説明

ワーク搬送装置

【課題】搬送経路に沿って移動する台車を用いたワークの搬送装置において、台車の搬出ステージから搬入ステージへの帰還路の構成を簡単かつコンパクトなものとする。
【解決手段】2台の台車30にワークをセットした状態で、スラットコンベア10に牽引されて、作業ラインの搬送終端位置でワーク1が取り出された後、搬出ステージに移行した台車30を搬入ステージに帰還させるために、作業ラインの直下位置には、帰還路41を設けた地下ピット40形成され、搬出ステージの位置では1台の台車30が載置される支持台が配置され、この支持台は90度往復回転する回転テーブルに装着され、この回転テーブルはリフタにより台車30を載置した支持台は作業エリア2の床面2aの高さと概略一致する高さの上昇位置と、台車30の帰還路となる高さ位置との間を昇降動作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の機械装置等からなるワークを搬送し、その間にワークに部品の組み付け等といった必要な作業を行う生産ラインに装備されるワーク搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の車両等からなるワークの組み立て作業を行うための生産ラインでは、ワークを搬送する間にワークに部品の組み付けや、その他の作業が行われる。このために、作業エリアには搬送手段を備えたワーク搬送装置が装備される。ここで、搬送手段は、ベルト式,チェーン式,ローラ式等のコンベアが用いられる。各種のコンベアのうち、板状部材からなるスラット板を隙間なく並設したスラットコンベアを搬送手段とし、このスラットコンベアにワークを載置する台車を連結させるように装着して、このスラットコンベアにより台車を搬送経路に沿って搬送させる方式は、その搬送面を作業エリアの床面と実質的に同じ位置とすることができ、また台車によってワークを床面より高い位置に配置できる等、部品の組み付け等の作業を行う上で作業性が良好となるといった利点があるので、従来から広く用いられている。
【0003】
大型で、重量物をワークとする生産ラインにおいては、その搬送経路における搬送始端位置と搬送終端位置とにおいて、クレーンやハンガ等といったハンドリング手段が設置され、これらのハンドリング手段によってワークを搬送経路に搬入したり、搬送経路から搬出したりされる。前述したように、ワークは台車に設置されて搬送されることから、搬出ステージに至り、ワークが取り出された後には、台車を搬送終端位置から搬送始端位置に帰還させなければならない。
【0004】
スラットコンベアは駆動側及び従動側からなる一対のスプロケット間に巻回されて無端状となっているので、搬送終端位置まで移動した台車をこのスラットコンベアに係合させたままで移動させることによって、搬入ステージに帰還させることができる。例えば、特許文献1には、連結杆で連結した2台の台車で1個のワークを搬送するようになし、この連結した台車をスラットコンベアに対してマグネットで吸着させることによって、スラットコンベアにより搬送するようになし、ワークの搬出ステージでワークを移載した後の台車をマグネットで吸着させたままの状態で反転させて、天地を逆にした状態で、搬入ステージまで移送する構成としたものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−37437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1の構成では、台車を無理なく円滑に反転させるためには、反転時の回転半径を大きくする必要があり、スラットコンベアが巻回されている駆動側及び従動側の各スプロケットは直径の大きいものを用いなければならない。このために、スラットコンベアが大型化することになり、広い設置スペースを必要とする。前述したように、部品の組み付け等の作業性の点から、スラットコンベアにおける搬送面を作業エリアの床面と同じ高さ位置に配置しようとすると、このスラットコンベアの帰還経路は地下に配設しなければならず、このためにスラットコンベアに係合した台車の帰還経路を構成する地下のピットは深くて広いものが要求され、搬送装置を含む設備全体が極めて大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、搬送経路に沿って移動する台車を用いたワークの搬送装置において、台車の搬出ステージから搬入ステージへの帰還路の構成を簡単かつコンパクトなものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明は、搬送経路に沿ってワークを搬送する間に、このワークに対して必要な作業を行うものであって、前記搬送経路に沿って複数台