説明

二重管削孔工具

【課題】パイロットビットによる掘削分担面積を拡大し、反対にリングビットの掘削分担面積を低減することにより、リングビットの重量低減、超硬チップ配置数の低減を図る。
【解決手段】リングビット2のリング内面に打撃及び回転伝達用係合凸部11が周方向に間隔を空けて複数形成され、前記パイロットビット3の先端部は、円形部の周囲に側方に突出する複数の先端凸部15を有し、前記円形部の面に複数の超硬チップが配置されるとともに、前記先端凸部15の面に超硬チップが配置され、かつ前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11の側面に当接する回転伝達用衝合部と、背面に当接する打撃伝達用衝合部とを備え、前記パイロットビット3の先端凸部15をリングビット2の内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部11,11間の凹部を通過させた後、パイロットビット3を所定の方向に回転させることによりロック状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端にパイロットビットが装着された内管ロッドと、先端に軸芯回りに回転自在のリングビットが装着された外管ロッドからなる二重管によって、回転力と打撃力とを与えながら、削孔を行う回転打撃式の二重管削孔工具に係り、詳しくは前記パイロットビットとリングビットとによるロッド先端部のビット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば法面補強等のために地山削孔装置として、回転力と打撃力とを与えながら削孔するロータリパーカッション方式(以下、回転打撃方式ともいう。)が広く知られている。このロータリパーカッション方式は、打撃力によって岩石を破砕するため、岩盤のみならず、砂層や転石層などでも削孔が行える利点を有する。なお、打撃力の付与構造は、ドリルヘッドに油圧による打撃機構を備えるトップハンマー方式と、内管ロッドの先端に圧搾空気によってシリンダー内のピストンを往復運動させることにより打撃力を付与するダウンザホールハンマーを装着するダウンザホール方式とに大別される。
【0003】
一方、削孔方式は、単管削孔方式と二重管削孔方式とに大別される。後者の二重管削孔方式は、孔壁崩壊のおそれがある崩壊性地山等の場合に、外管ロッドで孔壁保護を図りながら削孔を行う方式で、外管ロッドの内部に内管ロッドを挿入した状態とし、回転力と打撃力とを与えながら削孔を行い、削孔完了後に、多くの場合、外管ロッド(リングビット含む)を残置し、内管ロッドを引き抜いて撤去する。なお、削孔中は、スライムは外管ロッドと内管ロッドとの間を通って排土スイベルから外部に排出される。
【0004】
現在、前記二重管削孔方式にも種々の方式が提案されているが、その1つとしてリングビット工法が知られている。この工法は、外管ロッドの先端に軸芯回りに回転自在とされたリングビットが装着され、パイロットビットに与えられた回転力と打撃力とを前記リングビットに伝達し、外管ロッドを回転させることなくパイロットビット(内管ロッド含む。)及びリングビットを回転させながら、パイロットビット及びリングビットの回転と打撃とによって地盤の削孔を行うものである。
【0005】
前記リングビット工法に係る先行技術としては、例えば下記特許文献1〜3に提案されるものを挙げることができる。下記特許文献1では、図9及び図10に示されるように、円筒状のケーシングパイプ50の先端にリングビット51が該ケーシングパイプ50の軸線回りに回転自在に取り付けられるとともに、上記ケーシングパイプ50内に挿入されて上記軸線回りに回転されるインナーロッドの先端には、インナービット52が上記リングビット51の内周に挿入されて該リングビット51と上記軸線回りに係合可能に取り付けられてなる掘削工具において、上記ケーシングパイプ50とリングビット51とは、互いの内外周面を対向させて嵌挿されるとともに、これら互いに対向するケーシングパイプ50とリングビット51の内外周面にはそれぞれ上記軸線回りに延びる環状溝53が形成されていて、これらの環状溝53が合致することによって画成される環状孔に、上記軸線に対する径方向に弾性変形可能な係止部材54が介装されることにより、上記リングビット51がケーシングパイプ50に上記軸線方向に係止させられているビット構造が提案されている。
【0006】
下記特許文献2では、埋め込み用のパイプの先端部に相対回転可能にリングビットを取り付けたものを使用し、前記リングビットと正回転方向ではロックして一体化し、逆方向ではアンロックされるパイロットビットを前記パイプに挿通させ、パイロットビットとリングビットを同期回転させてパイプ推進させ、所要深さに達した状態でパイロットビットを逆回転してリングビットと離間させ、パイロットビットをパイプから抜き取るようにしたビット構造が提案されている。
【0007】
