説明

二成分樹脂系

第1の成分Aおよび第2の成分Bからなる二成分樹脂系であって、成分Aが、a.不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、b.脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含むこと、ならびに成分Bが、c.脂肪族アミンと、d.ペルエステルとの混合物を含むことを特徴とする、二成分樹脂系。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第1の成分Aおよび第2の成分Bからなる二成分樹脂系に関し、一方の成分は樹脂を含み、他方の成分はその樹脂のための硬化剤を含む。
【0002】
二成分樹脂系は、多くの建造物、保守、修理および組立の用途に使用されている。二成分樹脂系は、混合すると接着剤を形成する樹脂および硬化剤を梱包するために使用される。従来より、エポキシ接着剤またはメタクリラート接着剤は、製品が使用されようとする前に樹脂および硬化剤が反応しないように、樹脂および硬化剤が別個の区画に入れられた状態で販売されてきた。
【0003】
これらの二成分樹脂系は、従来より、1つの高分子網目構造(例えば、反応性希釈剤に溶解した多官能性メタクリラート化合物をベースとするフリーラジカル開始共重合により硬化するビニルエステル樹脂網目構造、または一般に段階成長(step growth)共重合により硬化するエポキシ−アミン網目構造など)を形成するために使用されている。
【0004】
本発明の目的は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を形成するために適用され得る二成分樹脂系を提供することである。本明細書で使用される場合、二成分樹脂系とは、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るための二成分樹脂系の使用の前の化合物の時期尚早の重合を防止するために、その系の異なる化合物が2つの空間的に分離された成分中に存在することを意味する。ハイブリッド硬化とは、少なくとも2つの異なる反応機構によって行われる硬化をいう。
【0005】
このような二成分樹脂系は、相互貫入高分子網目構造(Interpenetrating Polymer Network:IPN)を得るために使用される。本明細書で使用される場合、相互貫入高分子網目構造は、分子スケールで少なくとも部分的に交錯し、かつ任意選択的に、互いに共有結合している少なくとも2つの化学的に別個の高分子網目構造からなる組成物である。共有結合が高分子網目構造間に存在しない真のIPNのみならず、セミIPNもまた形成され得る。セミIPNにおいては、2つの網目構造は、アミンと反応し得かつラジカル重合を行い得る結合成分を介して共有結合される。共有結合が高分子網目構造間に存在する場合、そのIPNは、セミIPNと呼ばれる。IPNにおいて、各網目構造は、その個々の特性を保持し得る。その結果、IPNにおいては少なくとも2つの網目構造の個々の特性が組み合わされるので、特性の改善が得られ得る。
【0006】
論文“Curing behaviour of IPNs formed from model VERs and epoxy systems I amine cured epoxy”,K.Dean,W.D.Cook,M.D.Zipper,P.Burchill,Polymer 42(2001),1345−1359に、一方の高分子網目構造が、スチレンに溶解したビニルエステル樹脂(メタクリラートを含有する化合物)の、ラジカル開始剤(例えば、過酸化物)を用いたラジカル重合によって形成されることが記載されている。他方の高分子網目構造は、エポキシ化合物とアミンとの段階成長共重合によって形成される。最初に第一アミンがエポキシ基と反応し、続いて第二アミンが反応する。IPNは、ビニルエステル樹脂およびエポキシ化合物を別個にそれぞれのラジカル開始剤および硬化剤と混合し、その後に組み合わせて混和性ブレンドを得ることによって形成される。
【0007】
したがって、この論文に記載されているようなIPNを形成するのに不可欠な要素は、メタクリラート含有化合物、ラジカル開始剤(例えば、過酸化物)、エポキシ化合物およびアミンである。しかしながら、アミンと過酸化物との混合物は、それらは互いに反応するので、不安定であることが知られている(E.T.Denisov,R.G.Denisova,T.S.Denisova,Handbook of free radical initiators,2003)。例えば、よく知られている開始系は、第三芳香族アミンを用いた過酸化ベンゾイルの分解に基づくものであり、多くの重合に使用されている(G.Odian,Principles of polymerization,3rd edition p.220(1991))。過酸化ベンゾイルと他のアミン(例えば、ブチルアミンまたはトリエチルアミン)との反応もまた、非常に速い(そして爆発的に反応しさえし得る)(P.D.Bartlett,K.Nozaki,J.Am.Chem.Soc.v69,p2299(1947))。ヒドロペルオキシドの激しい反応(例えば、過酸化水素とアミンとの0℃より高い温度の反応など)もまた、記載された(G.L.Matheson,O.Maass,J.Am.Chem.Soc.v51,p674(1929))。
【0008】
