説明

低VOC水性ハイブリッド結合剤

本発明は、(A)少なくとも1のC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート、および/または20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、またはこれらの混合物(モノマーA)、(B)ならびに場合により別のモノマーB、および(C)質量平均分子量5000〜40000Daを有する少なくとも1の水溶性アルキド樹脂を乳化重合することによって得られる水性結合剤組成物において、モノマーAならびに場合によりBおよびアルキドCの重合を、並行する供給法の形で実施することを特徴とする、水性結合剤組成物、ならびにその製造および塗料中でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低VOC水性ハイブリッド結合剤、その製造方法ならびに塗料、特に光沢度の高い塗料(高光沢塗料)中でのその使用に関する。
【0002】
塗料のための結合剤は通常、2つのグループに分けられる。つまり溶剤を含有する系であるか、または溶剤もしくは分散媒として水を含有する系である。
【0003】
特にアルキド結合剤の大部分は第一のグループに属し、特にアクリレート分散液は第二のグループに属する。
【0004】
第一のグループは目下、環境政策的な理由から非難の対象となっており、従って揮発性有機化合物の割合(VOC含有率)の低い水性系への切り替えが望まれている。
【0005】
EP1382663は、水乳化可能な、もしくは水希釈可能な生成物を開示している。水希釈可能な油またはアルキド樹脂は、環式のオレフィン系不飽和無水物と反応される。
【0006】
EP874875は、水性のハイブリッド結合剤組成物、ならびに着色剤または塗料混合物中での成分としての該組成物の使用を開示しており、この場合、ハイブリッド結合剤組成物は、60〜95質量%の乾燥分割合を有している。
【0007】
DE3132937は、アルキド樹脂および/またはポリアクリレートをベースとする水希釈可能な樹脂調製物の製造方法を開示しており、この場合、第一段階で水希釈可能なアルキド樹脂分散液を製造し、引き続きこうして得られたアルキド樹脂分散液を第二の方法工程でアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体と重合させている。
【0008】
US6,333,378には、水性アルキド−アクリレート−ハイブリッド系が開示されており、これはアルキドと、潜在的な酸化官能性を有する少なくとも1のアクリレートモノマーとの、予め剪断されたミニエマルションを重合することによって製造されている。
【0009】
しかし従来技術によるこれらの組成物は、光沢および表面の平滑さに関して所望される要求に対応せず、高いアルキド割合を有するという欠点を有している。
【0010】
従って本発明の課題は、水性アルキド−アクリレート−ハイブリッド結合剤、その製造ならびに塗料、特に高光沢塗料のためのその使用および極めて高い光沢を有し、光沢のくもりが少ないと同時に高い隠蔽力において優れた高光沢塗料の調製物の開発である。
【0011】
前記課題は本発明により、
(A)少なくとも1のC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート、および/または20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、またはこれらの混合物(モノマーA)、
(B)ならびに場合により別のモノマーB、および
(C)質量平均分子量5000〜40000Daを有する少なくとも1の水溶性アルキド樹脂
を乳化重合することによって得られる水性結合剤組成物において、モノマーAならびに場合によりBおよびアルキドCの重合を、並行する供給法の形で実施することを特徴とする、水性結合剤組成物によって解決された。
【0012】
本発明により製造される結合剤によって、極めて高い光沢と低いヘーズ(曇り度)が得られ、該結合剤は低いVOC含有率を特徴としている。
【0013】
本発明のもう1つの対象は、
(A)少なくとも1のC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート、および/または20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、またはこれらの混合物(モノマーA)、
(B)ならびに場合により別のモノマーB、および
(C)質量平均分子量5000〜40000Daを有する少なくとも1の水溶性アルキド樹脂
を乳化重合することによって水性結合剤組成物を製造する方法であって、この方法の特徴は、モノマーAもしくはBおよびアルキドCの重合を、並行する供給法の形で実施することである。
【0014】
乳化共重合体は有利には
(A)モノマーA 20〜90質量%、
(B)別のモノマーB 0〜20質量%、ならびに
(C)アルキドC 10〜60質量%
を含有している。
【0015】
乳化共重合体は特に有利には
(A)モノマーA 30〜79.5質量%、
(B)別のモノマーB 0.5〜20質量%、ならびに
(C)アルキドC 20〜50質量%
