説明

保護的用途

【課題】洗剤を用いて洗濯された繊維材料の日光防護率(SPF)を向上させる方法を提供する。
【解決手段】200g/m2以下の密度を有する紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の傾向増博剤を含有するようにする方法であって、使用される蛍光増白剤がスルホン酸塩基を有するスチルベン型等の構造を有する蛍光増白剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を少なくとも1つ含有する洗剤を、その洗剤を用いて洗濯された繊維材料の日光防護率(SPF=sun protection factor)を向上させるために、使用する方法に関する。
【0002】
波長280乃至400nmの光の放射によって外皮が褐色化することは公知である。また、波長280乃至320nmの光線(UV−B照射線とよばれる)が皮膚の褐色化(skin tanning)を阻害できる紅斑または日焼け(skin burning)を惹起することも公知である。
波長320乃至400nmの放射線(UV−A照射線とよばれる)は皮膚褐色化をもたらすが、また同時に、特に長時間太陽光にさらされた敏感な皮膚に対して、皮膚障害(skin damage)を惹起する可能性もあることが公知である。このような皮膚障害の例は、皮膚弾性の喪失、皺の発生、紅斑反応の開始の促進および光毒反応(phototoxic reaction)または光アレルギー反応の誘起である。
太陽光を過度にあびて、このような障害を受ける危険から皮膚を有効に保護する手段は、太陽光のUV−A成分およびUV−B成分を、それらが皮膚表面に到達する前に、吸収する手段を包含する必要があることは明らかである。
従来、太陽光中の紫外線成分による潜在的傷害から人間の皮膚を保護するためには、紫外線吸収剤を含有する製剤を皮膚に直接塗布する方法がとられてきた。世界の、たとえばオーストリアおよびアメリカのような、特に陽光がさんさんと注ぐ地域においては、オゾン層破壊の結果に対する心配と相まって、日光への過度の曝露による潜在的危険についての意識が大いに高まっている。無防備に過度に太陽光に曝されることによって起こる皮膚傷害のきわめて悲惨な例は、皮膚の黒色腫あるいは皮膚ガンの発生である。
【0003】
太陽光に対する皮膚の保護レベルを高めるという願望の1つの局面は、皮膚の直接的保護のほかに取るべき追加的手段への研究である。たとえば、皮膚を衣類で覆って、太陽光線に直接曝されないようにして皮膚を保護することが考えられている。
ほとんどの天然および合成繊維材料は、太陽光の紫外部成分を少なくとも部分的に透過する。従って、単に衣類をつけているだけでは、その下の皮膚を紫外線による傷害から十分に保護することにはならない。濃色の染料を含有するおよび/または緻密に織られた組織を有するような衣類は、その下の皮膚をある程度保護するであろうが、そのような衣類は着用者の個人的快適さの点からみて、陽光の強い地方においては実用的とはいえない。
従って、染色されていないか、または淡色に染色された軽い夏物を含めて、衣類の下の皮膚を紫外線から保護できるようにする必要がある。染料の種類によっては、濃色に染色された衣料で覆われている皮膚でも紫外線に対する保護が必要となる場合もありうる。
このような軽い夏物衣料は通常200g/m以下の密度であり、製造原料の繊維の種類にもよるが、その日光防護率(SPF) の評価は1.5乃至20である。
【0004】
日焼け防止手段(日焼け止めクリームまたは布)のSPF評価値は、当該日焼け防止手段を身につけている平均的人間が平均的日光被爆条件下において日焼け症(sun burning)にかかるまでの時間の倍数と定義できる。たとえば、普通の人が標準的露光条件下において通常30分後には日焼け症にかかる場合、SPFの評価が5である日焼け防止手段は、その保護時間(日焼け症にかかるまでの時間)を30分から2時間30分までに延長できる。平均的な日焼け症にかかるまでの時間が最も短い、たとえば、平均的色白の肌をもつ人の場合には日中の最も熱い時間帯におけるその時間が僅かに15分間であるような、特に日差しの強い地域に住む人達にとっては、少なくとも20のSPF価を持つことが軽衣料に対して要望される。
【0005】
誠に驚くべきことに、紫外線吸収剤としても働く特定の蛍光増白剤、すなわち280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を少なくとも1つ含有する洗剤を用いて紡織繊維材料を洗濯すると、その洗濯された繊維材料に優れた日光保護率が与えられることが見いだされた。
従って、本発明は、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を少なくとも1つ含有する洗剤を、その洗剤を用いて洗濯された紡織繊維材料の日光防護率(SPF) を向上させるために、使用する使用法を提供する。
【0006】
本発明の使用方法は、好ましくは10乃至100℃、特に好ましくは15乃至60℃の温度範囲において本洗剤組成物を用いて紡織繊維材料を少なくとも1回洗濯することによって実施される。
好ましくは、洗剤組成物は,洗剤の全量を基準にした重量%で、下記成分を含有する:
i)陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤を5乃至90%,好ましくは5乃至70%;
ii)ビルダーを5乃至70%、好ましくは5乃至40%;
iii)過酸化物を0乃至30%、好ましくは1乃至12%;
iv) 過酸化物活性化剤を0乃至10%、好ましくは1乃至6%および/または漂白触媒を0乃至1%、好ましくは0.1乃至3%;
v) 280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の少なくとも1つを0.005乃至2%、好ましくは0.01乃至1%;および
vi) 1種またはそれ以上の助剤を0.005乃至10%、好ましくは0.1乃至5重量%。
【0007】
本洗剤は固体調合物として、あるいは水を5乃至50%、好ましくは10乃至35%含有する水性液体調合物として、あるいは、たとえば英国特許第A−2158454号明細書に記載されているような非イオン界面活性剤中にビルダーを懸濁した懸濁物をベースとした、水5重量%以下、好ましくは0乃至1重量%の非水性液体洗剤として調合製造することができる。
【0008】
陰イオン界面活性剤成分は、たとえば硫酸エステル界面活性剤、スルホン酸エステル界面活性剤、またはカルボン酸エステル界面活性剤あるいはこれらの混合物でありうる。
好ましい硫酸エステルはアルキル残基中に12乃至22個の炭素原子を有する硫酸アルキルエステルであり、これは場合によってはそのアルキル残基中に10乃至20個の炭素原子を有するエトキシ硫酸アルキルエステルと組み合わされうる。
好ましいスルホン酸エステルの例は、そのアルキル残基中に9乃至15個の炭素原子を有するアルキルベンゼンスルホナートである。
いずれの場合にも、陽イオンはアルカリ金属、特にナトリウムである。
好ましいカルボン酸エステルは下記式のアルカリ金属サルコシナートである:

