説明

保護フィルム

【課題】
光学用部材をはじめ、建材、塗装板、金属製品、ガラス製品などの輸送、加工、保管、検査などの際に、これらを保護するために用いられる保護フィルムとして、ロールからの繰り出し性、透明性、粘着昂進を防止できるものを提供する。
【解決手段】
粘着層(A)、基材層(B)及び離型層(X)を有する表面保護フィルムであり、粘着層(A)がエチレン及び炭素数4〜18のα−オレフィンの共重合体であるエチレン系重合体(A−1)、又はエチレン系重合体(A−1)と共に非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A―3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物からなり、基材層(B)がプロピレン系重合体(B−1)からなり、離型層(X)がエチレン重合体(X−1)であることを特徴とする保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の構成部材等の表面のゴミ等の付着、傷つき等を防ぎ、その汚染を防止するために用いられる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
保護フィルムは、光学用部材、建材、塗装板、金属製品、ガラス製品等被着体の表面のゴミ等の付着、傷つき等を防ぎ、その汚染を防止するために用いられている。これらの表面フィルムは、使用されるまでロール状にして取り扱われ、保護フィルムは一般に粘着性のない離型層と、基材層、さらに被着体と粘着させるための粘着層を有している。
プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合エラストマーからなるポリプロピレン系樹脂を主成分とする離型層と、結晶性ポリプロピレン系重合体を主成分とする基材層と、結晶性ポリプロピレン系重合体及び非晶性オレフィン系重合体からなる粘着層を共押出積層された保護フィルムが知られている(特許文献1)。
また、離型層がポリエチレンを主成分とする樹脂からなり、基材層がポリプロピレンを主成分とする樹脂からなり、粘着層が炭素数2〜12のα−オレフィンの共重合体を主成分とする保護フィルムが知られている(特許第3873379号)。
近年、液晶画面、プラズマディスプレイ(PDP)やリアプロジェクション画面等に用いる部材、いわゆる光学部材の表面を保護するための保護フィルムの利用が進み、傷付きや異物混入を防止するだけでなく、保護フィルムを貼着した状態で製品の検査ができるように、透明性や高温下で貼着しても適度な粘着力が発現する等の特性が望まれている。
また、保護フィルムを使用する際にロール状からスムーズに繰り出して被着体へ効率よく貼着することが望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−68564号公報
【特許文献2】特許第3873379公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学用部材をはじめ、建材、塗装板、金属製品、ガラス製品などの輸送、加工、保管、検査などの際に、これらを保護するために用いられる保護フィルムとして、ロールからの繰り出し性、透明性、粘着昂進(粘着性の時間変化)を防止できるものを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、粘着層(A)、基材層(B)及び離型層(X)を有する表面保護フィルムであり、粘着層(A)がエチレン85〜99モル%及び炭素数4〜18のα−オレフィン15〜1モル%の共重合体であるエチレン系重合体(A−1)(エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンの合計で100モル%とする。)、又はエチレン系重合体(A−1)と共に非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A―3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物からなり、基材層(B)がプロピレン含有量90〜100モル%であるプロピレン系重合体(B−1)からなり、離型層(X)がエチレン重合体(X−1)であることを特徴とする保護フィルムに関する。
本発明では、粘着層(A)がエチレン系重合体(A−1)60〜100重量%と非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物を40〜0重量%((A−1)、(A−2)及び(A−3)の合計を100重量%とする。)から構成されることが好適である。