を含有している。
【0016】
乳化共重合体はとりわけ有利には
(A)モノマーA 50〜70質量%、
(B)別のモノマーB 2〜10質量%、ならびに
(C)アルキドC 20〜50質量%
を含有している。
【0017】
主モノマーAとして、たとえばC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート、有利にはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレートまたはtーブチル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
モノマーAのビニル芳香族化合物として、たとえばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンまたはこれらの混合物および有利にはスチレンが考えられる。
【0019】
モノマーAの有利な組み合わせは、n−ブチルアクリレート、スチレンおよびブチル(メタ)アクリレートであり、この場合、スチレン割合は25質量%以下である。
【0020】
別のモノマーBとは、たとえばヒドロキシル基を有するモノマー、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エチレン性不飽和酸、特にカルボン酸、たとえば(メタ)アクリル酸およびその無水物、ジカルボン酸およびその無水物もしくは半エステル、たとえばイタコン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸またはこれらの混合物、ウレイド(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートまたはジアセトンアクリルアミドである。
【0021】
有利なモノマーBは、5質量%未満の割合を有するアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0022】
モノマー混合物AもしくはAおよびBは、別々に重合したとしたら、50℃未満で20℃を越える、有利には40℃未満で20℃を超える、特に有利には30℃未満で20℃を超えるガラス転移温度Tgを有するポリマーが得られるであろう組成を有する。
【0023】
ガラス転移温度Tgとはここでは、ASTM D3418−82により示差走査熱分析(DSC)により測定される「mid−point temperature」であると理解される(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A21巻、VCH Weinheim、1992年、第169頁、ならびにZosel、Farbe und Lack 82(1976年)、第125〜134頁を参照のこと。またDIN53765も参照のこと)。
【0024】
ガラス転移温度Tgは、フォックス(Fox、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Weinheim(1980年)、第17、18頁を参照のこと)により評価することができる。弱く架橋した、もしくは架橋していないコポリマーのガラス転移温度に関しては、モル質量が大きい場合、ほぼ
【数1】

(上記式中で、X1、X2、…、Xnは、質量分率1、2、…、nを表し、かつTg1、Tg2、…、Tgnは、そのつどモノマー1、2、…、nの1つのみから構成されるポリマーのガラス転移温度をケルビンで表している)が該当する。後者はたとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、VCH、第5版、Weinheim、第A21巻(1992)、第169頁、またはJ.Brandrup、E.H.Immergut、Polymer Handbook、第3版、J.Wiley、New York、1989年から公知である。
【0025】
アルキド樹脂(C)とは、乾燥した油、脂肪酸などによりエステル化されているポリエステルであると理解する(U.Poth、Polyester und Alkydharze、Vincentz Network 2005)。
【0026】
アルキド樹脂(C)とは特に、場合により中和した後で、有利に30〜65mgKOH/gアルキド樹脂固体の十分に高い酸価と、>5000〜<40000Da、有利には>8000〜<35000Daおよび特に有利には>10000および<35000Daの質量平均分子量を有する、アルキド樹脂ベースで、水希釈可能なアルキド樹脂溶液であると理解される。
【0027】
分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。
【0028】
酸価とは、試料1gを中和するために必要とされる水酸化カリウムの量をmgで表したものであると理解される。
【0029】
有利なアルキド樹脂Cは、たとえばSynthopol社のWorleeSol(登録商標)61A、WorleeSol(登録商標)61E、WorleeSol(登録商標)65A、Synthalat(登録商標)W46またはSynthalat(登録商標)W48である。
【0030】
製造方法
乳化重合の際に通常は、イオン性および/または非イオン性乳化剤および/または保護コロイドもしくは安定剤が、界面活性化合物として使用される。
