説明

伸縮性織物

【課題】パワー感が良好で、かつ衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れる伸縮性織物を提供する。
【解決手段】ポリウレタン繊維からなる芯糸および熱可塑性エラストマーからなる芯部と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる鞘部とからなる芯鞘型複合繊維(a)によって構成されるカバーリング糸(A)を、経方向および/または緯方向の少なくとも一部に使用した織物であって、織物の経方向および/または緯方向の最大伸度が150%以上であり、150%伸長後の回復率が80%以上であり、かつ100%伸長時における応力が15〜50N/2.54cmである伸縮性織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性織物に関し、特に、パワー感が良好で、かつ衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長後の回復率(伸長回復率)にも優れる伸縮性の高い織物(以下、伸縮性織物とする)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特にスポーツ用途において伸縮性織物が、伸縮性の高い編物に替わって使用されてきている。織物は編物に比べ素材を軽量化できることが一つの利点である。しかし、従来の伸縮性織物をスポーツ衣料およびインナー衣料用途、特に体に密着して着用するような競技用ウェアや運動能力を向上させるコンプレッションウェアに使用した場合、機能性として筋肉の振動を抑制するために必要とされるパワー感(本発明において、パワー感とは生地による締め付け感をいい、生地の伸長時の応力で確認することができ、伸長時の応力が大きいほどパワー感が良いことを示す)は十分に有するものの伸度が十分ではないものがあり、衣料とした場合に着脱が容易でなく、また、着脱時に破損したりするなどの不具合があった。逆に、高い伸度は有するがパワー感が不十分となるものがあり、織物をスポーツ衣料およびインナー衣料分野に商品展開するには限度があった。
【0003】
伸縮性織物に関しては、例えば特許文献1には、ポリウレタンを芯部に持つ芯鞘型複合繊維を使用する方法が開示されている。しかしこの方法に用いる芯鞘型複合繊維は良好な捲縮性は有するものの、糸自体で大きな伸縮性を得にくいため、この糸を単独で経糸および/または緯糸に使用した場合、経方向、緯方向ともに伸縮性が不十分であり、このため特に体に密着させるような衣料とした場合、着脱が容易でないという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、仮撚り加工糸からなる織物に高融点ワックス配合の収束平滑剤を付与することにより織物の伸縮性を向上させる方法が開示されている。この方法で得られる伸縮性織物は、軽量ではあるが、伸度は十分ではなく、さらには製織時の糸密度が低い上に、仕上げ加工時に高融点ワックスを付与するために、経糸や緯糸同士の間隔が部分的に広くなったり、逆に狭くなったりするという欠点(目ずれ)をもつという問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、ポリウレタン弾性糸を芯糸としたカバーリング糸からなる伸縮性を有する織物が開示されているが、この織物は伸度が70%未満であり、十分な伸度と応力をもつ織物ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−89873号公報
【特許文献2】特開2003−82559号公報
【特許文献3】特開平09−132839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、パワー感が良好で、かつ衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れる伸縮性織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1に、ポリウレタン繊維を芯糸として用い、熱可塑性エラストマーからなる芯部と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる鞘部とからなる芯鞘型複合繊維(a)を鞘糸として用いてなるカバーリング糸(A)を、経方向および/または緯方向の少なくとも一部に使用した織物であって、織物の経方向および/または緯方向の最大伸度が150%以上であり、150%伸長後の回復率が80%以上であり、かつ100%伸長時における応力が15〜50N/2.54cmであることを特徴とする伸縮性織物である。
本発明は、第2に、前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における芯部と鞘部の横断面積比率が20/1〜5/1であることを特徴とする上記1に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第3に、前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における熱水処理後の伸度が300〜500%であることを特徴とする上記1または2に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第4に、前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における熱水処理後の100%伸長回復率が75