また、本発明では、非晶性オレフィン系重合体(A−2)が、プロピレンと共にエチレン及び/または他のα−オレフィンとの共重合体であることが望ましい。
さらに本発明では、基材(B)がプロピレン系重合体(B−1)からなり、プロピレン単独重合体(B−1a)、プロピレン系ブロック共重合体(B−1b)、プロピレン系ランダム共重合体(B−1c)及びシンジオタクティックプロピレン系重合体(B-1d)から選ばれる少なくとも1種類以上の重合体であることが望ましい。
また本発明は、離型層(X)は低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種類以上の重合体であることが望ましい。
さらに、離型層(X)がブロッキング防止剤を0.01〜5重量%((X−1)とアンチブロッキング剤の合計を100重量%とする。)の割合で含有していることが望ましい。
本発明の保護フィルムは、被保護板状体を袋状に被包する用途に袋状の保護フィルムとして用いることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、透明性に優れフィッシュアイが無く、被着体の品質管理に適した保護フィルムを提供することができ、粘着層の粘着昂進(粘着性の時間変化)もなく被着体への適切な粘着強度が維持され、ロール状からの巻き戻し性に優れ、かつ貼着と剥ぎ取りの操作を効率よく行うことができる保護フィルムを提供することができ、さらに保護フィルムの全体の厚さを薄くしても適切な剛性を保ち、取り扱い易い保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
粘着剤層(A)について
本発明の保護フィルムの粘着層(A)には、エチレン85〜99モル%及び炭素数4〜18のα−オレフィン15〜1モル%の共重合体であるエチレン系重合体(A−1)(エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンの合計で100モル%とする。)又はエチレン系重合体(A−1)と共に非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A―3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物からなる。

エチレン系重合体(A−1)について
エチレン系重合体(A−1)としては、エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンとを種々の公知の重合触媒を用いて共重合して得ることができる。例えば、マルチサイト触媒を使用して共重合する場合、重合温度は通常30℃〜300℃程度であり、常圧ないし3000Kg/cm程度の圧力下に重合することが行われる。また、ジルコニウムを中心金属としシクロペンタジエニル環を配位子とするメタロセン等のシングルサイト触媒を用いることも行われる。
用いるα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどがあり、これらは1種類あるいは2種類以上が併用される。α−オレフィンの共重合体中の割合は、1〜15モル%であり、中でも2〜12モル%、さらに中でも3〜10モル%が好適である。これらは、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレンが好適である。
これらエチレン系重合体(A−1)の密度は0.89〜0.95g/cmが好適であり、その中でも0.90〜0.0.94g/cmがさらに好適である。これらエチレン系重合体(A−1)の分子量分布は特に限定されないが、シングルサイト触媒を用いた重合体の場合はMw/Mnの値が1.1〜5、中でも1.1〜3であることが望ましい。
エチレン系重合体(A-1)は、保護フィルムの表面層(A)を構成するものであり、基材層と共に共押出成形されることが望ましく、そのメルトフローレート(190℃)は0.01〜15g/10分)、その中でも0.1〜10g/10分が好適である。

非晶性オレフィン系重合体(A−2)について
非晶性オレフィン系重合体(A−2)は、非晶性の重合体であり、X線による結晶化度が5%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0%のポリマーである。また、非晶性オレフィン系重合体は、好ましくは示差走査熱量測定における融解温度60〜180℃の範囲の融解熱量が10J/g以下であり、さらに好ましくは5J/g以下であり、さらに好ましくは1J/g以下である。
非晶性オレフィン系重合体(A−2)のMw/Mnは、特に限定されないが、1〜5、中でも1〜3であることが望ましい。低分子量成分の割合が少ないので糊残りがない。
このような非晶性オレフィン系重合体(A−2)は、炭素数3〜10のα−オレフィンの重合体が好適であり、中でも炭素数2から8のα−オレフィンの共重合体が適している。これらの例としては、プロピレンと共にエチレンを共重合したプロピレン−エチレン共重合体、プロピレンと共に炭素数3〜18、好ましくは3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上のα−オレフィンを共重合したプロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレンと共にエチレン及び炭素数3〜18、好ましくは3〜10のα−オレフィンを共重合したプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体などがある。
これら非晶性オレフィン系重合体(A-2)のプロピレン含有量は40〜80モル%、中でも50〜75モル%が好適である。
さらにこれらの非晶性オレフィン系重合体(A−2)のメルトフローレート(230℃)は、0.1〜30g/10分、中でも0.5〜20g/10分が好適である。

オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)について
オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)は、分子内に少なくとも一つのオレフィン系エラストマー重合体部からなるいわゆる非晶性のソフトセグメントと少なくとも一つのいわゆるハードセグメントを有するブロック共重合体である。オレフィン系エラストマー重合体部からなるソフトセグメントは、通常、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα―オレフィンのランダム重合体部、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物(ジオレフィン)の重合体部あるいはその水素添加物であり、ハードセグメントは、通常、ポリスチレン重合体部などのガラス転移点が常温以上の重合体部、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα―オレフィン重合体部で結晶性を有するもの、あるいはブタジエン重合体部の水素添加物で結晶性を有するものである。
このようなオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)として好ましい例としては、少なくとも一つのジエンブロック(ジエン重合体部;ジオレフィン重合体部)からなるソフトセグメントと少なくとも一つのスチレンブロック(スチレン重合体部)からなるハードセグメントとを有するスチレン−ジエンブロック共重合体(A−3a)及び少なくとも一つの非晶性オレフィンブロック(非晶性オレフィン重合体部)からなるソフトセグメントと少なくとも一つの結晶性オレフィンブロック(結晶性オレフィン重合体部)からなるハードセグメントとを有するオレフィン−非晶性オレフィンブロック共重合体(A−3b)を例示することができ、これらブロック共重合体は、一般的に熱可塑性エラストマーとして製造、販売されている。
スチレン−ジエンブロック共重合体(A−3a)について
スチレン−ジエンブロック共重合体(A−3a)は、ジエンブロック(ジエン重合体部)からなるソフトセグメントとスチレンブロック(スチレン重合体部)からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体であり、いわゆる、熱可塑性エラストマーとして製造・販売されているブロック共重合体の一種であって、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)若しくはそれらブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。この水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共重合体等の部分水素添加物であってもよい。
これらブロック共重合体若しくはその水素添加物を粘着剤組成物として用いる際には、単独でも2種以上用いてもよい。
これらブロック共重合体の中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)の水素添加物等のスチレンブロックとジエンブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物がより好ましく、具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が押出成形時の熱安定性に優れ、加工時の安定性や、劣化物の発生及び臭いの発生を抑制する点で、最も好ましい。
本発明に係るスチレン−ジエンブロック共重合体(A−3a)は、エチレン系重合体(A−1)と混合して粘着剤層をフィルム形成することができ、メルトフローレート(200℃)は特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分の範囲にある。

