説明

中綿および繊維製品

【課題】ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿、および該中綿を含む繊維製品を提供する。
【解決手段】単糸繊度が0.1〜1.5dtexかつ繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維と、セルロース系短繊維とで中綿を構成し、必要に応じて熱接着性複合短繊維および/またはアクリル系樹脂を含ませて嵩性の洗濯耐久性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料、布団、ぬいぐるみ、クッション構造体などの分野で中綿が使用されている。かかる中綿として、中空率10〜40%程度の中空ポリエステル短繊維を使用することで繊維内部に空気層を作り軽量保温性を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、中空ポリエステル短繊維で中綿を構成すると中空ポリエステル短繊維の曲げ剛性が大きいため中綿の風合いが硬くなるという問題があった。また近年では、さらに優れた軽量保温性が求められている。なお、特許文献2では、中空率が40%以上の高中空ポリエステル繊維が提案されている。
【0003】
一方、中綿としてセルロース系繊維を使用することで中綿に吸放湿性を付加することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、かかるセルロース系繊維で中綿を構成すると、吸放湿性には優れるものの軽量保温性が十分でないという問題があった。
これまで、ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿はあまり提案されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−155649号公報
【特許文献2】特開平10−292222号公報
【特許文献3】特開2004−166858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿、および該中綿を含む繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、細繊度かつ高中空率の中空ポリエステル短繊維と、セルロース系短繊維とで中綿を構成することにより、ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「単糸繊度が0.1〜1.5dtexかつ繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維と、セルロース系短繊維とを含んでなることを特徴とする中綿。」が提供される。
【0008】
その際、前記の中空ポリエステル短繊維に捲縮が付与されていることが好ましい。また、前記のセルロース系短繊維が公定水分率12〜15%のセルロース系短繊維であることが好ましい。かかるセルロース系短繊維において、単糸繊度が1.0〜8.0dtexであることが好ましい。また、かかるセルロース系短繊維に捲縮が付与されていることが好ましい。前記の中空ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維との重量比が前者:後者で20:80〜80:20の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明の中綿において、他の繊維として、単糸繊度が3.0〜15.0dtex、繊維横断面中空率が25〜35%の低中空ポリエステル短繊維が、中綿全重量に対して5〜30重量%の範囲内で含まれることが好ましい。また、他の繊維として、前記の繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維が中綿全重量に対して5〜20重量%の範囲内で含まれており、かつ該熱接着性複合短繊維が加熱溶融処理されて該熱接着性複合短繊維同士の接触点および/または該熱接着性複合短繊維と前記中空ポリエステル短繊維もしくセルロース系短繊維との接触点の一部が熱接着していることが好ましい。また、アクリル系樹脂により、繊維同士の接触点の一部が熱接着していることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、「前記の中綿を含む、衣料、ぬいぐるみ、布団、およびクッション構造体からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。」が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ソフトな風合い、軽量保温性、吸放湿性に優れた中綿、および該中綿を含む繊維製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の中綿に含まれる中空ポリエステル短繊維において、単糸繊度が0.1〜1.5dtex(好ましくは0.5〜1.2dtex)かつ繊維横断面中空率が40〜80%(好ましくは45〜70%)であることが肝要である。
【0013】