%以上であることを特徴とする上記1〜3のいずれか1に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第5に、前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における芯部の熱可塑性エラストマーがポリウレタン系エラストマーからなり、鞘部の繊維形成性熱可塑性ポリマーがポリアミドからなること特徴とする上記1〜4のいずれか1に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第6に、芯糸が30〜110dtexの繊度のポリウレタン繊維からなり、鞘糸が10〜60dtexの繊度の合成繊維からなるカバーリング糸(B)を、前記カバーリング糸(A)と組み合わせて用いることを特徴とする上記1〜5のいずれか1に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第7に、カバーファクターが2500〜6000であることを特徴とする上記1〜6のいずれか1に記載の伸縮性織物である。
本発明は、第8に、上記1〜7のいずれか1に記載の伸縮性織物からなることを特徴とする、スポーツ用またはインナー用の衣料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パワー感が良好で、かつ衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れる伸縮性織物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
最初に本発明の伸縮性織物を構成する糸条について説明し、次に本発明の伸縮性織物の構成およびその特性について説明する。
【0011】
1.織物を構成する糸条
1−1.カバーリング糸(A)
1−1−1.カバーリング糸(A)の構成と製造方法
本発明に使用するカバーリング糸(A)は、ポリウレタン繊維からなる芯糸に、後述する芯鞘型複合繊維(a)を組み合わせる(カバーリングする)ことで得られる糸条である。本発明の伸縮性織物は芯鞘型複合繊維(a)を鞘糸としたカバーリング糸(A)を用いることにより、高いパワー感を有し、かつ衣料とした場合に着脱が容易となる150%以上の最大伸度を有し、さらに150%伸長後の回復率が80%以上となるという特徴的な伸縮性を得ることができる。
【0012】
カバーリング糸(A)の、芯糸と鞘糸とを組み合わせる方法は特に限定されず適宜公知の方法を用いることができ、例えば、カバーリング、エアカバーなどの方法を用いることができる。芯糸ドラフト率(鞘糸を巻きつける際の芯糸の伸び率)は、商品の使用目的などに応じて適宜の値を設定できる。一般的には2.0〜4.0の芯糸ドラフト率が用いられる。撚糸回数も、商品の使用目的に応じて適宜の撚糸回数を設定、一般的には500〜2000t/mの撚糸回数が用いられる。
【0013】
カバーリングの好ましい加工条件は、下記の通りである。
芯糸ドラフト率 2.0〜4.0
撚糸回数 500〜1600t/m
【0014】
エアカバーの好ましい加工条件は、下記の通りである。
芯糸ドラフト率 2.0〜4.0
エア 圧 3〜8kg
撚糸回数 600〜2000t/m
【0015】
1−1−2.カバーリング糸(A)の芯糸
カバーリング糸(A)の芯糸に使用する繊維は染色加工時に十分収縮することのできるポリウレタン繊維であり、その具体例としては、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどが挙げられる。ポリウレタン繊維は良好な伸縮特性を有しているため、伸縮性を求める場合に広く使用されている。芯糸の形態はフィラメント糸であり、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよい。芯糸の繊度は30〜110dtexであることが好ましく、特に40〜80dtexであることが好ましい。30dtexより小さいと、織物とした場合に十分なパワー感を得ることが難しく、110dtexより大きいと、織物とした場合に十分なパワー感は得られるが、生地が厚くなり、これを衣料とした場合に着用感の悪いものとなるおそれがある。
【0016】
1−1−3.カバーリング糸(A)の鞘糸(芯鞘型複合繊維(a))
カバーリング糸(A)の鞘糸に使用する繊維は、芯部と鞘部とからなる芯鞘型複合繊維(a)である。
【0017】
芯鞘型複合繊維(a)は、熱可塑性エラストマーからなる芯部と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる鞘部で構成される。芯鞘型複合繊維(a)の芯部を形成する熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。このうちポリウレタン系エラストマーは溶融安定性、紡糸性、伸長回復率に優れる点で特に好ましい。ポリウレタン系エラストマーの具体例としては、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーには、酸化チタン、染顔料、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの公知のポリマー改質剤や相溶化剤などを添加してもよい。また、芯部にポリウレタン系エラストマーを用いる場合には、耐熱性、更なる回復性の向上のために、ポリイソシアネート系化合物を併用してもよい。