【0031】
適切な保護コロイドの詳細な記載は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第XIV/1、Makromolekulare Stoffe、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961年、第411〜420頁に記載されている。乳化剤としてアニオン性、カチオン性乳化剤も、非イオン性乳化剤も考えられる。有利には一緒に使用される表面活性物質として、その分子量が保護コロイドとは異なって通常、2000g/モルを下回る乳化剤のみを使用する。当然のことながら、界面活性物質の混合物を使用する場合には、それぞれの成分が相互に相容性でなくてはならず、このことが疑わしい場合には、いくつかの前試験によって確認することができる。有利にはアニオン性および非イオン性乳化剤を界面活性物質として使用する。慣用的に一緒に使用される乳化剤はたとえばエトキシ化脂肪アルコール(EO度:3〜50、アルキル基:C8〜C36)、エトキシ化モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、スルホコハク酸のジアルキルエステルのアルカリ金属塩ならびにアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化アルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)、エトキシ化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)およびエトキシ化脂肪アルコールのスルフェートのアルカリ塩およびアンモニウム塩である。
【0032】
適切な乳化剤は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第14/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961年、第192〜208頁にも記載されている。
【0033】
界面活性物質は通常、全ての重合性モノマーに対して0.1〜10質量%の量で使用する。
【0034】
乳化重合のための水溶性開始剤はたとえばペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、たとえばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素または有機過酸化物、たとえばt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0035】
いわゆる還元酸化(レドックス)開始剤系も適切である。
【0036】
レドックス開始剤系は、少なくとも1の多くは無機還元剤と無機もしくは有機酸化剤とからなる。
【0037】
酸化成分はたとえばすでに前記した、乳化重合のための開始剤である。
【0038】
還元成分はたとえば亜硫酸のアルカリ金属塩、たとえば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ塩、たとえば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族アルデヒドおよびケトンの二亜硫酸付加化合物、たとえば二亜硫酸アセトンまたはヒドロキシメタンスルフィン酸、およびその塩、またはアスコルビン酸のような還元剤である。レドックス開始剤系は、その金属成分が複数の価数段階で現れうる可溶性の金属化合物の併用下で使用することができる。
【0039】
慣用のレドックス開始剤系はたとえばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロキシペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸である。個々の成分、たとえば還元成分は、混合物、たとえばヒドロキシメタンスルフィン酸と二亜硫酸ナトリウムとからなる混合物であってもよい。
【0040】
開始剤の量は重合性モノマーに対して一般に0.1〜10質量%、有利に0.1〜5質量%、特に有利には0.4〜1質量%である。乳化重合の際に、複数の異なった開始剤を使用することもできる。
【0041】
乳化重合は通常、30〜150℃、有利には50〜95℃、特に有利には80〜95℃で行う。重合媒体は水のみからなっていても、水および水と混和可能な液体、たとえばメタノールとからなる混合物であってもよい。有利には水のみを使用する。乳化重合はバッチ法で実施しても、段階的な方法もしくは勾配法を含む供給法の形で実施してもよい。
【0042】
この場合、1つの供給容器中でモノマーAもしくはAとBおよび乳化剤のプリエマルションを製造し、かつこれと並行して第二の供給容器中で、少なくとも1の水溶性アルキドCの中和された水溶液を製造する。
【0043】
引き続きこれらの両方の供給流を並行して、種分散液が予め装入されているか、またはAもしくはAとBおよび開始剤のプリエマルションの一部から現場で種が形成されている重合容器に計量供給する。
【0044】