また、メタクリラートが過酸化物に対して(フリーラジカル開始重合)およびアミンに(マイケル付加)反応性であり、エポキシ化合物がアミンに対して反応性であるという事実から考えて、これらの化合物の混合は、IPNまたはセミIPNを形成させることが意図される時にだけ行われ得る。セミIPNにおいては、2つの網目構造は、アミンと反応し得かつラジカル共重合を行い得る結合成分を介して共有結合されている したがって、少なくとも3つの成分が、メタクリラート化合物、過酸化物、エポキシ化合物およびアミンを保存するために必要とされる。これらの化合物を保存するための1つの可能な方法は、エポキシ化合物および過酸化物を含有する1つの成分と、アミンを含有する別の成分と、メタクリラート化合物を含有するさらに別の成分とからなる三成分系である。これらの化合物を保存するための他の可能な方法は、エポキシ化合物およびメタクリラート化合物を含有する1つの成分と、アミンを含有する別の成分と、過酸化物を含有するさらに別の成分とからなる三成分系である。
【0009】
しかしながら、取扱いを考慮すると、二成分樹脂系が望ましい。
【0010】
本発明の目的は、ラジカル硬化性樹脂/過酸化物硬化系とエポキシ/アミン硬化系とを含有するハイブリッド硬化樹脂系を形成するために使用される化合物を保存するために適用され得る二成分樹脂系を提供することである。アミンと過酸化物との混合物が安定な混合物であることが、そのような二成分樹脂(2K)系にとって不可欠である。
【0011】
この目的は、二成分系の第1の成分Aが(a)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と(b)脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含み、第2の成分Bが(c)脂肪族アミンと(d)ペルエステルとの混合物を含むことで、達成される。
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、今回、脂肪族アミンとペルエステルとの混合物が室温で安定であり、それによってそのような2K系を可能にすることを見出した。
【0013】
本発明において、脂肪族アミン(化合物(c))とペルエステル(化合物(d))との室温で安定な混合物とは、化合物(c)と化合物(d)との混合物を室温で24時間保存した後も、化合物(a)を依然として室温で硬化可能であり、好ましくは化合物(a)と化合物(b)との混合物を依然として室温で硬化可能である、脂肪族アミンとペルエステルとの混合物をいう。この混合物は、少なくとも化合物(a)へのこの混合物の添加があるゲル化時間(DIN 16945に準じて測定される)をもたらす場合に、硬化可能であると見なされる。
【0014】
本明細書で使用される場合、ビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリラート含有化合物、すなわち、少なくとも1個の反応性(メタ)アクリラート基を含む化合物である。好ましくは、当該樹脂系は、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)として、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂を含む。より好ましくは、当該樹脂系は、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)として、ビニルエステル樹脂を含む。さらにより好ましくは、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、ビニルエステル樹脂である。
【0015】
本発明の文脈において使用される不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂は、当業者に知られているような樹脂の任意のものであり得る。そうした樹脂の例は、J.M.S.−Rev.Macromol.Chem.Phys.,C40(2&3),p.139−165(2000)のM.Malik et al.のレビュー論文において見出され得る。著者らは、そのような樹脂の、それらの構造に基づく、以下の5つのグループへの分類について記載している。
(1)オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸およびグリコール(例えば、1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールまたは水素化ビスフェノール−A)をベースとする。
(2)イソ樹脂:これらは、イソフタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸、およびグリコールから調製される。
(3)ビスフェノール−A−フマラート:これらは、エトキシル化ビスフェノール−Aおよびフマル酸をベースとする。
(4)クロレンド酸系(chlorendics)は、塩素/臭素含有無水物またはフェノールから調製される樹脂である。
(5)ビニルエステル樹脂:これらは、主にその加水分解抵抗および優れた機械的性質のために使用される樹脂である。それらは、末端位にだけ、例えば、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、フェノール−ノボラック型のエポキシ樹脂、またはテトラブロモビスフェノール−Aをベースとするエポキシ樹脂)と(メタ)アクリル酸との反応によって導入された、不飽和部位を有する。(メタ)アクリル酸の代わりに、(メタ)アクリルアミドもまた使用され得る。
【0016】