一方、芯鞘型複合繊維(a)の鞘部を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーの具体例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテンなどの繊維形成に用いられている一般的な熱可塑性ポリマー(プラストマーとも称する)が挙げられる。溶融安定性、紡糸性、伸長回復率に優れることから、芯部にポリウレタン系エラストマーを使用し、鞘部にポリアミドを使用することが特に好ましい。ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612などが挙げられる。またこれらのポリアミド成分とアミド形成性官能基を有する化合物、例えばラウロラクタム、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの共重合成分からなる共重合ポリアミドもポリアミドの具体例として挙げることができる。このうち汎用性や染色加工性の面から特に好ましいのはナイロン6およびナイロン66である。
上記鞘部の繊維形成性熱可塑性ポリマーにも、例えばチタンなどの艶消剤、酸化防止剤、導電剤、抗菌剤、染顔料などの公知のポリマー改質剤や相溶化剤などを添加してもよい。
【0018】
芯鞘型複合繊維(a)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の溶融複合紡糸機を用いる方法を採用することができる。その一例を下記する。
【0019】
まず、それぞれのポリマーを芯部成形用および鞘部成形用の押出機に投入する。芯部の熱可塑性エラストマー用の押出機設定温度は200〜290℃に設定することが好ましい。また、鞘部の繊維形成性熱可塑性ポリマー用の押出機温度は200〜290℃に設定することが好ましい。押出機にてそれぞれのポリマーを溶融・混練して、熱可塑性エラストマーが芯部に、繊維形成性熱可塑性ポリマーが鞘部となるように紡糸ヘッドに導入し、芯鞘複合ノズルから溶融紡出する。紡出された芯鞘型複合繊維を冷却固化し、冷却固化後に給油付与装置を用いて紡糸油剤を付与する。次いで、芯鞘型複合繊維を捲取機により捲き取ることにより、芯鞘複合の未延伸糸を得ることができる。捲取速度は、400〜2000m/minが好ましい。更に得られた未延伸糸を延撚機で延伸処理を実施することにより、目的とする芯鞘型複合繊維(a)を得ることができる。延撚条件は、例えば、延伸倍率2.5〜5.0倍、延伸速度300〜1000m/min、セット温度25〜160℃に設定する。
【0020】
芯部にポリウレタン系エラストマーを用い、鞘部にポリアミドを用いる場合の製造方法の具体例を下記する。
まず、それぞれのポリマーを芯部成形用および鞘部成形用の押出機に投入する。芯部のポリウレタン系エラストマー用の押出機設定温度は215〜235℃に設定することが好ましい。また、鞘部のポリアミド用の押出機温度は230〜260℃に設定することが好ましい。押出機にてそれぞれのポリマーを溶融・混練して、ポリウレタン系エラストマーが芯部に、ポリアミドが鞘部となるように紡糸ヘッドに導入し、芯鞘複合ノズルから溶融紡出する。紡出された芯鞘型複合繊維を冷却固化し、冷却固化後に給油付与装置を用いて紡糸油剤を付与する。次いで、芯鞘型複合繊維は捲取機により捲き取ることにより芯鞘複合の未延伸糸を得ることができる。捲取速度は、400〜2000m/minが好ましい。更に得られた未延伸糸を上記のようにして延撚機で延伸処理を実施することにより、目的とする芯鞘型複合繊維(a)を得ることができる。
【0021】
芯鞘型複合繊維(a)の芯部は鞘部中に同心的に配置されていてもよく、偏心的に配置されていてもよい。ただし、同心的に芯部を配置する場合には、偏心的配置の場合にみられるような熱処理後に発現する潜在捲縮性がなく、直線的な伸縮性を示すことから、伸長回復率に優れている点で、同心的配置がより好ましい。
【0022】
芯鞘型複合繊維(a)の芯部と鞘部との横断面積比率(以下、芯鞘比率という)は20/1〜5/1であることが好ましく、耐熱性、糸強度の面から15/1〜10/1であることが特に好ましい。
20/1より芯部の比率が大きくなると伸縮特性は良好となるものの、繊維形成性熱可塑性ポリマーが少ないため、織物とした場合の、染色における濃色化や仕上げ加工における耐熱性の面で不具合が生じるおそれがある。5/1より芯部の比率が小さくなると、芯部の熱可塑性エラストマーが持つ伸縮特性が十分に発揮されず、織物とした場合にも目的とする伸縮性が得られず、特に伸長回復率が悪くなるおそれがある。
【0023】
熱可塑性エラストマーと繊維形成性熱可塑性ポリマーとの組み合わせによる芯鞘型複合繊維(a)は、熱処理(乾熱または湿熱処理)により、芯部の熱可塑性エラストマーが収縮して、伸縮特性を発揮する。この伸縮特性は、一般的なポリウレタン単独糸と比較すると伸縮性や伸長回復率は劣るものの、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートなどで構成される捲縮加工糸と比較すると、同等以上の伸縮特性を発揮する。また、織物とした場合に、糸の伸長時において鞘部の繊維形成性熱可塑性ポリマーが、芯部の熱可塑性エラストマーの伸びを抑制し、これが伸長時応力を増大させることになり、このことにより、高い伸縮性を有しながら大きな応力を示すこととなり、パワー感を発揮することになる。
例えば、芯部にポリウレタン系エラストマーを用い、鞘部にポリアミドを用いた場合、同心的配置の芯鞘型複合繊維(a)は、熱処理(乾熱または湿熱処理)により、芯部のポリウレタン系エラストマーが収縮して、伸縮性を発揮する。このとき、鞘部のポリアミドの収縮率はポリウレタン系エラストマーの収縮率に比べて低いため、収縮率の差から強制的に収縮されることになる。そのため繊維表面に多数の畝が生成された蛇腹状に歪んだ構造が発現される。このような蛇腹状の構造を有していてもポリウレタン系エラストマーの伸縮性、伸長回復率は維持される。
