説明

三環性プロリン誘導体

本発明は、抗腫瘍作用、肌の老化抑制作用、肌質改善作用、創傷治癒作用、皮膚炎治療作用または関節炎治療作用を有する新規な三環性プロリン誘導体を提供することを目的として、式(I)


(式中、Rはヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルキニルオキシ、低級アルキルスルファニル、置換もしくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルスルファニル、シクロアルキルメトキシ等を表し、Rは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール等を表す)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗腫瘍剤、肌の老化抑制剤、肌質改善剤、創傷治癒剤、皮膚炎治療剤または関節炎治療剤として有用な三環性プロリン誘導体に関する。
【背景技術】
抗腫瘍剤として有用な三環性プロリン誘導体が知られている(特開昭63−101336号公報および米国特許第6,362,331号参照)。
ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシプロリン誘導体が、表皮細胞の増殖促進作用、線維芽細胞のコラーゲン合成促進作用、表皮の水分保持機能向上作用、しわ形成抑制または改善作用等を有することから、肌の老化抑制、肌質改善等に有効であることが知られている(国際公開第00/51561号参照)。また、皮膚病変部では、皮膚のバリア機能が破壊されているため、正常な機能を果たせなくなっていることが知られている[グリス(Grice KA)著,ジャレット(Jarrett A)編集,「Physiology and Pathophysiology of the Skin.London」,1980年,p.2147−2155]。従って、皮膚線維芽細胞からのコラーゲンまたはヒアルロン酸合成を促進することにより皮膚のバリア機能を高められれば、皮膚の正常機能を回復させることができると考えられる。また、薬剤のスクリーニングに有用なベンゾジアゼピンジオンライブラリーが知られている(米国特許第5,962,337号参照)。
【発明の開示】
本発明の目的は、抗腫瘍作用、肌の老化抑制作用、肌質改善作用、創傷治癒作用、皮膚炎治療作用または関節炎治療作用を有する新規な三環性プロリン誘導体を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1)式(I)

{式中、Rはヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルキニルオキシ、低級アルキルスルファニル、置換もしくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルスルファニル、シクロアルキルアルキルオキシまたはNHR[式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のヘテロアリールスルホニルまたは

(式中、Rは低級アルキル、シクロアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)を表す]を表し、Rは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、

(式中、Rは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、シクロアルキル、カルボキシ、カルバモイルまたは脂環式複素環カルボニルを表す)または

(式中、R5XはRと同義である)を表す}で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
(2)Rがヒドロキシである前記(1)記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(3)RがNHR3a(式中、R3aは置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールスルホニルを表す)である前記(1)記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(4)R

(式中、R4aは置換もしくは非置換のアリールを表す)である前記(1)記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(5)Rが置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(6)R

(式中、Rは前記と同義である)である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(7)R

(式中、R5aは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは脂環式複素環カルボニルを表す)である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(8)R

(式中、R5Xaは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは脂環式複素環カルボニルを表す)である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
式(I)の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキル、より具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
アリールとしては、例えば単環性、2環性または3環性の芳香環基、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。
ヘテロアリールとしては、例えば単環性、2環性または3環性の芳香族複素環基、より具体的にはピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリミジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、キノリル、キノキサリニル、キナゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。
低級アルコキシ、低級アルキルスルファニル、低級アルカノイルおよび低級アルキルスルホニルの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。
低級アルキニルオキシの低級アルキニル部分としては、例えば炭素数2〜6のアルキニル、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
アリールアルキルオキシのアリール部分は前記アリールと同義であり、アルキレン部分は前記低級アルキルから水素を1つ除去した基と同義であり、ヘテロアリールアルキルスルファニルのヘテロアリール部分は前記ヘテロアリールと同義であり、アルキレン部分は前記低級アルキルから水素を1つ除去した基と同義である。
シクロアルキルアルキルオキシのシクロアルキル部分は前記シクロアルキルと同義であり、アルキレン部分は前記低級アルキルから水素を1つ除去した基と同義である。
アロイルおよびアリールスルホニルのアリール部分ならびにヘテロアロイルおよびヘテロアロイルおよびヘテロアリールスルホニルのヘテロアリール部分はそれぞれ、前記アリールおよびヘテロアリールと同義である。
脂環式複素環カルボニルの脂環式複素環基部分としては、例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ等が挙げられる。
置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アリールアルキルオキシ、置換ヘテロアリールアルキルスルファニル、置換アロイル、置換ヘテロアロイル、置換アリールスルホニルおよび置換ヘテロアリールスルホニルにおける置換基としては、同一または異なって、置換数1〜置換可能な数の、好ましくは置換数1〜5の、例えば置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基としては、例えば置換数1〜3の、具体的には後述する置換低級アルカノイルにおける置換基の定義で例示するものと同様のものが挙げられる)、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルアミノ、低級アルキルスルファニル、ニトロ、ハロゲン、メチレンジオキシ、カルボキシ等が挙げられる。低級アルキル、低級アルコキシおよび低級アルキルスルファニルはそれぞれ前記と同義であり、低級アルカノイルアミノの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。ハロゲンは、ヨウ素、臭素、塩素またはフッ素の各原子を意味する。
置換低級アルカノイルおよび置換脂環式複素環カルボニルにおける置換基としては、同一または異なって、置換数1〜置換可能な数の、好ましくは置換数1〜3の、例えば置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基としては、例えば置換数1〜3の、具体的には低級アルコキシ等が挙げられる)、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルキルスルファニル、カルボキシメトキシ、カルボキシメチルスルファニル、カルボキシ、ヘテロアリール、脂環式複素環基等が挙げられる。アリール、ハロゲン、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルキルスルファニルおよびヘテロアリールはそれぞれ前記と同義であり、脂環式複素環基は前記脂環式複素環カルボニルの脂環式複素環基部分と同義である。
化合物(I)の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。
化合物(I)の薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
なお、以下に示した製造方法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するか、または方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される方法、例えば、官能基の保護、脱保護[例えば、グリーン(T.W.Greene),「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)」,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons,Inc.),1981年等参照]等の手段に付すことにより容易に製造を実施することができる。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
工程1および工程2
化合物(I)のうち、Rが定義中の