Malik et al.に記載されているようなビニルエステル樹脂に加えて、ビニルエステルウレタン樹脂(ウレタン(メタ)アクリラート樹脂とも称される)のクラスもまた、本明細書においてビニルエステル樹脂であると考えられる。好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリラート官能性樹脂としても知られる、少なくとも1個の(メタ)アクリラート官能性末端基を含有するオリゴマーまたはポリマーである。これは、ビニルエステルウレタン樹脂のクラスも包含する。好ましいビニルエステル樹脂は、ウレタンメタクリラート樹脂を含むメタクリラート官能性樹脂である。好ましいメタクリラート官能性樹脂は、エポキシオリゴマーまたはポリマーとメタクリル酸またはメタクリルアミドとの、好ましくはメタクリル酸との反応によって得られる樹脂である。
【0017】
ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、好ましくは少なくとも200ダルトン、より好ましくは少なくとも300ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも500ダルトンの数平均分子量Mを有する。ラジカル共重合を行うことが可能な化合物は、好ましくは最大10,000ダルトン、より好ましくは最大5000ダルトンの数平均分子量Mを有する。本明細書で使用される場合、数平均分子量(M)は、ポリスチレン標準を使用するGPCを用いてテトラヒドロフラン中で測定されるものである。
【0018】
好ましくは、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、ラジカル重合性化合物のアミンとの塩形成を防止するために、可能な限り低い酸価を有する。ラジカル共重合を行うことが可能な化合物は、好ましくは最大60mgKOH/g、より好ましくは最大40mgKOH/g、さらにより好ましくは最大5mgKOH/g、さらにより好ましくは0mgKOH/gの酸価(ISO 2114−2000に準じて測定される)を有する。このことを考慮すると、好ましくは、ビニルエステル樹脂が、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)として使用される。
【0019】
脂肪族アミンと反応することが可能な化合物(b)は、エポキシド官能性樹脂、すなわち、少なくとも1個のエポキシ基を含有する樹脂である。好ましくは、本発明に従う樹脂系は、ビスエポキシド(2個のエポキシド基を含有する)をエポキシド官能性樹脂として含む。好ましい実施形態において、エポキシド官能性樹脂は、ビスエポキシドである。
【0020】
好ましくは、エポキシド官能性樹脂は、グリシジルエーテルをエポキシド官能基として含む。好ましい実施形態において、本発明に従う樹脂系は、グリシジルエーテルをエポキシド官能性樹脂として含む。より好ましい実施形態において、エポキシド官能性樹脂は、グリシジルエーテルである。
【0021】
脂肪族アミンと反応することが可能な化合物(b)は、好ましくは少なくとも300ダルトン、より好ましくは少なくとも500ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも750ダルトンの数平均分子量Mを有する。脂肪族アミンと反応することが可能な化合物は、好ましくは最大10,000ダルトン、より好ましくは最大5000ダルトンの数平均分子量Mを有する。
【0022】
好ましい実施形態において、成分Aは、好ましくは、少なくとも300ダルトンの分子量を有するラジカル共重合を行うことが可能な化合物を含み、反応性希釈剤をさらに含む。例えば希釈剤は、樹脂系の取扱いをより容易にするために樹脂系の粘度を調節するのに利用されるであろう。さらに、希釈剤が樹脂中の反応性部分と反応性がある基を含有すれば、硬化生成物中の架橋の調節が達成され得る。この場合、その希釈剤は、反応性希釈剤と呼ばれる。反応性希釈剤は、あらゆる種類のそのような反応性基を含有し得るが、その基は、樹脂中の反応性部分と同一であることもあり得る。
【0023】
好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部は、ラジカル共重合が可能である。好適なモノマーの例は、例えば、アルケニル芳香族モノマー(例えば、スチレンおよびジビニルベンゼンなど)、(メタ)アクリラート、ビニルエーテルおよびビニルアミドであるが、当業者に知られているような、熱硬化性樹脂の分野における使用のためのあらゆる他の反応性モノマーが使用され得る。好ましいモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリラート、ブタンジオールジメタクリラートおよびそれらの混合物である。(メタ)アクリラート反応性希釈剤の好適な例は、PEG200ジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、PPG250ジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートである。場合によってはメタクリラートがラジカル共重合を行うことが可能な化合物の機能および反応性希釈剤の機能を有し得ることに注意されたい。
【0024】
好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部は、脂肪族アミンと反応することが可能である。より好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部は、脂肪族アミンと反応することが可能であるだけでなく、ラジカル共重合も可能であり、この場合に、セミIPNが形成されることになる。
