下水道施設の覆蓋集合体及びその使用方法
【課題】太陽電池モジュールの発電効率が高く、発生させた電力をファン以外の用途にも使用することが出来、建設費の低減や工期の短縮化を図ることが可能であり、下水道施設の景観も良好となり、更に適切に脱臭が行われ得る、下水道施設の覆蓋手段を提供すること。
【解決手段】上面板の表面に太陽電池モジュールが設置された覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cが隣接して配置され、それらの上面板2が一の平面を形成してなるとともに、覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cによって、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体1の提供による。
【解決手段】上面板の表面に太陽電池モジュールが設置された覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cが隣接して配置され、それらの上面板2が一の平面を形成してなるとともに、覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cによって、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体1の提供による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設の上方を覆うために使用される覆蓋集合体とその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池等の下水道施設においては、悪臭の拡散を防止する目的で、その上方を覆蓋で覆うようにしている。その覆蓋は、通常、幅方向に複数枚、隣接させて配置された状態で、下水道施設を形成する躯体に架け渡され、それら覆蓋の数十枚に一箇所程度の割合で、脱臭ダクトが接続されている。その脱臭ダクトは、下水道施設に収容された下水(場内下水、原水)から発生した臭気ガスを覆蓋の外部へ導き、下水道施設の周辺に設置された脱臭装置に送るためのものである。
【0003】
近年、このような下水道施設が、日射条件の良い場所に広い面積で設けられていることに着目し、上記の覆蓋の上面に太陽電池パネル等の太陽電池モジュールを設置して太陽光発電を行う試みがなされている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、従来の下水道施設、ないしは、そこで用いられる覆蓋においては、以下のような問題があった。
【0005】
(A)従来の脱臭ダクトは、覆蓋の中央部から上方に突き出し、更に所定の高さ(覆蓋の上空3〜5m付近)から水平方向へ延長され、他の覆蓋の上方を通過して、脱臭装置へと向かよう配設されているため、覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュールの一部が、脱臭ダクトによって日陰になる。通常、覆蓋の上面に設置される太陽電池モジュールは直列に接続されているため、その一部が日陰になると、日陰部分のセルは発電せず、他の部分のセルだけが発電して電流が流れることになるので、日陰部分のセルは抵抗となって発熱し、発電効率の低下を招く。
【0006】
(B)脱臭ダクトが上記のように覆蓋の上方を通過するように配設するには、脱臭ダクトを支持するためのサポート(支持体)を多数造る必要が有り、建設費が高くなる。又、脱臭ダクトがこのように覆蓋の上方に配設されていると、処理場が雑然とし、景観が悪くなる。
【0007】
(C)脱臭ダクトは、上記のように、隣接する覆蓋の数十枚に一枚程度の割合で接続されているため、この脱臭ダクトが接続された覆蓋の近傍では、脱臭ダクトに臭気が吸い込まれ易いが、脱臭ダクトが接続された覆蓋からの距離が遠くなるにつれて、脱臭ダクトに臭気が吸い込まれ難くなるため、全ての位置で均等な脱臭が出来ず、位置によって脱臭の程度に偏りが生じる。
【0008】
(D)従来は、覆蓋とダクトとが個々の構造物であり、それらの製造や設置工事も各々について行う必要が有ったため、製造コストが高く、設置工事の工期も長くなる。
【0009】
(E)特許文献2には、覆蓋から外部の脱臭装置(脱臭塔)まで脱臭ダクトを配設することなく、覆蓋自体に持たせた脱臭機能により脱臭可能としたものが開示されているが、この覆蓋においては、太陽電池モジュールで発生した電力の大部分が、覆蓋に取り付けられた排気ファンによって消費されてしまうため、電力を、他の用途には殆ど利用出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−340704号公報
【特許文献2】特開2005−66405号公報
【特許文献3】特許第2589040号公報
【特許文献4】特許第2589042号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】太陽光発電導入ガイドブック、本編、2000年改訂版、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)
【非特許文献2】太陽光発電システムの設計と施工、改訂2版、太陽光発電協会編、オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、上記(A)〜(E)の問題を解消することである。具体的には、上面に設置したときの太陽電池モジュールの発電効率が高く、発生させた電力をファン以外の用途にも使用することが出来、建設費の低減や工期の短縮化を図ることが可能であり、下水道施設の景観も良好となり、更に適切に脱臭が行われ得る、下水道施設の覆蓋手段を提供することが本発明の課題である。
【0013】
この課題を解決するため、本発明によれば、以下に示す下水道施設の覆蓋集合体及び覆蓋集合体の使用方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、先ず、本発明によれば、下水道施設の上方を覆うための、複数の覆蓋からなる覆蓋集合体であり、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の一方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(A)、及び、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の他方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(B)、を有し、覆蓋(A)及び覆蓋(B)が隣接して配置され、覆蓋(A)の上面板と覆蓋(B)の上面板とが、一の平面を形成してなるとともに、覆蓋(A)の上面板、背面板、及び側面板と、覆蓋(B)の上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体が提供される。
【0015】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体(単に覆蓋集合体ともいう)においては、更に、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、を有する1以上の覆蓋(C)を有し、覆蓋(A)及び覆蓋(B)の間に覆蓋(C)を配し隣接して配置され、覆蓋(A)の上面板と覆蓋(B)の上面板と覆蓋(C)の上面板と、が一の平面を形成してなるとともに、覆蓋(A)の上面板、背面板、及び側面板と、覆蓋(C)の上面板及び背面板と、覆蓋(B)の上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されていることが好ましい。
【0016】
下水道施設とは、最初沈殿池、曝気槽、反応槽、最終沈殿池等のような、下水の各種処理、貯水等を行う槽(水槽)や池を有する施設であり、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、これらの上方を覆うための覆蓋集合体である。
【0017】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋からなるものであり、その複数の覆蓋として、覆蓋(A)、覆蓋(B)に加えて、好ましくは覆蓋(C)を有する。覆蓋(A)は、背面板及び上面板の一方の側端部の間を繋ぐ側面板を有し、背面板及び上面板の他方の(上記一方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板は有さない。覆蓋(B)は、背面板及び上面板の他方の(覆蓋(A)における上記一方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板を有し、背面板及び上面板の一方の(上記他方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板は有さない。覆蓋(C)は、覆蓋(A)と覆蓋(B)の間に配置されるものであり、全く側面板を有さない。即ち、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、側面板は、全体として2枚である。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、これら覆蓋(A)、覆蓋(B)、覆蓋(C)を組み合せて、下水道施設の上方を覆うものであり、分割可能な覆蓋ということも出来る。
【0018】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体において、複数の覆蓋は、隣接して配置され、その結果、それぞれの上面板で一の平面が形成されることになる。従って、複数の覆蓋は、上面板の側端部を(背面板の側端部も)相互に接するように、隙間なく配置されることになる。そのように配置するために、複数の覆蓋は、上面板及び背面板の側端部において、一定の関係を有することが好ましい。例えば、相互に接合、嵌合、係合、噛合、捻合等がなされていてもよいが、施工を考慮すると、複数の覆蓋が以下のような関係を有することが望ましい。
【0019】
即ち、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、隣接して配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、下水道施設における既設の覆蓋を、効率よく発電する太陽電池モジュールが設置された覆蓋に置換するために、使用することが出来る。この場合において、覆蓋集合体を構成する個々の覆蓋の幅(覆蓋が相互に隣接する方向の覆蓋の寸法)は、既設の覆蓋に対応させることが出来る。但し、複数の覆蓋は(隙間なく)隣接して配置されるので、既設の覆蓋より、少し幅が広くなる。又、個々の覆蓋の幅は、使用する太陽電池モジュールの規格寸法に合わせることが出来る。この方が、既設の覆蓋に対応させ他寸法とするより、好ましい。個々の覆蓋に太陽電池モジュールを設置したものを、隣接して配置させることが出来るからである。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、複数の覆蓋が(それぞれの上面板で)一の平面を形成してなるものであるので、その施工にかかり、太陽電池モジュールを設置せずに下水道施設の上方を覆い、後から、一の平面を形成した上面板に太陽電池モジュールを設置することも可能であるが、このような手段は、太陽電池モジュールを設置した覆蓋を隣接して配置させる場合に比して、施工性、安全性に劣る。
【0021】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、覆蓋(A)の側面板及び覆蓋(B)の側面板の少なくとも一方に、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを外部へ導くための、内部空間に通じる脱臭ダクトが設けられることが好ましい。又は、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上記内部空間に、悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設されるとともに、その担体に散水するための配管が、上面板の表面であり太陽電池モジュールの裏面を通って設けられることが好ましい。
【0022】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体において、脱臭ダクトが設けられる場合には、その脱臭ダクトに、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを採取するための臭気サンプリング口が設けられることが好ましい。又、その脱臭ダクトの側面に、内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられることが好ましい。
【0023】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、背面板に、(覆蓋集合体の)内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0024】
覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)とは、覆蓋集合体を構成する覆蓋の背面板(上面板、側面板)を意味する。覆蓋集合体は複数の覆蓋で構成されるから、覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)は複数存在することになる。本明細書において、覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)というときは、何れか1以上の背面板(上面板、側面板)を指すものとする。
【0025】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、更に、上面板にも、(覆蓋集合体の)内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0026】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であることが好ましい。この上面板の傾斜角度は、10〜30゜であることがより好ましく、30゜であることが特に好ましい。
【0027】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が、90〜150゜であることが好ましい。背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度は、120〜135゜であることがより好ましい。