(式中、R5Xは前記と同義である)以外の基である化合物(Ia)は、次の反応工程により製造することができる。

(式中、Rは前記と同義であり、R2aは前記Rの定義中の

(式中、R5Xは前記と同義である)以外の基であり、Bocはt−ブトキシカルボニル基を表す)
化合物(Ia)は、後述の方法により得られるポリスチレン樹脂上に担持されたベンゾイルプロリン誘導体(II)のBocを脱保護した後、塩基で処理することにより分子内閉環させ、ポリスチレン樹脂とのエステル結合を切断することによって得ることができる。
1)工程1(Boc保護基の脱保護)
化合物(II)に、溶媒存在下で酸を添加する通常の脱保護条件により、Bocを脱保護することができる。酸としてはトリフルオロ酢酸等が、化合物(II)に対して、1当量〜溶媒量用いられ、溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等が単独または混合して用いられる。反応は室温〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜24時間で完了する。
2)工程2(環化による樹脂からの切り出し)
工程1で得られた脱保護体に、溶媒存在下で塩基を添加することにより、分子内閉環を進行させると同時にポリスチレン樹脂とのエステル結合を切断し、化合物(Ia)を製造することができる。塩基としては、アンモニア等が過剰量用いられ、溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール、ジクロロメタン、クロロホル厶等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等が単独または混合して用いられる。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜24時間で完了する。
以下に、原料となる化合物(II)の製造法について説明する。
工程3〜工程8
化合物(II)のうち、RがNHR(式中、Rは前記と同義である)であり、R2a

(式中、Rは前記と同義である)である化合物(IIaa)は以下の方法で製造することが、できる。

(式中、R、RおよびBocはそれぞれ前記と同義であり、Xは塩素、臭素またはヨウ素の各原子を表し、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基をそれぞれ表す)
1)工程3(ポリスチレン樹脂へのプロリン誘導体の導入)
市販または既知法の組み合わせにより合成できるプロリン誘導体(IIIa)と、水酸基を有するポリスチレン樹脂、例えば4−ヒドロキシメチル安息香酸アミド樹脂(HMBA−AM resin)を、必要に応じ塩基の存在下、適当な縮合剤で処理することにより化合物(ia)を製造することができる。プロリン誘導体(IIIa)は通常ポリスチレン樹脂上の水酸基に対し1〜5当量用いられる(以下、対象を明記しない場合の当量は、ポリスチレン樹脂上の水酸基に対しての当量を表す)。縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドのようなカルボジイミドが1〜5当量用いられ、塩基としては、1−メチルイミダゾールのような有機塩基が1〜5当量用いられる。反応は通常溶媒中で行われ、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等が単独または混合して用いられる。反応は室温〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜24時間で完了する。
2)工程4(Fmoc保護基の脱保護)
Fmocの脱保護は、通常の脱保護条件、すなわち1当量〜溶媒量のピペリジン、ピロリジン等の2級アミンの存在下、溶媒中で行われる。溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等が単独または混合して用いられ、前記2級アミンを溶媒量用いる場合は、2級アミンを溶媒として用いてもよい。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、5分〜24時間で完了する。
3)工程5(アミノ基の修飾)
工程4で得られた1級アミンを、イソシアネート、カルボン酸またはカルボン酸無水物を用いて修飾することにより、またはスルホニルクロリドを用いて修飾することにより化合物(iia)を製造することができる。
方法1:イソシアネートによる修飾は、通常1〜10当量のイソシアネートを用い、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中で行われる。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜24時間で完了する。
方法2:カルボン酸による修飾は、通常1〜10当量のカルボン酸を用い、1〜10当量の2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート等の縮合剤、および必要に応じ1〜10当量のジイソプロピルエチルアミン等の塩基存在下、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中で行われる。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜24時間で完了する。
方法3:カルボン酸無水物による修飾は、通常1〜10当量のカルボン酸無水物を用い、1当量〜溶媒量のピリジン等の塩基存在下、必要に応じ0.1〜10当量の4−ジメチルアミノピリジン等の触媒を加え、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中で行われる。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、1時間〜1週間で完了する。
方法4:スルホニルクロリドによる修飾は、通常1〜10当量のスルホニルクロリドを用い、1当量〜溶媒量のピリジン等の塩基存在下、必要に応じ0.1〜10当量の4−ジメチルアミノピリジン等の触媒を加え、塩基を溶媒量用いる場合は、塩基中で、それ以外の場合は、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中で行われる。反応は0℃〜溶媒の沸点以下の温度で、1時間〜1週間で完了する。
4)工程6(Boc保護基の脱保護)
化合物(iia)のBocの脱保護は、工程1と同様な反応条件で行うことができる。
5)工程7(アントラニル酸誘導体との縮合)
工程6で得られた化合物と、N−t−ブトキシカルボニルアントラニル酸誘導体(IVa)より、工程5の方法2と同様な反応条件で反応させることにより化合物(iiiaa)を製造することができる。
6)工程8(アルケンとのカップリング)
工程7で得られた化合物(iiiaa)を、1〜50当量のアルケン(CH=CHR)と、溶媒中、触媒および塩基を添加して、カップリングすることにより化合物(IIaa)を製造することができる。触媒としては、0.1〜1当量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム触媒、および1〜10当量の塩化テトラ−N−ブチルアンモニウ厶等の4級アンモニウム塩が用いられ、塩基としては、1〜10当量のトリエチルアミン等が用いられる。必要に応じて0.1〜1当量のトリフェニルホスフィン等を加えてもよい。溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中が用いられる。反応は、室温〜溶媒の沸点以下の温度で、1〜36時間で完了する。
工程9〜工程12
化合物(II)のうち、RがNHR(式中、Rは前記と同義である)であり、R2aが定義中の