の台車を配列し、これらの台車に前記ワークを設置して、搬送手段により牽引するものであり、前記各台車は前記搬送経路での進行方向の前後方向の寸法より左右方向の寸法の方が大きいもので構成され、前記搬送経路には、前記台車を搬送始端位置に搬入する搬入ステージ及び搬送終端位置から搬出される搬出ステージが設けられ、前記搬送経路の下部位置には、前記台車を前記搬出ステージから前記搬入ステージに帰還させるための帰還路を設け、前記搬入ステージ及び搬出ステージには、それぞれ1台の台車を前記搬送経路への接続位置と前記帰還路への接続位置との間に昇降されるリフタを設け、前記リフタは、前記台車が設置されて、90度水平方向に回転させる回転テーブルを備える構成としたことをその特徴とするものである。
【0008】
搬送経路において、台車を牽引する搬送手段としては、ベルト,チェーン,ローラ等を有するコンベアとするのが構成の簡略化の点で望ましく、特にワークに対する作業を行うことから、床面を平坦化させて、隙間等をなくすために、スラットコンベアにより台車を牽引させるように構成するのが最も好ましい。台車はワークを安定的に保持しなければならない。ワークが大型である場合には、その分だけ大きな台車が必要になる。ただし、1個のワークを搬送するために、複数台の台車を用いることから、台車における搬送経路における進行方向の前後方向の寸法は左右方向の寸法より短くしても、ワークを安定的に搬送することができる。また、ワークが大型であるだけでなく、重量物でもある場合には、搬送経路において、スラットコンベアに作用する台車及びワークの荷重を最小限に抑制するために、台車に車輪を設けるようにするが、搬送経路には車輪が転動するレールを設けることができる。これによって、スラットコンベアを構成するスラット板には大きな負荷が作用しないように保護される。
【0009】
搬送経路におけるワークの搬送面を作業エリアの床面とほぼ同じ高さ位置に設けると、その下部位置に設けられる帰還路は地下ピットとして構成することになる。前述したように、台車における搬送経路における進行方向の前後方向の寸法を左右方向の寸法より短くし、台車の帰還時には横向きとすることで、帰還路の通路幅を狭くすることができる。リフタに設けた回転テーブルにより台車を水平方向に90度回転させるが、この台車の回転動作は、リフタにより昇降動作を行っている間若しくは昇降動作の開始前または終了後に行われる。このように、コンベアが反転する前の段階で台車を切り離すことから、コンベアが巻回されているスプロケットの直径を短縮でき、その結果地下ピットの深さも浅くすることができる。搬送経路にレールを設けて、台車及びワークの荷重をこのレールに受承させる場合には、これらレールは基礎となる構造部の上に配置することになるが、地下ピットを構成する左右の側壁を構造部とするか、または別途支柱を設ける構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、台車の搬出ステージから搬入ステージへの帰還路の構成を簡単かつコンパクトなものとすることができ、ワークの搬送面を作業エリアの床面とほぼ一致させたときに形成される地下ピットの幅及び深さを最小限なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1及び図2において、ワーク搬送装置により搬送されるワーク1としては、大型の建設機械の上部構造体とする。なお、ワークはこれに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0012】
ワーク搬送装置は、ワーク1とし、このワーク1の組み立てラインを構成する作業エリア2に装備される。図1において、3は搬入ステージ、4は作業ライン、5は搬出ステージである。ワーク1の搬送装置は、搬送経路を構成し、搬送手段として機能するスラットコンベア10及びレール20と、複数の台車30とを有するものであり、各台車30は作業ライン4に配設される。作業ライン4におけるスラットコンベア10の搬送始端位置には搬入ステージ3が接続されている。そして、この搬入ステージ3には1台の台車30が待機できるようになっており、この搬入ステージ3から所定のタイミングで台車30が作業ライン4に送り込まれる。
【0013】
本実施の形態では、1個のワーク1を搬送するために、2台の台車30上にワーク1が搬入されて、スラットコンベア10により矢印S方向に搬送されることになる。作業ライン4の搬送終端位置には搬出ステージ5が接続されている。従って、ワーク1は搬送始端位置で台車30にセットされ、作業ライン4に沿って進行する間に部品の組み付け等の所定の作業が行われ、搬送終端位置に至り作業が終了すると、このワーク1が作業ライン4から取り出され、台車30は搬出ステージ5に送り込まれる。そして、搬出ステージ5に搬出された台車30は搬入ステージ3に帰還させることになる。