通常、重合は複数の空間的に分離され、その1以上がモノマーを純粋な形で、または乳化した形で含有している供給流を介して、連続的に、段階的に、または濃度勾配を重ねて重合帯域の重合を維持しながら行う。
【0045】
これらの両方の供給流と並行して、開始剤の供給も開始する。
【0046】
重合に引き続きさらに後攪拌し、化学的な脱臭処理を行う。
【0047】
当然のことながら、中和された水性アルキド供給流の一部を反応容器に装入するか、またはアルキド供給をプリエマルションの供給よりもはやく終了するか、またはアルキド供給流をプリエマルションの供給の時点よりも後の時点で開始することも可能である。
【0048】
しかし有利には何も装入しないで、アルキド供給流をプリエマルション供給流と同時に計量供給する。この場合、アルキドが極めて均質に、全ポリマー中に分散される。このことは極めて平滑な表面および高い光沢を形成するために重要である。
【0049】
ラジカル水性乳化重合の過程で開始剤を重合容器に添加する方法は当業者に公知である。これは重合容器にすべて装入してもよいし、ラジカル水性重合の過程におけるその消費の度合いに応じて、連続的に、もしくは段階的に使用することもできる。具体的にはこれは当業者に公知の方法で、開始剤系の化学的性質ならびに重合温度に依存する。有利には一部を装入し、かつ残りを重合帯域の消費の度合いに応じて供給する。
【0050】
残留モノマーを除去するために、本来の乳化重合の終了後に、つまり少なくとも95%のモノマーの反応の後で、開始剤を添加することができる。通常はレドックス系を使用する。引き続き物理的な脱臭処理を実施することもできる。
【0051】
水性ポリマー分散液が得られ、これは通常、ポリマー分散液に対して20〜70質量%、有利には40〜60質量%のポリマー含有率(固体含有率)を有している。
【0052】
本発明による方法の利点は、プリエマルションおよびアルキド供給流の粘度が比較的低いことである。水溶性のアルキドも含有されているプリエマルションの場合も、モノマーおよびアルキドのミニエマルション(予め剪断されたプリエマルション)の場合も、粘度は極めて高く、かつ使用されるアルキド割合は限定される。
【0053】
このポリマーは、結合剤組成物として着色剤または塗料混合物中に添加することができる。
【0054】
塗料は、塗料にとって慣用のその他の助剤、たとえば顔料を含有している。顔料とはまとめて全ての顔料および充填剤、たとえば着色顔料、白色顔料および無機充填剤を表す。
【0055】
無機白色顔料、たとえば二酸化チタン、有利にはルチル型の二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性の炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(亜硫酸亜鉛+硫酸バリウム)または着色顔料、たとえば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒、マンガンバイオレット、ペルシアンブルーまたはエメラルドグリーンが含有されていることが挙げられる。無機顔料以外に、本発明によるカラーペーストは、有機着色顔料、たとえばセピア、ガンボージ、カセラーブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ着色剤、アントラキノイドおよびインジゴイド着色剤ならびにジオキサジン、キナクリドン−、フタロシアニン−、イソインドリノン−および金属錯体顔料が含有されていてもよい。
【0056】
光の散乱を高めるために空気を封鎖した合成由来の白色顔料も使用することができる。その例は、Rhopaque(登録商標)分散液である。
【0057】
適切な充填剤はたとえばアルミノケイ酸塩、たとえば長石、ケイ酸塩、たとえばカオリン、タルク、雲母、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、たとえば炭酸カルシウム、たとえば方解石または白亜の形のもの、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、たとえば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素などである。塗料中では当然のことながら、微粒子状の充填剤が有利である。充填剤は単独の成分として使用することができる。しかし実地では、充填剤混合物、たとえば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクが特に有利であることが実証されている。本発明による高光沢塗料にとっては、いずれの場合でも少量の微分散充填剤は認容可能である。有利には充填剤の使用を断念する。
【0058】
顔料の割合は、顔料体積濃度(PVK)によって、つまり乾燥させた塗料の全体積に対する顔料の体積からの商である。本発明による高光沢塗料は、12〜35%、有利には15〜30%の範囲のPVKを有している。
【0059】
本発明による水性塗料は、ポリマーおよび顔料以外に、別の助剤を含有していてよい。
【0060】
