作業車
【課題】電動モータからの駆動力を走行伝動系に伝える作業車において、電源ユニットと空調装置とを合理的に備える。
【解決手段】キャビンDの上部に配置されるルーフ部Rに電源ユニットとエアーコンディショナーSとを備え、ルーフ部Rに形成した冷却空間Nに電源ユニットの二次電池59を備えた。この冷却空間Nにキャビン外部の空気を冷却風として供給する前部ファン67と後部ファン68とを備えており、冷却空間Nと隔絶する換気空間Tをルーフ部Rに形成し、エアーコンディショナーSに外部の空気を供給する場合には、キャビン外部の空気を換気空間TからエアーコンディショナーSに供給する。
【解決手段】キャビンDの上部に配置されるルーフ部Rに電源ユニットとエアーコンディショナーSとを備え、ルーフ部Rに形成した冷却空間Nに電源ユニットの二次電池59を備えた。この冷却空間Nにキャビン外部の空気を冷却風として供給する前部ファン67と後部ファン68とを備えており、冷却空間Nと隔絶する換気空間Tをルーフ部Rに形成し、エアーコンディショナーSに外部の空気を供給する場合には、キャビン外部の空気を換気空間TからエアーコンディショナーSに供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車に関し、詳しくは、電源ユニットの配置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車として特許文献1には、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動機駆動バスの車体のルーフの上面に電源ユニット(文献ではバッテリーユニット)を配置した構成が示され、この構成により走行風をバッテリーユニットに送る形態でバッテリーユニットの冷却を実現する点が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004‐66889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようにルーフ部に電源ユニットを配置する構成では、走行機体の内部に電源ユニットを配置するための空間を確保する必要がなく、走行時に外気を取り込んで電源ユニットを良好に冷却できるものである。
【0005】
作業車としてトラクタを想定すると、キャビン内部の空調が必要となるものの、走行機体のエンジンでコンプレッサを駆動し、このコンプレッサからの冷媒をキャビンに導く構成では、配管に手間が掛かるものとなる。
【0006】
このように、走行機体にキャビンを備える作業車において電動モータの駆動力を走行伝導系に伝える構成のものを考えると、電源ユニットと空調装置との配置を合理的に行う必要がある。
【0007】
特に、リチウムイオン電池のように温度上昇により性能が低下するものでは冷却を行いながら、漏電等を阻止するために防水性も要求される。
【0008】
本発明の目的は、電源ユニットと空調装置とを備えた作業車を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車であって、運転者が搭乗するキャビンのルーフ部に前記電源ユニットと、前記キャビンの内部の空気温度の調整を行う空調装置とを備えている点にある。
【0010】
この構成によると、電源ユニットをキャビンのルーフ部に備えることにより、走行機体に電源ユニットを配置するための空間を確保しなくて済む。また、キャビンに空調装置を備えているので、この走行機体の走行用の電動モータの近傍にコンプレッサを備える構成の空調装置と比較すると、冷媒を給排するための配管をキャビンと走行機体との間に形成しなくて済む。更に、電源ユニットと空調装置とをルーフ部に備える構成であるため、この電源ユニットと空調装置とを備えるための空間を走行機体に確保しなくて済み、比較的容易に設計変更を行えるルーフ部に対して電源ユニットと空調装置とをコンパクトに備えることも可能になる。
その結果、電源ユニットの配置に無理がなく、配管等の作業を低減し、走行機体の設計変更を行わずとも電源ユニットと空調装置とをルーフ部にコンパクトに備えることが可能な作業車が合理的に構成された。
【0011】
本発明は、前記ルーフ部が下側の底壁と上側の上壁との間にルーフ内空間が形成される構成を有しており、このルーフ内空間に対して、前記電源ユニットを収容するユニット収容ケースと、このユニット収容ケースに対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクトと、前記ユニット収容ケースの空気をキャビン外部に送り出す排気ダクトとを配置することで、この吸気ダクトの内部空間と、ユニット収容ケースの内部空間と、排気ダクトの内部空間とを併せて冷却空間が形成され、前記吸気ダクトを介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気を前記ユニット収容ケースから前記排気ダクトを介してキャビン外部に排出するファンが前記冷却空間の内部に備えられても良い。
【0012】
これによると、ルーフ部の底壁と上壁との間のルーフ内空間に配置されるユニット収容ケースに電源ユニットを収容できる。また、ユニット収容ケースに吸気ダクトと排気ダクトとを接続して冷却空間を形成し、キャビン外部の空気を吸気ダクトで吸引し、ユニット収容空間を通過した空気を排気ダクトによりキャビン外部に送り出すファンを備えているので、電源ユニットに対する雨水や塵埃の侵入を抑制しながら、走行機体の走行が停止した状態においてもキャビン外部の空気を電源ユニットに供給する形態での冷却が可能になる。
【0013】
本発明は、キャビン外部の空気を取り込む換気空間が、前記冷却空間と分離する状態で前記ルーフ部に形成され、前記空調装置でキャビン内部の換気を行う際には前記換気空間から取り込んだ空気を前記空調装置に供給しても良い。
【0014】
これによると、冷却空間と分離する状態でルーフ部に形成された換気空間に対してキャビン外部の空気を取り込みながら空調装置によるキャビン内部の空調が可能となる。また、換気空間の空気を空調装置に供給する構成であるため、例えば、冷房を行う場合には電源ユニットの熱が作用しない換気空間から取り入れた空気の温度を下げることになり、エネルギーの無駄もない。
【0015】
本発明は、前記電源ユニットが、二次電池と、この二次電池の充電と放電とを管理する電池管理手段とを備えており、前記二次電池に接続する電力ケーブルと、前記電池管理手段に接続する信号ケーブルとが、前記キャビンの複数のピラーのうち互いに異なるものの内部に配設されても良い。
【0016】
これによると、電力ケーブルと信号ケーブルとが異なるピラーの内部に配設されることにより、ピラーがシールドとして機能すると同時に電力ケーブルと信号ケーブルとの距離が拡大するので、電力ケーブルにノイズが乗った場合にも、このノイズが信号ケーブルに作用する現象を低減して、誤作動を抑制できる。
【0017】
本発明は、前記電動モータとして、発電機として機能するものが用いられ、前記走行伝動系と前記電動モータとに駆動力を伝えるエンジンが備えられると共に、
前記電動モータで発電された電力を前記電源ユニットの前記二次電池に充電する充電モードと、前記電動モータに前記電源ユニットからの電力を供給する駆動モードとの切り換えを行う充放電制御手段を備えても良い。
【0018】
これによると、充放電制御手段は、エンジンの駆動力から電動モータが発電した電力を二次電池に充電する充電モードと、二次電池からの電力を電動モータに供給し、この電動モータの駆動力を走行系に伝える駆動モードとの切り換えを実現することになり、作業車をハイブリッド型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】伝動ハウジングの内部の構造を示す断面図である。
【図3】エンジンの出力軸にロータを連結する際の手順を示す断面図である。
【図4】電動油圧ポンプの位置を示す側面図である。
【図5】電動油圧ポンプと油圧フィルタとの位置を示す平面図である。
【図6】油圧フィルタとミッションケース内の油路等の配置を示す断面図である。
【図7】油圧系の構成をブロック的に示す油圧回路図である。
【図8】キャビンのルーフ部の構成を示す縦断側面図である。
【図9】電源ユニットの冷却構成を示す横断平面図である。
【図10】電力制御ユニットの配置を示すトラクタ後部の平面図である。
【図11】電力制御ユニットの配置を示すトラクタの後面図である。
【図12】電力制御ユニットの配置を示す後部フェンダーの縦断側面図である。
【図13】電力制御ユニットの配置を示す後部フェンダーの横断平面図である。
【図14】ケース部と供給ダクトと保護プレートとを示す分解斜視図である。
【図15】電力を給排する制御系のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、操向操作(操舵)自在な左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2とを備えた走行機体Aの前部のエンジンボンネット3の内部にディーゼル型のエンジン4を備え、このエンジン4の後面側にジェネレータモータM(電動モータの一例)と主クラッチ機構Cとを収容する伝動ハウジング5を備え、この伝動ハウジング5の後面にミッションケース7が連結し、走行機体Aの後部で左右の後車輪2の上方を覆うように走行機体Aから外側方に張り出す形態で備えられた左右の後部フェンダー8の間に運転座席9を備え、この運転座席9を収容する運転空間を形成するキャビンDを備えて作業車としてのハイブリッド型のトラクタが構成されている。
【0021】
走行機体Aの後部(ミッションケース7の後端側)に昇降用アクチュエータとして油圧型の昇降シリンダ10と、この昇降シリンダ10の作動により上下に揺動する左右一対のリフトアーム11とが備えられ、ミッションケース7の後端には駆動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸12が備えられている。これにより、左右のリフトアーム11によって昇降自在となる3点リンク機構(図示せず)を介してロータリ耕耘装置やプラウなどの対地作業装置を連結することが可能となり、ロータリ耕耘装置などの駆動型の対地作業装置に対して動力取出軸12からの駆動力を伝え、耕起作業が実現する。
【0022】
このトラクタでは、ジェネレータモータMが、エンジン4の駆動力により発電を行う三相交流発電機の機能と、外部から供給される電力により回転作動する三相交流モータの機能とを併せ持つものが使用されている。また、キャビンDのルーフ部Rの内部にリチウムイオン型やニッケル水素型等の二次電池59と電池管理システム60(電池管理手段の一例・BMS)とを有する電源ユニットB(図8、図15を参照)が備えられ、この電源ユニットBからの直流電力を三相交流電力に変換してジェネレータモータMに供給する第1電力制御ユニットE1が右側の後部フェンダー8の下側に備えられ、油圧系を駆動する第2電力制御ユニットE2が左側の後部フェンダー8の下側に備えられている。また、ジェネレータモータMで発電された三相交流電流を直流電流に変換し昇圧して電源ユニットBに供給する制御と、第1,第2電力制御ユニットE1,E2の制御とを行う主制御システムが運転座席9の下側に配置されている。尚、第1,第2電力制御ユニットE1,E2の上位概念として電力制御ユニットEと称する。
【0023】
〔主制御システム〕
主制御システムは、図15に示すように、主制御ユニット101と、エンジン制御ユニット102と、ハイブリッド制御ユニット103と、モータ制御ユニット104と、整流昇圧ユニット105とを有しており、これらはECUとして構成される。また、この主制御システムは充放電手段として機能するものであり、走行伝動系に作用する負荷が小さい場合には、ジェネレータモータMからの発電電力を電源ユニットBの二次電池59に充電する充電モードを選択し、走行伝動系に作用する負荷が閾値を超えた場合には、電源ユニットBからの電力を第1電力制御ユニットE1で三相交流に変換してジェネレータモータMに供給する駆動モードを選択するように構成され、この駆動モードでは、ジェネレータモータMの駆動力を走行伝動系に伝えることによりエンジン回転をアシストして駆動力不足やエンジンストップを招くことのない走行を実現する。尚、走行伝動系とはエンジン4の駆動力を前車輪1と後車輪2とに伝える機能を有するミッションケース7等の伝動機構であり、ミッションケース7と制御構成の詳細とは後述する。
【0024】
〔伝動ハウジング〕
図2に示すように、エンジン4とジェネレータモータMとフライホイール15と主クラッチ機構Cとが、この順序で備えられ、エンジン4の後部に連結したリヤエンドプレート16に対して前述した伝動ハウジング5が連結し、これにより伝動ハウジング5にジェネレータモータMとフライホイール15と主クラッチ機構Cとが収容されている。
【0025】
ジェネレータモータMは、永久磁石21を外周に備えたロータ22と、このロータ22を取り囲む位置に配置されたステータ23とで構成され、ステータ23は、ステータコアの複数のティース部(図示せず)にコイルを巻回した構造を有している。エンジン4の出力軸4A(クランク軸)の軸端に対して、この出力軸4Aの回転軸芯Xと同軸芯で、ジェネレータモータMのロータ22が連結している。このロータ22のうち出力軸4Aと反対側の面にフライホイール15が配置され、これらが連結機構Jによって連結されている。この構成では、ロータ22が、ジェネレータモータMの駆動力を走行伝動系に伝える機能を有すると共に、エンジン4の駆動力をジェネレータモータMに伝える機能を有した伝動部として構成されている。
【0026】
連結機構Jは、出力軸4Aに対して回転軸芯Xと平行姿勢で立設され、ロータ22に穿設されたロータ貫通孔22Aと、フライホイール15に穿設されたホイール貫通孔15Aとに貫通する複数のスタッド軸24と、このスタッド軸24の軸端のネジ部24Aに螺合するナット25とで構成されている。このような構成から出力軸4Aの軸端とナット25との間にロータ22とフライホイール15とを挟み込む状態で夫々が連結される状態に達する。