【0014】
スラットコンベア10は、図3に示したように、多数のスラット板11をほぼ隙間なく無端状に配列したものであり、スラット板11は金属薄板やFRP(Fiber Reinforced Plastics)その他の樹脂板等から構成され、図4に示したように、チェーン12によって順次連結されている。このようにして形成したスラット板11の連結体は、チェーン12がスプロケット13に巻回して設けられており、このスプロケット13を回転させることによって、スラットコンベア10が駆動されることになる。このスラットコンベア10はワーク1の搬送経路に沿って左右一対配設されている。そして、スラットコンベア10の搬送面は作業エリア2の床面2aとほぼ同一平面となっている。これによって、作業エリア2は、その全体が凹凸や段差,隙間等がないほぼフラットな平面を構成している。また、レール20は、左右のスラットコンベア10間における内側の位置に2本配置されて、ワーク1の荷重を支承している。
【0015】
以上のように、スラットコンベア10におけるワーク1の搬送面が作業エリア2の床面2aとほぼ一致していることから、スプロケット13等は、この床面2aより下部位置に配設される。このために、図4から明らかなように、スラットコンベア10における搬送経路からなる作業ライン4の下部位置には、後述する地下ピット40が形成されており、スプロケット13等はこの地下ピット40に設けられている。そして、作業エリア2の床面2aにおいて、スラットコンベア10の配設位置以外の部位には、床板14が敷設されている。
【0016】
図5及び図6に示したように、台車30は台板31を有し、この台板31には複数本(本実施の形態においては2本)の柱32が立設されており、これら柱32の上面にはワーク載置部33が固定して設けられている。一方、台板31には前後及び左右の4箇所に車輪34が設けられており、これらの車輪34は各々2本設けたレール20の転動面20aにそれぞれ2個ずつ設置されており、これら転動面20a上を転動することになる。
【0017】
台車30の台板31は、この台車30の各車輪34を2本のレール20に設置したときに、スラットコンベア10の途中位置までの上部を覆う寸法を有している。そして、台板31の左右両側部にはピン挿通孔35が設けられている。また、スラットコンベア10を構成する各スラット板11には、その走行方向の概略中央部の位置に係合孔15が穿設されている。連結ピン36を台車30の台板31に設けた各ピン挿通孔35の上部側から挿通させるようになっており、この連結ピン36はスラット板11に設けた係合孔15に係入できるようになっている。これによって、台車30はスラットコンベア10により牽引されて、その搬送経路に沿って移動できるようになっている。
【0018】
係合孔15は、図3から明らかなように、各スラット板11に形成されており、いずれかのスラット板11に形成した係合孔15には、台車30に装着した連結ピン36が挿入できるようになっている。これによって、台車30はスラットコンベア10に対して実質的に任意の位置で牽引させることができることになる。ただし、係合孔15は必ずしも各スラット板11に形成する必要はなく、例えば1枚置き等間欠的に形成することもできる。また、図5から明らかなように、台板31には、ピン挿通孔35に隣接する位置に連結ピン36が台板31の下面から突出しないように保持するピン保持孔37が設けられている。従って、台車30を自由状態とするときには、連結ピン36は、台板31のピン保持孔37に挿嵌させる。ピン挿通孔35内に連結ピン36が挿入させると、この連結ピン36は台板31の下端部から下方に突出して、スラットコンベア10におけるスラット板11に設けた係合孔15に挿入されることになる。
【0019】
連結ピン36の上端部には、作業者の手でピン挿通孔35に挿脱できるようにするために、指掛け環36aが設けられており、この指掛け環36aはピン挿通孔35の孔径より大きい寸法を有するものである。これによって、ピン挿通孔35に連結ピン36を挿通させると、指掛け環36aがストッパとなり、連結ピン36が吊下状態に保持される。さらに、スラット板11に設けた係合孔15には、その裏面側、つまり搬送面とは反対側の面に向けて所定長さを有するスリーブ15aが取り付けられている。従って、連結ピン36は、ピン挿通孔35に挿通させたときに、係合孔15からスリーブ15aに至る長さを有している。
【0020】
