説明

三環式ピラゾロピリジンキナーゼインヒビター

本発明は、PI3K、特にPI3Kγのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、これらの化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物、および種々の疾患、例えば、がんおよび自己免疫疾患の処置においてこれらの組成物を使用する方法を提供する。本発明により提供される化合物および組成物はまた、生物学的および病理学的現象におけるPI3Kの研究;そのようなキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;および新しいキナーゼインヒビターの比較評価のために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)のインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、および種々の障害の処置においてその組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
PI3Kは、イノシトール環の3’−OHにおける膜脂質ホスファチジルイノシトール(PI)のリン酸化を触媒し、PI3−リン酸[PI(3)P、PIP]、PI3,4−二リン酸[PI(3,4)P、PIP2]およびPI3,4,5−三リン酸[PI(3,4,5)P、PIP3]を生成する脂質キナーゼのファミリーである。PI(3,4)PおよびPI(3,4,5)Pは、種々の細胞内シグナリングタンパク質のための動員部位(recruitment site)として働き、次いでシグナリング複合体を形成し、細胞外シグナルを原形質膜の細胞質表面へと伝える。
【0003】
4つのクラスIPI3Kを含む8つの哺乳類のPI3Kがこれまでに同定されている。クラスIaは、PI3Kα、PI3KβおよびPI3Kδを含む。全てのクラスIa酵素は、SH2ドメイン含有p85アダプターサブユニットに関連する触媒性のサブユニット(p110α、p110βまたはp110δ)を含む異質二量体の複合体である。クラスIaPI3Kは、チロシンキナーゼシグナリングを介して活性化され、細胞の増殖および生存に関与する。PI3KαおよびPI3Kβはまた、多様なヒトのがんにおける腫瘍形成に関与している。従って、PI3KαおよびPI3Kβの薬理学的インヒビターは、種々のタイプのがんを処置するために有用である。
【0004】
PI3Kγは、クラスIbPI3Kの唯一のメンバーであって、触媒性のサブユニットp110γからなり、このサブユニットは、p101調節サブユニットに関連する。PI3Kγは、異質二量体Gタンパク質のβγサブユニットとの関連を介してGタンパク質共役受容体(GPCR)によって調節される。PI3Kγは、主に造血細胞および心筋細胞において発現され、炎症およびマスト細胞機能に関与する。従って、PI3Kγの薬理学的インヒビターは、多様な炎症性疾患、アレルギー、および心臓血管の疾患を処置するために有用である。
【0005】
多数のPI3Kインヒビターが開発されてきたが、種々の障害および疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん、アレルギー性疾患、喘息、および呼吸器疾患)を処置するためにPI3Kを阻害するための追加的な化合物に対する必要性が存在する。従って、PI3Kのインヒビターとして有用である追加的な化合物を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物がPI3K、特にPI3Kγのインヒビターとして有効であることが見出されている。従って、本発明は、一般式:
【0007】
【化1】

または、その薬学的に受容可能な塩、
を有する化合物を特徴づけ、
ここで、R、R、R、およびXのそれぞれは、本明細書中で定義される通りである。
【0008】
本発明はまた、式Iの化合物および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含む薬学的組成物を提供する。これらの化合物および薬学的組成物は、多様な障害(自己免疫疾患およびCNSの炎症性疾患が挙げられる)の重症度を処置または軽減するために有用である。
【0009】
本発明により提供される化合物および組成物はまた、生物学的および病理学的現象におけるPI3Kの研究;そのようなキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;および新しいキナーゼインヒビターの比較評価のために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(定義および一般用語)
本明細書中で用いられる場合、以下の定義は、そうでないと示されない限り適用される。本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS versionおよびthe Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.1994に従って同定される。さらに、有機化学の一般的な原則は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および「March’s Advanced Organic Chemistry」,5thEd.,Smith,M.B.and March,J.,eds.John Wiley & Sons,New York:2001に記載され、その内容全体が、本明細書中で参考として援用される。
【0011】
本明細書中に記載される場合、本発明の化合物は、必要に応じて1つまたはそれより多くの置換基(例えば、上で一般的に説明されるか、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるもの)で置換され得る。句「必要に応じて置換される」は、句「置換もしくは非置換の」と交換可能に使用されることが正しく認識される。一般的に、用語「置換される」は、用語「必要に応じて」が先行しようがしまいが、所定の構造における特定の置換基のラジカルでの1つまたはそれより多くの水素ラジカルの置き換えを指す。そうでないと示されない限り、必要に応じて置換される基は、その基の各置換可能な位置に置換基を有し得る。所定の構造における1つより多くの位置が、特定の群から選択される1つより多くの置換基で置換され得るとき、その置換基は、それぞれの位置において、同じかまたは異なり得る。
【0012】
本明細書中に記載される場合、用語「必要に応じて置換される」が列挙に先行するとき、該用語は、その列挙における全ての後述の置換可能な基を指す。例えば、Xがハロゲン;必要に応じて置換されるC1〜3アルキルまたはフェニルである場合;Xは必要に応じて置換されるアルキルか、または必要に応じて置換されるフェニルであり得る。同様に、用語「必要に応じて置換される」が列挙の後にくる場合、該用語はまた、そうでないと示されない限り、前述の列挙における全ての置換可能な基を指す。例えば、Xがハロゲン、C1〜3アルキル、またはフェニルであり、ここで、XがJによって必要に応じて置換される場合、従って、C1〜3アルキルおよびフェニルの両方は、Jによって必要に応じて置換され得る。当業者に明らかであるように、H、ハロゲン、NO、CN、NH、OH、またはOCFのような基は、置換可能な基ではないので含まれない。置換基ラジカルまたは構造が「必要に応じて置換される」として認識されないか、または定義されない場合、置換基ラジカルまたは構造は、非置換である。
【0013】
本発明により想像される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な、または化学的に実行可能な化合物の形成をもたらすものである。用語「安定な」は、本明細書中で用いられる場合、本明細書中で開示される1つまたはそれより多くの目的のためのそれらの生成、検出、および、好ましくは、それらの回収、精製および使用を可能にする条件に曝されるときに実質的に変更されない化合物を指す。いくつかの実施形態において、安定な化合物、または化学的に実行可能な化合物は、40℃またはそれより低い温度で保存されるとき、湿気または他の化学的反応性条件の非存在下で、少なくとも1週間、実質的に変更されないものである。
【0014】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書中で用いられる場合、完全に飽和しているか、または1つもしくはそれより多くの不飽和の単位を含む、直鎖(すなわち、非分枝である)、または、分枝の、置換もしくは非置換の炭化水素鎖を意味する。そうでないと特定されない限り、脂肪族基は1〜20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族基は1〜10個の炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪族基は1〜8個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態において、脂肪族基は1〜6個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基としては、直鎖もしくは分枝の、置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニル、およびsec−ブチルが挙げられる。用語「アルキル」および、接頭辞「アルク−(alk−)」は、本明細書中で用いられる場合、直鎖の飽和炭素鎖および分枝の飽和炭素鎖の両方を含む。用語「アルキレン」は、本明細書中で用いられる場合、飽和の二価の、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を表し、メチレン、エチレン、およびイソプロピレンなどにより例示される。用語「アルキリデン」は、本明細書中で用いられる場合、二価の直鎖アルキル連結基を表す。用語「アルケニル」は、本明細書中で用いられる場合、1つまたはそれより多くの炭素−炭素二重結合を含む、一価の、直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基を表す。用語「アルキニル」は、本明細書中で用いられる場合、1つまたはそれより多くの炭素−炭素三重結合を含む、一価の、直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基を表す。
【0015】
用語「脂環式」(または「炭素環」)は、完全に飽和しているか、または1つもしくはそれより多くの不飽和の単位を含むが、芳香族ではなく、残りの分子に対して、1つの結合点を有する、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を指し、ここで該二環式環系におけるあらゆる個々の環は3〜7個の環員を有する。適切な脂環式基としては、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例としては、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロヘプテニルが挙げられる。
【0016】
用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」、または「複素環式」は、本明細書中で用いられる場合、単環式、二環式、三環式の環系を指し、その系における少なくとも1つの環は1つまたはそれより多くのヘテロ原子を含み、このヘテロ原子は、同じか、もしくは異なり、この環系は完全に飽和しているか、または1つもしくはそれより多くの不飽和の単位を含むが、芳香族ではなく、残りの分子に対して、1つの結合点を有する。いくつかの実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」、または「複素環式」基は、3〜14個の環員を有し、ここで1つまたはそれより多くの環員は、酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されるヘテロ原子であり、その系におけるそれぞれの環は、3〜8個の環員を含む。
【0017】
複素環式環の例としては、以下の単環:2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル;および以下の二環:3−1H−ベンゾイミダゾール(benzimidazol)−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンゾイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオレン(benzothiolane)、ベンゾジチアン(benzodithiane)、および1,3−ジヒドロ−イミダゾ−ル−2−オンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「ヘテロ原子」は、1つもしくはそれより多くの酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素を意味し、窒素、硫黄、またはリンのあらゆる酸化形態;またはあらゆる塩基性の窒素の第四級化形態;または複素環式環の置換可能な窒素、例えば、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)N、(ピロリジニルにおけるような)NH、または(N−置換ピロリジニルにおけるような)NRを含む。
【0019】
用語「不飽和」は、本明細書中で用いられる場合、部分が1つまたはそれより多くの不飽和の単位を有することを意味する。
【0020】
用語「アルコキシ」または「チオアルキル」は、本明細書中で用いられる場合、以前に定義されたような、酸素(「アルコキシ」)、または硫黄(「チオアルキル」)原子を介して主要な炭素鎖に結合されるアルキル基を指す。
【0021】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、場合により、1つまたはそれより多くのハロゲン原子で置換され得る、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0022】
単独で使用されるか、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるような大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、全部で6〜14個の環員を有する単環式、二環式、または三環式の炭素環式環系を指し、ここで該環系は、残りの分子に対して、1つの結合点を有し、その系における少なくとも1つの環は、芳香族であって、その系におけるそれぞれの環は、3〜7個の環員を含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用され得る。アリール環の例としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセンが挙げられる。
【0023】
単独で使用されるか、「ヘテロアラルキル」、もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるような大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、全部で5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系を指し、ここで該環系は、残りの分子に対して、1つの結合点を有し、その系における少なくとも1つの環は、芳香族であって、その系における少なくとも1つの環は、窒素、酸素、硫黄またはリンから独立して選択される1つまたはそれより多くのヘテロ原子を含み、ここでその系におけるそれぞれの環は、3〜7個の環員を含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、または用語「ヘテロ芳香族」と交換可能に使用され得る。
【0024】
ヘテロアリール環のさらなる例としては、以下の単環:2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、および以下の二環:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、プリニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニルまたは4−イソキノリニル)が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、アリール(アラルキル、アラルコキシ、およびアリールオキシアルキルなどを含む)、またはヘテロアリール(ヘテロアラルキル、およびヘテロアリールアルコキシなどを含む)基は、1つもしくはそれより多くの置換基を含み得る。アリールもしくはヘテロアリール基の不飽和炭素原子における適切な置換基としては、以下:ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;必要に応じてRで置換されるフェニル(Ph);必要に応じてRで置換される−O(Ph);必要に応じてRで置換される−(CH1〜2(Ph);必要に応じてRで置換される−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRC(O)OR;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRC(O)OR;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(O)OR;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−B(OR;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−(CH0〜2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3〜10脂環式の)、−L−(C6〜10アリール)、−L−(5〜10員のヘテロアリール)、−L−(5〜10員のヘテロシクリル)、オキソ、C1〜4ハロアルコキシ、C1〜4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CFが挙げられ;または同じ炭素もしくは異なる炭素における2つの置換基が、それらが結合する炭素もしくは介在炭素とともに、5〜7員の飽和、不飽和、もしくは部分的に飽和の環を形成し、ここでLは、C1〜6アルキレン基であって、3つまでのメチレン単位が以下:−NH−、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NHCO−、−NRCO−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、または−S(O)−により置き換えられ、そしてRのそれぞれの出現は、水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族、不飽和の5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環、フェニルまたは−CH(Ph)から独立して選択されるか、または同じ置換基もしくは異なる置換基におけるRの2つの独立した出現は、各R基が結合する原子(複数可)とともに、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、ここで該ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基における非限定の必要に応じた置換基としては、−NH2、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族が挙げられ、ここで前記のRのC1〜4脂肪族基のそれぞれは、非置換である。
【0026】
いくつかの実施形態において、脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環式環は、1つもしくはそれより多くの置換基を含み得る。脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基の飽和炭素、または非芳香族複素環式環の飽和炭素における適切な置換基は、アリールもしくはヘテロアリール基の不飽和炭素のために上に列挙されたものから選択され、追加的に以下:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、または=NRを含み、ここで各Rは、水素、または必要に応じて置換されるC1〜8脂肪族から独立して選択される。Rの脂肪族基における必要に応じた置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−C(O)NH、−C(O)NH(C1〜4脂肪族)、−C(O)N(C1〜4脂肪族)、−O(ハロ−C1〜4脂肪族)およびハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここで前記の各RのC1〜4脂肪族基は、非置換であるか;または、同じ窒素における2つのRは、窒素と一緒にされて、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜8員のヘテロシクリルもしくはヘテロアリール環を形成する。
【0027】
いくつかの実施形態において、非芳香族複素環式環の窒素における必要に応じた置換基としては、−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rまたは−NRS(O)が挙げられ、ここでRは、水素、必要に応じて置換されるC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されるフェニル、必要に応じて置換される−O(Ph)、必要に応じて置換される−CH(Ph)、必要に応じて置換される−(CH1〜2(Ph);必要に応じて置換される−CH=CH(Ph);または、酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する不飽和の5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環であるか、または同じ置換基もしくは異なる置換基におけるRの2つの独立した出現は、各R基が結合する原子(複数可)とともに5〜8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、ここで該ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基もしくはフェニル環における必要に応じた置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−O(ハロ(C1〜4脂肪族))、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここで前記のRのC1〜4脂肪族基のそれぞれは、非置換である。
【0028】
上に詳述したように、いくつかの実施形態において、R(またはR、または本明細書中で同様に定義される他のあらゆる可変物)の2つの独立した出現は、各可変物が結合する原子(複数可)と一緒にされて、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し得る。R(またはR、または本明細書中で同様に定義される他のあらゆる可変物)の2つの独立した出現が、各可変物が結合する原子(複数可)と一緒にされるときに形成される例示的な環としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:a)同じ原子に結合し、その原子と一緒にされて環を形成するR(またはR、または本明細書中で同様に定義される他のあらゆる可変物)の2つの独立した出現(例えば、N(Rであって、ここでRの両方の出現が窒素原子と一緒にされて、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成する);およびb)異なる原子に結合し、それらの原子の両方と一緒にされて環を形成するR(またはR、または本明細書中で同様に定義される他のあらゆる可変物)の2つの独立した出現(例えば、フェニル基はORの2つの出現で置換されている、すなわち、
【0029】
【化2】

