説明

乳酸センサ

【課題】短時間で精度よく乳酸濃度を測定可能な乳酸センサの提供。
【解決手段】絶縁性基板、前記基板上に配置された作用極と対極とを少なくとも含む電極系、及び、前記電極系上に配置された試薬層を備え、前記試薬層が、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む、乳酸センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳酸オキシダーゼ及びメディエータを含む乳酸センサに関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸は、運動後に体内に生成される疲労物質であることが知られている。このため、乳酸センサは、トレーニング効果やトレーニング状態を把握するために、フィールドや現場において広く使用されており、また簡易に検出・計測できることが求められている。しかしながら、乳酸センサに用いられる乳酸オキシダーゼは、グルコースセンサに用いられるグルコースオキシダーゼと比較してユニットあたりの単価が高いことから、センサの単価が高くなるという問題があった。このため、この問題を解決するために、例えば、反応層に乳酸オキシダーゼの活性を向上させるためにリン酸塩を含む乳酸センサ(特許文献1)等が提案されている。
【0003】
また、乳酸センサなどのバイオセンサの製造方法としては、例えば、電極を有する基板上表面に、少なくともメディエータ、界面活性剤、緩衝剤及び層状無機化合物を含む無機ゲル層を形成する工程を含む方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3498105号公報
【特許文献2】特許第4088312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、乳酸は疲労度のマーカーとなるため、乳酸センサはスポーツ分野のトレーニング等において広く使用されている。一方、トレーニングの場合、疲労度を速やかに計測して疲労度を確認し、次の運動負荷を決定する必要がある。このため、短時間で精度よく計測可能な乳酸センサが求められている。しかしながら、従来の乳酸センサでは酵素反応速度が遅いため、測定に要する時間が長く、更なる測定時間の短縮が求められている。
【0006】
そこで、本開示は、一態様として、短時間で精度よく乳酸濃度を測定可能な乳酸センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様として、絶縁性基板、前記基板上に配置された作用極と対極とを少なくとも含む電極系、及び、前記電極系上に配置された試薬層を備え、前記試薬層が、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(以下、「ACES」ともいう)を含む、乳酸センサ(以下、「本開示の乳酸センサ」ともいう)に関する。
【0008】
本開示は、その他の態様として、乳酸オキシダーゼ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む試薬と、試料とを接触させること、及び前記試料中の乳酸と前記乳酸オキシダーゼとの反応を、メディエータを介して電気化学的に測定することを含む、乳酸濃度の測定方法(以下、「本開示の乳酸濃度測定方法」ともいう)に関する。
【0009】
本開示は、さらにその他の態様として、作用極と対極とを少なくとも含む電極系が配置された絶縁性基板の前記電極系上に、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む試薬層を形成することを含む、乳酸センサの製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一態様として、短時間で精度よく乳酸濃度を測定可能な乳酸センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、乳酸センサの製造方法の一例を説明する模式図である。
【図2】図2は、乳酸センサの構成の一例を説明する模式図であって、図1Fに示す乳酸センサのI-I断面図である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1〜6の乳酸センサで試料を測定した時に検出された電流値を示すグラフの一例である。
【図4】図4は、実施例1及び2の乳酸センサで試料を測定したときに検出された電流値と試料の乳酸濃度との関係を示すグラフの一例である。
【図5】図5は、実施例2及び比較例7の乳酸センサで試料を測定したときに検出された電流値と試料の乳酸濃度との関係を示すグラフの一例である。
【図6】図6は、実施例4で作製した乳酸センサで試料を測定したときに検出された電流値と試料の乳酸濃度との関係を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、一態様として、従来の乳酸センサでは、酵素反応速度が遅いことから、特に試料中の乳酸濃度が高い場合、短時間の測定では十分な感度が得られない、という知見に基づく。また、本開示は、一態様として、緩衝剤としてACESを使用すれば、乳酸オキシダーゼの酵素反応速度を向上させることができることから、反応に要する時間を短縮することができ、好ましくは試料中の乳酸濃度が高い場合であっても短時間で精度よく乳酸濃度を測定できる、という知見に基づく。
【0013】
