説明

伝動ベルト

【課題】 ベルト伝動面に短繊維を植毛して露出し、ベルト走行時の騒音を軽減し、そして耐久性を向上させた伝動ベルトを提供する。
【解決手段】 ベルト長手方向に沿って心線3を埋設したゴム層3と、該ゴム層3に隣接してベルト長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部6を有する伝動ベルト1であり、ゴムを波形状に流動させた内層と、短繊維を前記型付部6に多層に植毛した表面層を有し、前記型付部の表面が平坦面に形成され、しかも前記表面層が短繊維をゴム層に埋設した第1植毛層26aと、前記第1植毛層26aの表面に短繊維を固着させた第2植毛層26bとを有する多層植毛層9になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルトに係り、詳しくは走行初期から静音性が高く、その効果を長期間維持することが可能であり、しかも優れた耐摩耗性を兼ね備えた伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、ベルト長手方向に延びるリブ部を備え、かつ短繊維を幅方向に配向した圧縮ゴム層とを積層してなる伝動ベルトが知られている。この伝動ベルトの製造方法では、一般にベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、接着ゴム層に隣接したフラットな圧縮ゴム層とを積層してなるスリーブを加硫缶に装着し、リブ部のない状態のフラットなスリーブを加硫成形し、この圧縮ゴム層を研磨ホイールでリブ部を削りだし、必要なリブ部の数に合わせて輪切りにしていた。しかしながら、スリーブの圧縮ゴム層を研削してリブ部を形成するために、相当な量の材料ロスが発生していた。
【0003】
これを改善する方法として、特許文献1には静電植毛によって動力伝動側及び被伝達面の少なくとも一方の伝達部接触表面に立毛を設け、走行時の騒音を軽減した動力伝動用部材が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、リブ部を形成する未加硫ゴムシートに植毛層を設け、リブ部を刻印した外型に押付けてベルト成形体を成形していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−14361号公報
【特許文献2】特開2004−
【特許文献3】特開2004−249704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リブ部を有する伝動ベルトの製造方法では、静電植毛によって直接リブ部の表面に付着させると、V形状のリブ溝の入口付近では充分な植毛が出来ても、リブ溝に奥深い個所では植毛しにくいといった問題があり、新たな製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
また、空気を抜き取り用の貫通孔を設けた外型を使用した場合には、リブ部の表面に1〜2mm程度の突出したバリが発生し、このようなバリ付きのベルトを走行させると、バリ付近から亀裂が入ることで、ベルト寿命が短くなっていた。また、貫通孔を設けない場合には、空気が内在してリブ表面に窪みが形成し、これも亀裂の発生原因になっていた。
【0008】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、ベルト伝動面に短繊維を植毛して露出し、ベルト走行時の騒音を軽減し、そして耐久性を向上させた伝動ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルト長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する伝動ベルトにおいて、ゴムを波形状に流動させた内層と、短繊維を前記型付部に多層に植毛した表面層を有し、前記型付部の表面が平坦面に形成され、しかも前記表面層が短繊維をゴム層に埋設した第1植毛層と、前記第1植毛層の表面に短繊維を固着させた第2植毛層とを有する多層植毛層になっている伝動ベルトにあり、型付部の表面には窪み部や突起部が存在しないために、ベルト走行に亀裂の発生が少なく、ベルト耐久性が向上する。しかも走行初期から静音性が高く、かつその効果を長期間維持することが可能であり、優れた耐摩耗性を兼ね備えている。
【0010】
本願請求項2記載の発明は、前記第2植毛層を構成する短繊維は、前記第1植毛層を構成する短繊維よりも繊維径及び繊維長の少なくとも一方が小さい伝動ベルトにあり、前記第1植毛層を構成する短繊維を積極的にゴム層に埋設させるようにして、たとえ第2植毛層を構成する短繊維が型付部の表面から離脱しても型付部の表面の耐摩耗性やベルト走行時の静音性を維持でき、更に前記第2植毛層を構成する短繊維がゴム層に埋設され難くて表面に固着され易くなり、ベルトの走行初期にその効果である静音性を充分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によると、前記型付部の表面には窪み部や突起部が存在しないために、ベルト走行に亀裂の発生が少なく、ベルト耐久性が向上し、しかも摩擦伝動面が多層植毛層になっているために走行初期から静音性が高く、その効果を長期間維持することが可能であり、優れた耐摩耗性を兼ね備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ゴムスリーブの表面に多層植毛層を設けた状態を示す図である。
