説明

交通機関の経路探索システム、方法、コンピュータプログラム

【課題】特定交通手段を利用することを前提とする経路探索を可能にする。
【解決手段】交通機関の経路探索要求がPC70や携帯端末50からあると設定画面30をPC70や携帯端末50に表示させる。特定交通手段の識別名称の入力、出発地及び目的地の入力を契機に運行情報DB120及び仮想ノードDB130などから経路探索に必要なノードを読み出す。経路探索ツール110が出発地から目的地に向かう方向に存在するノードを順次たどることで経路探索を実行する。経路探索に際して複数のノードを辿る際に、それ以前までに要した運行コストが所定の閾値を越えていると判別した経路についてはその後の探索を終了する。そして、所定の閾値を越えていないと判別した経路の中から、特定交通手段が存在する経路を最適経路候補として特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行コストに関わらずユーザが望む特定の交通手段名を利用することを前提とする交通機関の経路探索技術に関する。ここで、「特定の交通手段名」とは、例えば「カシオペア」(登録商標)や「北斗星」(登録商標)のような寝台特急名、「オーシャンアロー」のような高速フェリー名、「三陸鉄道」のような鉄道路線名、東京都内から各地域へ運行している「夜行バス」のようなものをいう。
【背景技術】
【0002】
乗り換え可能な駅を経路探索用のノードとして含む交通手段ネットワークを構築し、出発地から目的地に繋がる交通手段ネットワークの各ノードについて、運行コストが最小となる次のノードの探索処理を連鎖的に行う交通機関の経路探索装置が知られている。従来のこの種の経路探索装置では、運行コストが最小となる順に最適経路候補を出力しているのが一般的である。最近は、既存のノードに仮想ノードを新たに追加できるようにして、交通手段ネットワークの範囲を拡げる技術も存在する。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたシステムは、特定の場所(POI)に対応するノードからリンクコストゼロでリンクする仮想ノードを交通手段ネットワークに追加し、仮想ノードを含めた経路探索を行うことにより、経路探索時のリソースを軽減し、効率よく最適な経路探索が可能としている。
【0004】
また、特許文献2に開示されたシステムは、イベントの開始時刻と終了時刻が決まっている場合に、出発地から移動して、最も適したイベントの時間帯に長く滞在できる目的地及びその経路の探索を行う。より具体的には、交通手段ネットワークのノードにイベントの開始時刻と終了時刻とを設定することで、イベントにおける滞在時間を算出している。ユーザが滞在時間をできるだけ長くとれるということは、言い換えればイベントの開催場所に最も早く到着する目的地を案内するということを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300735号公報
【特許文献2】特開2009−109273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経路探索のユーザの中には、特定の車両、バス、船舶、機体等を指定して利用することなど、それ自体が旅の目的としている場合がある。つまり、運行コストが小さくなることを目的としない経路を含む経路探索(ダイヤ情報の案内を含む)を必要とするユーザが存在する。
特許文献1、2に開示されているシステムに代表される従来のこの種の経路探索システムは、いずれも最適経路として運行コストが小さくなる経路を探索するように設計されているので、このようなユーザの需要に的確に応えることができない。そのため、例えば東京23区内から全国各地に運行している高速夜行バスは、目的地別に乗車停留所が異なっているため、ユーザが利用すべき停留所を想起できない場合などは、どこへ向かえば良いか分からずに大変困ってしまう。このようなユーザの需要に応えようとすると、既存のシステム全体の改編が必要となり、開発者にとって大きな負担となる。
【0007】
本発明は、運行コストに関わらずユーザが利用したい特定交通手段を利用することを前提とする経路探索を可能としつつ、既存のリソースを有効活用することができ、拡張性にも優れた交通機関の経路探索技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、運行経路探索装置、経路探索方法、コンピュータプログラムを提供する。
本発明の経路探索システムは、経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能な経路探索システムであって、出発地、目的地、及び特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける探索条件受付手段と、経路探索条件の受付を契機に、記憶装置に記憶されている交通手段ネットワークにおいて出発地から目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより出発地から目的地に至るまでに特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する経路探索手段と、を備える交通機関の経路探索システムである。
