説明

保護材及び置敷タイル

【課題】被覆シート4aやタイル本体2aの材質、表面状態等に依存せず、かつ、紫外線や化学変化に対して接着剤等が変質しても、確実に被覆シート4aが剥離できるようにする。
【解決手段】タイル本体2aを被覆シート4aで被覆する際に、該被覆シート4aとタイル本体2aとの間に分離シート4bを配設し、かつ、これらに貼付けする。この分離シート4bは、面に沿った方向の引張強度分布が略一様で、厚み方向の引張強度分布が、その表裏面側の引張強度より中央部側で弱くなる引張強度分布を持つようにする。これにより被覆シート4aを被覆シート4aから引き離した際には、分離シート4bの一部が被覆シート4aに貼付いた状態で、他がタイル本体2aに貼付いた状態で分離して、被覆シート4aとタイル本体2aとの剥離を容易に、かつ、確実に行えるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗、事務所、公共施設、展示場等において利用されるタイルや家庭の腰壁等の被保護材を被覆して、その被覆面を保護する保護材及び置敷タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にコンクリート建造物の床面は下地仕上げされ、この床面にプラスチックタイル材、薄く加工した石材、木材等の床材が接着剤等で貼付けられている。
【0003】
このようなプラスチックタイル材等の床材は、汚れが染みついたり、摩耗したりすると貼替える必要が生じ、また模様替えや改装のため貼替える必要が生じる。
かかる貼替作業は、タイルを剥がす剥離作業、下地面に付着している接着剤等を取除く下地調整作業、新しいタイルの貼付作業を経て行われ、長時間の作業やコストが必要になる問題があった。
【0004】
そこで、接着剤等を用いないで施工できる置敷タイルが提案されている(特許文献1参照)。この置敷タイルは、当該置敷タイルを床面に敷くだけで施工が行えるため、作業工数の低減及びコストダウンが可能になる利点がある。
しかし、剥離されたタイル等は使い捨てを基本としているので、多大な資源の無駄が発生する問題があった。
【0005】
このため、タイルに保護材を剥離可能に設けて、タイルのリサイクルを可能にした構成の置敷タイルが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−4264号公報
【特許文献2】特開2004−44272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護材とタイルとは接着剤等により接着されているため、保護材とタイルとが剥離できない場合があり、リサイクル効率を向上させることが困難であった。
【0007】
保護材が剥離できない原因は、現在のところ明確になっていないが、保護材やタイルの材質、表面状態等に応じた適切な接着剤の選定が困難であり、特に長期間使用することにより当該接着剤が紫外線で変質したり、あるいは化学変化を起こしたりすることをも勘案して選定することが非常に困難であることが一因になっている。
【0008】
いずれにしろ、いかなる原因であっても、保護材の剥離ができない場合があり、このためタイル等のリサイクル効率を向上させることができない現実があった。
【0009】
そこで、本発明は、保護材やタイルの材質、表面状態等に依存せず、かつ、紫外線や化学変化に対して接着剤等が変質しても、確実に保護材が剥離できてリサイクル効率が向上できるようにした保護材及び置敷タイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る保護材は、タイル本体、腰壁、天板等の被保護材を被覆して、その被覆面を保護する被覆シートと、該被覆シートと被保護材との間に配設され、これら相互に貼付けられて、被覆シートを被保護材から引き離した際には、一部が被保護材に貼付いた状態で、他が被覆シートに貼付いた状態で分離して、被覆シートと保護材との剥離を可能にする分離シートとを有するものである。
【0011】
これにより、保護材やタイルの材質、表面状態等に依存せず、かつ、紫外線や化学変化に対して接着剤等が変質しても、確実に保護材が剥離できるようになりリサイクル効率が向上する。
【0012】
また、請求項2にかかる保護材は、被覆シートが、平板状の熱可塑性樹脂シートを熱変形させて、被保護材の表面及び側面を覆うように弁当箱状に成型されてなるものである。
【0013】
これにより、被覆シートを被保護材に単に被せるだけで、当該被保護材を被覆して保護することが可能となる。
【0014】
また、請求項3にかかる保護材は、分離シートにおける引張強度が、面方向で略一様であり、厚み方向で、その表裏面側より中央部側で弱くなる引張強度分布を持つものである。