緩衝剤としてACESを使用することにより、反応に要する時間を短縮することができ、短時間で乳酸濃度を測定できるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のように推定される。すなわち、ACESが乳酸オキシダーゼの活性を向上させることによって、試料中の乳酸と乳酸オキシダーゼとの反応速度が向上される。このため、酵素反応開始から終了までの時間が短縮され反応に要する時間を短縮することができ、また、試料中の乳酸濃度が高い場合であっても、短時間で精度よく乳酸濃度を測定できるようになると考えられる。但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。なお、本明細書において、「試料中の乳酸濃度が高い場合」とは、一又は複数の実施形態において、試料中の乳酸濃度が、10mmol/L以上、12mmol/L以上、又は20mmol/L以上のことをいう。
【0014】
[試料]
本開示の乳酸センサ及び本開示の乳酸濃度測定方法における測定対象試料は、一又は複数の実施形態において、血液、体液、尿などの生体試料であってもよく、その他の液体試料であってもよい。
【0015】
[乳酸センサ]
本開示の乳酸センサは、絶縁性基板、作用極と対極とを少なくとも含む電極系、及び試薬層を備え、前記電極系は前記基板上に配置され、前記試薬層は前記電極系上に配置された構成である。
【0016】
電極系は、一又は複数の実施形態において、少なくとも作用極と対極とを含んでいればよく、その他に参照極等を含んでいてもよい。前記電極は、従来又は今後開発される乳酸センサやグルコースセンサ等のバイオセンサで使用されるものが使用でき、特に制限されるものではない。作用極及び対極としては、特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、カーボン電極を用いてもよいし、金属電極を用いてもよい。カーボンとしては、一又は複数の実施形態において、パイロロティックグラファイトカーボン、グラッシーカーボン、カーボンペースト、及びペルフルオロカーボン(PFC)等が挙げられる。金属としては、一又は複数の実施形態において、白金、金、銀、ニッケル、及びパラジウム等が挙げられる。参照極は、特に制限されるものではなく、電気化学実験において一般的に使用されているものを適用することができ、一又は複数の実施形態において、飽和カロメル電極、銀−塩化銀電極等が挙げられる。電極系は、形成する電極の材質に応じて従来公知の方法により形成することができ、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、フォトリソグラフィ技術、蒸着法、スパッタ法、及び印刷技術等により形成することができる。印刷技術としては、一又は複数の実施形態において、スクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷等が挙げられる。
【0017】
絶縁性基板の材質は、従来又は今後開発されるバイオセンサで使用されるものが使用でき、特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、シリコン、ガラス、ガラスエポキシ、セラミック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリイミド等が挙げられる。
【0018】
本開示の乳酸センサにおいて、試薬層は、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びACESを含む。
【0019】
乳酸オキシダーゼは、特に制限されるものではなく、従来又は今後開発される乳酸センサに使用される公知の乳酸オキシダーゼや市販の乳酸オキシダーゼ等が使用できる。乳酸オキシダーゼの乳酸センサ1枚あたりの含有量は、一又は複数の実施形態において、従来又は今後開発される乳酸センサに配置されている量であってよく、生産性(コスト)及び検出感度の維持の観点から、1.0〜3.0U、1.6〜2.4U、又は1.8〜2.2Uが好ましい。なお、本明細書においてUは酵素単位であって、1Uは、乳酸オキシダーゼが1μmolの乳酸を30℃1分で酸化する酵素量である。
【0020】
本明細書において「乳酸センサ1枚あたりの含有量」とは、一又は複数の実施形態において、作用極と対極とを少なくとも含む電極系を1つ有する乳酸センサに使用される量をいい、さらなる一又は複数の実施形態において、1つの電極系上に配置された試薬層に含まれる量をいい、さらなる一又は複数の実施形態において、試料が添加された時(使用時)に試薬層が試料によって溶解することにより形成される反応系に含まれるように配置される量をいう。また、本明細書において「乳酸センサ1枚あたりの含有量」というときの乳酸センサは、一又は複数の実施形態において、血液試料に対して使用される通常のサイズのものであって、添加される血液試料が、例えば0.1〜5.0μl、又は0.3〜1.0μlのものをいう。また、乳酸センサは、さらなる一又は複数の実施形態において、血液試料が試薬層と接触して形成する反応系の容量が、例えば0.1〜5.0μl、又は0.3〜1.0μlのものをいう。したがって、「乳酸センサ1枚あたりの含有量」は、一又は複数の実施形態において、電極系の数、及び/又は、試料若しくは反応系の容量に応じ、本明細書に開示する範囲を適宜調節できる。
【0021】
ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸、C41024S)は、グッド緩衝剤の一つであり、市販のものが使用できる。ACESの乳酸センサ1枚あたりの含有量は、一又は複数の実施形態において、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、例えば、0.1〜10重量%、又は0.5〜5.0重量%である。本開示の乳酸センサにおいて、ACES以外の緩衝剤を含んでいてもよい。一又は複数の実施形態において、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、全緩衝剤におけるACESの割合が50重量%以上、80重量%以上、又は実質的にACESからなることが好ましい。