【図2】図1における多層植毛層の拡大図を示す。
【図3】予備成型体を成形している状態の縦断図である。
【図4】予備成型体を作製した後状態の断面図である。
【図5】スリーブを作製する前状態の断面図である。
【図6】スリーブを加硫している状態の断面図である。
【図7】スリーブを加硫した後状態の断面図である。
【図8】本発明の製造方法で得られたVリブドベルトの断面図である。
【図9】本発明の製造方法で得られた他のVリブドベルトの断面図である。
【図10】本発明の製造方法で得られた更に他のVリブドベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
本発明では、圧縮ゴム層を形成する短繊維を幅方向に配向させたゴムシートを作製するが、その製造方法として押出方法やカレンダーによる圧延方法がある。無論、短繊維を含有させないゴムシートも使用することができる。
【0014】
以下では、その一例として、繊維を幅方向に配向させたゴムシートを押出方法で作製する場合には、予めオープンロールによってポリマー100質量部に10〜40質量部の短繊維を投入して混練した後、混練したマスターバッチをいったん放出し、これを20〜50°Cまで冷却してゴムのスコーチを防止する。
【0015】
1〜10質量部の軟化剤を投入すると、短繊維とゴムのなじみが良くなり、ゴム中への分散が良くなるばかりか、短繊維自体が絡み合って綿状になるのを防ぐ効果がある。即ち、軟化剤が短繊維に浸透し、素繊維同士の絡み合いがほぐれるための潤滑剤としての役割をはたし、短繊維が綿状になるのを阻止し、かつ短繊維とゴムのなじみが良くなって短繊維の分散が良くなる
【0016】
続いて、マスターバッチを押出機におけるシリンダーの押出スクリューで通常40〜100℃に温度調節された状態で混練りした後、短繊維混入ゴムをスムーズに環境拡張ダイからなるゴム通路へ流し、そしてゴム通路の中を通過させながら短繊維を円周方向に配向させた筒状成形体に押出成形する。その後、筒状成形体は短繊維が内層から外層にかけて円周方向に均一に配向した厚さ1〜10mmのものであり、切断手段によって1個所切開しながら一枚のゴムシートにし、続いて該ゴムシートを所定間隔で切断する。
【0017】
ここで使用するゴムシートの原料ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)からなるエチレン−α−オレフィンエラストマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが挙げることができる。
【0018】
上記ゴムシートには、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが、1〜10mm程度の短繊維が用いられ、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。その添加量はゴム100質量部に対して10〜40質量部である。しかし、上記短繊維を必ず混入する必要はない。
【0019】
更に、上記ゴムシートには、軟化剤、カーボンブラックからなる補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が添加される。
【0020】
上記軟化剤としては、一般的なゴム用の可塑剤、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタレート系、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジペート系、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバケート系、トリクレジルホスフェート等のホスフェートなど、あるいは一般的な石油系の軟化剤が含まれる。
【0021】
続いて、内型41に装着された加硫ゴム製の可撓性ジャケット42の外周面に、離型紙あるいは樹脂フィルム、例えばポリテロラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートからなる離型シート(図示せず)を巻き付けた後、短繊維を配向させたゴムシートからなるゴム材22を巻き付けて、ラップまたは突合せジョイントして未加硫のゴムスリーブ24を作製する。
【0022】