【0027】
伝動ハウジング5は、前部ハウジング5Aと後部ハウジング5Bとを分離可能に連結した構造を有しており、ジェネレータモータMを組み立てる際には、前部ハウジング5Aの内面にステータ23を備えた状態で、この前部ハウジング5Aをリヤエンドプレート16に連結し、次に、出力軸4Aの後端にロータ22を連結する作業が行われる。
【0028】
この作業において、ロータ22の永久磁石21の吸引力によってロータ22がステータ23の内面に吸着する不都合を阻止するために、前述した複数のスタッド軸24を備えており、ロータ22には回転軸芯Xと平行姿勢(図面では同軸芯)で貫通し、内面に雌ネジを有するネジ孔22Bが形成されている。
【0029】
このネジ孔22Bは送り速度調整用のネジ軸18が螺合するための雌ネジ部が形成され、ロータ22を出力軸4Aに連結する際には、図3(a)に示すように、ネジ軸18の先端がロータ22に突出するように螺合させた状態で、複数のスタッド軸24をロータ22のロータ貫通孔22Aに挿通させ、ネジ軸18の円錐状の先端を出力軸4Aの後面で回転軸芯X上に形成した円錐状の凹部4Bに嵌め込むことになる。この状態において、ネジ軸18をロータ22から抜き取る方向に回転操作することにより、永久磁石21がステータ23に吸引される吸引力によりロータ22と出力軸4Aの後端との距離を徐々に短縮することになる。この操作によりロータ22が出力軸4Aの後端に接触する位置に達した状態では、ロータ22の外周とステータ23の内周との間に間隙が形成され、この後、図3(b)に示すように、複数のスタッド軸24をフライホイール15のホイール貫通孔15Aに挿通させ、スタッド軸24にナット25を螺合させ締結することで、このロータ22とフライホイール15とが連結状態に達する。また、出力軸4Aの後面の中央位置には回転軸芯Xと同軸芯となる凹状の被嵌合部4Cが形成され、ロータ22の前面には回転軸芯Xと同軸芯となる凸状の嵌合部22Cが形成され、ロータ22を出力軸4Aに連結時には、被嵌合部4Cと嵌合部22Cとが嵌合して強固な位置決め状態に達する。
【0030】
主クラッチ機構Cは、フライホイール15の後面に連結するクラッチカバー27の内部にクラッチディスク28と、プレッシャプレート29と、ダイヤフラムバネ30とを配置し、クラッチディスク28からの駆動力が伝えられるクラッチ軸31と、図1に示すクラッチペダル52の踏み込み操作に連係して主クラッチ機構Cの切り操作を行うレリーズユニット(図示せず)とを備えている。
【0031】
クラッチ軸31は、後部ハウジング5Bに対して回転軸芯Xを中心にして回転自在に支持され、クラッチディスク28は、スプライン構造によりクラッチ軸31に対してトルク伝動自在、かつ、回転軸芯Xに沿って変位自在に支持され、ダイヤフラムバネ30は、プレッシャプレート29を介してクラッチ入り方向への付勢力をクラッチディスク28に作用させる構成を有している。また、クラッチ軸31の後端からの駆動力を伝動ギヤ32を介して中間伝動軸33に伝える伝動系が後部ハウジング5Bに備えられ、この中間伝動軸33の駆動力はミッションケース7に伝えられる。
【0032】
尚、主クラッチ機構Cはクラッチペダル52が非操作(踏み込まれない)状態である場合にはダイヤフラムバネ30の付勢力がプレッシャプレート29からクラッチディスク28に作用することから、クラッチディスク28がフライホイール15の後面に圧接してクラッチ入り状態に維持される。これとは逆にクラッチペダル52が踏み込み操作された場合には、ダイヤフラムバネ30からプレッシャプレート29に作用する付勢力が大きく低下するためクラッチディスク28とフライホイール15の後面とが非接触状態となりクラッチ切り状態に達する。
【0033】
前述したフライホイール15の外周にはリングギヤ部15Bが形成され、図4及び図5に示すように、このリングギヤ部15Bに噛合して回転力を伝えるピニオンギヤ(図示せず)を有したスタータモータ19がエンジン4の左側部に配置されている。また、ジェネレータモータMのステータ23のコイルに接続する3本の電力線Qが伝動ハウジング5の右側部に接続している。この電力線Qは、後述する電力制御ユニットEから電力が供給される経路として機能すると共に、ジェネレータモータMで発電した電力を送り出す経路として機能する。このトラクタでは、スタータモータ19をエンジン4の右側部に配置し、電力線Qを伝動ハウジング5の左側部に配置しても良い。
【0034】
〔ジェネレータモータに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、エンジン4の出力軸4Aに対してジェネレータモータMのロータ22を連結する際には、ロータ22のネジ孔22Bの全長より充分に長い寸法の送り速度調整用のネジ軸18を準備しておき、このネジ軸18の両端部がネジ孔22Bから突出するようにネジ孔22Bに螺合させ、出力軸4Aに備えたスタッド軸24がロータ22のロータ貫通孔22Aに貫通する状態にセットする。この状態では、ロータ22とステータ23との間に吸引力が作用するものであるが、ネジ軸18の一方の端部が出力軸4Aの凹部4Bの内面に接当するためロータ22が出力軸4Aに接近する方向(回転軸芯Xに沿う方向)への変位が抑制される。また、スタッド軸24がロータ22のステータ内面に接近する方向(回転軸芯Xに直交する方向)への変位が抑制される。
【0035】
この状態で、ネジ軸18の一方の端部のロータ22からの突出量を低減するように、ネジ軸18の他方の端部を人為的な回転操作や、電動アクチュエータ等により回転操作することで、ロータ22とステータ23との間に作用する吸引力の影響を排除する状態でエンジン4の出力軸4Aに接近する方向にロータ22を任意の速度で変位させることが可能となり、適正な位置にロータ22を案内して、このロータ22とフライホイール15とを連結機構Jで出力軸4Aに対して連結できることになる。このようにロータ22を適正な位置に案内した後にネジ軸18は取り外される。
【0036】
また、フライホイール15のうち出力軸4Aと反対側の面を利用することで部品点数を増大させずに主クラッチ機構Cを小型に構成することが可能となり、主クラッチ機構Cで摩耗粉が発生しても、フライホイール15の妨げにより、ジェネレータモータMへの摩耗粉の侵入を抑制して高性能の作動を維持する。また、伝動ハウジング5の左右の一方の側部にスタータモータ19を配置し、他方の側部にジェネレータモータMのステータ23のコイルに接続する3本の電力線Qを振分けて配置したことにより、伝動ハウジング5の側部の空間を有効に利用できる。
【0037】
〔ミッションケース〕
ミッションケース7は、図5に示すように、油圧変速ユニットFを内蔵しており、この油圧変速ユニットFで変速された走行駆動力をミッションケース7から前車輪1と後車輪2とに伝える伝動系が形成されている。油圧変速ユニットFの構成は図面に示していないが、エンジン4からの動力を断続する油圧式の変速クラッチと、シンクロメッシュ型の複数の変速ギヤと、夫々の変速ギヤのスリーブをシフト操作する複数の油圧式の変速シリンダと、変速シリンダを制御する変速バルブとを備えている。
【0038】
油圧変速ユニットFは、クラッチペダル52を踏み込み操作しなくとも、主変速レバー55(図1を参照)を操作するだけで変速を実現する構成を油圧回路のみによって実現するものである。その変速作動の一例を挙げると、例えば、主変速レバー55を中立位置から前進1速位置に操作した場合には、変速クラッチが切り操作された後に、変速シリンダの作動により前進1速位置に対応した変速ギヤが変速位置にセットされ、この後に変速クラッチを入り状態に復帰させる制御が油圧によりシーケンシャルに実行される。
【0039】
この油圧変速ユニットFからの走行駆動力は、ミッションケース内部の後部デファレンシャル機構(図示せず)を介して左右の後車輪2に伝えられると共に、ミッションケース7の内部に備えた前輪増速装置(図示せず)からの駆動力が前輪駆動軸35を介して前車輪1のデファレンシャル機構(図示せず)に伝えられる。この前輪増速装置は前車輪1が設定角度を超えてステアリング操作された場合に、前車輪1の駆動速度を増大させるギヤ変速系と、図7に示す油圧式のADクラッチ35Cとを備えている。このADクラッチ35Cは走行機体Aの直進状態ではバネの付勢力によって後車輪2と等速での駆動状態を維持し、ステアリング量が設定値を超えた場合には高速伝動状態に切り換えられる。
【0040】
〔油圧構成〕
図1に示すように、ミッションケース7の前方でエンジン4より更に前方位置には、前車輪1のステアリング作動を行う油圧式のステアリングユニット36が備えられている。図7に示すように、このステアリングユニット36と、昇降シリンダ10と、PTOクラッチ37と、ADクラッチ35Cとが油圧装置の一例であり、図4及び図5に示すように、ミッションケース7の右側の外側部で、キャビンDのステップの下側には、これらに作動油を供給するため前部位置に第1油圧ポンプP1が備えられ、この後部位置に第2油圧ポンプP2が一直線状に配置され、ミッションケース7の左側の外側部には、ミッションケース7の潤滑油を濾過して作動油として第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とに供給する油圧フィルタ38が取り付けられている。尚、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とによって電源ユニットBからの電力によって作動する電動油圧ポンプが構成され、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との下面がミッションケース7の下面より上側に位置するように相対的な位置関係が設定されている。
【0041】
第1油圧ポンプP1は、電力によって作動する第1ポンプモータP1mと、これによって駆動される第1ポンプP1pとで構成され、第2油圧ポンプP2は、電力によって作動する第2ポンプモータP2mと、これによって駆動される第2ポンプP2pとで構成されている。第1ポンプモータP1mは後方側に駆動軸が突設され、この駆動軸に第1ポンプP1pが連結し、第2ポンプモータP2mは前方側に駆動軸が突設され、この駆動軸に第2ポンプP2pが連結し、第1ポンプP1pと第2ポンプP2pの中間位置に、第1ポンプP1pからの作動油を分配して送り出す分配弁39が配置されている。特に、第1ポンプモータP1mの駆動軸の軸芯と、第2ポンプモータP2mの駆動軸の軸芯とが、互いに平行する状態で機体上下及び左右方向で近接する位置関係に設定されている。この油圧構成では、第1油圧ポンプP1からの作動油を分配弁39で分配する構成に代えて、第2油圧ポンプP2からの作動油を分配弁39で分配する構成であっても良い。
【0042】
第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとは三相モータとして構成され、第2電力制御ユニットE2から三相交流電力が供給される。尚、第1油圧ポンプP1と比較して第2油圧ポンプP2で送り出す作動油の油量が多く設定され、第1ポンプモータP1mと比較して第2ポンプモータP2mに大きい容量で大型の電動モータが用いられている。第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとしてブラシレス直流モータのように回転速度を制御できるものを使用しても良い。
【0043】
図6に示すように、ミッションケース7の底壁部7Aには、油圧フィルタ38で濾過した潤滑油を作動油として送り出すように、ミッションケース7の内部空間と分離する機体左右向きの主送油路7B(内部油路の一例)が底壁部7Aの一端から他端に亘って形成され、この主送油路7Bから機体前後向きに分岐した分岐送油路7C(内部油路の一例)が形成され、また、ミッションケース7の壁部には内部空間に貯留されている潤滑油を油圧フィルタ38に供給する吸引油路7Dが形成されている。ミッションケース7は鋳造物であり、これら主送油路7Bと、分岐送油路7Cと、吸引油路7Dとは鋳造時にミッションケース7と一体的に形成される。
【0044】
主送油路7Bからの作動油は第2送油管L2を介して第2ポンプP2pに供給され、分岐送油路7Cからの作動油は第1送油管L1を介して第1ポンプP1pに供給される。
【0045】
図7に示す如く第1ポンプP1pからの作動油は、分配弁39を介して、前車輪1のステアリング作動を行うステアリングユニット36に供給されると共に、分配弁39を介して、PTOクラッチ37(厳密にはPTOクラッチ37の制御弁)と、油圧変速ユニットFと、ADクラッチ35C(厳密にはADクラッチ35Cの制御弁)とに供給される。また、第2ポンプP2pからの作動油は、走行機体Aの後部の昇降シリンダ10(厳密には昇降シリンダ10の制御弁)に供給されると共に、対地作業装置のローリング姿勢を制御するローリングシリンダ13(厳密にはローリング制御弁)に供給される。
【0046】
〔油圧構成に関連する実施形態における作用・効果〕
このような油圧構成から、油圧機器を作動させる際に第1油圧ポンプP1の第1ポンプモータP1m、又は、第2油圧ポンプP2の第2ポンプモータP2mを作動させることにより、油圧機器を作動させない場合に電力の無駄な消費をなくすことが可能となる。また、ミッションケース7の一方の外側部に電動油圧ポンプとして第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との2つの油圧ポンプを配置し、ミッションケース7の他方の外側部に油圧フィルタ38を配置しているので、ミッションケース7と油圧ポンプとの間の油路長を最短にして油圧系の小型化を実現するだけではなく、例えば、ミッションケース7一方の外側部に油圧ポンプと油圧フィルタ38とを配置するものと比較してミッションケース7の両側部の空間を有効に利用して油圧系を構成することが可能となる。