【0009】
このシステムによれば、経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能な経路探索システムとすることで、出発地、目的地、及び特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力の受け付けを契機に、記憶装置に記憶されている交通手段ネットワークにおいて出発地から目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより出発地から目的地に至るまでに特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定することができる。これにより、運行コストに関わらず特定交通手段を利用することを前提とした経路探索が可能となる。
【0010】
ある実施態様では、仮想ノードをいずれかの実ノードと関連付けて記憶装置に蓄積する仮想ノード設定手段をさらに備える。これにより、経路探索システムの運用の前後を問わず、随時、仮想ノード記憶装置に仮想ノードの追加や修正、削除などが可能となる。
【0011】
ある実施態様では、仮想ノード設定手段が、前記仮想ノードを、いずれかの前記実ノードと関連付け、当該仮想ノードと前記関連付けた実ノードとの間の運行コストがゼロとなる経路とする。これにより、運行コストに関わらず特定交通手段を利用することを前提とする経路探索を、既に運用されている経路探索システムに拡張付加する形態で提供することも可能となる。そのため、既存のリソースなどを有効に活用できる。
【0012】
ある実施態様では、探索条件受付手段が特定交通手段の利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻を含めた経路探索条件の入力を受け付けるものであり、記憶装置には実ノード又は仮想ノード毎に、当該ノードにおけるダイヤ情報を含む運行情報が関連付けられており、経路探索手段は運行情報を参照することにより、利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻によれば運行コストが小さくなる順に最適経路候補を特定する。これにより、特定交通手段の利用時間帯などを指定した経路探索が可能となる上に、その指定を踏まえて運行コストが小さくなる順に最適経路候補が特定されることでユーザの利便性が更に高まることとなる。
【0013】
ある実施態様では、経路探索手段が所定の探索閾値を保持しており、経路探索に際して複数のノードをたどる際に、それ以前までに要した運行コストが探索閾値を越える経路についてはそれ以後のノードの探索は終了する。これにより、経路探索の結果が現実的でないかどうかを判別でき、非現実的な運行コストとなる経路、例えば予め定めた基準を越えた運行コストの経路を除外する等の処理を行うことが可能となる。経路探索システムに無駄な探索負荷をかけずに済むことにもなる。
【0014】
本発明の経路探索方法は、経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの前記実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能な経路探索システムが実行する方法であって、出発地、目的地、及び前記特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける段階と、前記経路探索条件の受付を契機に、前記記憶装置に記憶されている前記交通手段ネットワークにおいて前記出発地から前記目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより前記出発地から前記目的地に至るまでに前記特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する段階と、を有する交通機関の経路探索方法である。
【0015】