【0028】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、内部空間に、内部空間の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられることが好ましい。この場合において、背面板に、(覆蓋集合体の)外部から配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0029】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、内部空間に、LED照明が設けられることが好ましい。
【0030】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられることが好ましい。
【0031】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の上部が、水平面で構成されることが好ましい。本明細書において、上面板のうち水平面で構成される部分を水平面部といい、上記好ましい傾斜角度で傾斜している部分を傾斜面部という。
【0032】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈することが好ましい。
【0033】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールであることが好ましい。即ち、太陽電池が、アモルファス太陽電池であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明によれば、上記した脱臭ダクトが設けられる覆蓋集合体の脱臭ダクト同士が連結されてなる下水道施設の覆蓋複集合体が提供される。覆蓋複集合体は、複数の覆蓋集合体の脱臭ダクトが連結されたものである。
【0035】
次に、本発明によれば、上記した何れかの下水道施設の覆蓋集合体を、(覆蓋の)上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する下水道施設の覆蓋集合体の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋からなるものであり、その複数の覆蓋である覆蓋(A)、覆蓋(B)、(好ましくは)覆蓋(C)は隣接して配置され、それらの上面板によって一の平面を形成するものであるので、下水道施設の面積を有効に利用し、太陽電池モジュールを設置可能な面積を大きくすることが出来る。そのため、面積比で発電効率が高い。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、覆蓋(A)、覆蓋(B)、覆蓋(C)のそれぞれの間に脱臭ダクトは設けられないから、太陽電池モジュールを高密度に設置可能であり、従って、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、(太陽電池モジュール)高密度配置型覆蓋(集合体)ということが出来る。
【0037】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋を組み合せて1つの覆蓋(集合体)としたものということが出来、1つの覆蓋は軽量であり、取付(施工)が容易なので、工期短縮、建設費(特に人件費)低減を実現する。
【0038】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、(上面板の)表面に太陽電池モジュールを設置するものであるので、太陽電池モジュールで覆われた部分は再塗装の必要が無く、再塗装時の塗装面積が減少する。個々の覆蓋を、ガラス繊維強化樹脂(FRP)によって形成すれば、十数年に一度程度の割合で再塗装等の補修作業が必要となるが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体を用いれば、この負担が軽減する。
【0039】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、隣接に配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有するので、施工し易く、且つ、(施工後に)堅牢である。
【0040】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、全体として2枚存在する側面板の少なくとも一方に臭気ガスを外部へ導くための脱臭ダクトが設けられるか、又は、内部空間に悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設される。前者の場合、脱臭処理は従来と同じように別の場所で集中的になされ、後者の場合、脱臭処理は覆蓋集合体内において(全体としてみれば分散して)行われ、脱臭ダクトとは不要である。後者は、即ち、生物脱臭装置を内蔵した覆蓋集合体ということが出来、単独で脱臭処理が可能な覆蓋(集合体)である。何れにしても、従来のように、上面板に設置された太陽電池モジュールに、脱臭ダクトによる日陰が出来ず、高い発電効率が得られる。
【0041】
具体的には、従来、脱臭ダクトは、覆蓋の中央部から上方に突き出し、更に所定の高さ(覆蓋の上空3〜5m付近)から水平方向へ延長され、覆蓋の上方を通過して、脱臭装置へと向かうため、覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュールの一部が、脱臭ダクトによって日陰になり、発電効率の低下を招いていたが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体の好ましい態様によれば、脱臭ダクトが側面板に設けられているか、又は、脱臭ダクトが存在しないため、太陽電池モジュールに脱臭ダクトによる日陰が出来ず、発電効率が向上する。
【0042】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、側面板に脱臭ダクトを設けるか、又は脱臭ダクトをなくしているので、その主たる表面(上面板の表面)に太陽電池モジュールを設置可能となり、この点においても、下水道施設の面積を有効に利用し、太陽電池モジュールを設置可能な面積を増やすことが出来る。そのため、面積比で発電効率が高い。
【0043】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、側面板に脱臭ダクトを設けるか、又は脱臭ダクトをなくしているので、従来のように、脱臭ダクトを覆蓋の上空3〜5m付近まで引き上げる必要が無く、脱臭ダクトを上空に支持するためのサポート(支持体)を造る必要も無くなり、脱臭ダクトがある場合でも、その長さは従来より短くなる。
【0044】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、覆蓋(覆蓋(A)、覆蓋(B))と脱臭ダクトとを一体的な構造物とすることが出来、そうであれば一体型形成も可能である。従来は、覆蓋と脱臭ダクトとが個々の構造物であり、それらの製造や設置工事も各々について行う必要があったが、このような手間は省ける。又、これらの結果、建設費が低減するとともに、処理場の景観も良くなる。
【0045】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトは内部空間に連通しているため、そこから臭気ガスの吸い込みを行うことが出来、複数の覆蓋に覆われた下水道施設の全ての位置で偏りのない均等な脱臭が可能となる。又、脱臭ダクトを設けず、内部空間に担体を配設し、覆蓋単独で脱臭処理を可能とする場合には、その覆蓋集合体内で、偏りのない均等な脱臭が可能となる。
【0046】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトに臭気サンプリング口が設けられるので、上記した臭気の測定等の維持管理を、現に、容易且つ安全に実施可能とする。
【0047】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトが、覆蓋の上空ではなく、覆蓋の側面(板)という通路に近い、低い位置にあるので、脱臭ダクトが場内下水から発生した臭気ガスの臭気を測定するために臭気ガスを採取する臭気サンプリング口や、脱臭ダクトの内部に溜まった水を排除する水抜きのためのバルブ等を脱臭ダクトに設けることにより、臭気の測定や脱臭ダクトの水抜き作業等の維持管理を、作業者が通路から覆蓋の中央部まで行ったり、高所に登ったりすることなく、容易且つ安全に実施することが出来る。
【0048】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトの側面に、上記内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられるので、後述の覆蓋複集合体を構成した場合に、各覆蓋集合体における臭気ガスの吸い込み均等化を図れる。
【0049】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、覆蓋集合体単独で脱臭処理を可能とした場合には、散水に使用した処理水は、最初沈殿池に戻す必要はなく、覆蓋している下水道施設(反応槽等)に放流すればよく、配管工事は不要である。
【0050】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、覆蓋集合体単独で脱臭処理を可能とした場合には、担体に散水するための配管が、上面板の表面であり上記太陽電池モジュールの裏面を通って設けられるので、この担体への散水に用いる処理水(下水処理された水であって配管を通る水)によって太陽電池モジュールを冷却することが出来、発電効率の低下を抑制することが出来る。
【0051】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上記背面板に覆蓋内部を点検するための開閉可能な点検口が設けられるので、作業者は楽な姿勢で内部の点検作業を行うことが可能になるとともに、作業者本人や作業者が上着のポケットに入れていた物が水中に落下することも防止出来る。又、作業者は点検口を上から覗き込む状態とはならないため、開閉扉を開けた際に点検口から上昇してきた蒸気によって作業者の眼鏡が曇ることがない。更に、点検の際に視線の角度が水面に対して浅くなるため、点検口から見渡せる水面の範囲が広くなり、水面全体に渡る点検が容易になる。後述するように、従来の覆蓋は、その上面が緩やかなアーチ状又は水平な平面状を呈しており、その上面に点検口が設けられていたため、内部を点検する際には、作業者は上体(上半身)を屈めて下方を覗き込むようなつらい姿勢となり、体に負担がかかるとともに、作業者が点検口から水中に落下してしまったり、上着のポケットに入れていた物(携帯電話、筆記具等)が屈んだ際に落下して、水中に沈んでしまったりするおそれがあった。又、点検口の開閉扉を開けた際に上昇してきた蒸気により作業者の眼鏡が曇ることもあった。更に、点検の際に視線の角度が水面に対し垂直に近い角度となるため、点検口から見渡せる水面の範囲が狭く、水面全体を点検し難いという問題もあった。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体におけるこの好ましい態様によれば、このような問題は生じない。
【0052】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、更に、上面板にも覆蓋内部を点検するための開閉可能な点検口が設けられるので、効率よく点検を行うことが出来る。
【0053】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であるので、太陽電池モジュール上に降った雨や雪が自然に流れ落ちて、太陽電池モジュール上に留まり難いため、太陽電池モジュール上の積雪等に太陽光を遮られて発電効率が低下したり、積雪の重量により覆蓋1が破損したりするのを防ぐことが出来る。更に、傾斜した上面板の表面に太陽電池モジュールが設置されていると、覆蓋を所定方向に設置した場合に、太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度が大きくなり、発電効率が向上する。
【0054】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が90〜150゜であるので、背面板に点検口を設けた場合における、上記の効果が得られ易くなる。
【0055】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、内部空間に、内部空間の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられる。このように、内部空間の他の部分から仕切られた配線収容室に、太陽電池モジュールの配線を収容すれば、場内下水から発生した臭気ガスが腐食性のガスである場合であっても、配線を腐食性のガスから遮断して、配線の腐食劣化を防止することが出来る。
【0056】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、背面板に、覆蓋の外部から上記配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられるので、配線収容室内の配線の保守点検や配線接続作業等が容易に行える。
【0057】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、内部空間に、LED照明が設けられるので、それによって覆蓋集合体の内部が明るく照らされるため、視認性が向上し、点検に際して作業者が懐中電灯を持ち歩く必要がなくなる。従来は、覆蓋によって覆われた下水道施設の内部は暗いため、点検口から内部を点検する場合には、懐中電灯などで内部を照らす必要があったが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体によれば、その必要はない。LED照明に供給する電力には、覆蓋集合体に設置された太陽電池モジュールで発生した電力を用いることが出来、そうしたとしても、LED照明は消費電力が少なく、又、点検時以外には消灯しておけばよいので、既述の引用文献2における排気ファンのように、太陽電池モジュールで発生した電力の大部分を消費してしまうことはなく、電力の他の用途(覆蓋の機能維持以外の用途)への有効利用が大きく制限されることはない。
【0058】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられるので、夏場の高温時には、ポンプ等によって吸い上げた場内処理水(水温は年間を通じて15〜20℃程度)を、この散水口から散布して、太陽電池モジュールを冷却し、温度上昇を抑制すれば、発電効率の低下を抑制することが出来る。一般に、太陽電池モジュールは温度が上昇するほど発電効率が低下するが、これを防止出来る。