である場合、Rのこれらの2つの出現はそれらが結合する酸素原子と一緒にされて、縮合された6員の酸素含有環:
【0030】
【化3】

を形成する)。R(またはR、または本明細書中で同様に定義される他のあらゆる可変物)の2つの独立した出現が、各可変物が結合する原子(複数可)と一緒にされるときに多様な他の環が形成され得、上に詳述される例が限定することを意図しないことが正しく認識される。
【0031】
いくつかの実施形態において、アルキルまたは脂肪族鎖のメチレン単位は、必要に応じて、別の原子または基と置き換えられる。そのような原子または基の例としては、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、または−S(O)−が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Rは、本明細書中で定義される。そうでないと特定されない限り、必要に応じた置き換えは、化学的に安定な化合物を形成する。必要に応じた原子または基の置き換えは、鎖内および鎖のいずれかの端の両方;すなわち結合点、および/または末端の両方においても起こり得る。2つの必要に応じた置き換えはまた、化学的に安定な化合物をもたらす限り、鎖内において互いに隣接し得る。そうでないと特定されない限り、置き換えが末端で起こる場合、その置き換え原子は、末端においてHに結合する。例えば、−CHCHCHの1つのメチレン単位が必要に応じて−O−と置き換えられる場合、結果として生じる化合物は、−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHであり得る。
【0032】
本明細書中に記載される場合、(下に示すような)置換基から多環系内の1つの環の中心へと引かれる結合は、多環系内のあらゆる環におけるあらゆる置換可能な位置での置換基の置換を表す。例えば、構造aは、構造bにおいて示されるあらゆる位置における可能性のある置換を表す。
【0033】
【化4】

このことはまた、必要に応じた環系(点線で表される)に縮合する多環系に適用される。例えば、構造cにおいて、Xは、環Aおよび環Bの両方に対する必要に応じた置換基である。
【0034】
【化5】

しかしながら、多環系における2つの環がそれぞれ、各環の中心から引かれる異なる置換基を有する場合、そうでないと特定されない限り、各置換基は、それが結合する環における置換を表すのみである。例えば、構造dにおいて、Yは、環Aのみにおける必要に応じた置換基であり、Xは、環Bのみにおける必要に応じた置換基である。
【0035】
【化6】

用語「保護基」は、本明細書中で用いられる場合、合成手順の間の望まない反応に対して官能基(例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニルなど)を保護することを意図する基を表す。一般的に使用される保護基は、Greene and Wuts,Protective Groups In Organic Synthesis,3rdEdition(John Wiley & Sons,New York,1999)において開示され、本明細書中で参考として援用される。窒素保護基の例としては、アシル、アロイル、またはカルバミル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、およびキラル補助剤(例えば、保護もしくは非保護のD、L、またはD,L−アミノ酸(例えば、アラニン、ロイシン、およびフェニルアラニンなど)));スルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、およびp−トルエンスルホニルなど);カーバメート基(例えば、ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、およびフェニルチオカルボニルなど)、アリールアルキル基(例えば、ベンジル、トリフェニルメチル、およびベンジルオキシメチルなど)、およびシリル基(例えば、トリメチルシリルなど)が挙げられる。好ましいN−保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)および、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0036】
用語「プロドラッグ」は、本明細書中で用いられる場合、インビボで式Iの化合物または表1に列挙される化合物へと変換される化合物を表す。そのような変換は、例えば、血液中における加水分解または血液もしくは組織における親形態へのプロドラッグ形態の酵素的変換により影響され得る。本発明の化合物のプロドラッグは、例えば、エステルであり得る。本発明において、プロドラッグとして利用され得るエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C〜C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カーボネート、カーバメートおよびアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含む本発明の化合物は、そのプロドラッグ形態におけるこの位置でアシル化され得る。他のプロドラッグ形態としては、例えば、親化合物におけるOH基のホスホン酸化(phosphonation)からもたらされるホスフェートが挙げられる。プロドラッグの徹底的な議論は、T.Higuchi and V.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol. 14 of the A.C.S.Symposium Series,Edward B. Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987,およびJudkins et al.,Synthetic Communications 26(23):4351−4367,1996において提供され、そのそれぞれが本明細書中で参考として援用される。
【0037】
そうでないと述べられない限り、本明細書中に示される構造はまた、その構造の全ての異性体の(例えば、エナンチオマーの、ジアステレオマーの、および幾何学の(または配座の))形態を含むことを意味する;例えば、各不斉中心に対するRおよびSの立体配置、(Z)および(E)の二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)の配座異性体である。従って、本化合物の1つの立体化学的異性体ならびにエナンチオマーの、ジアステレオマーの、および幾何学の(または配座の)混合物は、本発明の範囲内にある。
【0038】
そうでないと述べられない限り、本発明の化合物の全ての互変異性体は、本発明の範囲内にある。さらに、そうでないと述べられない限り、本明細書中に示される構造はまた、1つまたはそれより多くの同位体的に濃縮される原子の存在のみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、ジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置き換え、または13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素の置き換えを除いて、本構造を有する化合物は本発明の範囲内にある。そのような化合物は、例えば、分析用のツール、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または改善された治療上のプロフィールを有するPI3Kインヒビターとして有用である。
【0039】
(本発明の化合物の説明)
1つの局面において、本発明は、式:
【0040】
【化7】