慣用の助剤には、重合の際に使用される乳化剤以外に、湿潤剤または分散剤、たとえばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸アンモニウム、アクリル酸またはマレイン酸無水物コポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ポリホスホン酸塩、たとえば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウムならびにナフタリンスルホン酸塩、特にそのナトリウム塩が挙げられる。
【0061】
さらに均展剤、消泡剤、殺菌剤および増粘剤が挙げられる。
【0062】
増粘剤としてたとえば会合性増粘剤が考えられる。有利な会合性増粘剤は、ポリウレタン増粘剤である。増粘剤の量は塗料に対して固体の増粘剤有利には1質量%未満、特に有利には0.6質量%未満である。
【0063】
本発明による塗料の製造は、公知の方法でこのために慣用されている混合装置中で成分を混合することによって行う。顔料、水および場合により助剤から、水性ペーストまたは分散液を製造し、引き続きまずポリマー結合剤、つまり通常はポリマーの水性分散液を顔料ペーストもしくは顔料分散液と混合する。
【0064】
本発明による塗料は通常、非揮発性成分を30〜75質量%、および有利には40〜65質量%含有している。非揮発性成分とは、水ではないが、しかし少なくとも結合剤の固体分、顔料および助剤の固体分の全量である調製物の全ての成分であると理解される。揮発性成分は主として水である。
【0065】
有利には塗料は高光沢塗料である。
【0066】
光開始剤または乾燥剤を添加することにより、表面架橋を促進することができる。
【0067】
光開始剤として、太陽光により励起されるもの、たとえばベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体が考えられる。乾燥のためには、水性アルキド樹脂のために推奨される金属化合物、たとえばCoまたはMnベースのものが適切である(概要はU.Poth、第183頁以降)。
【0068】
塗料の光沢の測定は、DIN EN ISO 2813により行う。つまり塗料を240μmのスリット幅でガラス板上に施与し、室温で72時間乾燥させる。試験体を、ヘーズ・グロスタイプの較正された反射率計(Byk−Garner社、Geretsried)にかけて反射率計の値を入射角20°および60°で、ならびにヘーズ(光沢のくもり)を読み取る。確認された反射率計の値が、光沢に関する尺度となる(値が高いほど、光沢が高い)。
【0069】
高光沢塗料の光沢は有利には20゜で60を超え、かつ60°で80を超える。
【0070】
反射率計の値は23℃で測定され、無次元で入射角に依存して、たとえば20°で40と記載される。
【0071】
本発明による塗料は、慣用の方法で、たとえば刷毛塗り、噴霧、浸漬、ロール塗りまたはナイフ塗布等により支持体上に施与することができる。
【0072】
本発明による塗料は、光沢のある、および高光沢の表面のための装飾用の被覆の分野で使用される。下地は木材、金属、プラスチック、紙などであってよい。
【0073】
本発明による塗料は簡単な取り扱い、良好な加工特性、高い隠蔽力および特に高い光沢を特徴とする。塗料は有害物質をほとんど含んでいない。使用される作業用器具は水で容易に洗浄することができる。
【0074】
実施例
例1
供給装置および温度制御機構を備えた重合容器中に、以下のもの:
装入容器:水 108.5g
固体含有率33%を有するポリスチレンシード分散液 19.1gおよび
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 1.5g
を装入し、撹拌下で85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流3の10%を添加し、5分間攪拌した。その後、供給流1および2を180分で計量供給し、これと並行して供給流3の残りの量を195分で供給した。
【0075】
供給流1:水 52.2g
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 51g、
n−ブチルアクリレート 99g、
メチルメタクリレート 81.9g、
スチレン 55.2g、
アセトアセトキシエチルメタクリレート 11.4g、
供給流2:水 194.5g
25%アンモニア溶液 12g、
WorleeSol(登録商標)61E 270g、
供給流3:水 70.2g
ペルオキソ二硫酸アンモニウム 1.8g。
【0076】
供給流3の終了後に、引き続き30分間、後重合させ、アンモニア(25%の水溶液として)1.62gで中和した。その後、過酸化水素(5%の水溶液として)5.4gを添加し、かつ水2.03g中のアスコルビン酸(ASCS)0.23gの溶液を60分で計量供給した。
【0077】
引き続き、該分散液を冷却し、かつ125μmのフィルターを介して濾過した。45%分散液1.04kgが得られた。
【0078】
例2〜6
例1と同様であるが、ただし供給流2には、
供給流2:水 151.3g、
25%アンモニア溶液 9.3g、
WorleeSol(登録商標)61E 210g
のみが含有されており、45%分散液約900gが得られた。これらの例は互いに異なっているが、これを第1表に記載する。
【0079】
【表1】