次いで、ゴム材22の表面に接着剤をスプレー法にて0.04mm以下の厚みに塗布するもので、特に厚みのある接着層を設ける必要はない。後述するように、接着層を設けた場合には、第1植毛層がゴム層(ゴム材22)に埋設しなくなり、容易に剥離しやすくなる。接着剤としては、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン等がある。
【0023】
そして、図1と図2に示すように公知の静電植毛機を用いて、ゴム材22の表面に第1植毛層26aと第2植毛層26bからなる多層植毛層26を設けるように静電植毛を行う。具体的な植毛処理としては、内型41をアースとし、静電植毛機の電極に電圧を印加することにより電界を形成し、この電界内にレーヨン、綿、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン等などからなる表面を電着処理したパイルを供給し、飛翔させてゴム材22に突き刺すことにより第1植毛層26aを形成した後、霧状の接着剤をスプレーで塗布し、そして第2植毛層26bを形成して多層植毛層26を設け、植毛後のゴムスリーブ24を自然乾燥する。特に乾燥工程を設ける必要はない。
【0024】
尚、第1植毛層26aを形成するために、1回ないし数回の植毛を行って所定の厚みに仕上げることができる。第2植毛層26bも同じである。
【0025】
ゴムスリーブ24の表面に付着させた多層植毛層26の目付け量は、10〜40g/mの範囲が通気性を維持するうえで適切であり、10g/m未満になると、短繊維が少なくなって短時間にベルト表面から脱落し、発音対策の効果が軽減されるという問題が発生し、一方40g/mを越えると、短繊維の量が多くなって通気性が損なわれ、成形後の空気が内在しやすくなる。
また、加硫前の多層植毛層26の厚さは1.0〜1.5mmであり、加硫後(成形後)の厚さは0.05〜0.5mmになることが適切である。
【0026】
上記第1植毛層26aは、加硫後では短繊維の大部分又は全部がゴム層に埋設されてなる層である。また第2植毛層26bは、第1植毛層26aの表面に短繊維が固着されてなる層であるが、短繊維の一部がゴム層に埋設されて固着されていてもよい。尚、第1植毛層26aと第2植毛層26bの界面は完全に明確ではなく、各植毛層を構成する短繊維が他方植毛層に一部存在することもあるが、その大部分が各層に存在すればよい。
【0027】
第1植毛層26aを構成する短繊維としては、比較的繊維径が太く、繊維長が長い短繊維が好ましく用いられ、具体的には繊維径が15〜36μm、繊維長が0.8〜2.0mmの短繊維を用いることができる。これによって、ゴム層に埋設され易くなり、第2植毛層26bは摩耗後も長期間に渡りその効果を奏することができる。また第2植毛層26bを構成する短繊維としては、第1植毛層26aを構成する短繊維よりも繊維径及び繊維長のいずれか一方が小さい短繊維、即ち、比較的繊維径が細く、繊維長が短い短繊維が好ましく用いられ、具体的には繊維径が5〜20μm、繊維長が0.2〜1.0mmの短繊維を用いることができる。これによって、ゴム層に埋設され難く、表面に固着され易くなり、走行初期にその効果を充分に発揮することができる。尚、第2植毛層26bを構成する短繊維として、第1植毛層26aを構成する短繊維より繊維径及び繊維長の両方が小さい短繊維を用いると前記効果がより高くなる。
しかし、第1植毛層26aと第2植毛層26bで使用する短繊維は、材質、径、長さがいずれも同じであってもよい。
【0028】
各短繊維を構成する素材としては、6ナイロン,66ナイロンなどのポリアミド短繊維、レーヨン短繊維、p−アラミド,m−アラミドなどのアラミド短繊維、綿短繊維、そしてポリエチレン短繊維などを挙げることができる。なかでも耐発音性効果が高いポリアミド短繊維を含有させることが望ましい。また走行初期、経時走行後に要求される特性の違いに応じて、各植毛層を構成する短繊維を変種することもできる。
【0029】
次いで、図3に示すように、上記多層植毛層26付きゴムスリーブ24を装着した内型41を、外型46の内側に一定の空隙を設けて基台上に載置する。内型41は別の成形工程より移動してくる関係上、媒体流通口Aと媒体送入排出路Bとは分離しており、内型41を基台に載置後、媒体流通口AをジョイントJでパイプと連結する。
【0030】
媒体送入機を作動して高圧空気もしくは高圧蒸気を媒体送入排出路B、媒体流通口Aを経て、可撓性ジャケット42の内部に送入する。可撓性ジャケット42は、その上下部が内型41上に密閉固定されているため、可撓性ジャケット42の内面と内型41の外面の間に空気が充満し、可撓性ジャケット42は次第に膨張する。そして、その外周面に装着されている植毛したゴムスリーブ24を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜160℃に加熱した外型46のリブ型45と30〜120秒間接触せしめる。
【0031】
このとき、可撓性ジャケット42の膨張押圧力により、上記植毛したゴムスリーブ24が外型46のリブ型45に押圧され、図4のような表面に複数のV型突起の型付部27を有する未加硫の予備成型体21を形成するに至る。