【0047】
また、第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとの中間の空間に第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39とが配置されるため、例えば、草木や地面の突出物が存在する環境で走行機体Aを前進させる場合でも、第1ポンプモータP1mが草木や突出物に接触して排除するため、これらが第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39との何れかに接触して破損する不都合を解消する。また、走行機体Aを後進させる場合には、前述とは逆に第2ポンプモータP2mが草木や突出物に接触して排除することで第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39との何れかに接触して破損する不都合を解消する。
【0048】
この油圧構成では、電動油圧ポンプとして第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との2つの油圧ポンプを示したが、1つの電動油圧ポンプを備えても良く、3つ以上の油圧ポンプを備えても良い。また、分配弁39は他の油圧装置に作動油を分配するように構成しても良く、電動油圧ポンプをミッションケース7の左側に配置し、油圧フィルタ38をミッションケース7の右側に配置しても良い。また、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との配置を前述した構成とは逆にして、第1油圧ポンプP1を後部に配置し、第2油圧ポンプP2を配置しても良い。
【0049】
〔キャビン〕
キャビンDは、前部で支柱状となる左右一対の前ピラー41と、前後方向の中間で支柱状となる左右一対の中間ピラー42と、後部で支柱状となる左右一対の後ピラー43と、これらの上部に連結するトップフレーム44と、このトップフレーム44を覆う位置に配置されるルーフ部Rとを有している。キャビンDの前部位置で左右の前ピラー41に挟まれる位置にフロントガラス45を備え、両側部で前ピラー41と中間ピラー42との間にガラス製のドア46を開閉自在に備え、このドア46の後方位置で中間ピラー42と後ピラー43との間にサイドガラス47を備え、後部位置で左右の後ピラー43に挟まれる位置にリヤガラス48を備えている。この構成では左右一対の前ピラー41と、左右一対の中間ピラー42と、左右一対の後ピラー43とが断面形状コ字状となる鋼材が用いられ、これらの上端に対してトップフレーム44が溶接固定されている。
【0050】
このキャビンDは外部の塵埃や騒音等の運転空間内への侵入を阻止する気密構造を備えており、ルーフ部Rの後部にはキャビン内の冷房と暖房とを行う空調装置としてエアーコンディショナーSが備えられている
【0051】
図1及び図10に示すように、キャビンDの内部で、運転座席9の前部位置には前車輪1の操向操作を行うステアリングホイール51が配置され、ステアリングホイール51の左側の下方にはクラッチペダル52が配置され、右側下方には左右一対のブレーキペダル53とアクセルペダル54が配置されている。また、運転座席9の右側部にはミッションケース7の変速を行う主変速レバー55と、昇降シリンダ10を制御する昇降レバー56とが配置されている。
【0052】
〔キャビン:電源ユニットの冷却構成〕
キャビンDのルーフ部Rに備えられる電源ユニットBは、二次電池59の温度上昇を抑制する目的から、キャビン外部の空気を吸引して冷却風として二次電池59と電池管理システム60とに供給する冷却系を備えている。
【0053】
図8及び図9に示すように、ルーフ部Rは、トップフレーム44に支持される形態でキャビンの内部空間側に配置されキャビン内の天井壁として機能する底壁61と、この上側の上壁62と、更に上側の外壁63を有し、底壁61と上壁62との間にルーフ内空間Kが形成されると共に、上壁62と外壁63との間に換気空間Tが形成されている。このルーフ部Rでは、底壁61と上壁62とは金属材と樹脂材との何れを用いるものであっても良いが、外壁63及び上壁62として樹脂材をブロー成形したものを用いることにより、直射日光が射す環境においても換気空間Tやルーフ内空間Kの温度を上昇させ難いものにしている。尚、換気空間Tは、ルーフ部Rにおいて冷却空間Nと分離して形成されるものであれば良く、例えば、ルーフ部Rの側部や後部に形成される構成であっても良い。
【0054】
電源ユニットBの二次電池59は、電池として機能する複数のセルを電気的に接続した構成を有しており、ルーフ部Rの前後及び左右中央部に配置され、この二次電池59の前方近傍位置に電池管理システム60が配置されている。ルーフ内空間Kには電源ユニットBを収容するユニット収容ケース64と、このユニット収容ケース64に対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクト65と、ユニット収容ケース64の空気をキャビン外部に送り出す排気ダクト66とを有する冷却空間Nが形成され、吸気ダクト65を介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気をユニット収容ケース64から排気ダクト66を介してキャビン外部に排出するように前部ファン67が吸気ダクト65の内部に備えられ、後部ファン68が排気ダクト66の内部に備えられている。また、このルーフ内空間Kの前部横一側には、前述した冷却空間Nと独立して電源ユニットBから電力制御ユニットEに供給される電流に対して複数の抵抗器の何れかを選択して電気抵抗を作用させるリレーボックスGが前方側ほど機体内側に傾斜する傾斜姿勢で配置されている。
【0055】
電源ユニットBは、二次電池59と電池管理システム60とを備えるものであり、これらがユニット収容ケース64の内部に露出する形態で収容する構成を想定しているが、この二次電池59と電池管理システム60とをボックス類に収容し、このボックスをユニット収容ケース64の内部に収容するように構成しても良い。ユニット収容ケース64は、電池収容空間64Aの前端側に空気の流れ方向での上流側ほど断面積が小さくなる導入空間64Bと、後端側に空気の流れ方向での下流側ほど断面積が小さくなる排出空間64Cとが形成されている。
【0056】
吸気ダクト65は、前端部に横方向に拡大する吸気部65Aが形成され、この吸気ダクト65の中間部分に前部ファン67が配置され、この前部ファン67の排出部がユニット収容ケース64の導入空間64Bの前端に接続している。吸気部65Aに空気を導入するためルーフ部Rの前端部の左右中央部には吸気開口Raが形成され、この吸気開口Raの前端位置には下部から斜め後方上方に突出する前ガイド板69Fと、上部から斜め前方下方に突出する後ガイド板69Rとが配置され、吸気部65Aにはエアーフィルタ70が備えられている。特に、前ガイド板69Fと後ガイド板69Rとの中間の領域には下方に開放することで雨水等を排出する開放部(図示せず)が形成されている。
【0057】
前部ファン67は左右軸芯周りで回転駆動されるシロッコファンが用いられ、後部ファン68は前後軸芯周りで回転駆動される軸流ファンが用いられている。尚、冷却空間Nに外気を吸引するファンとしては、前部ファン67と後部ファン68との何れか一方だけを備えても良い。
【0058】
排気ダクト66は、前端がユニット収容ケース64の電池収容空間64Aの後端に接続し、この排気ダクト66の後端がルーフ部の後端部の左右中央部に形成された排気開口Rbに接続しており、この排気開口Rbには、下部から斜め前方上方に突出する前排出ガイド板71Fと、上部から斜め後方下方に突出する後排出ガイド板71Rが備えられている。
【0059】
〔電源ユニットに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、前部ファン67と後部ファン68とを駆動して冷却空間Nに外気を吸引する際には、図8に示す如く、前ガイド板69Fの上側を通過した空気が、後ガイド板69Rの下端に周り込む形態で流動し、エアーフィルタ70で塵埃が除去された後に、吸気ダクト65に流れ込む。また、電源ユニットBがルーフ部Rの内部のルーフ内空間Kに配置されているので、雨水が電源ユニットBに対して直接的に接触することがなく、外気を吸引する際には、吸気開口Raに雨水や塵埃が侵入可能な状況にある場合でも、この雨水や塵埃を開放部(図示せず)から下方に排出することで吸気ダクト65に吸引されず、この雨水や塵埃が冷却空間Nに侵入して二次電池59に付着することもない。
【0060】
吸気ダクト65に吸引された空気は、ユニット収容ケース64の電池収容空間64Aに収容されている二次電池59と電池管理システム60の外面に接触することにより熱を奪い、この二次電池59の温度上方を抑制する。このように熱を奪った空気は排気ダクト66から排気開口Rbに送られ、前排出ガイド板71Fの上側を通過した空気が、後排出ガイド板71Rの下側を回り込む形態で流動し、ルーフ部Rの外部に排出される。また、排気開口Rbには後排出ガイド板71Rが備えられているため、排気開口Rbから雨水や塵埃が侵入する状況にある場合でも、侵入が抑制され、排気開口Rbの後端から排出されるのである。
【0061】
〔キャビン:空調構成〕
図8及び図9に示すように、エアーコンディショナーSは、ルーフ部Rの後端位置で後ピラー43より更に後方に張り出した位置に備えられている。エアーコンディショナーSは、左右一対の後ピラー43の上端より低い配置高さで、左右一対の後ピラー43に亘って設けられた横フレームに支持されている。このエアーコンディショナーSは、内部にエバポレータ(図示せず)と電気ヒータとを有した空調ユニット75と、この空調ユニット75に空気を送る送風ファン77とを備えている。キャビンDの内部において底壁61(キャビン内の天井壁)の下側には吸気口80が形成され、この底壁61の左右にはエアーコンディショナーSから送り出される空気をキャビンDの内部に供給する左右一対の空調ダクト78を備えている。
【0062】
このエアーコンディショナーSでは、コンプレッサを駆動して圧縮された冷媒をコンデンサで放熱した後に、膨張弁において膨張させ、エバポレータに供給することで冷房を実現するものを想定しているが、例えば、冷房と暖房との切り換え可能なヒートポンプ型として構成しても良い。
【0063】
底壁61は、エアーコンディショナーSの前部位置で斜め下方に屈曲する傾斜壁部61Aが形成され、また、傾斜壁部61Aの上端側から後方に延出する延出壁79を形成することで、この傾斜壁部61Aの後方と延出壁79との間にエアーコンディショナーSが配置され、かつ、送風ファン77に空気を供給する吸気空間Hが形成されている。尚、送風ファン77は上端から吸気を行い側方の空調ユニット75の方向に空気を送り出すシロッコファンが用いられている。
【0064】
また、この吸気空間Hに連通する上下向きの換気ダクト81が前述した換気空間Tに接続しており、この換気ダクト81の開閉自在な切換板82が備えられている。換気空間Tはルーフ部Rの側部に形成された換気口72を介して外部と連通している。換気ダクト81は、ユニット収容ケース64の電池収容空間64Aに隣接する位置に配置され、図9に示すように平面視では、電池収容空間64Aの外壁に近接する部位が斜め姿勢に成形された角パイプ状に形成されている。
【0065】
切換板82は人為操作により開閉自在に構成され、図8に仮想線で示す閉じ姿勢では吸気空間Hに対する外気の導入が阻止され、同図に実線で示す開放姿勢に操作された場合には、換気口72から換気空間Tに外気を吸引し、更に、この外気を換気ダクト81から吸気空間Hに供給できることになる。
【0066】
〔空調構成に関連する実施形態における作用・効果〕
このような構成のため、切換板82を閉じ姿勢に設定してエアーコンディショナーSを可動させた場合には、キャビン内の吸気口80から吸引した空調ユニット75で温調し、この空気を空調ダクト78を介してキャビン内に送り出すことでキャビン内の空気を循環させながら空調を行う循環モードでの空調が実現する。
【0067】
また、切換板82を開放姿勢に設定してエアーコンディショナーSを稼動させた場合には、吸気口80を閉じてキャビン内の空気の吸気を遮断する状態で、換気空間Tからの外気を換気ダクト81で吸引して、空調ユニット75で温度調整を行った後に空調ダクト78を介してキャビン内に送り出すことで外気とキャビン内の空気とを混合させて空調を行う外気混入モードでの空調が実現する。また、換気空間Tから空気を取り込む構成であるため、例えば、電源ユニットBの熱が作用して温度が上昇した空気を取り込む構成と比較すると、エアーコンディショナーSで冷房を行う際のエネルギーの無駄がない。
【0068】
特に、キャビンDのルーフ部Rに対して電源ユニットBを備え、空調装置としてのエアーコンディショナーSを備えているので、電源ユニットBを走行機体Aに備えるための空間を確保する必要がなく、エンジン4によって駆動されるエアーコンディショナーSを走行機体Aに備えたものと比較して、コンプレッサからの冷媒を給排するための配管をキャビンDに引き込む構成を採用しなくて済み、構成が簡素化する。更に、電源ユニットBとエアーコンディショナーSとをルーフ部Rに備える構成であるため、電源ユニットBとエアーコンディショナーSとを備えるための空間を走行機体Aに確保しなくて済むだけではなく、比較的容易に設計変更を行えるルーフ部Rに対してこれらをコンパクトに備えることも可能になる。
【0069】
〔電力制御ユニット〕
右側の第1電力制御ユニットE1と左側の第2電力制御ユニットE2とは電力の出力対象が異なるだけで基本的に共通する構成を有しているため、これらを一括して電力制御ユニットEとして説明する。図10〜図14に示すように、電力制御ユニットEは、後部フェンダー8の下側で後車輪2の上側に備えられている。前述したように、この電力制御ユニットEは、設定される電圧で、設定される周波数となる三相交流を生成するVVVF型のインバータとして構成されている。