本発明のコンピュータプログラムは、経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの前記実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能なコンピュータを経路探索システムとして動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、出発地、目的地、及び前記特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける探索条件受付手段、前記経路探索条件の受付を契機に、前記記憶装置に記憶されている前記交通手段ネットワークにおいて前記出発地から前記目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより前記出発地から前記目的地に至るまでに前記特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する経路探索手段として機能させるコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、運行コストに関わらずユーザが利用したい特定交通手段を利用することを前提とする経路探索を可能としつつ、既存のリソースを有効活用することができ、拡張性にも優れた交通機関の経路探索技術を提供できるという特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の運行経路探索システムの全体構成図。
【図2】仮想ノードデータベースのデータ構成例図。
【図3】第1実施形態の設定画面の例示図。
【図4】第1実施形態の経路探索処理手順。
【図5】第1実施形態の経路探索を示す模式図。
【図6】経路探索結果表示の例示図。
【図7】第2実施形態の設定画面の例示図。
【図8】第2実施形態の経路探索処理手順。
【図9】第3実施形態の運行経路探索システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態例を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、この実施形態の経路探索システムの全体構成例を示す図であり、特徴的な部分を掲示してある。この経路探索システム1は、インターネット等のデジタルネットワークNに接続される経路探索サーバ10を含んで構成される。デジタルネットワークNには、メールサーバ60や情報端末の一例となるパーソナルコンピュータ(PC)70も接続可能になっている。情報端末の他の例となる携帯端末50は、データ通信及びデータ処理機能を有する場合はダイレクトに、メール機能のみであればメールサーバ60を通じて、それぞれデジタルネットワークNに接続することができる。
【0019】
<経路探索サーバ>
経路探索サーバ10は、記憶装置を備えたサーバ本体を有し、このサーバ本体と本発明のコンピュータプログラムとの協働により実現される。すなわち、サーバ本体が、コンピュータプログラムを読み込んで実行することにより、そのサーバ本体をデータ通信用インターフェイス100、経路探索ツール110として機能させ、さらに、記憶装置に構築された運行情報DB(DBはデータベースの略、以下同じ)120及び仮想ノードDB130にアクセスすることで、経路探索のための情報処理を実行可能にする。
【0020】
主制御部111は、経路探索に関する各種処理を実現するために各機能ブロック100、110、131、132の起動を含む動作の制御を行う。制御手順は後述する。
【0021】
データ通信用インターフェイス100は、データ通信及びデータ処理機能を有する携帯端末50やPC70との両方向通信を可能にするとともに、これらの情報端末が閲覧可能な階層ページ画面を提供する。この階層ページ画面では、経路探索のWebサービスを行うためのもので、経路探索条件の精緻な指定をシステム側と利用者との間でインタラクティブに行うことにより、利用者が満足する経路探索を行う環境をも提供する。経路探索の結果情報の表示もこのページ画面で行うことができる。
【0022】
運行情報DB120には、交通機関(鉄道、バス、船舶、航空機等)の路線やダイヤ情報、運賃情報、駅リストを含む、経路探索に必要な情報が蓄積される。この情報は随時更新される。
【0023】
経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、例えば、鉄道路線駅のような複数の実ノードがある。仮想ノードDB130には、寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所をいずれかの実ノードと関連付けられた仮想ノードが蓄積される。
【0024】
仮想ノード設定部132は、外部の入力装置からの入力を受け、特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所と、いずれかの実ノードとを関連付けた仮想ノードを仮想ノードDB130に蓄積する。また、仮想ノード設定部132は、仮想ノードをいずれかの実ノードと関連付け、当該仮想ノードと関連付けた実ノードとの間の運行コストがゼロとなる経路として仮想ノードDB130に蓄積することもできる。運行コストがゼロとは、つまり、運行コストを時間と見る場合には時間0分ということである。更に、仮想ノード設定部132は、仮想ノードにリンク情報を含めて仮想ノードDB130に蓄積することもできる。詳細は後述する。ここで、仮想ノードと関連付けられた実ノードをリンクポイントということとする。