オレフィン−非晶性オレフィンブロック共重合体(A−3b)について
オレフィン−非晶性オレフィンブロック共重合体(A−3b)は、少なくとも分子内に一つの非晶性オレフィンブロック(非晶性オレフィン重合体部)からなるソフトセグメントと結晶性オレフィンブロック(結晶性オレフィン重合体部)からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体であり、所謂、熱可塑性エラストマーとして製造・販売されているブロック共重合体の一種である。
オレフィン−非晶性オレフィンブロック共重合体(A−3b)は非晶性オレフィンブロックiと結晶性オレフィンブロックiiをそれぞれ分子内に少なくとも1個有する限りその構造は特に制限されず、(ii−i)n1 、(ii−i)n2 −ii、(ii−i)n3 −i(n1 、n2 、n3 は1以上の整数)や、これらをカップリング剤で結合した構造が例示される。
これらの中ではトリブロックの共重合体又はそれ以上の数のブロックを有する共重合体が好適である。
このようなオレフィン−非晶性オレフィンブロック共重合体(A−3b)としては、具体的には、ジエン化合物を主体とする重合体ブロックあるいはそれら重合体ブロックを水素添加処理してエチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体に類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックからなるソフトセグメントと、ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオレフィンとなり得る重合体部からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体を例示できる。また、ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオレフィンとなり得る重合体部の一部をスチレンなどのビニル芳香化合物の重合体部からなるハードセグメントで置き換えたブロック共重合体を例示できる。ジエン化合物としては、具体的には1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエンが例示される。
ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを水素添加処理してエチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体に類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックからなるソフトセグメントは、例えば、ポリブタジエンのビニル結合(1,2−及び3,4−結合の含有量)を、25〜85%程度にした重合体ブロックを水素添加することにより、非晶性のエチレン−ブテン共重合体と類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックが得られる。
ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオレフィンとなり得る重合体部は、例えばポリブタジエンのビニル結合(1,2−及び3,4−結合の含有量)を、25%以下にした重合体ブロックを水素添加することにより、エチレン重合体に類似した構造を持つ結晶性オレフィンブロックが得られる。
このようなオレフィン系ブロック共重合体(A−3)としては、具体的には、結晶性オレフィン(結晶性エチレン重合体部)−エチレン・ブテン(非晶性オレフィン重合体部)−結晶性オレフィン(結晶性エチレン重合体部)ブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブテン(非晶性オレフィン重合体部)−結晶性オレフィン(結晶性エチレン重合体部)ブロック共重合体(SEBC)が挙げられる。
オレフィン系ブロック共重合体(A−3)の他の例としては、プロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと少量のエチレンあるいは1−ブテン等の他のα―オレフィンとのプロピレンを主体とした結晶性プロピレン系重合体をリビング重合して結晶性オレフィン重合体部を得、次いでプロピレンとエチレン、1−ブテン等の他のα―オレフィンとを共重合して非晶性のオレフィン重合体部を得てなるプロピレン−プロピレン・α―オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。
なお、これらエチレン系重合体(A−1)、非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体(A−3)には、必要に応じて、他のポリマー、例えば結晶性ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体。プロピレン-エチレンランダム共重合体、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸金属塩共重合体、非晶性ないし低結晶性のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、炭化水素樹脂などを配合することが行われる。
さらに、これらエチレン系重合体(A-1)、非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体(A−3)には、必要に応じて添加剤、充填剤を配合することも行われる。例えば、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤その他の添加剤、酸化チタン等の無機充填剤、染料、顔料等を配合することも行われる。
本発明の粘着層は以下の構成を取り得る。
(1)エチレン系重合体(A−1)から構成される。
(2)エチレン系重合体(A−1)と非晶性オレフィン系重合体(A−2)から構成される。
(3)エチレン系重合体(A−1)とオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)から構成される。
(4)エチレン系重合体(A−1)、非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体(A−3)から構成される。
また本発明の粘着層(A)はエチレン系重合体(A−1)60〜100重量%と非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物を40〜0重量%((A−1)、(A−2)及び(A−3)の合計を100重量%とする。)から構成されることが好適である。
エチレン系重合体(A−1)と共に、非晶性オレフィン系重合体の割合(A−2)及び/またはオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物を併用する場合は、エチレン系重合体(A−1)が100〜60重量%であり、(A−2)及び/または(A−3)が0〜40重量%の範囲とすることが好適であり、中でも(A-1)が100〜30重量%であり、(A−2)及び/または(A−3)を0〜30重量%の範囲とすることが好適である((A-1)、(A−2)及び(A−3)の合計を100重量%とする。)。

基材層について
基材層(B)はプロピレン含有量90〜100モル%であるプロピレン系重合体(B−1)から構成される。
プロピレン含有量90〜100モル%であるプロピレン系重合体(B−1)には、プロピレン単独重合体(B−1a)、プロピレン系ブロック共重合体(B−1b)、プロピレン系ランダム共重合体(B−1c)及びシンジオタクティックプロピレン系重合体(B-1d)から選ばれる少なくとも1以上の重合体が用いられる。
これら基材層(B)を構成するプロピレン系重合体(B-1)のプロピレン含有量は90〜100モル%である。
プロピレン系重合体(B-1)には、必要に応じて他のポリマーを配合することが行われる。これらのポリマーとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン直鎖状共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸金属塩共重合体、非晶性ないし低結晶性のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、炭化水素樹脂などを配合することが行われる。
また、これらプロピレン系重合体(B-1)には、必要に応じて添加剤、充填剤を配合することも行われる。例えば、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤その他の添加剤、酸化チタン等の無機充填剤、染料、顔料等を配合することも行われる。
基材層(B)に用いられるプロピレン系重合体(B−1)のメルトフローレート(230℃)は、0.1〜20g/10分、中でも特に0.5〜15g/10分が好適である。