R−CO(R)CH COOM
式中、
Rは、そのアルキルまたはアルケニル残基中に9乃至17個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、
RはC-C アルキルであり、
はアルカリ金属である。
【0009】
非イオン界面活性剤成分の例は、1分子当りエチレンオキシドを3乃至8モル有する、エチレンオキシドとC-C15第一アルコールとの縮合物である。
【0010】
ビルダー成分の例は、アルカリ金属ホスホナート、特にトリポリホスホナート;炭酸塩または炭酸水素塩、特にそれらのナトリウム塩;ケイ酸塩;アルミノケイ酸塩;ポリカルボン酸塩;ポリカルボン酸;有機ホスホン酸塩;アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホナート);あるいはこれらの混合物などである。
好ましいケイ酸塩は、下記式の結晶性層状ケイ酸ナトリウムである:
Na HSi2m+1・pH O または NaSi2m+1・pH
式中、mは1.9乃至4であり、そしてpは0乃至20である。
好ましいアルミノケイ酸塩は、ゼオライトA、B、XおよびHSと名付けられている市場で入手可能な合成物質、またはそれらの混合物である。ゼオライトAが特に好ましい。
【0011】
好ましいポリカルボン酸エステルの例はヒドロキシポリカルボン酸エステル、特にクエン酸エステル、ポリアクリ酸エステル、およびこれらの無水マレイン酸との共重合体である。
【0012】
好ましい有機ホスホナートまたはアミノアルキレンポリ(アルキレンホスホナート)は下記のアルカリ金属塩である:
エタン1−ヒドロキシジホスホナート、
ニトリロトリメチレンホスホナート、
エチレンジアミンテトラメチレンホスホナート、
ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホナート。
【0013】
過酸化物成分は、通常の洗濯温度、たとえば5乃至90℃の範囲の温度において繊維を漂白する、文献に記載されているまたは市場で入手可能な任意の有機または無機の過酸化物でありうる。特に興味あるものは、たとえば次のような有機過酸化物である。少なくとも3個、好ましくは6乃至20個の炭素原子を含むアルキル鎖を有するモノペルオキシドまたはポリペルオキシド、特に6乃至12個の炭素原子を有するジペルオキシジカルボキシレート、たとえばジペルオキシペルアゼレート;ジペルオキシペルセバケート、ジペルオキシフタレートおよび/またはジペルオキシドデカンジオエート、とりわけこれらの対応する遊離酸である。しかしながら、非常に活性の高い無機過酸化物、たとえばペル硫酸塩、ペルホウ酸塩および/またはペル炭酸塩なども好ましく使用される。勿論、これらの有機および/または無機の過酸化物の混合物も使用できる。これら過酸化物、特に無機過酸化物は、好ましくはテトラアセチルエチレンジアミンまたはノノイルオキシベンゼンスルホナートのごとき活性化剤を含有させることによって活性化される。本洗剤組成物に含有されうる漂白触媒の例は、酵素過酸化物前駆体および/または金属錯塩をも含む。好ましい金属錯塩は、マンガンまたは鉄の錯塩、たとえばマンガンフタロシアニンまたは鉄フタロシアニン、あるいは欧州特許第A−0509787号明細書に記載されている錯塩である。
【0014】
本発明において使用される洗剤は、通常つぎのような助剤を1種またはそれ以上含有する。汚れ沈澱防止剤、たとえばナトリウム・カルボキシメチルセルロース;pH調整用の塩、たとえばアルカリまたはアルカリ土類金属ケイ酸塩;泡調節剤、たとえばセッケン;噴霧乾燥および顆粒化特性を調整するための塩、たとえば硫酸ナトリウム;香料;さらに所望により静電防止剤および柔軟剤、たとえばスメクタイト・クレイ;酵素、たとえばアミラーゼ;光漂白剤;顔料;および/または色調節剤。勿論、これらの成分は使用される漂白系に対して安定でなければならない。
【0015】
本発明の使用法によって使用される洗剤で洗濯された紡織繊維材料は、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1種またはそれ以上を、繊維材料の重量を基準にして、好ましくは、0.005乃至0.5重量%、特に0.01乃至0.2重量%含有する。
【0016】
本発明において使用される好ましい蛍光増白剤は下記式のいずれかを有するものである:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