を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を特徴とし、この式において:
Xは、NまたはCHであり;
は、フェニル環、5員ヘテロアリール環、6員ヘテロアリール環、または9員もしくは10員の縮合二環式のヘテロアリールもしくは複素環式環系から選択され、これらの環または環系の各々は、1個、2個、または3個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換されており、そしてこれらのヘテロアリール環または複素環式環の各々は、窒素、酸素、または硫黄から選択される1個、2個、または3個のヘテロ原子を有し;
1aは、クロロ、フルオロ、C1〜6脂肪族、C3〜6脂環式、−C(O)R1b、−C(O)N(R1b、−C(O)O(R1b)、−S(O)R1b、−S(O)N(R1b、−N(R1b、−N(R1b)C(O)R1b、−N(R1b)S(O)1b、−OR1b、−SR1b、または窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される3個までの原子を有する5員〜6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、これらの脂肪族または脂環式の各々は、1個、2個、3個、または4個の存在のJで必要に応じて置換されており;
各Jは独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)R1b、−C(O)N(R1b、−C(O)O(R1b)、−N(R1b、−N(R1b)C(O)R1b、−OR1b、−SR1b、フェニル、または窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される4個までの原子を有する5員〜6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、Jのフェニル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルは、1個または2個のR1c基で必要に応じて置換されており;
各R1bは独立して、水素、C1〜4脂肪族、C3〜6脂環式、フェニル、ベンジルから選択され、JR1の脂肪族、脂環式、フェニル、またはベンジルの各々は、3個までのR1c基で必要に応じて置換されており;
各R1cは独立して、クロロ、フルオロ、オキソ、C1〜2アルキル、1個〜3個のフッ素原子で置換されたC1〜2アルキル、C3〜6シクロアルキル、−OH、−OC1〜2アルキル、または1個〜3個のフッ素原子で置換された−OC1〜2アルキルから選択され;
は、水素、フルオロ、クロロ、C1〜6脂肪族、−OC1〜6脂肪族、C3〜6脂環式、−OC3〜6脂環式、シアノ、−NH、−NHC1〜6脂肪族、−NHC3〜6脂環式、−NHS(O)1〜6脂肪族、−NHS(O)3〜6脂環式、−NHS(O)フェニル、−NHS(O)ベンジル、−NHS(O)ヘテロアリール、−S(O)1〜6脂肪族、−S(O)3〜6脂環式、−S(O)フェニル、−S(O)ベンジル、−S(O)ヘテロアリール、−S(O)NHC1〜6脂肪族、−S(O)NHC3〜6脂環式、−S(O)NHフェニル、−S(O)NHベンジル、または−S(O)NHヘテロアリールであり、Rのヘテロアリールは、N、O、またはSから選択される1個、2個、または3個の原子を有する5員環または6員環であり、そしてRの脂肪族、脂環式、フェニル、ベンジル、またはヘテロアリールは、1個、2個、または3個のR2a基で必要に応じて置換されており;
各R2aは、クロロ、フルオロ、オキソ、C1〜2アルキル、1個〜3個のフッ素原子で置換されたC1〜2アルキル、C3〜6シクロアルキル、−OH、−OC1〜2アルキル、または1個〜3個のフッ素原子で置換された−OC1〜2アルキルから選択され;そして
は、水素、フルオロ、クロロ、C1〜3脂肪族、シクロプロピル、−OC1〜3脂肪族、NH、またはNHC1〜3脂肪族であり、Rの脂肪族は、3個までの存在のフルオロで必要に応じて置換されている。
【0041】
1つの実施形態において、XはCHである。別の実施形態において、XはNである。
【0042】
別の実施形態において、Rは、N、O、またはSから選択される1個〜3個のヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロアリール環であり、このヘテロアリール環は、1個、2個、または3個のR1a基で必要に応じて置換される。
【0043】
さらなる実施形態において、Rは、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、チアゾール環、ピラゾール環、またはチアジアゾール環であり、これらの環の各々は、1個または2個の存在のR1aで必要に応じて置換される。
【0044】
なお別の実施形態において、Rは、
【0045】
【化8】

から選択される。
【0046】
別の実施形態において、Rは、窒素、酸素、または硫黄から選択される1個、2個、または3個のヘテロ原子を有する、9員もしくは10員の縮合二環式のヘテロアリールもしくは複素環式環系から選択され、このヘテロアリールまたは複素環式環系は、1個、2個、または3個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換される。
【0047】
さらなる実施形態において、Rは、
【0048】
【化9】

から選択される。
【0049】
別の実施形態において、Rは、1個または2個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換されるフェニル環である。
【0050】
さらなる実施形態において、Rは、
【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

から選択される。
【0053】
別の実施形態において、R1aは、クロロ、フルオロ、C1〜6脂肪族、C3〜6脂環式、−C(O)R1b、−C(O)N(R1b、−C(O)O(R1b)、−S(O)R1b、−S(O)N(R1b、−N(R1b、−N(R1b)C(O)R1b、−N(R1b)S(O)1b、−OR1b、または窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される3個までの原子を有する5員〜6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルである。
【0054】
なお別の実施形態において、RおよびRの各々は、3個までのR2a基で必要に応じて置換される、C1〜3脂肪族または−OC1〜3アルキルである。さらなる実施形態において、Rは、−OC1〜3アルキルまたは−CFである。
【0055】
別の実施形態において、
【0056】
【化12】

から選択される。
【0057】
なお別の実施形態において、本発明は、表1に列挙される化合物の群から選択される化合物を特徴とする。
【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