【0022】
メディエータとしては、一又は複数の実施形態において、フェリシアン化カリウム、シトクロムC、ピロロキノリンキノン(PQQ)、NAD+、NADP+、銅錯体、ルテニウム化合物、及びフェナジンメトサルフェート及びその誘導体等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上で併用してもよい。これらの中でも、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、ルテニウム化合物、又はルテニウム化合物とフェナジンメトサルフェート若しくはその誘導体との併用が好ましい。
【0023】
ルテニウム化合物としては、バイオセンサにメディエータとして使用されてきた又は今後使用されるルテニウム化合物を使用できる。ルテニウム化合物は、一又は複数の実施形態において、酸化型のルテニウム錯体として前記反応系に存在し得るものであることが好ましい。前記ルテニウム錯体としては、一又は複数の実施形態において、メディエータ(電子伝達体)として機能すればその配位子の種類は特に限定されないが、酸化型のものが下記化学式で示されるものを使用することが好ましい。
[Ru(NH3)5X]n+
前記化学式におけるXとしては、一又は複数の実施形態において、NH3、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、又はH2O等が挙げられ、これらの中でもNH3又はハロゲンイオン(例えば、Cl-、F-、Br-、I-)が好ましい。前記化学式におけるn+は、酸化型ルテニウム(III)錯体の価数を表し、Xの種類により適宜決定される。
【0024】
ルテニウム化合物の乳酸センサ1枚あたりの含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、0.1〜100μg、1〜80μg、又は10〜50μgが好ましい。
【0025】
フェナジンメトサルフェート及びその誘導体(以下、「PMS」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、フェナジンメトサルフェート及び1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート(1−メトキシPMS)等が挙げられ、試薬安定性の観点から、1−メトキシPMSが好ましい。
【0026】
PMSの乳酸センサ1枚あたりの含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、1〜2000pmol、10〜1000pmol、又は100〜500pmolが好ましい。
【0027】
試薬層は、一又は複数の実施形態において、さらなる測定感度向上の観点から、多糖類及び/又はオリゴ糖(以下、単に「糖」ともいう)を含むことが好ましい。本明細書において「多糖類」とは、単糖が10個以上結合したものをいい、一又は複数の実施形態において、デキストラン、シクロデキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、セルロース、及びアガロース等が挙げられる。本明細書において「オリゴ糖」とは、単糖が10個未満結合したものをいい、一又は複数の実施形態において、単糖が2個結合した二糖類、単糖が3個結合した三糖類、及び単糖が4個結合した四糖類等が挙げられる。2糖類としては、一又は複数の実施形態において、マルトース、及びスクロース等が挙げられる。糖としては、中でも、低温での測定における測定感度の向上の観点から、デキストラン、及びマルトースが好ましく、低温での測定及び試料中の乳酸濃度が高い場合における測定感度の向上の観点から、デキストランがより好ましい。試薬層がデキストランを含む形態の乳酸センサであれば、試料中の乳酸濃度が高い場合や、測定時の雰囲気温度が低温である場合に測定感度をさらに向上できることから、ウィンタースポーツ等の分野のトレーニング等において有用である。デキストランは、特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、増粘剤として使用されている公知のデキストランが使用できる。デキストランの分子量は特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、100〜20000であり、溶解性の点から、1000〜20000が好ましい。デキストランの乳酸センサ1枚あたりの含有量は、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、0.1〜10μg、0.5〜5.0μg、又は1.0〜3μgが好ましい。なお、本明細書において「低温での測定」とは、一又は複数の実施形態において、乳酸センサを用いて測定を行う際の雰囲気温度の上限が、10℃以下、又は5℃以下、その下限が、−5℃以上、0℃以上、又は1℃以上のことをいう。
【0028】
