説明

便座

【課題】 便座本体と便座底板との間の合せ面をコーティングする便座において、便座本体と便座底板との間の合せ面をより均一にコーティングすることができる。
【解決手段】 本発明では、着座面を有する便座本体の下方に接合される便座底板の接合部に形成される開口部は、前記便座本体の側面から接合部にかけて設けられた上面と前記便座底板の側面から接合部にかけて設けられた溝とからなり、前記開口部の開口は、コーティング材によって閉塞されていることを特徴とする便座とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座に係り、便座本体と便座底板とを接合している便座に関する。
【背景技術】
【0002】
便座本体と便座底板とを接合して便座を形成する場合、便座本体と便座底板とを振動溶着して接合することが良くなされるが、便座本体と便座底板との合わせ面については、隙間が形成され、その隙間に汚れは侵入する不具合があった。
【0003】
この不具合を解消するために、例えば、特開2009−100788号では、便座表部材と便座裏部材とを接合して設けられる便座において、便座表部材と便座裏部材との合せ面に浅溝状の筋状部を設け、この筋状部に塗料を塗着し、筋状部を隠蔽することで、意匠性を向上させ、かつ汚れが進入することを防ぐようにした便座が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように特許文献1の技術によれば、意匠性の向上や汚れの侵入防止が期待できる。しかし、筋状部の形状がV溝状の溝やコ字状の溝であるため、塗着した塗料の変形を妨げることができず、塗料を筋状部の溝に塗着した際、塗料が乾く前に、塗料が重力によって変形したり、あるいは溝に留まっていることができなくなって溝外に流出することが懸念される。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便座本体と便座底板を接合し、便座本体と便座底板との間の合せ面をコーティングする便座において、便座本体と便座底板との間の合せ面をより均一にコーティングすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、着座面を有する便座本体の下方に接合される便座底板の接合部に形成される開口部は、前記便座本体の側面から接合部にかけて設けられた上面と前記便座底板の側面から接合部にかけて設けられた下に凸となる溝とからなり、前記開口部の開口は、コーティング材によって閉塞されていることを特徴とする便座とする。
【0007】
本発明によれば、開口部は、下に凸となる溝にコーティング材を便座内方に保持しながら、開口部の開口を閉塞するので、開口付近のコーティング材は、便座の外方に流出することを抑制できるので、便座本体と便座底板との接合面をより均一にコーティングすることができる。
【0008】
また、好ましくは、本発明の請求項2の発明は、前記開口部が下り傾斜になっている部位には、コーティング材の流動規制手段が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、下り傾斜で流れやすくなる部位に、その流れを規制するようにしたので、溝部にコーティング材を保持することができ、便座本体と便座底板との接合面をより均一にコーティングすることができる。
【0010】
また、好ましくは、本発明の請求項3の発明は、前記流動規制手段は、前記溝の底部に形成される段差であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、流動しようとするコーティング材を段差で抑制でき、溝にコーティング材を保持することができ、便座本体と便座底板との接合面をより均一にコーティングすることができる。また、段差を開口部内の容積を減らすように形成することで、コーティング材の量を減らすことができる。
【0012】
また、好ましくは、本発明の請求項4の発明は、前記開口部の開口の便座本体側に、凸部を形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記凸部によって、開口部の開口付近のコーティング材が、外方に流動しようとすることを抑制できるので、便座本体と便座底板との接合面をより均一にコーティングすることができる。
【0014】
また、好ましくは、本発明の請求項5の発明は、前記開口部の開口の便座底板側に、凹部を形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、前記凹部によって、開口部の開口付近のコーティング材が、一時的に凹部に保持され、開口部側に流動していくが、開口部内全てを充填しなくても、開口付近で十分な保持力を発揮し、開口を閉塞することでき、便座の周方向の開口部において、コーティング材の充填量に多少の斑があっても開口を効果的に閉塞できる。
【0016】
また、好ましくは、本発明の請求項6の発明は、前記段差は、前記溝に挿入固定した固定部材にて形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記固定部材を傾斜の状態に応じて、その大きさや個数をコーティング材の流動規制を考慮して後から設定できるので、よりコーティング材の流動を制御しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、便座本体と便座底板との間の合せ面をコーティングする便座において、便座本体と便座底板との間の合せ面をより均一にコーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の便座の接合前の外観図である。