更に、下記特許文献3では、先端部に削孔ビットが装着された内管ロッドと埋設管である外管ロッドの二重管で削孔する削孔工法に使用する削孔ビットであって、前記削孔ビットは、内管ロッドを介して削孔装置からの打撃力、回転力及び推力が伝達され、さらに内管ロッドの中空部を通して供給された流体が噴出され、外管ロッドと内管ロッドとの間に掘削土砂を取り込み、逆送して削孔外に排出しながら掘進及び外管ロッドを推進させるインナービットと、削孔底部に捨て置く拡孔用ロストビットとからなり、前記インナービットとロストビットは、一方向の相対回転では結合し、逆方向の相対回転では離脱容易なねじ結合してなる削孔ビット構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−140578号公報
【特許文献2】特開2009−68229号公報
【特許文献3】特開2003−166390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記二重管削孔方式では、外管ロッドが地中に残置される場合は、外管(ケーシング)のみならず、先端に装着されたリングビットも地中に残置されることになる(所謂、ロストビットとなる。)。このリングビットの切削チップとしては、一般的に超硬合金製の超硬チップが使用されており価格も高価であり、すべての削孔においてリングビットを残置するとなると、工事規模によっては数千〜数万個となり、工事予算を左右する大きな金額となってしまうことになる。
【0010】
この点に関して、前記特許文献1記載のビット構造の場合は、図10に示されるように、リングビット51の先端面において、3つの同心円に沿って超硬チップを配置しているため、多くの超硬チップが必要となる。また、パイロットビット52による掘削分担面積を拡大し、反対にリングビット51の掘削分担面積を低減させれば超硬チップ数を低減することが可能であるが、パイロットビット52をリングビット51内に通すために、前記パイロットビット52の先端部外径は、リングビット51の最小内径(回転係合部を含まない内径)以内にしなければならず、リングビット51の掘削分担面積を低減できないため、リングビットの重量低減や超硬チップの配置数を低減できないなどの問題があった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、パイロットビットによる掘削分担面積を拡大し、反対にリングビットの掘削分担面積を低減することにより、リングビットの重量低減、超硬チップ配置数の低減を図り、もってリングビットのコスト削減を図ること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、先端にパイロットビットが装着された内管ロッドと、先端に軸芯回りに回転自在のリングビットが装着された外管ロッドとからなり、前記内管ロッドと外管ロッドとが組み合わされた状態で、前記パイロットビットとリングビットとの間に打撃力伝達部及び回転力伝達部を有する二重管削孔工具において、
前記リングビットのリング先端面に配置される超硬チップは、周方向に間隔を空けて複数配置されるとともに、リング内面に打撃及び回転伝達用係合凸部が周方向に間隔を空けて複数形成され、
前記パイロットビットの先端部は、円形部の周囲に側方に突出する複数の先端凸部を有し、前記円形部の面に複数の超硬チップが配置されるとともに、前記先端凸部の面に超硬チップが配置され、かつ前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に当接する回転伝達用衝合部と、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に当接する打撃伝達用衝合部とを備え、
前記リングビットとパイロットビットとの組み合わせに当たって、前記パイロットビットの先端凸部を前記リングビットの内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部間の凹部を通過させた後、パイロットビットを所定の方向に回転させることにより、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に前記パイロットビットの回転伝達用衝合部が当接するとともに、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に前記リングビットの回転伝達用衝合部が当接し、ロック状態となることを特徴とする二重管削孔工具が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明においては、リングビットのリング先端面に配置される超硬チップは、周方向に間隔を空けて複数配置されるとともに、リング内面に打撃及び回転伝達用係合凸部が周方向に間隔をおいて複数形成されるようにし、一方、前記パイロットビットの先端部は、円形部の周囲に側方に突出する複数の先端凸部を有し、前記円形部の面に複数の超硬チップが配置されるとともに、前記先端凸部の面に超硬チップが配置され、かつ前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に当接する回転伝達用衝合部と、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に当接する打撃伝達用衝合部とを備えるようにする。
【0014】