前記試薬層には、測定感度向上の観点から、一又は複数の実施形態において、層状無機化合物、及び/又は界面活性剤等がさらに含有されてもよい。層状無機化合物としては、従来又は今後開発されるバイオセンサに使用されているものが使用でき特に制限されるものではないが、同様の観点から、イオン交換能を有する膨潤性粘土鉱物が好ましい。膨潤性粘土鉱物の中でも、同様の観点から、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、合成フッ素雲母等が好ましく、より好ましくは合成ヘクトライトや合成サポナイト等の合成スメクタイト;合成フッ素雲母等の膨潤性合成雲母;Na型雲母等の合成雲母(天然の雲母は、通常、非膨潤性の粘土鉱物である)等である。これらの層状無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記界面活性剤としては、従来又は今後開発されるバイオセンサに使用されているものが使用でき、特に制限されないが、適宜、非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性の界面活性剤を使用し得る。これらの中でも、測定感度向上の観点からは、両性界面活性剤が好ましい。両性界面活性剤としては、一又は複数の実施形態において、カルボキシペタイン、スルホペタイン、及びホスホペタイン等が挙げられ、同様の観点からスルホペタインが好ましい。スルホペタインとしては、一又は複数の実施形態において、CHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル])ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート)、CHAPSO(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート)、及びアルキルヒドロキシスルホペタイン等が挙げられ、同様の点からCHAPSが好ましい。
【0030】
前記試薬層は、全ての試薬が含まれる単層構造であってもよく、多層の積層構造であってもよい。一又は複数の実施形態において、メディエータを含む第1の試薬層を形成し、その上に乳酸オキシダーゼ、及びACESを含む第2の試薬層を形成することによって形成される構成の試薬層であってもよい。また、メディエータがルテニウム化合物とPMSとを併用する場合、一又は複数の実施形態において、ルテニウム化合物を含む第1の試薬層を形成し、その上に乳酸オキシダーゼ、ACES及びPMSを含む第2の試薬層を形成することによって形成される構成の試薬層であってもよい。試薬層が多糖類等の糖を含む場合は、第2の試薬層が多糖類等の糖を含むことが好ましい。乳酸センサにおける試薬層は、保存安定性の観点から、電極系上に乾燥状態で配置されることが好ましい。
【0031】
本開示の乳酸センサの大きさは、特に制限されるものではなく、供給する試料の量等により適宜設定でき、一又は複数の実施形態において、全体長さ5〜50mm、全体幅1〜50mm、最大厚み2000〜500μm、最小厚み50〜500μmであってもよい。なお、「長さ」とは乳酸センサの長手方向の長さをいい、「幅」とは乳酸センサの幅方向の長さをいう。
【0032】
本開示の乳酸センサは、一又は複数の実施形態において、ある一定の時間で所定の電圧を加える手段、乳酸センサから伝達される電気信号を測定する手段、前記電気信号を測定対象物濃度に演算する演算手段等の種々の手段を備えた測定機器と組み合わせて使用できる。
【0033】
[乳酸センサの製造方法]
本開示は、さらにその他の態様として、作用極と対極とを少なくとも含む電極系が配置された絶縁性基板の前記電極系上に、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びACESを含む試薬層を形成することを含む、乳酸センサの製造方法に関する。本開示の製造方法によれば、本開示の乳酸センサを製造することができる。乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びACESとしては本開示の乳酸センサと同様のものが使用できる。
【0034】
一又は複数の実施形態において、試薬層は、試薬液を電極系上に配置することにより形成できる。試薬液におけるACESの含有量は、一又は複数の実施形態において、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、例えば、0.1〜10重量%、又は0.5〜5.0重量%である。試薬液における乳酸オキシダーゼの含有量は、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、0.5〜10kU/mL、又は1〜5U/mLである。
【0035】
本開示の製造方法のその他の実施形態において、メディエータは、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、ルテニウム化合物、又はルテニウム化合物とフェナジンメトサルフェート若しくはその誘導体との併用が好ましい。試薬液におけるルテニウム化合物の含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、1.0〜15重量%、又は5.0〜10重量%である。試薬液におけるPMSの含有量は、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、10〜1000pmol、又は100〜500pmolである。
【0036】
本開示の製造方法のその他の実施形態において、前記試薬液は、測定感度が向上された乳酸センサを製造する観点から、多糖類等の糖を含むことが好ましく、低温での測定及び試料中の乳酸濃度が高い場合における測定感度が向上された乳酸センサを製造する観点から、デキストランを含むことがより好ましい。デキストランとしては上述の本開示の乳酸センサと同様のものが使用できる。試薬液におけるデキストランの含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、0.01〜1重量%、又は0.05〜0.1重量%である。