【0080】
例7
供給装置および温度制御機構を備えた重合容器中に、以下のもの:
装入容器:水 116.1g
固体含有率33%および平均粒径30nmを有するポリスチレンシード分散液 19.2g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 1.5g
を装入し、撹拌下で85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流3の10%を添加し、5分間攪拌した。その後、供給流1および2を180分で計量供給し、これと並行して供給流3の残りの量を195分で供給した。
【0081】
供給流1:水 79.5g
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 51.2g、
n−ブチルアクリレート 117.4g、
メチルメタクリレート 97.1g、
スチレン 65.5g、
アセトアセトキシエチルメタクリレート 13.5g、
供給流2:水
NH3で中和したWorleeSol(登録商標)61E(固体含有率42.5%) 371.7g、
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(2.5質量%) 72.2g。
【0082】
供給流3の終了後に、引き続き30分間、後重合させ、アンモニア(25%の水溶液として)0.51gで中和した。その後、過酸化水素(5%の水溶液として)5.4gを添加し、かつ水2.3g中のアスコルビン酸(ASCS)0.23gの溶液を60分で計量供給した。
【0083】
引き続き、該分散液を冷却し、かつ125μmのフィルターを介して濾過した。45%分散液1.04kgが得られた。
【0084】
例8
例7と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(2.5質量%)108.3g。
【0085】
例9
例7と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(7質量%)51.9g。
【0086】
例10
例7と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(7質量%)64.5g。
【0087】
例11
例7と同様、ただし
供給流1:水 58.6g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 51.2g、
n−ブチルアクリレート 60.0g、
n−ブチルメタクリレート 154.4g、
スチレン 65.5g、
アセトアセトキシエチルメタクリレート 13.5g。
【0088】
例12
例11と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(5質量%)54.2g。
【0089】
例13
例11と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(5質量%)72.2g。
【0090】
例14
例11と同様、ただし
供給流3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム(5質量%)90.3g。
【0091】
例15
例7と同様、ただしアルキド(供給流2)を一定しない速度で添加、
供給流2の供給速度:
30分あたり、12.5g、22.5g、32.5g、58.1g、98.1g、148.1g。
【0092】
例16
例7と同様、ただしアルキド(供給流2)を一定しない速度で添加、
供給流2の供給速度:
30分あたり、12.5g、32.5g、52.5、78.1g、98.3g、118.1g。
【0093】
例17
例7と同様、ただし重合温度は95℃。
【0094】
例18
例7と同様、ただし重合温度は80℃。
【0095】
例19
例7と同様、ただし
供給流2:NH3で中和したWorleeSol(登録商標)61E(固体含有率72.8%) 217g
【0096】
例20
例1と同様、ただし供給流2には
供給流2:水 108.1g、
25%アンモニア溶液 6.7g、
WorleeSol(登録商標)61E 150g
が含有されており、45%分散液830gが得られた。
【0097】
比較例1
供給装置および温度調整機構を備えた重合容器中に次のもの:
装入容器:水 57.5g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 3.1g
を装入し、撹拌下で85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流1および2の10%を順次添加し、かつ10分間重合させた。その後、供給流1の残りの量を180分で、およびこれと並行して供給流2の残りを195分で計量供給した。
【0098】
供給流1:水 142.6g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 30.7g、
エトキシ化度約18を有する脂肪アルコールエトキシレートの20%溶液(BASF社のLutensol(登録商標)AT18) 5.8g、
WorleeSol(登録商標)61E 76.7g、
