説明

三次元モデルの作成方法

【課題】
実際の地形および地物の形状を精度良く再現する三次元モデルの作成方法を提供する。
【解決手段】
本発明の三次元モデルの作成方法は、デジタルカメラ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地上の航空写真を撮影する工程と、レーザスキャナ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地物1および地形2を測量する工程と、レーザスキャナ、GPS、IMU、デジタルカメラおよびオドメータを搭載した車両により地物1および地形2を測量する工程と、地上型レーザスキャナにより地物1および地形2を測量する工程と、上記各測量の測量データを解析し、それぞれの三次元データを取得する工程と、各三次元データの合成及びメッシュ化を行う工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物および地形の三次元モデルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国や地方自治体において、ハザードマップを活用した防災への取り組みが盛んに行われている。ハザードマップとは、津波や河川氾濫等の自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図上に表したものであり、その被害の予測は、主に数値シミュレーションにより行われる。そして、数値シミュレーションでは、境界条件の一つとして、メッシュ化した地形の三次元モデルまたはこれに構造物等の地物のデータを加えた三次元モデルが用いられる(以下、これらを三次元モデルとする)。
三次元モデルの精度は、数値シミュレーションの結果に大きく影響する。そのため数値シミュレーションでは、実際の地物や地形の形状を精度よく再現した三次元モデルを用いることが望ましい。
【0003】
しかしながら、従来の数値シミュレーションに用いられる三次元モデルは、図4(a)に示すように構造物が考慮されていないものや、図4(b)に示すように構造物を考慮した場合であっても、地形の標高をフラットとしているものなど、図4(c)に示した実際の地形や構造物の形状を十分に反映しているものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、実際の地物および地形の形状を精度良く再現する三次元モデルの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の三次元モデルの作成方法は、デジタルカメラ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地上の航空写真を撮影する工程と、レーザスキャナ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地物および地形を測量する工程と、レーザスキャナ、GPS、IMU、デジタルカメラおよびオドメータを搭載した車両により地物および地形を測量する工程と、地上型レーザスキャナにより地物および地形を測量する工程と、上記各測量の測量データを解析し、それぞれの三次元データを取得する工程と、各三次元データの合成及びメッシュ化を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、実際の地物および地形の形状を精度良く再現した三次元モデルを作成することができる。そのため、本発明の三次元モデルを自然災害等の数値シミュレーションに用いると、数値シミュレーションの精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の三次元モデルの作成方法を示すフローチャートである。
【図2】(a)(b)はそれぞれ地物および地形の三次元データの概要を示す図である。
【図3】三次元モデルの一例を可視化した斜視図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ従来の三次元モデルの概要を示す断面図であり、(c)は実際の地形および地物の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の三次元モデルの作成方法を示すフローチャートである。本発明の三次元モデルは、航空写真測量、航空レーザ測量、車載レーザ測量および地上レーザ測量の測量データに基づいて作成される。なお、以下の説明において、三次元データとは、測量対象の表層の直交座標データを意味し、三次元モデルとは、その三次元データをメッシュ化したものを意味する。
【0009】
航空写真測量は、測量対象範囲において、デジタルカメラを搭載した航空機またはヘリコプタ等の飛行体により、飛行しながら地上の航空写真(デジタル画像)を撮影するものである(S1)。ここで、飛行体は、GPS(全地球測位システム)およびIMU(慣性計測装置)を搭載しており(以下、GPS/IMUとする)、GPSにより飛行体の位置を計測し、IMUにより飛行体の姿勢を計測する。
航空写真データ、飛行体の位置データおよび姿勢データに対して、公知の解析を行うことにより、構造物等の地物1の三次元データが求められる(S2)。
航空写真測量によると、従来のフィルム画像を用いた航空測量に比べ、より精度の高い三次元データを作成することができる。
【0010】