【0025】
成分Aは、好ましくは、遷移金属塩または錯体をさらに含む。そのような遷移金属化合物の存在は、それが過酸化物の分解を促進し、その結果ラジカル重合を促進するので有益である。好ましくは、成分Aは、22〜29の範囲内の原子番号を有するか、38〜49の範囲内の原子番号を有するか、57〜79の範囲内の原子番号を有する遷移金属の塩または錯体を含む。より好ましくは、遷移金属塩または錯体は、Mn、Fe、Cu、VおよびCoの塩または錯体であり、さらにより好ましくは、Mn、FeおよびCuから選択される。さらにより好ましくは、遷移金属塩または錯体は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造の低温性能がさらに改善され得ることから、MnおよびCuの塩または錯体である。Mn、Fe、Cu、VまたはCo化合物は、好ましくはMn、Fe、Cu、VまたはCoのカルボン酸塩、より好ましくは、Mn、Fe、Cu、VまたはCoのC〜C30カルボン酸塩、さらにより好ましくは、Mn、Fe、Cu、VまたはCoのC〜C16カルボン酸塩である。
【0026】
当業者は、遷移金属化合物の好適な量を決定することができるであろう。本発明に従う樹脂系中に存在する遷移金属化合物の量は、好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.0001mmolの遷移金属、より好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.0025mmolの遷移金属、さらにより好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.025mmolの遷移金属が存在するというようなものである。費用効率の理由から当然ながら過度に高い濃度は適用されないであろうが、遷移金属含有量の上限は、それほど重要ではない。概して、樹脂系中の遷移金属の濃度は、硬化性化合物1kg当たり50mmol未満の遷移金属、好ましくは硬化性化合物1kg当たり20mmol未満の遷移金属であろう。
【0027】
好ましくは、成分AおよびBの少なくとも一方は、本発明に従う二成分樹脂系の保存安定性をさらに改善するために、抑制剤をさらに含む。より好ましくは、成分Aが、抑制剤を含む。好ましくは、抑制剤は、安定なラジカル、フェノール抑制剤、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジンおよびそれらの混合物の群から選択される。
【0028】
本発明において使用され得る抑制剤の好適な例は、例えば、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチル−フェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナプトキノン(napthoquinone)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYLとも呼ばれる)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはこれらの化合物の任意のものの誘導体もしくは組み合わせである。
【0029】
成分Bは、化合物(c)として、好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンを含む。成分B中のアミンは、好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンである。好ましくは、成分Bは、化合物(c)として、少なくとも第一脂肪族アミンを含む。好適な脂肪族アミンの例は、1,2−ジアミノエタン;1,2−ジアミノプロパン;1,3−ジアミノプロパン;1,4−ジアミノブタン;および2−メチル−1,5−ジアミノペンタン;1,3−ジアミノペンタン;2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン;2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン;1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;2,2−ジメチル−l,1,3−ジアミノプロパン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,2−ジアミノシクロヘキサンおよび1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンである。
【0030】
成分B中に存在するペルエステルは、好ましくは、芳香族ペルエステルである。ペルエステルの必要量は当業者により容易に決定され得、その量は広い範囲内で可変であり、概して0.0001重量%より多く、かつ20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満であり、より好ましくは5重量%未満である(ここで、ペルエステルの量は、硬化性化合物の総量を基準とする)。
【0031】
