傾斜計設置方法および傾斜計測装置
【課題】日常の施工管理として、簡易に切羽前方の地山の状況を予測しつつトンネルの掘進を行うことが可能な地山状況予測方法およびトンネル掘削方法を提案する。
【解決手段】抜け止め部材20および抜け止め部材20に固定された保護部材30を有する定着部11と、定着部11に着脱可能に固定された収納ケース40および収納ケース40に収納された傾斜計50を有する計測部12とを備える傾斜計測装置10を準備する準備工程と、トンネル1の壁面に装置挿入孔2を削孔する削孔工程と、装置挿入孔2に傾斜計測装置10を挿入し、抜け止め部材20を装置挿入孔2の孔壁に掛止する挿入工程と、装置挿入孔2の孔壁と傾斜計測装置20との隙間に充填材3を注入する注入工程とを備える傾斜計設置方法。
【解決手段】抜け止め部材20および抜け止め部材20に固定された保護部材30を有する定着部11と、定着部11に着脱可能に固定された収納ケース40および収納ケース40に収納された傾斜計50を有する計測部12とを備える傾斜計測装置10を準備する準備工程と、トンネル1の壁面に装置挿入孔2を削孔する削孔工程と、装置挿入孔2に傾斜計測装置10を挿入し、抜け止め部材20を装置挿入孔2の孔壁に掛止する挿入工程と、装置挿入孔2の孔壁と傾斜計測装置20との隙間に充填材3を注入する注入工程とを備える傾斜計設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜計設置方法および傾斜計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工において、切羽前方の地山の状態を把握することができれば、掘削をより安全かつより経済的に実施することが可能になる。
【0003】
トンネル施工時における地山状況の計測方法としては、先進ボーリングや坑内弾性探査が一般的である。
ところが、先進ボーリングや坑内弾性探査は、切羽近傍で作業を行うため、計測時にはトンネルの掘削作業を中断する必要あり、工期短縮化の妨げとなる場合があった。
【0004】
そのため、本出願人は、日常の施工管理の一環として実施可能な地山状況予測方法として、トンネル坑内に設置された傾斜計によりトンネル軸方向での傾斜角度を計測することで、簡易に切羽前方の地山の状況を予測する方法を開発した(特願2010−145208)。
【0005】
なお、トンネル坑内に設置可能な傾斜計測装置としては、例えば、特許文献1に示すように、坑内に設置された2箇所の固定点を結ぶように配設された検知ロッドの傾斜角度を計測するものや、特許文献2に示すように、下向きに削孔した観測孔内にパイプを挿入し、このパイプの底部に傾斜計を配設するとともに、パイプを乾燥硅砂等により埋設したもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−181176号公報
【特許文献2】特開2001−116548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の傾斜計測装置は、トンネルの吹き付けコンクリート面に長尺の検知ロッドを固定する必要がある。切羽前方地山予測を目的として、切羽の直近で上記の傾斜計測装置を用いる場合には、発破による飛び石などから装置を防護するために、吹付けコンクリート面から坑内に露出した検知ロッドを金属金具などにより覆う必要がある。この防護金具は、比較的大きな形状であるため、設置作業に手間を要し、トンネル掘削作業の妨げになる場合があった。
【0008】
特許文献2に記載の計測方法は、作業車両走行面に傾斜計を設置することになるため、トンネル掘削作業の妨げになるおそれがある。また、傾斜計は観測孔の底部に埋設するため、傾斜計設置時の微調整が困難な場合があった。
なお、特許文献2の傾斜計をトンネル天端部に上向きに設置することは、パイプ内に充填する乾燥硅砂が流出するおそれがあるため、困難である。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、トンネルの掘削作業に影響をおよぼさないよう短時間で設置することが可能な傾斜計設置方法および傾斜計測装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の傾斜計設置方法は、抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有する定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有する計測部とを備える傾斜計測装置を準備する準備工程と、トンネルの壁面に装置挿入孔を削孔する削孔工程と、前記装置挿入孔に傾斜計測装置を挿入し、前記抜け止め部材を前記装置挿入孔の孔壁に掛止する挿入工程と、前記装置挿入孔の孔壁と前記傾斜計測装置との隙間に充填材を注入する注入工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
かかる傾斜計設置方法によれば、簡易に傾斜計を設置することが可能なため、トンネルの掘削作業を長期にわたって中断する必要がない。
また、孔壁と装置の間に充填材を注入するので、掘削作業に伴う振動等によって装置にズレが生じることを防ぐことができる。
さらに、計測部は、定着部に着脱可能に固定されているため、計測部を他の位置に転用することも可能であり、経済的である。
【0012】