そして、前記リングビットとパイロットビットとを組み合わせるに当たって、前記パイロットビットの先端凸部を前記リングビットの内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部間の凹部を通過させた後、パイロットビットを所定の方向に回転させることにより、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に前記パイロットビットの回転伝達用衝合部が当接するとともに、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に前記リングビットの回転伝達用衝合部が当接してロック状態(削孔準備完了状態)となる。
【0015】
すなわち、従来のビット構造の場合は、パイロットビットの先端部外径は、リングビットの最小内径(回転係合部を含まない内径)以内に制限されていたため、パイロットビットの掘削分担面積をリングビットの最小内径よりも外側に拡大できなかったが、本発明の場合は、パイロットビットの先端凸部を前記リングビットの内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部間の凹部を通過させた後、パイロットビットを所定の方向に回転させてロック状態とする構造を採用することにより、前記パイロットビットの先端凸部がリングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の前面側に位置するようになり、前記リングビットの最小内径よりも外側周囲までパイロットビットによる掘削面積を拡大することができるようになる。従って、パイロットビットによる掘削分担面積を拡大し、その分リングビットの掘削分担面積が低減することにより、リングビットの重量低減、超硬チップ配置数の低減を図ることができ、もってリングビットのコストを削減することが可能となる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記リングビットにおいて、リング先端面に配置される超硬チップは、軸芯に対して単一の同心円上に沿って3〜5個配置されている請求項1記載の二重管削孔工具が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明は、前記リングビットにおいて、リング先端面に配置される超硬チップは、軸芯に対して単一の同心円上に沿って3〜5個配置されている構造とするものである。リングビット先端の超硬チップを、複数の同心円上にそれぞれ配置するのではなく、単一の同心円上に配置することにより超硬チップの設置数の低減を図るものである。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記パイロットビットにおいて、前記先端凸部と前記回転伝達用衝合部とが側面視でL字状に連続し、ロック状態時に前記L字部内に前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部が納まるようになっている請求項1,2いずれかに記載の二重管削孔工具が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明においては、前記パイロットビットにおいて、前記先端凸部と回転伝達用衝合部とが側面視でL字状に連続し、ロック状態時に前記L字部内に前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部が納まるようになっているものである。従って、ロック状態がきっちりと保持されるようになるとともに、ロック状態のまま削孔工具を引き上げると、前記パイロットビットの先端凸部が前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部に当接し、リングビットごと引上げできるようになる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、パイロットビットによる掘削分担面積を拡大し、反対にリングビットの掘削分担面積を低減することにより、リングビットの重量低減、超硬チップ配置数の低減を図り、リングビットのコスト削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】二重管削孔工具1の一部破断側面図である。
【図2】二重管削孔工具1の縦断面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】図1のV−V線矢視図である。
【図6】リングビット2を示す、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【図7】パイロットビット3を示す、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は左側面図である。
【図8】リングビット2とパイロットビット3との組み合わせ要領を示す、(A)は挿通状態図、(B)ロック状態時である。
【図9】従来のビット構造を示す縦断面図である。
【図10】その先端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
