11価抗原性組成物に加えて血清型8及び12F(また、最も好ましくは血清型15及び22も)を含ませて13/15価ワクチンを生成することが有利であり、これに対して、(特に中耳炎が心配な)乳児又は幼児の場合、血清型6A及び19Aを含ませて13価ワクチンを生成するのが有利である。
【0046】
肺炎球菌多糖は、アルミニウムアジュバント塩に吸着させたものであってもよいし、吸着させていないものであってもよい。
【0047】
Hib(好ましくは凍結乾燥したもの)及び肺炎球菌多糖(好ましくは液体状)は、単回の投与/注入で宿主に投与する前に即時に混合される。そのような製剤を用いて免疫化を行うと、Hib複合体を単独で投与する時に得られる力価の100%を超える抗体力価をHib莢膜多糖に対して得ることが可能である。好適な実施形態では、(防御的効力の点では)単独投与と比較して、混合投与において肺炎球菌多糖複合体に(大きな)有害作用は生じない。これは、最後の一次投与(一次投与は生後1年までの間に受ける初回抗原刺激投与(通常3回)である)の1ヶ月後に抗多糖抗体の一次投与後の相乗平均濃度(GMC)を測定するという形で評価することができる。本発明のワクチンのGMC(単位μg/ml)は、好ましくは、肺炎球菌多糖がHib複合体無しで投与される時のGMCの55%を超える(より好ましくは60、70、80、又は90%を超える)べきである。有害作用が生じなかったことを示すもう1つの指標は、本発明のワクチンの一次投与の1ヶ月後と、Hib複合体無しのワクチンの一次投与の1ヶ月後とを比較した場合に、抗体濃度が0.5μg/ml以上である被験者のパーセンテージの差が10%以下(好ましくは、9、7、5、3又は1%未満)であるかどうかである。
【0048】
上記では、Hib及び他の細菌性「多糖」(好適な実施形態)について言及しているが、本発明は、Hib及びワクチン技術において周知である他の細菌性「オリゴ糖」(天然で少数の反復単位を有するもの、又は扱い易くするために多糖のサイズを小さくしたものであって、且つ宿主における防御免疫反応を誘発することができるもの)まで広く含み得ると考えられる。
【0049】
好ましくは、本発明のこの態様の多価免疫原性組成物は、個々の成分の免疫原性がその組成物の他の個々の成分により損なわれないように、その組成物の個々の成分が製剤化されることを特徴とする、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化される(上記の定義を参照)。従って好適な実施形態では、(防御的効力の点では)これらを単独で投与した場合と比較して、混合ワクチンとして投与した場合に他の細菌性多糖に(大きな)有害作用は生じない。
【0050】
好ましくは、本発明のこの態様の多価免疫原性組成物は、ヒト被験者の許容可能なパーセンテージに対して各抗原成分毎に血清防御の基準を超える抗体力価を付与する、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化される(上述の定義を参照)。
【0051】
本発明のこの態様の組成物は、好ましくはワクチンとして製剤化される。本発明のこの態様の多価免疫原性組成物の免疫防御的用量を宿主に投与することを含む、インフルエンザ菌(及び好ましくは、他の細菌性多糖が由来する生物)により引き起こされる疾患に対する免疫をヒト宿主に付与する方法、並びにインフルエンザ菌(及び好ましくは、他の細菌性多糖が由来する生物)による感染により引き起こされる疾患を治療又は予防するための医薬の製造における本発明のこの態様の多価免疫原性組成物の使用も包含される。
【0052】
本発明のこの態様の多価免疫原性組成物を製造するための方法も提供され、これは、個々の成分を一緒に混合する工程を含むものである。他の細菌性多糖をアルミニウムアジュバント塩に吸着させる場合は、Hibを製剤に加える前にその操作を行うべきである。好適には、アルミニウムアジュバント塩を過剰に使用するべきではない。最も好ましくは、組成物を宿主に投与する前に即時に、アルミニウムアジュバントに付加した他の多糖にHibを加えるべきである。
【0053】
引用した全ての参照文献及び出版物は、本明細書中に参考として組み込まれる。
【実施例】
【0054】
実施例は単に例示目的のために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0055】