上記各式中、
RとRとは互いに独立的にOH、NH 、O−C-C アルキル、O−アリール、NH−C-C アルキル、N(C-C アルキル) 、N(C-C アルキル)(C-C ヒドロキシアルキル)、N(C-C ヒドロキシアルキル) 、NH−アリール、モルホリノ、S−C-C アルキル(アリール)、Cl またはOHであり;
RとRとは互いに独立的にH、C-C アルキル、フェニル、または下記式の基
【化9】

RはH、Cl またはSO M;
RはCN,SO M,S(C-C アルキル) またはS(アリール)
RはH、SO M,O−C-C アルキル,CN,Cl ,COO−C-C アルキルまたはCON(C-C アルキル)
RはH、C-C アルキル,Cl またはSO M;
RとR10 とは互いに独立的にH、C-C アルキル,SO M、Cl またはO−C-C アルキル;
R11 はHまたはC-C アルキル;
R12 はH、C-C アルキル、CN、Cl ,COO−C-C アルキル、CON(C-C アルキル) 、アリールまたはO−アリール;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−C-C アルキルアンモニウム、モノ−、ジ−またはトリ−C-C ヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC-C アルキルとC-C ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である。
【0017】
式(1)乃至(8)の化合物において、C-C アルキル基は、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルであり、特に好ましくはメチルである。アリール基はナフチルまたは特にフェニルである。
耐光堅牢性の高い蛍光増白剤が使用された場合には、本発明の方法によって洗濯された繊維材料の着用者に対して与えられる保護は、より長持ちする。
【0018】
さらに、本発明で使用する好ましい蛍光増白剤は、やや赤みを帯びた色を示す比較低波長領域をカバーするスペクトルを有する。このような蛍光増白剤の例は、式(1)中のRとRとがそれぞれ非芳香族置換基である式(1)の化合物、たとえばRとRとが互いに独立的にNH−C-C アルキル、O−C-C アルキルまたはモルホリノである式(1)の化合物、ならびにnが1である式(4)の化合物である。
【0019】
好ましい式(1)の化合物は、RとRとが互いに独立的にO−メチル、O−フェニル、NH 、NH−メチル、N(メチル) 、N(メチル)(ヒドロキシエチル)、NH−エチル、N(ヒドロキシエチル) 、NH−フェニル、S−メチル(フェニル)、Cl またはOHであるものである。
式(1)の好ましい化合物の特定例は下記式を有する化合物である:
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【0020】
式(2)の化合物の特定的に好ましい例は下記式の化合物である:
【化16】

【化17】

【化18】

(式中、nは前記の意味を有する)。
【0021】
式(4)の化合物の特定的に好ましい例は下記式の化合物である:
【化19】

【化20】

【化21】

【0022】
式(5)の化合物の特定的に好ましい例は下記式の化合物である:
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【0023】
式(8)の化合物の好ましい例は下記式の化合物である:
【化26】

