説明

乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置

【課題】軸受及び踏段追従ローラの脱落を防止できる乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を得る。
【解決手段】踏段追従ローラ軸と、踏段追従ローラ軸に固定された内側固定ナットと、踏段追従ローラ軸の外側端部の外周部に軸受を介して取り付けられ、軸受が収容される内側小径空間及び踏段追従ローラ軸の外側端部を収容する外側大径空間とからなるT字状空間が形成された踏段追従ローラと、踏段追従ローラ軸に固定された外側固定ナットと、踏段追従ローラ軸に外方から挿入固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の外側面のインナー部位を押さえる軸受インナー押さえ板と、踏段追従ローラ軸に軸受インナー押さえ板に続いて外方から挿入固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の破損時に軸受の外側面のアウター部位を押さえる軸受アウター押さえ板とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの踏段追従ローラ装置の一般的な構成を図3に示す。図3において、11は踏段ブラケット、12は踏段ブラケット11を貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸、13はこの踏段追従ローラ軸12の外側寄り端部の外周部に軸受14を介して回転自在に取り付けられた踏段追従ローラ、15は踏段追従ローラ軸12の内側端ねじ部に座金16を介して固定された内側固定ナット、17は踏段追従ローラ軸12の外側端ねじ部に固定された外側固定ナットである。
上記のように構成された従来の乗客コンベアの踏段追従ローラ装置においては、軸受14が破損等により壊れると、踏段追従ローラ13が踏段ブラケット11より脱落し、乗客コンベアの乗降口においてコムプレートとの間隙が大きくなるという不具合が発生することが考えられる。
【0003】
また、従来技術として、循環移動される踏段に設けられた踏段軸、踏段軸に設けられ、踏段軸を中心に回転可能な踏段ローラ、及び踏段ローラと一体に回転可能な脱落防止体を備え、踏段軸の外周面には、脱落防止体が挿入された変位規制溝が脱落防止体の回転方向に沿って設けられた乗客コンベアの踏段ローラ装置が提案されており、踏段の後端部には、駆動ローラ用踏段軸と平行な一対の追従ローラ用踏段軸が固定され、各追従ローラ用踏段軸の外側端部には、追従ローラ用レールに載せられた追従ローラが設けられ、追従ローラは軸受を介して追従ローラ用踏段軸に取り付けられ、追従ローラのボス部の内側側面には、追従ローラと一体に回転される脱落防止体がボルトにより取り付けられ、追従ローラ用踏段軸の外周面には、脱落防止体の一部が挿入された変位規制溝が脱落防止体の回転方向に沿って設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−1468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すような従来の乗客コンベアの踏段追従ローラ装置では、軸受14が破損等により壊れると、踏段追従ローラ13が踏段ブラケット11より脱落し、乗客コンベアの乗降口においてコムプレートとの間隙が大きくなるという不具合が発生することが考えられる。
【0006】
また、特許文献1に記載された乗客コンベアの踏段ローラ装置では、踏段の後端部には、駆動ローラ用踏段軸と平行な一対の追従ローラ用踏段軸が固定され、各追従ローラ用踏段軸の外側端部には、追従ローラ用レールに載せられた追従ローラが設けられ、追従ローラは軸受を介して追従ローラ用踏段軸に取り付けられ、追従ローラのボス部の内側側面には、追従ローラと一体に回転される脱落防止体がボルトにより取り付けられ、追従ローラ用踏段軸の外周面には、脱落防止体の一部が挿入された変位規制溝が脱落防止体の回転方向に沿って設けられているので、軸受が破損等により壊れた場合や、追従ローラが剥離して外れた場合、追従ローラが踏段ブラケットから脱落するのを追従ローラのボス部の内側側面に取り付けられた脱落防止体で防止できるが、軸受が破損等により壊れた場合は追従ローラ用踏段軸の外側端部から脱落し、脱落防止体には乗客の荷重が掛かり過ぎるという問題が発生することが考えられる。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、軸受が破損したり、踏段追従ローラが剥離した場合でも、軸受及び踏段追従ローラを踏段追従ローラ軸の外側端部から押さえ板により支持することにより、軸受及び踏段追従ローラの脱落を防止できるようにした乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置においては、踏段ブラケットと、踏段ブラケットを貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸と、踏段追従ローラ軸の内側端ねじ部に固定された内側固定ナットと、踏段追従ローラ軸の外側寄り端部の外周部に軸受を介して回転自在に取り付けられ、内部に軸受が収容される内側小径空間及びこれと連通し踏段追従ローラ軸の外側端部を収容する外側大径空間とからなるT字状空間が形成された踏段追従ローラと、踏段追従ローラ軸の外側端ねじ部に固定された外側固定ナットと、踏段追従ローラ軸の外側端部に外方から挿入されて外側固定ナットにより固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の外側面のインナー部位を押さえる軸受インナー押さえ板と、踏段追従ローラ軸の外側端部に軸受インナー押さえ板に続いて外方から挿入されて外側固定ナットにより固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の破損時に軸受の外側面のアウター部位を押さえる軸受アウター押さえ板とを備えたものである。