【0015】
これにより、被覆シートを剥離した際に、分離シートが被保護材に残る部分と、保護材に残る部分とに分離し、かつ、その厚みがそれぞれ一様となって新たに分離シートや被覆シートを貼付ても凹凸が生じたりすることがない。
【0016】
また、請求項4にかかる保護材は、分離シートが、裏面にシール台紙を持つタック紙であって、当該シール台紙が被保護材に貼付けされ、シール面が被覆シートに貼付けされる。
【0017】
これにより、シール面とシール台紙とが容易、かつ、確実に分離されるので、被覆シートの剥離も容易、かつ、確実に行えるようになると共に、シール台紙及びシール面は一様の厚みを持つため、新しい分離シートであるタック紙や被覆シートを貼付ても凹凸等が発生せず、高品質な貼り替えが可能になる。
【0018】
また、請求項5にかかる置敷タイルは、天然石膏や排煙脱硫石膏を芯材とした石膏ボード、鉱物繊維を含む無機質複層材、又はケイ酸カルシウム水和物とバーミキュライトとを含む成形材等の無機質材料から形成されたタイル本体と、タイル本体を被覆して、その被覆面を保護する被覆シートと、被覆シートとタイル本体との間に配設され、これら相互に貼り付けられて、被覆シートをタイル本体から引き離した際には、一部がタイル本体に貼り付いた状態で、他が被覆シートに貼り付いた状態で分離して、被覆シートとタイル本体との剥離を可能にする分離シートと、上記保護材とにより形成したものである。
【0019】
これにより、被覆シートのリサイクルのみならず被覆シートのリサイクルも容易、かつ、確実に行えるようになりリサイクル効率が向上する。また、被保護材と被覆シートとの熱膨張係数の差が小さいため、当該被保護材が熱収縮して目地等において被覆シートが浮いてしまうような不都合が防止でき、また被保護材が熱膨張して被覆シートより大きくなってしまうような不都合が防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる保護材によれば、タイル本体、腰壁、天板等の被保護材を被覆して、その被覆面を保護する被覆シートと、該被覆シートと保護材との間に配設され、これら相互に貼付けられて、被覆シートを保護材から引き離した際には、一部が被保護材に貼付いた状態で、他が保護材に貼付いた状態で分離して、被覆シートと保護材との剥離を可能にする分離シートとを有するので、保護材やタイルの材質、表面状態等に依存せず、かつ、紫外線や化学変化に対して接着剤等が変質しても、確実に保護材が剥離できるようになりリサイクル効率が向上する。
【0021】
また、本発明に係る置敷タイルは、天然石膏や排煙脱硫石膏を芯材とした石膏ボード又は鉱物繊維と火山性ガラス質材料との複層材であるダイライトを材料に形成された被保護材と、該被保護材を被覆して保護する被覆シート及び、該被覆シートと被保護材との間に配設され、これら相互に貼付られて、被覆シートを貼り替える際には分離して、被覆シートと保護材との剥離を可能にする分離シートとを備える上記保護材とにより形成したので、被覆シートのリサイクルのみならず被覆シートのリサイクルも容易、かつ、確実に行えるようになりリサイクル効率が向上する。また、被保護材と被覆シートとの熱膨張係数の差が小さいため、当該被保護材が熱収縮して目地等において被覆シートが浮いてしまうような不都合が防止でき、また被保護材が熱膨張して被覆シートより大きくなってしまうような不都合が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、被保護材2としてのタイル本体2aに保護材4を剥離可能に被覆して置敷タイル1を構成する際の分解斜視図を示している。また、図2は図1におけるA−A断面図(完成された置敷タイルの断面図)を示している。
【0024】
保護材4は、タイル本体2aの表面及び側面を覆う形状(本明細書では、係る形状を「弁当箱状」と呼称する)に成型された被覆シート4a、該被覆シート4aとタイル本体2aとの間に配設されると共にこれらに貼付けられる分離シート4bを主要構成としている。
そして、タイル本体2aと被覆シート4aとを分離シート4bを介して貼付けられている。
以下、各部材の製造方法や材質等を踏まえながら詳細に説明する。
【0025】
先ず、タイル本体2aについて説明する。タイル本体2aは、1辺が約200〜1000mm、厚み約2〜10mmの三角形、正方形、六角形等の多角形の無機質材料からなる板状体である。ここで無機質材料とは、セラミック、ガラス、鉱物等を主原料とするものをいい、床材として適度な強度を有している。特に、天然石膏や排煙脱硫石膏を芯材とした石膏ボード、もしくは鉱物繊維を含む無機質複層材、あるいはケイ酸カルシウム水和物とバーミキュライトとを含む成形材は、タイル本体2の材料として好ましく用いられる。
