説明

作業機械用暖房装置

【課題】作業機械用暖房装置において、消費される電力を抑制する。
【解決手段】車室280の内部に設けられた放熱器111と、温水等Wを収容する温水タンク120(容器)と、放熱器111と温水タンク120との間で温水等Wを循環させる循環管路130と、循環管路130のうち送り管路131内の温水等Wを放熱器111に向けて流すポンプ134と、循環管路130のうち戻り管路132(管路)に設けられた、外部の熱源である作動油Rの熱が供給されて温水等Wとの間で熱交換を行う熱交換器140と、熱交換器140による熱交換の実施と不実施とを切り替える開閉弁171,172(切替手段)と、を備え、温水タンク120に供給される温水等Wを熱交換器140により予め温めることで、電熱器121での消費電力を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械用の暖房装置に関し、詳細には、エンジン(内燃機関等の原動機)を備えず、外部または車体搭載のバッテリから電力の供給を受ける電動の作業機械に用いられる暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械は、エンジンを動力源として駆動されていたが、近年、エンジンの代わりに三相誘導電動機等の電動モータを備え、外部または車体搭載のバッテリからこの電動モータに電力を供給することで作業機械を駆動する、いわゆる電動式の作業機械が広く実用に供されている。
【0003】
この電動式の作業機械は、エンジンを備えていないため排気ガスの発生がなく、音の発生も少ないという利点がある。
【0004】
ところで、作業機械の運転室に備えられた暖房装置は、エンジンを動力源とするものでは、暖房装置の放熱器に、エンジンで温められた温水(エンジン冷却水)を通過させることで、暖房として求められる温風を得ていた。
【0005】
しかし、電動式やバッテリ式の作業機械はエンジンを有しないため、電熱器を備えた貯水タンク(容器)を設け、この電熱器によって貯水タンク内の水を温めることで、暖房装置で必要とされる温水を、この用途のためだけに生成している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−267037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した先行技術は、電熱器を外部の電源やバッテリで駆動しているため、暖房装置を使う場合には、作業機械の駆動に必要な電力以上の電力が消費される。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、消費される電力を抑制することができる作業機械用暖房装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る作業機械用暖房装置は、既存の外部の熱源で発生した熱が供給される熱交換器により、電熱器が設けられた容器に供給される水等液体が予め温められることで、電熱器の発熱量を抑制し、消費電力を抑制するものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る作業機械用暖房装置は、作業機械の運転室の内部に設けられた放熱器と、液体を収容する、電熱器が設けられた容器と、前記放熱器と前記容器との間で前記液体を循環させる循環路と、前記循環路のうち前記放熱器から前記容器に向かう管路に設けられた、外部の熱源で発生した熱が供給されて前記液体との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器による熱交換の実施と不実施とを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る作業機械用暖房装置によれば、消費される電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明に係る作業機械用暖房装置が適用される作業機械の一例としての電動式油圧ショベルの一部を透過して表した斜視図である。
【図1B】図1Aに示した電動式油圧ショベルの上部旋回体における要部を模式的に示した平面図である。
【図2】図1に示した電動式油圧ショベルに適用された作業機械用暖房装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した暖房装置における2つの開閉弁を単一の切替弁に代えた構成部分のみを示す要部ブロック図である。
【図4A】図2に示した暖房装置において循環管路の側に備えられた熱交換器を、迂回路配管の側に配置代えした構成の実施形態を示す図である。
【図4B】図4Aに示した暖房装置における2つの開閉弁を単一の切替弁に代えた構成部分のみを示す要部ブロック図である。
【図5】熱交換器としてヒートパイプを適用した実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の作業機械用暖房装置に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1Aは作業機械の一例としての電動式油圧ショベル200の一部を透過して表した斜視図、図1Bは図1Aに示した電動式油圧ショベル200の上部旋回体220における要部を模式的に示した平面図、図2はこの電動式油圧ショベル200の運転室280(操作室)内を暖房する作業機械用暖房装置100(以下、単に暖房装置100と略称する。)の構成を示すブロック図である。