【0062】
【化17】

【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

本発明はまた、本発明の化合物および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含有する、薬学的組成物を特徴とする。
【0069】
(本発明の化合物の組成物、処方物、および投与)
別の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される式またはクラスのいずれかの化合物を含有する薬学的組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、表1の化合物を含有する薬学的組成物を提供する。さらなる実施形態において、この組成物は、さらなる治療剤をさらに含有する。
【0070】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含有する組成物を提供する。1つの実施形態において、本発明の組成物中の化合物の量は、生物学的サンプルまたは患者において、PI3K(特に、PI3Kγ)を測定可能に阻害するために効果的であるような量である。別の実施形態において、本発明の組成物中の化合物の量は、PI3Kαを測定可能に阻害するために効果的であるような量である。1つの実施形態において、本発明の組成物は、このような組成物を必要とする患者への投与のために処方される。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、患者への経口投与のために処方される。
【0071】
用語「患者」とは、本明細書中で用いられる場合、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0072】
本発明の化合物のうちの特定のものは、処置のための遊離形態で、または適切である場合には、その薬学的に受容可能な誘導体として存在し得ることもまた、理解される。本発明によれば、薬学的に受容可能な誘導体としては、必要のある患者に投与されると、本明細書中で他のように記載されるような化合物、またはその代謝産物もしくは残渣を、直接または間接的に提供し得る、薬学的に受容可能なプロドラッグ、塩、エステル、このようなエステルの塩、または他の任意の付加体もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる場合、用語「阻害活性のあるその代謝産物もしくは残渣」とは、その代謝産物もしくは残渣もまた、PI3Kのインヒビターであることを意味する。
【0073】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、およびアレルギー応答などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するために適している塩をいう。
【0074】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に受容可能な塩を、J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19,1977,(これは、本明細書中に参考として援用される)において詳細に記載する。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、適切な無機酸および無機塩基、ならびに有機酸および有機塩基から誘導された、塩が挙げられる。薬学的に受容可能な非毒性の酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸)と形成されるか、あるいは当該分野において使用される他の方法(例えば、イオン交換)を使用することにより形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、および吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の、任意の塩基性窒素含有基の第四級化を想定する。水溶性または油溶性、あるいは水分散性または油分散性の生成物が、このような第四級化により得られ得る。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受容可能な塩としては、適切である場合、対イオン(例えば、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、C1〜8スルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオン)を使用して形成される、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミン陽イオンが挙げられる。
【0075】
上記のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルをさらに含有し、これらとしては、本明細書中で用いられる場合、望ましい特定の剤形に合うような、任意の全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、および滑沢剤などが挙げられる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第21版,2005,編者D.B.Troy,Lippincott WilliamsおよびWilkins,Philadelphia、ならびにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,編者J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan,1988−1999,Marcel Dekker,New York(これらの各々の内容は、本明細書中に参考として援用される)には、薬学的に受容可能な組成物を処方する際に使用される種々のキャリア、およびその調製のための公知の技術が開示されている。いずれかの従来のキャリア媒体が本発明の化合物と非適合性である場合(例えば、何らかの望ましくない生物学的影響を生じること、または薬学的に受容可能な組成物のいずれかの他の成分と有害な様式で他に相互作用することによる)を除いて、そのキャリア媒体の使用は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0076】
薬学的に受容可能なキャリアとして働き得る材料のいくつかの例(イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチおよびポテトスターチ);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;賦形剤(例えば、ココアバターおよび坐剤蝋);油(例えば、落花生油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱性物質を含まない水;等張生理食塩水;リンガー液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性の適合性滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない)もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0077】
本発明の組成物は、経口投与されても、非経口投与されても、吸入スプレーにより投与されても、局所投与されても、直腸投与されても、経鼻投与されても、頬投与されても、膣投与されても、移植されたレザバを介して投与されてもよい。用語「非経口」とは、本明細書中で用いられる場合、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、滑液包内、胸骨内、鞘内、眼内、肝臓内、病変内、硬膜外、脊椎内、および頭蓋内の、注射技術または注入技術を包含する。好ましくは、これらの組成物は、経口的にか、腹腔内にか、または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射可能な形態は、水性または油性の懸濁物であり得る。これらの懸濁物は、当該分野において公知である技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、処方され得る。滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、滅菌注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒のうちでも、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。
【0078】
この目的で、任意のブランドの不揮発性油(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる)が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油であり、特に、これらのポリオキシエチル化バージョン)と同様に、注射可能物質の調製において有用である。これらの油溶液または油懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、または薬学的に受容可能な剤形の処方物(エマルジョンおよび懸濁物が挙げられる)において通常使用される類似の分散剤)を含有し得る。通常使用される他の界面活性剤(例えば、Tween、Span)、および薬学的に受容可能な固体、液体、または他の剤形の製造において通常使用される他の乳化剤またはバイオアベイラビリティ増強剤もまた、処方の目的で使用され得る。
【0079】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口的に受容可能な任意の剤形(カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または液剤が挙げられるが、これらに限定されない)で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、代表的に添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口使用に必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と合わせられる。望ましい場合、特定の甘味剤、矯味矯臭剤、または着色剤もまた添加され得る。
【0080】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与のための坐薬の形態で投与され得る。これらの坐薬は、剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸内で溶解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって、調製され得る。そのような材料としては、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0081】
本発明の薬学的に受容可能な組成物または、特に処置の標的が局所塗布によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合(眼、皮膚、または下部腸管の疾患が挙げられる)に、局所的に投与され得る。適切な局所処方物は、これらの領域または器官の各々について容易に調製される。
【0082】
下部腸管のための局所塗布は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)において、または適切な浣腸処方物において、行われ得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0083】
局所塗布のために、薬学的に受容可能な組成物は、1つまたはそれより多くののキャリアに懸濁または溶解された活性成分を含む、適切な軟膏に処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、これらの薬学的に受容可能な組成物は、1つまたはそれより多くのの薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解された活性成分を含む、適切なローションまたはクリームに処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
眼科使用のために、薬学的に受容可能な組成物は、例えば、等張性の、pHが調整された滅菌生理食塩水もしくは他の水溶液中の微粒子化懸濁液として、または好ましくは、等張性の、pHが調整された滅菌生理食塩水もしくはその他の水溶液中の溶液として、ベンジルアルコニウムクロリドなどの防腐剤ありまたはなしで、処方され得る。あるいは、眼科使用のために、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンなどの軟膏に処方され得る。本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。そのような組成物は、薬学的処方物の分野において周知である技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0085】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0086】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、これらの液体剤形は、当該分野において通常使用されている不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤であり、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物)を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、ならびに芳香剤などのアジュバントを含有し得る。
【0087】
注射可能な調製物(例えば、滅菌注射可能な水性懸濁液または油性懸濁液)が、公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、処方され得る。滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の非経口受容可能な希釈剤または溶媒中の、滅菌注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液など)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒のうちでもとりわけ、水、リンゲル液(U.S.P.)および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的で、任意のブランドの不揮発性油(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる)が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物質の調製において使用される。
【0088】
注射可能な処方物は、例えば、細菌保持フィルタを通しての濾過によって、または滅菌固体組成物(これは、使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射可能媒体に溶解もしくは分散され得る)の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0089】
本発明の化合物の効果を延長させる目的で、皮下注射または筋肉内注射からのこの化合物の吸収を遅くすることが、しばしば望ましい。このことは、水溶性が乏しい結晶性材料または非晶質材料の液体懸濁物の使用によって、達成され得る。この場合、この化合物の吸収の速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は、結晶のサイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、この化合物を油ビヒクルに溶解または懸濁させることにより、非経口投与される化合物形態の遅延された吸収が達成される。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中の、化合物の微細カプセル化マトリックスを形成することにより、作製される。化合物対ポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、化合物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポー注射可能処方物はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉することにより、調製される。
【0090】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは、坐剤であり、坐剤は、本発明の化合物を、適切な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤蝋)と混合することにより調製され得る。この賦形剤またはキャリアは、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、従って、直腸または膣の腔内で融解し、そして活性化合物を放出する。
【0091】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な、薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/あるいはa)充填剤または賦形剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア)、c)保湿剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ポテトスターチまたはタピオカスターチ、アルギン酸、特定のシリケート、ならびに炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収加速剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)、ならびにi)滑沢剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)ならびにこれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含有し得る。
【0092】
類似の型の固体組成物はまた、賦形剤(ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなど)を使用して、軟ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティングまたはシェル(例えば、腸溶コーティングおよび薬剤処方分野において周知である他のコーティング)を用いて調製され得る。これらは必要に応じて、不透明化剤を含有し得、そしてまた、活性成分を、腸管の特定の部分のみで、または優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。類似の型の固体組成物はまた、賦形剤(ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなど)を使用して、軟ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0093】
活性化合物はまた、上記のような1つ以上の賦形剤を用いた微小カプセル化形態であり得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび薬剤処方分野において周知である他のコーティング)を用いて調製され得る。このような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混合され得る。このような剤形はまた、通常の実施であるように、不活性希釈剤以外のさらなる物質(例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース))を含有し得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含有し得る。これらは必要に応じて、不透明化剤を含有し得、そしてまた、活性成分を、腸管の特定の部分のみで、または優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための剤形としては、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリア、および必要とされ得るような任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼用処方物、点耳薬および点眼薬もまた、本発明の範囲内であると想定される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を想定し、これらの経皮パッチは、身体への化合物の制御された送達を提供するというさらなる利点を有する。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分散させることにより調製される。吸収増強剤もまた、皮膚を通る化合物の流れを増大させるために使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供すること、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることのいずれかによって、制御され得る。
【0095】
本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態で処方される。表現「投薬単位形態」とは、本明細書中で使用される場合、処置されるべき患者のために適切な剤の物理的に分離した単位をいう。しかし、本発明の化合物および組成物の毎日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で、担当する医師により決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物についての特定の有効用量レベルは、種々の要因(処置される障害およびその障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出率;処置の持続時間;使用される特定の化合物と組み合わせてかまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知である同様の要因が挙げられる)に依存する。
【0096】
単回用剤形の組成物を製造するためにキャリア材料と合わせられ得る本発明の化合物の量は、処置される宿主、特定の投与様式に依存して変わる。好ましくは、これらの組成物は、0.01mg/kg体重/日〜100mg/kg体重/日の投薬量のインヒビターが、これらの組成物を受ける患者に投与され得るように、処方されるべきである。
【0097】
処置または予防されるべき特定の状態または疾患に依存して、さらなる治療剤(これらは通常、この状態を処置または予防するために投与される)もまた、本発明の組成物中に存在し得る。本明細書中で用いられる場合、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与されるさらなる治療剤は、「処置される疾患または状態のために適切である」として公知である。さらなる治療剤の例は、上に提供されている。
【0098】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療剤の量は、その治療剤を唯一の活性剤として含有する組成物において通常投与される量以下である。好ましくは、本開示の組成物中のさらなる治療剤の量は、その剤を唯一の治療活性剤として含有する組成物に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0099】
(本発明の化合物および組成物の使用)
1つの実施形態において、本発明は、患者における、PI3Kにより媒介される状態もしくは疾患を処置するかまたはその重篤度を低下させる方法を包含する。用語「PI3Kにより媒介される疾患」とは、本明細書中で用いられる場合、PI3Kアイソフォームが役割を果たすことが既知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。1つの実施形態において、このPI3Kアイソフォームは、PI3Kγである。別の実施形態において、このPI3Kアイソフォームは、PI3Kαである。さらなる実施形態において、本発明は、PI3Kにより媒介される疾患を処置する方法を包含する。このような状態としては、限定されないが、自己免疫疾患、炎症性疾患、血栓崩壊性疾患、がん、心臓血管疾患、糖尿病、アレルギー性疾患、喘息および呼吸性疾患が挙げられる。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、患者の脳または脊椎における、PI3Kにより媒介される状態もしくは疾患を処置するか、またはPI3Kにより媒介される状態もしくは疾患の重篤度を低下させる方法を提供し、この方法は、この患者に、本発明の化合物または組成物を投与する工程を包含する。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、がんを処置するか、またはがんの重篤度を低下させる方法を提供する。本発明の方法により処置または軽減され得るがんの例としては、限定されないが、乳房のがん、卵巣のがん、頚部(cervix)のがん、前立腺のがん、精巣のがん、尿生殖路のがん、食道のがん、喉頭のがん、多形性グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃のがん、皮膚のがん、角化棘細胞腫、肺のがん、類表皮癌、大細胞癌腫、小細胞癌種、肺腺癌、骨のがん、結腸のがん、腺腫、膵臓のがん、腺癌、甲状腺のがん、濾胞状癌、未分化癌腫、乳頭状癌、セミノーマ、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫および胆汁路のがん、腎臓癌腫、骨髄障害、リンパ障害、ホジキン病、毛状細胞のがん、口腔前庭および咽頭(口腔)、唇のがん、舌のがん、口のがん、咽頭のがん、小腸のがん、結腸−直腸のがん、大腸のがん、直腸のがん、脳のがんおよび中枢神経系のがんが挙げられる。本発明また、白血病(限定されないが、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫およびリンパ腫が挙げられる)を処置するかまたはその重篤度を低下させる方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、脳がん、および肺がんから選択されるがんを処置するかまたはその重篤度を低下させる方法を提供する。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害を処置するか、または自己免疫疾患もしくは自己免疫障害の重篤度を低下させる方法を提供する。自己免疫疾患または自己免疫障害としては、限定されないが、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、糸球体腎炎、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、I型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、シェーグレン症候群および対宿主性移植片病が挙げられる。1つの実施形態において、この自己免疫疾患または自己免疫障害は、慢性関節リウマチ、SLEまたは多発性硬化症である。別の実施形態において、この疾患は、多発性硬化症である。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、器官移植拒絶を処置するか、または器官移植拒絶の重篤度を低下させる方法を提供する。
【0104】
別の実施形態において、本発明は、炎症性疾患を処置するか、または炎症性疾患の重篤度を低下させる方法を提供する。炎症性疾患としては、限定されないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気腫、農夫肺および関連疾患、好酸球増加症、肺線維症、変形性関節症、強直性脊椎炎、敗血症、敗血症性ショック、炎症性ミオパシー、髄膜炎、脳炎、涙液耳下腺症候群、急性呼吸窮迫症候群および膵臓炎が挙げられる。1つの実施形態において、この炎症性疾患は、急性呼吸窮迫症候群または涙液耳下腺症候群である。
【0105】
別の実施形態において、本発明は、アレルギー性疾患もしくは喘息を処置するか、またはアレルギー性疾患もしくは喘息の重篤度を低下させる方法を提供する。アレルギー性疾患の例としては、限定されないが、通年性および季節性のアレルギー性鼻炎、I型過敏性反応、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、または湿疹が挙げられる。
【0106】
本発明の化合物または組成物は、1つまたはそれより多くののさらなる治療剤と一緒に投与され得、このさらなる治療剤は、処置される疾患のために適切であり、そしてこのさらなる治療剤は、本発明の化合物または組成物と一緒に単回用剤形として投与されるか、あるいはこの化合物または組成物とは別に、複数回用剤形の一部として投与される。このさらなる治療剤は、本発明の化合物と同時に投与されても、異なる時点で投与されてもよい。後者の場合、投与は、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、または2ヶ月、ずらされ得る。
【0107】
本発明は、生物学的サンプルにおいてPI3Kキナーゼ活性を阻害する方法を提供し、この方法は、この生物学的サンプルを、本発明の化合物または組成物と接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」とは、本明細書中で用いられる場合、生きている生物の外側のサンプルを意味し、そして限定されないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、類液、もしくは他の体液またはその抽出物が挙げられる。生物学的サンプルにおけるキナーゼ活性(特に、PI3Kキナーゼ活性)の阻害は、当業者に公知である種々の目的のために有用である。このような目的の例としては、生物学的標本貯蔵および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、生物学的サンプルにおいてPI3Kキナーゼ活性を阻害する方法は、非治療方法に限定される。
【0108】
(本発明の化合物の調製)
本明細書中で用いられる場合、全ての略語、記号および慣習は、現代の科学文献において使用されるものと一致する。例えば、Janet S.Dodd編,The ACS Style Guide:A Manual for Authors and Editors,第2版,Washington,D.C.:American Chemical Society,1997を参照のこと。以下の定義は、本明細書中で使用される用語および略語を説明する:
ATP アデノシン三リン酸
Boc t−ブトキシカルボニル
ブライン 飽和NaCl水溶液
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO メチルスルホキシド
DTT ジチオトレイトール
ESMS エレクトロスプレー質量分析
EtO エチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エチルアルコール
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
Me メチル
MeOH メタノール
NBS N−ブロモスクシンイミド
NMP N−メチルピロリドン
Ph フェニル
RTまたはrt 室温
tBu 第三級ブチル
tBuOH tert−ブタノール
TCA トリクロロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸。
【0109】
他に示されない限り、逆相HPLCによる精製を、Waters 20×100mm YMC−Pack Pro C18カラムで、直線状の水/アセトニトリル(0.1%TFA,0.2%ギ酸、または5mmolギ酸アンモニウム)勾配を使用して、28mL/分の流量で実施した。
【0110】
(一般合成手順)
一般に、本発明の化合物を、本明細書中に記載される方法によって、または当業者に公知である他の方法によって、調製し得る。
【0111】
(実施例1.式Iの化合物の一般調製)
がフェニル環またはヘテロアリール環である式Iの化合物の調製が、スキーム1に示されている。このスキームに示されるように、アミンが保護されている式A1のヘテロアリールハロゲン化物がホウ素化される。アリールハロゲン化物からボロネートまたはボロン酸を調製するための手順は、Boronic Acids,ISBN:3−527−30991−8,Wiley−VCH,2005(Dennis G.Hall編)に記載されている。1つの例において、このハロゲンは臭素であり、そしてボロネートが、臭化アリールを4,4,5,5−テトラメチル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロランと反応させて、−B(OR)が4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル部分である式A2の化合物を生成することによって、調製される。式A2の化合物を、RおよびRが式Iの化合物について定義されたとおりであり、ハロゲンがクロロ基、ブロモ基、またはヨード基を表わす式A4の化合物と反応させて、式A5の化合物を生成する。あるいは、式A4の化合物は、上記のように臭素化されて式A3の化合物を生成し得、この式A3の化合物が引き続いて、式A1の化合物と反応して式A5の化合物を生成し得る。式A5の化合物のアミン保護基の除去は、式Iの化合物を与える。
【0112】
式Iの化合物を提供する別の方法は、スキーム1に示されるように、式A6の化合物を塩基性条件下でチオホスゲンと反応させて、イソチオシアネートA7を生成することである。式A7の化合物の引き続くアミンとの反応は、式A8を有するチオウレア中間体を介して形成される、式A9の化合物を与える。上記のように、式A9の化合物と式A3のボロネートとの反応は、式Iを有する化合物を与える。
【0113】
スキーム1に示されるように、式Iの化合物を提供するなお別の方法は、第一級アミンを炭酸セシウムの存在下で式A10のハロヘテロ芳香族環と反応させて、式A11の化合物(このアミンのRは、置換または非置換のフェニル環またはヘテロアリール環である)を形成することである。式A11の化合物と式A3のボロネートとの反応は、式Iaの化合物(XがCHである式Iの化合物)を与える。
【0114】
一般に、本発明の化合物は、本明細書中に記載される方法、または類似の化合物の調製について当業者に公知である方法によって、調製され得る。本明細書中に記載される本発明がより完全に理解され得る目的で、以下の実施例が記載される。これらの実施例は、説明の目的のみであり、いかなる方法でも本発明を限定すると解釈されるべきではないことが、理解されるべきである。
【0115】
【化24】