ここで、ワーク1は、建設機械の上部構造体というように、大型で重量物のものであって、1個のワーク1を複数台の台車30、本実施の形態では2台の台車30により支持するように構成している。ワーク1を安定的に支持するために、台車30におけるワーク載置部33は、ワーク1の幅方向(搬送方向と直交する方向)のほぼ全長に及ぶ寸法を有している。また、ワーク1は前後2箇所で支持されることから、ワーク載置部33を細い幅としても、ワーク1の安定性を損なうことはない。このために、図6に示したように、台車30のスラットコンベア10による搬送方向に向けたときの幅寸法をAとし、これと直交する方向の寸法をBとしたときに、寸法Bを寸法Aより小さくしている。特に、後述する台車30の帰還時における帰還路41の幅寸法を最小限にするために、ワーク1の安定性を確保することを条件として、寸法Bを最小のものとする。
【0021】
作業エリア2では、ワーク1に装着される各種の部品を組み付けたり、ドア,建屋のカバー等を取り付けたりする等の作業が行われる。このために、作業ライン4に装備したスラットコンベア10は極めて微小な速度で駆動される。搬入ステージ3からは、まず1台の台車30が作業ライン4に送り込まれる。この台車30は人手により、若しくはシリンダ等の押動手段により作業ライン4に送り込まれ、その車輪34をレール20上に位置させるが、この状態では台車30は動かない。スラットコンベア10のいずれかのスラット板11に設けた係合孔15が台車30の台板31のピン挿通孔35と一致する位置までスラットコンベア10が移送されると、若しくは手押しによって位置を調整した状態で、連結ピン35を台板31の左右に設けたピン挿通孔35に差し込んで、その下端部を係合孔15に係入させる。これによって、台車30はスラットコンベア10により駆動される状態となる。また、スラットコンベア10により駆動されている台車30が所定の位置まで進行すると、次の台車30を搬入ステージ3から作業ライン4に送り込まれることになる。そして、前述と同様にして、この台車30を連結ピン36によってスラットコンベア10のスラット板11と係合させる。
【0022】
以上の操作によって、前後に所定の間隔を置いて2台の台車30が作業ライン4に搬入され、スラットコンベア10により搬送される。そして、作業ライン4の搬送始端側の所定の位置において、クレーン乃至ハンガ等からなるハンドリング手段(図示せず)によってワーク1を作業ライン4に搬入する。即ち、前後2台の台車30,30のワーク載置部33,33上にわたすように、ワーク1を安定的にセットする。ここで、2台の台車30,30間の間隔はできるだけ広くする。これによって、ワーク1の下部位置が大きく開放されることになり、このワーク1の下面に対する作業性を良好にすることができる。
【0023】
ワーク1は作業ライン4に沿って搬送されるが、台車30は、その車輪34がレール20上に位置しているから、このワーク1の重力は実質的に台車30の車輪34を介してレール20が受承することになる。台車30は連結ピン36によりスラットコンベア10と連結されているが、この連結ピン36はピン挿通孔35及び係合孔15に差し込まれているだけで、台車30はこれ以外ではスラットコンベア10とに対して非接触状態に保たれているので、スラットコンベア10にはワーク1の荷重は殆ど作用しない。このように、スラットコンベア10はワーク1の重力を受承するものではないので、スラットコンベア10を構成するスラット板11を金属薄板や樹脂板等で形成しても、変形等を起こすことはない。
【0024】
スラットコンベア10により台車30が牽引されて、台車30に載置したワーク1が作業ライン4の始端位置から終端位置に向けて進行し、この間に所定の順序に従って順次部品の組み付け等の作業が行われる。ここで、作業ライン4においては、作業エリア2の床面2aが平坦であり、スラットコンベア10を構成するスラット板11の表面及びレール20の転動面20aはこの床面2aと実質的に同じ平面となっているので、部品運搬用手押し車やキャスタ付き作業テーブル等を搬送するのに都合が良く、工具や部品の収納箱等を作業位置の直近にまで運び込むことができるので、効率的な作業が可能になる。また、台車30のワーク載置部33は柱32により台板31に支持されて、ワーク1は高所に位置することになり、しかも前後の台車30,30間にはスペースがあることから、作業者はワーク1の下部に容易に潜り込むことができ、部品の装着等の作業を円滑に行うことができる。
【0025】
車輪34がレール20上を転動することにより荷重を支承しながら、スラットコンベア10により牽引されて、作業ライン4に沿って進行する間に、ワーク1に対して所定の順序に応じて部品の組み付け等が行われる。そして、この作業ライン4の終端位置まで到達すると、ワーク1は図示しないクレーン乃至ハンガ等からなるワーク移載手段によって作業ライン4から取り出されることになる。その後に、連結ピン36をスラット板11の係合孔15から抜き出して、台板31のピン挿通孔35からピン保持孔37に移行させることによって、台車30とスラットコンベア10との間の連結が遮断され、台車30を手動操作により動かすことができるようになり、またシリンダ等の駆動手段により駆動することもできる。これによって、台車30は作業ライン4から搬出ステージ5に移行することになる。