【0015】
図示の電動式油圧ショベル200は、下部走行体210と、下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体220とを備えている。
【0016】
上部旋回体220は、ブーム、アーム、バケット、これらを駆動するブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダなどからなる作業装置230、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダおよびその他のアクチュエータに作動油Rを送出する油圧ポンプ240、油圧ポンプ240に供給される作動油Rを一時的に貯留する作動油タンク250(外部の熱源)、油圧ポンプ240を駆動する動力源としての電動モータ260を備えている。
【0017】
電動モータ260は例えば三相誘導電動機であるが、この形式のものに限定されるものではない。
【0018】
また、電動モータ260は、電動式油圧ショベル200の外部に備えられた電源300から給電ケーブル270を介して電力の供給を受け、この電力により駆動される。なお、電動モータ260への電力の供給は、外部に備えられた電源300に限定されず、車体に搭載したバッテリでもよい。
【0019】
電動式油圧ショベル200の上部旋回体220にはさらに、作業装置を操作する操作者が搭乗する運転室280が形成されている。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態の暖房装置100は、図2に示すように、運転室280の内部に設けられた放熱器111および放熱器111に送風する電動ファン112を有する放熱ユニット110と、伝熱媒体である液体の一例である水乃至温水W(以下、単に温水等Wという。)を収容する温水タンク120(容器)と、放熱器111と温水タンク120との間で温水等Wを循環させる循環路としての循環管路130(循環路)とを備える。
【0021】
また、この暖房装置100は、循環管路130のうち温水タンク120と放熱器111との間の送り管路131に設けられて温水タンク120内の温水等Wを放熱器111に向けて送水するポンプ134と、循環管路130のうち温水等Wが放熱器111から温水タンク120に向かう戻り管路132(管路)に設けられた熱交換器140とを備えている。
【0022】
そして、温水等Wが流れる放熱器111に電動ファン112で送風することで、送風された空気が放熱器111を通過する間に温められ、その温められた空気によって運転室280を暖房するようになっている。
【0023】
ここで、温水タンク120には、内部に収容された温水等Wを温める電熱器121が設けられていて、この電熱器121に通電することで、温水タンク120内の温水等Wを加熱する。
【0024】
電熱器121は給電ケーブル270を介して電源300から供給された電力によって駆動され、スイッチ122の接続・切断を切り替えることによって電熱器121への通電と不通電とを切り替えている。
【0025】
また、温水タンク120には、温水タンク120内に収容された温水等Wの温度T3を検出する温水タンク内温度センサ123が設けられている。
【0026】
そして、後述する制御装置150が、温水タンク内温度センサ123によって検出された温度T3と、運転室280で要求される温度T0(予め設定された特定の値(固定された値)であってもよいし、例えば運転室280内に、任意の温度T0の値を入力可能の入力インターフェースを設けて、その入力インターフェースに入力された値であってもよい。)とを比較して、スイッチ122の接続・切断の切り替えを制御している。
【0027】
循環管路130に設けられた熱交換器140は、外部の熱源の一例である既存の作動油Rが溜められた作動油タンク250の内部に浸けて設けられており、熱源として利用される作動油タンク250内の作動油Rの熱(外部の熱源で発生した熱)が循環管路130内の温水等Wを温める効率を高める働きをしている。
【0028】
なお、図示において、戻り管路132のうち放熱器111と熱交換器140との間の管路を戻り管路132aと表示し、熱交換器140と温水タンク120との間の管路を戻り管路132bと表示している。
【0029】
また、作動油タンク250の内部にも、作動油タンク250内に収容された作動油Rの温度T2を検出する作動油タンク内温度センサ141(熱源温度検出器)が設けられている。
【0030】
さらに、循環管路130のうち放熱器111から熱交換器140に向かう戻り管路132aにも、この戻り管路132a内を流れる温水等Wの温度T1を検出する放熱後温度センサ135(放熱後温度検出器)が設けられている。
【0031】
このように構成された本実施形態の暖房装置100は、放熱器111で放熱される熱源である温水等Wを電熱器121の発熱だけで賄うのではなく、外部の熱源である作動油Rにより、温水タンク120に供給される温水等Wを予め温めることで、電熱器121の発熱量、すなわち電熱器121での消費電力を抑制するものである。