【0032】
その後は、バルブを真空ポンプの方へ切替えて、可撓性ジャケット42内に充満している空気を排気し、次いで吸引作用で可撓性ジャケット42を元の位置に収縮復帰せしめる。
【0033】
そして、内型41を外型46から抜き取り、内型41の可撓性ジャケット42の外周面に補強布47、接着ゴム49、およびコードからなる心線48を順次に捲き付けて別のスリーブ25を形成する。その後、図5に示すようにこの内型41を外型46内へ再設置した後、図6に示すように可撓性ジャケット42を膨張させ、別のスリーブ25を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜180℃に加熱した外型46のリブ型あるいはコグ型からなる型部45に装着した予備成型体21に密着して一体的に加硫し、加硫ベルトスリーブ51を作製する。このとき、外型46と多層植毛層26との間に内在する空気が上記多層植毛層26を通路にして排出されることにより、リブ部の表面は窪み部や突起部の存在しない平坦面に成形される。
【0034】
そして、加硫後では、多層植毛層26の第1植毛層26aは、短繊維の大部分又は全部がゴム層(ゴム材22)に埋設された層になる。また第2植毛層26bは、第1植毛層26aの表面に短繊維が固着された層であるが、短繊維の一部がゴム層に埋設されて固着されていてもよい。尚、第1植毛層26aと第2植毛層26bの界面は完全に明確ではなく、各植毛層を構成する短繊維が他方植毛層に一部存在することもあるが、その大部分が各層に存在すればよい。
【0035】
上記製造方法のように未加硫の予備成型体21を成型することにより、成形時に可撓性ジャケット42の膨張による別のスリーブ25の伸張量を抑え、また心線48を平坦に配置することができ、寸法安定性に優れたVリブドベルトを作製することができる。
【0036】
加硫後は、図7に示すように可撓性ジャケット42を収縮させ、内型41を外型46から脱型した後、外型46に装着した加硫ベルトスリーブ51を抜き取る。加硫ベルトスリーブ51の型付部27の表面では、多層植毛層26の第2植毛層26bがゴム層(ゴム材22)に埋設された第1植毛層26aに固着して種々の角度で起毛し、露出した状態になっている。
【0037】
更に、上記加硫ベルトスリーブ51を他の1軸もしくは2軸ドラムに挿入して回転させながら、円周方向に所定幅に切断し、ドラムより取出し反転することにより、周長が一定で、V形リブが正確に型付形成されたVリブドベルト1を得た。尚、外型46を分割式モールドにした場合、未加硫スリーブの挿入ならびに加硫スリーブの取り外しが容易になり、かつこの分割面が一種の空気抜きの機能を果し、V型リブをより一層正確に形成することができる。
【0038】
尚、本発明では、上記実施形態を以下のように変更して実施することができる。
【0039】
(1)上記のように未加硫の予備成型体と別のスリーブとを積層一体化するする必要はなく、内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付け、その上に表面層に多層植毛層を設けた未加硫のゴムスリーブを積層してベルト成形体に仕上げ、上記内型を、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に配置して、上記可撓性ジャケットを膨張させて上記ベルト成形体を外型の刻印した型部に密着して加硫したベルトスリーブを作製することもできる。
【0040】
(2)上述のとおり、圧縮ゴム層を形成するゴムシートに短繊維を含有させる必要はない。
【0041】
(3)ゴムスリーブ24の表面に霧状の接着剤を塗布せずに直接多層植毛層を設けることもできる。
【0042】
(4)また、ゴムシートの表面に多層植毛層を付着した植毛層付きゴムシートを作製し、該ゴムシートからゴムスリーブにすることができる。
【0043】
図8は得られたVリブドベルトの断面図である。Vリブドベルト1は、短繊維をランダム配向させたゴム層からなる伸張部5と、撚糸コードよりなる心線3を埋設した接着部2、その下側に圧縮部6を配置した構成からなる。前記心線3は、その一部が伸張部5に接し、残部が接着部2に接した状態となっている。そして圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有しており、該リブが摩擦伝動部、そしてリブ表面が摩擦伝動面となり、該摩擦伝動面に多層植毛層9を配設した構成となっている。
【0044】
本発明においては、多層植毛層9は、短繊維がゴム層に埋設した第1植毛層9aと、第1植毛層より表層に短繊維が固着された第2植毛層9bとを有する。この構成によって、走行初期には第2植毛層9bの短繊維が摩擦伝動面(リブ表面)に露出し、摩擦特性並びに耐発音特性などの諸効果を奏することができる。そして走行が進み、徐々に第2植毛層9bが摩耗するにつれ、第1植毛層9aの短繊維がリブ表面に露出して前記諸効果を奏することができるものである。
【0045】