このように、収縮率の差もしくは芯鞘比率によっては、熱収縮により、複合繊維表面が蛇腹状になることがある。
【0024】
さらに、熱可塑性エラストマーの表面を繊維形成性熱可塑性ポリマーが被覆していることにより、熱可塑性エラストマーによる膠着が発生せず容易に解舒が可能になり後工程にも影響を与えなくなる。また、ポリウレタン系エラストマーなどにある特有のぬめり感が軽減され、織物とした場合もドライな感触となる。その他、染色加工においても、ポリウレタン系エラストマーやポリオレフィン系エラストマーのみからなる糸に比べ、染色性が良好となる他、堅牢度面においても汚染も生じ難いという特徴も有する。
【0025】
芯鞘型複合繊維(a)の糸の形態はフィラメント糸であり、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよい。また、繊度としては20〜85dtexが好ましく、より好ましくは40〜55dtexであり、単糸繊度としては5〜40dtexが好ましい。繊度及び単糸繊度が上記範囲より小さいと、織物とした場合に十分なパワー感や強度を得られなかったり、伸長回復率が低下したりするおそれがあり、繊度および単糸繊度が上記範囲より大きいと、織物とした場合の表面タッチや、衣料とした場合の着用感が悪くなり、さらに素材の軽量性も低下するおそれがある。熱水(98〜100℃)による30分間処理後(以下、熱水処理後と記す)においては、糸が収縮して繊度は増加するが、増加の度合いは熱処理前の3倍以内であることが好ましい。3倍より大きくなると織物組織の歪が大きくなり、織物とした場合の表面タッチや、衣料とした場合の着用感が悪くなるおそれがある。
【0026】
芯鞘型複合繊維(a)の強度は3.0〜5.0cN/dtexが好ましく、伸度は40〜70%が好ましい。
【0027】
芯鞘型複合繊維(a)の熱水処理後の伸度は300〜500%であることが好ましい。熱水処理後の糸の伸度はJIS L 1013の方法により測定することができる。熱水処理後の糸の伸度が300%以上であると、織物としたときに150%以上の最大伸度が得られ易い。織物とした場合に150%以上の最大伸度があると、これを衣料とした場合に着脱が容易となる。
【0028】
芯鞘型複合繊維(a)の熱水処理後の100%伸長回復率は75%以上が好ましい。芯鞘型複合繊維(a)の熱水処理後の伸長回復率が75%以上であると、織物にしたときに、より伸長回復率に優れた伸縮性織物を提供することができる。
【0029】
上記のように、芯鞘型複合繊維(a)は良好な伸縮特性を有するが、これを単独で用いて織物とした場合、本発明で目的とする伸縮特性を得るには十分でないため、これを達成するために優れた伸縮特性を有するポリウレタン繊維を芯糸とし、上記のような特性を持つ芯鞘型複合繊維(a)を鞘糸とすることで、十分な強度と伸度を有し、パワー感を有する伸縮性の高い糸条である、カバーリング糸(A)を得ることができる。
【0030】
1−2.カバーリング糸(B)
本発明においては、上記カバーリング糸(A)と共に下記のようなカバーリング糸(B)を併用してもよい。カバーリング糸(B)の、芯糸と鞘糸とを組み合わせる(カバーリングする)方法はカバーリング糸(A)の場合と同様である。
【0031】
本発明に使用するカバーリング糸(B)の芯糸に使用する繊維は伸縮性を有するポリウレタン繊維が好適である。
【0032】
鞘糸は様々な繊維が使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維やナイロン66、ナイロン6などのポリアミド繊維等の合成繊維であることが好ましい。またアセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維であってもよく、これら合成繊維、半合成繊維および/または再生繊維が2種以上組み合わされていてもよい。なかでも、強度面・染色堅牢度面を考慮するとカチオン可染ポリエステルかポリアミド繊維が好ましく、強度に優れることからナイロン66またはナイロン6が特に好ましい。
【0033】
本発明に使用するカバーリング糸(B)の芯糸の形態はフィラメント糸であり、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよい。
【0034】
また、鞘糸の形態としては特に限定されるものではなく、フィラメント糸または紡績糸のいずれでもよいが、フィラメント糸が好ましい。フィラメント糸の場合、生糸、仮撚加工糸、撚糸などのいずれでもよく、また、混紡、混繊などの手段によって得られるこれらの複合糸であってもよい。さらに、鞘糸の単繊維の断面形状についても特に限定されず、丸、三角など公知の断面形状が採用でき、中空部を有するものであってもよい。
【0035】
カバーリング糸(B)の芯糸の繊度は30〜110dtexであることが好ましく、より好ましくは40〜80dtexである。30dtexより小さいと、織物とした場合に十分なパワー感を得ることが難しく、110dtexより大きいと、織物とした場合に十分なパワー感は得られるが、生地が厚くなり、これを衣料とした場合に着用感の悪くなるおそれがある。
【0036】
鞘糸の繊度は10〜60dtexであることが好ましく、特に10〜30dtexであることが好ましい。繊度が10dtexより小さいと、織物とした場合に十分な強度が得られないおそれがあり、60dtexをこえると、織物とした場合に風合いが悪くなるおそれがあり、また、軽量な織物を得ることができないおそれがある。