【0026】
搬出ステージ5に移行した台車30は搬入ステージ3に帰還させるようにしている。作業ライン4の直下位置に地下ピット40を設けたのはこのためである。地下ピット40はスラットコンベア10を設けた作業ライン4の位置から、搬入ステージ3及び搬出ステージ5の位置に至る長さを有するものである。図4には、地下ピット40のうちの作業ライン4の位置の構成が示されており、この部位では地下ピット40は台車30の帰還路41を構成している。また、図7に搬出ステージ5の位置の地下ピット40の構成を示す。なお、地下ピット40における搬入ステージ3の位置は、搬出ステージ5と実質的に同じ構成となっているので、その図示は省略する。これら搬出ステージ5及び搬入ステージ3の位置での地下ピット40は、台車30を作業ライン4に接続される高さ位置と、帰還路41に接続される高さ位置との間に昇降駆動する移行部42を構成している。
【0027】
図7に示した搬出ステージ5(搬入ステージ3も同様)の移行部42には、1台の台車30が載置される支持台43が設けられており、この支持台43は回転テーブル44に装着されている。回転テーブル44はロータリアクチュエータ(図示せず)が装着されており、これによって、回転テーブル44は水平状態で90度往復回転できるようになっている。そして、回転テーブル44はリフタ45に連結して設けられており、このリフタ43は、台車30を載置した支持台43を作業エリア2の床面2aの高さと概略一致する高さの上昇位置(図7に二点鎖線で示した位置)と、台車30の帰還路となる高さ位置(図7に実線で示した位置)との間を昇降動作させるためのものである。
【0028】
図4に示した帰還路41には、搬出ステージ5側から搬入ステージ3側に台車30を帰還させるように移動させる搬送手段としての帰還用コンベア46が設けられている。この帰還用コンベア46は地下ピット40において、帰還路41の左右両側の構造部47,47の内側に配設されている。そして、これら構造部47の上部位置にはレール20が取り付けられており、従ってワーク1を支持する台車30を搬送経路に沿って搬送する際に、これらワーク1及び台車30の荷重はレール20を介して構造部47に伝達され、最終的にはこの構造部47が立設されている基礎21に受承されることになる。さらに、スプロケット13を含むスラットコンベア10における搬送面より下方の部位は、地下ピット40を構成する構造部47,47の外側に形成したコンベア収容部48に配置されている。
【0029】
このように構成することによって、ワーク1を載置した台車30は、スラットコンベア10に牽引されて、作業ライン4上を搬入ステージ3側から搬出ステージ5に向けて搬送される間は、台車30は床面2aと同じ高さ位置で搬送され、作業ライン4の搬送終端位置まで移動して、ワーク1が台車30から取り出される。その後に、台車30の連結ピン36はスラット板11に設けた係合孔15から離脱させて、台車30のスラットコンベア10による牽引状態を解除して、搬出ステージ5に移行させられる。1つのワーク1を搬送するのに2台の台車30を使用するが、スラットコンベア10による台車30の搬送速度は極めて微小な速度であるので、前方側の台車30から順に搬出ステージ5に送り込むようになし、1台の台車30が帰還した後に、もう一つの台車30を帰還させるように操作できる。
【0030】
ここで、搬出ステージ5において、リフタ45の作用により支持台43が上昇位置に配置されており、台車30はこの支持台43上に配置されることになる。そこで、リフタ45を下降させるが、この間に回転テーブル44を作動させて、支持台43を水平方向に90度回転させる。従って、支持台43が帰還路41の高さ位置まで下降したときには、支持台43に載置されている台車30は横向きとなるように姿勢が転換することになる。そして、リフタ45により支持台43が最下降位置に配置された後に、適宜の移載機構によって、台車30を支持台43に設置した状態から、帰還用コンベア46に移載させる。そして、この帰還用コンベア46を駆動することによって、台車30を作業ライン4による移動方向とは逆方向に進行させて、搬入ステージ3に帰還させる。
【0031】