実施例1:DT-TT-Pw-HeB(DTPw-HepB)ワクチンの調製
本実施例は、国際特許出願公開番号第WO93/24148号に記載されたように行った。ワクチンはTritanrix-HepBTM(スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズ)という商品名で市販されている。
【0056】
実施例2:MenA-MenC-Hib(MenAC-Hib)ワクチンの調製
i)アジュバントを加えていないMenC-HibまたはMenA-MenC-Hib
MenAC-Hib:(CDAP技法を用いて)プロテインDと複合体化した髄膜炎菌A型莢膜多糖、プロテインDと複合体化した髄膜炎菌C型莢膜多糖、およびTTと複合体化したインフルエンザ菌b型莢膜多糖を混合した(ヒト用量0.5mLあたり各複合体中の各多糖は5μg)。pHを6.1に調節し、ショ糖の存在下にて凍結乾燥した。
【0057】
MenC-Hib:(CDAP技法を用いて)プロテインDと複合体化した髄膜炎菌C型莢膜多糖およびTTと複合体化したインフルエンザ菌b型莢膜多糖を混合した(ヒト用量0.5mLあたり各複合体中の多糖は5μg)。pHを6.1に調節し、ショ糖の存在下にて凍結乾燥した。
【0058】
ii)アジュバントを加えたMenA-MenC-Hib
(CDAP技法を用いて)プロテインDと複合体化した髄膜炎菌A型莢膜多糖、プロテインDと複合体化した髄膜炎菌C型莢膜多糖、およびTTと複合体化したインフルエンザ菌b型莢膜多糖をそれぞれ別々に生理食塩水中でリン酸アルミニウムに吸着させた(用量あたりそれぞれ100μg、100μgおよび60μgのAl3+に各複合体を5μg)。吸着されたワクチンをpH6.1にて混合し、ショ糖の存在下にて凍結乾燥した。
【0059】
実施例3:臨床試験
MenAC-Hib001の研究により、上記実施例で作製されたMenC-HibおよびMenAC-Hib(吸着させたもの及び吸着させていないもの)を乳児に3回の初回ワクチン接種で与え、これにより誘導される免疫原性、反応原性(reactogenicity)および安全性を評価する。
【0060】
この研究は第II段階の確率化検定(a phase II, randomized study)であり、5つの実験グループを含んでいた。評価した製剤は、Men AC-Hibの凍結乾燥した単純(plain)製剤及び吸着させた製剤、ならびにMenC-Hibの単純製剤であった。これら3つの製剤を、乳児で構成された最初の3つの実験グループに生後3、4及び5ヶ月の時に投与した:Tritanrix-HepB(商品名)をこれら3つのグループに同時に(別々の注射で)与えた。また、Men AC-Hibの単純製剤を、液体状のジフテリア・破傷風・全細胞百日咳・B型肝炎の混合ワクチン(Tritanrix-HepB(商品名))中で再構成し、乳児で構成された第4の実験グループに一回の注射で生後3、4及び5ヶ月の時に投与した。第5グループ(対照)には、Tritanrix-HepB(商品名)-Hibワクチンを投与した(生後3、4及び5ヶ月)。研究はオープンであったが、2つの異なるMenAC-Hib製剤を与えた最初の2つのグループは、Tritanrix-HepB(商品名)-MenAC-Hib及びTritanrix-HepB(商品名)-Hibワクチンを与えた最後の2つのグループと同様に、二重盲検試験で行った。まとめると、実験グループは以下の通りであった:
グループA:MenA5μgC5μg-Hib5μg + DTPw-HepB N=80
グループB:吸着させたMenA5μgC5μg-Hib5μg + DTPw-HepB N=80
グループC:MenC5μg-Hib5μg + DTPw-HepB N=80
グループD:DTPw-HepB/MenA5μgC5μg-Hib5μg N=80
グループE:DTPw-HepB/MenA5μgC5μg-Hiberix N=80
【0061】
これらの結果は、評価した各製剤が、各抗原に対して良好な免疫反応を誘導したことを示す(髄膜炎菌A群及びC群、ポリ-リボシル-ホスフェート(インフルエンザ菌b型菌の莢膜多糖)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳菌、及びB型肝炎に対する抗体を測定した)。各ワクチン製剤は良好な抵抗性を示した。
【0062】
第III期後の抗ポリ-リボシル-ホスフェート(PRP)
【表1】