【0037】
2.伸縮性織物の構成
本発明の伸縮性織物は、芯糸と鞘糸とを組み合わせることによって得られる糸条からなる織物である。芯糸と鞘糸とを組み合わせることによって得られる糸条は、上記カバーリング糸(A)であり、経方向および/または緯方向の少なくとも一部に使用する。織物を構成する糸条として全てカバーリング糸(A)を用いてもよいし、カバーリング糸(A)とその他の繊維からなる糸条とを組み合わせて用いてもよい。組み合わせ方としては例えば、カバーリング糸(A)を経糸または緯糸のどちらか一方に用いた場合に経糸または緯糸のもう一方の糸をその他の繊維からなる糸条としたり、経糸および/または緯糸を構成する糸にカバーリング糸(A)とその他の繊維からなる糸条を交互に配置したりするような方法などがある。経糸および/または緯糸を構成する糸の本数の比率は、以下の範囲であることが好ましい。
0≦(その他の繊維からなる糸条/カバーリング糸(A))≦1
その他の繊維からなる糸条は、伸縮性を有する糸条であることが好ましく、カバーリング糸(B)であることがさらに好ましい。
経糸および/または緯糸を構成する糸の本数の比率が上記範囲であると、織物にしたときに、パワー感が良好で伸長回復率に優れた伸縮性織物を得ることができる。
【0038】
高い伸縮性を得る手段として、織物を構成する糸条にポリウレタンポリマーを芯成分とした、複合紡糸により得られる芯鞘型複合繊維からなる糸条を単独で用いる方法や、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートおよびこれらを複合化した繊維などを捲縮加工糸として用いる方法も考えられるが、前述のいずれの糸条を用いても、パワー感が良好でかつ、衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を得ることは困難である。また、ポリウレタンを芯部に持つ芯鞘型複合繊維は一般的に薄地の織物にした場合に十分な強度を得にくいという問題もある。
そこで、本発明のカバーリング糸(A)を単独で用いたり、カバーリング糸(B)と組み合わせて用いたりすることによって、パワー感が良好でかつ、衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れる伸縮性織物を提供することができるのである。
【0039】
本発明の伸縮性織物の組織は特に限定されるものではなく、例えば、三元組織である平織、斜紋織、朱子織;これら三元組織の変化組織;はち巣織、ハック織、模しゃ織、なし地織などの特別組織;さらにこれらを2種以上組み合わせた混合組織などを挙げることができる。
【0040】
本発明の伸縮性織物は、カバーリング糸(A)を単独で用いたり、カバーリング糸(B)と組み合わせて用いたりして上記の組織で製織し、精練、染色などの染色加工工程を経て得られる。
【0041】
3.伸縮性織物の特性
本発明の伸縮性織物の特徴は、パワー感が良好で、衣料とした場合に着脱が容易となる十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れることにある。本発明の伸縮性織物は特徴的な伸縮特性を有する上記のカバーリング糸(A)を単独で用いたり、カバーリング糸(B)と組み合わせて用いたりすることによって織物としても特徴的伸縮特性を示す。本発明の伸縮性織物の伸縮特性としては、織物の経方向および/または緯方向の最大伸度が150%以上であり、150%伸長後の回復率が80%以上であり、かつ100%伸長時における応力が15〜50N/2.54cmであることであり、このような特性を示すことで本発明でいう高いパワー感と十分な伸度、さらに優れた伸長回復率を達成することができる。なお、100%伸長時における応力とは、100%伸長した状態を3回繰り返したときの、1回目の100%伸長時応力および3回目の100%伸長時応力の両方を含むものとする。
【0042】
本発明の伸縮性織物は、高い伸度を得るためには高温での液中処理となる染色加工工程等によりに大きく収縮させておくことが重要である。つまり、本発明の伸縮性織物を構成する糸条(カバーリング糸(A)およびカバーリング糸(B))を染色加工工程などにより収縮させる、すなわち織物全体を収縮させておくことで、その収縮した分だけ、織物が伸縮するのである。
【0043】
本発明の伸縮性織物のカバーファクター(CF)は2500〜6000であることが好ましい。カバーファクターが2500未満であると、破裂強度を200kPa以上確保することが難しくなる。6000をこえると織物の目付が重くなり、十分な伸度を発揮しないおそれがある。
本発明における織物のカバーファクターは下記式によって算出される。
CF=D11/2×M1+D21/2×M2
D1:経糸の総繊度(dtex)
D2:緯糸の総繊度(dtex)
M1:経糸の密度(本/2.54cm)
M2:緯糸の密度(本/2.54cm)
また、本発明の伸縮性織物の、経糸および緯糸の総繊度D(D1およびD2)は下記式によって算出される。
D=Dc/Df+Ds
Dc:芯糸の繊度
Ds:鞘糸の繊度
Df:ドラフト率
【0044】
また、本発明の伸縮性織物がスポーツ衣料の実用に耐えるために引張強度は90N以上、破裂強度は200kPa以上であることが好ましい。
【0045】
さらに、本発明の伸縮性織物の滑脱抵抗力は4mm以下であることが好ましい。滑脱抵抗力が4mmをこえると、織物がスポーツ衣料の実用に耐えることができなくなるおそれがある。
【0046】