【0070】
この電力制御ユニットEは、後部フェンダー8の下側に配置されることで良好な放熱を実現するものであるが、後車輪2の上方位置に配置されるため作業時等に後車輪2で跳ね上げられた泥土や小石の接触を規制する規制手段が備えられている。この規制手段としてのケース部85に電力制御ユニットEが収容され、ケース部85の下側に規制手段として水平姿勢の保護プレート86が配置されている。この保護プレート86は鋼材等の高強度の材料が用いられ、後部フェンダー8の縦壁8Aに連結固定され、更に、この保護プレート86の上面にケース部85が支持される形態で連結されている。保護プレート86の下面で後端側には鋼材等の高強度の材料が用いられ下方に突出するスクレーパ87が備えられ、この保護プレートの86の上面で後端側には縦壁状となる隔壁88が備えられている。尚、図面では、保護プレート86の上面に対してケース部85を連結した構造を示しているが、これらの中間に隙間を形成しても良い。また、スクレーパ87は保護プレート86の前部位置の1箇所、又は、前部位置と後部位置との2箇所に備えても良く、3箇所以上備えても良い。
【0071】
また、ケース部85は、前端と後端とが開放する構造を有しており、前端側にはキャビン内の空気を冷却風として電力制御ユニットEに導く供給ダクト89が形成され、この供給ダクト89とケース部85との中間部位に冷却ファン90が備えられている。後部フェンダー8のうち供給ダクト89が接続する縦壁8Aには、吸気孔89Aが孔状に形成され、ケース部85の内部を通過した空気を送り出すように隔壁88における機体中央側の端部と、後部フェンダー8の縦壁8Aとの間に開放空間88Sが形成されている。
【0072】
また、第1電力制御ユニットE1からジェネレータモータMに電力を供給する出力ケーブル91と、この第1電力制御ユニットE1に電源ユニットBからの直流電力を供給する電源ケーブル92(電力ケーブルの一例)と、制御ケーブル93とが、この第1電力制御ユニットE1における走行機体内側の側壁を貫通し、走行機体Aの中央側のキャビン内に延出する形態で形成されている。これ同様に、第2電力制御ユニットE2から第1油圧ポンプP1の第1ポンプモータP1mと、第2油圧ポンプP2の第2ポンプモータP2mとに電力を供給する出力ケーブル91と、この第2電力制御ユニットE2に電源ユニットBからの直流電力を供給する電源ケーブル92(電力ケーブルの一例)と、制御ケーブル93とが、この第2電力制御ユニットE2における走行機体内側の側壁及び後部フェンダー8の縦壁8Aを貫通し、走行機体Aの中央側のキャビン内に延出する形態で形成されている。
【0073】
〔電力制御ユニットに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、後部フェンダー8の下側と後車輪2との間の空間を有効利用しながら下方に開放した空間に対して電力制御ユニットEを配置することにより、良好な放熱を実現できるものにしている。特に、ケース部85と保護プレート86とで成る規制手段を備えているので、後車輪2から跳ね上げられた小石や泥土が電力制御ユニットEに付着することや損傷させることがない。後車輪2に付着した土塊や藁等が後部フェンダー8の内部に持ち込まれる状況においても、この土塊や藁等にスクレーパ87が接触して後車輪2から掻き落とすことになり、冷却効果を損なうこともない。
【0074】
更に、キャビン内の清浄な空気を、吸気孔89Aを介して吸引し冷却ファン90により電力制御ユニットEに供給することにより、電力制御ユニットEに清浄な空気を供給して放熱を行える。このように電力制御ユニットEの冷却を行った空気はケース部85の後端から送り出されると共に、開放空間88Sから後方に排出される。この構成により走行機体Aの外部の空気を直接的に接触させて行う冷却と、キャビンDの内部からの空気を供給して行われる冷却とを併せた良好な冷却が実現する。
【0075】
また、電力制御ユニットEは、必ずしも後部フェンダー8の下側に配置する必要はなく、一部を後部フェンダー8の上面から上方に突出する形態や、一部がキャビン内(走行機体Aの内側)に突出する形態で配置しても良い。このように配置する構成であっても、後部フェンダー8の部位に電力制御ユニットEを配置することの良好な面は損なわれるものではない。
【0076】
〔電力制御構成〕
トラクタの電力制御構成の概要を図15に示している。この電力制御構成は、電源ユニットBの二次電池59からの直流電力をリレーボックスGを介して第1,第2電力制御ユニットE1,E2に供給する電源ケーブル92を有した電力供給系を備えている。第1電力制御ユニットE1は、供給された直流電力を三相交流電力に変換し出力ケーブル91を介してジェネレータモータMに供給し、第2電力制御ユニットE2は、供給された直流電力を三相交流電力に変換し出力ケーブル91を介して第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとに供給する。図面には示していないが、第2電力制御ユニットE2は、エアーコンディショナーSのコンプレッサにも電力を供給する。
【0077】
主制御システムは、前述したように主制御ユニット101と、エンジン制御ユニット102と、ハイブリッド制御ユニット103と、モータ制御ユニット104と、整流昇圧ユニット105とを備えている。
【0078】
エンジン4は、コモンレール式の燃料噴射系を有し、この燃料噴射を制御するためにエンジン制御ユニット102は、アクセルペダルセンサ54Sからの信号、エンジン4の回転速度を検出する回転速度センサ99(図2を参照)からの信号、コモンレール内の燃料の圧力を検出する燃料圧力センサ(図示せず)からの信号、吸気部位の吸気圧センサ(図示せず)からの信号等を取得し、インジェクター(図示せず)の作動タイミングを決める制御を行う。このような構成からエンジン制御ユニット102は、エンジン4に作用する負荷を判別することも可能であり、エンジン4に作用する負荷や、エンジン4の回転速度や、アクセルペダル54の踏み込み量等のジェネレータモータMを駆動する際に必要な情報を主制御ユニット101に出力する。回転速度センサ99は、伝動ハウジング5の前部ハウジング5Aを上下に貫通する孔部を挿通する状態で備えられ、下端のセンシング部をフライホイール15の外周の近接させ、磁束密度の変化からフライホイール15の回転をカウントするピックアップ型に構成されている。尚、回転速度センサ99は光学式に出力軸4Aやフライホイール15等の回転をカウントするものでも良い。
【0079】
このトラクタでは、エンジン4に作用する負荷を検出するための負荷センサをエンジン4や走行駆動系に備え、この負荷センサで検出した情報を主制御ユニット101が取得するように構成しても良い。また、エンジン4はディーゼル型に限るものではなく、ガソリン型であっても良い。
【0080】
ハイブリッド制御ユニット103は、主制御ユニット101からの情報に基づいて電源ユニットBとリレーボックスGとに電池制御ケーブル98を介して制御信号を出力する。モータ制御ユニット104は、主制御ユニット101からの情報に基づいて第1,第2電力制御ユニットE1,E2に対し制御ケーブル93を介して制御信号を出力する。
【0081】
整流昇圧ユニット105は、ジェネレータモータMで発電された三相交流電流を直流電流に変換する整流回路の機能と、このように直流電流に変換された電流を高圧電流に変換するDC−DCコンバータとの機能とを有し、直流電力は送電ケーブル94を介して送電される。
【0082】
前述したように主制御システムが運転座席9の下側に配置され、電源ユニットBとリレーボックスGとがキャビンDのルーフ部Rに配置され、右側の後部フェンダー8の下側に第1電力制御ユニットE1が配置され、右側の後部フェンダー8の下側に第2電力制御ユニットE2が配置されている。このような位置関係から、電源ユニットBから第1,第2電力制御ユニットE1,E2に直流電力を供給する電源ケーブル92を右側の中間ピラー42の内部に挿通する状態で配設されている。また、主制御システムのハイブリッド制御ユニット103から電源ユニットBに制御信号を出力する電池制御ケーブル98を右側の後ピラー43の内部に挿通する状態で配設されている。
【0083】
このような電力制御構成を備えているため、主制御ユニット101からの信号によりエンジン制御ユニット102が、エンジン4を燃費の良い低速領域で稼動させる制御を実行する。また、エンジン制御ユニット102が取得する情報に基づいて主制御ユニット101が、エンジン4に作用する負荷が閾値未満であることを判別した場合には、ジェネレータモータMからの発電電力を整流昇圧ユニット105で高電圧に昇圧し、このように昇圧した直流電力を送電ケーブル94から電源ケーブル92に伝えることにより電源ユニットBに供給して充電する制御が実行される。このように充電を行う際には、二次電池59に対する充電を電池管理システム60が管理する。特に、電源ケーブル92を中間ピラー42の内部に配置し、電池制御ケーブル98を後ピラー43の内部に配置することにより、例えば、電源ケーブル92にノイズが乗ることがあっても、このノイズを電池制御ケーブル98に送られる制御信号に影響を与えないものにしている。
【0084】
これとは逆に、主制御ユニット101がエンジン4に作用する負荷が閾値を超えたことを判断した場合には、電源ユニットBからの電力をリレーボックスGから第1電力制御ユニットE1に供給すると共に、モータ制御ユニット104が第1電力制御ユニットE1に対して制御信号を出力することにより、第1電力制御ユニットE1からの三相交流電力をジェネレータモータMに供給し、このジェネレータモータMの駆動力でエンジン回転をアシストすることで駆動力不足やエンジンストップを招くことのない走行を実現する。このようにジェネレータモータMに電力を供給する際には、エンジン4の回転速度と、負荷の値と、アクセルペダル54の踏み込み量等の制御情報に基づいて、三相交流電力の出力電圧と出力周波数が設定され、二次電池59から第1電力制御ユニットE1に電力供給を開始した際には、リレーボックスGにおいて複数の抵抗器から適切なものを選択することで大電流が急激に供給される不都合を抑制する。また、電力の供給時にも適切な抵抗器を選択することで二次電池59から供給される大電流が急激に低下する不都合を抑制する。
【0085】
また、第2電力制御ユニットE2は、モータ制御ユニット104からの信号に基づき、必要とするタイミングで直流電力を三相交流電力に変換して第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mと供給する作動を行う。主制御ユニット101は、レバー類やスイッチ類の操作を判別し、電力供給を必要とするタイミングで第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとの駆動を行うことにより電力の無駄な消費を抑制できるものにしている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電動モータのみの駆動力によって走行する構成の作業車だけではなく、電動モータとエンジンとの駆動力によって走行するハイブリッド型の作業車にも利用することができ、また、乗用田植機や芝刈機やコンバインなどの他の作業車にも利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
4 エンジン
42 ピラー(中間ピラー)
43 ピラー(後ピラー)
59 二次電池
60 電池管理手段(電池管理システム)
61 底壁
62 上壁
64 ユニット収容ケース
65 吸気ダクト
66 排気ダクト
67 ファン(前部ファン)
68 ファン(後部ファン)
92 電力ケーブル(電源ケーブル)
98 信号ケーブル(電池制御ケーブル)
B 電源ユニット
D キャビン
K ルーフ内空間
T 換気空間
M 電動モータ
N 冷却空間
R ルーフ部
S 空調装置(エアーコンディショナー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車に関し、詳しくは、電源ユニットの配置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車として特許文献1には、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動機駆動バスの車体のルーフの上面に電源ユニット(文献ではバッテリーユニット)を配置した構成が示され、この構成により走行風をバッテリーユニットに送る形態でバッテリーユニットの冷却を実現する点が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004‐66889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようにルーフ部に電源ユニットを配置する構成では、走行機体の内部に電源ユニットを配置するための空間を確保する必要がなく、走行時に外気を取り込んで電源ユニットを良好に冷却できるものである。
【0005】
作業車としてトラクタを想定すると、キャビン内部の空調が必要となるものの、走行機体のエンジンでコンプレッサを駆動し、このコンプレッサからの冷媒をキャビンに導く構成では、配管に手間が掛かるものとなる。
【0006】
このように、走行機体にキャビンを備える作業車において電動モータの駆動力を走行伝導系に伝える構成のものを考えると、電源ユニットと空調装置との配置を合理的に行う必要がある。
【0007】
特に、リチウムイオン電池のように温度上昇により性能が低下するものでは冷却を行いながら、漏電等を阻止するために防水性も要求される。
【0008】