図1に示されるように、二重管削孔工具1は、先端にパイロットビット3が装着された内管ロッド6と、先端に軸芯回りに回転自在のリングビット2が装着された外管ロッド5とからなり、前記内管ロッド6と外管ロッド5とが組み合わされた状態で、前記パイロットビット3とリングビット2との間に打撃力伝達部8及び回転力伝達部9とを有するものである。なお、図中パイロットビット3の管路部に外嵌された符合7の装置は、周知のダウンザホールハンマーであり、パイロットビット3に打撃力を与えるものである。また、パイロットビット3への回転力はドリルヘッド(図示せず)から内管ロッド6を介して与えられる。
【0024】
以下、更に具体的に詳述する。
【0025】
前記リングビット2は、図6に示されるように、リング状の部材であり、先端の外周部に周方向に間隔を空けて複数の、図示例では3つの超硬チップ10、10…が配置されている。リングビット2の内面には、打撃及び回転伝達用係合凸部11が周方向に間隔をおいて3つ形成され、これら打撃及び回転伝達用係合凸部11、11…の間に、底面がリングの内面にほぼ一致する凹部12が形成されている。また、後端には、相対的に薄肉に形成された摺動回転部13が形成されている。図1に示されるように、前記リングビット2は、外管ロッド5の先端にケーシングシュー4を介して装着されている。前記ケーシングシュー4は、リング状の部材であり、前記外管ロッド5の先端に略半分が内挿されるとともに、溶接等によって堅固に固定され、外部に突出した部分に前記リングビット2の摺動回転部13が外嵌する状態で装着されるようになっている。従って、前記リングビット2は、前記ケーシングシュー4に対して外管ロッド5の軸芯回りに回転自在とされるとともに、後述するパイロットビット3の先端凸部15と衝突するまでの範囲M内で前後方向(削孔方向)にも若干スライド可能となっている。なお、図6(A)において、半径表示R1がリングビット2の最小内径(回転伝達用係合凸部11を含まない内径)である。
【0026】
一方、前記パイロットビット3は、詳細には図7に示されるように、円形部14の周囲に側方に突出する複数の、図示例では3つの先端凸部15,15…を有し、パイロットビット3の円形部14の面に複数の超硬チップ16,16…が配置されるとともに、前記先端凸部15の面に超硬チップ17が配置されている。
【0027】
前記先端凸部15の背面側であってかつ片側寄りに、回転伝達用衝合部18が連続的に設けられている。前記先端凸部15と前記回転伝達用衝合部18とは、側面視でL字状に連続し、ロック状態時に前記L字部内に前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11が納まるようになっている。
【0028】
また、前記回転伝達用衝合部18のロッド基端側には、若干の隙間を空けるとともに、周方向に間隔を空けて打撃伝達用衝合部19、19…が設けられている。この打撃伝達用衝合部19、19間の周方向凹部はスライム排出流路を構成するようになっている。
【0029】
前記パイロットビット3の内部には、図2に示されるように、軸方向に沿って削孔水供給流路20、20…が形成され、先端部において、先端面に至る流路22により削孔前面部に排出されるようになっている。また、削孔水の一部は分岐流路21a、21bにより前記パイロットビット3とリングビット2との間の打撃力伝達部8及び回転力伝達部9にそれぞれ供給され、土砂の噛み込み防止用のフラッシング水として利用されるようになっている。
【0030】
前記リングビット2とパイロットビット3とを組み合わせるに当たっては、図8(A)に示されるように、前記パイロットビット3の先端凸部15,15…を前記リングビット2の内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部11,11間の凹部12を通過させた後、図8(B)に示されるように、パイロットビット3を所定の方向(正面視で反時計回り方向)に回転させるようにする。すると、図4に示されるように、前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11の側面に前記パイロットビット3の回転伝達用衝合部18が当接するとともに、図5に示されるように、前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11の背面に前記リングビット2の打撃伝達用衝合部19が当接し、ロック状態となる。図5中、斜線領域Sが打撃当接面領域である。ここで、前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11とパイロットビット3の回転伝達用衝合部18との当接部が回転力伝達部9であり、前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11の背面と、前記リングビット2の打撃伝達用衝合部19との当接面が打撃力伝達部8である。前記リングビット2は、前記回転力伝達部9によりパイロットビット3の回転力が伝達され同期的に回転するとともに、前記打撃力伝達部8によりダウンザホールハンマー7からの打撃力が伝達されて、パイロットビット3と共に、地盤に対して打撃力を与えながら、地盤を削孔する。
【0031】