(実施例2.3−エトキシ−2−メトキシ−5−ブロモピリジン(化合物1004)の調製)
スキーム2の工程2−iに示されるように、4.0g(0.1mol,鉱油中60%)のNaHの100mLのDMF懸濁物に、10mLの無水エチルアルコール(4.6g,0.1mol)/DMF溶液をRTで添加した。水素ガスの放出後、この反応混合物をRTで30分間撹拌し、そして得られたエトキシド溶液を、60℃の100mLのDMF中の3,5−ジブロモピリジン(11.84g,0.05mol,Aldrich Chemical Co.から入手)の溶液に移した。この反応物を60℃で4時間撹拌し、そしてこの混合物をRTにした。ブラインおよび酢酸エチルを添加し、そしてその有機物を分配し、MgSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。得られた粗製材料を所望の生成物を20%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカクロマトグラフィーにより精製した。3−ブロモ−5−エトキシピリジン(化合物1001,4.25g)を純粋な生成物として得た(収率42%):H NMR(CDCl)δ8.3(dd,2H),7.4(d,1H),4.12(q,2H),1.45(t,3H)。3−ベンジルオキシ−5−ブロモピリジンを、類似の手順により調製した:H NMR(CDCl)δ8.33(d,2H),7.5−7.35(m,6H),5.15(s,2H)。
【0116】
あるいは、スキーム2の工程2−iiに示されるように、3−ブロモ−5−ヒドロキシピリジン(100mg,0.57mmol,Aldrich Chemical Co.から入手)をDMF(3mL)で希釈した。炭酸カリウム(158.8mg,1.15mmol)を添加し、続いてブロモエタン(62.6mg,42.6μL,0.57mmol)を添加した。この混合物を60℃まで温め、そして一晩撹拌した。冷却後、この混合物を酢酸エチルに溶解し、そして2MのNaOH、続いて水で洗浄した。その有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。得られた粗製3−ブロモ−5−エトキシピリジン(化合物1001)を、さらに精製せずに使用した。以下の化合物を、類似の手順により作製した:3−ブロモ−5−プロポキシピリジン,ESMS(M+H)218.19/216.19;3−ブロモ−5−ブチルピリジン,ESMS(M+H)230.22/232.22;3−ブロモ−5−(シクロヘキシルメトキシ)ピリジン,ESMS(M+H)270.2/272.22;3−(2−フルオロエトキシ)−5−ブロモピリジン,ESMS(M+H)220.14/222.14;3−(2,2−ジフルオロエトキシ)−5−ブロモピリジン;および3−(2−エチルブトキシ)−5−ブロモピリジン,ESMS(M+H)258.33/256.33。
【0117】
スキーム2の工程2−iiiに示されるように、3−クロロペルオキシ安息香酸(9.426g,42.06mmol)を、200mLのDCM中の3−ブロモ−5−メトキシピリジン(4.25g,21mmol)にRTで添加した。この反応物を一晩撹拌し、そしてこの混合物を200mLの2N NaOHおよび2×200mLのブラインで洗浄した。その有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去して、3−ブロモ−5−エトキシピリジン,1−オキシド(化合物1002,4.4g)を得た:H NMR(CDCl):δ8.05(s,1H),7.9(s,1H),7.0(s,1H),4.12(q,2H),1.45(t,3H)。
【0118】
スキーム2の工程2−ivに示されるように、オキシ塩化リン(48.02g,403.6mmol)を、700mLのDCM中の3−ブロモ−5−エトキシピリジン,1−オキシド(4.4g,20.18mmol)にRTで添加した。この反応混合物をRTで一晩撹拌した。ブラインの添加後、その有機物を分配し、MgSOで乾燥させ、濾過し、そしてその濾液を減圧下で濃縮した。その生成物を、この濃縮物をシリカゲルのパッドに通し、このパッドを酢酸エチルで溶出することによって、精製した。揮発性物質を減圧下で除去して、5−ブロモ−2−クロロ−3−エトキシピリジン(化合物1003,4.3g,85.6%)を得た:H NMR(CDCl)δ8.1(s,1H),7.32(s,1H),4.15(q,2H),1.6(t,3H)。
【0119】
スキーム2の工程2−vに示されるように、40.51mLの25%MeONa/MeOH溶液を、5−ブロモ−2−クロロ−3−エトキシピリジン(4.3g,17.27mmol)に添加した。この反応混合物を2時間還流した。冷却後、酢酸エチルおよびブラインをこの混合物に添加した。その有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、そして減圧下でエバポレートした。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製後、5−ブロモ−3−エトキシ−2−メトキシピリジン(化合物1004,2.1g,収率50%)が得られた:H NMR(CDCl)δ7.8(s,1H),7.15(s,1H),4.1(q,2H),4.0(s,3H),1.5(t,3H)。以下の化合物を、類似の手順により合成した:5−ブロモ−3−イソプロポキシ−2−メトキシピリジン:H NMR(CDCl)δ7.7(s,1H),7.1(s,1H),4.55−4.5(m,1H),3.9(s,3H),1.3(d,6H);5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン:ESMS(M+H)232、234;5−ブロモ−3−メトキシ−2−プロポキシピリジン:ESMS(M+H)246、248;5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン:ESMS(M+H)246、248;5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−メトキシピリジン:ESMS(M+H)268、270;5−ブロモ−2,3−ジエトキシピリジン:ESMS(M+H)246、248;5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−エトキシピリジン:ESMS(M+H)282、284;5−ブロモ−3−エトキシ−2−プロポキシピリジン:ESMS(M+H)260、262;5−ブロモ−3−エトキシ−2−イソプロポキシピリジン:ESMS(M+H)260、262;5−ブロモ−3−(2−フルオロエトキシ)−2−メトキシピリジン:ESMS(M+H)250、252;5−ブロモ−2−メトキシ−3−プロポキシピリジン:ESMS(M+H)246、248;5−ブロモ−2−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)ピリジン:ESMS(M+H)262、264;5−ブロモ−3−(2,2−ジフルオロエトキシ)−2−メトキシピリジン:H NMR(CDCl)δ7.9(d,1H),7.2(d,1H),6.1(tt,1H),4.4(q,2H),4.2(td,2H),1.4(t,3H);5−ブロモ−2−エトキシ−3−イソプロポキシピリジン:H NMR(CDCl)δ7.7(d,1H),7.1(d,1H),4.4(m,1H),4.3(q,2H),1.3(m,9H);5−ブロモ−3−ブトキシ−2−メトキシピリジン:ESMS(M+H)260、262;5−ブロモ−2−メトキシ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン:ESMS(M+H)286、288;および5−ブロモ−2−エトキシ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン:ESMS(M+H)300、302。
【0120】
工程2−vと類似の手順によって、5−メトキシ−3−ブロモピリジン、2,3−ジメトキシ−5−ブロモピリジン、2,3−ジエトキシ−5−ブロモピリジン、2−メトキシ−3−プロポキシ−5−ブロモピリジン、および2−メトキシ−3−(2−メトキシエトキシ)−5−ブロモ)ピリジンもまた調製した。
【0121】
【化25】