ここで、該中空ポリエステル短繊維の単糸繊度が1.5dtexよりも大きいと、中綿の風合いが硬くなるため好ましくない。逆に、単糸繊度が0.1dtexよりも小さいと製造が困難となるおそれがある。
【0014】
また、前記の繊維横断面中空率が80%よりも大きいと、製造が困難となるだけでなく中空を保持できずにつぶれてしまい保温性が損なわれ好ましくない。逆に、繊維横断面中空率が40%より小さいと、十分な軽量保温性が得られず好ましくない。なお、中空率は、単糸繊維の断面積(中空部を含む)と中空部面積を測定し、その面積比から算出するものとする。
【0015】
このような中空率を有するポリエステル繊維は、例えば特開平10−292222号公報に記載された方法により容易に得ることができる。すなわち、後記のようなポリエステルを、中空糸製造用紡糸孔を具備する紡糸口金から吐出し、該吐出糸条を口金直下で一旦急冷し次いで徐冷すると共に、紡糸ドラフトが150以上(好ましくは150〜500、特に好ましくは200〜400)で、且つ引取速度が500〜2000m/分(好ましくは1000〜1800m/分)で引取ることにより容易に得られる。
【0016】
前記の中空ポリエステル短繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、またはこれらの共重合体などが例示される。なかでも、繊維形成性等の点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。また、かかるポリエステルは、ペットボトルを原料とし、加熱して溶融また溶剤により溶解してペレット化し、再度、溶融紡糸することなどにより得られる再生ポリエステル、およびケミカルリサイクルにより得られる再生ポリエステルであってもよい。なお、ポリエステル中には、必要に応じて、艶消し剤、微細孔形成剤、カチオン可染剤、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、着色剤、帯電防止剤、吸湿剤、抗菌剤、マイナスイオン発生剤等を1種又は2種以上を添加してもよい。
【0017】
前記の中空ポリエステル短繊維において、繊維長としては3〜100mmの範囲内であることがカード工程の安定性の点で好ましい。また、中空ポリエステル短繊維に捲縮が付与されていると、中綿の嵩性が向上し好ましい。その際、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
【0018】
一方、本発明の中綿に含まれるセルロース系短繊維は、吸放湿性に寄与する繊維であり、公定水分率12〜15%のセルロース系短繊維であることが好ましい。該公定水分率が12%よりも小さいと、十分な吸放湿性が得られないおそれがある。かかるセルロース系短繊維としては、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、レンチング社製リヨセル(商品名)などがあげられる。
【0019】
かかるセルロース系短繊維において、単糸繊度が1.0〜8.0dtexであることが好ましい。該単糸繊度が8.0dtexよりも大きいと、中綿の風合いが硬くなるおそれがある。逆に、単糸繊度が1.0dtexよりも小さいと製造が困難となるおそれがある。
【0020】
かかるセルロース系短繊維において、繊維長としては3〜100mmの範囲内であることがカード工程の安定性の点で好ましい。また、セルロース系短繊維に捲縮が付与されていると、中綿の嵩性が向上し好ましい。その際、捲縮付与方法としては、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮が最適である。
【0021】
本発明の中綿において、前記の中空ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維との重量比としては、前者:後者で20:80〜80:20(より好ましくは30:70〜70:30)の範囲内であることが好ましい。中空ポリエステル短繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、十分な軽量保温性が得られないおそれがある。逆に、セルロース系短繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、十分な吸放湿性が得られないおそれがある。
【0022】
本発明の中綿は、前記の中空ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維だけで構成されていてもよいが、前記の中空ポリエステル繊維は、中空率が大きいため捲縮がかかりにくく十分な嵩性が得られないおそれがある。このため、本発明の中綿において、他の繊維として、単糸繊度が3.0〜15.0dtex、繊維横断面中空率が25〜35%の低中空ポリエステル短繊維が、中綿全重量に対して5〜30重量%の範囲内で含まれていると、容易に捲縮を付与することができ、嵩性が向上し好ましい。なお、該低中空ポリエステル短繊維の繊維長および捲縮数としては、繊維長3〜100mm、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明の中綿において、他の繊維として、前記の繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維が中綿全重量に対して5〜20重量%の範囲内で含まれており、かつ該熱接着性複合短繊維が加熱溶融処理されて該熱接着性複合短繊維同士の接触点および/または該熱接着性複合短繊維と前記中空ポリエステル短繊維もしくセルロース系短繊維との接触点の一部が熱接着していると、嵩性の洗濯耐久性が向上し好ましい。繊維の接触点が熱接着していない場合は、セルロース系短繊維が洗濯により収縮するおそれがある。