【0025】
探索閾値判定部131は、経路探索の結果が現実的でないかどうかを判別し、非現実的な運行コストとなる経路、例えば予め定めた基準を越えた運行コストの経路を除外する等の処理を行う。非現実的な運行コストとなる経路を除くことで、探索時の処理の負荷も抑えられる。
【0026】
図2は、仮想ノードDB130に蓄積される情報の例示である。仮想ノードには特定交通手段を指定するための情報と、経路探索に必要な情報とが含まれる。図2中、「種類」は例えば「寝台特急」や「高速バス」のような特定交通手段の種類である。「特定交通手段の識別名称」は例えば「カシオペア」(登録商標)や「北斗星」(登録商標)のような識別名称である。「利用開始/終了場所」は、特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所である。「運行情報DB有無」は、運行情報DB120上に当該特定交通手段のダイヤ情報を含む運行情報が存在するか否かを示す。ここでは、運行情報DB120上に運行情報が「存在する」とした場合はフラグ「1」とし、「存在しない」とした場合はフラグ「0」で示している。また、IDによってシステム内で一意に識別されるようになっている。
【0027】
前述した「運行情報DB有無」がフラグ「0」の場合には、運行情報DB120上に仮想ノードとの関連付けが可能な運行情報は「存在しない」ものとされる。この場合に、運行情報DB120に蓄積されている運行情報は経路探索時の参照対象とはならない。「リンク情報」は、経路探索時に必要があれば運行情報DB120に蓄積されている運行情報以外の図示しないダイヤ情報を含む運行情報を参照可能にするための情報である。
【0028】
また、運行情報DB120上に仮想ノードとの関連付けが可能な運行情報が存在している場合でも、仮想ノードと特定の運行情報とを関連付けることで例えば、乗り換え可能な交通手段を制限するなどの特定の運行情報を参照する経路探索が可能となる。この場合には、運行情報DB120上に仮想ノードとの関連付けが可能な運行情報が存在しても前述の「運行情報DB有無」はフラグ「0」にする。
この実施形態では、運行情報DB120及び仮想ノードDB130をデータベースの形で示しているが、情報が情報処理の際に準備できる形態であればよく、他の形で蓄積してもよい。
【0029】
図3は、この実施形態にかかる経路探索条件の設定画面を例示している。この設定画面230は、PC70や携帯端末50を用いて行う設定画面の表示要求に対し、主制御部111がその要求に応じて表示させる。この設定画面230は、PC70や携帯端末50を用いて入力可能な入力領域231、232、233が設けられており、入力作業の確定や破棄を指示する234、235部を有する。
【0030】
入力領域231は、出発地の入力を受け付ける。入力領域232は、目的地の入力を受け付ける。入力領域233は、特定交通手段の識別名称の入力を受け付ける。入力の受付を契機に、主制御部111は例えば、後述する経路探索時に運行情報DB120及び仮想ノードDB130などから必要なデータを読み出すことができる。
【0031】
<経路探索>
図4は、この実施形態にかかる経路探索の主要な処理手順を示している。図4を参照しながらこの実施形態にかかる経路探索処理手順について具体的に説明する。
主制御部111は、交通機関の経路探索要求がPC70や携帯端末50からあると(ステップS101:yes)、図3に示すような設定画面230をPC70や携帯端末50に表示させる(ステップS102)。
【0032】
主制御部111は、入力領域233に特定交通手段の識別名称の入力があるか確認し(ステップS103:yes)、入力されていれば出発地及び目的地がそれぞれ入力領域231及び入力領域232に入力されているかを確認する(ステップS104:yes)。これらの経路探索条件の確定を契機に主制御部111は、特定交通手段の識別名称、出発地及び目的地として入力された情報をもとに運行情報DB120及び仮想ノードDB130などから経路探索に必要なノードを読み出す(ステップS105)。
【0033】
主制御部111は、経路探索ツール110を起動する。経路探索ツール110は、出発地から目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることで経路探索を実行する(ステップS106)。経路探索ツール110は、探索された経路の中から仮想ノードが存在する経路を最適経路候補として1又は複数特定する(ステップS107)。経路探索ツール110は、ステップS107で特定された最適経路候補を、仮想ノードが多い順に並び替えをする(ステップS108)。主制御部111は、ステップS108で並び替えが行われた最適経路候補の表示を指示する(ステップS109)。
【0034】
次に、この実施形態にかかる処理の流れを具体例をあげて説明する。