(実施例3.5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジン(化合物1010)の調製)
スキーム3の工程3−iに示されるように、2−クロロ−3−ヒドロキシピリジン(化合物1005,2.0g,15.4mmol,Aldrich Chemical Co.から入手)を、クロロジフルオロ酢酸ナトリウム(4.71g,30.9mmol,Lancaster Synthesis,Inc.から入手)および無水炭酸カリウム(2.56g;18.5mmol)と一緒に、40mLのDMFおよび5.0mLの水に溶解した。この反応混合物を油浴中で100℃で2時間加熱した。さらにもう1当量のクロロジフルオロ酢酸ナトリウムおよび1.2当量の炭酸カリウムを添加し、そして加熱をさらに2.0時間続けた。この時間の後に、この反応物を冷却し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その残渣をブラインと酢酸エチルとの間で分配し、そしてその有機物をブラインでさらに一度洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その生成物を、ヘキサン/DCMからDCMの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、2−クロロ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジンを白色固体として生成した(化合物1006,2.0g,収率72%):ESMS(M+H)180;H NMR(CDCl)δ8.05(m,1H),7.45(m,1H),6.90(m,1H),6.60(t,1H;J=75Hz),4.01(s,3H)。
【0122】
スキーム3の工程3−iiに示されるように、過剰な金属ナトリウムを、20mLの無水メタノールに溶解させ、そして無水メタノール中の2−クロロ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン(2.0g,11.1mmol)を添加した。この反応混合物を密封容器内で100℃で6時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、そしてその残渣をEtOAcとブラインとの間で分配した。このブラインをEtOAcで抽出し、そして合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM)により精製して、3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジンを無色油状物として得た(化合物1007,1.1g,収率56%:ESMS(M+H)176。
【0123】
スキーム3の工程3−iiiに示されるように、3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジン(270mg,1.54mmol)を5mLのDCMに溶解し、そしてヘプタン中のBBr(540μL;1275mg;4.10mmol)を添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下RTで10分間撹拌し、還流させ、次いでさらに4時間撹拌した。この混合物を冷却し、そして水を添加してこの反応をクエンチした。pHを重炭酸ナトリウムで7〜8に調整し、その有機物を分配し、そしてその水層をNaClで飽和させて、DCMでさらに2回抽出した。合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCMから5%MeOH/DCMの勾配)により精製して、3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オールを白色固体として得た(化合物1008,986mg,収率97%):ESMS(M+H)162。
【0124】
スキーム3の工程3−ivに示されるように、3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オール(986mg;6.12mmol)を25mLの氷酢酸に溶解し、そして炭酸ナトリウム(79mg;9.6mmol)を添加した。この混合物を氷浴中で冷却し、そして10mLの氷酢酸中の臭素(780μL;1.63g;10.22mmol)を10分間かけて添加した。この反応物を10℃〜15℃で30分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、そしてその残渣をブライン/飽和炭酸ナトリウム溶液と酢酸エチルとの間で分配した。気体の放出が止んだ後に、有機物と水層とを分離し、そしてその水溶液をEtOAcでさらに3回抽出した。合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1回目はDCMから10%MeOH/DCMの勾配、次いで1:1 EtOAc/ヘキサン)により2回精製して、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オールを淡黄色粉末として得た(化合物1009,810mg,収率55%):ESMS(M+H)241.9/243.9;H NMR(CDCl)δ13.2(br m,1H),7,44(d,1H,J=2.1Hz),7.18(d,1H,J=2.1Hz),6.92(t,1H,J=75Hz)。
【0125】
スキーム3の工程3−vに示されるように、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)ピリジン−2−オール(300mg;1.25mmol)を5mLのクロロホルムに溶解した。炭酸銀(690mg;2.5mmol)およびヨウ化メチル(780μL;1.77g;12.5mmol)を添加し、そしてこの混合物をRTで一晩撹拌した。この反応混合物をケイ藻土で濾過し、これをさらなるCHClで洗浄した。その濾液を減圧下で濃縮して油状物を得、これをシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、5−ブロモ−3−(ジフルオロメトキシ)−2−メトキシピリジンを白色固体として得た(化合物1010,250mg,収率78%):ESMS(M+H)254/256;H NMR(CDCl)δ8.08(d,1H,J=2.1Hz),7.56(d,1H,J=2.1Hz),6.60(t,1H,J=75Hz),3.98(s,3H)。
【0126】
【化26】

(実施例4.2.5−ジブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1015)の調製)
スキーム4の工程4−iに示されるように、1,1’−カルボニルジイミダゾール(57.4g,354.2mmol)をTHF(400mL)中の2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン(26.0g,236.1mmol,Aldrich Chemical Co.から入手)の溶液に添加した。得られた反応混合物を70℃で14時間撹拌した。この反応混合物をRTまで冷却し、そして減圧下で濃縮した。その残渣をDCM(500mL)に溶解し、そして2NのNaOH(3×100mL)で洗浄した。合わせた水層を0℃まで冷却し、そして6NのHClで6のpHまで酸性化した。形成した沈殿物をガラス漏斗(fritted funnel)に集め、冷水(100mL)で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、オキサゾロ[4,5−b]ピリジン−2(3H)−オンを得た(化合物1011,26.0g,収率81%):ESMS(M+H)137;H NMR(DMSO−d)δ12.4(br,1H),8.0(d,1H),7.6(d,1H),7.1(dd,1H)。
【0127】
スキーム4の工程4−iiに示されるように、臭素(10.8mL,210.1mmol)を、化合物1011(26.0g,191mmol)のDMF(200mL)中の撹拌溶液に20分間かけて滴下により添加した。この反応混合物をRTで14時間撹拌した。この混合物を砕いた氷に注ぎ、そして形成した沈殿物をガラス漏斗に集めた。その固体を水(200mL)で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジン−2(3H)−オン(化合物1012,37.0g,収率91%)を淡黄色固体として得た:ESMS(M+H)215、217;H NMR(DMSO−d)δ12.6(br,1H),8.2(s,1H),8.0(s,1H)。
【0128】
スキーム20の工程4−iiiに示されるように、化合物1012(34g,158.1mmol)を10%NaOH(aq)(500mL)で希釈し、そして得られた混合物を100℃で6時間撹拌した。この反応物を5℃まで冷却し、そして沈殿物が形成されるまで6NのHClを添加した(約pH10)。その固体をガラス漏斗に集め、水(200mL)で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、2−アミノ−5−ブロモ−3−ヒドロキシピリジン(化合物1013,24.0g,収率80%)を褐色固体として得た:ESMS(M+H)189、191;H NMR(DMSO−d)δ7.5(s,1H),6.9(s,1H),5.7(br,2H)。
【0129】
スキーム20の工程4−ivに示されるように、化合物1013(19.0g,100.5mmol)をDCM(90mL)に溶解し、そしてヨードエタン(9.0mL,110.6mmol)、Adogen(登録商標)464(メチルトリアルキル(C−C10)アンモニウムクロリド,0.6g)、および40%NaOH(aq)(90mL)を添加した。この反応物をRTで21時間撹拌した。そのDCM層を分離し、そしてその水層を水(100mL)で希釈し、そしてDCM(2×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、40%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカプラグで精製して、2−アミノ−5−ブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1014,10.0g,収率46%)を白色固体として得た:ESMS(M+H)217,219。H NMR(DMSO−d)δ7.6(s,1H),7.1(s,1H),5.8(br,2H),4.0(q,2H),1.3(t,3H)。
【0130】
スキーム4の工程4−vに示されるように、化合物1014(10g,46.1mmol)を48%臭化水素酸(90mL,530mmol)で希釈し、そして0℃まで冷却した。臭素(8.0mL,148mmol)を滴下により添加し、続いて亜硝酸ナトリウムの40重量%溶液(40.0mL,231mmol)を添加した。この暗黒色の不均質な溶液を0℃で1時間撹拌した。この反応混合物を、50%NaOH(aq)を使用して13のpHに調整し、そして形成した固体をガラス漏斗に集め、そして水(300mL)で洗浄した。この粗製固体生成物をDCM(500mL)に溶解し、1MのNa(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、2.5−ジブロモ−3−エトキシピリジン(化合物1015,10.0g,収率73%)を淡黄色固体として得た:ESMS(M+H)280、282、284;H NMR(DMSO−d)δ8.1(s,1H),7.8(s,1H),4.2(q,2H),1.4(t,3H)。
【0131】
【化27】

(実施例5.5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン(化合物1016)および5−ブロモ−2,3−ジメトキシピリジン(化合物1017)の調製)
スキーム5の工程5−iに示されるように、5−ブロモ−2−クロロ−3−メトキシピリジン(1.0g,4.5mmol,実施例2の化合物1003と同じ様式で、3−ブロモ−5−メトキシピリジンから出発して調製した)をナトリウムエトキシド/エタノール溶液(5.05mL,21%w/v,13.5mmol)で処理し、そしてこの反応混合物を100℃で20分間マイクロ波照射した。水を添加し、そしてエタノールを減圧下でエバポレートした。得られた水溶液をDCMおよびエーテルで抽出し、続いて合わせた抽出物をMgSO4で乾燥させた。濾過後、減圧下での揮発性物質の除去により、5−ブロモ−2−エトキシ−3−メトキシピリジン(化合物1016)を得た。0.72g,収率69%):ESMS(M+H)232.32/234.23。スキーム5の工程5−iiに示されるように、化合物1017(ESMS(M+H)218.32/220.23)を化合物1016と同じ様式で、エタノール中のナトリウムエトキシドの代わりにメタノール中のナトリウムメトキシドを使用して、調製した。
【0132】
【化28】