【0059】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の上部が、水平面で構成されるので、高さを抑えられる。よって、後述の覆蓋複集合体を構成した場合に、上面板に設置された太陽電池モジュールに、他の覆蓋集合体による日陰が出来難く、高い発電効率が得られる。
【0060】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈するので、強度に優れたものとなる。仮に人が乗っても壊れ難く、又、下水道施設側からの圧力(内圧)増加に対しても耐え得る。
【0061】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上記太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールであるので、軽量で柔軟性に富み、搭載対象である上面板の態様に対する許容度が大きい。例えば上面板がアーチ状を呈していても、搭載可能であり、覆蓋全体としての軽量化にも資する。
【0062】
本発明に係る覆蓋複集合体は、上記した本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体の脱臭ダクト同士が連結されてなるものであるので、上記の本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体が発現する効果を、同様に、(設備)全体として享受することが出来る。
【0063】
本発明に係る覆蓋集合体の使用方法は、上記した何れかの下水道施設の覆蓋集合体を、覆蓋の上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する。傾斜した上面板の表面に太陽電池モジュールが設置された覆蓋を、このような向きに配置すれば、太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度が大きくなり、高い発電効率が得られる。
【0064】
上記使用方法に用いられる覆蓋集合体は、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であることが好ましく、10〜30゜あることがより好ましく、30゜であることが特に好ましい。傾斜角度がこのような範囲であれば、太陽電池モジュールに理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、より高い発電効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る覆蓋集合体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示される覆蓋集合体において断面AAで切断した断面を表す断面図である。
【図3】図1に示される覆蓋集合体における右側の側面を表す側面図である。
【図4】図1に示される覆蓋集合体において断面BBで切断した断面(1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面)を表す断面図である。
【図5】背面板に加え上面板にも点検口が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図6】複数の下水道施設が並設されている状態を示す平面図である。
【図7】1つの覆蓋の背面板にだけ点検口が設けられている場合における点検作業時の移動ルートを示す平面図である。
【図8】1つの覆蓋の背面板に加え上面板にも点検口が設けられている場合における点検作業時の移動ルートを示す平面図である。
【図9】内部空間の上部に配線収容室が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図10】上面板に散水口が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る覆蓋集合体における脱臭ダクトの一の実施形態を示す説明図(透視図)である。
【図12】本発明に係る覆蓋集合体の一の実施形態を示す背面図である。
【図13】従来の覆蓋集合体における点検口の配置を示す断面図である。
【図14】従来の覆蓋集合体における点検口の配置を示す断面図である。
【図15】本発明に係る覆蓋集合体の他の実施形態を示す側面図である。
【図16】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す側面図である。
【図17】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図18】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0067】
図1、図2、図3、及び図4に示される覆蓋集合体1は、下水道施設において、(例えば)反応槽の上方を覆うためのものである。覆蓋集合体1は、複数の覆蓋からなるものであり、1つの覆蓋10a(覆蓋(A)相当)、3つの覆蓋10c(覆蓋(C)相当)、1つの覆蓋10b(覆蓋(B)相当)を有する。
【0068】
覆蓋10aは、その長さ方向(図1中における断面BBの方向)において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、その背面板3及び上面板2の一方の側端部(図1における右側の側端部)の間を繋ぐ1枚の側面板4と、を有する。覆蓋10bは、その長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、その背面板3及び上面板2の一方の側端部(図1における左側の側端部)の間を繋ぐ1枚の側面板4と、を有する。覆蓋10cは、各々、その長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、を有する。覆蓋10cは、側面板を有さない。
【0069】
覆蓋集合体1では、覆蓋10a及び覆蓋10bの間に3つの覆蓋10cを配して、覆蓋10a、覆蓋10c、覆蓋10c、覆蓋10c、覆蓋10bの順に、隣接して配置され、覆蓋10aの上面板2と覆蓋10cの上面板2と覆蓋10bの上面板2と、が一の平面を形成している。そして、覆蓋10aの上面板2、背面板3、及び側面板4と、覆蓋10cの上面板2及び背面板3と、覆蓋10bの上面板2、背面板3、及び側面板4と、で囲まれた内部空間7が形成されている。内部空間7は下方に開口している(図2を参照)。
【0070】
覆蓋集合体1において、隣接に配置される覆蓋10aと覆蓋10cは、相互に接する上面板2の側端部において重なっており、その重なっている重なり部42(図2における丸囲い部分)に、リブ41を有する。図示しないが、隣接に配置される覆蓋10aと覆蓋10cは、相互に接する背面板3の側端部においても重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有する。これらの態様は、隣接に配置される覆蓋10bと覆蓋10c、隣接に配置される覆蓋10cと覆蓋10c、においても同様に存在する。
【0071】
覆蓋集合体1において、(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)上面板2は、覆蓋集合体1の短手方向において所定の角度で傾斜し、その表面に太陽電池モジュール6が設置される。具体的な上面板2の上面板傾斜角度θ1は、0゜より大きく30゜以下である(図3を参照)。
【0072】
(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)背面板3は、上面板2の上端から下方に向かって伸びるよう形成されている。ここで、下方とは、鉛直方向だけでなく斜め下方も含む。背面板3の外側面と水平な面とのなす角の背面板傾斜角度θ2は、90〜150゜である(図3を参照)。覆蓋集合体1には、この背面板3に開閉扉12により開閉可能な点検口11が(例えば1つ)設けられる(図4を参照)。この点検口11は、覆蓋集合体1によって覆われた下水道施設の内部を点検するための開閉可能な開口である。
【0073】
尚、図13及び14に示されるように、従来の覆蓋集合体41は、その上面が緩やかなアーチ状又は水平な平面状を呈しており、その上面に点検口42が設けられていた。
【0074】
(覆蓋10a、覆蓋10bを形成するそれぞれの)側面板4は、上面板2と背面板3との側端部の間を繋ぐ部材であり、覆蓋集合体1の内側には、(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)上面板2、背面板3及び側面板4によって囲まれた内部空間7が形成される。内部空間7は下方に(下水道施設に向けて)開口している。そして、覆蓋10aの側面板4には、下水道施設に収容された場内下水から発生した臭気ガスを覆蓋集合体1の外部へ導くための、内部空間7に通じる脱臭ダクト5が設けられている。(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する)上面板2、背面板3及び側面板4の・BR>コ端部に設けられたフランジ8は、場内下水を収容する下水道施設の縁部に覆蓋集合体1を固定したり、隣接する覆蓋集合体1間を固定したりするのに有用である。
【0075】
覆蓋集合体1において、図5に示されるように、内部を点検するための、開閉扉14により開閉可能な点検口13を、背面板3だけでなく、上面板2の太陽電池モジュール6を設置していない部分にも追加的に設けることが出来る。図6に示されるように、複数の下水道施設30、31が比較的短い間隔で並設されており、これらの上方を覆う覆蓋集合体1の向きが全て同じである場合において、覆蓋集合体1の背面板3にだけ点検口11が設けられているときは、下水道施設30、31間の通路32の左右何れか一方にしか点検口11がないため、点検を行う作業者は、図7の矢印33に示される移動ルートで、長距離を移動しながら全体の点検を行う必要がある。これに対し、図8のように、覆蓋集合体1の背面板3だけでなく、上面板2にも点検口13が設けられているときは、下水道施設30、31間の通路32の左右両側に点検口11、13があるため、ほぼ同じ位置で通路32を挟んだ左右両側の覆蓋集合体1の内部を点検出来、矢印34に示される移動ルートで、短い移動距離にて全体の点検作業を行うことが出来る。尚、このような点検口は、隣接配置されている全ての覆蓋集合体に設ける必要はなく、通常は、数〜十数に1つ程度の割合で、点検口が設けられた覆蓋集合体が配置されていればよい。即ち、点検口が設けられない覆蓋集合体があってもよい。
【0076】
側面板4は、上面板2と背面板3との側端部の間を繋ぐ部材であり、覆蓋集合体1では、覆蓋10aの側面板4に、下水道施設に収容された場内下水から発生した臭気ガスを覆蓋集合体1の外部へ導くための、内部空間7に通じる脱臭ダクト5が設けられている。
【0077】
覆蓋集合体1では、図10に示されるように、覆蓋10bの側面板4に、追加的に、内部空間7に通じる脱臭ダクト5を設けてもよい。覆蓋集合体1では、これら内部空間7に連通した脱臭ダクト5が、覆蓋集合体1の上空ではなく、覆蓋集合体1の側面(側面板4)という通路に近い低い位置にあり、場内下水から発生した臭気ガスの臭気を測定するために臭気ガスを採取する臭気サンプリング口18や、脱臭ダクトの内部に溜まった水を排除する水抜きのためのバルブ等が、脱臭ダクト5に設けられる(図10を参照)。覆蓋集合体1においては、脱臭ダクト5は覆蓋集合体1の一部とすることが出来、その場合、一体型形成が可能である。
【0078】
覆蓋集合体1においては、図9に示されるように、上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれた内部空間7に、内部空間7の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュール6の配線を収容するための配線収容室17を設けることが出来る。そして、このような配線収容室17を設ける場合には、背面板3に、覆蓋集合体1の外部から配線収容室17内に通じる、開閉扉16(図12を参照)により開閉可能な点検口15を設けることが好ましい。
【0079】
覆蓋集合体1においては、図9に示されるように、上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれた内部空間7に、LED照明20を設けることが出来る。このLED照明20に供給する電力には、覆蓋集合体1に設置された太陽電池モジュール6で発生した電力を用いることが可能である。
【0080】
覆蓋集合体1においては、図10に示されるように、上面板2の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口19を設けることが出来る。ポンプ等によって吸い上げた場内処理水(水温は年間を通じて15〜20℃程度)を、この散水口19から散布して、太陽電池モジュール6を冷却し、温度上昇を抑制可能である。
【0081】
覆蓋集合体1において、脱臭ダクト5は、覆蓋集合体を構成する2枚の側面板4を貫通するパイプ状のものであり、図11に示されるように、その側面の一部に覆蓋集合体1の内部空間7に通じる開口部21を形成することが出来る。そして、複数の覆蓋集合体1の脱臭ダクト5同士を連結して、覆蓋複集合体を形成する場合に、それぞれの覆蓋集合体における臭気ガスの吸い込みを均等化するため、この開口部21には、その開口面積を微調節するための開口面積調節手段が設けられていることが好ましい。図11に示される態様では、開口面積調節手段として、開口部21にスライド可能な扉22が設けられており、この扉22を矢印方向にスライドさせることで、開口部21の開口面積を調節することが出来る。扉22には調節を容易に行えるよう脱臭ダクト5の径方向に突出した調整つまみ23が一体的に設けられている。開口部21の開口面積の調整は、例えば、背面板3に設けた点検口から調整つまみ23を把持出来るような治具を内部空間7に挿入し、その治具にて調整つまみ23を把持して扉22をスライドさせることにより行うことが出来る。
【0082】
図15は、図3に対応する側面図である。図15に示される覆蓋集合体101では、(個々の覆蓋において、)上面板2の上部に、水平面部2aを有し、上面板2の上部が水平面で構成される。そして、その水平面部2aには、内部空間を明るくする採光窓27が設けられる。又、分割された太陽電池モジュール6の一部は、水平面部2aにも配設される。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0083】