【0024】
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができる。
【0025】
ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。
【0026】
これらのポリマーのうちで、特に好ましいのはポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
【0027】
また、ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
【0028】
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0029】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステル等が使用できる。
【0030】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマーが好ましい。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0031】
熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の相手側成分としては、中空ポリエステルと同様のポリエステルが好ましく例示される。その際、熱融着成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱融着成分と相手側成分とが、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と相手側成分とが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。その際、芯部が同心円状、もしくは偏心状にあってもよい。
【0032】
かかる熱接着性複合短繊維において、単糸繊度としては、1〜15dtex(より好ましくは2〜13dtex、特に好ましくは2〜10dtex)であることが好ましい。該熱接着性複合短繊維は、繊維長3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
【0033】
また、本発明の中綿において、アクリル系樹脂により、繊維同士の接触点の一部が熱接着していても、嵩性の洗濯耐久性が向上し好ましい。ここで、アクリル系樹脂は特に限定されず、例えば、中央理科工業株式会社製の型式FK‐66などが例示される。また、アクリル系樹脂の付着量としては、中綿重量に対して5〜10重量%の範囲内であることが好ましい。なお、アクリル系樹脂を付与する方法としてはスプレー法や含浸法などが例示される。
【0034】
本発明の中綿は以下の製造方法により容易に製造することができる。
まず、単糸繊度が0.1〜1.5dtex、かつ繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維と、セルロース系短繊維とを混綿しカードなどで開繊しウエッブを形成した後、ウェッブを必要に応じて積層することにより、本発明の中綿を得ることができる。その際、前述のように熱接着性複合短繊維および/またはアクリル樹脂を含ませる場合は、熱処理し繊維間を融着させるか、パチングプレートで構成される平板やキャタピラー式の上下パンチングプレートによるコンベアーに積層ウェッブ等を挟み込み、加熱処理を行うことにより繊維の接触点を熱接着させることができる。
【0035】
かくして得られる中綿において、目付けは30〜150g/m、平均密度は0.015〜0.20g/cm3の範囲にあることが好ましい。また、撥水加工、抗菌加工、吸汗加工、消臭加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
【0036】
本発明の中綿において、細繊度かつ高中空率の中空ポリエステル短繊維により、ソフトな風合いと軽量保温性を呈する。また、セルロース系繊維により吸放湿性を呈する。さらに、該熱接着性複合短繊維および/またはアクリル系樹脂により繊維同士の接触点が熱接着している場合には、嵩性の洗濯耐久性を呈する。
【0037】
次に、本発明の繊維製品は、衣料、ぬいぐるみ、布団、およびクッション構造体からなる群より選択されるいずれかの繊維製品であり、かつ前記の中綿を含んでいる。かかる繊維製品は前記の中綿を含んでいるので、ソフトな風合い、軽量保温性、および吸放湿性を呈する。
【実施例】
【0038】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。