航空レーザ測量は、測量対象範囲において、レーザスキャナを備えた飛行体を飛行させつつ地表にレーザを照射し、かつ、地表から反射したレーザを受光し、地表から反射したレーザとの時間差から航空機とレーザが反射した地表(対象地点)との距離を計測するものである(S3)。ここで、飛行体は、上記と同様にGPS/IMUを搭載しており、飛行体の位置および姿勢も計測する。
そして、測距データ、飛行体の位置データおよび姿勢データに対し、公知の解析を行うことにより、地物1および地形2の三次元データが得られ、さらにこの三次元データをフィルタ処理することにより、地物1のデータを取り除いた地形2の三次元データが得られる(S4)。
航空レーザ測量によると、広範囲における高精度の地形2の三次元データを効率よく取得できる。
なお、航空レーザ測量は、航空写真測量と別々に測量するものであってもよいが、同一条件による測量及びコストの観点から航空写真測量と同時に測量することが好ましい。
【0011】
上記航空写真測量および航空レーザ測量では測量することが困難な地物1および地形2については、車載レーザ測量を行う。
車載レーザ測量は、レーザスキャナ、GPS/IMU、デジタルカメラおよびオドメータを搭載した車両を移動させつつ、車両とレーザの反射地点(対象地点)との距離の計測および対象地点の撮影を行う(S5)。ここで、レーザスキャナ、GPS/IMUおよびこれらの計測データは、基本的には航空レーザ測量のものと同様である。またオドメータにより、車両移動量も計測する。
そして、測距データ、車両の位置データ、車両の姿勢データ、写真データおよび車両移動量データに対し、公知の解析を行うことにより地物1および地形2の三次元データが得られる(S6)。
車載レーザ測量によると、航空写真測量および航空レーザ測量ではデータを取得することが困難な場所や構造物の側面等において、詳細な三次元データを取得することができる。
【0012】
上記航空写真測量、航空レーザ測量および車載レーザ測量では測量することが困難な地物1および地形2については、地上レーザ測量を行う。
地上レーザ測量は、地上型レーザスキャナ装置を用い、当該装置とレーザの反射地点(対象地点)の距離を計測する(S7)。
そして、測距データに対し、公知の解析を行うことにより、地物1および地形2の三次元データが得られる(S8)。
地上レーザ測量によると、航空写真測量、航空レーザ測量および車載レーザ測量では測量が困難な場所や構造物の側面等において、詳細な三次元データを取得することができる。
【0013】
なお、各測量データの解析(S2,S4,S6,S8)は、測量データの取得後であれば何れの段階で行うものであってもよい。
【0014】
三次元モデルは、上記の航空写真測量による地物1の三次元データ、航空レーザ測量による地形2の三次元データ、車載レーザ測量による地物1および地形2の三次元データおよび地上レーザ測量による地物1および地形2の三次元データを合成およびメッシュ化することにより作成される(S9)。
なお、三次元データは、フィルタ処理を施すことにより、図2に示すような地物1のデータと地形2のデータとに分けておいてもよく、この場合、三次元モデルは、地物1のデータと地形2のデータをメッシュ化した後、それぞれのメッシュデータを合成して作成すればよい。
【0015】
三次元モデルの作成は、例えば、計測された各測量データを、解析モジュールを搭載したパーソナルコンピュータまたはワークステーション等(以下、PC等とする)に入力し、解析モジュールを実行して三次元データを出力する。さらに、その三次元データを、合成モジュールおよびメッシュ化モジュールを搭載したPC等に入力し、合成モジュールまたはおよびメッシュ化モジュールを実行して三次元モデルを出力する。なお、三次元データの合成およびメッシュ化の順序は問わない。
【0016】
このように作成した三次元モデルの一例を図3に示す。本発明により作成した三次元モデルは、津波、土砂災害、河川氾濫または風況等の数値シミュレーションの境界条件として活用したり、そのシミュレーション結果と組み合わせてハザードマップに活用したりすることができる。
【0017】
本発明により作成した三次元モデルは、実際の地物1および地形2の形状を精度よく再現している。そのため、これを用いて自然災害等の数値シミュレーションを行うと、数値シミュレーションの精度が向上する。さらに、その数値シミュレーション結果により、精度の高いハザードマップを提供することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 地物
2 地形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地上の航空写真を撮影する工程と、
レーザスキャナ、GPSおよびIMUを搭載した飛行体により地物および地形を測量する工程と、
レーザスキャナ、GPS、IMU、デジタルカメラおよびオドメータを搭載した車両により地物および地形を測量する工程と、
地上型レーザスキャナにより地物および地形を測量する工程と、
上記各測量の測量データを解析し、それぞれの三次元データを取得する工程と、
各三次元データの合成及びメッシュ化を行う工程と、
を含むことを特徴とする三次元モデルの作成方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96745(P2013−96745A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237404(P2011−237404)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(511262728)北陸航測株式会社 (1)
【Fターム(参考)】