【図2】本発明の便座の外観図である。
【図3】本発明の第1実施形態に関わる図2のA-A線断面に相当する拡大部分断面図である。a図は、接合前の図、b図は、接合後の図、c図は、コーティング材を充填した後の図である。
【図4】本発明の第2実施形態に関わる図2のA-A線断面に相当する拡大部分断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に関わる図2のA-A線断面に相当する拡大部分断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に関わる図2の便座後方の破線丸囲み部の拡大部分切欠図である。b図は、a図のB-B線断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に関わる図2の便座後方の破線丸囲み部の拡大部分切欠図である。b図は、a図のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の第一の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便座装置を表す分解模式図である。
また、図2は、本発明の実施の形態にかかる便座装置を表す斜視模式図である。
本発明の実施の形態にかかる便座1は、便座底板2と便座本体3とからなる。便座本体3には、使用者が着座する着座面3aを有している。また、便座底板2及び便座本体3は、便座1に座る使用者の体重を支える役割を有し、例えばポリプロピレン(PP:polypropylene)等の樹脂により形成される。前記便座底板2には、図示しない便器に開閉可能なようにヒンジ2aが設けられている。また、図2の破線まる囲み部に相当する付近は、後方に上り傾斜した状態となっている。
前記便座底板2と便座本体3との固定は、溶着により行うことができる。溶着の方法としては、振動溶着や、超音波溶着や、レーザ溶着や、熱板溶着などを挙げることができる。あるいは、便座底板2と便座本体3との接触面に配設された電線に電流を流すことで発生する熱により、便座底板2と便座本体3とを溶着し固定することができる。
以下、前記便座底板2と便座本体3とが振動溶着により固定される場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図3は、便座1の製造工程を説明する図であり、(a)図は、便座底板2と便座本体3とが溶着する前の状態を示す図、(b)図は、便座底板2と便座本体3とが振動溶着されたことを示す図、及び(c)図が、コーティング材を塗布した後の図である。
便座本体3には、便座本体リブ3bが便座本体3の周方向に連続して設けられており、便座本体3の側面から便座本体リブ3bに向けて傾斜面3cが形成されている。また、便座底板2には、前記便座本体リブ3bに対向する位置に便座底板リブ2bが、設けられており、また、前記便器底板2には、前記便器底板2の側面から便座底板リブ2bに向けて下に凸の溝2cが周方向に連続して設けられている。
【0022】
(a)図の状態から便座本体リブ3bと便座底板リブ2bとを図中の矢印方向に加圧しながら、前記便座本体リブ3bと便座底板リブ2bとが、接触した状態で振動を加える。こうすることにより、接合部4において、便座本体リブ3bと便座底板リブ2bとの少なくともいずれかの基材が摩擦熱で加熱されて軟化(「溶融」も含む)する。軟化した基材は、接合部4の側方に広がり、バリ4aとなって突出する。この際、便座本体3と便座底板2との側面は接触しないようにして接合される。また、(b)図に示すように、便座本体3と便座底板2とが接合され接合部4を形成することで、前記便器本体3の傾斜面3cと便座底板2の溝2cとで構成される開口部5が形成されるため、前記バリ4aは、前記開口部5内に位置して、開口部5の開口5aから外方に突出して見栄えを損なうことは無い。
開口部5の便座本体3の側面から接合部4に至る上面は、傾斜面3cとして形成したが、平坦面であっても良い。
【0023】
次に、(c)図に示すように、上記開口部にアクリルシリコン樹脂塗料又はアクリルウレタン樹脂塗料といったコーティング材を充填して、開口部5の開口5aを閉塞する。開口5aは、便座1内に形成される開口部4の高さより、短く、狭いため、コーティング材6は、開口部5内方に保持され、便座1の外側に流出することを抑制している。その結果、コーティング材6は、便座本体3と便座底板2との接合面をより均一にコーティングすることができ、便座1の意匠性及び防汚性に効果を発揮することができる。
なお、図では、コーティング材6が開口部5内を満たすように充填されているようになっているが、開口5a付近でコーティング材6が内方へも外方へも流動しない状態で開口部5内に塗布され、開口5aが閉塞されていれば、開口部5内にコーティング材6が無い空間があっても良い。
また、前記接合部4は、開口5aから見えない位置、例えば、開口5aより下方に位置するように形成しているので、コーティング材6を透明なものを用いても見栄えを損なうことはない。
【0024】
次に、図4に基づき、他の実施形態について、説明する。上記第一の実施形態と異なる点のみを説明し、他の部分については、同様であるので、省略する。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