本発明に従う樹脂系中のラジカル重合性官能基と脂肪族アミンと反応することが可能な官能基とのモル比は、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5であり、さらにより好ましくは3:1〜1:3である。本明細書で使用される場合、あらゆる所与の範囲の全ての上方の境界および/または下方の境界について、境界値は、その範囲に含まれる。
【0032】
本発明に従う樹脂系中のエポキシド官能基とアミン−NH−官能基とのモル比は、好ましくは5:1〜1:5であり、より好ましくは3:1〜1:3であり、さらにより好ましくは2:1〜1:2であり、さらにより好ましくは1.5:1〜1:1.5であり、最も好ましくは1:1である。明確にするために述べると、第一アミンは2個のNH官能基を有し、第二アミンは1個のNH官能基を有する。
【0033】
本発明に従う樹脂系において、充填剤もまた、存在し得る。これらの充填剤は、2K系の成分のうちのいずれかの成分中に存在し得る。したがって、本発明の別の実施形態によれば、成分AまたはBの少なくとも一方は、1種以上の充填剤および/または繊維をさらに含む。多種多様な充填剤(例えば、シリカ、砂、セメント、顔料などであるが、これらに限定されない)が使用され得る。多種多様な繊維(例えば、ガラスおよび炭素繊維などであるが、これらに限定されない)が使用され得る。
【0034】
本発明はまた、本発明に従う二成分樹脂系を両成分を混合することによって硬化させるための方法に関する。硬化は、好ましくは、−20℃〜+200℃の範囲内、好ましくは−20℃〜+100℃の範囲内、最も好ましくは−10℃〜+60℃の範囲内(いわゆる常温硬化)の温度で行われる。
【0035】
本発明は、二成分熱硬化性樹脂系に関する。熱硬化性樹脂は、一般に、構造物を得るための複合材を製造するために使用される。本発明はさらにまた、成分Aおよび成分Bを混合することによって本発明に従う樹脂系を硬化させると得られるような硬化物、特に構造物に関する。本明細書で言う場合、構造物は、少なくとも0.5mmの厚さおよび(構造物の最終用途に応じて)適切な機械的性質を有するものと考えられる。
【0036】
本発明はさらに、自動車部品、船、化学定着、屋根材、建設、容器、リライニング(relining)、パイプ、タンク、床張り材または風車羽根の分野のいずれか1つにおける硬化物の使用に関する。
【0037】
本発明はさらに、脂肪族アミンおよびペルエステルの混合物を含む組成物に関する。驚くべきことに、本発明者らは、脂肪族アミンとペルエステルとの混合物が、室温で安定であることを見出した。脂肪族アミンは、好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンである。ペルエステルは、好ましくは、芳香族ペルエステルである。
【0038】
本発明はさらに、(a)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、(b)脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂と、(c)脂肪族アミンと、(d)ペルエステルとを含む多成分樹脂系であって、脂肪族アミンおよびペルエステルの両方が、当該多成分樹脂系の成分のうちの1つの成分中に存在する、多成分樹脂系に関する。好ましい化合物および量は、上記したとおりである。本発明に従う多成分樹脂系の使用は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るために、化合物(a)、(b)、(c)および(d)を混合することを必要とする。本明細書で使用される場合、多成分樹脂系とは、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るための多成分樹脂系の使用の前の化合物の時期尚早の重合を防止するために、その系の異なる化合物が、少なくとも2つの空間的に分離された成分中に存在することを意味する。本発明に従う多成分樹脂系は、少なくとも2つの成分を含む。一実施形態において、多成分樹脂系は、3つの成分A、BおよびCからなる三成分系であり、ここで、成分Aは、上記のような化合物(a)を含む樹脂組成物からなり、成分Bは、脂肪族アミン(c)およびペルエステル(d)の混合物を含む組成物からなり、成分Cは、上記のような化合物(b)を含む樹脂組成物からなる。ペルエステルは、好ましくは、芳香族ペルエステルである。脂肪族アミンは、好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンである。
【0039】
次に、一連の実施例および比較例によって本発明を説明する。全ての実施例は、特許請求の範囲を支持するものである。しかしながら、実施例に示されるような特定の実施形態に、本発明が限定されるわけではない。
【0040】
[硬化のモニタリング]
硬化は、標準ゲル化時間装置によってモニタリングした。これは、ゲル化時間(TgelまたはT25−>35℃)およびピーク時間(TpeakまたはT25−>peak)の両方が、DIN 16945の方法に準じた発熱測定によって測定されたことを意味することが意図される。したがって、使用した装置は、PeakproソフトウェアパッケージおよびNational Instrumentsハードウェアを備えた、Soformゲルタイマーであった。使用した水浴およびサーモスタットは、それぞれ、Haake W26およびHaake DL30であった。
【0041】
[機械的性質測定]
機械的性質の測定のために、4mmの注型品を調製した。
【0042】
硬化物の機械的性質は、ISO 527−2に準じて測定した。加熱撓み温度(Heat Distortion Temperature:HDT)は、ISO 75−Aに準じて測定した。