式(1)乃至(8)の化合物は公知化合物であり、そして公知方法によって得ることができる。
【0024】
本発明の使用法で使用される洗剤中に使用するための蛍光増白剤は、ほとんどが水に易溶性であるが、いくつかのものは水に難溶性であり、分散物の形態において使用する必要がありうる。この目的のためには、そのような蛍光増白剤を、適当な分散剤と共に、都合よくは石英球とインペラーとを使用して、1乃至2ミクロンの粒径にまで摩砕すればよい。
【0025】
このような水に難溶性化合物のための分散剤としては下記のものが例示される:
・・アルキレンオキシド付加物の酸エステルまたはその塩、たとえばエチレンオキシドの4乃至40モルとフェノールの1モルとの重付加物の酸エステルまたはその塩、エチレンオキシドの6乃至30モルと4−ノニルフェノールの1モルまたはジノニルフェノールの1モルまたは特に前もってフェノールの1モルにスチレンの1乃至3モルを付加して製造された化合物1モルとの付加物のリン酸エステル;
・・ポリスチレンスルホナート;
・・脂肪酸タウリド;
・・アルキル化ジフェニルオキシド−モノ−またはジ−スルホナート;
・・ポリカルボン酸エステルのスルホナート;
・・脂肪アミン、脂肪酸アミド、脂肪酸または脂肪アルコール(いずれも8乃至22個の炭素原子を有する)に、あるいは三価乃至六価のC-C アルカノールにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの1乃至60モル、好ましくは2乃至30モルを付加した付加生成物を、有機ジカルボン酸または無機多塩基酸を用いて酸エステルに変換したもの;
・・リグニンスルホナート;
および特に、
・・ホルムアルデヒド縮合生成物,たとえばリグニンスルホナートおよび/またはフェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物;ホルムアルデヒドと芳香族スルホン酸との縮合物、たとえばジトリルエーテルスルホナートとホルムアルデヒドとの縮合生成物;ナフタレンスルホン酸および/またはナフトール−またはナフチルアミン−スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物;フェノールスルホン酸および/またはスルホン化ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびフェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドおよび/または尿素との縮合生成物;またはジフェニルオキシド−ジスルホン酸誘導体とホルムアルデヒドとの縮合生成物。
【0026】
本発明の方法によって洗濯される紡織繊維材料は、広範囲の各種の繊維から構成されたものでありうる。たとえばウール、ポリアミド、木綿、ポリエステル、ポリアクリル、シルク、ポリプロピレンまたはこれらの混合物からの繊維でありうる。好ましいのは、木綿、ポリアクリル、シルク、またはこれらの混合物であり、特に好ましくは木綿である。
本発明の使用法で使用される洗剤に好ましく使用される蛍光増白剤は、処理される布を構成している繊維の種類に依存する。
すなわち、ポリエステル布の処理のためには、式(6)の蛍光増白剤の使用が好ましい。ポリアミドの処理のためには、式(7)、(8)または(12)の蛍光増白剤の使用が好ましい。ウールのためには、式(7)、(8)または(15
)の蛍光増白剤の使用が好ましい。
【0027】
通常の紫外線吸収剤を使用した場合と比較して、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を使用する本発明の使用は、次のような利点を有する。すなわち、繊維に吸尽されるので使用が容易である。色物繊維製品も本発明の方法による洗剤組成分を用いて洗濯することができる[従来は、色物に対しては蛍光増白剤(FWAs)は洗剤中において役立たないと一般に信じられてきた。たとえばA.E.Lee の論文、“ Technology developments in laundry products”,Proc. of the 3rd World Conference on Detergents, Montreux , Sep, 1994, AOCS Press, p73,:“Colorvaiants”参照]。紫外線に対する保護が洗濯のたびごとに、きちんと更新される。紫外線吸収剤中に存在するo−ヒドロキシ基による繊維材料の黄変が回避される。少量の蛍光増白剤でも非常に高い吸光値が得られる。繊維材料の耐洗濯性がより大きい。より高いSPF価が達成可能である。
本発明の使用方法は、洗濯された繊維材料のSPFを向上させるのみならず、たとえば繊維材料の引き裂き強度および/または耐光堅牢性が保存することによって、この方法によって洗濯された繊維材料の有用寿命も延長される。
以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【0028】
実施例1乃至6
漂白し、シルケット加工した綿布の試料片50gを、下記組成(重量%)を有する洗剤4gを含有している水道水(ドイツ硬度12°)1リットル中に入れて洗濯した:
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 8.0%
獣脂アルコールテトラデカンエチレングリコールエーテル(EO14モル)
2.9%
ナトリウムセッケン 3.5%
トリポリリン酸ナトリウム 43.8%
ケイ酸ナトリウム 7.5%
ケイ酸マグネシウム 1.9%
カルボキシメチルセルロース 1.2%
EDTA 0.2%
硫酸ナトリウム 21.2%
FWA(蛍光増白剤) x%
水 100%まで。
いずれも洗剤に対する重量%である。
洗濯は40℃において15分間行なった。そのあと、試料布片を冷水道流水で30秒間すすぎ洗いし、乾燥した。洗濯処理を3回繰り返した。3回目の洗濯後に、試料片を160℃においてアイロンがけした。
洗濯された試料片の白色度(W)を、 Ganz 法に従ってDCI/SF500 分光光度計を使用して測定した。Ganz法の詳細はCiba-Geigy Review, 1973/1 ,ならびに The Journal of Color and Appearance, 1, No. 5(1972)に発表された ISCC Conference on Fluorescence and the Colorimetry of Fluorescent Materials,Williamburg, 1972年2月の論文”Whiteness Measurements", に記載されている。
日光保護率SPFは,ウルブリヒトボウル(Ulbricht bowl)を具備した二重格子分光光度計を使用してその試料布片を透過した紫外線を測定することによって決定した。SPFの計算は、B.L.DiffeyとJ.RobsonnとによってJ.Soc.Cosm.Chem. 40(1989),pp 130-131に記述されているようにして行なった。
結果を次表に示す。
【表1】