更に詳細に各層の説明をする。第1植毛層9aは、短繊維の大部分又は全部がゴム層に埋設されてなる層である。また第2植毛層9bは、第1植毛層9aの表面に短繊維が固着されてなる層であるが、短繊維の一部がゴム層に埋設されて固着されていてもよい。尚、第1植毛層9aと第2植毛層9bの界面は完全に明確ではなく、各植毛層を構成する短繊維が他方植毛層に一部存在することもあるが、その大部分が各層に存在すればよいものである。
【0046】
多層植毛層9における短繊維の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、具体的には10,000〜500,000本/cmが望ましいが、限定されるものではない。また多層植毛層9は、0.05〜0.5mmの厚みとすることが好ましい。0.05mm未満では摩耗により植毛層の効果が薄れてしまうといった不具合がある。一方、0.5mmを超えると圧縮部表面の伸縮性が損なわれる為、耐屈曲疲労性に乏しくなる恐れがある。
【0047】
尚、多層植毛層9には短繊維以外に固体潤滑剤などを固着させこともできる。固体潤滑材としては、グラファイト、二硫化モリブデン、雲母、タルク、三酸化アンチモン、2セレン化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを単独もしくは併用して用いることができる。これら短繊維や固体潤滑剤は接着剤を介して摩擦伝動面に固着されている。
【0048】
そして、上記植物性軟質粒以外に必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤、短繊維のような通常のゴム配合物に使用されるものを用いることができる。
【0049】
接着部2は、圧縮部6と同様のゴム組成物を用いることもできるが、別のゴム組成物で構成してもよい。上述の如き原料ゴム、配合剤を用いることができるが、接着性を考慮すると短繊維は混入しないほうが好ましい。
【0050】
心線3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、またはアラミド繊維などから構成される撚糸コードが使用できる。
【0051】
前記心線3は接着処理を施された撚糸コードを用いることが望ましく、例えば(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200°Cに温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260°Cに温度設定した延伸熱固定処理器に30〜600秒間通し−1〜3%延伸して延伸処理コードとする、ことができる。
【0052】
伸張部5は、圧縮部6と同様のゴム組成物を用いることもできるが別のゴム組成物で構成してもよい。ここで伸張部5は、短繊維を含有するゴム組成物で形成されているが、背面駆動時の異音を抑制すべく、背表面に凹凸パターンを設けることもできる。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどを挙げることができるが、最も好ましくは織物パターンである。また短繊維としては、ポリエステル、アラミド、ポリアミド、綿、PBOなどの短繊維を所望に応じて配合することができる。図8において短繊維はランダム方向に配向しているが、ベルト幅方向に配向させるなど一方向に配向していてもかまわない。尚、ランダム方向に配向させた場合、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できるといった特徴があるが、このとき短繊維として屈曲部を有する短繊維(例えばミルドファイバー)を選択すると、より多方向から作用する力に対して耐性ができるといった特徴がある。ミルドファイバーは、例えばポリアミド製のものを用いることができ、繊維長が0.1〜3.0mmの範囲であることが望ましい。また、伸張部における短繊維の配合量は、ゴム100重量部に対して短繊維が35〜100の範囲の割合となるように、短繊維が含有されていることが望ましい。
【0053】
尚、Vリブドベルトは、図8のような構成に限定されず、例えば接着部を配置しないVリブドベルトや、背面に帆布を貼着させたVリブドベルトなども本発明の技術範囲に属する。以下、これらの実施形態につき図面をもとに説明する。
【0054】
図9に示すVリブドベルト1は、背面に植毛層8を設けたゴム組成物で形成された伸張部5と、該伸張部5の下層に圧縮部6を配置した構成を有する。心線3は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張部5に接し、残部が圧縮部6に接した状態となっている。そして前記圧縮部6はベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられている。ここで、圧縮部6に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈し、表面近傍の短繊維はリブ形状に沿って配向している。そしてリブ表面に第1植毛層9a、第2植毛層9bを有する多層植毛層9を配設した構成となっている。