離型層(X)について
離型層(X)がエチレン重合体(X−1)で構成されている。
エチレン重合体(X-1)は、低密度ポリエチレン及び/または高密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種類以上の重合体であることが好ましい。
これらエチレン系重合体(X−1)の密度は0.89〜0.95g/cmが好適であり、その中でも0.90〜0.0.94g/cmがさらに好適である。
また、エチレン系重合体(X−1)は、アンチブロッキング剤を0.01〜5重量%((X−1)とブロッキング防止剤の合計を100重量%とする。)の割合で含有していることが望ましい。
ブロッキング防止剤には、シリカ、タルク、雲母、ゼオライト、金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子がある。また、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等も用いることができる。これらの中でもシリカ、ポリメタクリル酸メチルがブロッキング防止性能、透明性の面から特に好ましい。
エチレン重合体(X-1)には、必要に応じて、他のポリマー、例えば結晶性ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体。プロピレン-エチレンランダム共重合体、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸金属塩共重合体、非晶性ないし低結晶性のエチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、その水添物、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、炭化水素樹脂などを配合することが行われる。
また、これらエチレン系重合体(X−1)には、必要に応じて添加剤、充填剤を配合することも行われる。例えば、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤その他の添加剤、酸化チタン等の無機充填剤、染料、顔料等を配合することも行われる。
エチレン系重合体(X−1)のメルトフローレート(190℃)は、一般に0.1〜30g/10分であり、中でも0.2〜20g/10分が好適である。
離型層の表面には、本発明の特性を損なわない範囲であれば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射処理、紫外線照射処理のような周知の表面処理することができる。また、グラビア印刷、インクジェット印刷などの周知な印刷をすることもできる。

保護フィルムの製法について
(1)本発明の保護フィルムは、上記の粘着層(A)、基材層(B)及び離型層(X)を有する表面保護フィルムであり、以下に製造方法を示すが特に限定されるものではない。製造方法としては、インフレーションフィルム製造方法装置やTダイフィルム製造装置のような装置を用いて、それぞれの層を構成する樹脂を押出機に供給して3種3層の共押出する方法や、押出コーティングする方法(「押出ラミネート法」ともいう)により保護フィルムを成形することができる。特に、粘着層(A)、基材層(B)及び離型層(X)を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融加熱して共押出し、各層所定の厚さを有する積層フィルムを製造する方法が、高効率でしかも安価に本発明の保護フィルムを作成することができる点で好ましい。
また、予め基材層(B)のフィルムを成形し、少なくとも1軸方向に延伸した延伸フィルムを準備して、その片面に粘着層(A)を、さらに他の面に離型層(X)を押出被覆することにより保護フィルムを成形することも行われる。
予め成形される基材層(B)のフィルムとしては、タテ方向に3〜15倍、ヨコ方向に3〜15倍延伸した二軸延伸フィルムがある。これら延伸フィルムは、逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の延伸方法により調製することができる。
(2)また、本発明の保護フィルムの製法として、基材層(B)の二軸延伸フィルムの成形装置の下流側に粘着層(A)のラミネート工程、離型層(X)のラミネート工程を直列に配置して、連続的に保護フィルムを製造する方法がある。
(3)また、他の態様として、基材層(B)及び離型層(X)の二層のフィルムを押出した後、タテ方向に延伸し、続いて離型層(X)とは反対側に粘着層(B)をラミネートした後、3層フィルムをヨコ方向に延伸して保護フィルムを製造する方法がある。
(4)さらに他の態様として、基材層(B)のみのタテ延伸工程の後に、離型層(X)をラミネートし、2層フィルムとした後に、ヨコ方向に延伸し、その後に粘着層(A)をラミネートして保護フィルムとする方法がある。
これら保護フィルムの厚さは、粘着層(A)が1〜100μm、基材層(B)が5〜100μm、離型層(X)が1〜100μmが一般的である。
特に本発明の保護フィルムは、基材層(B)にプロピレン系ポリマーを使用しており、通常の保護フィルムに比べ、保護フィルム全体としての強度を維持しつつ、全体の厚さを薄くすることができる。

保護フィルムによる袋状の被包
本発明の保護フィルムを保護する板状態の表面と裏面に同時に貼着して、その周縁を圧着シールすることにより、保護する板状体を保護フィルムで覆い、保護フィルムが袋状となって板状体を被包して保護することができる。
これにより、保護する板状体が袋中に収納された状態となり、保護する板状体を密封することができると共に、保護フィルムの透明性を利用して、その状態のままで内容物である板状体を外部から検査することが可能である。
本発明の保護フィルムは、このような保護する板状体を袋状に被包することにより、袋状の保護フィルムとしての機能を発揮することがきる。
【実施例】
【0008】