このようにして搬入ステージ3側に帰還した台車30は、この搬入ステージ3に設けたリフタ45における支持台43上に移行することになり、この状態でリフタ45を上昇させ、かつ回転テーブル44を90度回転させることにより、台車30はワーク載置部33の長手方向がスラットコンベア10の搬送方向と直交する方向に向けられる。その後に、この台車30を支持台43からスラットコンベア10に移載させる。次いで、もう1個の台車30を前述と同様にして搬入ステージ3からスラットコンベア10に移行させることによって、再び2台の台車30によってワーク1を支持して作業ライン4に送り込むことができる状態になる。
【0032】
ここで、台車30は、作業ライン4に沿ってワーク1の搬送方向に移動する際には、ワーク載置部33の長手方向を台車30の移動方向と直交する方向に配置しているので、ワーク1を安定的に支持させた状態で搬送することができ、このワーク1に対して行われる部品の組み付け等の作業を安全に、しかも円滑に行うことができる。そして、台車30を帰還させる際には、この台車30を概略90度回転させて、短い寸法B側を帰還路41による搬送方向に向けるようにしているので、帰還路41の幅を狭くすることができる。しかも、地下ピット40における高さ方向において、スラットコンベア10が収容されているコンベア収容部48の位置と、台車30の帰還路とを部分的にオーバーラップさせることができるので、帰還路41の深さも浅くすることができ、全体として、地下ピット40をコンパクト化することができる。従って、構造部47及び基礎21を簡素化しても、重量物であるワーク1の荷重を有効に支承させることができ、全体としてのラインを構成する設備を安価に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ワーク搬送装置が装備されている作業エリアを示す構成説明図である。
【図2】ワーク搬送装置によってワークを搬送している状態を示す側面図である。
【図3】ワーク搬送装置の要部外観図である。
【図4】図1のX−X位置における断面図である。
【図5】台車の側面図である。
【図6】台車の平面図である。
【図7】図1のY−Y位置における断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ワーク
2 作業エリア 2a 床面
3 搬入ステージ 4 作業ライン
5 搬出ステージ 10 スラットコンベア
11 スラット板 15 係合孔
15a スリーブ 20 レール
30 台車 31 台板
33 ワーク載置部 34 車輪
35 ピン挿通孔 36 連結ピン
40 地下ピット 41 帰還路
42 移行部 43 支持台
44 回転テーブル 45 リフタ
46 帰還用コンベア 47 構造部
48 コンベア収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿ってワークを搬送する間に、このワークに対して必要な作業を行うものであって、
前記搬送経路に沿って複数台の台車を配列し、これらの台車に前記ワークを設置して、搬送手段により牽引するものであり、
前記各台車は前記搬送経路での進行方向の前後方向の寸法より左右方向の寸法の方が大きいもので構成され、
前記搬送経路には、前記台車を搬送始端位置に搬入する搬入ステージ及び搬送終端位置から搬出される搬出ステージが設けられ、
前記搬送経路の下部位置には、前記台車を前記搬出ステージから前記搬入ステージに帰還させるための帰還路を設け、
前記搬入ステージ及び搬出ステージには、それぞれ1台の台車を前記搬送経路への接続位置と前記帰還路への接続位置との間に昇降されるリフタを設け、
前記リフタは、前記台車が設置されて、90度水平方向に回転させる回転テーブルを備える
構成としたことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記搬送経路にスラットコンベアで構成し、前記台車はこのスラットコンベアにより牽引されるものであり、前記ワークは少なくとも前後2台の台車により搬送されるものであることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記台車は複数の車輪を有するものであり、また前記搬送経路と平行にレールを配設し、この搬送経路に沿って搬送される際には、前記台車の車輪は前記レール上を転動するものであり、また前記帰還路では前記台車は搬送手段によって移送されるものであることを特徴とする請求項1記載のワーク搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−223741(P2007−223741A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47617(P2006−47617)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】