図16は、図3に対応する側面図である。図16に示される覆蓋集合体102では、(個々の覆蓋において、)上面板2がアーチ状を呈する点が異なる。そして、そのアーチ状の上面板2には、その形状に沿って、例えばアモルファス太陽電池で構成される太陽電池モジュール6が配設される。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0084】
図17は、図4に対応する断面図である。図17に示される覆蓋集合体110では、覆蓋集合体101と同様に、(個々の覆蓋において、)上面板2の上部に、水平面部2aを有し、上面板2の上部が水平面で構成される、その水平面部2aには、内部空間を明るくする採光窓27が設けられ、分割された太陽電池モジュール6の一部は、水平面部2aにも配設される。そして、内部空間7には生物脱臭装置が備わり、側面板4には脱臭ダクト5が設けられていない。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0085】
覆蓋集合体110では、水平面部2aを含む上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれて下方が開口した内部空間7に、悪臭を分解する微生物が固定された担体30が配設されるとともに、その担体30に散水するための配管29が、上面板2の表面であり太陽電池モジュール6の裏面を通って設けられる。これらが生物脱臭装置の主たる構成要素である。排気のための排気口28は、背面板3に設けられる。散水のための水としては、場内処理水を使用することが出来、その水は、弁31で流量調節ないし流量制御される。
【0086】
図18に示されるように、1つの覆蓋集合体110に、2つの(複数の)担体30を配設することが出来る、処理水の供給配管32は、共通で使用することが出来る(図18では弁31は省略)。担体30を通過させた水(散水)は、それぞれ、そのまま下水道施設に(下方に)放流すればよい。図18に示される態様とは異なり、1つの覆蓋集合体110に、1つの担体30を配設するだけでもよい。この場合には、例えば、吸引ファンを設け、場内処理水から発生した臭気ガスを吸い込み、集めて、その1つの担体30へ供給することが好ましい。
【0087】
担体30は、例えば特許文献3、4に開示されたものであって、覆蓋集合体内に収まり易く、取扱いが容易なように、薄くカートリッジタイプのものが好ましい。例えば、(下水道施設の)処理規模が100000m3/日のときに、このときの反応槽の滞留時間を8hr(時間)とすれば、反応槽の有効容積は概ね33000[m3](=100000[m3/日]×8[hr]/24[hr])となり、反応槽の高さを5[m]とすれば、反応槽の有効面積は6600[m2](=33000[m3]/5[m])となり、開口率50[%]とすれば、反応槽の開口面積は3300[m2](=6600[m2]×0.5)である。そして、反応槽へ送る空気量は、1[m3/m3・hr]で送るとすれば、33000[m3/hr](=33000[m3]×1[m3/m3・hr])となり、開口面積(覆蓋集合体の面積)あたりの空気量は0.0027[m3/m2・sec](=10[m3/m2・hr]=33000[m3/hr]/3300[m2])であり、覆蓋集合体の単位あたりの面積を5[m2]とすれば、覆蓋集合体の単位あたりの空気量は、0.014[m3/sec](=0.0027[m3/m2・sec]×5[m2])となる。このような条件において、担体30の必要量は、接触時間20[sec]とすれば0.28[m3](=0.014[m3/sec]×20[sec])となる。担体30の必要量は、空間速度SV(例えば200[hr−1])から求めてもよい。一方、担体30の面積は、空塔速度(直線速度)を0.02[m/sec]とすると、0.7[m2](=0.014[m3/sec]/0.02[m/sec])となる。このような空塔速度は、従来の生物脱臭装置では、(設計)基準外となる低い値である。このように空塔速度を低く設定すれば、低圧力損失にすることが出来る。そして、担体30の高さ(厚さ)は、0.4[m](=0.28[m3]/0.7[m2])となり、薄く、低圧力損失の、担体を実現することが出来る。又、このような担体であれば、覆蓋集合体に収容し易いカートリッジタイプの担体とすることが可能である。
【0088】
本発明に係る覆蓋集合体の材質は、特に制限されるものではないが、設置作業を容易にする等の観点から軽量であることが好ましく、例えば、ガラス繊維強化樹脂(FRP)等が好適な材料として挙げられる。
【0089】
本発明に係る覆蓋集合体は、上記の何れかの覆蓋集合体を、当該覆蓋集合体の上面板2における傾斜の下側(下端側)が南東〜南〜南西の向き、好ましくは南向きとなるように配置して使用することが好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)図1及び図3に示される態様の覆蓋集合体を使用して、覆蓋集合体における各覆蓋の上面板における傾斜の下側が表1に示される設置方向となり、各覆蓋の上面板の傾斜角度が表1に示される値となるようにした場合の、太陽電池モジュールの年間発電量を、次のシミュレーション条件1にて算出した。結果を表1に示す。
【0092】
[シミュレーション条件1]場所は東京都、太陽電池モジュールの容量は1040W(130W×8枚)、モジュール温度係数は−0.5%/℃、インバータ効率は92%である。
【0093】
【表1】
【0094】
(考察1)表1によれば、上面板の傾斜角度が同一の場合(0゜の場合を除く)には、覆蓋の上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向き、特に南向きとなるよう設置すると、他の向きに設置したときよりも、高い年間発電量が得られることがわかる。又、上面板の傾斜角度は、30゜程度までは傾斜角度が大きくなるにしたがって年間発電量が増大するが、それを超えると減少に転じる傾向にあることがわかる。
【0095】
(実施例2〜6)図15に示される態様の覆蓋集合体を使用して、上面板の傾斜角度及び水平面部と傾斜面部にそれぞれ配設される太陽電池モジュールの数を変更して、太陽電池モジュールの年間発電量を、次のシミュレーション条件2にて算出した。結果を表1に示す。
【0096】
[シミュレーション条件2]発電電力量は、非特許文献1の91ページの記載に基づいて計算した。影の影響の検討は、非特許文献1の76ページの記載に基づいて計算した。日射量データは、非特許文献2の214ページに記載されたものを採用した。場所は東京都、太陽電池モジュールの容量は1つあたり75Wである。覆蓋集合体の(覆蓋の)長さLは6.2m(固定値)であり、これは覆うべき下水道施設の長さにあたる。高さHは、1.47m(固定値)である。通路幅を3mとし、覆蓋集合体の設置間隔を3.39mとし、影の長さが、最も長くなる冬至(影の倍率K=2.3)において、覆蓋集合体の設置間隔より長くならないようにした。背面板傾斜角度θ2(点検口傾斜角)は、105°(固定値)であり、背面板水平距離L3(傾斜開始距離)は、0.39m(固定値)である。長さL、高さH、背面板傾斜角度θ2、背面板水平距離L3(傾斜開始距離)の他、表2中の、(覆蓋集合体の)傾斜面部水平距離L1、水平面部長さL2、傾斜面部長さS、上面板傾斜角度θ1(太陽光傾斜度)については、図15を参照されたい。
【0097】
【表2】
【0098】
(考察2)表2に示されるように、発電シミュレーションの結果、傾斜面(6つ)と水平面(3つ)を組み合わせた場合に、最も年間発電電力量が多くなった。この結果より、下水処理施設のように、設置条件が予め決まっている場合には、傾斜面のみに太陽電池モジュールを設置するよりも傾斜面と水平面を組み合わせた方がメリットを出せる場合があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る覆蓋集合体及びその使用方法は、下水道施設の上方を覆うための手段として、好適に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0100】
1,101,102,110:覆蓋集合体、2:上面板、2a:(上面板の)水平面部、3:背面板、4:側面板、5:脱臭ダクト、6:太陽電池モジュール、7:内部空間、8:フランジ、11:点検口、12:開閉扉、13:点検口、14:開閉扉、15:点検口、16:開閉扉、17:配線収容室、18:臭気サンプリング口、19:散水口、20:LED照明、21:開口部、22:扉、23:調整つまみ、30:下水道施設、31:下水道施設、32:通路、33:矢印、34:矢印、41:覆蓋集合体、42:点検口、43:開閉扉。
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設の上方を覆うために使用される覆蓋集合体とその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池等の下水道施設においては、悪臭の拡散を防止する目的で、その上方を覆蓋で覆うようにしている。その覆蓋は、通常、幅方向に複数枚、隣接させて配置された状態で、下水道施設を形成する躯体に架け渡され、それら覆蓋の数十枚に一箇所程度の割合で、脱臭ダクトが接続されている。その脱臭ダクトは、下水道施設に収容された下水(場内下水、原水)から発生した臭気ガスを覆蓋の外部へ導き、下水道施設の周辺に設置された脱臭装置に送るためのものである。
【0003】
近年、このような下水道施設が、日射条件の良い場所に広い面積で設けられていることに着目し、上記の覆蓋の上面に太陽電池パネル等の太陽電池モジュールを設置して太陽光発電を行う試みがなされている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、従来の下水道施設、ないしは、そこで用いられる覆蓋においては、以下のような問題があった。
【0005】
(A)従来の脱臭ダクトは、覆蓋の中央部から上方に突き出し、更に所定の高さ(覆蓋の上空3〜5m付近)から水平方向へ延長され、他の覆蓋の上方を通過して、脱臭装置へと向かよう配設されているため、覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュールの一部が、脱臭ダクトによって日陰になる。通常、覆蓋の上面に設置される太陽電池モジュールは直列に接続されているため、その一部が日陰になると、日陰部分のセルは発電せず、他の部分のセルだけが発電して電流が流れることになるので、日陰部分のセルは抵抗となって発熱し、発電効率の低下を招く。
【0006】
(B)脱臭ダクトが上記のように覆蓋の上方を通過するように配設するには、脱臭ダクトを支持するためのサポート(支持体)を多数造る必要が有り、建設費が高くなる。又、脱臭ダクトがこのように覆蓋の上方に配設されていると、処理場が雑然とし、景観が悪くなる。
【0007】
(C)脱臭ダクトは、上記のように、隣接する覆蓋の数十枚に一枚程度の割合で接続されているため、この脱臭ダクトが接続された覆蓋の近傍では、脱臭ダクトに臭気が吸い込まれ易いが、脱臭ダクトが接続された覆蓋からの距離が遠くなるにつれて、脱臭ダクトに臭気が吸い込まれ難くなるため、全ての位置で均等な脱臭が出来ず、位置によって脱臭の程度に偏りが生じる。
【0008】
(D)従来は、覆蓋とダクトとが個々の構造物であり、それらの製造や設置工事も各々について行う必要が有ったため、製造コストが高く、設置工事の工期も長くなる。
【0009】
(E)特許文献2には、覆蓋から外部の脱臭装置(脱臭塔)まで脱臭ダクトを配設することなく、覆蓋自体に持たせた脱臭機能により脱臭可能としたものが開示されているが、この覆蓋においては、太陽電池モジュールで発生した電力の大部分が、覆蓋に取り付けられた排気ファンによって消費されてしまうため、電力を、他の用途には殆ど利用出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−340704号公報
【特許文献2】特開2005−66405号公報
【特許文献3】特許第2589040号公報
【特許文献4】特許第2589042号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】太陽光発電導入ガイドブック、本編、2000年改訂版、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)
【非特許文献2】太陽光発電システムの設計と施工、改訂2版、太陽光発電協会編、オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、上記(A)〜(E)の問題を解消することである。具体的には、上面に設置したときの太陽電池モジュールの発電効率が高く、発生させた電力をファン以外の用途にも使用することが出来、建設費の低減や工期の短縮化を図ることが可能であり、下水道施設の景観も良好となり、更に適切に脱臭が行われ得る、下水道施設の覆蓋手段を提供することが本発明の課題である。
【0013】
この課題を解決するため、本発明によれば、以下に示す下水道施設の覆蓋集合体及び覆蓋集合体の使用方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、先ず、本発明によれば、下水道施設の上方を覆うための、複数の覆蓋からなる覆蓋集合体であり、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の一方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(A)、及び、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の他方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(B)、を有し、覆蓋(A)及び覆蓋(B)が隣接して配置され、覆蓋(A)の上面板と覆蓋(B)の上面板とが、一の平面を形成してなるとともに、覆蓋(A)の上面板、背面板、及び側面板と、覆蓋(B)の上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体が提供される。
【0015】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体(単に覆蓋集合体ともいう)においては、更に、覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、を有する1以上の覆蓋(C)を有し、覆蓋(A)及び覆蓋(B)の間に覆蓋(C)を配し隣接して配置され、覆蓋(A)の上面板と覆蓋(B)の上面板と覆蓋(C)の上面板と、が一の平面を形成してなるとともに、覆蓋(A)の上面板、背面板、及び側面板と、覆蓋(C)の上面板及び背面板と、覆蓋(B)の上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されていることが好ましい。