以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例及び比較例において、粘着強度、粘着昂進(粘着性の時間変化)、糊残り(汚染性)、弾性率の測定は下記に示す方法で実施した。

<粘着強度>
粘着強度の測定は、粘着フィルムの試験方法(JIS Z 0237−2000)に準じて行った。試験片は、幅50mm、長さ100mmのアクリル板の表面に粘着フィルムを23℃で2kgの圧着ローラを2往復することで貼り付け作成した。その試験片を23℃で30分放置した後、剥離角度180°、剥離速度300m/minの条件下でアクリル板から粘着フィルムを剥離させるのに要した力を23℃における粘着強度とした。

<粘着昂進(粘着性の時間変化)>
粘着強度昂進の測定は、粘着強度の測定と同様に、試験片を、幅50mm、長さ100mmのアクリル板の表面に粘着フィルムを23℃で2kgの圧着ローラを2往復することで貼り付け作成した。その試験片を50℃で1日保持した後、23℃で1時間放置した後、剥離角度180°、剥離速度300m/minの条件下でアクリル板から粘着フィルムを剥離させるのに要した力を粘着昂進(粘着性の時間変化)とした。

<糊残り(汚染性)>
糊残りの測定は、試験片を、幅50mm、長さ100mmのアクリル板の表面に粘着フィルムを気泡が入るように貼り付け作成した。その試験片を50℃で1週間保持した後、23℃で1時間放置した後、アクリル板から粘着フィルムを剥がし、アクリル板上の状態を目視にて観察した。アクリル板上に、糊残り又は汚染物質がない場合を○、ある場合を×と評価した。

実施例1
粘着層(A)には、(株)プライムポリマー社製直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度d=0.914g/cm、MFR(190℃、荷重2.16Kg)=2.3g/10分を用い、基材層(B)には、(株)プライムポリマー社製ホモポリプロピレン(hPP)、密度d=0.90g/cm、MFR(230℃、荷重2.16Kg)=7.0g/10分、離型層(X)には、日本ポリエチレン(株)社製低密度ポリエチレン(LDPE)、密度d=0.921g/cm、MFR(190℃、荷重2.16kg)=6.8g/10分をそれぞれ各押出機に供給し、押出機の温度を、粘着層(A)及び離型層(B)が210℃、基材層(A)が220℃で設定し、ダイス温度を210℃で設定し、共押出Tダイフィルム成形法によって成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

実施例2
粘着層(A)に、(株)プライムポリマー社製直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度d=0.914g/cm、MFR(190℃、荷重2.16Kg)=2.3g/10分を90wt%、三井化学(株)社製非晶性オレフィン系重合体(ノティオPN−2060)、密度d=0.898g/cm、MFR(230℃、荷重2.16Kg)=6.0g/10分を10wt%の混合物を用いた以外は、実施例1と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

実施例3
粘着層(A)に、(株)プライムポリマー社製直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度d=0.914g/cm、MFR(190℃、荷重2.16Kg)=2.3g/10分を70wt%、三井化学(株)社製非晶性オレフィン系重合体(ノティオPN−2060)、密度d=0.898g/cm、MFR(230℃、荷重2.16Kg)=6.0g/10分を30wt%の混合物を用いた以外は、実施例2と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

実施例4
離型層(X)に、日本ポリエチレン(株)社製低密度ポリエチレン(LDPE)、密度d=0.921g/cm、MFR(190℃、加重2.16Kg)=6.8g/10分を90wt%、日本ポリエチレン(株)社製高密度ポリエチレン(HDPE)、密度d=0.961g/cm、MFR(190℃、荷重2.16Kg)=7.5g/10分を10wt%の混合物を用いた以外は、実施例2と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

実施例5
基材層(B)に、(株)プライムポリマー社製ランダムポリプロピレン(rPP)、密度d=0.89g/cm、MFR(230℃、加重2.16Kg)=7.0g/10分を用いた以外は、実施例2と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