本発明の目的は、電源ユニットと空調装置とを備えた作業車を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車であって、運転者が搭乗するキャビンのルーフ部に前記電源ユニットと、前記キャビンの内部の空気温度の調整を行う空調装置とを備えている点にある。
【0010】
この構成によると、電源ユニットをキャビンのルーフ部に備えることにより、走行機体に電源ユニットを配置するための空間を確保しなくて済む。また、キャビンに空調装置を備えているので、この走行機体の走行用の電動モータの近傍にコンプレッサを備える構成の空調装置と比較すると、冷媒を給排するための配管をキャビンと走行機体との間に形成しなくて済む。更に、電源ユニットと空調装置とをルーフ部に備える構成であるため、この電源ユニットと空調装置とを備えるための空間を走行機体に確保しなくて済み、比較的容易に設計変更を行えるルーフ部に対して電源ユニットと空調装置とをコンパクトに備えることも可能になる。
その結果、電源ユニットの配置に無理がなく、配管等の作業を低減し、走行機体の設計変更を行わずとも電源ユニットと空調装置とをルーフ部にコンパクトに備えることが可能な作業車が合理的に構成された。
【0011】
本発明は、前記ルーフ部が下側の底壁と上側の上壁との間にルーフ内空間が形成される構成を有しており、このルーフ内空間に対して、前記電源ユニットを収容するユニット収容ケースと、このユニット収容ケースに対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクトと、前記ユニット収容ケースの空気をキャビン外部に送り出す排気ダクトとを配置することで、この吸気ダクトの内部空間と、ユニット収容ケースの内部空間と、排気ダクトの内部空間とを併せて冷却空間が形成され、前記吸気ダクトを介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気を前記ユニット収容ケースから前記排気ダクトを介してキャビン外部に排出するファンが前記冷却空間の内部に備えられても良い。
【0012】
これによると、ルーフ部の底壁と上壁との間のルーフ内空間に配置されるユニット収容ケースに電源ユニットを収容できる。また、ユニット収容ケースに吸気ダクトと排気ダクトとを接続して冷却空間を形成し、キャビン外部の空気を吸気ダクトで吸引し、ユニット収容空間を通過した空気を排気ダクトによりキャビン外部に送り出すファンを備えているので、電源ユニットに対する雨水や塵埃の侵入を抑制しながら、走行機体の走行が停止した状態においてもキャビン外部の空気を電源ユニットに供給する形態での冷却が可能になる。
【0013】
本発明は、キャビン外部の空気を取り込む換気空間が、前記冷却空間と分離する状態で前記ルーフ部に形成され、前記空調装置でキャビン内部の換気を行う際には前記換気空間から取り込んだ空気を前記空調装置に供給しても良い。
【0014】
これによると、冷却空間と分離する状態でルーフ部に形成された換気空間に対してキャビン外部の空気を取り込みながら空調装置によるキャビン内部の空調が可能となる。また、換気空間の空気を空調装置に供給する構成であるため、例えば、冷房を行う場合には電源ユニットの熱が作用しない換気空間から取り入れた空気の温度を下げることになり、エネルギーの無駄もない。
【0015】
本発明は、前記電源ユニットが、二次電池と、この二次電池の充電と放電とを管理する電池管理手段とを備えており、前記二次電池に接続する電力ケーブルと、前記電池管理手段に接続する信号ケーブルとが、前記キャビンの複数のピラーのうち互いに異なるものの内部に配設されても良い。
【0016】
これによると、電力ケーブルと信号ケーブルとが異なるピラーの内部に配設されることにより、ピラーがシールドとして機能すると同時に電力ケーブルと信号ケーブルとの距離が拡大するので、電力ケーブルにノイズが乗った場合にも、このノイズが信号ケーブルに作用する現象を低減して、誤作動を抑制できる。
【0017】
本発明は、前記電動モータとして、発電機として機能するものが用いられ、前記走行伝動系と前記電動モータとに駆動力を伝えるエンジンが備えられると共に、
前記電動モータで発電された電力を前記電源ユニットの前記二次電池に充電する充電モードと、前記電動モータに前記電源ユニットからの電力を供給する駆動モードとの切り換えを行う充放電制御手段を備えても良い。
【0018】
これによると、充放電制御手段は、エンジンの駆動力から電動モータが発電した電力を二次電池に充電する充電モードと、二次電池からの電力を電動モータに供給し、この電動モータの駆動力を走行系に伝える駆動モードとの切り換えを実現することになり、作業車をハイブリッド型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】伝動ハウジングの内部の構造を示す断面図である。
【図3】エンジンの出力軸にロータを連結する際の手順を示す断面図である。
【図4】電動油圧ポンプの位置を示す側面図である。
【図5】電動油圧ポンプと油圧フィルタとの位置を示す平面図である。
【図6】油圧フィルタとミッションケース内の油路等の配置を示す断面図である。
【図7】油圧系の構成をブロック的に示す油圧回路図である。
【図8】キャビンのルーフ部の構成を示す縦断側面図である。
【図9】電源ユニットの冷却構成を示す横断平面図である。
【図10】電力制御ユニットの配置を示すトラクタ後部の平面図である。
【図11】電力制御ユニットの配置を示すトラクタの後面図である。
【図12】電力制御ユニットの配置を示す後部フェンダーの縦断側面図である。
【図13】電力制御ユニットの配置を示す後部フェンダーの横断平面図である。
【図14】ケース部と供給ダクトと保護プレートとを示す分解斜視図である。
【図15】電力を給排する制御系のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、操向操作(操舵)自在な左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2とを備えた走行機体Aの前部のエンジンボンネット3の内部にディーゼル型のエンジン4を備え、このエンジン4の後面側にジェネレータモータM(電動モータの一例)と主クラッチ機構Cとを収容する伝動ハウジング5を備え、この伝動ハウジング5の後面にミッションケース7が連結し、走行機体Aの後部で左右の後車輪2の上方を覆うように走行機体Aから外側方に張り出す形態で備えられた左右の後部フェンダー8の間に運転座席9を備え、この運転座席9を収容する運転空間を形成するキャビンDを備えて作業車としてのハイブリッド型のトラクタが構成されている。
【0021】
走行機体Aの後部(ミッションケース7の後端側)に昇降用アクチュエータとして油圧型の昇降シリンダ10と、この昇降シリンダ10の作動により上下に揺動する左右一対のリフトアーム11とが備えられ、ミッションケース7の後端には駆動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸12が備えられている。これにより、左右のリフトアーム11によって昇降自在となる3点リンク機構(図示せず)を介してロータリ耕耘装置やプラウなどの対地作業装置を連結することが可能となり、ロータリ耕耘装置などの駆動型の対地作業装置に対して動力取出軸12からの駆動力を伝え、耕起作業が実現する。
【0022】
このトラクタでは、ジェネレータモータMが、エンジン4の駆動力により発電を行う三相交流発電機の機能と、外部から供給される電力により回転作動する三相交流モータの機能とを併せ持つものが使用されている。また、キャビンDのルーフ部Rの内部にリチウムイオン型やニッケル水素型等の二次電池59と電池管理システム60(電池管理手段の一例・BMS)とを有する電源ユニットB(図8、図15を参照)が備えられ、この電源ユニットBからの直流電力を三相交流電力に変換してジェネレータモータMに供給する第1電力制御ユニットE1が右側の後部フェンダー8の下側に備えられ、油圧系を駆動する第2電力制御ユニットE2が左側の後部フェンダー8の下側に備えられている。また、ジェネレータモータMで発電された三相交流電流を直流電流に変換し昇圧して電源ユニットBに供給する制御と、第1,第2電力制御ユニットE1,E2の制御とを行う主制御システムが運転座席9の下側に配置されている。尚、第1,第2電力制御ユニットE1,E2の上位概念として電力制御ユニットEと称する。
【0023】
〔主制御システム〕
主制御システムは、図15に示すように、主制御ユニット101と、エンジン制御ユニット102と、ハイブリッド制御ユニット103と、モータ制御ユニット104と、整流昇圧ユニット105とを有しており、これらはECUとして構成される。また、この主制御システムは充放電手段として機能するものであり、走行伝動系に作用する負荷が小さい場合には、ジェネレータモータMからの発電電力を電源ユニットBの二次電池59に充電する充電モードを選択し、走行伝動系に作用する負荷が閾値を超えた場合には、電源ユニットBからの電力を第1電力制御ユニットE1で三相交流に変換してジェネレータモータMに供給する駆動モードを選択するように構成され、この駆動モードでは、ジェネレータモータMの駆動力を走行伝動系に伝えることによりエンジン回転をアシストして駆動力不足やエンジンストップを招くことのない走行を実現する。尚、走行伝動系とはエンジン4の駆動力を前車輪1と後車輪2とに伝える機能を有するミッションケース7等の伝動機構であり、ミッションケース7と制御構成の詳細とは後述する。
【0024】
〔伝動ハウジング〕
図2に示すように、エンジン4とジェネレータモータMとフライホイール15と主クラッチ機構Cとが、この順序で備えられ、エンジン4の後部に連結したリヤエンドプレート16に対して前述した伝動ハウジング5が連結し、これにより伝動ハウジング5にジェネレータモータMとフライホイール15と主クラッチ機構Cとが収容されている。
【0025】
ジェネレータモータMは、永久磁石21を外周に備えたロータ22と、このロータ22を取り囲む位置に配置されたステータ23とで構成され、ステータ23は、ステータコアの複数のティース部(図示せず)にコイルを巻回した構造を有している。エンジン4の出力軸4A(クランク軸)の軸端に対して、この出力軸4Aの回転軸芯Xと同軸芯で、ジェネレータモータMのロータ22が連結している。このロータ22のうち出力軸4Aと反対側の面にフライホイール15が配置され、これらが連結機構Jによって連結されている。この構成では、ロータ22が、ジェネレータモータMの駆動力を走行伝動系に伝える機能を有すると共に、エンジン4の駆動力をジェネレータモータMに伝える機能を有した伝動部として構成されている。
【0026】
連結機構Jは、出力軸4Aに対して回転軸芯Xと平行姿勢で立設され、ロータ22に穿設されたロータ貫通孔22Aと、フライホイール15に穿設されたホイール貫通孔15Aとに貫通する複数のスタッド軸24と、このスタッド軸24の軸端のネジ部24Aに螺合するナット25とで構成されている。このような構成から出力軸4Aの軸端とナット25との間にロータ22とフライホイール15とを挟み込む状態で夫々が連結される状態に達する。
【0027】
伝動ハウジング5は、前部ハウジング5Aと後部ハウジング5Bとを分離可能に連結した構造を有しており、ジェネレータモータMを組み立てる際には、前部ハウジング5Aの内面にステータ23を備えた状態で、この前部ハウジング5Aをリヤエンドプレート16に連結し、次に、出力軸4Aの後端にロータ22を連結する作業が行われる。
【0028】
この作業において、ロータ22の永久磁石21の吸引力によってロータ22がステータ23の内面に吸着する不都合を阻止するために、前述した複数のスタッド軸24を備えており、ロータ22には回転軸芯Xと平行姿勢(図面では同軸芯)で貫通し、内面に雌ネジを有するネジ孔22Bが形成されている。
【0029】
このネジ孔22Bは送り速度調整用のネジ軸18が螺合するための雌ネジ部が形成され、ロータ22を出力軸4Aに連結する際には、図3(a)に示すように、ネジ軸18の先端がロータ22に突出するように螺合させた状態で、複数のスタッド軸24をロータ22のロータ貫通孔22Aに挿通させ、ネジ軸18の円錐状の先端を出力軸4Aの後面で回転軸芯X上に形成した円錐状の凹部4Bに嵌め込むことになる。この状態において、ネジ軸18をロータ22から抜き取る方向に回転操作することにより、永久磁石21がステータ23に吸引される吸引力によりロータ22と出力軸4Aの後端との距離を徐々に短縮することになる。この操作によりロータ22が出力軸4Aの後端に接触する位置に達した状態では、ロータ22の外周とステータ23の内周との間に間隙が形成され、この後、図3(b)に示すように、複数のスタッド軸24をフライホイール15のホイール貫通孔15Aに挿通させ、スタッド軸24にナット25を螺合させ締結することで、このロータ22とフライホイール15とが連結状態に達する。また、出力軸4Aの後面の中央位置には回転軸芯Xと同軸芯となる凹状の被嵌合部4Cが形成され、ロータ22の前面には回転軸芯Xと同軸芯となる凸状の嵌合部22Cが形成され、ロータ22を出力軸4Aに連結時には、被嵌合部4Cと嵌合部22Cとが嵌合して強固な位置決め状態に達する。
【0030】
主クラッチ機構Cは、フライホイール15の後面に連結するクラッチカバー27の内部にクラッチディスク28と、プレッシャプレート29と、ダイヤフラムバネ30とを配置し、クラッチディスク28からの駆動力が伝えられるクラッチ軸31と、図1に示すクラッチペダル52の踏み込み操作に連係して主クラッチ機構Cの切り操作を行うレリーズユニット(図示せず)とを備えている。
【0031】
クラッチ軸31は、後部ハウジング5Bに対して回転軸芯Xを中心にして回転自在に支持され、クラッチディスク28は、スプライン構造によりクラッチ軸31に対してトルク伝動自在、かつ、回転軸芯Xに沿って変位自在に支持され、ダイヤフラムバネ30は、プレッシャプレート29を介してクラッチ入り方向への付勢力をクラッチディスク28に作用させる構成を有している。また、クラッチ軸31の後端からの駆動力を伝動ギヤ32を介して中間伝動軸33に伝える伝動系が後部ハウジング5Bに備えられ、この中間伝動軸33の駆動力はミッションケース7に伝えられる。