【0037】
本開示の製造方法のその他の実施形態において、前記試薬が、さらに層状無機化合物及び又は界面活性剤を含んでいてもよい。層状無機化合物及び界面活性剤としては、一又は複数の実施形態において、上述の本開示の乳酸センサと同様のものが使用できる。
【0038】
本開示の製造方法のその他の実施形態において、前記試薬層の形成は、例えば、ルテニウム化合物を含む第1の試薬液を前記電極系上に配置して第1の試薬層を形成すること、及び前記第1の試薬層上に、乳酸オキシダーゼ、PMS、及びACESを含む第2の試薬液を配置して第2の試薬層を形成することにより行ってもよい。この場合、第1の試薬液がさらに層状無機化合物及び又は界面活性剤を含み、前記第2の試薬液がさらに多糖類等の糖を含むことが好ましい。
【0039】
第1の試薬液におけるルテニウム化合物の含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、0.05〜1.0重量%、又は0.1〜0.5重量%である。第2の試薬液におけるACESの含有量は、一又は複数の実施形態において、測定時間の短縮及び測定感度の向上の点から、例えば、0.1〜10重量%、又は0.5〜5.0重量%である。第2の試薬液におけるPMSの含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、10〜1000pmol、又は100〜500pmolである。第2の試薬液における乳酸オキシダーゼの含有量は、一又は複数の実施形態において、生産性(コスト)及び検出感度の観点から、例えば、0.5〜10kU/mL、又は1〜5U/mLである。
【0040】
[乳酸濃度の測定方法]
本開示は、その他の態様において、乳酸オキシダーゼ、及びACESを含む試薬と、試料とを接触させること、及び前記試料中の乳酸と前記乳酸オキシダーゼとの反応を、メディエータを介して電気化学的に測定することを含む乳酸濃度の測定方法に関する。本開示の乳酸濃度測定方法によれば、反応に要する時間を短縮することができるため短時間での測定が可能となり、好ましくは試料中の乳酸濃度が高い場合であっても、短時間で精度よく乳酸濃度を測定できる。本開示の乳酸濃度測定方法の一実施形態としては、本開示の乳酸センサを用いた乳酸濃度測定方法が挙げられる。
【0041】
本明細書において「電気化学的に測定する」とは、電気化学的な測定手法を適用する測定することをいい、一又は複数の実施形態において、電流測定法、電位差測定法、電量分析法等が挙げられ、中でも電流測定法により、還元された電子伝達物質を印加により酸化される際に生ずる電流値を測定する方法が特に好ましい。
【0042】
本開示の乳酸濃度測定方法は、その他の実施形態において、前記試薬との接触後に前記電極系に電圧を印加すること、前記印加時に放出される応答電流値を測定すること、及び、前記応答電流値に基づいて前記試料中の乳酸濃度を算出することを含んでもよい。印加する電圧としては特に制限されるものではないが、一又は複数の実施形態において、10〜700mV、50〜500mV、又は100〜400mVが好ましい。
【0043】
本開示の乳酸濃度測定方法は、その他の実施形態において、前記試薬との接触後所定の時間非印加の状態で保持した後、電極系に電圧を印加してもよいし、前記試薬との接触と同時に電極系に電圧を印加してもよい。非印加の状態で保持する時間としては、一又は複数の実施形態において、0秒を超え30秒以下、又は0秒を超え10秒以下である。
【0044】
本開示の乳酸濃度測定方法における、電極系への電圧の印加、応答電流値の測定、及び、乳酸濃度の算出は、従来又は今後開発される乳酸濃度測定装置等を用いて適宜行うことができる。
【0045】
[乳酸濃度測定システム]
本開示は、さらにその他の態様として、本開示の乳酸センサと、前記乳酸センサの電極系に電圧を印加する手段と、電極系における電流を測定するための手段とを含む、試料中の乳酸濃度を測定するための乳酸濃度測定システムに関する。本開示の乳酸濃度測定システムによれば、本開示の乳酸センサを用いて試料中の乳酸濃度を測定するため、反応に要する時間を短縮することができるため短時間での測定が可能となる。本開示の乳酸濃度測定システムは、一又は複数の実施形態において、試料中の乳酸濃度が高い場合や測定時の雰囲気温度が低温であっても、短時間で精度よく乳酸濃度を測定できる。
【0046】
印加手段としては、乳酸センサの電極系と導通し、電圧を印加可能であれば特に制限されるものではなく、公知の印加手段が使用できる。印加手段としては、一又は複数の実施形態において、乳酸センサの電極系と接触可能な接触子、及び直流電源等の電源等を含みうる。
【0047】
測定手段は、電圧印加時に生じた電極系における電流を測定するためのものであって、一又は複数の実施形態において、乳酸センサの試薬層のメディエータから放出された電子の量に相関する応答電流値を測定可能なものであればよく、従来又は今後開発される乳酸センサで使用されているものが使用できる。
【0048】
本開示の乳酸センサ及び製造方法の一実施形態について、図1及び2に基づいて説明する。図1A〜Fは、本実施形態の乳酸センサを製造する一連の工程を示した斜視図である。また、図2は、図1Fに示す乳酸センサのI-I方向断面図である。なお、図1A〜F及び図2において、同一箇所には同一符号を付している。但し、以下の説明は一例に過ぎず、本開示はこれに限定されないことはいうまでもない。
【0049】