図5は、この実施形態にかかる経路探索の様子を示す模式図である。例としてこの図は鉄道路線網の一部について示しており、図中のSPは出発地の実ノードを、EPは目的地の実ノードを示している。また、n1からn15は鉄道路線駅の実ノードを示している。実線及び点線で実ノードを結び鉄道路線網として表している。
【0035】
この図では特定交通手段をA列車と仮定している。実ノード上ではn5、n3、n4、n6、n8、n9、n12、n13、n15の順でA列車は鉄道路線網上を進むこととする。A列車の利用開始できる駅又は利用終了できる駅を仮想ノードN3、N4、N5、N9、N13、N15とし、仮想ノードN3と実ノードn3、仮想ノードN4と実ノードn4、仮想ノードN5と実ノードn5、仮想ノードN9と実ノードn9、仮想ノードN13と実ノードn13仮想ノードN15と実ノードn15とがそれぞれ関連付けられ仮想ノードDBに情報が蓄積されている。わかりやすくするために、図5の中で一点鎖線の「LK」で仮想ノードと実ノードとを関連付けて示している。
【0036】
この例の経路探索では、まず出発地SPから目的地EPに向かう方向に存在する実ノードならびに関連付けられた仮想ノードを順次辿ることとなる。探索された経路の中からA列車の仮想ノード(N3、N4、N5、N9、N13、N15)が存在する経路を最適経路候補として1又は複数特定する。例えば、出発地SPからn1、n4、N4、N9、N13、n13、n14、目的地EPへと進む経路など複数存在することがわかる。これらの最適経路候補の中で仮想ノードが多い順に並び替えをすると、出発地SPからn2へと進み、n3がA列車の利用開始駅となり、更にn13がA列車の利用終了駅となり、そこからn14へと進み、目的地EPに到着する経路がその一つとなる。実線で結んだ仮想ノードN3、N4、N9、N13はこの探索結果におけるA列車の乗車区間を抜き出したものである。
【0037】
図6は、この実施形態にかかる最適探索候補の表示例である。特定交通手段の利用開始場所と利用終了場所及びその間の経路などを中央に示している。また、上部には出発地と特定交通手段の利用開始場所及びその間の経路などを示している。更に、下部には特定交通手段の利用終了場所と目的地及びその間の経路などを示している。この表示例では複数の最適経路候補の表示を「候補1」、「候補2」、「候補3」のタブによって切り替え可能としている。
【0038】
このように、この実施形態の経路探索システムによれば、いずれかの実ノードと仮想ノードとを関連付け、経路探索時に仮想ノードを含む経路候補を特定することで、ユーザは運行コストに関わらず特定交通手段を利用することを前提とした出発地から目的地までを含む最適経路候補、つまり、ユーザは出発地から特定交通手段の利用開始できる場所までの最適経路候補、特定交通手段を利用する区間及び特定交通手段の利用終了できる場所から目的地までの最適経路候補を含めて一回の探索で知ることができる。
【0039】
また、この実施形態の経路探索システムによれば、例えば、高速バスでは出発地域内(例えば東京23区内)で目的地別に乗車停留所が異なる。このような場合に利用すべき停留所が想起できなくても、ユーザは特定交通手段の識別名称と出発地を少なくとも指定することで当該高速バスの利用開始できる場所を一回の探索で知ることができる。その際に、ユーザは出発地から特定交通手段の利用開始できる場所までの最適経路候補も含めて知ることができる。
【0040】
更に、この実施形態の経路探索システムによれば、経路探索システムの運用の前後を問わず、随時、仮想ノード記憶装置に仮想ノードの追加や修正、削除などが可能となる。このことから、仮想ノードを最新の交通経路網に対応させるようなメンテナンスを効率良く行え、これによりコストを抑えた経路探索システムの運用ができる。また、例えば、予めユーザが指定できる特定交通手段を限定することで特定の交通事業者専用の経路探索システムを提供することができ、この場合でも時間やコストを抑えた開発及び提供が可能となる。
【0041】
[第2実施形態]
この実施形態は、第1実施形態においてさらに特定交通手段の利用時間帯、利用開始時刻、利用終了時刻を含めた経路探索条件の指定を可能とするものである。
例えば、第1実施形態の設定画面を「簡易設定画面」、この実施形態にかかる設定画面を「詳細設定画面」として選択可能とすることもできる。以下、この実施形態の特徴的な部分を説明する。
【0042】
図7は、この実施形態にかかる経路探索条件の設定画面を例示している。この設定画面260は、PC70や携帯端末50を用いて行う設定画面の表示要求に対し、主制御部111がその要求に応じて表示させる。この設定画面260は、PC70や携帯端末50を用いて入力可能な入力領域261、262、263、264、265、266が設けられており、これらの入力作業の確定や破棄を指示する267、268部を有する。入力領域261は、出発地の入力を受け付ける。入力領域262は、目的地の入力を受け付ける。入力領域263は、特定交通手段の識別名称の入力を受け付ける。