【0009】
また、踏段ブラケットと、踏段ブラケットを貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸と、踏段追従ローラ軸の内側端ねじ部に固定された内側固定ナットと、踏段追従ローラ軸の外側寄り端部の外周部に軸受を介して回転自在に取り付けられ、内部に軸受が収容される内側小径空間及びこれと連通し踏段追従ローラ軸の外側端部を収容する外側大径空間とからなるT字状空間が形成された踏段追従ローラと、踏段追従ローラ軸の外側端ねじ部に固定された外側固定ナットと、踏段追従ローラ軸の外側端部に外方から挿入されて外側固定ナットにより固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の外側面のインナー部位を押さえる軸受インナー押さえ板と、踏段追従ローラ軸の外側端部に軸受インナー押さえ板に続いて外方から挿入されて外側固定ナットにより固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、軸受の破損時に軸受の外側面のアウター部位を押さえる軸受アウター押さえ板と、踏段追従ローラ軸の外側端部に軸受アウター押さえ板に続いて外方から挿入されて外側固定ナットにより固定され、踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、踏段追従ローラが剥離した場合に踏段追従ローラの外側大径空間の奥側の垂直段部を押さえる追従ローラ剥離押さえ板とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、通常は小径の軸受インナー押さえ板が軸受の外れ止めとして機能し、軸受破損時には軸受インナー押さえ板よりも大き目の中径の軸受アウター押さえ板が軸受破損時の外れ防止として機能する。また、更に踏段追従ローラが剥離した場合には、軸受アウター押さえ板よりも大き目の大径の追従ローラ剥離押さえ板が踏段追従ローラの脱落防止として機能する。これにより、軸受及び踏段追従ローラが脱落することがないので、乗客コンベアの乗降口においてコムプレートとの間隙が変わらないため、乗客コンベアを安全に運行することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施例1における乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を示す要部断面図である。
【図2】この発明の実施例1における乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を分離して示す要部断面図である。
【図3】従来の乗客コンベアの踏段追従ローラ装置の構成を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1は乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を示す要部断面図、図2は乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置を分離して示す要部断面図である。
【0013】
図1及び図2において、1は踏段ブラケット、2は踏段ブラケット1を貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸、2aは踏段追従ローラ軸2の踏段ブラケット1の外側面側に位置する部位に形成された軸受押さえ用拡径部、3は踏段追従ローラ軸2の外側寄り端部の外周部に軸受4を介して回転自在に取り付けられた踏段追従ローラである。この踏段追従ローラ3の内部には、軸受4が収容される内側小径空間3aと、これと連通し踏段追従ローラ軸2の外側端部を収容する外側大径空間3bとからなるT字形空間が形成されている。5は踏段追従ローラ軸2の内側端ねじ部に座金6を介して固定された内側固定ナットで、踏段ブラケット1の内側面側に位置する。7は踏段追従ローラ軸2の外側端ねじ部に固定された外側固定ナット、8は踏段追従ローラ軸2の外側端部に外方から挿入され外側固定ナット7により固定された小径の軸受インナー押さえ板で、踏段追従ローラ3の外側の大径空間3bに収容され、軸受4の外側面のインナー部位を押さえることにより脱落を防止している。9は踏段追従ローラ軸2の外側端部に軸受インナー押さえ板8に続いて外方から挿入され外側固定ナット7により固定された軸受インナー押さえ板8よりも大き目の中径の軸受アウター押さえ板で、踏段追従ローラ3の外側の大径空間3bに収容され、軸受4の破損時に軸受4の外側面のアウター部位を押さえることにより軸受破損時の脱落を防止している。10は踏段追従ローラ軸2の外側端部に軸受アウター押さえ板9に続いて外方から挿入され外側固定ナット7により固定された軸受アウター押さえ板9よりも大き目の大径の追従ローラ剥離押さえ板で、踏段追従ローラ3の外側の大径空間3bに収容され、踏段追従ローラ3が剥離した場合に踏段追従ローラ3の外側大径空間3bの奥側の垂直段部を押さえることにより踏段追従ローラ3が剥離して脱落するのを防止している。