血清保護(seroprotection)を評価するために観察される力価の一般的な閾値は0.15及び1.0mcg/mlである。DTPw-HepB/MenAC-Hibワクチン中においてHibの干渉は見られない。これは、データの反向累積曲線(RCC)を表す図1からも分かる。さらに、吸着されていないMenAC-Hibワクチンが吸着された製剤と比較してかなり高い抗PRP力価を示したことは驚くべきことである。
【0063】
第III期後の抗プロテインDIgG
【表2】


それぞれのRCC抗PD IgG曲線については図2も参照されたい。全ての製剤が担
体タンパク質(プロテインD)に対する免疫反応を誘導したことが分かる。
【0064】
第III期後の抗PSA(髄膜炎菌A型の莢膜多糖)IgG
【表3】


この試験は、髄膜炎菌A型の多糖に対するIgG含有量を測定するELISA試験である。図3は、データのRCCグラフを表す。MenA多糖抗原の干渉はなく、DTPw-HepB/MenAC-Hibワクチン中に存在する時と少なくとも同じ量の抗体を誘導する。
【0065】
血清型がA型である髄膜炎菌に対する第III期後の抗SBA
【表4】


この試験は、血清型Aの髄膜炎菌に対する細菌抗体を測定する殺菌能試験である。MenA多糖抗原の干渉はなく、DTPw-HepB/MenAC-Hibワクチン中に存在する時と少なくとも同じ量の抗体を誘導する。
【0066】
第III期後の抗PSC(髄膜炎菌C型の莢膜多糖)IgGおよびSBA-MenC
【表5】


この試験は、髄膜炎菌C型の多糖に対するIgG含有量を測定するELISA試験である。図4は、データのRCCグラフを示す。SBA-MenCは、髄膜炎菌C型に対する血清の殺菌力を測定する殺菌能試験である。これは機能的抗体の測定である。図5は、データのRCCグラフを表す。MenC多糖抗原に対する干渉はなく、DTPw-HepB/MenAC-Hibワクチン中に存在する時と同じ量の機能的抗体を誘導する。
【0067】
血清群Cの髄膜炎菌に対する第III期後のSBA-MenC
【表6】


この試験は、血清群Aの髄膜炎菌に対する殺菌性抗体を測定する殺菌能試験である。これは、機能的抗体の測定である。MenC多糖抗原に対する干渉はなく、DTPw-HepB/MenAC-Hibワクチン中に存在する時と同じ量の機能的抗体を誘導する。
【0068】
ジフテリア菌、破傷風菌、百日咳菌細胞およびHepBに対する抗体のセロコンバージョン率
【表7】


BPは百日咳菌を指す。ELISA試験は、全細胞細菌に対するIgGを測定することにより行った。
【0069】
ジフテリア菌、破傷風菌、百日咳菌細胞及びHepBに対する抗体の相乗平均力価(GMT)
【表8】