図1F及び図2に示すように、乳酸センサは、絶縁性基板11、リード部12aを有する作用極12とリード部13aを有する対極13とから構成された電極系、絶縁層14、第1の試薬層16、第2の試薬層17、開口部を有するスペーサー18及び貫通孔20を有するカバー19を備えている。電極系は絶縁性基板11上に形成されている。絶縁層14は、電極系の上部であって、電極系のリード部12a,13b及び後述する第1の試薬層16が形成される部分を除く絶縁性基板11に形成されている。第1の試薬層16及び第2の試薬層17は、作用極12及び対極13上であって、絶縁層14が形成されていない部分にこの順序で形成されている。この第1の試薬層16及び第2の試薬層17が形成された部分が検出部15となる。スペーサー18は、絶縁層14上に配置されており、第2の試薬層17及びカバー19の貫通孔20に対応する箇所が開口部となっている。カバー19は、スペーサー18上に配置されている。図1Bに示すように、乳酸センサにおいて、スペーサー18の開口部の空間部分であり、かつ、第2の試薬層17及び絶縁層14とカバー19とに挟まれた空間部分が、キャピラリー構造の試料供給部21となり、カバー19の貫通孔20が、試料を毛管現象により吸入するための空気孔となる。
【0050】
絶縁層14の材質としては、一又は複数の実施形態において、絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂としては、一又は複数の実施形態において、ポリエステル、プチラール樹脂、及びフェノール樹脂等が挙げられる。スペーサー18の材質としては、一又は複数の実施形態において、樹脂フィルムやテープ等が挙げられる。カバー19の材質としては、特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、各種プラスチック等が使用でき、好ましくは透明樹脂であり、より好ましくはPETである。
【0051】
第1の試薬層16及び第2の試薬層17に含有させる試薬の構成は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、第1の試薬層16がルテニウム化合物及び層状無機化合物を含み、第2の試薬層17が乳酸オキシダーゼ、PMS、界面活性剤、及びACESを含む構成であってもよい。
【0052】
本実施形態の乳酸センサは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0053】
まず、図1Aに示すように、リード部12aを有する作用極12とリード部13aを有する対極13とからなる電極系が形成された絶縁性基板11を準備する。電極系が形成された市販の絶縁性基板を使用してもよいし、絶縁性基板11に電極系を形成してもよい。絶縁性基板の材質、電極の材質及び電極の形成方法は上述の通りである。
【0054】
つぎに、図1Bに示すように、電極系が形成された絶縁基板11上に絶縁層14を形成する。絶縁層14は、一又は複数の実施形態において、絶縁性樹脂を溶媒に溶解した絶縁ペーストを絶縁性基板11に印刷し、ついで加熱又は紫外線処理を行うことにより形成できる。溶媒としては、一又は複数の実施形態において、カルビトールアセテート、二塩基酸エステル系混合溶剤(DBEソルベント)等が挙げられる。
【0055】
つぎに、図1C及びDに示すように、絶縁層14が形成されていない検出部15の電極系上及び絶縁性基板11上に第1の試薬層16及び第2の試薬層17をこの順序で形成する。第1の試薬層16及び第2の試薬層17は、それぞれの層に含有させる試薬を含む試薬液を分注し、乾燥させることによって形成することができる。試薬液の濃度は上述の通りである。
【0056】
つぎに、図1E及びFに示すように、絶縁層14上にスペーサー18及びカバー19をこの順序で配置する。
【0057】
本実施形態における乳酸センサを用いた乳酸の測定方法の一例について説明する。但し、以下の説明は一例に過ぎず、本開示はこれに限定されないことはいうまでもない。
【0058】
まず、全血試料を乳酸センサの試料供給部21の一端に接触させる。この試料供給部21は前述のようにキャピラリー構造となっており、その他端に対応するカバー19の開口部20が空気孔となることから、毛管現象によって前記試料が乳酸センサの内部に吸引される。吸引された試料は、第2の試薬層17に浸透し、第2の試薬層17中の乳酸オキシダーゼ及びACES等を溶解して、さらに第2の試薬層17の下層である第1の試薬層16表面に達する。そして、表面に達した試料中の乳酸と乳酸オキシダーゼとPMSとルテニウム化合物とがACES存在下で反応する。具体的には、測定対象物である乳酸は乳酸オキシダーゼにより酸化され、その酸化反応により移動した電子がPMSを介してルテニウム化合物に伝達され、還元型ルテニウム(II)錯体が形成される。そして、還元された還元型ルテニウム(II)錯体と第1の試薬層16の下に位置する電極系との間で電子授受が行われ、これによって乳酸濃度が測定されうる。
【0059】
以下に、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに説明する。但し、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
以下に示すようにして、図1に示す乳酸センサと同様の構造の実施例1の乳酸センサを作製した。
【0061】
まず、乳酸センサの絶縁性基板11として、PET製基板(長さ50mm、幅6mm、厚み250μm)を準備し、その一方の表面に、スクリーン印刷により、リード部12a,13aをそれぞれ有する作用極12及び対極13からなるカーボン電極系を形成した。