【0043】
[実施例1および比較試験]
[過酸化物アミン混合物のスクリーニング]
0.05gの過酸化物を、極めて慎重に0.5gのアミンに添加した。迅速な反応が起こったどうかは目視により決定した。視覚的に安定であった混合物のDSC測定を、8時間後に行った。この方法によって残りの反応エンタルピー(enthalphy)の推定を行い、その結果として、アミン過酸化物混合物がこの短い期間内に部分的に反応したか否かを決定した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】



【0045】
【表2】



【0046】
安定とは、DSCにより前反応が認められなかったことを意味する。
【0047】
比較試験と合わせてこれらの実施例1.1〜1.4は、本発明に従う組み合わせのみが、安定な過酸化物アミン混合物に繋がるということを明示している。
【0048】
[実施例2]
樹脂配合物を、100gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、66.5gのブタンジオールジメタクリラート、および0.8gのスピリット中ナフテン酸Cu(Cu naphtenate)(8重量%Cu)を混合することによって調製した。
【0049】
アミン過酸化物混合物を、31gの1,5−ジアミノ−2メチルペンタンおよび4gのt−ブチルペルベンゾアートを混合することによって調製した。
【0050】
24時間保存した後、ゲルタイマーにおいて25gの樹脂配合物および3.5gの過酸化物混合物を使用して系の反応性を測定した結果、ゲル化時間は12.3分、ピーク時間は34.5分、そしてピーク温度は172℃であった。
【0051】
1mmの注型品を、50gの樹脂および7gの過酸化物混合物を使用して調製した。結果として得られた硬化注型品は、46℃のTgを有する。
【0052】
[実施例3]
成分Aとして、樹脂配合物を、193gのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、128gのブタンジオールジメタクリラート、514gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、161gのグリシジルメタクリラート、4gのスピリット中ナフテン酸Cu(Cu naphtenale)(8重量%Cu)、0.005gのTempolおよび0.002gのヒドロキノンを混合することによって調製した。
【0053】
成分Bとして、アミン過酸化物混合物を、124gの1,5−ジアミノ−2メチルペンタンおよび16gのt−ブチルペルベンゾアートを混合することによって調製した。
【0054】
ゲルタイマーにおいて25gの成分Aおよび3.5gの成分Bを使用して系の反応性を測定した結果、ゲル化時間は10.8分、ピーク時間は18.6分、そしてピーク温度は206℃であった。
【0055】
成分AおよびBの両方を室温で23週間保存した後、硬化を再度行った結果、ゲル化時間は12.9分、ピーク時間は20.8分、そしてピーク温度は205℃であった。
【0056】
この結果は、本発明に従う過酸化物アミン組み合せが、室温で長期にわたって安定であるということを明示している。さらに、本実施例は、そのような組み合せが、アミンとの縮合反応と組み合わせたフリーラジカル重合の開始に使用されて、硬化複合樹脂をもたらし得るということを示している。
【0057】
[実施例4]
成分Aを、500gのDaron XP−45(スチレン中のビニルエステル樹脂)、500gのEpon 828(ジエポキシ樹脂)および2gのナフテン酸Cu(Cu naftenate)溶液(スピリット中8重量%Cu)を混合することによって調製した。成分Bを、16gのTrigonox C(ペルエステル)と86gのDytek A(1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン;脂肪族ジアミン)とを混合することによって調製した。両混合物を24時間保存した後、成分Bを成分Aに添加し、4mmの注型品を調製した。室温で16時間放置した後、注型品を金型から離型し、16時間にわたって80℃で、続いて5時間にわたって100℃で後硬化させた。
【0058】
そのようにして得られた硬化樹脂の機械的性質は、Tg125℃、HDT102℃、引張強さ86MPa、引張弾性率3.5GPa、破断点伸び5%、曲げ強さ139MPa、曲げ弾性率3.6GPaであった。
【0059】
この結果は、本発明に従う安定な過酸化物アミン組み合せを使用して、良好な機械的性質を有する硬化物が得られたことを示している。
【0060】
[実施例5]
樹脂配合物を、60gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、40gのブタンジオールジメタクリラートおよびxgの遷移金属溶液(5mmol/kg樹脂混合物)を混合することによって調製した。
【0061】
アミン過酸化物混合物を、102gの1,5−ジアミノ−2メチルペンタンおよび12gのt−ブチルペルベンゾアートを混合することによって調製した。
【0062】
24時間保存した後、ゲルタイマーにおいて、樹脂配合物を使用し、それを14gのアミン過酸化物混合物と混合して、系の反応性を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
【表3】



【0064】
これらの実施例は、様々な遷移金属が、本発明に従う過酸化物アミン組み合せとともに使用され得るということを明示している。