図4は、図3の(c)図に相当する図である。図3と異なる点は、便座底板2の開口部5の開口5a付近に凹部7を形成したことである。
図4に示すようにコーティング材6は、開口部5内を満たすことなく塗布されている。これは、開口部5にコーティング材を塗布する際に、凹部7にコーティング材6の一部が保持されつつ、開口部4の内方に流れていく。開口部4内にある程度コーティング材6が導入されると、前記開口部4内の空気とコーティング材との置換が遅くなり、そのため、前記凹部6に保持される量が増えて開口5aが閉塞されることになる。また、凹部6によって便座1の外方にコーティング材が流動することは、抑制できているので、便座本体3と便座底板2との接合面をより均一にコーティングすることができ、便座の意匠性及び防汚性に効果を発揮することができる。
【0026】
次に、図5に基づき、他の実施形態について、説明する。上記第一の実施形態と異なる点のみを説明し、他の部分については、同様であるので、省略する。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0027】
図5は、図3の(b)図に相当する図である。図3と異なる点は、便座本体3の開口部5の開口5a付近に凸部8を形成したことである。
開口5aの上方に存在するコーティング材6は、重力の影響で、下方に流動し易いため、上記凸部8を形成することで、コーティング材6は、凸部8によって、開口部5から便座1外方に流動を抑制することを抑制できるので、便座本体3と便座底板2との接合面をより均一にコーティングすることができ、便座の意匠性及び防汚性に効果を発揮することができる。
【0028】
なお、上記凹部7及び凸部8を併用することで、より効果的にコーティング材6によって、開口部5の開口5aを閉塞できる。
【0029】
次に、図6に基づき、他の実施形態について、説明する。上記第一の実施形態と異なる点のみを説明し、他の部分については、同様であるので、省略する。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
図6は、図2の破線丸囲み部に相当する部位の便座1の接合部4から便座底板2の一部を切り出した拡大部分切欠図である。(b)図は、(a)図のB−B線断面図である。
この便座1後方の着座面3aは、後方に向かって上り傾斜になっている。この後方の上り傾斜部分の開口部5の底面も同様に上り傾斜となっている。そのため、コーティング材を開口部5に塗布するとコーティング材は、傾斜方向に流動してしまいその部分に留まらないので、塗布斑を生じる恐れがあるので、少なくともその傾斜を有している領域の溝には、段差9を設けてコーティング材6の流動を規制して、開口部内にコーティング材6を留め、その部分の開口5aを確実に閉塞できるようにした。段差9は、複数のものを繰り返し形成することが望ましいが、1か所で流動を制御できれば、1か所でも良い。段差9の数は、コーティング材6の種類などによっても異なることから、適宜選択すれば良い。
【0031】
図7は、図8の実施形態の変形例を示すものであり、段差8の形成を溝2cに圧入固定できるような球状の固定部材9を配置したことである。固定部材10は、便座本体3と便座底板2とを溶着する前に便座底板2の溝2cに嵌めこんでおけば良い。また、圧入でなく、接着剤を利用して固定部材9を固定しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 便座
2 便座底板
2a ヒンジ
2b 便座底板リブ
2c 溝
3 便座本体
3a 直座面
3b 便座本体リブ
3c 傾斜面(上面)
4 接合部
4a バリ
5 開口部
5a 開口
6 凹部
7 凸部
8 段差
9 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有する便座本体の下方に接合される便座底板の接合部に形成される開口部は、
前記便座本体の側面から接合部にかけて設けられた上面と前記便座底板の側面から接合部にかけて設けられた溝とからなり、
前記開口部の開口は、コーティング材によって閉塞されていることを特徴とする便座。
【請求項2】
前記開口部が下り傾斜になっている部位には、コーティング材の流動規制手段が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の便座。
【請求項3】
前記流動規制手段は、前記溝の底部に形成される段差であることを特徴とする請求項2に記載の便座。
【請求項4】
前記開口部の開口の便座本体側に、凸部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の便座。
【請求項5】
前記開口部の開口の便座底板側に、凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の便座。
【請求項6】
前記段差は、前記溝に挿入固定した固定部材にて形成されることを特徴とする請求項3に記載の便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122(P2012−122A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134817(P2010−134817)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】