(2)中空率(%)
画像解析システム、ピアス−2(ピアス(株)製)を用い、単糸繊維のセクション断面画像を500倍に拡大して単糸繊維の断面積(中空部を含む)と中空部面積を測定し、その面積比から中空率(%)を算出した。
(3)繊維の捲縮数
JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。
(4)保温性
ASTM D−1518−57Tにより放熱量を測定し、下記式により保温性(%)を算出した。
保温性(%)=(1−(発熱体に試験片を取り付けたときの放熱量(W/h)/(発熱体の空試験の放熱量(W/h)))/100
(5)吸放湿性
試料を20℃40%RHの温湿度で12時間放置した後の質量w1(g)を測定し、次いで、該試料を20℃90%RHの温湿度で60分間放置した後の質量w2(g)を測定し、下記式により吸湿率(%)を算出した。
吸湿率(%)=((w2−w1)/w1)×100
(6)嵩性の洗濯耐久性
50cm四方の試料を用意し、収縮測定用に30cmのマーキングをした。次いで、ナイロンタフタ織物で表裏をはさみ、4辺をロックミシンで縫製し洗濯サンプルとした。
この洗濯サンプルについて下記に示した手洗い処理、ドライクリーニング処理の後、収縮の状況により嵩性の洗濯耐久性を判定した。収縮によりマーキングが29.5cm以下になった場合「不合格」、29.5cmよりも大きい場合「合格」とした。
(手洗い処理)
容器に浸透剤を少量入れた常温の水に試験布を10分間浸漬する。その後、手で30分間押し洗いして洗濯機の脱水機で30分間脱水する。脱水後、平干しする。
(ドライクリーニング処理)
JIS L 1018の付属書3により行う。
(7)風合い
試験者3名の官能検査により、風合いを「ソフト」「普通」「硬い」の3段階に評価した。
【0039】
[実施例1]
固有粘度が0.64(35℃のo−クロロフェノール中で測定、以下同じ)のポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を用いて、特開平10−292222号公報の実施例1に記載された方法により中空率50%、単糸繊度1.0dtex、繊維長51mm、捲縮数12〜13個/2.54cmの中空ポリエステル短繊維を得た。
また、セルロース系短繊維として、公定水分率14%、単糸繊度6.6dtex、繊維長51mm、捲縮数10〜12個/2.54cmの、レンチング社製「リヨセル」(商品名)を準備した。
また、固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートを用いて、通常の方法により中空率30%、単糸繊度6.6dtex、繊維長51mm、捲縮数20〜21個/2.54cmの低中空ポリエステル短繊維を得た。
【0040】
また、熱接着性成分の共重合ポリエステルとしてテレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとテトラメチレングリコールとを50/50(モル%)で混合したジオール成分とから共重合ポリエステルを得た。該共重合ポリエステルの融点は155℃であった。この共重合ポリエチレンテレフタレートを熱接着性成分として鞘部に配し、ガラス転位点67℃、融点256℃のポリエチレンテレフタレートを減圧乾燥後、芯部とし、芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給し、体積比50/50の複合比率で、紡糸温度290℃、吐出量650g/分で、紡糸口金から溶融紡出した後、油剤を付与し、900m/分で引き取って未延伸芯鞘型複合繊維を得た。
この未延伸繊維を集束し、11万dtex(10万デニール)のトウにして、まず72℃の温水中で2.5倍に延伸した後、80℃の温水中で更に1.15倍に延伸し油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2dtexの熱接着性複合短繊維を得た。このときの捲縮数は10個/2.54cm、であった。
【0041】
次いで、前記中空ポリエステル短繊維を25重量%、前記のセルロース系短繊維を30重量%、前記の低中空ポリエステル短繊維を35重量%、前記の熱接着性複合短繊維を10重量%の割合で混綿、開繊し常法のカードによりウエッブ化し、該ウエッブを積層することにより積層ウエッブを得た。
次いで、該積層ウエッブにアクリル系樹脂(中央理科工業株式会社製の型式FK‐66)をウエッブ重量に対して7重量%となるよう含浸させた後、該積層ウエッブを乾燥機で乾燥(150℃、5分)することにより、繊維の接触点を熱接着させ目付け90g/mの中綿を得た。
得られた中綿において、保温性71.2%、吸湿率3.5%、風合い「ソフト」、嵩性の洗濯耐久性は手洗い処理、ドライクリーニング処理ともに合格と、ソフトな風合い、軽量保温性、および吸放湿性に優れ、しかも嵩性の耐久性に優れていた。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、アクリル系樹脂を含浸させないこと以外は実施例1と同様にして、目付け90g/mの中綿を得た。
