説明

乳化型ベースメイク化粧料及びその製造方法

【課題】良好な粘度安定性を有し、光源に依存しない自然な肌色の仕上がりが得られると共に、使用感に優れ、色材成分の溶出に起因する肌への染着の発生が抑制された乳化型ベースメイク化粧料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する乳化型ベースメイク化粧料及びその製造方法。
(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料
(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料
(c)油剤
(d)水溶性カルシウム塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化型ベースメイク化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション等のベースメイク化粧料には、血行不良や色素の沈着により加齢とともに感じられる肌色のくすみ(明度が低下し黄色の彩度が上昇した状態)をカバーすること、仕上がりの色調が自然であることなどに対する要求があり、種々のベースメイク化粧料やその製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、くすみがなく、自然で健康的な肌色を得ることに着目した技術として、分光反射スペクトルにおいて、500〜620nmの波長領域にスペクトル的な窪みを有するファンデーションが開示されている。
また、化粧料等に用いる色材についても、種々の性能を併有するものが提案されており、例えば、特許文献2には、発色性の向上や皮膚に対する染着性の抑制に着目したものとして、有機色素を無機物に固着させた有機複合顔料を配合する技術が開示されている。
一方、安定性に優れた乳化型ベースメイク化粧料として、より多くの界面活性剤や特殊な界面活性剤を配合する必要ある。例えば、特許文献3には、両親媒性高分子を配合した技術が開示されている。しかしながら、ベースメイク化粧料に配合される界面活性剤の増量は、べたつきなどの使用感の問題を来す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3514915号公報
【特許文献2】特開2003−105225号公報
【特許文献3】特開2010−111634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のベースメイク化粧料では、皮膚に付与した際において、光源の種類によって、肌色の色味が黄色く変化して見えてしまい(以下、「黄ぐすみ」とも称する。)、光源に依存することなく自然な肌色の仕上がりが得られないという問題がある。
また、乳化型ベースメイク化粧料においては、化粧料基剤に含まれる色材である顔料が、溶剤中に溶出(ブリードアウト)することに起因して、色ムラが生じて化粧料の外観が損なわれたり、化粧料を皮膚に付与した際に染着が生じたりするという問題もある。
更に、乳化型ベースメイク化粧料の安定性を向上させるために、界面活性剤を増量するとべたつきが発生する場合がある。また、新規な添加剤の使用は安全性上の懸念がある。
また、乳化型ベースメイク化粧料においては、皮膚への付与し易さを維持するなどの観点から、所望の粘度が長期間安定に保持されることも必要である。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みなされたものであり、良好な粘度安定性を有し、光源に依存しない自然な肌色の仕上がりが得られると共に、使用感に優れ、色材成分の溶出に起因する肌への染着の発生が抑制された乳化型ベースメイク化粧料、及び、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1] 下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する乳化型ベースメイク化
粧料。
(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料
(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料
(c)油剤
(d)水溶性カルシウム塩
[2] 前記成分(a)が、リソールルビンBCAが無機物中にインターカレーションされる赤色複合顔料を含む粉末顔料である[1]に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
[3] 前記成分(d)が、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及び酢酸カルシウムから選択される少なくとも1種である[1]又は[2]に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
[4] 前記成分(d)の含有量が、化粧料の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の乳化型ベースメイク化粧料。

[5] 外観色の反射スペクトルが、500nmから600nmの間の波長領域に極小値を有する[1]〜[4]のいずれか1つに記載の乳化型ベースメイク化粧料。
[6] 前記パール顔料を、前記成分(b)の全質量に対して5質量%以上30質量%以下含む[1]〜[5]のいずれか1つに記載の乳化型ベースメイク化粧料。
[7] (a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料、(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料、及び(c)油剤を含む油相を調製すること、
前記油相と、(d)水溶性カルシウム塩を含む水相と、を混合して乳化物を得ることを含む乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
[8] 前記成分(a)である粉末顔料が、リソールルビンBCAが無機物中にインターカレーションされる赤色複合顔料を含む粉末顔料である[7]に記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