(実施例6.5−ブロモ−3−メトキシ−2−メチルピリジン(化合物1021)、5−ブロモ−2−シクロプロピル−3−メトキシピリジン(化合物1022)、および5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン(化合物1023)の調製)
スキーム6の工程6−iに示されるように、塩化カルシウム(4.0g,35.7mmol)を、メタノール(100mL)および水(25mL)中の3−メトキシ−2−ニトロピリジン(5.0g,32.5mmol,AK Scientific,Inc.から入手)の撹拌溶液に添加した。この反応混合物を75℃まで温め、そして鉄粉(4.6g,81.1mmol)を、10分間かけて注意深く添加した。得られた反応混合物を75℃でさらに2時間撹拌した。この反応混合物をRTまで冷却し、そしてケイ藻土のパッドで濾過した。このパッドをエタノール(400mL)ですすぎ、そしてその濾液を減圧下でエバポレートした。その残渣を酢酸エチル/水(1/1,200mL)中に懸濁させ、その有機層を分離し、そしてその水層を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(60mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、2−アミノ−3−メトキシピリジン(化合物1018,3.6g,収率89%)を得た:ESMS(M+H)125;H NMR(DMSO−d)δ7.5(d,1H),7.0(d,1H),6.5(dd,1H),5.6(br,2H),3.75(s,3H)。
【0133】
スキーム6の工程6−iiに示されるように、臭素(6.3mL,120.8mmol)を、酢酸(150mL)中の化合物1018(15g,120.8mmol)の撹拌溶液にRTで滴下により添加した。得られた反応混合物をRTで16時間撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮し、そしてその酢酸を、減圧下でトルエン(2×100mL)との共沸蒸留により除去した。その残渣を0℃まで冷却し、そして飽和重炭酸ナトリウム溶液で、7のpHに達するまで中和した。その水性混合物を酢酸エチル(4×500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(60mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。その残渣を、50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出してシリカのプラグで精製して、2−アミノ−5−ブロモ−3−メトキシピリジン(化合物1019,20.0g,収率81%)を得た:ESMS(M+H)203、205;H NMR(DMSO−d)δ7.6(s,1H),7.2(s,1H),6.0(br,2H),3.8(s,3H)。
【0134】
スキーム6の工程6−iiiに示されるように、化合物1019(109.0g,536.8mmol)を48%臭化水素酸(1.0L,6.2mol)で希釈し、そしてこの反応混合物を0℃まで冷却した。臭素(89.0mL,1.72mol)を滴下により添加し、続いて亜硝酸ナトリウムの40重量%溶液(463.1mL,2.68mol)を40分間かけて添加した。この暗黒色の不均質な混合物を0℃で1時間撹拌した。この反応混合物を、50%NaOH(aq)を用いて13のpHに調整し、そして1時間かけてRTまで温めた。固体が形成され、この固体をガラス漏斗に集め、そして水(3×1.0L)で洗浄した。この粗製固体生成物をDCM(2.0L)に溶解し、1MのNa(2×500mL)およびブライン(500mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、2,5−ジブロモ−3−メトキシピリジン(化合物1020,126.0g,収率88%)を淡黄色固体として得た:ESMS(M+H)266、268、270;H NMR(DMSO−d)δ8.1(s,1H),7.8(s,1H),3.9(s,3H)。
【0135】
スキーム6の工程6−ivに示されるように、化合物1020(5g,18.73mmol)を乾燥THF(94mL)に溶解し、そしてPd(PPh(2.16g,1.873mmol)を添加した。この反応混合物を氷浴中で冷却し、そして3/1のTHF/トルエン中のメチルマグネシウムブロミド(17.4mL,1.4M,24.35mmol)をゆっくりと添加した。この氷浴を取り除き、そしてこの反応物を加熱還流した。この反応物を還流しながら1時間撹拌し、そして3mLのメチルマグネシウムブロミド溶液を添加した。この反応物を還流しながらさらに20分間撹拌し、そして2mLのメチルマグネシウムブロミド溶液を添加した。この反応物を還流しながら1時間撹拌し、そしてRTまで冷却した。エチルエーテルおよび1NのHClを添加し、そしてその有機層を分離し、そして1NのHClで洗浄した。その水性抽出物をエチルエーテルで3回洗浄した。その水性を、2NのNaOHで塩基性にし、そして酢酸エチルで3回抽出した。これらの酢酸エチル抽出物を合わせ、そしてNaSOで乾燥させ、次いで、減圧下で濃縮した。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜25%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、5−ブロモ−3−メトキシ−2−メチルピリジン(化合物1021,2.7g,収率71%)を得た:ESMS(M+H)202、204。5−ブロモ−2−エチル−3−メトキシピリジンを類似の手順により作製した:ESMS(M+H)216、218;1H NMR(CDCl)δ8.2(d,1H),7.2(d,1H),3.8(s,3H),2.8(q,2H),1.2(t,3H)。
【0136】
スキーム6の工程6−vに示されるように、化合物1020(3.6g,13.5mmol)、カリウムシクロプロピル−トリフルオロ−ボロン(2.5g,16.9mmol)、およびリン酸カリウム(8.6g,40.5mmol)を、約80mLのトルエン/水混合物に入れた。この反応混合物を窒素ガスで10分間フラッシュし、そしてPd(PPh(1.4g,(1,21mmol)を添加した。この反応混合物を18時間還流すると、HPLC分析によれば、生成物の混合物が得られた。この反応物を冷却し、EtOAcおよび飽和NaClで希釈した。その有機物を分離し、乾燥させ(MgSO)、そして減圧下で濃縮して固体を得、これを中圧シリカゲルクロマトグラフィー(0〜8%EtOAc/ヘキサン勾配)で精製して、5−ブロモ−2−シクロプロピル−3−メトキシピリジン(化合物1022,0.54g,70%純粋)を得た:ESMS(M+H)227.9/229.9。この化合物を引き続く反応でそのまま使用した。
【0137】
スキーム6の工程6−viに示されるように、1mLのDMF中の2−プロパノール(287μL,3.75mmol)を、4mLのDMF中の水素化ナトリウム(187mg/鉱油中60%,4.682mmol)の懸濁物にRTで添加した。この混合物を30分間撹拌し、次いで、4mLのDMF中の2,5−ジブロモ−3−メトキシピリジン(500mg,1.873mmol,化合物1020)の撹拌溶液に60℃で添加した。この反応物を60℃で2時間加熱した。RTまで冷却した後に、水および酢酸エチルを添加し、そして層を分離した。その水層を酢酸エチルで抽出し、そしてその有機物を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。その残渣をシリカゲルに吸着させ、これを酢酸エチル/ヘキサン(0〜40%)で溶出して、5−ブロモ−2−イソプロポキシ−3−メトキシピリジン(化合物1023,0.16g,収率35%)を得た:H NMR(CDCl)δ7.77(d,J=2.1Hz,1H),7.13(d,J=2.0Hz,1H),5.35(七重線,J=6.2Hz,1H),3.87(s,3H),1.40(d,J=6.2Hz,6H)。5−ブロモ−3−メトキシ−2−プロポキシピリジンおよび5−ブロモ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−3−メトキシピリジンを、類似の手順により調製した。
【0138】
【化29】

(実施例7.6−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(ピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物6)の調製)
スキーム7の工程7−iに示されるように、2,4−ジブロモアニリン(Aldrich Chemical Co.Cat.No.D3,840−5,1.0g;4.0mmol)およびトリエチルアミン(3.33mL;2.43g;24.0mmol)を10mLの乾燥p−ジオキサンに窒素雰囲気下で溶解した。得られた溶液を10分間かけて、20mLの乾燥p−ジオキサン中のチオホスゲン(920μL;1.38g;12.0mmol)の撹拌溶液に滴下により添加した。この反応物をRTで1時間、窒素雰囲気下で撹拌し、次いで、60℃で1時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去し、そしてその残渣を少量のジオキサンに溶解し、このジオキサンもまた、減圧下で除去した。ジオキサンへの溶解および溶媒の除去をもう1回繰り返し、そして得られた2,4−ジブロモ−1−イソチオシアナトベンゼン(化合物1024)を乾燥DMFに溶解し、そして引き続く反応のためのストック溶液として利用した。
【0139】
スキーム7の工程7−iiに示されるように、10mLの乾燥DMF中の2,4−ジブロモ−1−イソチオシアナトベンゼン(1.0g;3.43mmol)に、3−アミノピリジン(321mg;3.40mmol)を一度に加えた。この反応物をRTで12時間、密封容器内で撹拌した。この反応容器を開き、そして窒素ガスで3分間パージし、続いて炭酸セシウム(3.34g;6.80mmol)および10モル%のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(394mg)を添加した。この反応容器を密封し、そしてマイクロ波照射下90℃で5分間加熱した。冷却後、この混合物をケイ藻土のパッドで濾過し、そして揮発性物質を減圧下で除去した。その残渣をジエチルエーテルで粉砕して、6−ブロモ−N−(ピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物1025,98mg,収率76%)を生成し、これをさらに精製せずに引き続く反応において使用した:ESMS(M+H)306、308。
【0140】
スキーム7の工程7−iiiに示されるように、6−ブロモ−N−(ピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(200mg,0.65mmol)、3−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(230mg;0.98mmol)、および1.0mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を、5mLのDMAに溶解した。この混合物を窒素ガスで5分間フラッシュし、二塩化パラジウム(dppf)(10mol%,69mg)を添加し、そしてそのバイアルを密封した。この混合物を100℃で10分間、マイクロ波照射下で加熱した。冷却後、この溶液をTFAで中和し、そしてその溶媒を減圧下で除去した。得られた粗製物質を、アセトニトリル/水の勾配(0.1%のTFAを含む)を使用して逆相HPCLで精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、そして凍結乾燥させて、6−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(ピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物6,33.2mg,収率60%)を淡黄色粉末として得た:ESMS(M+H)335。
【0141】
【化30】

(実施例8.6−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(ピラジン−2−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物1)の調製)
スキーム8の工程8−iに示されるように、N−(6−ブロモベンゾ[d]チアゾール−2−イル)アセトアミド[2−アミノ−6−ブロモベンゾチアゾール(Aldrich Chemical Co.)および無水酢酸から調製した。1.5g,5.53mmol]および3−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(1.95g;8.3mmol)を、45mLの乾燥DMFに溶解し、そしてこの混合物を窒素ガスで10分間フラッシュし、その後、PdCl(dppf)(400mg;055mmol)および16.6mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液(約3当量)を添加した。この反応物を窒素雰囲気下110℃で1.0時間撹拌した。この反応物を冷却し、そして揮発性物質を減圧下で除去し、暗色の残渣を得、これを次の反応においてそのまま使用した。
【0142】
スキーム8の工程8−iiに示されるように、工程8−iから得られた残渣を、50mLの2N HCl中にスラリー化し、そして60℃まで加熱し、この固体のほとんどを溶解させた。この懸濁物をケイ藻土の熱パッドで濾過し、このパッドを少量の温1N HClで洗浄した。その濾液を油浴(100℃)中で6.0時間、アセチルが完全に加水分解されるまで加熱した(この反応を完了まで導くために、少量の12M HClの繰り返しの添加が必要であった)。この反応混合物を冷却し、ケイ藻土のパッドで吸引濾過し、そしてそのpHを、最初に50%NaOHを用い、次いで炭酸ナトリウム溶液を用いて、10に調整した。ベージュ色の固体が形成され、この固体を濾過し、水で洗浄し、そして減圧下で乾燥させて、6−(5−メトキシピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物1026,1.23g。収率86%)を得た:LCMS(M+H)300。
【0143】
スキーム8の工程8−iiiに示されるように、6−(5−メトキシピリジン−3−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(250mg;0.97mmol)を4.0mLの乾燥DMAに溶解した。炭酸セシウム(650mg;2.0mmol]および2−クロロピラジン(Aldrich Chemical Co.Cat.No.13,248−9,250mg;2.35mmol)を添加し、そしてこの混合物を密封管内で、マイクロ波照射下200℃で15分間加熱した。冷却後、揮発性物質を減圧下で除去し、そして残渣をアセトニトリル/水の勾配(0.1%TFA)を使用する逆相HPLCで精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、そして凍結乾燥させて、(化合物1,50mg,収率15%)をオフホワイトの粉末として得た:LCMS(M+H)336。
【0144】
【化31】

(実施例9.6−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(チアゾール−2−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物4)の調製)
スキーム9の工程9−iに示されるように、6−ブロモ−2−クロロベンゾ[d]チアゾール(50mg;0.2mmol)、2−アミノチアゾール(Acros Chemical Co.,50mg;0.45mmol)、および炭酸セシウム(130mg,0.4mmol)を、1mLのDMAに溶解した。この反応物をマイクロ波照射下110℃で10分間加熱した。この反応混合物をケイ藻土のパッドで濾過した後に、揮発性物質を減圧下で除去し、そして残渣を、溶出液として酢酸エチルを使用するシリカゲルで精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、そして揮発性物質を減圧下で除去した。得られた6−ブロモ−N−(チアゾール−2−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物1027)をそのまま次の反応において使用した。
【0145】
従って、スキーム9の工程9−iiに示されるように、工程9−iからの50mgの化合物1027および3−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(53mg,0.4mmol)を、2.0mLのDMAに溶解し、そして200μLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を添加した。この混合物を窒素ガスで3分間フラッシュし、そして10モル%のPdCl(dppf)(13mg)を添加した。この反応容器を密封し、そしてこの混合物をマイクロ波照射下110℃で10分間加熱した。冷却後、揮発性物質を減圧下で除去し、そして残渣を、アセトニトリル/水の勾配(0.1%TFA)で溶出する逆相HPLCにより精製した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、そして凍結乾燥させて、6−(5−メトキシピリジン−3−イル)−N−(チアゾール−2−イル)ベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(化合物4,12mg,収率40%)を黄色粉末として得た:LCMS(M+H)341。
【0146】
【化32】