【0032】
尚、主クラッチ機構Cはクラッチペダル52が非操作(踏み込まれない)状態である場合にはダイヤフラムバネ30の付勢力がプレッシャプレート29からクラッチディスク28に作用することから、クラッチディスク28がフライホイール15の後面に圧接してクラッチ入り状態に維持される。これとは逆にクラッチペダル52が踏み込み操作された場合には、ダイヤフラムバネ30からプレッシャプレート29に作用する付勢力が大きく低下するためクラッチディスク28とフライホイール15の後面とが非接触状態となりクラッチ切り状態に達する。
【0033】
前述したフライホイール15の外周にはリングギヤ部15Bが形成され、図4及び図5に示すように、このリングギヤ部15Bに噛合して回転力を伝えるピニオンギヤ(図示せず)を有したスタータモータ19がエンジン4の左側部に配置されている。また、ジェネレータモータMのステータ23のコイルに接続する3本の電力線Qが伝動ハウジング5の右側部に接続している。この電力線Qは、後述する電力制御ユニットEから電力が供給される経路として機能すると共に、ジェネレータモータMで発電した電力を送り出す経路として機能する。このトラクタでは、スタータモータ19をエンジン4の右側部に配置し、電力線Qを伝動ハウジング5の左側部に配置しても良い。
【0034】
〔ジェネレータモータに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、エンジン4の出力軸4Aに対してジェネレータモータMのロータ22を連結する際には、ロータ22のネジ孔22Bの全長より充分に長い寸法の送り速度調整用のネジ軸18を準備しておき、このネジ軸18の両端部がネジ孔22Bから突出するようにネジ孔22Bに螺合させ、出力軸4Aに備えたスタッド軸24がロータ22のロータ貫通孔22Aに貫通する状態にセットする。この状態では、ロータ22とステータ23との間に吸引力が作用するものであるが、ネジ軸18の一方の端部が出力軸4Aの凹部4Bの内面に接当するためロータ22が出力軸4Aに接近する方向(回転軸芯Xに沿う方向)への変位が抑制される。また、スタッド軸24がロータ22のステータ内面に接近する方向(回転軸芯Xに直交する方向)への変位が抑制される。
【0035】
この状態で、ネジ軸18の一方の端部のロータ22からの突出量を低減するように、ネジ軸18の他方の端部を人為的な回転操作や、電動アクチュエータ等により回転操作することで、ロータ22とステータ23との間に作用する吸引力の影響を排除する状態でエンジン4の出力軸4Aに接近する方向にロータ22を任意の速度で変位させることが可能となり、適正な位置にロータ22を案内して、このロータ22とフライホイール15とを連結機構Jで出力軸4Aに対して連結できることになる。このようにロータ22を適正な位置に案内した後にネジ軸18は取り外される。
【0036】
また、フライホイール15のうち出力軸4Aと反対側の面を利用することで部品点数を増大させずに主クラッチ機構Cを小型に構成することが可能となり、主クラッチ機構Cで摩耗粉が発生しても、フライホイール15の妨げにより、ジェネレータモータMへの摩耗粉の侵入を抑制して高性能の作動を維持する。また、伝動ハウジング5の左右の一方の側部にスタータモータ19を配置し、他方の側部にジェネレータモータMのステータ23のコイルに接続する3本の電力線Qを振分けて配置したことにより、伝動ハウジング5の側部の空間を有効に利用できる。
【0037】
〔ミッションケース〕
ミッションケース7は、図5に示すように、油圧変速ユニットFを内蔵しており、この油圧変速ユニットFで変速された走行駆動力をミッションケース7から前車輪1と後車輪2とに伝える伝動系が形成されている。油圧変速ユニットFの構成は図面に示していないが、エンジン4からの動力を断続する油圧式の変速クラッチと、シンクロメッシュ型の複数の変速ギヤと、夫々の変速ギヤのスリーブをシフト操作する複数の油圧式の変速シリンダと、変速シリンダを制御する変速バルブとを備えている。
【0038】
油圧変速ユニットFは、クラッチペダル52を踏み込み操作しなくとも、主変速レバー55(図1を参照)を操作するだけで変速を実現する構成を油圧回路のみによって実現するものである。その変速作動の一例を挙げると、例えば、主変速レバー55を中立位置から前進1速位置に操作した場合には、変速クラッチが切り操作された後に、変速シリンダの作動により前進1速位置に対応した変速ギヤが変速位置にセットされ、この後に変速クラッチを入り状態に復帰させる制御が油圧によりシーケンシャルに実行される。
【0039】
この油圧変速ユニットFからの走行駆動力は、ミッションケース内部の後部デファレンシャル機構(図示せず)を介して左右の後車輪2に伝えられると共に、ミッションケース7の内部に備えた前輪増速装置(図示せず)からの駆動力が前輪駆動軸35を介して前車輪1のデファレンシャル機構(図示せず)に伝えられる。この前輪増速装置は前車輪1が設定角度を超えてステアリング操作された場合に、前車輪1の駆動速度を増大させるギヤ変速系と、図7に示す油圧式のADクラッチ35Cとを備えている。このADクラッチ35Cは走行機体Aの直進状態ではバネの付勢力によって後車輪2と等速での駆動状態を維持し、ステアリング量が設定値を超えた場合には高速伝動状態に切り換えられる。
【0040】
〔油圧構成〕
図1に示すように、ミッションケース7の前方でエンジン4より更に前方位置には、前車輪1のステアリング作動を行う油圧式のステアリングユニット36が備えられている。図7に示すように、このステアリングユニット36と、昇降シリンダ10と、PTOクラッチ37と、ADクラッチ35Cとが油圧装置の一例であり、図4及び図5に示すように、ミッションケース7の右側の外側部で、キャビンDのステップの下側には、これらに作動油を供給するため前部位置に第1油圧ポンプP1が備えられ、この後部位置に第2油圧ポンプP2が一直線状に配置され、ミッションケース7の左側の外側部には、ミッションケース7の潤滑油を濾過して作動油として第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とに供給する油圧フィルタ38が取り付けられている。尚、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とによって電源ユニットBからの電力によって作動する電動油圧ポンプが構成され、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との下面がミッションケース7の下面より上側に位置するように相対的な位置関係が設定されている。
【0041】
第1油圧ポンプP1は、電力によって作動する第1ポンプモータP1mと、これによって駆動される第1ポンプP1pとで構成され、第2油圧ポンプP2は、電力によって作動する第2ポンプモータP2mと、これによって駆動される第2ポンプP2pとで構成されている。第1ポンプモータP1mは後方側に駆動軸が突設され、この駆動軸に第1ポンプP1pが連結し、第2ポンプモータP2mは前方側に駆動軸が突設され、この駆動軸に第2ポンプP2pが連結し、第1ポンプP1pと第2ポンプP2pの中間位置に、第1ポンプP1pからの作動油を分配して送り出す分配弁39が配置されている。特に、第1ポンプモータP1mの駆動軸の軸芯と、第2ポンプモータP2mの駆動軸の軸芯とが、互いに平行する状態で機体上下及び左右方向で近接する位置関係に設定されている。この油圧構成では、第1油圧ポンプP1からの作動油を分配弁39で分配する構成に代えて、第2油圧ポンプP2からの作動油を分配弁39で分配する構成であっても良い。
【0042】
第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとは三相モータとして構成され、第2電力制御ユニットE2から三相交流電力が供給される。尚、第1油圧ポンプP1と比較して第2油圧ポンプP2で送り出す作動油の油量が多く設定され、第1ポンプモータP1mと比較して第2ポンプモータP2mに大きい容量で大型の電動モータが用いられている。第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとしてブラシレス直流モータのように回転速度を制御できるものを使用しても良い。
【0043】
図6に示すように、ミッションケース7の底壁部7Aには、油圧フィルタ38で濾過した潤滑油を作動油として送り出すように、ミッションケース7の内部空間と分離する機体左右向きの主送油路7B(内部油路の一例)が底壁部7Aの一端から他端に亘って形成され、この主送油路7Bから機体前後向きに分岐した分岐送油路7C(内部油路の一例)が形成され、また、ミッションケース7の壁部には内部空間に貯留されている潤滑油を油圧フィルタ38に供給する吸引油路7Dが形成されている。ミッションケース7は鋳造物であり、これら主送油路7Bと、分岐送油路7Cと、吸引油路7Dとは鋳造時にミッションケース7と一体的に形成される。
【0044】
主送油路7Bからの作動油は第2送油管L2を介して第2ポンプP2pに供給され、分岐送油路7Cからの作動油は第1送油管L1を介して第1ポンプP1pに供給される。
【0045】
図7に示す如く第1ポンプP1pからの作動油は、分配弁39を介して、前車輪1のステアリング作動を行うステアリングユニット36に供給されると共に、分配弁39を介して、PTOクラッチ37(厳密にはPTOクラッチ37の制御弁)と、油圧変速ユニットFと、ADクラッチ35C(厳密にはADクラッチ35Cの制御弁)とに供給される。また、第2ポンプP2pからの作動油は、走行機体Aの後部の昇降シリンダ10(厳密には昇降シリンダ10の制御弁)に供給されると共に、対地作業装置のローリング姿勢を制御するローリングシリンダ13(厳密にはローリング制御弁)に供給される。
【0046】
〔油圧構成に関連する実施形態における作用・効果〕
このような油圧構成から、油圧機器を作動させる際に第1油圧ポンプP1の第1ポンプモータP1m、又は、第2油圧ポンプP2の第2ポンプモータP2mを作動させることにより、油圧機器を作動させない場合に電力の無駄な消費をなくすことが可能となる。また、ミッションケース7の一方の外側部に電動油圧ポンプとして第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との2つの油圧ポンプを配置し、ミッションケース7の他方の外側部に油圧フィルタ38を配置しているので、ミッションケース7と油圧ポンプとの間の油路長を最短にして油圧系の小型化を実現するだけではなく、例えば、ミッションケース7一方の外側部に油圧ポンプと油圧フィルタ38とを配置するものと比較してミッションケース7の両側部の空間を有効に利用して油圧系を構成することが可能となる。
【0047】
また、第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとの中間の空間に第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39とが配置されるため、例えば、草木や地面の突出物が存在する環境で走行機体Aを前進させる場合でも、第1ポンプモータP1mが草木や突出物に接触して排除するため、これらが第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39との何れかに接触して破損する不都合を解消する。また、走行機体Aを後進させる場合には、前述とは逆に第2ポンプモータP2mが草木や突出物に接触して排除することで第1ポンプP1pと第2ポンプP2pと分配弁39との何れかに接触して破損する不都合を解消する。
【0048】
この油圧構成では、電動油圧ポンプとして第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との2つの油圧ポンプを示したが、1つの電動油圧ポンプを備えても良く、3つ以上の油圧ポンプを備えても良い。また、分配弁39は他の油圧装置に作動油を分配するように構成しても良く、電動油圧ポンプをミッションケース7の左側に配置し、油圧フィルタ38をミッションケース7の右側に配置しても良い。また、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との配置を前述した構成とは逆にして、第1油圧ポンプP1を後部に配置し、第2油圧ポンプP2を配置しても良い。
【0049】
〔キャビン〕
キャビンDは、前部で支柱状となる左右一対の前ピラー41と、前後方向の中間で支柱状となる左右一対の中間ピラー42と、後部で支柱状となる左右一対の後ピラー43と、これらの上部に連結するトップフレーム44と、このトップフレーム44を覆う位置に配置されるルーフ部Rとを有している。キャビンDの前部位置で左右の前ピラー41に挟まれる位置にフロントガラス45を備え、両側部で前ピラー41と中間ピラー42との間にガラス製のドア46を開閉自在に備え、このドア46の後方位置で中間ピラー42と後ピラー43との間にサイドガラス47を備え、後部位置で左右の後ピラー43に挟まれる位置にリヤガラス48を備えている。この構成では左右一対の前ピラー41と、左右一対の中間ピラー42と、左右一対の後ピラー43とが断面形状コ字状となる鋼材が用いられ、これらの上端に対してトップフレーム44が溶接固定されている。
【0050】
このキャビンDは外部の塵埃や騒音等の運転空間内への侵入を阻止する気密構造を備えており、ルーフ部Rの後部にはキャビン内の冷房と暖房とを行う空調装置としてエアーコンディショナーSが備えられている
【0051】