本発明の伸縮性織物は経糸および緯糸を種々組み合わせることにより目付を100〜200g/mとすることが好ましい。目付が100g/m未満であると、スポーツ衣料では強度の面において実用に耐える織物を得ることが難しくなり、200g/mをこえると着用感が悪くなるおそれがある。
【0047】
また、本発明の伸縮性織物には、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、通常の染色仕上げ加工だけでなく、アルカリ減量加工、吸水加工、撥水加工、紫外線遮蔽加工あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0048】
さらに、本発明の伸縮性織物には、特徴的伸縮性とパワー感に影響のない範囲内において必要により各種の後加工を施して付加価値を高めることができる。たとえばプリント加工、加熱エンボス加工やパンチング加工によって所望の模様を施してもよい。さらに混紡、交織などの手段で第3の繊維を混用してもよい。例えば、製織後に第3の繊維を薬品の捺染等によって部分的に除去し模様を出す、いわゆるオパール加工を施して、模様のある美しい織物にしてもよい。
【0049】
本発明の伸縮性織物は、パワー感が良好で、かつ十分な伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れるため、とくに締め付け感を必要とするような用途、例えばフィットネスウェア・レオタード・スパッツ、水着などのスポーツ衣料用途、ガードル・ショーツ・ボディスーツ・シャツなどのインナー衣料用途などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各評価項目は、以下の方法に従った。
【0051】
A.糸の特性評価項目
[糸の強度、伸度]
JIS L 1013に準じ、島津製作所(株)製、AGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、引張速度20cm/minの条件で試料が伸長破断したときの強度(cN/dtex)、伸度(%)を求めた。
[糸の100%伸長回復率]
試料を、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を100mmに設定して試料を固定し、引張速度100mm/minで100%まで伸長させた後、クロスヘッドを伸長時と同じ速度で元の位置に戻し、不織布にかかる応力を0とした。再び同じ速度で100%まで伸長させ、応力負荷が再び始まる時の糸の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記の式に従って求めた。
伸長回復率(%)=((100−L)/100)×100
【0052】
B.織物特性評価項目
[厚み]
JIS L 1096 に準じて測定した。
[目付]
JIS L 1096に準じて測定した。
[破裂強度]
JIS L 1096 A法(ミューレン形法)に準じて測定した。
[引張強度]
JIS L 1096 A法(ストリップ法)に準じて測定した。
[最大伸度]
JIS L 1096 A法(ストリップ法)に準じて測定した。
[伸長時応力]
100%伸長した状態を3回繰り返したときの、1回目および3回目の100%伸長時応力(荷重)をJIS L 1096 B法(定伸長法)に準じて測定した。
[伸長回復率]
JIS L 1096 B−2法(定伸長法)に準じて織物を150%伸長し、その後同じ速度で収縮させ、応力−歪み曲線を描く。収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(A)とし、下記の式により求めた。
150%伸長後の回復率=((150−A)/150)×100(%)
【0053】
<芯鞘型複合繊維(a)−1の製造>
芯部用の熱可塑性エラストマーとしてソフトセグメントにポリカーボネート/ポリ1,6−ヘキサンメチレンアジペート=7/3(質量比)の混合重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、および1,4−ブタンジオールからなるポリウレタン系エラストマー、
鞘部用の繊維形成用熱可塑性ポリマーとして相対粘度2.27のナイロン6を使用し、ポリウレタン系ポリマーの押出機温度を235℃に、ナイロン6の押出機温度を245℃に設定し、紡糸温度235℃で芯鞘比率が15/1の同心的芯鞘型複合繊維を溶融紡糸して、捲取速度500m/minで捲き取り未延伸糸を得た。次いで紡出した未延伸糸を延撚機にて、ロールヒーター温度120℃、延伸倍率4.0倍、延伸速度600m/minで延伸し、芯鞘型複合繊維(a)−1(繊度40dtex、2フィラメント、強度4.0cN/dtex、伸度55%)を得た。
また、熱水処理後の伸度は480%、100%伸長回復率は87.7%であった。
【0054】
<芯鞘型複合繊維(a)−2の製造>
フィラメント数を4とする以外は芯鞘型複合繊維(a)−1と同様にして、
芯鞘型複合繊維(a)−2(繊度40dtex、4フィラメント、強度3.3cN/dtex、伸度54%)を得た。
また、熱水処理後の伸度は400%、100%伸長回復率は82.5%であった。
【0055】
<芯鞘型複合繊維(a)−3の製造>
芯部と鞘部の芯鞘比率を10/1とする以外は芯鞘型複合繊維(a)−1と同様にして、
芯鞘型複合繊維(a)−3(繊度40dtex、2フィラメント、強度4.1cN/dtex、伸度58%)を得た。
また、熱水処理後の伸度は450%、100%伸長回復率は84.1%であった。
【0056】