(式中、Rは前記と同義である)以外の基である化合物(IIab)は以下の方法で製造することができる。

[式中、R、BocおよびFmocはそれぞれ前記と同義であり、R2bはRの定義中の

(式中、Rは前記と同義である)以外の基を表す]および

(式中、R5Xは前記と同義である)以外の基を表す]
1)工程9(Boc保護基の脱保護)
工程3で得られる化合物(ia)のBocの脱保護は、工程1と同様な反応条件で行うことができる。
2)工程10(アントラニル酸誘導体との縮合)
工程9で得られた化合物と、N−t−ブトキシカルボニルアントラニル酸誘導体(IVb)を、工程5の方法2と同様な反応条件で反応させることにより化合物(iiiab)を製造することができる。
3)工程11(Fmoc保護基の脱保護)
化合物(iiiab)のFmocの脱保護は、工程4と同様な反応条件で行うことができる。
4)工程12(アミノ基の修飾)
工程11で得られた1級アミンを、工程5と同様な反応条件で反応させることにより、化合物(IIab)を製造することができる。
工程12〜工程15
化合物(II)のうち、RがNHR(式中、Rは前記と同義である)以外の基であり、R2a

(式中、Rは前記と同義である)である化合物(IIba)は以下の方法で製造することができる。

[式中、R、XおよびBocはそれぞれ前記と同義であり、R1bはRの定義中、NHR(式中、Rは前記と同義である)以外の基を表す]
1)工程12
市販または既知法の組み合わせにより合成できるプロリン誘導体(IIIb)を、工程3と同様な反応条件で反応させることにより、化合物(ib)を製造することができる。
2)工程13(Boc保護基の脱保護)
化合物(ib)のBocの脱保護は、工程1と同様な反応条件で行うことができる。
3)工程14(アントラニル酸誘導体との縮合)
工程13で得られた化合物と、N−t−ブトキシカルボニルアントラニル酸誘導体(IVa)を、工程5の方法2と同様な反応条件で反応させることにより化合物(iiiba)を製造することができる。
4)工程15
工程8と同様な反応を行うことにより、化合物(iiiba)より化合物(IIba)を製造することができる。
工程16および工程17
化合物(II)のうち、RがNHR(式中、Rは前記と同義である)以外の基であり、R2aが定義中の

(式中、Rは前記と同義である)以外の基である化合物(IIbb)は以下の方法で製造することができる。

(式中、R1b、R2bおよびBocはそれぞれ前記と同義である)
1)工程16(Boc保護基の脱保護)
工程12で得られる化合物(ib)のBocの脱保護は、工程1と同様な反応条件で行うことができる。
2)工程17(アントラニル酸誘導体との縮合)
工程16で得られた化合物を、工程10と同様な反応条件で反応させることにより、化合物(IIbb)を製造することができる。
以下に、原料となる化合物(IVb)の製造法について説明する。
工程18および工程19