【0043】
入力領域264は、特定交通手段の利用時間帯の入力を受け付ける。例えば、「午前」や「午後」、「19時00分以降」などである。入力領域265は、特定交通手段の利用開始時刻の入力を受け付ける。例えば、「上野駅10時00分」などである。入力領域266は、特定交通手段の利用終了時刻の入力を受け付ける。例えば、「小山駅21時00分」などである。利用開始時刻と利用終了時刻は一方のみの入力を受け付け可能とする。これは、例えば、利用開始時刻が指定され経路探索を行えば利用終了時刻は自ずと決まるためである。主制御部111は入力を契機に例えば、後述する経路探索時において運行情報DB及び仮想ノードDBなどから必要なデータを読み出すことができる。
【0044】
<経路探索>
図8は、この実施形態にかかる経路探索の主要な処理手順を示す。図8を参照しながらこの実施形態にかかる経路探索処理手順について説明する。
主制御部111は、経路探索要求がPC70や携帯端末50からあると(ステップS201:yes)、図7に示すような設定画面260をPC70や携帯端末50に表示させる(ステップS202)。
【0045】
主制御部111は、入力領域263に特定交通手段の識別名称の入力があるか確認し(ステップS203:yes)、入力されていれば出発地及び目的地がそれぞれ入力領域261、262に入力されているかを確認する(ステップS204:yes)。主制御部111は、特定交通手段の利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻がそれぞれ入力領域264、265、266に少なくとも1つは入力されているかを確認する(ステップS205:yes)。これらの経路探索条件の確定を契機に主制御部111は、特定交通手段の識別名称、出発地及び目的地に加えて、特定交通手段の利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻を含む入力情報をもとに運行情報DB120及び仮想ノードDB130などから経路探索に必要なノードを読み出す(ステップS206)。
【0046】
主制御部111は、経路探索ツール110を起動する。経路探索ツール110は、ステップS206で読み出されたノードに関連付けられたダイヤ情報を含む運行情報を参照しながら、出発地から目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることで経路探索を実行する(ステップS207)。主制御部111は、探索閾値判定部131を起動する。探索閾値判定部131は、経路探索に際して複数のノードを辿る際に、それ以前までに要した運行コストが所定の閾値を越えていると判別した経路(ステップS208:no)については、その後の探索を終了させる(ステップS211)。
【0047】
経路探索ツール110は、探索閾値判定部131が所定の閾値を越えていないと判別した経路(ステップS208:yes)で、かつ、仮想ノードが存在する経路の中から運行コストが小さくなる順に最適経路候補を特定する(ステップS209)。主制御部111は、ステップS209で特定された最適経路候補の表示を指示する(ステップS210)。
【0048】
このように、この実施形態の経路探索システムによれば、ユーザは特定交通手段の利用時間帯などを含めた経路探索条件を指定でき、特定交通手段を利用することを前提とした出発地から目的地までを含む最適経路候補を、利用時間帯などを含めた経路探索条件によれば運行コストが小さくなる順に知ることができる。
例えば、ユーザの特定交通手段の指定が「カシオペア」(登録商標)で利用開始時刻が「上野駅16時20分」を含むものとする。この場合、ユーザは一回の探索で出発地から16時20分までに上野駅に到着可能な最適経路候補、当該カシオペアの下車駅から目的地までの最適経路候補及び、当該カシオペアの乗車区間について、利用開始時刻によれば運行コストの小さい順に知ることができることとなる。
【0049】
また、この実施形態の経路探索システムによれば、リンクポイントとなる場所が存在しさえすれば、仮想ノードを用いて以下に述べる経路探索も実現可能となる。
例えば、ユーザが出発地から目的地に至るまでに鎌倉駅から北鎌倉駅を20分かけて散策したい場合、仮想ノードにおける特定交通手段を「徒歩」とし、利用開始時刻を「鎌倉駅13時00分」とし、利用終了時刻を「北鎌倉駅13時20分」とした経路探索を行うことで、ユーザは出発地から鎌倉駅に13時00分に到着する最適経路候補及び13時20分に北鎌倉駅から目的地までの最適経路候補を一回の探索で知ることができる。
この経路探索では「鎌倉駅」と「北鎌倉駅」は共にリンクポイントである。また、特定交通手段が「徒歩」であれば、利用開始時刻と利用終了時刻は一方に制約されることがなく両方共に指定することが可能となる。
【0050】