【0026】
鉱物繊維を含む無機質複層材は、具体的には、ロックウール、グラスウール等の鉱物質繊維と、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪砂等の無機粉状体と、さらにでんぷん、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂等の結合剤とを必須成分として表裏層を形成し、これにパーライト、シラス発泡体、ガラス発泡体等の無機質発泡体と結合剤を必須成分とする芯層を積層一体化した三層構成の無機質板等を適用することができ、このような複層材の好適な例として「ダイライト」(商品名、大建工業社製)を挙げることができる。
【0027】
また、ケイ酸カルシウム水和物とバーミキュライトとを含む成形材は、例えば、珪砂粉末、消石灰、パルプを水に分散させて層状に成形し、その後に高温高圧の蒸気によるオートクレーブ養生を行ってケイ酸カルシウム水和物(5CaO・6SiO・5HO)を生成させ、そのケイ酸カルシウムの基材に粘土鉱物であるバーミキュライトを同一方向に分散させることで製造することができ、実際の製品として「MOISS」(三菱マテリアル建材社製)等が知られている。
【0028】
上記の無機質材料は、一般に熱膨張率が小さいため、タイル本体2の熱膨張・収縮を抑制でき、被覆シート4aとのずれの問題を回避することができる。
特に、石膏ボードやダイライト、及びMOISSは、熱膨張率が後述するポリエチレンテレフタレート(PET)と近い値(少なくとも従来提案されている塩化ビニルより近い値)であるため、被覆シート4aとの寸法狂いが生じ難く、また安価であることから好ましい。
【0029】
また、ダイライトは、軽量(木材並の軽さで比重0.7g/cm)、耐腐特性、高強度、耐火性、加工容易性、低吸水性があり、また発ガン物質やホルムアルデヒド等の環境ホルモン物質を殆ど含まない特徴があるため好ましい。
【0030】
さらに、MOISSについても、化学吸着力に優れるため、ホルムアルデヒド等の揮発性物質を効果的に吸着・固定化し、さらにカビやコケに対する抵抗力が高いため、床に施工するタイルとして好適に用いられる。
【0031】
安価、軽量、高強度、耐火性、安全性等については言及するまでもなく、優れた特性であるが、特に低熱膨張率、耐腐特性、加工容易性、低吸水性は、以下の点で製品の品質に大きく関わるため重要な特性となる。
【0032】
即ち、置敷タイル1は、下地仕上げされたコンクリート面等に接着剤等の固定手段を用いずに、単に置敷され手施工されるため、被覆シート4aに比べ熱膨張率が大きく違うと、タイル本体2aのサイズがときには被覆シート4aより大きくなって、目地部分で被覆シート4aの下面にタイル本体2aが存在しない状況が発生する。
【0033】
このような状況が発生すると、人の荷重等で目地部分の被覆シート4aが窪んだり、皺となったりして、美観を損ね、短期間で被覆シート4aの交換を行わなければならない事態が発生する。
【0034】
逆に、タイル本体2aのサイズが被覆シート4aより大きくなると、当該タイル本体2aに弁当箱状の被覆シート4aが嵌らなくなって、施工できなくなる不都合がある。
【0035】
しかし、被覆シート4aと近い熱膨張率を持つタイル本体2aでは、このような事態が発生せず、被覆シート4aの交換時期が短期間になりランニングコストを上昇させてしまうような事態が防止でき、又サイズオーバで施工できない事態が防止できる。
【0036】
また、耐腐特性及び低吸水性は、店舗やイベント会場に本発明に係る置敷タイル1が利用されたような場合に、例えば飲み物やバケツの水を零したりする事態が想定される。
このとき、タイル本体2aが大きな吸水性を持つと、吸水によりタイル本体2aが膨潤等を起こして、目地部分が膨らんだり波打ったりし、また吸水された水分の乾燥が遅いと腐敗を招くことがある。
しかし、上記構成のタイル本体2aは低吸水性で耐腐特性であるため、このような事態の発生が防止でき、衛生、かつ、製品品質維持が容易に可能となる。
【0037】
さらに、加工容易性は、例えば置敷タイル1を店舗の床に施工する場合、コーナ部分等で寸法調整を行う必要が生じ、置敷タイル1のカット作業が必須となる。
このようなカット作業において、専用装置が必要になると施工性を低下させると共にコストアップの要因となるが、上記構成のタイル本体2aはカッターナイフで切れ目を入れると、その切れ目に沿って容易に割ることができるため、上述した施工性の低下やコストアップを抑制できる効果をもたらす利点がある。
【0038】
次に、被覆シート4aについて説明する。被覆シート4aは、上述したようにタイル本体2aの表面及び側面を覆うことができるように弁当箱状に成型され、その厚みは0.01mm〜1.0mmで、上述したPETを材料として形成されている。