芯鞘型複合繊維(a)−1〜3についての情報を表1に示す。
【0057】
<カバーリング糸(A)−1の製造>
繊度44dtexのポリウレタン繊維(旭化成せんい社製)を芯糸とし、上記で作成した芯鞘型複合繊維(a)−1を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数700t/mで鞘糸を巻きつけたカバーリング糸(A)−1を得た。
【0058】
<カバーリング糸(A)−2の製造>
繊度44dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい社製)を芯糸とし、上記で作成した芯鞘型複合繊維(a)−2を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数700t/mで鞘糸を巻きつけたカバーリング糸(A)−2を得た。
【0059】
<カバーリング糸(A)−3の製造>
繊度44dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい社製)を芯糸とし、上記で作成した芯鞘型複合繊維(a)−3を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数700t/mで鞘糸を巻きつけたカバーリング糸(A)−3を得た。
【0060】
<カバーリング糸(B)−1の製造>
繊度44dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい社製)を芯糸とし、繊度22dtex、7フィラメントのナイロン66仮撚加工糸(東レ社製)を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数1000t/mで鞘糸を巻きつけたカバーリング糸(B)−1を得た。
【実施例1】
【0061】
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、緯糸に上記のカバーリング糸(A)−1を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記織物を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、実施例1の織物を得た。
得られた織物の、芯鞘型複合繊維(a)−1の繊度は90dtexであり、経糸の密度は263本/2.54cm、緯糸の密度は310本/2.54cm、カバーファクターは4567であった。なお、芯鞘型複合繊維(a)−1は、熱水処理後に蛇腹状に収縮した形状となっているため、製織や染色加工などにより伸ばされて熱水処理後の繊度に比べて染色加工後の繊度は小さくなる傾向にある。以下、芯鞘型複合繊維(a)−2、3についても同様である。
【実施例2】
【0062】
経糸および緯糸に上記のカバーリング糸(A)−1を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記織物を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、実施例2の織物を得た。
得られた織物の、芯鞘型複合繊維(a)−1の繊度は90dtexであり、経糸の密度は253本/2.54cm、緯糸の密度は240本/2.54cm、カバーファクターは5043であった。
【実施例3】
【0063】
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、緯糸に上記のカバーリング糸(A)−2を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記織物を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、実施例3の織物を得た。
得られた織物の、芯鞘型複合繊維(a)−2の繊度は80dtexであり、経糸の密度は261本/2.54cm、緯糸の密度は308本/2.54cm、カバーファクターは4577であった。
【実施例4】
【0064】
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、緯糸に上記のカバーリング糸(A)−3を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記織物を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、実施例4の織物を得た。
得られた織物の、芯鞘型複合繊維(a)−3の繊度は89dtexであり、経糸の密度は260本/2.54cm、緯糸の密度は312本/2.54cm、カバーファクターは4751であった。
【0065】
[比較例1]
経糸および緯糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記織物を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、比較例1の織物を得た。
得られた織物の経糸の密度は267本/2.54cm、緯糸の密度は236本/2.54cm、カバーファクターは3046であった。
【0066】
[比較例2]
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、
緯糸に、繊度56dtexの、芯部がポリウレタン、鞘部がナイロンであり、芯部と鞘部の横断面積比が1/1である偏芯の芯鞘型複合繊維(KBセーレン社製)を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記布帛を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、比較例2の織物を得た。