[9] 前記成分(d)が、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及び酢酸カルシウムから選択される少なくとも1種である[7]又は[8]に記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
[10] 前記成分(d)の含有量が、化粧料の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である[7]〜[9]のいずれか1つに記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な粘度安定性を有し、光源に依存しない自然な肌色の仕上がりが得られると共に、使用感に優れ、色材成分の溶出に起因する肌への染着の発生が抑制された乳化型ベースメイク化粧料、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例3及び比較例2にて得られたリキッドファンデーションについて測定した外観色の反射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のベースメイク化粧料及びその製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
(1)乳化型ベースメイク化粧料
本発明の乳化型ベースメイク化粧料(以下、適宜、「化粧料」と称する。)は、下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する。
(a)リソールルビンBCAを含む赤色粉末顔料
(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記(a)成分とは異なる粉末顔料
(c)油剤
(d)水溶性カルシウム塩
【0012】
本発明の化粧料は、良好な粘度安定性を有し、光源に依存しない自然な肌色の仕上がり(黄ぐすみの改良)が得られると共に、使用感に優れ、色材成分の溶出に起因する化粧料表面の色ムラや肌への染着の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の化粧料は、油相と水相とを混合し、乳化して得られた乳化物を含む。以下、本発明の化粧料に含有される必須及び任意の成分について説明する。
【0014】
<成分(a)>
本発明の化粧料は、成分(a)として、リソールルビンBCAを含む粉末顔料を含有する。
成分(a)は、本発明の化粧料において、色材成分として機能しうる成分であり、光源に依存しない自然な肌色の仕上がり(黄ぐすみの改良)に効果的に寄与しうる。
【0015】
本発明の化粧料に成分(a)として含有される粉末顔料は、リソールルビンBCA自体であってもよいし、リソールルビンBCAを構成要素として含む複合顔料であってもよい。
【0016】
リソールルビンBCAは赤色202号として知られるモノアゾ系赤色顔料である。
【0017】
成分(a)として好適な態様の一つは、リソールルビンBCAが無機物中にインターカレーションされた構造を有する赤色複合顔料(以下、適宜、「特定赤色複合顔料」と称する。)である。特定赤色複合顔料を含むことにより、より良好な色材成分の溶出抑制効果が得られる。
【0018】
ここで、インターカレーションとは、層状構造を有する物質の層間に分子、原子又はイオンが挿入される現象をいう。
【0019】
本発明における特定赤色複合顔料は、より詳細には、リソールルビンBCAを、板状層状無機粉体及び二種以上の種類の無機水酸化物に複合化させることにより固着させてなるものである。
【0020】
特定赤色複合顔料は、リソールルビンBCAを、一度水に完全に溶解させ、二種類の無機塩の存在化でpHを調整しながら二種類の無機水酸化物を析出させ、板状層状無機粉体を添加して、有機色素と二種類の無機水酸化物および板状層状無機粉体とを複合化させ化学的に固着させることにより得ることができる。詳細には、特開2003−105225公報に記載される製造方法に準じて製造することができる。
【0021】
特定赤色複合顔料中の純色素成分は、発色性及び色素成分の溶剤中への抑制の観点から、好ましくは5質量%以上50質量%未満であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0022】
前記無機塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の金属塩化物などが挙げられる。前記無機水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記板状層状無機粉体としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、膨潤性フッ素系雲母類等が挙げられる。
特定赤色複合顔料としては、市販品を用いることもでき。例えば、HNB RED7(リソールルビンBCAを含む複合顔料、大東化成工業(製)、商品名)、HNB RED6(リソールルビンBCAを含む複合顔料、大東化成工業(製)、商品名)等が挙げられる。
【0023】
成分(a)として含有される粉末顔料の粒径としては、平均一次粒径が1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上8μm以下である。
【0024】
本発明の化粧料における成分(a)である粉末顔料の含有量は、目的の色に化粧料を調色するために必要な赤色顔料の全質量に対して10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
特定赤色複合顔料の含有量は、その種類による発色効率の違いを考慮して、上記の範囲内において調整される。
【0025】
本発明の化粧料において、成分(a)として含有される粉末顔料の総含有量は、化粧料の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以上4質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以上3質量%以下である。
【0026】