【0032】
なお、制御装置150が、温水タンク内温度センサ123によって検出された温水等Wの温度T3と運転室280で要求される温度T0とを比較し、温度T3が温度T0より大きい(T3>T0)ときは、制御装置150はスイッチ122を切断するように制御し、温度T3が温度T0より小さい(T3<T0)ときは、制御装置150はスイッチ122を接続するように制御する。
【0033】
このように制御装置150が、温水タンク120における温水等Wの温度T3が放熱器111で要求される温度T0を上回っている状況下では、スイッチ122を切断させるように制御して電熱器121を発熱させないため、電熱器121による無駄な電力の消費を防止することができる。
【0034】
さらに、本実施形態の暖房装置100は、放熱器111を通過した温水等Wが熱交換器140を通過しないように作動油タンク250が設けられた部分を迂回させて戻り管路132に接続された迂回管路160(迂回路)と、放熱器111を通過した温水等Wを作動油タンク250を通過させる状態と迂回管路160を通過させる状態とで切り替える2つの開閉弁171,172(切替弁)とを備えている。
【0035】
ここで、2つの開閉弁171,172はそれぞれ、温水等Wの流通を許容する開位置と流通を阻止する閉位置との間で移動可能に形成されていて、制御装置150の制御により、一方の開閉弁171が開位置に移動され、かつ他方の開閉弁172が閉位置に移動されて、放熱器111を通過した温水等Wを熱交換器140を通過させる状態とし、または一方の開閉弁172が開位置に移動され、かつ他方の開閉弁171が閉位置に移動されて、放熱器111を通過した温水等Wを迂回管路160を通過させる状態(熱交換器140を通過させない状態)とされる。
【0036】
また、各管路132,160ごとに設けた2つの開閉弁171,172に代えて、図3に示すように、両管路132,160の分岐部分に単一の切替弁170を設けた構成としてもよい。
【0037】
本実施形態の暖房装置100における制御装置150による上記制御は、放熱後温度センサ135によって検出された第1の温度T1が作動油タンク内温度センサ141によって検出された第2の温度T2よりも高い(T1>T2)ときは、開閉弁171を閉位置とし開閉弁172を開位置とする制御であり、一方、第1の温度T1が第2の温度T2よりも低い(T1<T2)ときは、開閉弁171を開位置とし開閉弁172を閉位置とする制御である。
【0038】
なお、図3に示した切替弁170を備えた構成のものでは、第1の温度T1が第2の温度T2よりも高い(T1>T2)ときは、制御装置150が、切替弁170を、温水等Wが迂回管路160を通過するように切り替える制御を行い、第1の温度T1が第2の温度T2よりも低い(T1<T2)ときは、切替弁170を、温水等Wが熱交換器140を通過するように切り替える制御を行う。
【0039】
このように制御装置150が開閉弁171,172の開閉または切替弁170の切り替えを制御することにより、電熱器での無駄な電力の消費を一層抑制することができる。
【0040】
なお、各開閉弁171,172は、開位置における開度として全開(開度100%)のみを採りうるものに限定されず、連続的または段階的に開度を変化させうるものであってもよい。
【0041】
このように開度を変化させうる開閉弁171,172を適用したものでは、放熱器111を通過した温水等Wを、迂回管路160にのみ通過させ、または熱交換器140にのみ通過させる、という択一的な切り替えにとどまらず、両開閉弁171,172の開度をそれぞれ調整することにより、放熱器111を通過した温水等Wのうち、迂回管路160を通過させる温水等Wの量と熱交換器140を通過させる温水等Wの量との割合を調整することが可能となり、戻り管路132bを流れる温水等Wの温度をきめ細かく調整することができる。
【0042】
また、この切替弁170は、2つの開閉弁171,172と同様に、放熱器111を通過した温水等Wを熱交換器140を通過させる状態と迂回管路160を通過させる状態とで切り替えるものであるが、2つの開閉弁171,172と同様に、放熱器111を通過した温水等Wを、迂回管路160にのみ通過させ、または熱交換器140にのみ通過させる、という択一的な流れの切り替えにとどまらず、切替弁170を分流式の弁とすることにより、放熱器111を通過した温水等Wのうち、迂回管路160を通過させる温水等Wの量と熱交換器140を通過させる温水等Wの量との割合を調整することが可能となり、戻り管路132bを流れる温水等Wの温度をきめ細かく調整することができる。
【0043】
このように構成された本実施形態の暖房装置100によれば、開閉弁171,172の開閉や切替弁170の切り替えを制御装置150が制御することにより、放熱器111を通過して温水タンク120に戻される温水等Wが、温水タンク120に戻される前に、熱交換器140を通される状態と通されない状態とで、切り替えることができる。
【0044】
熱源となる作動油タンク250の内部に貯留されている作動油Rは、油圧ポンプ240で圧縮等されて作業装置230を駆動するため、通常は非常に高温となっており、制御装置150の制御により開閉弁171,172や切替弁170が、温水等Wを熱交換器140に通させる状態に切り替えられている場合、その通過した温水等Wは作動油Rによって温められて、温水タンク120に流れ込むことになり、電熱器121による加温の程度を抑制することが可能となる。