【0062】
つぎに、以下に示すようにして電極系上に絶縁層14を形成した。まず、絶縁性樹脂ポリエステルを濃度75重量%になるように溶媒カルビトールアセテートに溶解させて絶縁性ペーストを調製し、これを前記電極系上にスクリーン印刷した。印刷条件は、300メッシュスクリーン、スキージ圧40kgであり、印刷する量は、電極面積1cm2当たり0.002mLとした。なお、検出部15上と、リード部12a、13a上には、スクリーン印刷を行わなかった。そして、絶縁性ペーストを90℃で60分間加熱処理することによって絶縁層14を形成した。
【0063】
続いて、絶縁層14を形成しなかった検出部15に、以下に示すようにして第1の試薬層16を形成した。まず、合成スメクタイト(商品名「ルーセンタイトSWN」、コープケミカル社製)0.3重量%、ルテニウム化合物([Ru(NH36]Cl3、同仁化学研究所社製)6.0重量%、重量%、酢酸ナトリウム、及びコハク酸を含む第1の試薬液(pH7.5)を調製した。この第1の試薬液1.0μLを、検出部15に分注した。検出部15の表面積は約0.1cm2であり、検出部15における作用極12及び対極13の表面積は約0.12cm2であった。そして、これを30℃で乾燥させて、第1の試薬層16を形成した。
【0064】
さらに、第1の試薬層16の上に、第2の試薬層17を形成した。まず、乳酸オキシダーゼ(商品名「LCO301」、東洋紡社製)2U、1−メトキシPMS(同仁化学研究所社製)25重量%、ACES緩衝液(pH7.5)及び界面活性剤を含む第2の試薬液を調製した。この第2の試薬液1.0μLを第1の試薬層16の上に分注して、30℃で乾燥させて第2の試薬層17を形成した。
【0065】
最後に、開口部を有するスペーサー18を絶縁層14上に配置し、さらに、スペーサー18上に空気孔となる貫通孔20を有するカバー19を配置して実施例1の乳酸センサを作製した。カバー19と絶縁層14とに挟まれたスペーサー18の開口部の空間を試料供給部21とした。
【0066】
[比較例1〜6]
比較例1〜6として、ACESに変えて下記表1に示す緩衝剤を使用した以外は実施例1と同様に乳酸センサを作製した。
【0067】
実施例1及び比較例1から6の乳酸センサを用いて試料中の乳酸の測定を行った。試料としては2mmol/L乳酸調合液を使用し、測定装置は乳酸測定治具を用いた。測定は、25℃に設定した環境試験室内で、乳酸センサに試料を供給した後、検体検知後10秒間は非印加とし、10秒後から15秒後までの5秒間200mVの電圧を印加することにより行った。その結果を表1及び図3のグラフに示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1及び図3に示す通り、実施例1の乳酸センサは、比較例1から6の乳酸センサに比較して十分な応答電流値が検出された。また、実施例1の乳酸センサによれば、検体点着検知後5秒という極めて短い測定時間で測定できることが確認できた。
【0070】
[実施例2]
第2の試薬液がデキストラン(分子量:5000−10000、商品名「デキストラン」、ナカライテスク社)0.5重量%を含む以外は、実施例1と同様に乳酸センサを作製した。実施例1及び2の乳酸センサを用い、試料としては乳酸濃度を調整した静脈全血(乳酸濃度:4,6,10,18,24mg/dL)を使用し、測定温度条件を25℃又は10℃とした以外は、実施例1と同様に乳酸の測定を行った。その結果を図4に示す。図4Aが測定温度条件25℃のグラフであり、図4Bが測定温度条件10℃のグラフである。図4A及びBにおいて四角のマーカーが実施例1の乳酸センサのグラフを示し、ひし形のマーカーが実施例2の乳酸センサのグラフ示す。
【0071】
実施例1及び2のいずれの乳酸センサも、検体点着検知後5秒という極めて短い測定時間で測定できることが確認できた。また、図4Aのグラフに示すように、デキストランを含む実施例2の乳酸センサによれば、乳酸濃度が高濃度(例えば、10mmo/Lを超える濃度、好ましくは18mmol/Lを超える濃度)であっても、短い反応時間(検体点着検知後10秒)で、より精度よく測定できることが確認できた。また、図4Bのグラフに示すように、デキストランを含む実施例2の乳酸センサによれば、測定温度条件が10℃と低温であっても、短い反応時間(検体点着検知後10秒)で、より精度よく測定できることが確認できた。また、実施例2の乳酸センサを用い、測定温度条件を5℃又は0℃として同様の測定を行ったところ、10℃の場合と同様に、短い反応時間(検体点着検知後10秒)で、より精度よく測定できることが確認できた(データ示さず)。
【0072】
[実施例3]
使用するデキストランの分子量を100〜500、1000〜2000、又は10000〜20000に変更した以外は、実施例2と同様に乳酸センサを作製し、それを用いて乳酸の測定を行った。その結果、分子量が5000−10000のデキストランを使用した実施例2の乳酸センサと同様の結果が得られた(データ示さず)。
【0073】
[比較例7]
第2の試薬液におけるACE緩衝液をリン酸水素2ナトリウム緩衝液とした以外は、実施例2と同様に乳酸センサを作製した。
【0074】
実施例2及び比較例7の乳酸センサを用いて実施例2と同様に乳酸の測定を行った。その結果を図5のグラフに示す。
【0075】
図5Aが測定温度条件25℃のグラフであり、図5Bが測定温度条件10℃のグラフである。図5A及びBにおいて四角のマーカーが実施例2の乳酸センサのグラフを示し、ひし形のマーカーが比較例7の乳酸センサのグラフ示す。図5A及びBに示すように、緩衝剤としてリン酸水素2ナトリウムを使用した比較例7の乳酸センサは、測定温度条件が25℃及び10℃のいずれにおいても、十分な電流を検出できず、検体検知後10秒間では反応時間が十分ではないという結果が得られた。これに対し、実施例2の乳酸センサは、測定温度条件が25℃及び10℃のいずれにおいても、十分な電流を検出され、短い反応時間で、かつ精度よく測定できることが確認できた。