図1及び図10に示すように、キャビンDの内部で、運転座席9の前部位置には前車輪1の操向操作を行うステアリングホイール51が配置され、ステアリングホイール51の左側の下方にはクラッチペダル52が配置され、右側下方には左右一対のブレーキペダル53とアクセルペダル54が配置されている。また、運転座席9の右側部にはミッションケース7の変速を行う主変速レバー55と、昇降シリンダ10を制御する昇降レバー56とが配置されている。
【0052】
〔キャビン:電源ユニットの冷却構成〕
キャビンDのルーフ部Rに備えられる電源ユニットBは、二次電池59の温度上昇を抑制する目的から、キャビン外部の空気を吸引して冷却風として二次電池59と電池管理システム60とに供給する冷却系を備えている。
【0053】
図8及び図9に示すように、ルーフ部Rは、トップフレーム44に支持される形態でキャビンの内部空間側に配置されキャビン内の天井壁として機能する底壁61と、この上側の上壁62と、更に上側の外壁63を有し、底壁61と上壁62との間にルーフ内空間Kが形成されると共に、上壁62と外壁63との間に換気空間Tが形成されている。このルーフ部Rでは、底壁61と上壁62とは金属材と樹脂材との何れを用いるものであっても良いが、外壁63及び上壁62として樹脂材をブロー成形したものを用いることにより、直射日光が射す環境においても換気空間Tやルーフ内空間Kの温度を上昇させ難いものにしている。尚、換気空間Tは、ルーフ部Rにおいて冷却空間Nと分離して形成されるものであれば良く、例えば、ルーフ部Rの側部や後部に形成される構成であっても良い。
【0054】
電源ユニットBの二次電池59は、電池として機能する複数のセルを電気的に接続した構成を有しており、ルーフ部Rの前後及び左右中央部に配置され、この二次電池59の前方近傍位置に電池管理システム60が配置されている。ルーフ内空間Kには電源ユニットBを収容するユニット収容ケース64と、このユニット収容ケース64に対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクト65と、ユニット収容ケース64の空気をキャビン外部に送り出す排気ダクト66とを有する冷却空間Nが形成され、吸気ダクト65を介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気をユニット収容ケース64から排気ダクト66を介してキャビン外部に排出するように前部ファン67が吸気ダクト65の内部に備えられ、後部ファン68が排気ダクト66の内部に備えられている。また、このルーフ内空間Kの前部横一側には、前述した冷却空間Nと独立して電源ユニットBから電力制御ユニットEに供給される電流に対して複数の抵抗器の何れかを選択して電気抵抗を作用させるリレーボックスGが前方側ほど機体内側に傾斜する傾斜姿勢で配置されている。
【0055】
電源ユニットBは、二次電池59と電池管理システム60とを備えるものであり、これらがユニット収容ケース64の内部に露出する形態で収容する構成を想定しているが、この二次電池59と電池管理システム60とをボックス類に収容し、このボックスをユニット収容ケース64の内部に収容するように構成しても良い。ユニット収容ケース64は、電池収容空間64Aの前端側に空気の流れ方向での上流側ほど断面積が小さくなる導入空間64Bと、後端側に空気の流れ方向での下流側ほど断面積が小さくなる排出空間64Cとが形成されている。
【0056】
吸気ダクト65は、前端部に横方向に拡大する吸気部65Aが形成され、この吸気ダクト65の中間部分に前部ファン67が配置され、この前部ファン67の排出部がユニット収容ケース64の導入空間64Bの前端に接続している。吸気部65Aに空気を導入するためルーフ部Rの前端部の左右中央部には吸気開口Raが形成され、この吸気開口Raの前端位置には下部から斜め後方上方に突出する前ガイド板69Fと、上部から斜め前方下方に突出する後ガイド板69Rとが配置され、吸気部65Aにはエアーフィルタ70が備えられている。特に、前ガイド板69Fと後ガイド板69Rとの中間の領域には下方に開放することで雨水等を排出する開放部(図示せず)が形成されている。
【0057】
前部ファン67は左右軸芯周りで回転駆動されるシロッコファンが用いられ、後部ファン68は前後軸芯周りで回転駆動される軸流ファンが用いられている。尚、冷却空間Nに外気を吸引するファンとしては、前部ファン67と後部ファン68との何れか一方だけを備えても良い。
【0058】
排気ダクト66は、前端がユニット収容ケース64の電池収容空間64Aの後端に接続し、この排気ダクト66の後端がルーフ部の後端部の左右中央部に形成された排気開口Rbに接続しており、この排気開口Rbには、下部から斜め前方上方に突出する前排出ガイド板71Fと、上部から斜め後方下方に突出する後排出ガイド板71Rが備えられている。
【0059】
〔電源ユニットに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、前部ファン67と後部ファン68とを駆動して冷却空間Nに外気を吸引する際には、図8に示す如く、前ガイド板69Fの上側を通過した空気が、後ガイド板69Rの下端に周り込む形態で流動し、エアーフィルタ70で塵埃が除去された後に、吸気ダクト65に流れ込む。また、電源ユニットBがルーフ部Rの内部のルーフ内空間Kに配置されているので、雨水が電源ユニットBに対して直接的に接触することがなく、外気を吸引する際には、吸気開口Raに雨水や塵埃が侵入可能な状況にある場合でも、この雨水や塵埃を開放部(図示せず)から下方に排出することで吸気ダクト65に吸引されず、この雨水や塵埃が冷却空間Nに侵入して二次電池59に付着することもない。
【0060】
吸気ダクト65に吸引された空気は、ユニット収容ケース64の電池収容空間64Aに収容されている二次電池59と電池管理システム60の外面に接触することにより熱を奪い、この二次電池59の温度上方を抑制する。このように熱を奪った空気は排気ダクト66から排気開口Rbに送られ、前排出ガイド板71Fの上側を通過した空気が、後排出ガイド板71Rの下側を回り込む形態で流動し、ルーフ部Rの外部に排出される。また、排気開口Rbには後排出ガイド板71Rが備えられているため、排気開口Rbから雨水や塵埃が侵入する状況にある場合でも、侵入が抑制され、排気開口Rbの後端から排出されるのである。
【0061】
〔キャビン:空調構成〕
図8及び図9に示すように、エアーコンディショナーSは、ルーフ部Rの後端位置で後ピラー43より更に後方に張り出した位置に備えられている。エアーコンディショナーSは、左右一対の後ピラー43の上端より低い配置高さで、左右一対の後ピラー43に亘って設けられた横フレームに支持されている。このエアーコンディショナーSは、内部にエバポレータ(図示せず)と電気ヒータとを有した空調ユニット75と、この空調ユニット75に空気を送る送風ファン77とを備えている。キャビンDの内部において底壁61(キャビン内の天井壁)の下側には吸気口80が形成され、この底壁61の左右にはエアーコンディショナーSから送り出される空気をキャビンDの内部に供給する左右一対の空調ダクト78を備えている。
【0062】
このエアーコンディショナーSでは、コンプレッサを駆動して圧縮された冷媒をコンデンサで放熱した後に、膨張弁において膨張させ、エバポレータに供給することで冷房を実現するものを想定しているが、例えば、冷房と暖房との切り換え可能なヒートポンプ型として構成しても良い。
【0063】
底壁61は、エアーコンディショナーSの前部位置で斜め下方に屈曲する傾斜壁部61Aが形成され、また、傾斜壁部61Aの上端側から後方に延出する延出壁79を形成することで、この傾斜壁部61Aの後方と延出壁79との間にエアーコンディショナーSが配置され、かつ、送風ファン77に空気を供給する吸気空間Hが形成されている。尚、送風ファン77は上端から吸気を行い側方の空調ユニット75の方向に空気を送り出すシロッコファンが用いられている。
【0064】
また、この吸気空間Hに連通する上下向きの換気ダクト81が前述した換気空間Tに接続しており、この換気ダクト81の開閉自在な切換板82が備えられている。換気空間Tはルーフ部Rの側部に形成された換気口72を介して外部と連通している。換気ダクト81は、ユニット収容ケース64の電池収容空間64Aに隣接する位置に配置され、図9に示すように平面視では、電池収容空間64Aの外壁に近接する部位が斜め姿勢に成形された角パイプ状に形成されている。
【0065】
切換板82は人為操作により開閉自在に構成され、図8に仮想線で示す閉じ姿勢では吸気空間Hに対する外気の導入が阻止され、同図に実線で示す開放姿勢に操作された場合には、換気口72から換気空間Tに外気を吸引し、更に、この外気を換気ダクト81から吸気空間Hに供給できることになる。
【0066】
〔空調構成に関連する実施形態における作用・効果〕
このような構成のため、切換板82を閉じ姿勢に設定してエアーコンディショナーSを可動させた場合には、キャビン内の吸気口80から吸引した空調ユニット75で温調し、この空気を空調ダクト78を介してキャビン内に送り出すことでキャビン内の空気を循環させながら空調を行う循環モードでの空調が実現する。
【0067】
また、切換板82を開放姿勢に設定してエアーコンディショナーSを稼動させた場合には、吸気口80を閉じてキャビン内の空気の吸気を遮断する状態で、換気空間Tからの外気を換気ダクト81で吸引して、空調ユニット75で温度調整を行った後に空調ダクト78を介してキャビン内に送り出すことで外気とキャビン内の空気とを混合させて空調を行う外気混入モードでの空調が実現する。また、換気空間Tから空気を取り込む構成であるため、例えば、電源ユニットBの熱が作用して温度が上昇した空気を取り込む構成と比較すると、エアーコンディショナーSで冷房を行う際のエネルギーの無駄がない。
【0068】
特に、キャビンDのルーフ部Rに対して電源ユニットBを備え、空調装置としてのエアーコンディショナーSを備えているので、電源ユニットBを走行機体Aに備えるための空間を確保する必要がなく、エンジン4によって駆動されるエアーコンディショナーSを走行機体Aに備えたものと比較して、コンプレッサからの冷媒を給排するための配管をキャビンDに引き込む構成を採用しなくて済み、構成が簡素化する。更に、電源ユニットBとエアーコンディショナーSとをルーフ部Rに備える構成であるため、電源ユニットBとエアーコンディショナーSとを備えるための空間を走行機体Aに確保しなくて済むだけではなく、比較的容易に設計変更を行えるルーフ部Rに対してこれらをコンパクトに備えることも可能になる。
【0069】
〔電力制御ユニット〕
右側の第1電力制御ユニットE1と左側の第2電力制御ユニットE2とは電力の出力対象が異なるだけで基本的に共通する構成を有しているため、これらを一括して電力制御ユニットEとして説明する。図10〜図14に示すように、電力制御ユニットEは、後部フェンダー8の下側で後車輪2の上側に備えられている。前述したように、この電力制御ユニットEは、設定される電圧で、設定される周波数となる三相交流を生成するVVVF型のインバータとして構成されている。
【0070】
この電力制御ユニットEは、後部フェンダー8の下側に配置されることで良好な放熱を実現するものであるが、後車輪2の上方位置に配置されるため作業時等に後車輪2で跳ね上げられた泥土や小石の接触を規制する規制手段が備えられている。この規制手段としてのケース部85に電力制御ユニットEが収容され、ケース部85の下側に規制手段として水平姿勢の保護プレート86が配置されている。この保護プレート86は鋼材等の高強度の材料が用いられ、後部フェンダー8の縦壁8Aに連結固定され、更に、この保護プレート86の上面にケース部85が支持される形態で連結されている。保護プレート86の下面で後端側には鋼材等の高強度の材料が用いられ下方に突出するスクレーパ87が備えられ、この保護プレートの86の上面で後端側には縦壁状となる隔壁88が備えられている。尚、図面では、保護プレート86の上面に対してケース部85を連結した構造を示しているが、これらの中間に隙間を形成しても良い。また、スクレーパ87は保護プレート86の前部位置の1箇所、又は、前部位置と後部位置との2箇所に備えても良く、3箇所以上備えても良い。
【0071】
また、ケース部85は、前端と後端とが開放する構造を有しており、前端側にはキャビン内の空気を冷却風として電力制御ユニットEに導く供給ダクト89が形成され、この供給ダクト89とケース部85との中間部位に冷却ファン90が備えられている。後部フェンダー8のうち供給ダクト89が接続する縦壁8Aには、吸気孔89Aが孔状に形成され、ケース部85の内部を通過した空気を送り出すように隔壁88における機体中央側の端部と、後部フェンダー8の縦壁8Aとの間に開放空間88Sが形成されている。
【0072】
また、第1電力制御ユニットE1からジェネレータモータMに電力を供給する出力ケーブル91と、この第1電力制御ユニットE1に電源ユニットBからの直流電力を供給する電源ケーブル92(電力ケーブルの一例)と、制御ケーブル93とが、この第1電力制御ユニットE1における走行機体内側の側壁を貫通し、走行機体Aの中央側のキャビン内に延出する形態で形成されている。これ同様に、第2電力制御ユニットE2から第1油圧ポンプP1の第1ポンプモータP1mと、第2油圧ポンプP2の第2ポンプモータP2mとに電力を供給する出力ケーブル91と、この第2電力制御ユニットE2に電源ユニットBからの直流電力を供給する電源ケーブル92(電力ケーブルの一例)と、制御ケーブル93とが、この第2電力制御ユニットE2における走行機体内側の側壁及び後部フェンダー8の縦壁8Aを貫通し、走行機体Aの中央側のキャビン内に延出する形態で形成されている。
【0073】
〔電力制御ユニットに関連する構成の実施形態における作用・効果〕