このロック状態では、図3に示されるように、パイロットビット3の先端凸部15がリングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11の前面側に位置するようになり、前記リングビット2の最小内径R1よりも外側周囲までパイロットビット3による掘削面積を拡大することができるようになる。その結果、その分リングビット2の掘削分担面積が低減されることにより、リングビット2の重量低減、超硬チップ配置数の低減を図ることができ、リングビット2のコストを削減することが可能となる。
【0032】
また、ロック状態では、図1に示されるように、パイロットビット3の前記先端凸部15と前記回転伝達用衝合部18とによって形成されたL字部内に前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11が納まるようになっており、これによりロック状態がきっちりと保持されるようになるとともに、ロック状態のまま削孔工具1を引き上げると、前記パイロットビット3の先端凸部15が前記リングビット2の打撃及び回転伝達用係合凸部11に当接するため、ジャミング発生時等に、パイロットビット3と共にリングビット2を引上げできるようになっている。
【0033】
所定深さまでの削孔を終えた場合には、前記パイロットビット3を逆方向に回転させてロック状態を解除したならば、パイロットビット3のみをそのまま引き上げて撤去し、外管ロッド5及びリングビット2は地盤中に残置される。
【0034】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記パイロットビット3において、前記先端凸部15と前記回転伝達用衝合部18とを側面視でL字状に連続的に形成したが、先端凸部15と前記回転伝達用衝合部18とは分離してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…二重管削孔工具、2…リングビット、3…パイロットビット、4…ケーシングシュー、5…外管ロッド、6…内管ロッド、7…ダウンザホールハンマー、8…打撃力伝達部、9…回転力伝達部、10・16・17…超硬チップ、11…回転伝達用係合凸部、12…凹部、13…摺動回転部、14…円形部、15…先端凸部、18…回転伝達用衝合部、19…打撃伝達用衝合部、20…削孔水供給流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にパイロットビットが装着された内管ロッドと、先端に軸芯回りに回転自在のリングビットが装着された外管ロッドとからなり、前記内管ロッドと外管ロッドとが組み合わされた状態で、前記パイロットビットとリングビットとの間に打撃力伝達部及び回転力伝達部を有する二重管削孔工具において、
前記リングビットのリング先端面に配置される超硬チップは、周方向に間隔を空けて複数配置されるとともに、リング内面に打撃及び回転伝達用係合凸部が周方向に間隔を空けて複数形成され、
前記パイロットビットの先端部は、円形部の周囲に側方に突出する複数の先端凸部を有し、前記円形部の面に複数の超硬チップが配置されるとともに、前記先端凸部の面に超硬チップが配置され、かつ前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に当接する回転伝達用衝合部と、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に当接する打撃伝達用衝合部とを備え、
前記リングビットとパイロットビットとの組み合わせに当たって、前記パイロットビットの先端凸部を前記リングビットの内面に形成された打撃及び回転伝達用係合凸部間の凹部を通過させた後、パイロットビットを所定の方向に回転させることにより、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の側面に前記パイロットビットの回転伝達用衝合部が当接するとともに、前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部の背面に前記リングビットの回転伝達用衝合部が当接し、ロック状態となることを特徴とする二重管削孔工具。
【請求項2】
前記リングビットにおいて、リング先端面に配置される超硬チップは、軸芯に対して単一の同心円上に沿って3〜5個配置されている請求項1記載の二重管削孔工具。
【請求項3】
前記パイロットビットにおいて、前記先端凸部と前記回転伝達用衝合部とが側面視でL字状に連続し、ロック状態時に前記L字部内に前記リングビットの打撃及び回転伝達用係合凸部が納まるようになっている請求項1,2いずれかに記載の二重管削孔工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−21411(P2011−21411A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168390(P2009−168390)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(309001687)トヨミツ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】