SPFの数値は、試料布片の複数箇所における3回の測定値の平均である。結果の相対的変動範囲は、約プラス・マイナス10%の範囲内である。
対照実験(蛍光増白剤なし)と比較すると、本発明により得られたSPF価は3回の洗濯後において2乃至4倍高い。
【0029】
実施例7
漂白し、シルケット加工した木綿布の試料片を、市販の青色の反応染料を布に対して0.95重量%使用して、吸尽法により染色した。染色は、浴比20:1において実施し、40分間で温度を25℃から100℃に上げ、100℃に1時間保持し、そして硫酸ナトリウム15g/l 添加し、それから最後に冷水ですすぎ洗いした。
染色物のSPFを、実施例1乃至6に記載した方法によって測定した。
この染色物を実施例1乃至6に記載した方法で、同じ洗剤組成物を使用して洗濯した。洗剤に配合使用された蛍光増白剤は式(18)の化合物であり、洗剤の重量を基準にして活性物質0.1重量%の濃度レベルで使用された。洗濯された試料布片のSPFおよび蛍光増白剤を含有しない同じ洗剤を用いて洗濯された布片(対照として使用)のSPFを、洗濯1回、3回、5回および10回後に、それぞれ測定した。結果を次表に示す。
【表2】

表の結果は、染色された布のSPFが、その布が蛍光増白剤を含有していない洗剤で洗濯された時にはかなり低下する可能性があることを示す。これとは対照的に、式(18)の化合物を含有する洗剤を用いて洗濯すると、攻撃的太陽光照射に対する保護効果の消失が除かれるのみでなく、洗濯回数の増加と共にSPF保護効果が実際に増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法であって、200g/m以下の密度を有する紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにすることを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

[上記各式中、
RとRと互いに独立的にNH 、O−C-C アルキル、NH−C-C アルキル、N(C-C アルキル)(C-C ヒドロキシアルキル)、N(C-C ヒドロキシアルキル) 、NH−フェニルまたはモルホリノ、
RとRと互いに独立的にH、フェニル、または下記式の基
【化9】

RはH;
RはSO M;
RはHまたはCl ;
RはH、C-C アルキルまたはSO M;
RとR10 とは互いに独立的にH、C-C アルキルまたはSO M;
R11 はC-C アルキル;
R12 はC-C アルキル;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−C-C アルキルアンモニウム、モノ−、ジ−またはトリ−C−Cヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC-C アルキルとC-C ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である]。
【請求項2】
請求項1に記載された方法によって使用された時に、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤。
【請求項3】
請求項1に記載された方法によって使用された時に、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を少なくとも1つ含有する洗剤。
【請求項4】
請求項1に記載された方法によって処理された時に、向上された日光防護率を有する紡織繊維材料。

【公開番号】特開2007−302891(P2007−302891A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126220(P2007−126220)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【分割の表示】特願平7−113494の分割
【原出願日】平成7年5月12日(1995.5.12)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】