【0065】
[実施例6]
樹脂配合物を、600gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、400gブタンジオールジメタクリラートおよび2.7gのNuodex Mn10を混合することによって調製した。この配合物を、100gずつに分け、これに様々な量の様々な抑制剤を添加した。
【0066】
アミン過酸化物混合物を、102gの1,5−ジアミノ−2メチルペンタンおよび12gのt−ブチルペルベンゾアートを混合することによって調製した。
【0067】
24時間保存した後、ゲルタイマーにおいて、抑制剤を含有する樹脂配合物を使用し、それを14gのアミン過酸化物混合物と混合して、系の反応性を測定した。結果を表3に示す。
【0068】
【表4】



【0069】
これらの実施例は、様々な抑制剤が、反応性を調整するために本発明に従う過酸化物アミン混合物と組み合わせて使用され得るということを明示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分Aおよび第2の成分Bからなる二成分樹脂系において、成分Aが、
a.不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、
b.脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂と
を含むこと、ならびに成分Bが、
c.脂肪族アミンと、
d.ペルエステルと
の混合物を含むことを特徴とする、二成分樹脂系。
【請求項2】
前記ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)が、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の二成分樹脂系。
【請求項3】
前記ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)が、ビニルエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の二成分樹脂系。
【請求項4】
前記ビニルエステル樹脂が、少なくとも1つの(メタ)アクリラート官能性末端基を含有するオリゴマーまたはポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の二成分樹脂系。
【請求項5】
前記エポキシド官能基が、グリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項6】
成分Aが、反応性希釈剤をさらに含むこと、および前記反応性希釈剤の少なくとも一部が、ラジカル共重合が可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項7】
前記反応性希釈剤の少なくとも一部が、脂肪族アミンと反応することが可能であることを特徴とする、請求項6に記載の二成分樹脂系。
【請求項8】
成分Bが、化合物(c)として、第一および/または第二脂肪族アミンを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項9】
成分Bが、化合物(c)として、第一脂肪族アミンを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項10】
成分B中の前記ペルエステルが、芳香族ペルエステルであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項11】
成分Aが、遷移金属塩または錯体をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の二成分樹脂系。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の二成分樹脂系の前記成分AおよびBの2つを混合することによって得られる硬化物。
【請求項13】
自動車部品、船、化学定着、屋根材、建設、容器、リライニング、パイプ、タンク、床張り材または風車羽根の分野のいずれか1つにおける、請求項12に記載の硬化物の使用。
【請求項14】
脂肪族アミンとペルエステルとの混合物を含む組成物。
【請求項15】
前記脂肪族アミンが、第一および/または第二脂肪族アミンであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(a)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、(b)脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂と、(c)脂肪族アミンと、(d)ペルエステルとを含む多成分樹脂系であって、前記脂肪族アミンおよび前記ペルエステルの両方が、前記多成分樹脂系の成分のうちの1つの成分中に存在する、多成分樹脂系。

【公表番号】特表2013−519746(P2013−519746A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552411(P2012−552411)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052037
【国際公開番号】WO2011/098561
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】