得られた織物の経糸の密度は261本/2.54cm、緯糸の密度は310本/2.54cm、カバーファクターは3900であった。
【0067】
[比較例3]
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、
緯糸に、繊度44dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい社製)を芯糸とし、繊度33dtex、12フィラメントのアルカリ易溶性ポリエステル仮撚加工糸(KBセーレン社製、商品名:ベルピュア)を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数700t/mで鞘糸を巻きつけたエアカバー糸を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記布帛を精練、プレセット加工した後、アルカリ減量により緯糸の鞘糸に使用している易溶性ポリエステル仮撚加工糸を完全に溶解させ、浸染法により染色し、比較例3の織物を得た。
得られた織物の経糸の密度は262本/2.54cm、緯糸の密度は342本/2.54cm、カバーファクターは2896であった。
【0068】
[比較例4]
経糸に上記のカバーリング糸(B)−1を用い、
緯糸に、繊度44dtexのポリウレタン糸(旭化成せんい社製)を芯糸とし、繊度56dtex、24フィラメントで構成成分がポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートのサイドバイサイド型複合繊維(東レ・オペロンテックス社製、商品名:T−400)を鞘糸として、芯糸ドラフト率が3.0、撚糸回数700t/mで鞘糸を巻きつけたエアカバー糸を用いて、2/1綾組織の織物を製織した。
次いで、前記布帛を精練、プレセット加工した後、浸染法により染色し、比較例4の織物を得た。
得られた織物の経糸の密度は260本/2.54cm、緯糸の密度は266本/2.54cm、カバーファクターは3810であった。
【0069】
実施例1〜4、比較例1〜4で得られた織物の評価結果を表2に示す。実施例1〜4の織物はいずれも、パワー感が良好で、十分な強度と伸度を有し、さらに伸長回復率にも優れるものであった。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン繊維を芯糸として用い、熱可塑性エラストマーからなる芯部と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる鞘部とからなる芯鞘型複合繊維(a)を鞘糸として用いてなるカバーリング糸(A)を、経方向および/または緯方向の少なくとも一部に使用した織物であって、織物の経方向および/または緯方向の最大伸度が150%以上であり、150%伸長後の回復率が80%以上であり、かつ100%伸長時における応力が15〜50N/2.54cmであることを特徴とする伸縮性織物。
【請求項2】
前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における芯部と鞘部の横断面積比率が20/1〜5/1であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性織物。
【請求項3】
前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における熱水処理後の伸度が300〜500%であることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮性織物。
【請求項4】
前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における熱水処理後の100%伸長回復率が75%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮性織物。
【請求項5】
前記カバーリング糸(A)の鞘糸である芯鞘型複合繊維(a)における芯部の熱可塑性エラストマーがポリウレタン系エラストマーからなり、鞘部の繊維形成性熱可塑性ポリマーがポリアミドからなること特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸縮性織物。
【請求項6】
芯糸が30〜110dtexの繊度のポリウレタン繊維からなり、鞘糸が10〜60dtexの繊度の合成繊維からなるカバーリング糸(B)を、前記カバーリング糸(A)と組み合わせて用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸縮性織物。
【請求項7】
カバーファクターが2500〜6000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の伸縮性織物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸縮性織物からなることを特徴とする、スポーツ用またはインナー用の衣料。

【公開番号】特開2012−36541(P2012−36541A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180210(P2010−180210)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】