本発明の化粧料に含有される成分(a)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。例えば、成分(a)として、リソールルビンBCA自体を単独で含有してもよいし、リソールルビンBCA自体とリソールルビンBCAを構成要素として含む複合顔料(特定赤色複合顔料)とを併用してもよいし、特定赤色複合顔料のみを含有してもよい。
【0027】
<成分(b)>
本発明の化粧料は、成分(b)として、体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含む粉末顔料を含有する。成分(b)として含有される粉末顔料は、成分(a)とは異なる粉末顔料である。

【0028】
本発明の化粧料において、成分(b)として含有される粉末顔料の総含有量は、化粧料の全質量に対して、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下である
【0029】
≪体質顔料≫
体質顔料とは、色相の調整に実質的に寄与しない顔料を意味する。
体質顔料の例としては、雲母、合成金雲母、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水珪酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、等が挙げられる。
【0030】
体質顔料としては、市販品を用いることもでき、例えば、SERICITE FSE(三信鉱工(株)製、商品名)、TALK JA−46R(浅田製粉(株)製、商品名)、合成金雲母PDMシリーズ(トピー工業(株)製、商品名)、OTS−2 SERICITE FSE、OTS−2
TALK JA−46R(以上、大東化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0031】
体質顔料の粒径としては、平均一次粒径が1μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上80μm以下である。
【0032】
なお、本発明における顔料の粒径は、測定対象となる顔料を含む所定の濃度の溶媒分散物を調製して、市販のレーザー光散乱の原理に基づく種々の測定機器(例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定器LMS−30((株)セイシン企業製)等、商品名)により測定することができる。
【0033】
体質顔料の含有量としては、化粧料の全質量に対し、5質量%以上40質量%以下が好ましい。
【0034】
本発明の化粧料に含有される体質顔料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0035】
≪色材顔料≫
成分(a)以外の色材成分として、更に、色材顔料を含有することが好ましい。色材顔料とは、色相の調整に寄与し、且つパール顔料以外の顔料を意味する。
【0036】
色材顔料の例としては、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄などの酸化鉄、白色顔料、等が挙げられる。
【0037】
これら色材顔料の中でも、色調調製と溶剤中への溶出(ブリードアウト)抑制の観点からは、酸化鉄が好ましく、赤色酸化鉄がより好ましい。
【0038】
また、白色顔料として酸化チタン、酸化亜鉛等を含有する場合、該白色顔料は、シミやソバカス等の隠蔽剤、紫外線防止剤としての機能を兼ねてもよい。
【0039】
これらの色材顔料の形状や粒径は、例えば、白色顔料では球形で数nm以上数百nm以下、酸化鉄では球状や針状で数nm以上数百nm以下のものが好ましく用いられる。
【0040】
色材顔料としては、市販品を用いることもでき、例えば、OTS−2 TiO2 CR−50、OTS−2 YELLOW LLXLO、OTS−2 RED R−516L、OTS−2 BLACK BL−100(以上、大東化成工業(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0041】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてリソールルビンBCA以外の顔料が無機物中にインターカレーションされた複合顔料を色材顔料として用いてもよい。
【0042】
これらの色材顔料の添加量は、化粧料全体の色調が目的のものとなるよう、適宜調整される。
本発明の化粧料が含有する色材顔料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0043】
≪パール顔料≫
パール顔料とは、色相の調整に寄与し、且つ真珠光沢を有する顔料を意味する。
パール顔料の例としては、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆タルク等が挙げられる。また、酸化チタンの被覆層が複数層であったり、酸化シリコン被覆と積層されたもの等も好ましく用いることができる。
【0044】
パール顔料の粒径としては、平均一次粒径が0.5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上80μm以下である。
【0045】
パール顔料の含有量としては、化粧料の全質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
また、光学特性の観点から、成分(b)として含有される粉末顔料の全質量に対するパール顔料の含有量は、より好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0047】
本発明の化粧料に含有される含有するパール顔料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。パール顔料は、化粧料に含有されるパール顔料全体が示す反射色の色相角が40°〜80°の範囲になる比率で配合することが好ましい。
【0048】
パール顔料としては、市販品を用いることもでき、例えば、ロナフレアバランス ゴールド、トランスプリズマーレッド、ティミロン スーパーシルク MP−1005(以上、MERCK社製)、フラメンコシリーズ(BASF社製)等が挙げられる。