(式中、R2b、XおよびBocはそれぞれ前記と同義である)
1)工程18
市販または、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem),1997年,62巻,p.1240に示された方法を参考にして製造されるアントラニル酸誘導体(IVa)と、1〜10当量のアリールまたはヘテロアリールボロン酸誘導体[R2bB(OH)]とを溶媒中、触媒存在下でカップリングすることにより化合物(iv)を製造することができる。触媒としては、化合物(IVa)に対して通常0.01〜1当量の酢酸パラジウム(II)等が用いられ、配位子としては、必要に応じ化合物(IVa)に対して0.01〜1当量のトリフェニルホスフィン、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル等のホスフィン配位子が用いられ、添加剤としては、必要に応じ化合物(IVa)に対して1〜10当量のフッ化セシウム等が用いられる。反応は、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等の溶媒中またはそれらの混合溶媒中、室温〜溶媒の沸点以下の温度で行われ、1〜24時間で完了する。
2)工程19
工程18で得られた化合物(iv)を溶媒中、塩基を添加して、加水分解することにより、化合物(IVb)を製造することができる。塩基としては、化合物(iv)に対して1〜5当量の水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等が用いられ、溶媒としては、通常、メタノール、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、またはそれらの混合溶媒で行われ、必要に応じ水を添加してもよい。反応は、室温〜溶媒の沸点以下の温度で行われ、1〜24時間で完了する。
工程20
化合物(I)のうち、Rが定義中の

(式中、R5Xは前記と同義である)である化合物(Ib)は、化合物(Ia)のうち、R2aが定義中の

(式中、Rは前記と同義である)である化合物(Ic)から、次の反応工程により製造することができる。

(式中、Rは前記と同義であり、RとR5Xは前記と同義でかつ同一である)
1)工程20
化合物(Ic)を、溶媒中、触媒を添加して、水素雰囲気下または水素気流下、あるいは水素源となる化合物を添加して接触還元することにより化合物(Ib)を製造することができる。溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド等が単独あるいは混合して用いられ、触媒としては、重量比にして1/100〜1/3量のパラジウム/炭素等の接触還元触媒が用いられる。水素源となる化合物としては、1〜10当量のギ酸アンモニウム等が用いられる。反応は、室温〜溶媒の沸点以下の温度で行われ、1〜24時間で完了する。
原料となる化合物(IIIa)および(IIIb)のうち市販でないものは、例えば、オーガニック・レターズ(Org.Lett.),2001年,3巻p.2481、同2002年,4巻,p.3317、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.),2002年,67巻,p.3923、またはジャーナル・オブ・コンビナトリアル・ケミストリー(J.Comb.Chem.),2001年,3巻,p.367に示された方法、またはそれらを組み合わせた方法を参考にして製造することができる。
上記各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては特に精製することなく次の反応に供することも可能である。目的化合物がポリスチレン樹脂上に担持されている場合には、通常の固相反応で常用される各種溶媒での樹脂の洗浄法を適用することにより、ポリスチレン樹脂上に担持されたままで、次の工程に用いることができる。
化合物(I)の中には、幾何異性体、光学異性体、互変異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらのいかなる比率における混合物も本発明に包含される。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明に包含される。
以下、第1−1表〜第1−6表に化合物(I)の具体例を示すが、本発明の化合物はこれらに限定されることはない。






































次に、代表的な化合物(I)の薬理作用について実験例により具体的に説明する。
実験例1 ヒト白血病細胞株に対する増殖抑制活性
ヒト急性骨髄性白血病細胞株ML−1、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562に対する試験物質の細胞増殖抑制率(%)の測定を以下の方法で実施した。各細胞の培養には10%牛胎児血清(ギブコ社、カタログ番号10437−028)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ギブコ社、カタログ番号15140−122)を含むRoswell Park memorial Institute’s Medium 1640(RPMI)培地(ギブコ社、カタログ番号11875−093)を使用した。2.5×10個/mLに調製したML−1細胞、K562細胞をTC MICROWELL 96U plate(ナルジェン・ヌンク社、カタログ番号163320)に80μLずつ播種し、37℃で4時間、5%炭酸ガスインキュベーター内において培養し、ブランクのウェルには、RPMI培地のみを80μL添加した。最終濃度がそれぞれ10μmol/Lとなるように調整した試験物質を20μLずつ添加し、コントロールとブランクのウェルには最終濃度が0.1%となるように調整したジメチルスルホキシド溶液を20μLずつ添加した。試験物質添加後、37℃で72時間、5%炭酸ガスインキュベーター内において培養した。RPMI培地で50%に希釈したWST−1(4−[3−(4−Iodophenyl)−2−(4−nitrophenyl)−2H−5−tetrazolio]−1,3−benzene disulfonate)試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社、カタログ番号1644807)を20μL加え、37℃で2時間インキュベートした後に、マイクロプレート分光光度計SPECTRA max 340PC(モレキュラーデバイス社)を用い、450nm(対照波長690nm)の吸光度を測定した。コントロールのウェルの値を100%、ブランクのウェルの値を0%として、試験物質を加えたウェルの増殖率(%)を算出し、その値を100%から引いた値を試験物質の細胞増殖抑制率(%)とした。本値が大きいほど、細胞に対する増殖抑制活性が強いこと示している。
結果を第2表に示す。