【0016】
下水道施設とは、最初沈殿池、曝気槽、反応槽、最終沈殿池等のような、下水の各種処理、貯水等を行う槽(水槽)や池を有する施設であり、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、これらの上方を覆うための覆蓋集合体である。
【0017】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋からなるものであり、その複数の覆蓋として、覆蓋(A)、覆蓋(B)に加えて、好ましくは覆蓋(C)を有する。覆蓋(A)は、背面板及び上面板の一方の側端部の間を繋ぐ側面板を有し、背面板及び上面板の他方の(上記一方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板は有さない。覆蓋(B)は、背面板及び上面板の他方の(覆蓋(A)における上記一方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板を有し、背面板及び上面板の一方の(上記他方とは反対側の)側端部の間を繋ぐ側面板は有さない。覆蓋(C)は、覆蓋(A)と覆蓋(B)の間に配置されるものであり、全く側面板を有さない。即ち、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、側面板は、全体として2枚である。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、これら覆蓋(A)、覆蓋(B)、覆蓋(C)を組み合せて、下水道施設の上方を覆うものであり、分割可能な覆蓋ということも出来る。
【0018】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体において、複数の覆蓋は、隣接して配置され、その結果、それぞれの上面板で一の平面が形成されることになる。従って、複数の覆蓋は、上面板の側端部を(背面板の側端部も)相互に接するように、隙間なく配置されることになる。そのように配置するために、複数の覆蓋は、上面板及び背面板の側端部において、一定の関係を有することが好ましい。例えば、相互に接合、嵌合、係合、噛合、捻合等がなされていてもよいが、施工を考慮すると、複数の覆蓋が以下のような関係を有することが望ましい。
【0019】
即ち、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、隣接して配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、下水道施設における既設の覆蓋を、効率よく発電する太陽電池モジュールが設置された覆蓋に置換するために、使用することが出来る。この場合において、覆蓋集合体を構成する個々の覆蓋の幅(覆蓋が相互に隣接する方向の覆蓋の寸法)は、既設の覆蓋に対応させることが出来る。但し、複数の覆蓋は(隙間なく)隣接して配置されるので、既設の覆蓋より、少し幅が広くなる。又、個々の覆蓋の幅は、使用する太陽電池モジュールの規格寸法に合わせることが出来る。この方が、既設の覆蓋に対応させ他寸法とするより、好ましい。個々の覆蓋に太陽電池モジュールを設置したものを、隣接して配置させることが出来るからである。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、複数の覆蓋が(それぞれの上面板で)一の平面を形成してなるものであるので、その施工にかかり、太陽電池モジュールを設置せずに下水道施設の上方を覆い、後から、一の平面を形成した上面板に太陽電池モジュールを設置することも可能であるが、このような手段は、太陽電池モジュールを設置した覆蓋を隣接して配置させる場合に比して、施工性、安全性に劣る。
【0021】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、覆蓋(A)の側面板及び覆蓋(B)の側面板の少なくとも一方に、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを外部へ導くための、内部空間に通じる脱臭ダクトが設けられることが好ましい。又は、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上記内部空間に、悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設されるとともに、その担体に散水するための配管が、上面板の表面であり太陽電池モジュールの裏面を通って設けられることが好ましい。
【0022】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体において、脱臭ダクトが設けられる場合には、その脱臭ダクトに、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを採取するための臭気サンプリング口が設けられることが好ましい。又、その脱臭ダクトの側面に、内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられることが好ましい。
【0023】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、背面板に、(覆蓋集合体の)内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0024】
覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)とは、覆蓋集合体を構成する覆蓋の背面板(上面板、側面板)を意味する。覆蓋集合体は複数の覆蓋で構成されるから、覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)は複数存在することになる。本明細書において、覆蓋集合体の背面板(上面板、側面板)というときは、何れか1以上の背面板(上面板、側面板)を指すものとする。
【0025】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、更に、上面板にも、(覆蓋集合体の)内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0026】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であることが好ましい。この上面板の傾斜角度は、10〜30゜であることがより好ましく、30゜であることが特に好ましい。
【0027】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が、90〜150゜であることが好ましい。背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度は、120〜135゜であることがより好ましい。
【0028】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、内部空間に、内部空間の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられることが好ましい。この場合において、背面板に、(覆蓋集合体の)外部から配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられることが好ましい。
【0029】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、内部空間に、LED照明が設けられることが好ましい。
【0030】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられることが好ましい。
【0031】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板の上部が、水平面で構成されることが好ましい。本明細書において、上面板のうち水平面で構成される部分を水平面部といい、上記好ましい傾斜角度で傾斜している部分を傾斜面部という。
【0032】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈することが好ましい。
【0033】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体においては、太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールであることが好ましい。即ち、太陽電池が、アモルファス太陽電池であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明によれば、上記した脱臭ダクトが設けられる覆蓋集合体の脱臭ダクト同士が連結されてなる下水道施設の覆蓋複集合体が提供される。覆蓋複集合体は、複数の覆蓋集合体の脱臭ダクトが連結されたものである。
【0035】
次に、本発明によれば、上記した何れかの下水道施設の覆蓋集合体を、(覆蓋の)上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する下水道施設の覆蓋集合体の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋からなるものであり、その複数の覆蓋である覆蓋(A)、覆蓋(B)、(好ましくは)覆蓋(C)は隣接して配置され、それらの上面板によって一の平面を形成するものであるので、下水道施設の面積を有効に利用し、太陽電池モジュールを設置可能な面積を大きくすることが出来る。そのため、面積比で発電効率が高い。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体では、覆蓋(A)、覆蓋(B)、覆蓋(C)のそれぞれの間に脱臭ダクトは設けられないから、太陽電池モジュールを高密度に設置可能であり、従って、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、(太陽電池モジュール)高密度配置型覆蓋(集合体)ということが出来る。
【0037】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、複数の覆蓋を組み合せて1つの覆蓋(集合体)としたものということが出来、1つの覆蓋は軽量であり、取付(施工)が容易なので、工期短縮、建設費(特に人件費)低減を実現する。
【0038】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、(上面板の)表面に太陽電池モジュールを設置するものであるので、太陽電池モジュールで覆われた部分は再塗装の必要が無く、再塗装時の塗装面積が減少する。個々の覆蓋を、ガラス繊維強化樹脂(FRP)によって形成すれば、十数年に一度程度の割合で再塗装等の補修作業が必要となるが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体を用いれば、この負担が軽減する。
【0039】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、隣接に配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有するので、施工し易く、且つ、(施工後に)堅牢である。
【0040】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、全体として2枚存在する側面板の少なくとも一方に臭気ガスを外部へ導くための脱臭ダクトが設けられるか、又は、内部空間に悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設される。前者の場合、脱臭処理は従来と同じように別の場所で集中的になされ、後者の場合、脱臭処理は覆蓋集合体内において(全体としてみれば分散して)行われ、脱臭ダクトとは不要である。後者は、即ち、生物脱臭装置を内蔵した覆蓋集合体ということが出来、単独で脱臭処理が可能な覆蓋(集合体)である。何れにしても、従来のように、上面板に設置された太陽電池モジュールに、脱臭ダクトによる日陰が出来ず、高い発電効率が得られる。
【0041】
具体的には、従来、脱臭ダクトは、覆蓋の中央部から上方に突き出し、更に所定の高さ(覆蓋の上空3〜5m付近)から水平方向へ延長され、覆蓋の上方を通過して、脱臭装置へと向かうため、覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュールの一部が、脱臭ダクトによって日陰になり、発電効率の低下を招いていたが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体の好ましい態様によれば、脱臭ダクトが側面板に設けられているか、又は、脱臭ダクトが存在しないため、太陽電池モジュールに脱臭ダクトによる日陰が出来ず、発電効率が向上する。
【0042】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、側面板に脱臭ダクトを設けるか、又は脱臭ダクトをなくしているので、その主たる表面(上面板の表面)に太陽電池モジュールを設置可能となり、この点においても、下水道施設の面積を有効に利用し、太陽電池モジュールを設置可能な面積を増やすことが出来る。そのため、面積比で発電効率が高い。
【0043】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、側面板に脱臭ダクトを設けるか、又は脱臭ダクトをなくしているので、従来のように、脱臭ダクトを覆蓋の上空3〜5m付近まで引き上げる必要が無く、脱臭ダクトを上空に支持するためのサポート(支持体)を造る必要も無くなり、脱臭ダクトがある場合でも、その長さは従来より短くなる。
【0044】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、覆蓋(覆蓋(A)、覆蓋(B))と脱臭ダクトとを一体的な構造物とすることが出来、そうであれば一体型形成も可能である。従来は、覆蓋と脱臭ダクトとが個々の構造物であり、それらの製造や設置工事も各々について行う必要があったが、このような手間は省ける。又、これらの結果、建設費が低減するとともに、処理場の景観も良くなる。
【0045】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトは内部空間に連通しているため、そこから臭気ガスの吸い込みを行うことが出来、複数の覆蓋に覆われた下水道施設の全ての位置で偏りのない均等な脱臭が可能となる。又、脱臭ダクトを設けず、内部空間に担体を配設し、覆蓋単独で脱臭処理を可能とする場合には、その覆蓋集合体内で、偏りのない均等な脱臭が可能となる。