【0039】
無論、この他にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、フッ素等の樹脂、又はこれらの共重合体等からなるフィルム材もPETと略同じ値の熱膨張率等の特性を持つため適用可能である。
【0040】
なお、PETは単に熱膨張率の観点からのみ好ましいわけではなく、所謂ペットボトルの材料として用いられている材料で、リサイクルの社会システム(インフララストラクチャー)が最も進んでいることから、剥離した被覆シート4aのリサイクル効率を向上させる上で非常に有効な材料である。以下、このPETを用いた場合を例に説明する。
【0041】
PETは熱可塑性樹脂で、弁当箱状の被覆シート4aへの成型は以下のように行われる。この成型工程においては、雄型による成型方法を説明するが、雌型による成型方法を用いてもよい。なお、型は、弁当箱の形状をなす型であることは言うまでもない。
【0042】
図3に示すように、成型装置10は、面状の加熱面を備える加熱ヒータ11、該加熱ヒータ11に対向して配置される雄型12、PETシートSにテンションを加えながら支持する支持具13を備えている。なお、支持具13は2軸延伸によりPETシートをX−Y方向に張架している。
【0043】
雄型12は、テーブル14上に支持されて、当該テーブル14と共に上下動するようになっており、その入隅P3に当該雄型12の内部空間K1と連通する複数の貫通孔15が対称に複数設けらている。そして、雄型12とテーブル14とのなす空間K1は、図示しない真空ポンプに接続されて減圧できるようになっている。
【0044】
このような成型装置10で、先ず、雄型12を支持具13から待避させ、該支持具13でPETシートSを支持する。このとき、PETシートSにはテンションが加えられ、この状態で加熱ヒータ11による加熱が行われる。
【0045】
加熱ヒータ11の熱によりPETシートSが熱可塑変形を開始する温度(約76℃)より適宜高い温度になると、当該PETシートSは熱変形してテンションにより伸び広がる。
なお、加熱ヒータ11の温度を余り高くすると、PETシートSが熱的変質を起こして白濁したりすることがあるので、このような変質が起きない温度にすることが肝要である。
【0046】
熱変形して伸び広がったPETシートSの厚みは、タイル本体2aに接する面の厚み(例えば、0.5mm)になるようにテンション調整する(図3(a)参照)。
【0047】
テンション調整が完了すると、この状態を保ちながらテーブル14を加熱ヒータ11側に動かす。雄型12は加熱されていないので、PETシートSが当該雄型12に接すると、その接触部分のPETシートSは雄型12に熱が奪われて温度降下し熱変形温度以下となる。従って、PETシートSは雄型12の頂面の形状に固定されて成型される(図4(b)参照)。
【0048】
さらに、テーブル14を動かすと、図3(c)のように、支持具13の支持点P1、雄型12の頂面縁端P2、雄型12の入隅P3とで空間K2が形成されるようになる。この状態では、雄型12の側壁にPETシートSは接していない。即ち、被覆シート4aの側面の形状が定まっていない。
【0049】
そこで、雄型12内を減圧する。これにより貫通孔15を介して空間K2の圧力が下がって、PETシートSは雄型12の側壁に吸着されて当該側壁に熱を奪われ側面形状が固定する(図3(d)参照)。
【0050】
減圧によりPETシートSは雄型12の側壁に接するが、このときPETシートSはさらに伸びることになる。しかし、側壁の長さL1に比べ、入隅P3から支持具13の支持点P1の長さの方が長く、かつ、PETシートSの側面は収縮することにより形成されるため、できあがった被覆シート4aにおける四方コーナ部分の肉厚は、その面部分の厚みと略同じ厚みに設定することができる。
【0051】
このようにして、PETシートSを雄型12の形状に成型した後、雄型12を加熱ヒータ11側から遠ざけ、その側面をタイル本体2aの厚みより適宜小さい寸法に切断する(図3(e)参照)。
【0052】
このようにしてPETシートSを弁当箱状の被覆シート4aに成型し、その後表面硬度付与処理を行う。かかる表面硬度付与処理は、通行人による擦り傷等の損傷を抑制するため及び、滑り抵抗値(CSR値)を高めるために行われる。
【0053】
材料としては、ウレタンで強化されないアクリル系樹脂材料、ウレタンで強化されたアクリル系樹脂材料、フッ素系材料、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系材料(アルコキシシランとN〜プロピルアルコールとアルミニウムキレート化合物との混合材料等)等の有機材料、シリコン系材料(シリコンガラス)等の無機材料、セラミック系樹脂等が適用可能である。例えば、アクリル系樹脂材料の1つであるアクリルレートでは、塗布し、その後に紫外線照射により硬化させて塗膜を形成する。