実験例2 ヒト線維芽細胞におけるコラーゲン合成促進活性
ヒト新生児皮膚由来線維芽細胞株NB1RGB(理研セルバンク、茨城)を、10vol%牛胎児血清(ハイクローン社製、Logan,UT,USA)ペニシリンGカリウム50U/mL、およびストレプトマイシン50μg/mLを添加したミニマムエッセンシャルメディウムアルファメディウム(MEMアルファ培地中、インビトロジェン社製、Carlsbad,CA,USA)を用い、37℃、5%COの条件で定常期まで培養した。トリプシン/EDTA溶液(ベーリンガーマンハイム社製、Mannheim,Germany)処理により細胞を集め、1vol%牛胎児血清を含むMEMアルファ培地中で、2.1×10個/mLに調製し、48ウェルのマイクロプレート(ファルコン48ウェルマルチウェルティッシュカルチャープレート、ビーディーバイオサイエンス社製、Franklin Lakes,NJ,USA)に250μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で更に一晩培養した。翌日、培地を除去した後、1vol%牛胎児血清を含むMEMアルファ培地に溶解した試験物質を各ウェルに添加した。ひきつづき、37℃、5%COの条件下で3日間培養後、上清を回収した。1vol%牛胎児血清を含むMEMアルファ培地のみをウェルに添加したものをコントロールとして用いた。コラーゲンは細胞内でプロコラーゲンとして生合成され、細胞外に分泌されてコラーゲン線維として重合する。この時、プロコラーゲンのN末端およびC末端のプロペプチドが、エンドペプチダーゼにより遊離することが報告されており、培養上清中のプロコラーゲンI型C末端ペプチドを測定することにより、I型コラーゲン産生量を定量することができる(中塚喜義、関谷喜一郎、吉田博昭,日本骨代謝学会誌,1992年,10巻2号,p.173−180)。得られた培養上清中のプロコラーゲンI型C末端ペプチド濃度の測定は、プロコラーゲンI型C末端ペプチドEIAキット(タカラバイオ社製、滋賀)を用いて行った。測定は、キットの添付プロトコールに従って実施した。すなわち、全ての上清サンプルをキット付属の希釈緩衝液で10倍希釈したもの、ならびにキットに付属しているプロコラーゲンI型C末端ペプチド標準液(0、10、20、30、40、80、160、320ならびに640ng/mL)を測定に供した。マイクロプレートリーダー・パワーウェーブXセレクト(バイオテックインストロメンツ社製、Winooski,VT,USA)を使用して450nmでの吸光度を測定し、解析ソフトKC4(バイオテックインストロメンツ社製)を用いて解析した。作成した検量線から測定サンプルの濃度を算出した。コントロールに対する試験物質のプロコラーゲンI型C末端ペプチドの産生促進作用(コラーゲン合成促進活性)は式1に従って算出した。
結果を第3表に示す。


実験例3 ヒト線維芽細胞におけるヒアルロン酸合成促進活性
ヒト新生児皮膚由来線維芽細胞株NB1RGBを実験例2に従い、48ウェルのマイクロプレートで一晩培養した。翌日、培地を除去した後、1vol%牛胎児血清を含むMEMアルファ培地に溶解した試験物質を各ウェルに添加し、37℃、5%COの条件下で3日または6日間培養後、上清を回収した。コントロールとして、1vol%牛胎児血清を含むMEMアルファ培地のみを添加したものを用いた。
上清中に産生されたヒアルロン酸の定量はヒアルロン酸特異的結合タンパク質を利用する以下の方法で行った。すなわち、リン酸緩衝液(PBS、アイシーエヌバイオケミカル社製、Aurora,OH,USA)で希釈した0.5μg/mLのヒアルロン酸結合性タンパク質(生化学工業社製、東京)を96ウェルマイクロプレート(ナルゲンヌンク社製、Roskilde,Denmark)に1ウェル当たり50μL加え、4℃で一晩コーティングした。次に1vol%牛血清アルブミン(生化学工業社製)を含むPBS(BSA−PBS)を1ウェル当たり200μL加え、室温で1時間静置した後、BSA−PBSで10倍希釈した培養上清を1ウェル当たり50μL加えて2時間室温に静置した。また、ヒアルロン酸ナトウム塩(ヒト臍帯由来、生化学工業社製)を蒸留水で1mg/mLの濃度に溶解したストック溶液を0、3.125、6.25、12.5、25、50、100、200、400、800および1600ng/mLにBSA−PBSで希釈した標準試料も同様に処理した。プレートを0.05vol%のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20、和光純薬工業製)を含むPBS(Tween−PBS)で3回洗い、0.25μg/mLの濃度にBSA−PBSで希釈したビオチン標識ヒアルロン酸結合性タンパク質(生化学工業社製)を1ウェル当たり50μL加えた。室温で時間静置した後、Tween−PBSで3回洗い、BSA−PBSで4000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼアビジンD(生化学工業社製)を1ウェル当たり100μL加えて30分間室温に静置した。最後にこれらのプレートをTween−PBSで3回洗い、TMB substrate reagentset(ビーディー・ファーミジェン社製、San Diego,CA,USA)を1ウェル当たり100μL加え、発色したところで10vol%硫酸を1ウェル当たり100μL加えて反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。吸光度の測定には、マイクロプレートリーダー・パワーウェーブXセレクトを使用して450nmでの吸光度を測定し、解析ソフトKC4を用いて解析した。作成した検量線から培養上清中のヒアルロン酸濃度を算出した。コントロールに対する試験物質のヒアルロン酸の産生促進作用(ヒアルロン酸合成促進活性)は式2に従って算出した。
結果を第4表および第5表に示す。