【0046】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトに臭気サンプリング口が設けられるので、上記した臭気の測定等の維持管理を、現に、容易且つ安全に実施可能とする。
【0047】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトが、覆蓋の上空ではなく、覆蓋の側面(板)という通路に近い、低い位置にあるので、脱臭ダクトが場内下水から発生した臭気ガスの臭気を測定するために臭気ガスを採取する臭気サンプリング口や、脱臭ダクトの内部に溜まった水を排除する水抜きのためのバルブ等を脱臭ダクトに設けることにより、臭気の測定や脱臭ダクトの水抜き作業等の維持管理を、作業者が通路から覆蓋の中央部まで行ったり、高所に登ったりすることなく、容易且つ安全に実施することが出来る。
【0048】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、脱臭ダクトを設ける場合に、その脱臭ダクトの側面に、上記内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられるので、後述の覆蓋複集合体を構成した場合に、各覆蓋集合体における臭気ガスの吸い込み均等化を図れる。
【0049】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、覆蓋集合体単独で脱臭処理を可能とした場合には、散水に使用した処理水は、最初沈殿池に戻す必要はなく、覆蓋している下水道施設(反応槽等)に放流すればよく、配管工事は不要である。
【0050】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、覆蓋集合体単独で脱臭処理を可能とした場合には、担体に散水するための配管が、上面板の表面であり上記太陽電池モジュールの裏面を通って設けられるので、この担体への散水に用いる処理水(下水処理された水であって配管を通る水)によって太陽電池モジュールを冷却することが出来、発電効率の低下を抑制することが出来る。
【0051】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上記背面板に覆蓋内部を点検するための開閉可能な点検口が設けられるので、作業者は楽な姿勢で内部の点検作業を行うことが可能になるとともに、作業者本人や作業者が上着のポケットに入れていた物が水中に落下することも防止出来る。又、作業者は点検口を上から覗き込む状態とはならないため、開閉扉を開けた際に点検口から上昇してきた蒸気によって作業者の眼鏡が曇ることがない。更に、点検の際に視線の角度が水面に対して浅くなるため、点検口から見渡せる水面の範囲が広くなり、水面全体に渡る点検が容易になる。後述するように、従来の覆蓋は、その上面が緩やかなアーチ状又は水平な平面状を呈しており、その上面に点検口が設けられていたため、内部を点検する際には、作業者は上体(上半身)を屈めて下方を覗き込むようなつらい姿勢となり、体に負担がかかるとともに、作業者が点検口から水中に落下してしまったり、上着のポケットに入れていた物(携帯電話、筆記具等)が屈んだ際に落下して、水中に沈んでしまったりするおそれがあった。又、点検口の開閉扉を開けた際に上昇してきた蒸気により作業者の眼鏡が曇ることもあった。更に、点検の際に視線の角度が水面に対し垂直に近い角度となるため、点検口から見渡せる水面の範囲が狭く、水面全体を点検し難いという問題もあった。本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体におけるこの好ましい態様によれば、このような問題は生じない。
【0052】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、更に、上面板にも覆蓋内部を点検するための開閉可能な点検口が設けられるので、効率よく点検を行うことが出来る。
【0053】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であるので、太陽電池モジュール上に降った雨や雪が自然に流れ落ちて、太陽電池モジュール上に留まり難いため、太陽電池モジュール上の積雪等に太陽光を遮られて発電効率が低下したり、積雪の重量により覆蓋1が破損したりするのを防ぐことが出来る。更に、傾斜した上面板の表面に太陽電池モジュールが設置されていると、覆蓋を所定方向に設置した場合に、太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度が大きくなり、発電効率が向上する。
【0054】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が90〜150゜であるので、背面板に点検口を設けた場合における、上記の効果が得られ易くなる。
【0055】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、内部空間に、内部空間の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられる。このように、内部空間の他の部分から仕切られた配線収容室に、太陽電池モジュールの配線を収容すれば、場内下水から発生した臭気ガスが腐食性のガスである場合であっても、配線を腐食性のガスから遮断して、配線の腐食劣化を防止することが出来る。
【0056】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、背面板に、覆蓋の外部から上記配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられるので、配線収容室内の配線の保守点検や配線接続作業等が容易に行える。
【0057】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、内部空間に、LED照明が設けられるので、それによって覆蓋集合体の内部が明るく照らされるため、視認性が向上し、点検に際して作業者が懐中電灯を持ち歩く必要がなくなる。従来は、覆蓋によって覆われた下水道施設の内部は暗いため、点検口から内部を点検する場合には、懐中電灯などで内部を照らす必要があったが、本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体によれば、その必要はない。LED照明に供給する電力には、覆蓋集合体に設置された太陽電池モジュールで発生した電力を用いることが出来、そうしたとしても、LED照明は消費電力が少なく、又、点検時以外には消灯しておけばよいので、既述の引用文献2における排気ファンのように、太陽電池モジュールで発生した電力の大部分を消費してしまうことはなく、電力の他の用途(覆蓋の機能維持以外の用途)への有効利用が大きく制限されることはない。
【0058】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられるので、夏場の高温時には、ポンプ等によって吸い上げた場内処理水(水温は年間を通じて15〜20℃程度)を、この散水口から散布して、太陽電池モジュールを冷却し、温度上昇を抑制すれば、発電効率の低下を抑制することが出来る。一般に、太陽電池モジュールは温度が上昇するほど発電効率が低下するが、これを防止出来る。
【0059】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板の上部が、水平面で構成されるので、高さを抑えられる。よって、後述の覆蓋複集合体を構成した場合に、上面板に設置された太陽電池モジュールに、他の覆蓋集合体による日陰が出来難く、高い発電効率が得られる。
【0060】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈するので、強度に優れたものとなる。仮に人が乗っても壊れ難く、又、下水道施設側からの圧力(内圧)増加に対しても耐え得る。
【0061】
本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体は、その好ましい態様において、上記太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールであるので、軽量で柔軟性に富み、搭載対象である上面板の態様に対する許容度が大きい。例えば上面板がアーチ状を呈していても、搭載可能であり、覆蓋全体としての軽量化にも資する。
【0062】
本発明に係る覆蓋複集合体は、上記した本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体の脱臭ダクト同士が連結されてなるものであるので、上記の本発明に係る下水道施設の覆蓋集合体が発現する効果を、同様に、(設備)全体として享受することが出来る。
【0063】
本発明に係る覆蓋集合体の使用方法は、上記した何れかの下水道施設の覆蓋集合体を、覆蓋の上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する。傾斜した上面板の表面に太陽電池モジュールが設置された覆蓋を、このような向きに配置すれば、太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度が大きくなり、高い発電効率が得られる。
【0064】
上記使用方法に用いられる覆蓋集合体は、上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下であることが好ましく、10〜30゜あることがより好ましく、30゜であることが特に好ましい。傾斜角度がこのような範囲であれば、太陽電池モジュールに理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、より高い発電効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る覆蓋集合体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示される覆蓋集合体において断面AAで切断した断面を表す断面図である。
【図3】図1に示される覆蓋集合体における右側の側面を表す側面図である。
【図4】図1に示される覆蓋集合体において断面BBで切断した断面(1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面)を表す断面図である。
【図5】背面板に加え上面板にも点検口が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図6】複数の下水道施設が並設されている状態を示す平面図である。
【図7】1つの覆蓋の背面板にだけ点検口が設けられている場合における点検作業時の移動ルートを示す平面図である。
【図8】1つの覆蓋の背面板に加え上面板にも点検口が設けられている場合における点検作業時の移動ルートを示す平面図である。
【図9】内部空間の上部に配線収容室が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図10】上面板に散水口が設けられた覆蓋集合体の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る覆蓋集合体における脱臭ダクトの一の実施形態を示す説明図(透視図)である。
【図12】本発明に係る覆蓋集合体の一の実施形態を示す背面図である。
【図13】従来の覆蓋集合体における点検口の配置を示す断面図である。
【図14】従来の覆蓋集合体における点検口の配置を示す断面図である。
【図15】本発明に係る覆蓋集合体の他の実施形態を示す側面図である。
【図16】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す側面図である。
【図17】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す図であり、1つの覆蓋の長手方向に沿って切断した断面図である。
【図18】本発明に係る覆蓋集合体の更に他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0067】
図1、図2、図3、及び図4に示される覆蓋集合体1は、下水道施設において、(例えば)反応槽の上方を覆うためのものである。覆蓋集合体1は、複数の覆蓋からなるものであり、1つの覆蓋10a(覆蓋(A)相当)、3つの覆蓋10c(覆蓋(C)相当)、1つの覆蓋10b(覆蓋(B)相当)を有する。
【0068】
覆蓋10aは、その長さ方向(図1中における断面BBの方向)において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、その背面板3及び上面板2の一方の側端部(図1における右側の側端部)の間を繋ぐ1枚の側面板4と、を有する。覆蓋10bは、その長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、その背面板3及び上面板2の一方の側端部(図1における左側の側端部)の間を繋ぐ1枚の側面板4と、を有する。覆蓋10cは、各々、その長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュール6が設置された上面板2と、その上面板2の上端から下方に伸びる背面板3と、を有する。覆蓋10cは、側面板を有さない。
【0069】
覆蓋集合体1では、覆蓋10a及び覆蓋10bの間に3つの覆蓋10cを配して、覆蓋10a、覆蓋10c、覆蓋10c、覆蓋10c、覆蓋10bの順に、隣接して配置され、覆蓋10aの上面板2と覆蓋10cの上面板2と覆蓋10bの上面板2と、が一の平面を形成している。そして、覆蓋10aの上面板2、背面板3、及び側面板4と、覆蓋10cの上面板2及び背面板3と、覆蓋10bの上面板2、背面板3、及び側面板4と、で囲まれた内部空間7が形成されている。内部空間7は下方に開口している(図2を参照)。
【0070】
覆蓋集合体1において、隣接に配置される覆蓋10aと覆蓋10cは、相互に接する上面板2の側端部において重なっており、その重なっている重なり部42(図2における丸囲い部分)に、リブ41を有する。図示しないが、隣接に配置される覆蓋10aと覆蓋10cは、相互に接する背面板3の側端部においても重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有する。これらの態様は、隣接に配置される覆蓋10bと覆蓋10c、隣接に配置される覆蓋10cと覆蓋10c、においても同様に存在する。
【0071】