【0055】
図9のように接着部を配置しない構成の場合、心線3は伸張部5と圧縮部6の境界領域でベルト本体に埋設されることになる。この時、心線3とベルト本体との接着性を考慮すると、伸張部5及び圧縮部6のどちらか一方のゴム層は、短繊維を含有しないゴム組成物で構成することが望ましい。
【0056】
また図9では、伸張部5を、短繊維を含有しないゴム組成物表面に植毛層8を設けた構成としているが、短繊維を含有するゴム組成物表面に植毛層を設けた構成とすることも可能である。
【0057】
更に図9では、圧縮部26に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているが、限定されるものではなく、例えば短繊維が幅方向に配向した構成としてもかまわない。
【0058】
図10に示すVリブドベルト1は、帆布4を貼着して構成された伸張部5と、該伸張部5の下層に接着部2が配設され、更にその下層に圧縮部6を配置した構成を有する。心線3は、ベルト長手方向に沿って接着部2に埋設されてなる。そして、前記圧縮部6にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられている。そしてリブ表面に第1植毛層9a、第2植毛層9bを有する多層植毛層9を配設した構成となっている。
【0059】
図10の伸張部を構成する帆布4は、織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織、綾織、朱子織等することにより製織される。
【0060】
上記帆布4は、公知技術に従ってRFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムを帆布に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0重量%加えてもよい。
【0061】
また、上述した型装置を用いた伝動ベルトの製造方法により、ローエッジコグベルトも成形することができる。このベルトは、接着部内にベルト長手方向に沿ってスパイラル状に埋設した心線と、該心線の上側(ベルト外周側)に積層した伸張部と、前記心線の下側(ベルト内周側)に積層した圧縮部からなり、圧縮部は所定間隔で設けた凹部と凸部とを交互に有するコグ部を有している。また伸張部の背面及び圧縮部のコグ部表面には補強布を設けている。
【0062】
このベルトを成形する場合には、外型46は本体内周方向に沿って所定間隔で外型46の長手方向の延びるコグ型に相当する型部45を設けたものを使用することができる。その他の型装置の構造は変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の伝動ベルトは、ベルト走行時の騒音を軽減し、そしてベルトの伸びを小さくしたVリブドベルト、ローエッジVベルト等の伝動ベルトに適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 Vリブドベルト
2 接着部
3 心線
5 伸張部
6 圧縮層(型付部)
9 多層植毛層
9a 第1植毛層
9b 第2植毛層
21 予備成型体
22 ゴム材
24 ゴムスリーブ
25 別のスリーブ
26 多層植毛層
26a 第1植毛層
26b 第2植毛層
27 型付部
41 内型
42 可撓性ジャケット
45 型部
46 外型
51 加硫ベルトスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルト長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する伝動ベルトにおいて、ゴムを波形状に流動させた内層と、短繊維を前記型付部に多層に植毛した表面層を有し、前記型付部の表面が平坦面に形成され、しかも前記表面層が短繊維をゴム層に埋設した第1植毛層と、前記第1植毛層の表面に短繊維を固着させた第2植毛層とを有する多層植毛層になっていることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
前記第2植毛層を構成する短繊維は、前記第1植毛層を構成する短繊維よりも繊維径及び繊維長の少なくとも一方が小さい請求項1記載の伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255560(P2012−255560A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202148(P2012−202148)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2007−129931(P2007−129931)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】