実験例4 マウス角質水分蒸散量抑制作用
Balb/cマウスの吻側背部にアセトン/ジエチルエーテル混液(1:1)で15秒間、その後、蒸留水で60秒間の処置を1日2回、8時間以上の間隔で4日間行った。5日目、6日目、7日目に試験物質の0.33%アセトン溶液を吻側背部にそれぞれ50μL塗布した。対照群には、アセトンを50μL塗布した。各群6匹を用いた。5日目の化合物溶液塗布前、塗布12時間、24時間、72時間後の角質水分蒸散量(TEWL)値を水分蒸散量測定装置[ヴァボメーター(Vapo Meter)、デルフィン・テクノロジー社(Delfin Technologies Ltd)]で測定し、式3にしたがって角質水分蒸散量抑制率(%)を算出した。本値が大きいほど、角質水分蒸散量増加の回復が促進され、すなわち皮膚バリア機能を回復させて、水分の透過性を抑制すること示している。
結果を第6表に示す。


化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用されるものである。
本発明に係る医薬製剤は、抗腫瘍剤、肌の老化抑制剤、肌質改善剤、創傷治癒剤、皮膚炎治療剤または関節炎治療剤として用いることができる。活性成分として化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分(繊維芽細胞成長因子(FGF)、例えばタクロリムス等の免疫抑制剤、ビタミンD誘導体、ステロイド剤、抗生物質、抗ウイルス剤、非ステロイド抗炎症剤、例えばヒアルロン酸、9,10−ジヒドロ−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキシ−2−アントラセン酸ジ酢酸エステル等の抗リウマチ薬等)との混合物または合剤として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば経皮、静脈内、経鼻、経肺等の非経口をあげることができる。
投与形態としては、錠剤、散剤、軟膏、注射剤、外用液剤等があげられる。
経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤等は、乳糖、でんぷん等の賦形剤、澱粉等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウ厶等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤等を用いて製造できる。
経皮投与に適当な、例えば軟膏等は、ワセリン、パラフィン、ラノリン、マクロゴール等の軟膏基剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤等を用いて製造できる。
静脈内投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水製剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物を用いて注射用の溶液を調製する。
経鼻、経肺等の投与に適当な、例えば外用液剤は、塩化ナトリウム、ホウ酸等の等張化剤、リン酸水素ナトリウム等のpH調整剤、メチルセルロース等の粘稠剤等を用いて製造できる。
また、これら非経口剤においても、希釈剤、防腐剤、フレーバー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質または重篤度により異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01mg〜1g、好ましくは0.05〜50mgを一日一回ないし数回投与する。静脈内投与等の非経口投与の場合、成人一人当り0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mgを一日一回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
以下に、本発明の態様を実施例および参考例で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
下記実施例の各化合物の質量分析データは以下の機器によって測定し、第1−1表〜第1−6表中に機器データとして記した。
ESIMS:Waters ZQ
固相合成は、マクロカン[MacroKan イロリ社(IRORI)製]反応容器に封入したポリスチレン樹脂を用いることにより行った。また、同封したラジオ周波数タグ[アキュタグ(AccuTag)]にて、各マクロカンを区別して同一フラスコ内で複数化合物の反応を並列に実施した。
【実施例1】
第1−1表に示した化合物1〜139は、以下に示す一般的合成法に従って製造した。
1)第1工程:ポリスチレン樹脂へのプロリン誘導体の導入
マクロカンに封入した4−ヒドロキシメチルベンゾイルアミノメチルポリスチレン(Rapp Polymere GmbH社製 AM HMB resin:125−160μm、1.05mmol/g、約300mg)を、(2S,4S)−Fmoc−4−アミノ−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸(3当量)および1−メチルイミダゾール(2当量)のジクロロメタン溶液(1マクロカンあたり6mL)に加えた。続いて、ジイソプロピルカルボジイミド(2.5当量)を滴下した後、混合物を室温で一晩振盪した。デカンテーションにより溶液を除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンで交互に4回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
2)第2工程:Fmoc保護基の脱保護
第1工程で得られた化合物に、ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(20vol%、1マクロカンあたり4mL)を加え、室温で15分振盪した。デカンテーションにより溶液を除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホル厶アミド、ジクロロメタンで交互に3回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
3)第3工程:アミノ基の修飾
方法A)イソシアネートによる修飾
イソシアネート(4当量)のジクロロメタン(1マクロカンあたり4mL)溶液に、第2工程で得られた化合物を加え5時間加熱還流した。
方法B)カルボン酸による修飾
2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(4当量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4当量)のジクロロメタン/N,N−ジメチルホルムアミド(v/v=4:1、1マクロカンあたり4mL)溶液を氷浴で冷却した。ここに、カルボン酸(4当量)を加え、続いて第2工程で得られた化合物を加えた。得られた混合物を室温で一晩振盪した。