パール顔料としては、金色パール顔料及び赤色パール顔料が好ましく、これらパール顔料は混合物であることも好ましい。
【0049】
本発明の化粧料において、成分(b)として含有される粉末顔料の好ましい組み合わせの例としては、例えば、体質顔料が、雲母、セリサイト、及びタルクから選択された少なくとも1種の顔料であり、色材顔料が、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及び酸化チタンから選択された少なくとも1種の顔料であり、パール顔料が、金色パール顔料及び赤色パール顔料から選択された少なくとも1種の顔料である組み合わせが挙げられる。
【0050】
<成分(c)>
本発明の化粧料は、成分(c)として、油剤を含有する。
油剤としては、例えば、シリコーン油、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン、ミツロウ、カルナウバロウ、オリーブ油、ラノリン、高級アルコール、脂肪酸、高級脂肪酸、エステル油、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラロウ、ジグリセライド、トリグリセライド、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、ホホバ油、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等の化粧料に汎用される油分が挙げられる。
【0051】
本発明の化粧料において、成分(c)として含有される油剤の含有量は、化粧料の全質量に対して、好ましくは5質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
【0052】
本発明の化粧料に、成分(c)として含有される油剤は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0053】
<成分(d)>
本発明の化粧料は、成分(d)として、水溶性カルシウム塩を含有する。
水溶性カルシウム塩は、本発明の化粧料において水相に含有される水などの水系媒体に溶解された状態にて、本発明の化粧料中に含有される。
【0054】
ここで、水溶性カルシウム塩とは、25℃の蒸留水に、3質量%以上溶解するカルシウム塩を意味する。
【0055】
成分(d)である水溶性カルシウム塩は、本発明の化粧料において、良好な粘度安定性の発揮に寄与しつつも、使用感を低下させず、色材成分の溶出を抑制しうる成分である。
即ち、乳化型ベースメイク化粧料においては、所望の粘度が長期間安定に保持されることについて要求されるところ、従来の化粧料では粘度低下が生じてしまうことがあった。かかる観点から、化粧料における粘度安定性のみを図るのであれば、増粘剤として機能する化合物の添加であってもよい。しかしながら、増粘剤の添加は、べたつきが生じるなど化粧料の使用感を低下させる場合があり、また、増粘剤の添加では色材成分の溶出は抑制しえない。
これに対し、本発明の化粧料では、成分(d)である水溶性カルシウム塩を特徴成分の一つとして含有させたことで、良好な粘度安定性が得られると共に、使用感が低下せず、色材成分の溶出も抑制されるという優れた効果が特異的に得られる。一方、水溶性カルシウム塩以外の水溶性無機塩では、かかる効果は得られない。
【0056】
水溶性カルシウム塩の例としては、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及び酢酸カルシウムが挙げられる。これらの水溶性カルシウム塩の中でも、調整のし易さ、使用性の観点からは、塩化カルシウムがより好ましい。
【0057】
本発明の化粧料において、成分(d)として含有される水溶性カルシウム塩の含有量は、化粧料の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。
【0058】
成分(d)として含有される水溶性カルシウム塩の含有量は、化粧料に含有される全顔料成分の総質量(成分(a)及び(b)の総質量)に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0059】
本発明の化粧料に、成分(d)として含有される水溶性カルシウム塩は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0060】
<その他の添加剤>
本発明の化粧料には、更に、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合される成分、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、保湿剤、防腐剤、薬剤、紫外線吸収剤、色素、無機塩又は有機酸塩、香料、キレート剤、pH調整剤、水等を配合することができる。
【0061】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸石鹸で代表されるアニオン性界面活性剤;及びカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の化粧料に汎用される界面活性剤が挙げられる。
【0062】
水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒ
ドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、デキストリン、デキストリン脂肪酸エステル、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、水溶性コラーゲン等の化粧料に汎用される水溶性高分子が挙げられる。
【0063】
保湿剤としては、例えば、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の化粧料に汎用される保湿剤が挙げられる。
【0064】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール等の化粧料に汎用される防腐剤が挙げられる。
【0065】
薬剤としては、例えば、ビタミン類、生薬、消炎剤、抗酸化剤、殺菌剤、制菌剤等の化粧料に汎用される薬剤が用いられる。