【0054】
このような表面硬化処理により、表面硬度4Hの強靭な塗膜が形成できる。因みに、ガラスの硬度が5〜7Hであるので、人が歩くことによる擦り傷等に対して十分に耐傷特性を持つようになり、また耐摩耗性を持つようになる。
なお、この表面硬度は鉛筆硬度と称され、鉛筆の先端を尖らせて、垂直に1kgの荷重で押し当て、この状態で鉛筆を引っ張った際に、塗膜に傷が付くかを試験して硬度を判定する方法により規定される硬度を言う。
【0055】
また、PETの導電性は非常に小さく(略絶縁体)、摩擦等により発生した静電気が貯まることがある。かかる静電気は、塵埃を吸着させるように働き、汚れを目立たせたり、掃き掃除程度では十分に掃けないことがある。
このような場合に対応すべく、表面硬度処理と同時に、または当該処理と前後して帯電防止材の塗布処理を行うことが好ましい。
【0056】
このような、帯電防止剤として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン系樹脂等からなるバインダー樹脂に、帯電防止剤、マイナスイオン等の発生する無機物等を添加したものを例示することができる。
【0057】
被覆シート4aは、着色又は無色透明、半透明、不透明でも良く、さらに、被覆シート4aや分離シート4bに文字、絵文字、絵、写真、CG画像、図形、各種の模様等を印刷してもよい。
【0058】
次に、分離シート4bについて説明する。分離シート4bは、所謂「紙」で、その面内においては略一様な強度分布を持っている。また、厚み方向に対しては、その表裏面側の引張強度より中央部側で弱くなる引張強度分布を持っている。
なお、本明細書で言う分離シート4bの強度とは引張強度をいう。図4はこのような強度分布を模式的に示した図で、図4(a)は面内の強度分布、図4(b)〜図4(e)は厚み方向の強度分布を示して、横軸が位置、縦軸が引張強度を示す。
【0059】
厚み方向に非一様な強度分布を持つことは、当該分離シート4bを少なくとも2枚に分離させることが可能であることを意味している。このとき、面内方向の強度分布が一様であるため、分離シート4bを分離した際には、原則として略一様な厚みで分離できることを意味している。
【0060】
なお、原則としたのは、後述するように、分離シート4bを被覆シート4aとタイル本体2aとに貼付けし、当該被覆シート4aを引き起こしてタイル本体2aから剥離するが、このときの剥離力を大きく変動させたり貼付力が大きく変化していないことを条件としたものである。
【0061】
厚みの強度分布は、図4(b)に示すように急激な強度低下のある場合、図4(c)のように所定範囲で強度変化がある場合、図4(d)のように表裏面から徐々に強度低下がある場合が含まれる。何れの状態においても、被覆シート4aとを剥離する際には、分離シート4bは2枚に分離して剥離できるようになる。
【0062】
この分離シート4bは、例えば貼付材がタイル本体2aや被覆シート4aと強固に貼付いているような場合でも、また貼付材が長期間の使用により変質したり化学変化を起こした場合であっても、分離シート4bそのものが分離して剥離されるため(貼付面で剥離するのでない)、このような事情に影響を受けないことは明らかである。従って、容易、かつ、確実に被覆シート4aを剥離することができるようになる。
【0063】
なお、分離シート4bは、0.1〜0.5mmと薄いので、被覆シート4aを剥離した際にタイル本体2a側に残る紙厚みは概略その半分の厚みとなり、実用上問題となる厚みではないが、それでも残る紙厚みを薄くしたいような場合には、図3(e)のように強度の弱い部分が厚みの中心にない分離シート4bを用いることができる。
【0064】
このように分離する分離シート4bは、2枚の紙を貼合わせることにより製造可能であるが、このような製法による場合は、貼合わせ処理によるコストがかかる。
そこで、紙を梳く際に、その梳方向を変えることにより繊維方向に分布を与えて、この方向を途中で変えることにより安価に分離可能な分離シートを作成することが可能になる。また、紙を2度梳くことによっても安価に分離可能な分離シートを作成することが可能である。
【0065】
次に、このような被覆シートとタイル本体とを分離シートを介して貼付る際の、貼付材について説明する。貼付材としては、澱粉質を主成分とする和糊や合成糊、あるいは各種の化学接着剤や粘着材等が利用可能である。
【0066】