前の2つの表から、DT、TT、Pw及びHepBに対する免疫反応が、セロコンバーション及びGMTの両方に関して、登録されたTritanrix-HepBワクチンで観察されたものと似ていることが観察された。
【0070】
実施例4:Hib-11価肺炎双球菌複合体(Hib/Strep11V)ワクチンの調製
ラクトース[Hiberix(商品名)(スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズ)]の存在下でpH6.1にて凍結乾燥した、インフルエンザ菌b型菌の莢膜多糖とTTとの複合体(用量あたり複合体中の多糖は10μg)を、11価の肺炎双球菌の莢膜多糖(血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23F)とPDとの複合体(用量あたり各複合体中の多糖は1μg)の溶液中に即時に(使用する日に)溶解した。肺炎双球菌ワクチンは、前もって0.5mgのAl3+(AlPO4)に吸着させておいた。
【0071】
実施例5:実施例4のワクチンに対する臨床試験
実施例4のワクチン及び対照ワクチンをドイツ人の乳児に3回に分けて(生後3、4及び5ヶ月のとき)投与した。
【0072】
得られた免疫反応の結果(最後の初回投与の1ヶ月後に測定)は、以下の通りである。
【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
約6μg/mlを同様のスケジュールで投与した後、Hiberix(吸着されていないHib-TT複合体)はGMCを有する。
【0077】
ELISA抗体に関して、11Pn-PD/Hibワクチンを与えた乳児の免疫反応は、血清型1、3及び9Vを除く全ての血清型の11Pn-PDワクチンを与えた乳児で観察されたものと似ており、血清型1、3及び9Vでは、11pN-PD/Hibワクチンについて相乗平均濃度が低くなる傾向が観察された。しかしこれらの差は、95%信頼区間の重複により示されるように、重大なものではない。
【0078】
11Pn-PD/Hibワクチンは、11種の血清型全てに対する機能的なオプソニン食作用性抗体を誘導した。
【0079】
Hibワクチンを肺炎球菌複合体ワクチンと組み合せ
ても、肺炎球菌免疫反応を大きく干渉することはなく、驚くべきことに、登録されたワクチンであるInfanrix-HeXaおよびHiberixの両方と比較して抗PRP反応を強化した。
【0080】
実施例6: DTPwHepBワクチン中の低用量のHibの効果についての臨床試験
SB Biologicals DTPwHepB(Tritanrix(商品名)-HB)ワクチン中の様々な用量のHib-TT複合体ワクチンの免疫原性を評価するための確率化検定を、健康な乳児への初回ワクチン接種(生後6、10及び14週目の時)として行った。
【0081】
各グループ136人として4つのグループの544人の被験者に、以下のワクチンを投与した:グループ1:全用量のHib-TTと即時に混合したDTPw-HepB(PRP 10μg;TT 10〜20μg;ラクトース12.6μg;アルミニウム[塩]0.15mg);グループ2:1/2用量のHib-TTと即時に混合したDTPw-HepB(PRP 5μg;TT10〜20μg;ラクトース 10μg;アルミニウム[塩]0.0755mg);グループ3:1/4用量のHib-TTと即時に混合したDTPw-HepB(PRP 2.5μg;TT5〜10μg;ラクトース 10μg;アルミニウム[塩]0.036mg);グループ4:全用量のHib-TTとDTPw-HepBを同時に(異なる肢に)投与。
【0082】
3回目の投与から1ヶ月後の抗-PRP抗体の相乗平均力価(GMT)は以下の通りである:
【表12】