方法C)スルホニルクロリドによる修飾、および環状カルボン酸無水物による修飾
4−ジメチルアミノピリジン(4当量)および無水ピリジン(40当量)のジクロロメタン(1マクロカンあたり4mL)溶液を氷浴で冷却した。ここに、第2工程で得られた化合物を加え、続いてスルホニルクロリドまたはカルボン酸無水物を加えた。得られた混合物を室温で60時間振盪した。
方法A〜Cで得られた反応溶液をデカンテーションにより除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、メタノールで順番に2回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
4)第4工程:Boc保護基の脱保護
第3工程で得られた化合物に、トリフルオロ酢酸のジクロロメタン溶液(50vol%、1マクロカンあたり4mL)を加え、室温で2時間振盪した。反応溶液をデカンテーションにより除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンで交互に3回ずつ、続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミンのジクロロメタン溶液(2vol%)で2回洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
5)第5工程:アントラニル酸誘導体との縮合
2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(1.5当量)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.5当量)およびN−Boc−5−ブロモアントラニル酸(1.5当量)のジクロロメタン/N,N−ジメチルホルムアミド(v/v=4:1、1マクロカンあたり4mL)溶液を氷浴で冷却した。ここに、第4工程で得られた化合物を加え、得られた混合物を室温で一晩振盪した。反応溶液をデカンテーションにより除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、メタノールで順番に2回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
6)第6工程:アルケンとのカップリング
塩化テトラ−N−ブチルアンモニウム(1当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.2当量)、トリエチルアミン(2当量)およびアルケン(25当量)のジクロロメタン/N,N−ジメチルホルムアミド(v/v=4:1、1マクロカンあたり4mL)溶液に、第5工程で得られた化合物を加え、アルゴン気流下85℃で一晩加熱還流した。翌日、トリフェニルホスフィン(0.2当量)およびトリエチルアミン(2当量)をさらに加え、85℃で一晩加熱還流した。反応溶液を室温に冷却し、反応溶液をデカンテーションにより除去した後、マクロカンに封入した樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド/水(v/v=1:1)、テトラヒドロフラン/5%酢酸水溶液(v/v=1:1)、テトラヒドロフランで洗浄した。さらに、ジクロロメタン、メタノールで交互に2回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄し真空下で乾燥した。
7)第7工程:Boc保護基の脱保護
第4工程とほぼ同様な方法で、第6工程で得られた化合物のBoc保護基を脱保護した。
8)第8工程:環化による樹脂からの切り出し
冷却した飽和アンモニアメタノール溶液、メタノール、ジクロロメタンの混合溶液(v/v/v=40:30:60、1マクロカンあたり4mL)を調製し7、第7工程で得られたマクロカンに封入された樹脂に加えた。それぞれの反応容器を密封し、室温で一晩振盪した。得られた溶液を加圧または減圧濾過し、続いて樹脂にメタノール/ジクロロメタン混合溶液(v/v=1:1、4mL)を加え、5分間振盪後、溶液を濾過した。得られた溶液をあわせて減圧下濃縮することにより対応する目的化合物(I)を得た。
【実施例2】
第1−1表に示した化合物140〜234は、以下に示す一般的合成法に従って製造した。
1)第1工程:ポリスチレン樹脂へのプロリン誘導体の導入
実施例1の第1工程と同様にして、(2S,4S)−Fmoc−4−アミノ−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸を4−ヒドロキシメチルベンゾイルアミノメチルポリスチレン(AM HMB resin)に導入した。
2)第2工程:Boc保護基の脱保護
実施例1の第4工程と同様にして、第1工程で得られた化合物のBoc保護基を脱保護した。
3)第3工程:アントラニル酸誘導体との縮合
実施例1の第5工程と同様にして、第2工程で得られた化合物と、参考例1で得られるN−Boc−5−アリールアントラニル酸またはN−Boc−5−ヘテロアリールアントラニル酸を縮合した。
4)第4工程:Fmoc保護基の脱保護
実施例1の第2工程と同様にして、第3工程で得られた化合物のFmoc保護基を脱保護した。
5)第5工程:アミノ基の修飾
実施例1の第3工程と同様にして、第4工程で得られた化合物のアミノ基を修飾した。
なお、化合物234の製造においては、1−Fmoc−ピペリジン−4−カルボン酸を用いて修飾した後、得られた化合物のFmoc基を実施例1、第2工程と同様にして脱保護した。
6)第6工程:Boc保護基の脱保護
実施例1の第4工程と同様にして、第5工程で得られた化合物のBoc基を脱保護した。
7)第7工程:環化による樹脂からの切り出し
実施例1の第8工程と同様にして、第6工程で得られた化合物を環化させ樹脂から切り出すことにより対応する目的化合物(I)を得た。
【実施例3】
第1−1表に示した化合物235〜242および第1−2表に示した化合物243−272は、以下に示す一般的合成法に従って製造した。
1)第1工程:ポリスチレン樹脂へのプロリン誘導体の導入
実施例1の第1工程と同様にして、4位に対応する置換基を有する(2S)−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸を4−ヒドロキシメチルベンゾイルアミノメチルポリスチレン(AM HMB resin)に導入した。
2)第2工程:Boc保護基の脱保護
実施例1の第4工程と同様にして、第1工程で得られた化合物のBoc保護基を脱保護した。
3)第3工程:アントラニル酸誘導体との縮合
実施例1の第5工程と同様にして、第2工程で得られた化合物と、参考例1で得られるN−Boc−5−アリールアントラニル酸またはN−Boc−5−ヘテロアリールアントラニル酸を縮合した。
4)第4工程:Boc保護基の脱保護
実施例1の第4工程と同様にして、第3工程で得られた化合物のBoc基を脱保護した。
5)第5工程:環化による樹脂からの切り出し
実施例1の第8工程と同様にして、第4工程で得られた化合物を環化させ樹脂から切り出すことにより対応する目的化合物(I)を得た。