また、接着剤又は粘着剤のタイプとしては、加熱、加圧又は、常温において接着性、粘着性を有するものや、二液タイプ等の反応性の接着剤、粘着剤が挙げられる。具体的な種類としては、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系等の接着剤及び粘着剤、例えばアクリル酸エステル等の熱可塑性樹脂や、アクリルエマルジョン糊からなる加熱性接着剤等が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
接着又は粘着強度としては、0.1kg/25mm幅以上が好ましい。0.1kg/25mm幅未満であると、完成された置敷タイル(タイル本体、分離シート、被覆シートが貼付られたもの)の運搬時、施工時等において剥離してしまう恐れがあるためである。
【0068】
このような貼付材の塗布方法としては、スプレー、刷毛塗り、グラビアコーティング等のいかなる方法でも良く、また、接着剤又は粘着剤を塗布する対象についても、被覆シート4a、タイル本体2aのいずれか一方、あるいはその両方に塗布することができる。
【0069】
なお、被覆シート4aは上述したようにPETを材料とした場合、吸水性はほとんど無いため、化学反応を伴う貼付け、ファンデルワールス等の物理作用による貼付けが条件となるが、その貼付面を粗面加工して所謂スパイク作用による貼付けも可能である。
【0070】
次に、このような置敷タイルの施工方法及び利用方法を説明する。先ず、新規に置敷タイル1を施工する場合は、各タイル本体2aと被覆シート4aとを分離シート4bを介して貼付ける。このとき上述したように、分離シート4bを被覆シート4aの成型と同時に貼付けてもよく、また被覆シート4aの成型後に分離シート4bを貼付ける構成としても良い。
【0071】
以下では、被覆シート4aに成型した後に分離シート4bを貼付ける場合を例に説明する。この場合、図5(a)に示すように、分離シート4bを被覆シート4aに貼付け、その後にタイル本体2aに貼付るケースと、図6に示すように、先に分離シート4bをタイル本体2aに貼付け、その後に被覆シート4aを貼付るケースが考えられる。
【0072】
図5(a)に示す場合より、図6に示す場合の方が、容易に綺麗な貼付けができるため好ましい。即ち、貼付においては、その貼付け位置がずれないようにするには時間や経験が必要となることは周知の事実であり、特に凹部に貼付る場合のほうが凸部に貼付る場合より難しい。従って、図5(a)に示すような場合には、図5(b)の状態になり易い。
【0073】
当然のことながら、このような位置ズレが起きると、見た目も見苦しく好ましくないため、位置調整作業が必要になる。
【0074】
そこで、本発明では、図6のように、最初に分離シート4bをタイル本体2aに貼付け、その後に被覆シート4aに貼付る手順を採用する。
なお、このような場合であっても、同一寸法の物の貼り合わせは難しので、分離シート4bのサイズをタイル本体2aの貼付け面のサイズより適宜大きなサイズとする。
【0075】
そして、分離シート4bに貼付材を塗布し、被覆シート4aを被せて加圧する。このとき、タイル本体2aからはみ出した分離シート4bは被覆シート4aによりタイル本体2aの側面側に巻き込まれて綺麗に仕上がるようになる。即ち、敢えてはみ出した分離シート4bの処理を行う必要がなく、施工工数の削減が計れる。
【0076】
このようにして置敷タイル1を完成させて、現場に搬入し、置敷して施工する。施工する床面積により、当該置敷タイルのサイズ調整する必要があるが、この容易な場合には、置敷タイルの裏面にカッターナイフで切れ目を入れ、その切れ目に力を加えると、タイル本体はこの切れ目に沿って割れる。タイル本体が割れた後、このタイル本体に沿って被覆シートをカットすれば、専用の装置を用いなくても容易にサイズ調整が可能となる。
【0077】
置敷タイル1を、コンビニエンスストアーに施工した場合を想定してみる。このような店舗では、定期的な清掃が行われるが、従来のように被覆シート4aで保護されていない場合には、表面の汚れ除去等のため、ワックス掛けが行われている。
【0078】
ワックス掛は、既存のワックスを剥ぎながら新たにワックス皮膜を形成する。かかる既存ワックスの剥ぎ取りで塵埃や汚れが除去され、また擦り傷等の穴埋めが行われて、光沢が再現する。
このような効果のため、ワックス掛けを部分的に行うと、ワックス掛けを行わない場所との差が大きく、見苦しくなり、またワックスは水溶液であることから、部分的に行うようにすると却って手間がかかるという施工上の観点から、通常床全面に対してワックスがけが行われている。
従って、作業時間やコストがかかり、例えば店舗開店直前に行うようなことができない。
【0079】