驚いたことに、低用量製剤が最も高いGMT値を有する。この効果は、Hib-TTワ
クチンが吸着されていない場合はさらに大きいに違いない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質とインフルエンザ菌B型の莢膜多糖との複合体を含む多価免疫原性組成物であって、細菌による感染症に対する防御を宿主に付与することが可能な、該細菌に由来する2種以上の他の細菌性多糖をさらに含むものであり、該インフルエンザ菌B型の莢膜多糖の複合体はアルミニウムアジュバント塩に吸着されていないものである、上記多価免疫原性組成物。
【請求項2】
7種より多い他の細菌性多糖を含むものである、請求項1記載の多価免疫原性組成物。
【請求項3】
他の細菌性多糖が肺炎球菌の莢膜多糖である、請求項2記載の多価免疫原性組成物。
【請求項4】
組成物中の多糖のいずれもがアルミニウムアジュバント塩に吸着されていないものであ
る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項5】
他の細菌性多糖が以下からなる群より選択されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物:髄膜炎菌血清群Aの莢膜多糖、髄膜炎菌血清群Cの莢膜多糖、髄膜炎菌血清群Yの莢膜多糖、髄膜炎菌血清群Wの莢膜多糖、肺炎球菌血清型1の莢膜多糖、肺炎球菌血清型2の莢膜多糖、肺炎球菌血清型3の莢膜多糖、肺炎球菌血清型4の膜多糖、肺炎球菌血清型5の莢膜多糖、肺炎球菌血清型6Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型6Bの莢膜多糖、肺炎球菌血清型7Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型8の莢膜多糖、肺炎球菌血清型9Nの莢膜多糖、肺炎球菌血清型9Vの莢膜多糖、肺炎球菌血清型10Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型11Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型12Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型14の莢膜多糖、肺炎球菌血清型15Bの莢膜多糖、肺炎球菌血清型17Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型18Cの莢膜多糖、肺炎球菌血清型19Aの莢膜多糖、肺炎球菌血清型19Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型20の莢膜多糖、肺炎球菌血清型22Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型23Fの莢膜多糖、肺炎球菌血清型33Fの莢膜多糖、B群連鎖球菌群Iの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IIの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IIIの莢膜多糖、B群連鎖球菌群IVの莢膜多糖、B群連鎖球菌群Vの莢膜多糖、黄色ブドウ球菌5型の莢膜多糖、黄色ブドウ球菌8型の莢膜多糖、チフス菌由来のVi多糖、髄膜炎菌LPS、M.カタル球菌LPS、およびインフルエンザ菌LPS。
【請求項6】
他の細菌性多糖が担体タンパク質と複合体化されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項7】
使用する担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、組換えジフテリアトキシン、髄膜炎菌由来のOMPC、肺炎球菌由来のニューモリシンおよびインフルエンザ菌由来のプロテインDを含む群より選択されるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項8】
インフルエンザ菌B型の莢膜多糖および他の多糖が同じ担体と複合体化されていないものである、請求項6または7記載の多価免疫原性組成物。
【請求項9】
インフルエンザ菌B型の莢膜多糖および他の多糖の全てがCRM197と複合体化されているわけではない、請求項8記載の多価免疫原性組成物。
【請求項10】
インフルエンザ菌の感染により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物の使用。
【請求項11】
インフルエンザ菌により引き起こされる疾患に対する免疫をヒト宿主に付与する方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物の免疫防御量を該宿主に投与することを含むものである、上記方法。
【請求項12】
百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌及び髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対する防御を宿主に付与するための多価免疫原性組成物であって、
a)死菌全細胞百日咳菌、または2種以上の無細胞百日咳成分のいずれか、
b)破傷風トキソイド、
c)ジフテリアトキソイド、
d)B型肝炎表面抗原、
e)担体タンパク質とインフルエンザ菌B型の莢膜多糖との複合体、ならびに
f)担体タンパク質と髄膜炎菌A型および髄膜炎菌C型からなる群より選択される細菌の莢膜多糖との複合体の1種以上の複合体、
を含むものである、上記多価免疫原性組成物。
【請求項13】
担体タンパク質と髄膜炎菌Y型および髄膜炎菌W型からなる群より選択される細菌の莢膜多糖との複合体の1種以上の複合体をさらに含むものである、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
死菌弱毒化A型肝炎ウイルスをさらに含むものである、請求項12または13記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
不活化ポリオウイルスをさらに含むものである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
使用する担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、組換えジフテリアトキシン、髄膜炎菌由来のOMPC、及びインフルエンザ菌由来のプロテインDからなる群より選択されるものである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化された請求項12〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物であって、該組成物の個々の成分は、該組成物の他の個々の成分により該個々の成分の免疫原性が損なわれないように製剤化される、上記免疫原性組成物。
【請求項18】
宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化された請求項12〜16のいずれか1項に記載の免疫原性組成物であって、各抗原性成分ごとの血清防御がヒト被験者の許容割合(%)の基準を超える抗体力価を付与するものである、上記免疫原性組成物。
【請求項19】
さらにアジュバントを含むものである請求項12〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
アジュバントがアルミニウム塩である請求項19記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
医薬において使用するための請求項1〜9および12〜20のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物。
【請求項22】
百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌および髄膜炎菌により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬の製造における、請求項12〜20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項23】
百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌および髄膜炎菌により引き起こされる疾患に対する免疫をヒト宿主に付与する方法であって、請求項12〜20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の免疫防御量を該宿主に投与することを含むものである上記方法。
【請求項24】
請求項1〜9および12〜20のいずれか1項に記載の多価免疫原性組成物の製造方法であって、個々の成分を一緒に混合するステップを含むものである上記方法。
【請求項25】
死滅全細胞百日咳菌、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、および担体タンパク質とインフルエンザ菌B型の莢膜多糖との複合体を含み、0.5mL用量のバルクワクチン当たり複合体の量が1〜8μgであり、該複合体の免疫原性が、より多量の複合体を含む組成物と同等またはそれよりも改善されているものである、多価免疫原性組成物。
【請求項26】
使用する担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197、髄膜炎菌由来のOMPC、およびインフルエンザ菌由来のプロテインDからなる群より選択されるものである、請求項25記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
0.5mL用量のバルクワクチン当たりの複合体の量が3〜6μgである、請求項25または26記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
0.5mL用量のバルクワクチン当たりの複合体の量が5μgである、請求項25または26記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
担体タンパク質とインフルエンザ菌B型の莢膜多糖との複合体がアルミニウムアジュバント塩に吸着されていないものである、請求項25〜28のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−163453(P2010−163453A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57779(P2010−57779)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2002−505030(P2002−505030)の分割
【原出願日】平成13年6月27日(2001.6.27)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】