n−ブチルアクリレート(BA) 69g、
メチルメタクリレート(MMA) 57.5g、
スチレン(S) 34.5g、
メタクリル酸 4.6g、
アセトアセトキシエチルメタクリレート 6.9g。
【0099】
まずアルキド樹脂をモノマー混合物BA、MMAおよびS中に溶解した。次いで残りの原料を添加した。超音波ゾンデを用いてこの混合物から安定したミニエマルションを製造した。
【0100】
供給流2:水 11.4g
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 0.9g。
【0101】
供給流2の終了後、引き続き30分間、後重合させ、アンモニア(25%水溶液として)3.65gで中和した。次いで、過酸化水素(5%水溶液として)2.8gを添加し、水11.5g中のアスコルビン酸0.12gの溶液を60分で計量供給した。
【0102】
引き続き分散液を冷却し、125μmのフィルターを介して濾過した。44%分散液519gが得られた。
【0103】
比較例2
供給装置および温度制御機構を備えた重合容器中に次のもの:
装入容器:水 100.3g、
固体含有率33%および平均粒径30nmを有するポリスチレンシード分散液 16.5gおよび
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液
を装入し、撹拌下で85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流2の10%を添加し、5分間攪拌した。その後、供給流1を180分で計量供給し、これと並行して供給流3の残りの量を195分で計量供給した。
【0104】
供給流1:水 219.5g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%水溶液 44.2g、
WorleeSol(登録商標)61E 182g、
25%アンモニア溶液 8.1g、
n−ブチルアクリレート 101.4g、
メチルメタクリレート 83.9g、
スチレン 56.6g、
アセトアセトキシエチルメタクリレート 11.7g。
【0105】
まずアルキド樹脂を水およびアンモニア中に溶解し、次いで残りの原料を添加し、乳化させた。
【0106】
供給流3:水 60.8g
ペルオキソ二硫酸アンモニウム 1.6g。
【0107】
供給流3の終了後、引き続き30分間、後重合させ、アンモニア(25%水溶液として)1.4gで中和した。その後、過酸化水素(5%水溶液として)4.7gを添加し、水1.8g中のアスコルビン酸0.20gを60分で計量供給した。
【0108】
引き続き該分散液を冷却し、125μmのフィルターを介して濾過した。43%分散液1.04kgが得られた。
【0109】
比較分散液1
供給装置および温度制御機構を備えた重合容器中に次のもの:
装入容器:水 528g
固体含有率33%および平均粒径30nmを有するポリスチレンシード分散液 46.7g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 3.67g
を装入し、撹拌下で85℃に加熱した。引き続きこの温度を維持しながら供給流2の5%を添加し、5分間攪拌した。その後、供給流1を180分で計量供給し、かつこれと並行して供給流2の残りの量を195分で計量供給した。
【0110】
供給流1:水 543.2g、
ラウリル硫酸ナトリウムの15%溶液 125.4g、
n−ブチルアクリレート 458.0g、
メチルメタクリレート 399.6g、
スチレン 165.1g、
メタクリル酸 22.78g、
ウレイドメタクリレート 21.45g、
Bisomer MPEG(登録商標)350MA(Laporte Performance Chemicals社(UK)の製品) 33g、
供給流2:水 83.6g、
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 4.4g。
【0111】
供給流1の終了後に、水22gを添加した。供給流2の終了後に引き続き30分間、後重合させ、アンモニア(25%水溶液として)7.47gで中和した。その後、過酸化水素13.2g(5%水溶液として)13.2gを添加し、水4.96g中のアスコルビン酸0.557gの溶液を計量供給した。
【0112】
引き続き該分散液を冷却し、125μmのフィルターを介して濾過した。46%分散液2.48kgが得られた。
【0113】
水性塗料の製造
個々の成分(製造業者の紹介は第2表を参照のこと)を、第3表に記載されているとおりの量(質量部)および順序で、撹拌下に歯車式攪拌機で計量供給した。二酸化チタン顔料を添加した後で、回転数を2000rpmに高めて、顔料ペーストが滑らかになるまで、つまり塊がなくなるまで分散させた。次いで、必要であれば、室温に冷却し、回転数を下げて残りの成分を添加した。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
水性塗料の試験
塗料の光沢の測定は、DIN EN ISO2813に従って行った。つまり塗料を240μmのスリット幅でガラス板上に塗布し、室温で72時間乾燥させた。試験体を、ヘーズ・グロスタイプの較正された反射率計(Byk−Garner社、Geretsried)にかけて反射率計の値を入射角20°および60°で、ならびにヘーズ(光沢のくもり)を読み取る。確認された反射率計の値が、光沢に関する尺度となる(値が高いほど、光沢が高い)。