また、ワックス掛けすると、汚れで黒ずんだワックスが目地にたまってしまい、却って汚く見えることがある。
加えて、ワックスは有機材料から形成されている場合が多く、かかる有機材料の廃液を下水等に流す行為は法規制の対象となっているが、現実にはなかなか履行されていない。
【0080】
しかるに、本発明に係る被覆シート4aは、ワックス掛けを要件とせず、また表面には擦り傷等に対して表面硬化処理が施されると共に、帯電防止処理が施されているので、掃き掃除又は空拭き等の乾式清掃だけで実用上十分な清掃が行える利点がある。
このため作業時間やコストの削減が可能になると共に、環境汚染や目地が汚れるといった不都合が発生しない利点がある。
【0081】
また、PETシートSからなる被覆シート4aは、光沢度が高く、かつ、表面硬化処理により擦り傷等が付き難いため、この光沢度を維持させることが可能である。この効果により、近年高まりを見せている省エネ運動に大いに寄与することが可能である。
【0082】
また、表面硬化処理は、単に擦り傷の発生防止にとどまらず、CSR値(滑り抵抗値)を高める作用があるため、滑って怪我をするような事故の発生が抑制できる利点がある。
【0083】
このように、本発明に係る保護材4は多くの優れた特徴を持つが、それでも例えば1年の間使い続けると、傷が目立ってきたりする。また、被覆シート4aや分離シート4bに印刷された絵柄を変えて、雰囲気を変えたいときもある。
このようなときには、該当する部分あるいは全ての被覆シート4aを剥離し、新しい被覆シート4aを貼付ることにより対応可能である。
【0084】
図7は、一部の被覆シート4aを張り替える場合を模式的に示した図であり、図8は剥離中の置敷タイル1の断面を示した図である。また、図9は、被覆シート4aが剥離されたタイル本体2aに新しい被覆シート4aを貼付る際の様子を示した図である。
【0085】
先に述べたように、分離シート4bは厚み方向に強度分布を持ち、かつ、面方向には一様な強度分布を持つので、被覆シート4a側及びタイル本体2a側に分離された紙厚みはそれぞれ同じ厚みとなる(図8参照)。
しかし、もし面方向の強度分布に大きな違いがあると、分離した分離シート4bの厚みが変動する場合が生じる(図9参照)。
【0086】
図8のように分離された場合には、新しい被覆シート4aを重ねて貼付ても図10(a)のように、良好に貼付ることができるが、図9のように厚み変化がある場合には、図10(b)に示すように新しい被覆シート4aを重ねて貼付ると凹凸16が生じてしまう。
【0087】
先にも述べたように、被覆シート4aの光沢度が大きい(反射率は高い)ため、多少の凹凸16でも斜めから見ると、この凹凸16が目立ってしまう。
【0088】
しかし、上述したように、本発明にかかる分離シート4bは、略一様な厚みに分離するため、かかる事態の発生が防止できる。
【0089】
以上説明したように、分離シートを介してタイル本体と被覆シートとを貼付けるので、タイル本体や被覆シートの材質、表面状態等に依存せず、かつ、紫外線や化学変化に対して接着剤等が変質しても、確実に保護材が剥離できるようになりリサイクル効率が向上する。
【実施例2】
【0090】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例1では、保護材4はタイル本体2aの保護材4として用い、その大きさはタイル本体2aと略同じ寸法に形成されて置敷タイル1を構成する場合について説明した。
【0091】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複数のタイルにわたり施工するようにしてもよく、また床材の保護に限定されるものではなく、例えば腰壁、テーブルやカウンタ等の天板にも適用できる。
【0092】
図11は、被覆シート4cを大判(少なくとも、複数のタイル2bや腰板2cを一度に覆うサイズ)にした場合の適用例を示す模式図であり、また図12はカウンタの天板2dに用いた場合を示す図である。
【0093】
いずれの場合においても、被保護材2であるタイル、腰板、天板等に分離シート4bを介して被覆シート4cが貼付られた構成となっている点においては同じであるが、実施例1のように被覆シート4cは弁当箱状には成型されておらず延べ板状である。
従って、上述した置敷タイルのように専用のタイル本体の存在を要件としないので、既存のタイルや腰板等の上から貼付るだけでよい。
【0094】
よって、安価に腰壁や天板、床等を容易に被覆し、かつ、その際に分離シート4bや被覆シート4cに各種の絵、文字等を印刷することで、装飾性、情報性の高い空間が形成できると共に、改装等においては被覆シート4cを剥離し、新しい被覆シート4cを貼るだけなので施工作業の短縮、コスト低減等が可能になる。