【0066】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等の化粧料に汎用される紫外線吸収剤が挙げられる。
【0067】
色素としては、ヘマトコッカス藻色素、カルミン酸、ラッカイン酸、ブラジリン、クロシン等の天然色素等の化粧料に適用しうる色素が挙げられる。
【0068】
本発明の化粧料は、黄ぐすみ抑制の観点から、外観色の反射スペクトルが、500nmから600nmの間の波長領域に極小値を有するものであることが好ましい。
本明細書における反射スペクトルは、Spectrolino(製品名)(Gretag Machbeth社製)により測定された値である。
【0069】
本発明の化粧料は、以下に詳述する乳化型ベースメイク化粧料の製造方法(本発明の製造方法))により、好適に製造することができる。
【0070】
(2)乳化型ベースメイク化粧料の製造方法
本発明の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法は、(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料、(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料、及び(c)油剤を含む油相を調製すること、前記油相と、(d)水溶性カルシウム塩を含む水相と、を混合して乳化物を得ることを含む製造方法である
【0071】
本発明の製造方法に適用される(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料〔成分(a)〕、(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料〔成分(b)〕、(c)油剤〔成分(c)〕、及び(d)水溶性カルシウム塩〔成分(d)〕の各必須成分、並びに、所望により用いられるその他の添加剤は、既述の本発明の化粧料に含有される成分(a)〜(d)、その他の添加剤と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0072】
油相は、粉末顔料〔成分(a)及び(b)〕、油剤〔成分(c)〕、及び、油相成分として添加される任意の添加剤を混合することにより調製される。
水相は、水溶性カルシウム塩〔成分(d)〕、及び、水相成分として添加される任意の添加剤を、水などの水性媒体に溶解させることにより調製される。
【0073】
本発明の製造方法に適用される乳化方法は特に限定されるものではなく、従来の公知の乳化方法を適用することができる。本発明に適用される乳化方法としては、例えば、水相と油相をそれぞれ80℃程度に加温し、これらをゆっくりと混合し、乳化機で乳化して乳化物を得た後、常温まで放冷する等の方法が挙げられる。
【0074】
得られた乳化物における油相と水相との比率は、特に限定されるものではないが、油相(質量%)/水相(質量%)として、90/10〜30/70が好ましく、85/15〜40/60がより好ましく、80/20〜50/50更に好ましい。
【0075】
本発明の化粧料の適用形態としては、例えば、リキッドファンデーション、化粧下地、コンシーラー、コントロールカラー等が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0077】
[実施例1〜10、比較例1〜12]
(1)リキッドファンデーションの調製
下記表1及び表2に記載のA相、B相、及びC相の各成分を別個に秤量した。
ホモミキサーの容器中にB相を添加し、攪拌しながらA相を徐々に添加した後、容器を80℃まで加熱してB相中の成分が全て溶融するまで攪拌した。別途、C相を添加した容器も80℃まで加熱して全ての成分が溶解するまで攪拌した。続いてB相とA相の混合物、C相の水溶液共に50℃まで降温し、B相中に徐々にC相をホモミキサーにて攪拌しながら添加し、十分に乳化するまで攪拌して、実施例1〜10、及び比較例1〜12の各リキッドファンデーションを調製した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
(2)ファンデーションの評価
[黄ぐすみ改良]
実施例1〜10及び比較例1〜12にて得られたリキッドファンデーションを、パフを用いて同一人物である被験者の女性の顔に化粧した後、色温度5000Kの3波長蛍光灯下で、化粧後の肌色の色味を目視で観察した。その後、被験者の女性を、太陽光下(晴天の正午の直射日光、5000K)に移動させ、その際の肌色の色味変化を目視で観察し、
以下の評価基準にて評価した。本評価に優れることは、光源に依存することなく自然な肌色の仕上がりが得られることを示す。結果を表1及び表2に示す。
A:赤味に変化した(黄ぐすみにならない)
B:変化しないか若干黄味に変化した
C:黄色方向に変化した
【0081】
[溶出性(色ムラ)]
実施例1〜10及び比較例1〜12にて得られたリキッドファンデーションを、透明容器に充填し、不均一な赤味が無いかを目視確認し、以下の評価基準により評価した。結果を表1及び表2に示す。
−評価基準−
A:不均一な赤味がまったく認められなかった
B:不均一な赤味が若干認められたが軽微であった
C:顕著な赤味のムラが認められた
【0082】
[肌への染着性]
実施例1〜10及び比較例1〜12にて得られたリキッドファンデーションを用いて化粧後、6時間経過した後に、洗顔料を用いずに水洗にてファンデーションを落とした。その後に、目視にて肌への赤色顔料の染着の程度を観察し、以下の評価基準により評価した。結果を表1及び表2に示す。
−評価基準−
A:赤色の染着がまったく認められなかった
B:赤色の染着が僅かに認められた
C:赤色の染着が目視ですぐにわかる程度に認められた
【0083】
[粘度安定性(分散安定性)]
実施例1〜10及び比較例1〜12にて得られたリキッドファンデーションを50℃の恒温槽に4週間放置し、第1日目と4週間目の粘度を測定して、両者の粘度の変化幅(粘度の差)で下記基準により評価した。結果を表1及び表2に示す。
−評価基準−
S:粘度の差が3000mPa・s未満
A:粘度の差が3000mPa・s以上5000mPa・s未満
B:粘度の差が5000mPa・s以上10000mPa・s未満