このような構成から、後部フェンダー8の下側と後車輪2との間の空間を有効利用しながら下方に開放した空間に対して電力制御ユニットEを配置することにより、良好な放熱を実現できるものにしている。特に、ケース部85と保護プレート86とで成る規制手段を備えているので、後車輪2から跳ね上げられた小石や泥土が電力制御ユニットEに付着することや損傷させることがない。後車輪2に付着した土塊や藁等が後部フェンダー8の内部に持ち込まれる状況においても、この土塊や藁等にスクレーパ87が接触して後車輪2から掻き落とすことになり、冷却効果を損なうこともない。
【0074】
更に、キャビン内の清浄な空気を、吸気孔89Aを介して吸引し冷却ファン90により電力制御ユニットEに供給することにより、電力制御ユニットEに清浄な空気を供給して放熱を行える。このように電力制御ユニットEの冷却を行った空気はケース部85の後端から送り出されると共に、開放空間88Sから後方に排出される。この構成により走行機体Aの外部の空気を直接的に接触させて行う冷却と、キャビンDの内部からの空気を供給して行われる冷却とを併せた良好な冷却が実現する。
【0075】
また、電力制御ユニットEは、必ずしも後部フェンダー8の下側に配置する必要はなく、一部を後部フェンダー8の上面から上方に突出する形態や、一部がキャビン内(走行機体Aの内側)に突出する形態で配置しても良い。このように配置する構成であっても、後部フェンダー8の部位に電力制御ユニットEを配置することの良好な面は損なわれるものではない。
【0076】
〔電力制御構成〕
トラクタの電力制御構成の概要を図15に示している。この電力制御構成は、電源ユニットBの二次電池59からの直流電力をリレーボックスGを介して第1,第2電力制御ユニットE1,E2に供給する電源ケーブル92を有した電力供給系を備えている。第1電力制御ユニットE1は、供給された直流電力を三相交流電力に変換し出力ケーブル91を介してジェネレータモータMに供給し、第2電力制御ユニットE2は、供給された直流電力を三相交流電力に変換し出力ケーブル91を介して第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとに供給する。図面には示していないが、第2電力制御ユニットE2は、エアーコンディショナーSのコンプレッサにも電力を供給する。
【0077】
主制御システムは、前述したように主制御ユニット101と、エンジン制御ユニット102と、ハイブリッド制御ユニット103と、モータ制御ユニット104と、整流昇圧ユニット105とを備えている。
【0078】
エンジン4は、コモンレール式の燃料噴射系を有し、この燃料噴射を制御するためにエンジン制御ユニット102は、アクセルペダルセンサ54Sからの信号、エンジン4の回転速度を検出する回転速度センサ99(図2を参照)からの信号、コモンレール内の燃料の圧力を検出する燃料圧力センサ(図示せず)からの信号、吸気部位の吸気圧センサ(図示せず)からの信号等を取得し、インジェクター(図示せず)の作動タイミングを決める制御を行う。このような構成からエンジン制御ユニット102は、エンジン4に作用する負荷を判別することも可能であり、エンジン4に作用する負荷や、エンジン4の回転速度や、アクセルペダル54の踏み込み量等のジェネレータモータMを駆動する際に必要な情報を主制御ユニット101に出力する。回転速度センサ99は、伝動ハウジング5の前部ハウジング5Aを上下に貫通する孔部を挿通する状態で備えられ、下端のセンシング部をフライホイール15の外周の近接させ、磁束密度の変化からフライホイール15の回転をカウントするピックアップ型に構成されている。尚、回転速度センサ99は光学式に出力軸4Aやフライホイール15等の回転をカウントするものでも良い。
【0079】
このトラクタでは、エンジン4に作用する負荷を検出するための負荷センサをエンジン4や走行駆動系に備え、この負荷センサで検出した情報を主制御ユニット101が取得するように構成しても良い。また、エンジン4はディーゼル型に限るものではなく、ガソリン型であっても良い。
【0080】
ハイブリッド制御ユニット103は、主制御ユニット101からの情報に基づいて電源ユニットBとリレーボックスGとに電池制御ケーブル98を介して制御信号を出力する。モータ制御ユニット104は、主制御ユニット101からの情報に基づいて第1,第2電力制御ユニットE1,E2に対し制御ケーブル93を介して制御信号を出力する。
【0081】
整流昇圧ユニット105は、ジェネレータモータMで発電された三相交流電流を直流電流に変換する整流回路の機能と、このように直流電流に変換された電流を高圧電流に変換するDC−DCコンバータとの機能とを有し、直流電力は送電ケーブル94を介して送電される。
【0082】
前述したように主制御システムが運転座席9の下側に配置され、電源ユニットBとリレーボックスGとがキャビンDのルーフ部Rに配置され、右側の後部フェンダー8の下側に第1電力制御ユニットE1が配置され、右側の後部フェンダー8の下側に第2電力制御ユニットE2が配置されている。このような位置関係から、電源ユニットBから第1,第2電力制御ユニットE1,E2に直流電力を供給する電源ケーブル92を右側の中間ピラー42の内部に挿通する状態で配設されている。また、主制御システムのハイブリッド制御ユニット103から電源ユニットBに制御信号を出力する電池制御ケーブル98を右側の後ピラー43の内部に挿通する状態で配設されている。
【0083】
このような電力制御構成を備えているため、主制御ユニット101からの信号によりエンジン制御ユニット102が、エンジン4を燃費の良い低速領域で稼動させる制御を実行する。また、エンジン制御ユニット102が取得する情報に基づいて主制御ユニット101が、エンジン4に作用する負荷が閾値未満であることを判別した場合には、ジェネレータモータMからの発電電力を整流昇圧ユニット105で高電圧に昇圧し、このように昇圧した直流電力を送電ケーブル94から電源ケーブル92に伝えることにより電源ユニットBに供給して充電する制御が実行される。このように充電を行う際には、二次電池59に対する充電を電池管理システム60が管理する。特に、電源ケーブル92を中間ピラー42の内部に配置し、電池制御ケーブル98を後ピラー43の内部に配置することにより、例えば、電源ケーブル92にノイズが乗ることがあっても、このノイズを電池制御ケーブル98に送られる制御信号に影響を与えないものにしている。
【0084】
これとは逆に、主制御ユニット101がエンジン4に作用する負荷が閾値を超えたことを判断した場合には、電源ユニットBからの電力をリレーボックスGから第1電力制御ユニットE1に供給すると共に、モータ制御ユニット104が第1電力制御ユニットE1に対して制御信号を出力することにより、第1電力制御ユニットE1からの三相交流電力をジェネレータモータMに供給し、このジェネレータモータMの駆動力でエンジン回転をアシストすることで駆動力不足やエンジンストップを招くことのない走行を実現する。このようにジェネレータモータMに電力を供給する際には、エンジン4の回転速度と、負荷の値と、アクセルペダル54の踏み込み量等の制御情報に基づいて、三相交流電力の出力電圧と出力周波数が設定され、二次電池59から第1電力制御ユニットE1に電力供給を開始した際には、リレーボックスGにおいて複数の抵抗器から適切なものを選択することで大電流が急激に供給される不都合を抑制する。また、電力の供給時にも適切な抵抗器を選択することで二次電池59から供給される大電流が急激に低下する不都合を抑制する。
【0085】
また、第2電力制御ユニットE2は、モータ制御ユニット104からの信号に基づき、必要とするタイミングで直流電力を三相交流電力に変換して第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mと供給する作動を行う。主制御ユニット101は、レバー類やスイッチ類の操作を判別し、電力供給を必要とするタイミングで第1ポンプモータP1mと第2ポンプモータP2mとの駆動を行うことにより電力の無駄な消費を抑制できるものにしている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電動モータのみの駆動力によって走行する構成の作業車だけではなく、電動モータとエンジンとの駆動力によって走行するハイブリッド型の作業車にも利用することができ、また、乗用田植機や芝刈機やコンバインなどの他の作業車にも利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
4 エンジン
42 ピラー(中間ピラー)
43 ピラー(後ピラー)
59 二次電池
60 電池管理手段(電池管理システム)
61 底壁
62 上壁
64 ユニット収容ケース
65 吸気ダクト
66 排気ダクト
67 ファン(前部ファン)
68 ファン(後部ファン)
92 電力ケーブル(電源ケーブル)
98 信号ケーブル(電池制御ケーブル)
B 電源ユニット
D キャビン
K ルーフ内空間
T 換気空間
M 電動モータ
N 冷却空間
R ルーフ部
S 空調装置(エアーコンディショナー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車であって、
運転者が搭乗するキャビンのルーフ部に前記電源ユニットと、前記キャビンの内部の空気温度の調整を行う空調装置とを備えている作業車。
【請求項2】
前記ルーフ部が下側の底壁と上側の上壁との間にルーフ内空間が形成される構成を有しており、
このルーフ内空間に対して、前記電源ユニットを収容するユニット収容ケースと、このユニット収容ケースに対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクトと、前記ユニット収容ケースの空気をキャビン外部に送り出す排気ダクトとを配置することで、この吸気ダクトの内部空間と、ユニット収容ケースの内部空間と、排気ダクトの内部空間とを併せて冷却空間が形成され、前記吸気ダクトを介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気を前記ユニット収容ケースから前記排気ダクトを介してキャビン外部に排出するファンが前記冷却空間の内部に備えられている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
キャビン外部の空気を取り込む換気空間が、前記冷却空間と分離する状態で前記ルーフ部に形成され、前記空調装置でキャビン内部の換気を行う際には前記換気空間から取り込んだ空気を前記空調装置に供給する請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記電源ユニットが、二次電池と、この二次電池の充電と放電とを管理する電池管理手段とを備えており、前記二次電池に接続する電力ケーブルと、前記電池管理手段に接続する信号ケーブルとが、前記キャビンの複数のピラーのうち互いに異なるものの内部に配設されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記電動モータとして、発電機として機能するものが用いられ、前記走行伝動系と前記電動モータとに駆動力を伝えるエンジンが備えられると共に、
前記電動モータで発電された電力を前記電源ユニットの前記二次電池に充電する充電モードと、前記電動モータに前記電源ユニットからの電力を供給する駆動モードとの切り換えを行う充放電制御手段を備えている請求項4記載の作業車。
【請求項1】
電源ユニットからの電力によって作動する電動モータの駆動力を走行伝動系に伝える作業車であって、
運転者が搭乗するキャビンのルーフ部に前記電源ユニットと、前記キャビンの内部の空気温度の調整を行う空調装置とを備えている作業車。
【請求項2】
前記ルーフ部が下側の底壁と上側の上壁との間にルーフ内空間が形成される構成を有しており、
このルーフ内空間に対して、前記電源ユニットを収容するユニット収容ケースと、このユニット収容ケースに対してキャビン外部の空気を供給する吸気ダクトと、前記ユニット収容ケースの空気をキャビン外部に送り出す排気ダクトとを配置することで、この吸気ダクトの内部空間と、ユニット収容ケースの内部空間と、排気ダクトの内部空間とを併せて冷却空間が形成され、前記吸気ダクトを介してキャビン外部の空気を吸引し、この空気を前記ユニット収容ケースから前記排気ダクトを介してキャビン外部に排出するファンが前記冷却空間の内部に備えられている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
キャビン外部の空気を取り込む換気空間が、前記冷却空間と分離する状態で前記ルーフ部に形成され、前記空調装置でキャビン内部の換気を行う際には前記換気空間から取り込んだ空気を前記空調装置に供給する請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記電源ユニットが、二次電池と、この二次電池の充電と放電とを管理する電池管理手段とを備えており、前記二次電池に接続する電力ケーブルと、前記電池管理手段に接続する信号ケーブルとが、前記キャビンの複数のピラーのうち互いに異なるものの内部に配設されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記電動モータとして、発電機として機能するものが用いられ、前記走行伝動系と前記電動モータとに駆動力を伝えるエンジンが備えられると共に、
前記電動モータで発電された電力を前記電源ユニットの前記二次電池に充電する充電モードと、前記電動モータに前記電源ユニットからの電力を供給する駆動モードとの切り換えを行う充放電制御手段を備えている請求項4記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−210841(P2012−210841A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76593(P2011−76593)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]