得られた中綿において、保温性69.8%、吸湿率4.6%、風合い「ソフト」、嵩性の洗濯耐久性は手洗い処理、ドライクリーニング処理ともに合格と、ソフトな風合い、軽量保温性、および吸放湿性に優れ、しかも嵩性の耐久性に優れていた。
【0043】
[実施例3]
実施例1において、熱接着性複合短繊維を使用せず、中空ポリエステル短繊維を25重量%、前記のセルロース系短繊維を30重量%、前記の低中空ポリエステル短繊維を45重量%の割合で混綿すること以外は実施例1と同様にして、目付け90g/mの中綿を得た。
得られた中綿において、保温性75.4%、吸湿率3.2%、風合い「ソフト」、嵩性の洗濯耐久性は実施例2よりもやや劣るが手洗い処理、ドライクリーニング処理ともに合格と、ソフトな風合い、軽量保温性、および吸放湿性に優れ、しかも嵩性の耐久性に優れていた。
【0044】
[比較例1]
実施例1において、低中空ポリエステル短繊維を30重量%と、固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートを用いて、通常の方法により得られた、単糸繊度6.6dtex、繊維長51mm、捲縮数20〜21個/2.54cmの中実ポリエステル短繊維70重量%との割合で混綿すること以外は実施例1と同様にして、目付け90g/mの中綿を得た。
得られた中綿において、保温性64.5%、吸湿率0.8%、風合い「普通」、嵩性の洗濯耐久性は手洗い処理、ドライクリーニング処理ともに合格と、保温性と吸放湿性に劣っていた。
【0045】
[比較例2]
実施例1において、セルロース系短繊維を50重量%と、固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートを用いて、通常の方法により得られた、単糸繊度6.6dtex、繊維長51mm、捲縮数20〜21個/2.54cmの中実ポリエステル短繊維50重量%との割合で混綿すること以外は実施例1と同様にして、目付け90g/mの中綿を得た。
得られた中綿において、保温性60.1%、吸湿率5.2%、風合い「普通」、嵩性の洗濯耐久性は手洗い処理、ドライクリーニング処理ともに、収縮によりしわが発生し不合格と、保温性と嵩性の洗濯耐久性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、ソフトな風合い、軽量保温性、および吸放湿性に優れた中綿および該中綿を含む繊維製品が得られ、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が0.1〜1.5dtexかつ繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維と、セルロース系短繊維とを含んでなることを特徴とする中綿。
【請求項2】
前記の中空ポリエステル短繊維に捲縮が付与されている、請求項1に記載の中綿。
【請求項3】
前記のセルロース系短繊維が公定水分率12〜15%のセルロース系短繊維である、請求項1または2に記載の中綿。
【請求項4】
前記のセルロース系短繊維において、単糸繊度が1.0〜8.0dtexである、請求項1〜3のいずれかに記載の中綿。
【請求項5】
前記のセルロース系短繊維に捲縮が付与されている、請求項1〜4のいずれかに記載の中綿。
【請求項6】
前記の中空ポリエステル短繊維とセルロース系短繊維との重量比が前者:後者で20:80〜80:20の範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の中綿。
【請求項7】
他の繊維として、単糸繊度が3.0〜15.0dtex、繊維横断面中空率が25〜35%の低中空ポリエステル短繊維が、中綿全重量に対して5〜30重量%の範囲内で含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載の中綿。
【請求項8】
他の繊維として、前記の繊維横断面中空率が40〜80%の中空ポリエステル短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維が中綿全重量に対して5〜20重量%の範囲内で含まれており、かつ該熱接着性複合短繊維が加熱溶融処理されて該熱接着性複合短繊維同士の接触点および/または該熱接着性複合短繊維と前記中空ポリエステル短繊維もしくセルロース系短繊維との接触点の一部が熱接着している、請求項1〜7のいずれかに記載の中綿。
【請求項9】
アクリル系樹脂により、繊維同士の接触点の一部が熱接着している、請求項1〜8のいずれかに記載の中綿。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の中綿を含む、衣料、ぬいぐるみ、布団、およびクッション構造体からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。

【公開番号】特開2007−125153(P2007−125153A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319410(P2005−319410)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】