C:粘度の差が10000mPa・s以上
【0084】
[使用感(べたつき、しっとり感)]
実施例1〜10及び比較例1〜12にて得られたリキッドファンデーションについて、肌にのせたときのべたつき、しっとり感を総合して3段階に評価した。結果を表1及び表2に示す。
−評価基準−
A:全ての感触において優れていた
B:総合して一般的なレベルの感触であった
C:いずれの感触についても劣っていた
【0085】
表1及び表2に示されるように、成分(a)〜(d)を含有する実施例1〜10のリキッドファンデーションは、黄ぐすみ改良、溶出性(色ムラ)、肌への染着性、粘度安定性(分散安定性)、使用感(べたつき、しっとり感)の全ての評価において優れていることが分かる。
【0086】
ここで、本発明において成分(c)として含有される水溶性カルシウム塩の効果についてより詳細に言及するために、実施例3と比較例4にて得られたリキッドファンデーションを例として用い、これらを比較し、説明する。
【0087】
表1によると、実施例3ではC相に塩化カルシウムを含んでおり、一方の比較例4ではその代わりにクエン酸ナトリウムを含んでいる以外、両者の成分は同一である。しかし、クエン酸ナトリウムを含む比較例4に比べて、実施例3は溶出性、肌への染着性で比較例4よりも勝っており、更に粘度安定性では比較例4に比べて非常に優れていることがわかる。
【0088】
実施例3及び比較例4で得られた各リキッドファンデーションの粘度測定値及び粘度差の詳細は、下記表3に示す通りである。
【0089】
【表3】

【0090】
表3に示すように、クエン酸ナトリウムを含む比較例4に比べて、塩化カルシウムを含む実施例3は粘度安定性が10倍優れていることがわかる。これは驚くべき結果である。
【0091】
以上の点から、成分(a)及び成分(b)と共に、成分(c)である塩化カルシウムを含むことで、実施例3に示される如く、色ムラがなく、良好な肌への染着性の抑制効果を有し、優れた粘度安定性を有するリキッドファンデーションを提供することができると判明した。
なお、上記では実施例3を例に行なった検討について詳述したが、実施例3以外の態様においても同様であることは言うまでもない。
【0092】
更に、実施例3及び比較例2にて得られたリキッドファンデーションについて、外観色の分光反射率を、分光光度計(製品名:Spectrolino、Gretag Machbeth社製)を用い定法により測定した。その結果を、図1に示す。
【0093】
図1に示されるように、実施例3のリキッドファンデーションは、外観色の反射スペクトルが、570nm近辺の波長領域に極小値を有することがわかる。一方、比較例2のリキッドファンデーションの外観色の反射スペクトルには、500nmから600nmの間の波長領域に極小値が無いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する乳化型ベースメイク化粧料。
(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料
(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料
(c)油剤
(d)水溶性カルシウム塩
【請求項2】
前記成分(a)が、リソールルビンBCAが、無機物中にインターカレーションされる赤色複合顔料を含む粉末顔料である請求項1に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
【請求項3】
前記成分(d)が、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及び酢酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
【請求項4】
前記成分(d)の含有量が、化粧料の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
【請求項5】
外観色の反射スペクトルが、500nmから600nmの間の波長領域に極小値を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
【請求項6】
前記パール顔料を、前記成分(b)の全質量に対して5質量%以上30質量%以下含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の乳化型ベースメイク化粧料。
【請求項7】
(a)リソールルビンBCAを含む粉末顔料、(b)体質顔料、色材顔料、及びパール顔料を含み、且つ前記成分(a)とは異なる粉末顔料、及び(c)油剤を含む油相を調製すること、
前記油相と、(d)水溶性カルシウム塩を含む水相と、を混合して乳化物を得ることを含む乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記成分(a)である粉末顔料が、リソールルビンBCAが、無機物中にインターカレーションされる赤色複合顔料を含む粉末顔料である請求項7に記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
【請求項9】
前記成分(d)が、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及び酢酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項7又は請求項8に記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記成分(d)の含有量が、化粧料の全質量に対し、0.1質量%以上5質量%以下である請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の乳化型ベースメイク化粧料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−18768(P2013−18768A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123428(P2012−123428)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】