【0045】
一方、例えば、始動時や作業装置230が長時間停止していた場合等においては、作動油Rの温度が比較的低い状態にある。特に冬期の夜間などは、作動油Rも外気などによって冷やされているため、放熱器111を通過して温水タンク120に戻される温水等Wが作動油タンク250を通ると、温水等Wが、相対的に温度の低い作動油Rによって却って冷やされることになり、温水タンク120での電熱器121による温水等Wの加温の程度を増大させることになる。
【0046】
しかし、本実施形態の暖房装置100によれば、制御装置150が開閉弁171,172や切替弁170を、温水等Wを迂回管路160に通させる状態(熱交換器140を通させない状態)に切り替えることにより、温水等Wが作動油タンク250を通らないため、温水等Wが作動油Rによって却って冷やされるのを防止することができ、これにより、電熱器121による温水等Wの加温の程度の増大を防止することができる。
【0047】
上述した実施形態の暖房装置100は、循環管路130に熱源としての作動油タンク250(作動油R)が設けられたものとして説明したが、例えば既存の作業機械用暖房装置を改造した構成として本発明の作業機械用暖房装置を捉えた場合、図4Aに示すように、既存の循環管路130(戻り管路132)に、作動油タンク250を有する迂回管路160を接続して、その両管路132の接続部近傍に開閉弁171,172(図4Bにおいては単一の切替弁170)を設けた構成となるが、既存の循環管路130を迂回管路として捉え、かつ迂回管路160を循環管路として捉えた本発明に係る作業機械用暖房装置の実施形態に相当する。
【0048】
(実施形態2)
上述した実施形態の暖房装置100は、迂回管路160と開閉弁171,172または切替弁170とが、温水等Wを熱源としての作動油タンク250(作動油R)を通過させるか否かにより電熱器121による加温の前に戻り管路132内の温水等Wを温めるか否かを切り替える切替手段を構成したものであるが、本発明の作業機械用暖房装置は、このような切替手段によって作動油タンク250による戻り管路132内の温水等Wの温めの実施と不実施とを切り替えるものに限定されるものではなく、例えば、熱交換器自体が熱交換動作の実施または不実施を切り替える切替手段の機能を兼ねるものであってもよい。
【0049】
すなわち、実施形態2の暖房装置100′は、例えば熱交換器として、受熱部182と放熱部183とを備えたヒートパイプ180を適用することができる。
【0050】
そして、この熱交換器としてヒートパイプ180を適用した暖房装置100′は、図5に示すように、既存の作動油タンク250の作動油R中にヒートパイプ180の受熱部182が浸して配置され、循環管路130のうち放熱器111から温水タンク120に温水等Wが戻される戻り管路132が放熱部183に巻き付けて配置された構成である。
【0051】
ヒートパイプ180は、傾斜して配置されて、または垂直に配置されて、受熱部182が放熱部183より低い位置のとき、受熱部182から放熱部183にかけて熱放出を行う。換言すれば、放熱部183より低い位置の受熱部182の温度が放熱部183の温度より低い場合には、受熱部182から放熱部183にかけての熱放出は行われない。
【0052】
このため、下側に位置する受熱部182の温度が上側に位置する放熱部183の温度よりも高いときは受熱部182で受けた熱を放熱部183に伝達し、これとは反対に、受熱部182の温度が放熱部183の温度より低いときは受熱部182で受けた熱が放熱部183に伝達されないため、ヒートパイプ180自体が熱交換動作の実施と不実施とを自動的に切り替えることができる。つまり、ヒートパイプ180は、切替手段および切替手段を制御する制御装置の機能を有している。
【0053】
したがって、図5に示した構成の暖房装置100′によっても、図2に示した暖房装置100と同様に、放熱器111を通過して温水タンク120に戻される温水等Wが、温水タンク120に戻される前に、熱交換動作の実施と不実施とを切り替えることにより、温水等Wを加温するか否かを切り替えることができる。
【0054】
作動油タンク250の内部に貯留されている作動油Rは、油圧ポンプ240で圧縮等されて作業装置230等を駆動するため、通常は非常に高温となっており、その温度が温水等Wの温度T1より高い温度T2のときは、ヒートパイプ180の受熱部182が放熱部183よりも高い温度となるため、ヒートパイプ180による熱交換(熱放出)が実施される。
【0055】
すなわち、作動油タンク250に収容された高温の作動油Rに受熱部182が浸して配置されたヒートパイプ180は、その受熱部182で受けた熱を放熱部183に伝達し、放熱部183に巻き付けて設けられた戻り管路132を通過した温水等Wは、放熱部183に伝達された熱で温められて、温水タンク120に流れ込むことになり、電熱器121による加温の程度を抑制することが可能となる。
【0056】