覆蓋集合体1において、(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)上面板2は、覆蓋集合体1の短手方向において所定の角度で傾斜し、その表面に太陽電池モジュール6が設置される。具体的な上面板2の上面板傾斜角度θ1は、0゜より大きく30゜以下である(図3を参照)。
【0072】
(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)背面板3は、上面板2の上端から下方に向かって伸びるよう形成されている。ここで、下方とは、鉛直方向だけでなく斜め下方も含む。背面板3の外側面と水平な面とのなす角の背面板傾斜角度θ2は、90〜150゜である(図3を参照)。覆蓋集合体1には、この背面板3に開閉扉12により開閉可能な点検口11が(例えば1つ)設けられる(図4を参照)。この点検口11は、覆蓋集合体1によって覆われた下水道施設の内部を点検するための開閉可能な開口である。
【0073】
尚、図13及び14に示されるように、従来の覆蓋集合体41は、その上面が緩やかなアーチ状又は水平な平面状を呈しており、その上面に点検口42が設けられていた。
【0074】
(覆蓋10a、覆蓋10bを形成するそれぞれの)側面板4は、上面板2と背面板3との側端部の間を繋ぐ部材であり、覆蓋集合体1の内側には、(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する全ての)上面板2、背面板3及び側面板4によって囲まれた内部空間7が形成される。内部空間7は下方に(下水道施設に向けて)開口している。そして、覆蓋10aの側面板4には、下水道施設に収容された場内下水から発生した臭気ガスを覆蓋集合体1の外部へ導くための、内部空間7に通じる脱臭ダクト5が設けられている。(覆蓋10a、覆蓋10b、覆蓋10cを形成する)上面板2、背面板3及び側面板4の・BR>コ端部に設けられたフランジ8は、場内下水を収容する下水道施設の縁部に覆蓋集合体1を固定したり、隣接する覆蓋集合体1間を固定したりするのに有用である。
【0075】
覆蓋集合体1において、図5に示されるように、内部を点検するための、開閉扉14により開閉可能な点検口13を、背面板3だけでなく、上面板2の太陽電池モジュール6を設置していない部分にも追加的に設けることが出来る。図6に示されるように、複数の下水道施設30、31が比較的短い間隔で並設されており、これらの上方を覆う覆蓋集合体1の向きが全て同じである場合において、覆蓋集合体1の背面板3にだけ点検口11が設けられているときは、下水道施設30、31間の通路32の左右何れか一方にしか点検口11がないため、点検を行う作業者は、図7の矢印33に示される移動ルートで、長距離を移動しながら全体の点検を行う必要がある。これに対し、図8のように、覆蓋集合体1の背面板3だけでなく、上面板2にも点検口13が設けられているときは、下水道施設30、31間の通路32の左右両側に点検口11、13があるため、ほぼ同じ位置で通路32を挟んだ左右両側の覆蓋集合体1の内部を点検出来、矢印34に示される移動ルートで、短い移動距離にて全体の点検作業を行うことが出来る。尚、このような点検口は、隣接配置されている全ての覆蓋集合体に設ける必要はなく、通常は、数〜十数に1つ程度の割合で、点検口が設けられた覆蓋集合体が配置されていればよい。即ち、点検口が設けられない覆蓋集合体があってもよい。
【0076】
側面板4は、上面板2と背面板3との側端部の間を繋ぐ部材であり、覆蓋集合体1では、覆蓋10aの側面板4に、下水道施設に収容された場内下水から発生した臭気ガスを覆蓋集合体1の外部へ導くための、内部空間7に通じる脱臭ダクト5が設けられている。
【0077】
覆蓋集合体1では、図10に示されるように、覆蓋10bの側面板4に、追加的に、内部空間7に通じる脱臭ダクト5を設けてもよい。覆蓋集合体1では、これら内部空間7に連通した脱臭ダクト5が、覆蓋集合体1の上空ではなく、覆蓋集合体1の側面(側面板4)という通路に近い低い位置にあり、場内下水から発生した臭気ガスの臭気を測定するために臭気ガスを採取する臭気サンプリング口18や、脱臭ダクトの内部に溜まった水を排除する水抜きのためのバルブ等が、脱臭ダクト5に設けられる(図10を参照)。覆蓋集合体1においては、脱臭ダクト5は覆蓋集合体1の一部とすることが出来、その場合、一体型形成が可能である。
【0078】
覆蓋集合体1においては、図9に示されるように、上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれた内部空間7に、内部空間7の他の部分から仕切られた、太陽電池モジュール6の配線を収容するための配線収容室17を設けることが出来る。そして、このような配線収容室17を設ける場合には、背面板3に、覆蓋集合体1の外部から配線収容室17内に通じる、開閉扉16(図12を参照)により開閉可能な点検口15を設けることが好ましい。
【0079】
覆蓋集合体1においては、図9に示されるように、上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれた内部空間7に、LED照明20を設けることが出来る。このLED照明20に供給する電力には、覆蓋集合体1に設置された太陽電池モジュール6で発生した電力を用いることが可能である。
【0080】
覆蓋集合体1においては、図10に示されるように、上面板2の上部に、下水道施設の場内処理水を散布するための散水口19を設けることが出来る。ポンプ等によって吸い上げた場内処理水(水温は年間を通じて15〜20℃程度)を、この散水口19から散布して、太陽電池モジュール6を冷却し、温度上昇を抑制可能である。
【0081】
覆蓋集合体1において、脱臭ダクト5は、覆蓋集合体を構成する2枚の側面板4を貫通するパイプ状のものであり、図11に示されるように、その側面の一部に覆蓋集合体1の内部空間7に通じる開口部21を形成することが出来る。そして、複数の覆蓋集合体1の脱臭ダクト5同士を連結して、覆蓋複集合体を形成する場合に、それぞれの覆蓋集合体における臭気ガスの吸い込みを均等化するため、この開口部21には、その開口面積を微調節するための開口面積調節手段が設けられていることが好ましい。図11に示される態様では、開口面積調節手段として、開口部21にスライド可能な扉22が設けられており、この扉22を矢印方向にスライドさせることで、開口部21の開口面積を調節することが出来る。扉22には調節を容易に行えるよう脱臭ダクト5の径方向に突出した調整つまみ23が一体的に設けられている。開口部21の開口面積の調整は、例えば、背面板3に設けた点検口から調整つまみ23を把持出来るような治具を内部空間7に挿入し、その治具にて調整つまみ23を把持して扉22をスライドさせることにより行うことが出来る。
【0082】
図15は、図3に対応する側面図である。図15に示される覆蓋集合体101では、(個々の覆蓋において、)上面板2の上部に、水平面部2aを有し、上面板2の上部が水平面で構成される。そして、その水平面部2aには、内部空間を明るくする採光窓27が設けられる。又、分割された太陽電池モジュール6の一部は、水平面部2aにも配設される。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0083】
図16は、図3に対応する側面図である。図16に示される覆蓋集合体102では、(個々の覆蓋において、)上面板2がアーチ状を呈する点が異なる。そして、そのアーチ状の上面板2には、その形状に沿って、例えばアモルファス太陽電池で構成される太陽電池モジュール6が配設される。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0084】
図17は、図4に対応する断面図である。図17に示される覆蓋集合体110では、覆蓋集合体101と同様に、(個々の覆蓋において、)上面板2の上部に、水平面部2aを有し、上面板2の上部が水平面で構成される、その水平面部2aには、内部空間を明るくする採光窓27が設けられ、分割された太陽電池モジュール6の一部は、水平面部2aにも配設される。そして、内部空間7には生物脱臭装置が備わり、側面板4には脱臭ダクト5が設けられていない。これら以外の構造は、覆蓋集合体1と共通する。
【0085】
覆蓋集合体110では、水平面部2aを含む上面板2、背面板3及び側面板4で囲まれて下方が開口した内部空間7に、悪臭を分解する微生物が固定された担体30が配設されるとともに、その担体30に散水するための配管29が、上面板2の表面であり太陽電池モジュール6の裏面を通って設けられる。これらが生物脱臭装置の主たる構成要素である。排気のための排気口28は、背面板3に設けられる。散水のための水としては、場内処理水を使用することが出来、その水は、弁31で流量調節ないし流量制御される。
【0086】
図18に示されるように、1つの覆蓋集合体110に、2つの(複数の)担体30を配設することが出来る、処理水の供給配管32は、共通で使用することが出来る(図18では弁31は省略)。担体30を通過させた水(散水)は、それぞれ、そのまま下水道施設に(下方に)放流すればよい。図18に示される態様とは異なり、1つの覆蓋集合体110に、1つの担体30を配設するだけでもよい。この場合には、例えば、吸引ファンを設け、場内処理水から発生した臭気ガスを吸い込み、集めて、その1つの担体30へ供給することが好ましい。
【0087】
担体30は、例えば特許文献3、4に開示されたものであって、覆蓋集合体内に収まり易く、取扱いが容易なように、薄くカートリッジタイプのものが好ましい。例えば、(下水道施設の)処理規模が100000m3/日のときに、このときの反応槽の滞留時間を8hr(時間)とすれば、反応槽の有効容積は概ね33000[m3](=100000[m3/日]×8[hr]/24[hr])となり、反応槽の高さを5[m]とすれば、反応槽の有効面積は6600[m2](=33000[m3]/5[m])となり、開口率50[%]とすれば、反応槽の開口面積は3300[m2](=6600[m2]×0.5)である。そして、反応槽へ送る空気量は、1[m3/m3・hr]で送るとすれば、33000[m3/hr](=33000[m3]×1[m3/m3・hr])となり、開口面積(覆蓋集合体の面積)あたりの空気量は0.0027[m3/m2・sec](=10[m3/m2・hr]=33000[m3/hr]/3300[m2])であり、覆蓋集合体の単位あたりの面積を5[m2]とすれば、覆蓋集合体の単位あたりの空気量は、0.014[m3/sec](=0.0027[m3/m2・sec]×5[m2])となる。このような条件において、担体30の必要量は、接触時間20[sec]とすれば0.28[m3](=0.014[m3/sec]×20[sec])となる。担体30の必要量は、空間速度SV(例えば200[hr−1])から求めてもよい。一方、担体30の面積は、空塔速度(直線速度)を0.02[m/sec]とすると、0.7[m2](=0.014[m3/sec]/0.02[m/sec])となる。このような空塔速度は、従来の生物脱臭装置では、(設計)基準外となる低い値である。このように空塔速度を低く設定すれば、低圧力損失にすることが出来る。そして、担体30の高さ(厚さ)は、0.4[m](=0.28[m3]/0.7[m2])となり、薄く、低圧力損失の、担体を実現することが出来る。又、このような担体であれば、覆蓋集合体に収容し易いカートリッジタイプの担体とすることが可能である。
【0088】
本発明に係る覆蓋集合体の材質は、特に制限されるものではないが、設置作業を容易にする等の観点から軽量であることが好ましく、例えば、ガラス繊維強化樹脂(FRP)等が好適な材料として挙げられる。
【0089】
本発明に係る覆蓋集合体は、上記の何れかの覆蓋集合体を、当該覆蓋集合体の上面板2における傾斜の下側(下端側)が南東〜南〜南西の向き、好ましくは南向きとなるように配置して使用することが好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)図1及び図3に示される態様の覆蓋集合体を使用して、覆蓋集合体における各覆蓋の上面板における傾斜の下側が表1に示される設置方向となり、各覆蓋の上面板の傾斜角度が表1に示される値となるようにした場合の、太陽電池モジュールの年間発電量を、次のシミュレーション条件1にて算出した。結果を表1に示す。
【0092】
[シミュレーション条件1]場所は東京都、太陽電池モジュールの容量は1040W(130W×8枚)、モジュール温度係数は−0.5%/℃、インバータ効率は92%である。
【0093】
【表1】
【0094】
(考察1)表1によれば、上面板の傾斜角度が同一の場合(0゜の場合を除く)には、覆蓋の上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向き、特に南向きとなるよう設置すると、他の向きに設置したときよりも、高い年間発電量が得られることがわかる。又、上面板の傾斜角度は、30゜程度までは傾斜角度が大きくなるにしたがって年間発電量が増大するが、それを超えると減少に転じる傾向にあることがわかる。
【0095】
(実施例2〜6)図15に示される態様の覆蓋集合体を使用して、上面板の傾斜角度及び水平面部と傾斜面部にそれぞれ配設される太陽電池モジュールの数を変更して、太陽電池モジュールの年間発電量を、次のシミュレーション条件2にて算出した。結果を表1に示す。
【0096】
[シミュレーション条件2]発電電力量は、非特許文献1の91ページの記載に基づいて計算した。影の影響の検討は、非特許文献1の76ページの記載に基づいて計算した。日射量データは、非特許文献2の214ページに記載されたものを採用した。場所は東京都、太陽電池モジュールの容量は1つあたり75Wである。覆蓋集合体の(覆蓋の)長さLは6.2m(固定値)であり、これは覆うべき下水道施設の長さにあたる。高さHは、1.47m(固定値)である。通路幅を3mとし、覆蓋集合体の設置間隔を3.39mとし、影の長さが、最も長くなる冬至(影の倍率K=2.3)において、覆蓋集合体の設置間隔より長くならないようにした。背面板傾斜角度θ2(点検口傾斜角)は、105°(固定値)であり、背面板水平距離L3(傾斜開始距離)は、0.39m(固定値)である。長さL、高さH、背面板傾斜角度θ2、背面板水平距離L3(傾斜開始距離)の他、表2中の、(覆蓋集合体の)傾斜面部水平距離L1、水平面部長さL2、傾斜面部長さS、上面板傾斜角度θ1(太陽光傾斜度)については、図15を参照されたい。
【0097】
【表2】
【0098】
(考察2)表2に示されるように、発電シミュレーションの結果、傾斜面(6つ)と水平面(3つ)を組み合わせた場合に、最も年間発電電力量が多くなった。この結果より、下水処理施設のように、設置条件が予め決まっている場合には、傾斜面のみに太陽電池モジュールを設置するよりも傾斜面と水平面を組み合わせた方がメリットを出せる場合があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る覆蓋集合体及びその使用方法は、下水道施設の上方を覆うための手段として、好適に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0100】