【0014】
この発明によれば、外側固定ナット7を踏段追従ローラ軸2の外側端ねじ部に固定することにより、小径の軸受インナー押さえ板8、それよりも大き目の中径の軸受アウター押さえ板9、及びそれよりも大き目の大径の追従ローラ剥離押さえ板10を間に挟み込んで固定しているので、通常は小径の軸受インナー押さえ板8が軸受4の外れ止めとして機能し、軸受破損時には軸受インナー押さえ板8よりも大き目の中径の軸受アウター押さえ板9が軸受破損時の外れ防止として機能し、更に踏段追従ローラ3が剥離した場合には、軸受アウター押さえ板9よりも大き目の大径の追従ローラ剥離押さえ板10が踏段追従ローラ3の脱落防止として機能する。これにより、軸受4及び踏段追従ローラ3が脱落することがないので、乗客コンベアの乗降口においてコムプレートとの間隙が変わらないため、乗客コンベアを安全に運行することができる。
また、踏段追従ローラの脱落を検出して乗客コンベアを停止させる、例えばカーブドレールスイッチや、ステップローラスイッチ等の安全装置を不要にすることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 踏段ブラケット
2 踏段追従ローラ軸
2a 軸受押さえ用拡径部
3 踏段追従ローラ
3a 内側小径空間
3b 外側大径空間
4 軸受
5 内側固定ナット
6 座金
7 外側固定ナット
8 小径の軸受インナー押さえ板
9 中径の軸受アウター押さえ板
10 大径の追従ローラ剥離押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段ブラケットと、
前記踏段ブラケットを貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸と、
前記踏段追従ローラ軸の内側端ねじ部に固定された内側固定ナットと、
前記踏段追従ローラ軸の外側寄り端部の外周部に軸受を介して回転自在に取り付けられ、内部に前記軸受が収容される内側小径空間及びこれと連通し前記踏段追従ローラ軸の外側端部を収容する外側大径空間とからなるT字状空間が形成された踏段追従ローラと、
前記踏段追従ローラ軸の外側端ねじ部に固定された外側固定ナットと、
前記踏段追従ローラ軸の外側端部に外方から挿入されて前記外側固定ナットにより固定され、前記踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、前記軸受の外側面のインナー部位を押さえる軸受インナー押さえ板と、
前記踏段追従ローラ軸の外側端部に前記軸受インナー押さえ板に続いて外方から挿入されて前記外側固定ナットにより固定され、前記踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、前記軸受の破損時に軸受の外側面のアウター部位を押さえる軸受アウター押さえ板と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置。
【請求項2】
踏段ブラケットと、
前記踏段ブラケットを貫通して取り付けられた踏段追従ローラ軸と、
前記踏段追従ローラ軸の内側端ねじ部に固定された内側固定ナットと、
前記踏段追従ローラ軸の外側寄り端部の外周部に軸受を介して回転自在に取り付けられ、内部に前記軸受が収容される内側小径空間及びこれと連通し前記踏段追従ローラ軸の外側端部を収容する外側大径空間とからなるT字状空間が形成された踏段追従ローラと、
前記踏段追従ローラ軸の外側端ねじ部に固定された外側固定ナットと、
前記踏段追従ローラ軸の外側端部に外方から挿入されて前記外側固定ナットにより固定され、前記踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、前記軸受の外側面のインナー部位を押さえる軸受インナー押さえ板と、
前記踏段追従ローラ軸の外側端部に前記軸受インナー押さえ板に続いて外方から挿入されて前記外側固定ナットにより固定され、前記踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、前記軸受の破損時に軸受の外側面のアウター部位を押さえる軸受アウター押さえ板と、
前記踏段追従ローラ軸の外側端部に前記軸受アウター押さえ板に続いて外方から挿入されて前記外側固定ナットにより固定され、前記踏段追従ローラの外側大径空間に収容され、前記踏段追従ローラが剥離した場合に踏段追従ローラの外側大径空間の奥側の垂直段部を押さえる追従ローラ剥離押さえ板と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの踏段追従ローラ脱落防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−192991(P2012−192991A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56194(P2011−56194)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】