表2は、特定の式Iの化合物についての分析特徴付けデータを提供する(空欄は、その試験を実施しなかったことを示す)。表2における化合物番号は、表1に示される化合物番号に対応する。
【0147】
【表2−1】

【0148】
【表2−2】

【0149】
【表2−3】

【0150】
【表2−4】

【0151】
【表2−5】

【0152】
【表2−6】

【0153】
【表2−7】

【0154】
【表2−8】

【0155】
【表2−9】

【0156】
【表2−10】

(本発明の化合物の生物学的アッセイ)
(実施例10 PI3K阻害アッセイ)
Beckman CoulterからのBiomek FXを用いて、100%DMSOにおける本発明の化合物の2.5倍連続希釈物10個につき、それぞれ1.5μLを96ウェルのポリスチレンプレート[Corning、Costar Item No.3697]における個々のウェル(今後、「テストウェル」)に加えた。1つのテストウェルはまた、化合物を有さない1.5μLのDMSOを含んだ。別のウェルは、酵素を完全に阻害することが知られる濃度でDMSO中にインヒビターを含んだ(今後、「バックグラウンドウェル」)。Titertek Multidropを用いて、50μLの反応混合物[100mM HEPES pH7.5、50mM NaCl、10mM DTT、0.2mg/mL BSA、60μM ホスファチジルイノシトール(4,5)−ビスホスフェート diC16(PI(4,5)P;Avanti Polar Lipids、Cat.No.840046P)、および関心のあるPI3Kアイソフォーム(アイソフォーム濃度に関して表3を参照のこと)]をそれぞれのウェルに加えた。反応を開始するために、50μLのATP混合物[20mM MgCl、6μM ATP(100μCi/μモル 33P−ATP)]をそれぞれのウェルに加え、その後、そのウェルを30分間、25℃でインキュベートした。それぞれのウェルにおける最終濃度は、50mM HEPES 7.5、10mM MgCl、25mM NaCl、5mM DTT、0.1mg/mL BSA、30μM PI(4,5)P、3μM ATP、および関心のあるPI3Kアイソフォームであった(表3を参照のこと)。それぞれのウェルにおける最終の化合物濃度は、10μM〜1nMに及んだ。
【0157】
【表3】

インキュベーション後、それぞれのウェルにおける反応を50μLの停止液[30% TCA/水、10mM ATP]の添加によりクエンチした。クエンチされた反応混合物のそれぞれを次に96ウェルガラスファイバーフィルタープレート[Corning、Costar Item No.3511]に移した。そのプレートを真空濾過し、改変されたBio−Tek Instruments ELX−405 Auto Plate Washerにおいて、150μLの5%TCA/水で3回洗浄した。50μLのシンチレーション流体をそれぞれのウェルに加え、そのプレートをPerkin−Elmer TopCountTM NXT液体シンチレーション計数器において読み、33P−計数表示阻害値(33P−counts representing inhibition value)を得た。
【0158】
バックグラウンドウェルに対する値を、各テストウェルに対して得られる値から減算して、データをMorrison and Stone,Comments Mol.Cell Biophys.2:347−368,1985によって記載される競合タイトバインディングKi方程式(competitive tight binding Ki equation)に合わせた。
【0159】
化合物1〜116のそれぞれは、PI3Kγに対して1.5マイクロモーラーより低いKを有する。化合物1〜6、8〜44、55、63、70〜72、79〜82、89、94、96、102〜104、107、109〜110、および113〜116のそれぞれは、PI3Kγに対して0.1マイクロモーラーより低いKを有する。1つの例において、化合物110は、0.003マイクロモーラーのKを有する。
【0160】
化合物1〜43、45〜47、49〜52、55、57、60、63〜65、70〜73、75、77、79〜83および85〜116のそれぞれは、PI3Kαに対して1.5マイクロモーラーより低いKを有する。化合物1、2、4、10〜17、19〜31、33〜41、43、81〜82、91、96、99、102、110、および112〜116のそれぞれは、PI3Kαに対して0.1マイクロモーラーより低いKを有する。1つの例において、化合物37は、0.002マイクロモーラーのKを有する。
【0161】
本明細書中で引用された全ての刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特許のそれぞれが具体的に、かつ個々に参考として援用されることが示されるかのごとく、本明細書中で参考として援用される。前述の発明は、いくらかの詳細において、理解を明瞭にする目的のために例示および例として記載されるが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から外れることなく、特定の変更および改変がそこへ行われ得ることは当業者にとって容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化33】

を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であって、該式において:
Xは、NまたはCHであり;
は、フェニル環、5員ヘテロアリール環、6員ヘテロアリール環、または9員もしくは10員の縮合二環式のヘテロアリールもしくは複素環式環系から選択され、該環または環系の各々は、1個、2個、または3個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換されており、そして該ヘテロアリール環または複素環式環の各々は、窒素、酸素、または硫黄から選択される1個、2個、または3個のヘテロ原子を有し;
1aは、クロロ、フルオロ、C1〜6脂肪族、C3〜6脂環式、−C(O)R1b、−C(O)N(R1b、−C(O)O(R1b)、−S(O)R1b、−S(O)N(R1b、−N(R1b、−N(R1b)C(O)R1b、−N(R1b)S(O)1b、−OR1b、−SR1b、または窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される3個までの原子を有する、5員〜6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、該脂肪族または脂環式の各々は、1個、2個、3個、または4個の存在のJで必要に応じて置換されており;
各Jは独立して、フルオロ、オキソ、−C(O)R1b、−C(O)N(R1b、−C(O)O(R1b)、−N(R1b、−N(R1b)C(O)R1b、−OR1b、−SR1b、フェニル、または窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される4個までの原子を有する、5員〜6員のヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、Jの該フェニル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルは、1個または2個のR1c基で必要に応じて置換されており;
各R1bは独立して、水素、C1〜4脂肪族、C3〜6脂環式、フェニル、ベンジルから選択され、JR1の該脂肪族、脂環式、フェニル、またはベンジルの各々は、3個までのR1c基で必要に応じて置換されており;
各R1cは独立して、クロロ、フルオロ、オキソ、C1〜2アルキル、1個〜3個のフッ素原子で置換されたC1〜2アルキル、C3〜6シクロアルキル、−OH、−OC1〜2アルキル、または1個〜3個のフッ素原子で置換された−OC1〜2アルキルから選択され;
は、水素、フルオロ、クロロ、C1〜6脂肪族、−OC1〜6脂肪族、C3〜6脂環式、−OC3〜6脂環式、シアノ、−NH、−NHC1〜6脂肪族、−NHC3〜6脂環式、−NHS(O)1〜6脂肪族、−NHS(O)3〜6脂環式、−NHS(O)フェニル、−NHS(O)ベンジル、−NHS(O)ヘテロアリール、−S(O)1〜6脂肪族、−S(O)3〜6脂環式、−S(O)フェニル、−S(O)ベンジル、−S(O)ヘテロアリール、−S(O)NHC1〜6脂肪族、−S(O)NHC3〜6脂環式、−S(O)NHフェニル、−S(O)NHベンジル、または−S(O)NHヘテロアリールであり、Rの該ヘテロアリールは、N、O、またはSから選択される1個、2個、または3個の原子を有する5員環または6員環であり、そしてRの該脂肪族、脂環式、フェニル、ベンジル、またはヘテロアリールは、1個、2個、または3個のR2a基で必要に応じて置換されており;
各R2aは、クロロ、フルオロ、オキソ、C1〜2アルキル、1個〜3個のフッ素原子で置換されたC1〜2アルキル、C3〜6シクロアルキル、−OH、−OC1〜2アルキル、または1個〜3個のフッ素原子で置換された−OC1〜2アルキルから選択され;そして
は、水素、フルオロ、クロロ、C1〜3脂肪族、シクロプロピル、−OC1〜3脂肪族、NH、またはNHC1〜3脂肪族であり、Rの該脂肪族は、3個までの存在のフルオロで必要に応じて置換されている、
化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
XがNである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項3】
が、N、O、またはSから選択される1個〜3個のヘテロ原子を有する、5員または6員のヘテロアリール環であり、そして1個、2個、または3個のR1a基で必要に応じて置換されている、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項4】
が、必要に応じて置換されるピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、チアゾール環、ピラゾール環、またはチアジアゾール環である、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項5】
が、
【化34】

から選択される、請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項6】
が、窒素、酸素、または硫黄から選択される1個、2個、または3個のヘテロ原子を有する、9員または10員の縮合二環式のヘテロアリールまたは複素環式環系から選択され、そして1個、2個、または3個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換されている、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項7】
が、
【化35】

から選択される、請求項6に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項8】
が、1個、2個、または3個の独立した存在のR1aで必要に応じて置換されるフェニル環である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項9】
が、
【化36】

【化37】

【化38】

から選択される、請求項8に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項10】
およびRの各々が、3個までのR2a基で必要に応じて置換されるC1〜3脂肪族または−OC1〜3アルキルである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項11】
が−OC1〜3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が−CFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
【化39】


【化40】

から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項14】
前記化合物が:
【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含有する、薬学的組成物。
【請求項16】
多発性硬化症を処置するための剤、抗炎症剤、免疫調節剤、または免疫抑制剤から選択される治療剤をさらに含有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
脳または脊椎の炎症性疾患または自己免疫疾患から選択される疾患または状態を処置するか、あるいは該疾患または状態の重篤度を低下させる方法であって、請求項1に記載の化合物もしくはその塩、またはその薬学的組成物を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記疾患または障害が多発性硬化症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者にさらなる治療剤を投与する工程をさらに包含し、該さらなる治療剤は、処置される疾患のために適切であり、そして該さらなる治療剤は、前記化合物または前記組成物と一緒に単回用剤形として投与されるか、あるいは該化合物または該組成物とは別に複数回用剤形の一部として投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
生物学的サンプルにおけるPI3K−γキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法は、該生物学的サンプルを請求項1に記載の化合物または請求項15に記載の組成物と接触させる工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2012−519177(P2012−519177A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552149(P2011−552149)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025343
【国際公開番号】WO2010/135014
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】