1,101,102,110:覆蓋集合体、2:上面板、2a:(上面板の)水平面部、3:背面板、4:側面板、5:脱臭ダクト、6:太陽電池モジュール、7:内部空間、8:フランジ、11:点検口、12:開閉扉、13:点検口、14:開閉扉、15:点検口、16:開閉扉、17:配線収容室、18:臭気サンプリング口、19:散水口、20:LED照明、21:開口部、22:扉、23:調整つまみ、30:下水道施設、31:下水道施設、32:通路、33:矢印、34:矢印、41:覆蓋集合体、42:点検口、43:開閉扉。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道施設の上方を覆うための、複数の覆蓋からなる覆蓋集合体であり、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の一方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(A)、及び、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の他方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(B)、を有し、
前記覆蓋(A)及び覆蓋(B)が隣接して配置され、
前記覆蓋(A)の上面板と前記覆蓋(B)の上面板とが、一の平面を形成してなるとともに、
前記覆蓋(A)の前記上面板、背面板、及び側面板と、前記覆蓋(B)の前記上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項2】
更に、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、を有する1以上の覆蓋(C)を有し、
前記覆蓋(A)及び覆蓋(B)の間に前記覆蓋(C)を配し隣接して配置され、
前記覆蓋(A)の上面板と前記覆蓋(B)の上面板と前記覆蓋(C)の上面板と、が一の平面を形成してなるとともに、
前記覆蓋(A)の前記上面板、背面板、及び側面板と、前記覆蓋(C)の前記上面板及び背面板と、前記覆蓋(B)の前記上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている請求項1に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項3】
隣接して配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有する請求項1又は2に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項4】
前記覆蓋(A)の側面板及び覆蓋(B)の側面板の少なくとも一方に、前記下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを外部へ導くための、前記内部空間に通じる脱臭ダクトが設けられる請求項1〜3の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項5】
前記脱臭ダクトに、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを採取するための臭気サンプリング口が設けられる請求項4に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項6】
前記脱臭ダクトの側面に、前記内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられる請求項4又は5に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項7】
前記内部空間に、悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設されるとともに、その担体に散水するための配管が、前記上面板の表面であり前記太陽電池モジュールの裏面を通って設けられる請求項1〜3の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項8】
前記背面板に、内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられる請求項1〜7の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項9】
更に、前記上面板にも、内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられる請求項1〜8の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項10】
前記上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下である請求項1〜9の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項11】
前記背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が、90〜150゜である請求項1〜10の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項12】
前記内部空間に、前記内部空間の他の部分から仕切られた、前記太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられる請求項1〜11の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項13】
前記背面板に、外部から前記配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられる請求項11に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項14】
前記内部空間に、LED照明が設けられる請求項1〜13の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項15】
前記上面板の上部に、前記下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられる請求項1〜12の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項16】
前記上面板の上部が、水平面で構成される請求項1〜15の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項17】
前記上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈する請求項1〜16の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項18】
前記太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールである請求項1〜17の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項19】
請求項4〜6の何れか一項に記載の覆蓋集合体の前記脱臭ダクト同士が連結されてなる下水道施設の覆蓋複集合体。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体を、前記上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する下水道施設の覆蓋集合体の使用方法。
【請求項1】
下水道施設の上方を覆うための、複数の覆蓋からなる覆蓋集合体であり、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の一方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(A)、及び、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、その背面板及び前記上面板の他方の側端部の間を繋ぐ1枚の側面板と、を有する覆蓋(B)、を有し、
前記覆蓋(A)及び覆蓋(B)が隣接して配置され、
前記覆蓋(A)の上面板と前記覆蓋(B)の上面板とが、一の平面を形成してなるとともに、
前記覆蓋(A)の前記上面板、背面板、及び側面板と、前記覆蓋(B)の前記上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項2】
更に、
覆蓋の長さ方向において所定の角度で傾斜し、表面に太陽電池モジュールが設置された上面板と、その上面板の上端から下方に伸びる背面板と、を有する1以上の覆蓋(C)を有し、
前記覆蓋(A)及び覆蓋(B)の間に前記覆蓋(C)を配し隣接して配置され、
前記覆蓋(A)の上面板と前記覆蓋(B)の上面板と前記覆蓋(C)の上面板と、が一の平面を形成してなるとともに、
前記覆蓋(A)の前記上面板、背面板、及び側面板と、前記覆蓋(C)の前記上面板及び背面板と、前記覆蓋(B)の前記上面板、背面板、及び側面板と、で囲まれ、下方が開口した内部空間が形成されている請求項1に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項3】
隣接して配置される複数の覆蓋は、相互に接する上面板及び背面板の側端部において重なっており、その重なっている重なり部に、リブを有する請求項1又は2に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項4】
前記覆蓋(A)の側面板及び覆蓋(B)の側面板の少なくとも一方に、前記下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを外部へ導くための、前記内部空間に通じる脱臭ダクトが設けられる請求項1〜3の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項5】
前記脱臭ダクトに、下水道施設に収容された下水から発生した臭気ガスを採取するための臭気サンプリング口が設けられる請求項4に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項6】
前記脱臭ダクトの側面に、前記内部空間に通じる開口部の開口面積を調節するための開口面積調節手段が設けられる請求項4又は5に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項7】
前記内部空間に、悪臭を分解する微生物が固定された担体が配設されるとともに、その担体に散水するための配管が、前記上面板の表面であり前記太陽電池モジュールの裏面を通って設けられる請求項1〜3の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項8】
前記背面板に、内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられる請求項1〜7の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項9】
更に、前記上面板にも、内部を点検するための、開閉可能な点検口が設けられる請求項1〜8の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項10】
前記上面板の傾斜角度が、0゜より大きく30゜以下である請求項1〜9の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項11】
前記背面板の外側面と水平な面とのなす角の角度が、90〜150゜である請求項1〜10の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項12】
前記内部空間に、前記内部空間の他の部分から仕切られた、前記太陽電池モジュールの配線を収容するための配線収容室が設けられる請求項1〜11の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項13】
前記背面板に、外部から前記配線収容室内に通じる開閉可能な点検口が設けられる請求項11に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項14】
前記内部空間に、LED照明が設けられる請求項1〜13の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項15】
前記上面板の上部に、前記下水道施設の場内処理水を散布するための散水口が設けられる請求項1〜12の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項16】
前記上面板の上部が、水平面で構成される請求項1〜15の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項17】
前記上面板、背面板及び側面板の何れか1以上が、アーチ状を呈する請求項1〜16の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項18】
前記太陽電池モジュールが、アモルファス太陽電池のモジュールである請求項1〜17の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体。
【請求項19】
請求項4〜6の何れか一項に記載の覆蓋集合体の前記脱臭ダクト同士が連結されてなる下水道施設の覆蓋複集合体。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか一項に記載の下水道施設の覆蓋集合体を、前記上面板における傾斜の下側が南東〜南〜南西の向きとなるように配置して使用する下水道施設の覆蓋集合体の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−78862(P2011−78862A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230777(P2009−230777)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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