一方、始動時や作業装置230が長時間停止していた場合等においては、作動油Rの温度が比較的低い状態にある。特に、冬期や夜間などは、作動油タンク250自体も外気などによって冷やされていて、その温度が温水等Wの温度T1より低い場合もある。
【0057】
そのときは、ヒートパイプ180の受熱部182が放熱部183よりも低い温度となるため、ヒートパイプ180による熱交換が実施されない。
【0058】
したがって、放熱部183に設けられた戻り管路132を通過した温水等Wは、受熱部182の低い温度で冷やされることなく温水タンク120に戻ることになり、電熱器121による加温の程度の増大を防止することができる。
【0059】
なお、ヒートパイプ180は、その姿勢における水平面に対する傾斜の角度に応じて、受熱部182から放熱部183への熱の伝達程度を調整することができる。
【0060】
つまり、傾斜の角度を90[deg]に近づけるにしたがって、受熱部182から放熱部183への熱の伝達程度を大きくすることができる。
【0061】
上述した実施形態に係る暖房装置100,100′は、外部の熱源として作動油Rを適用したものであるが、本発明に係る作業機械用暖房装置は、作動油R以外の既存の熱源を外部の熱源として適用することもできる。
【0062】
この場合、作業機械を作動させる通常の運転状態において循環管路130の戻り管路132を流れる温水等Wの温度よりも高い温度のものであれば、上述した熱源として適用することができる。
【0063】
なお、本実施形態の暖房装置100,100′が適用される作業機械は油圧ショベル200であるが、本発明に係る作業機械用暖房装置が適用される作業機械は油圧ショベルに限定されるものではなく、ホイールローダ、クレーン車等種々の作業機械を適用することができる。
【0064】
また、本実施形態の暖房装置100,100′が適用される作業機械は電動式の油圧ショベル200であるが、本発明に係る作業機械用暖房装置が適用される作業機械は外部電源から電力を供給されるものに限定されるものではなく、バッテリ駆動式のものを適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
100,100′ 暖房装置(作業機械用暖房装置)
111 放熱器
120 温水タンク
121 電熱器
122 スイッチ
130 循環管路(循環路)
131 送り管路
132,132a,132b 戻り管路
134 ポンプ
140 熱交換器
150 制御装置
160 迂回管路(迂回路)
171,172 開閉弁
180 ヒートパイプ
250 作動油タンク
270 給電ケーブル
280 運転室
300 電源
R 作動油
T0,T1,T2,T3 温度
W 温水等(水乃至温水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の運転室の内部に設けられた放熱器と、
液体を収容する、電熱器が設けられた容器と、
前記放熱器と前記容器との間で前記液体を循環させる循環路と、
前記循環路のうち前記放熱器から前記容器に向かう管路に設けられ、外部の熱源で発生した熱が供給されて前記液体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器による熱交換の実施と不実施とを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする作業機械用暖房装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記放熱器を通過した前記液体が前記熱交換器を通過しないように前記熱交換器を迂回させて前記循環路に接続された迂回路を通過させる状態と、前記放熱器を通過した前記液体を前記熱交換器を通過させる状態とで切り替える切替弁とを備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の作業機械用暖房機。
【請求項3】
前記循環路のうち前記放熱器から前記熱交換器に向かう管路における前記液体の温度を検出する放熱後温度検出器と、
前記熱源の温度を検出する熱源温度検出器と、
前記放熱後温度検出器によって検出された第1の温度が前記熱源温度検出器によって検出された第2の温度よりも高いときは、前記切替手段を前記熱交換の不実施側に切り替えさせ、前記第1の温度が前記第2の温度よりも低いときは、前記切替手段を前記熱交換の実施側に切り替えさせる制御装置と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械用暖房装置。
【請求項4】
前記熱交換器および前記切替手段が、受熱部と放熱部とを備えたヒートパイプであり、前記受熱部が前記外部の熱源内に配置され、前記放熱部が前記受熱部よりも高い位置で、前記放熱器から前記容器に向かう循環路に巻かれて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械用暖房機。
【請求項5】
前記外部の熱源が作動油タンクであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の作業機械用暖房装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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