更に、この実施形態の経路探索システムによれば、特定交通手段を「徒歩」とし、利用開始時刻を「鎌倉駅14時30分」とし、利用終了時刻を「鎌倉駅16時30分」とすることで、ユーザは出発地から鎌倉駅に14時30分に到着する最適経路候補及び鎌倉駅周辺を2時間散策した後に16時30分に鎌倉駅から目的地までの最適経路候補を一回の探索で知ることもできる。これらのことから、ユーザはレジャー時間を含む出発地から目的地までの経路探索も可能となる。
【0051】
また、更に、この実施形態の経路探索システムによれば、経路探索手段が所定の探索閾値を越える経路についてはそれ以後のノードの探索を終了し、非現実的な運行コストとなる経路を除外することができる。このことから、経路探索システムに無駄な探索負荷をかけないことで、新たなリソースの追加を抑えることができる。また、ユーザは経路探索処理の応答待ちなどのストレスが少ない快適な経路探索ができる。
【0052】
[第3実施形態]
<全体構成>
図9は、この実施形態の経路探索システム2の全体構成例を示す図であり、特徴的な部分を掲示してある。この経路探索システム2は、インターネット等のデジタルネットワークNに接続している経路探索サーバ500と仮想ノードツール600を含んで構成されている。この実施形態の構成では、すでに運用されている経路探索サーバ500に仮想ノードツール600を拡張付加して経路探索システム2として構成するものである。
以下、この実施形態の特徴部分を説明する。なお、経路探索の基本機能および探索処理手順については、第1実施形態、第2実施形態と重複するため、その説明を省略する。
【0053】
<仮想ノードツール>
仮想ノードツール600は、I/Oインターフェイス601、制御部602、探索閾値判定部603、仮想ノードDB610、仮想ノード設定部611を含んで構成されている。制御部602、探索閾値判定部603、仮想ノードDB610はI/Oインターフェイス601を介することで経路探索サーバ500とアクセス可能となる。
【0054】
I/Oインターフェイス601は、経路探索サーバ500と仮想ノードツール600を接続することで相互にデータのやり取りを可能にする。制御部602は主に、経路探索サーバ500とのデータのやり取りに関する制御を行う。
【0055】
仮想ノード設定部611は、外部の入力装置からの入力を受け、仮想ノードをいずれかの実ノードと関連付け、当該仮想ノードと関連付けた実ノードとの間の運行コストがゼロとなる経路として仮想ノードDB610に蓄積することができる。例えば、既に運用されている経路探索サーバに蓄積されているいずれかの実ノードと仮想ノードとを関連付け、この間の運行コストがゼロとなる経路とする。また、仮想ノード設定部611は、仮想ノードにリンク情報を含めて仮想ノードDB610に蓄積することもできる。
【0056】
経路探索サーバ500の経路探索機能の部分は、例えば本出願人が提供している経路探索ソフトウエア「駅すぱあと」(登録商標)のものを用いることができる。また、仮想ノードツール600を、データ通信用インターフェイスを介してインターネット等のデジタルネットワークNに接続することで経路探索サーバ500とアクセス可能にすることもできる。
【0057】
このように、この実施形態の経路探索システムによれば、仮想ノードをいずれかの実ノードと関連付け、当該仮想ノードと関連付けた実ノードとの間の運行コストがゼロとなる経路として既に運用されている経路探索システムに拡張付加できる。
このことから、特定交通手段を利用することを前提とした経路探索も含む経路探索システムを、時間やコストを抑えて提供することができる。また、拡張性にも優れ、既存のリソースなどを有効に活用することで環境への負担も少ないものとなる。
【0058】
また、この実施形態の経路探索システムによれば、仮想ノードにリンク情報を含めることで、既に運用されている経路探索システム上には存在しない交通機関であっても、当該経路探索システムを改編することなく、探索時に必要があれば特定交通手段のダイヤ情報を含む運行情報を参照できるよう拡張付加できる。このことから、時間やコストを抑えた開発及び提供が可能となる。
【0059】
これらの実施形態以外にもスタンドアロン型として本発明にかかる経路探索システムを構成することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10・・・経路探索サーバ、50・・・携帯端末、60・・・メールサーバ、70・・・PC、100・・・データ通信用インターフェイス、110・・・経路探索ツール、111・・・主制御部、120・・・運行情報DB、130・・・仮想ノードDB、131・・・探索閾値判定部、132・・・仮想ノード設定部、230・・・設定画面、260・・・設定画面、500・・・経路探索サーバ、600・・・仮想ノードツール、601・・・I/Oインターフェイス、602・・・制御部、603・・・探索閾値判定部、610・・・仮想ノードDB、611・・・仮想ノード設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの前記実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能な経路探索システムであって、