実施例6
離型層(X)に、日本ポリエチレン(株)社製低密度ポリエチレン(LDPE)、密度d=0.921g/cm、MFR(190℃、加重2.16Kg)=6.8g/10分を99.2wt%、アンチブロッキング剤(AB剤)として水沢化学工業(株)社製の合成ゼオライト(平均粒径3μm)を0.8wt%の混合物を用いた以外は実施例2と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

比較例1
粘着層(A)に、(株)プライムポリマー社製直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度d=0.914g/cm、MFR(190℃、荷重2.16Kg)=2.3g/10分を50wt%、三井化学(株)社製非晶性オレフィン系重合体(ノティオPN−2060)、密度d=0.898g/cm、MFR(230℃、荷重2.16Kg)=6.0g/10分を50wt%の混合物を用いた以外は、実施例1と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。

比較例2
離型層(X)に、日本ポリエチレン(株)社製低密度ポリエチレン(LDPE)、密度d=0.921g/cm、MFR(190℃、加重2.16Kg)=6.8g/10分を97.0wt%、アンチブロッキング剤(AB剤)として水沢化学工業(株)社製の合成ゼオライト(平均粒径3μm)を3.0wt%の混合物を用いた以外は実施例2と同様に成形した。
得られた表面保護フィルムは、既に記載した方法で測定を行い、結果を表1に示す。
【0009】
表1







表1からわかるように、実施例では、アクリル板との粘着性を示し、粘着昂進が2倍以下、糊残り(汚染性)に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の保護フィルムは、透明性に優れ粘着昂進がなく、比較的薄手であっても剛性、強度を維持しており、貼着、引き剥がしの作業効率がよく、貼着した状態のままで、被保護板状体の検査が容易である。
このため、本発明の保護フィルムは光学用部材、建材、塗装板、金属製品、自動車、電気製品、家具等の表面の保護、ガラス製品等被着体の表面のゴミ等の付着、傷つき等を防ぎ、その汚染を防止するために用いることができる。
また、再剥離シートとして、食品用、文具用、広告、宣伝ディスプレイ用などにも利用することができる。
特に、液晶パネル、偏向板、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プリント配線基板などの電子、精密部品の保護フィルムとしても利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層(A)、基材層(B)及び離型層(X)を有する表面保護フィルムであり、
粘着層(A)がエチレン85〜99モル%及び炭素数4〜18のα−オレフィン15〜1モル%の共重合体であるエチレン系重合体(A−1)(エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンの合計で100モル%とする。)、又はエチレン系重合体(A−1)と共に非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A―3)から選ばれる少なくとも1種類からなる組成物からなり、
基材層(B)がプロピレン含有量90〜100モル%であるプロピレン系重合体(B−1)からなり、
離型層(X)がエチレン重合体(X−1)であることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
粘着層(A)が、エチレン系重合体(A−1)60〜100重量%と非晶性オレフィン系重合体(A−2)及びオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A−3)から選ばれる少なくとも1種類を40〜0重量%((A−1)、(A−2)及び(A−3)の合計を100重量%とする。)から構成されることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
非晶性オレフィン系重合体(A−2)が、プロピレンと共にエチレン及び/または他のα−オレフィンとの共重合体であることをと特徴とする請求項1又は2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
基材層(B)が、プロピレン系重合体(B−1)からなり、プロピレン単独重合体(B−1a)、プロピレン系ブロック共重合体(B−1b)、プロピレン系ランダム共重合体(B−1c)及びシンジオタクティックプロピレン系重合体(B-1d)から選ばれる少なくとも1種類以上の重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項5】
離型層(X)のエチレン系重合体(X−1)が、低密度ポリエチレン及び/または高密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種類以上の重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項6】
離型層(X)のエチレン系重合体(X−1)が、アンチブロッキング剤を0.01〜5重量%((X−1)とブロッキング防止剤の合計を100重量%とする。)の割合で含有していることを特徴とする請求項1又は5に記載の保護フィルム。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の保護フィルムが、被保護板状体を袋状に被包する用途に用いられる袋状の保護フィルム。

【公開番号】特開2010−42580(P2010−42580A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207674(P2008−207674)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】