【0117】
実施例、比較例、比較分散液およびアルキド塗料の光沢値は、第4表にまとめられている。
【0118】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1のC1〜C10−アルキル(メタ)アクリレート、および/または20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、またはこれらの混合物(モノマーA)、
(B)ならびに場合により別のモノマーB、および
(C)質量平均分子量5000〜40000Daを有する少なくとも1の水溶性アルキド樹脂
を乳化重合することによって得られる水性結合剤組成物において、モノマーAならびに場合によりBおよびアルキドCの重合を、並行する供給法の形で実施することを特徴とする、水性結合剤組成物。
【請求項2】
乳化重合体が合計で
(A)モノマーA 20〜90質量%、
(B)別のモノマーB 0〜20質量%、ならびに
(C)アルキドC 10〜60質量%
を含有していることを特徴とする、請求項1記載の水性結合剤組成物。
【請求項3】
ビニル芳香族化合物が、ビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンまたはスチレンの群またはこれらの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性結合剤組成物。
【請求項4】
1〜C10−アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレートまたはt−ブチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレートまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの群またはこれらの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性結合剤組成物。
【請求項5】
モノマーBが、ヒドロキシル基を有するモノマーの群、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エチレン性不飽和酸、特にカルボン酸、たとえば(メタ)アクリル酸、およびカルボン酸無水物、ジカルボン酸およびジカルボン酸無水物または半エステル、たとえばイタコン酸またはマレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸またはこれらの混合物、ウレイド(メタ)アクリレート、アセトアセトキシ(メタ)アクリレートまたはジアセトンアクリルアミドの群から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性結合剤組成物。
【請求項6】
成分Cが、WorleeSol(登録商標)61A、WorleeSol(登録商標)61E、WorleeSol(登録商標)65A、Synthalat(登録商標)W46またはSynthalat(登録商標)W48の群から選択されるアルキド樹脂であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の水性結合剤組成物。
【請求項7】
Aからなるか、もしくはAとBとからなるモノマー混合物を別個に重合したことによるポリマーのガラス転移温度が、50℃未満であり、かつ20℃を超えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の水性結合剤組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の水性結合剤の製造方法において、モノマーAもしくはAとBおよびアルキドCの重合を並行する供給法の形で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の水性結合剤の製造方法。
【請求項9】
塗料中の成分としての請求項1から8までのいずれか1項記載の水性結合剤組成物の使用。
【請求項10】
高光沢塗料中の成分としての請求項1から8までのいずれか1項記載の結合剤組成物の使用。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項記載の水性結合剤組成物を含有する塗料。
【請求項12】
20°(°は入射角)で60を超える光沢度を有する高光沢塗料であることを特徴とする、請求項11記載の塗料。

【公表番号】特表2010−530019(P2010−530019A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511632(P2010−511632)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057340
【国際公開番号】WO2008/152078
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】