【0076】
[実施例4]
第2の試薬液がデキストラン(分子量:50000〜70000、商品名「デキストラン」、ナカライテスク社)0.5重量%、シクロデキストリン(分子量:1134.98、商品名「β‐シクロデキストリン」、ナカライテスク社)0.5重量%、又はマルトース(分子量:360.31、商品名「マルトース一水和物」、ナカライテスク社)0.5重量%を含む以外は、実施例1と同様に乳酸センサを作製した。得られた乳酸センサを用い、試料としては乳酸濃度を調整した静脈全血(乳酸濃度:10,20mg/dL)を使用し、測定温度条件を10℃とした以外は、実施例1と同様に乳酸の測定を行った。リファレンスは、実施例1の乳酸センサと同様の構成の試作品で測定した。これらの結果を図6に示す。
【0077】
図6において、ひし形のマーカーがデキストランを含む乳酸センサのグラフを示し、黒四角のマーカーがシクロデキストリンを含む乳酸センサのグラフを示し、三角のマーカーがマルトースを含む乳酸センサのグラフを示し、白抜きの四角のマーカーがリファレンスのグラフを示す。図6に示すように、いずれの乳酸センサも、低温の測定条件下であっても、乳酸濃度が低濃度(10mg/dL)及び高濃度(20mg/dL)のいずれも十分な電流が検出され、短い反応時間で、かつ精度よく測定できた。中でも、マルトースを含む乳酸センサについては、低濃度において優れた感度を示し、高い精度測定できた。デキストランを含む乳酸センサについては、低濃度及び高濃度のいずれにおいても優れた感度を示し、非常に高い精度で測定できた。
【0078】
本開示は、医療分野、及び/又は、医療を目的としない医学、生化学、生物学等の学術分野で有用である。
【符号の説明】
【0079】
11 絶縁性基板
12 作用極
13 対極
12a,13a リード部
14 絶縁層
15 検出部
16 第1の試薬層
17 第2の試薬層
18 スペーサー
19 カバー
20 貫通孔
21 試料供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板、前記基板上に配置された作用極と対極とを少なくとも含む電極系、及び、前記電極系上に配置された試薬層を備え、
前記試薬層が、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む、
乳酸センサ。
【請求項2】
前記試薬層が、さらにオリゴ糖及び多糖類からなる群から選択される糖を含む、請求項1記載の乳酸センサ。
【請求項3】
前記糖が、デキストランである、請求項2記載の乳酸センサ。
【請求項4】
前記試薬層が、さらに層状無機化合物及び/又は界面活性剤を含む、請求項1から3のいずれかに記載の乳酸センサ。
【請求項5】
前記メディエータが、フェリシアン化カリウム、シトクロムC、ピロロキノリンキノン、NAD+、NADP+、銅錯体、ルテニウム化合物、並びにフェナジンメトサルフェート及びその誘導体からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の乳酸センサ。
【請求項6】
前記メディエータが、ルテニウム化合物、又はルテニウム化合物とフェナジンメトサルフェート若しくはその誘導体とである、請求項5記載の乳酸センサ。
【請求項7】
前記フェナジンメトサルフェートの誘導体が、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェートである、請求項5又は6に記載の乳酸センサ。
【請求項8】
乳酸オキシダーゼ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む試薬と、試料とを接触させること、及び
前記試料中の乳酸と前記乳酸オキシダーゼとの反応を、メディエータを介して電気化学的に測定することを含む、
乳酸濃度の測定方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の乳酸センサを用いて行う、請求項8記載の測定方法。
【請求項10】
前記接触後に前記電極系に電圧を印加すること、前記印加時に放出される応答電流値を測定すること、及び、前記応答電流値に基づいて前記試料中の乳酸濃度を算出することを含む、請求項8又は9記載の測定方法。
【請求項11】
作用極と対極とを少なくとも含む電極系が配置された絶縁性基板の前記電極系上に、乳酸オキシダーゼ、メディエータ、及びN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸を含む試薬層を形成することを含む、
乳酸センサの製造方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の乳酸センサと、
前記乳酸センサの電極系に電圧を印加する手段と、
電極系における電流を測定するための手段とを含む、
試料中の乳酸濃度を測定するための乳酸濃度測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83637(P2013−83637A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206151(P2012−206151)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)