出発地、目的地、及び前記特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける探索条件受付手段と、
前記経路探索条件の受付を契機に、前記記憶装置に記憶されている前記交通手段ネットワークにおいて前記出発地から前記目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより前記出発地から前記目的地に至るまでに前記特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する経路探索手段と、を備える、
交通機関の経路探索システム。
【請求項2】
前記仮想ノードを、いずれかの前記実ノードと関連付けて前記記憶装置に蓄積する仮想ノード設定手段をさらに備える、
請求項1記載の経路探索システム。
【請求項3】
前記仮想ノード設定手段は、前記仮想ノードを、いずれかの前記実ノードと関連付け、当該仮想ノードと前記関連付けた実ノードとの間の運行コストがゼロとなる経路とする、
請求項2記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記探索条件受付手段は、前記特定交通手段の利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻を含めた経路探索条件の入力を受け付けるものであり、
前記記憶装置には、前記実ノード又は仮想ノード毎に、当該ノードにおけるダイヤ情報を含む運行情報が関連付けられており、
前記経路探索手段は、前記運行情報を参照することにより、前記利用時間帯、利用開始時刻又は利用終了時刻によれば運行コストが小さくなる順に前記最適経路候補を特定する、
請求項1、2又は3記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記経路探索手段は、所定の探索閾値を保持しており、経路探索に際して複数のノードを辿る際に、それ以前までに要した運行コストが前記探索閾値を越える経路についてはそれ以後のノードの探索を終了させる、
請求項4記載の経路探索システム。
【請求項6】
経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの前記実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能な経路探索システムが実行する方法であって、
出発地、目的地、及び前記特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける段階と、
前記経路探索条件の受付を契機に、前記記憶装置に記憶されている前記交通手段ネットワークにおいて前記出発地から前記目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより前記出発地から前記目的地に至るまでに前記特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する段階と、を有する、
交通機関の経路探索方法。
【請求項7】
経路探索用の交通手段ネットワークを構成するノードとして、鉄道路線駅のような複数の実ノードのほかに、運行コストの大小に関わらずユーザがその利用を望むことが想定される寝台列車、高速バス、船舶のような特定交通手段の利用開始又は利用終了が可能な場所を、いずれかの前記実ノードと関連付けられた仮想ノードとして蓄積した記憶装置にアクセス可能なコンピュータを経路探索システムとして動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、
出発地、目的地、及び前記特定交通手段の識別名称を含む経路探索条件の入力を受け付ける探索条件受付手段、
前記経路探索条件の受付を契機に、前記記憶装置に記憶されている前記交通手段ネットワークにおいて前記出発地から前記目的地に向かう方向に存在するノードを順次辿ることにより経路探索を行い、これにより前記出発地から前記目的地に至るまでに前記特定交通手段が存在する1又は複数の最適経路候補を特定する経路探索手段、として機能させる、
コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169874(P2011−169874A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36588(P2010−36588)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(596130185)株式会社 ヴァル研究所 (14)
【Fターム(参考)】