【実施例4】
第1−3表に示した化合物273〜282は、実施例1の第5工程においてN−Boc−5−ブロモアントラニル酸に代えて、N−Boc−4−ブロモアントラニル酸を用いる以外は、実施例1と同様にして製造した。
【実施例5】
第1−4表に示した化合物283〜397は、(2S,4S)−Fmoc−4−アミノ−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸に代えて、(2S,3S)−Fmoc−3−アミノ−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸を用いる以外は、実施例2と同様にして製造した。なお、化合物388〜397の製造においては、実施例2に示した化合物234の製造と同様にして製造した。
【実施例6】
第1−4表に示した化合物398〜409および第1−5表に示した化合物410−419は、3位に対応する置換基を有する(2S)−1−Boc−ピロリジン−2−カルボン酸を用い、実施例3と同様にして製造した。
【実施例7】
第1−6表に示した化合物420は、次の合成法に従って製造した。
第1−1表に示した化合物75(5.0mg)をエタノール(2.0mL)に溶解し、10%パラジウム/炭素(1mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1時間攪拌した。反応の終了をLC/MSで確認した後に、触媒の濾別、溶媒留去を行い、第1−6表に示した化合物420(3.8mg)を得た。
参考例1 N−Boc−5−アリールアントラニル酸またはN−Boc−5−ヘテロアリールアントラニル酸の一般的合成法
N−Boc−5−ブロモアントラニル酸メチル、酢酸パラジウム(II)(2.5mol%)、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル(5mol%)およびフッ化セシウム(3当量)の無水ジオキサン(1mL/mmol)溶液に、アルゴン気流下、対応するボロン酸(3当量)を加えた。ボロン酸を加えたことによる発熱のおさまった後、反応溶液を80℃で4時間加熱した。反応溶液を減圧下濃縮することにより得られる残渣を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、N−Boc−5−アリールアントラニル酸メチルまたはN−Boc−5−ヘテロアリールアントラニル酸メチルを得た。続いて、得られた化合物をテトラヒドロフラン(2mL/mmol)に溶解し、水酸化リチウ厶水溶液(2当量、1mol/L、2mL/mmol)を加えた。得られた反応溶液を室温で一晩激しく攪拌した。メチルエステルの消失を薄層クロマトグラフィーにより確認後、ジオキサンを減圧下留去した。得られた粘稠な残渣に氷冷下、酢酸水溶液(50vol%、用いた水酸化リチウムに対し1.5当量)を加えることにより、白色の沈殿が得られた。混合物を4時間静置することにより、粘稠な残渣を完全に固体化させた。得られた固体を砕き吸引濾過により濾取し水で洗浄した後、減圧下乾燥することにより、標題化合物を得た。
【産業上の利用可能性】
本発明により、抗腫瘍作用、肌の老化抑制作用、肌質改善作用、創傷治癒作用、皮膚炎治療作用または関節炎治療作用を有する新規な三環性プロリン誘導体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

{式中、Rはヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルキニルオキシ、低級アルキルスルファニル、置換もしくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルスルファニル、シクロアルキルアルキルオキシまたはNHR[式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換のヘテロアリールスルホニルまたは

(式中、Rは低級アルキル、シクロアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)を表す]を表し、Rは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは

(式中、Rは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、シクロアルキル、カルボキシ、カルバモイルまたは脂環式複素環カルボニルを表す)または

(式中、R5XはRと同義である)を表す}で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がヒドロキシである請求の範囲1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
がNHR3a(式中、R3aは置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールスルホニルを表す)である請求の範囲1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】


(式中、R4aは置換もしくは非置換のアリールを表す)である請求の範囲1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
が置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールである請求の範囲1〜4のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】


(式中、Rは前記と同義である)である請求の範囲1〜4のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】


(式中、R5aは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは脂環式複素環カルボニルを表す)である請求の範囲1〜4のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】


(式中、R5Xaは置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは脂環式複素環カルボニルを表す)である請求の範囲1〜4のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。

【国際公開番号】WO2005/040172
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515062(P2005−515062)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016353
【国際出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】