無論、剥離された被覆シート4cは既存のインフラによりリサイクルできるため、資源の有効な活用が可能になる。
【0095】
なお、このような弁当箱状等に成型されていない延べ板状の被覆シート4cの施工方法としては、仕上げられたコンクリート等に直接貼付ることも可能である。
この場合、当該被覆シート4cを剥離すると、コンクリート面には分離した残りの分離シート4bが残り、その上から新たな被覆シート4cを貼付ることになる。
【0096】
しかし、本発明はこのような重貼りのみに限定されるものではなく、例えば水溶性の接着剤を用いて貼り付け、剥離して残った分離シート4bを除去する際には、水分を与えて(濡らす)下地のコンクリートから浮かし、当該コンクリートに残った分離シート4bを除去するようにしても良い。このような接着剤としてアクリル系エマルジョン形の接着剤が例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例1の説明に適用される被覆シート、分離シート、タイル本体の分解斜視図である。
【図2】図1における置敷タイルのA−A断面図である。
【図3】被覆シートの製造過程を示す図である。
【図4】分離シートの引張強度分布を模式的に示す図である。
【図5】分離シートと被覆シートの貼付状況を説明するための図である。
【図6】先に、分離シートをタイル本体に貼付る場合の貼付状況を説明するための図である。
【図7】一部の置敷タイルの補修を説明する図である。
【図8】均一の厚さで分離シートが分離できる場合を例示した図である。
【図9】不均一の厚さで分離シートが分離できる場合を例示した図である。
【図10】被覆シートが剥離されたタイル本体に、新しい被覆シートを貼付けた状態を示す図である。
【図11】実施例2の説明に適用される大判の保護材の施工状態を例示する図である。
【図12】保護材をカウンタの天板に施工した状況を例示する図である。
【符号の説明】
【0098】
1 置敷タイル
2 被保護材
2a タイル本体
2b タイル
2c 腰板
2d 天板
4 保護材
4a,4c 被覆シート
4b 分離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル本体、腰壁、天板等の被保護材を被覆して、その被覆面を保護する被覆シートと、
該被覆シートと前記被保護材との間に配設され、これら相互に貼付けられて、前記被覆シートを前記被保護材から引き離した際には、一部が前記被保護材に貼付いた状態で、他が前記被覆シートに貼付いた状態で分離して、前記被覆シートと前記保護材との剥離を可能にする分離シートとを有することを特徴とする保護材。
【請求項2】
前記被覆シートが、平板状の熱可塑性樹脂シートを熱変形させて、前記被保護材の表面及び側面を覆うように弁当箱状に成型されてなることを特徴とする請求項1記載の保護材。
【請求項3】
前記分離シートにおける引張強度が、面方向で略一様であり、厚み方向で、その表裏面側より中央部側で弱くなる引張強度分布を持つことを特徴とする請求項1又は2記載の保護材。
【請求項4】
前記分離シートが、裏面にシール台紙を持つタック紙であって、当該シール台紙が被保護材に貼付けされ、シール面が前記被覆シートに貼付けされることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の保護材。
【請求項5】
天然石膏や排煙脱硫石膏を芯材とした石膏ボード、鉱物繊維を含む無機質複層材、又はケイ酸カルシウム水和物とバーミキュライトとを含む成形材等の無機質材料から形成されたタイル本体と、
前記タイル本体を被覆して、その被覆面を保護する被覆シートと、
前記被覆シートと前記タイル本体との間に配設され、これら相互に貼り付けられて、前記被覆シートを前記タイル本体から引き離した際には、一部が前記タイル本体に貼り付いた状態で、他が前記被覆シートに貼り付いた状態で分離して、前記被覆シートと前記タイル本体との剥離を可能にする分離シートと、
を備える請求項1乃至4いずれか1項記載の保護材とにより形成されていることを特徴とする置敷タイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−22602(P2006−22602A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203360(P2004−203360)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(501242549)
【出願人】(504264997)有限会社ラン・コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】