前記挿入工程において前記装置挿入孔の孔口から前記定着部の先端部まで排気用チューブを配管し、前記注入工程において前記排気用チューブを介して前記装置挿入孔内の空気を排気すれば、上向きに削孔された装置挿入孔に傾斜計測装置を設置する場合であっても、より確実に装置挿入孔内に充填材を充満させて、傾斜計測装置は孔壁に固着させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の傾斜計測装置は、トンネル内に形成された装置挿入孔内に配設される傾斜計測装置であって、前記装置挿入孔内に固定される定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された計測部とを備え、前記定着部は、前記装置挿入孔内に掛止される抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有し、前記計測部は、前記保護部材に内装された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有していることを特徴としている。
【0014】
かかる傾斜計測装置は、抜け止め部材を備えているため、装置挿入孔内への設置が容易である。
また、計測部が定着部に着脱可能に固定されているため、計測部を転用することが可能である。
【0015】
前記収納ケースが前記抜け止め部材に着脱可能に接続されており、前記保護部材が前記収納ケースを覆うとともに前記収納ケースと前記抜け止め部材との接続部を覆っていれば、収納ケースおよび接合部が保護部材により充填材と縁切りされるため、収納ケースの着脱が容易である。
【0016】
前記抜け止め部材に雄ネジ部が形成されており、前記収納ケースに雌ネジ部が形成されており、前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺着されていれば、計測部を回転させることで、容易に定着部に脱着できる。
また、前記収納ケースの基端部に六角ヘッドが形成されていれば、レンチ等を利用して計測部を回転させることができる。
【0017】
前記保護部材が筒状のカバーシートを有していれば、比較的安価に傾斜計測装置を構成することができる。計測部は、充填材の圧力により固定されるが、保護部材により充填材とは縁切りされているため、撤去も容易である。
【0018】
前記装置挿入孔の孔口において前記装置挿入孔と前記収納ケースとの隙間を遮蔽するスペーサーを有していれば、傾斜計測装置の全てが装置挿入孔内に入り込んで、回収(撤去)不可能になるということが防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の傾斜計設置方法および傾斜計測装置によれば、トンネルの掘削作業を長期にわたって中断する必要がなく、簡易、かつ、高精度に傾斜計を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る傾斜計測装置を示す断面図である。
【図2】(a)は抜け止め部材を示す正面図、(b)は保護部材を示す正面図、(c)は計測部を示す斜視図、(d)はスペーサーを示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、傾斜計設置方法の各段階を示す断面図である。
【図4】傾斜計測装置の他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、トンネル1の坑内に設置された傾斜計50によりトンネル軸方向での傾斜角度を計測する場合に使用する傾斜計測装置10と傾斜計設置方法について説明する。
【0022】
傾斜計測装置10は、図1に示すように、トンネル1の壁面に形成された装置挿入孔2内に配設されてトンネル軸方向の傾斜角度を計測するものである。
本実施形態では、トンネル1の頂部に形成された装置挿入孔2に傾斜計測装置10を配設する場合について説明する。
【0023】
傾斜計測装置10は、装置挿入孔2の内部に固定される定着部11と、定着部11に着脱可能に固定された計測部12と、装置挿入孔2の孔口に配設されるスペーサー13とを備えている。
【0024】
定着部11は、抜け止め部材20と保護部材30とを有している。
【0025】
抜け止め部材20は、装置挿入孔2の孔壁に掛止される部材である。
本実施形態の抜け止め部材は、図2の(a)に示すように、雄ネジ部21と、掛止部22と、ナット23,23,24とにより構成されている。
【0026】
雄ネジ部21は、外周面にネジ加工が施された棒状部材であって、いわゆる寸切りボルトにより構成されている。なお、雄ネジ21を構成する材料は限定されるものではない。また、雄ネジ部21の形状寸法は限定されるものではない。
【0027】
掛止部22は、筒状部22aと羽根部22b,22b,…とにより構成されている。
【0028】
筒状部22aは、筒状の部材からなり、下端部(計測部側の端部)には複数の羽根部22b,22b,…が一体に形成されている。筒状部22aには、雄ネジ部21が挿通される。
筒状部22aの材質は限定されるものではないが、本実施形態では鋼管により構成している。
【0029】
複数の羽根部22b,22b,…は、筒状部22aの下端部から斜め下方に向かって放射状に形成されている。
本実施形態では、羽根部22bが4枚形成されている場合について説明するが、羽根部22bの数は限定されるものではない。また、羽根部22bの形状も限定されるものではない。
【0030】
複数の羽根部22b,22b,…は、下方(トンネル内空側)に向かうにしたがって、互いの間隔が広がるように形成されている。
こうすることで、羽根部22bは、装置挿入孔2に挿入する際は抵抗無く挿入され、抜け止め部材20に引き抜き力が作用した際は、装置挿入孔2の孔壁に掛止められる。
【0031】
掛止部22は、筒状部22aの上下において、雄ネジ部21に螺着されたナット23,23により固定されている。
ナット24は、計測部12(収納ケース40)の位置決め用として、雄ネジ部21に螺着されている。
【0032】
なお、ナット23,24の配置や数は限定されるものではない。また、ナット23,24は、必要に応じて配設すればよく、掛止部22や計測部12の固定方法によっては、省略してもよい。
【0033】
保護部材30は、抜け止め部材20に固定されている。
保護部材30は、図1に示すように、計測部12(収納ケース40)を覆うとともに計測部12と抜け止め部材20との接続部も覆っている。
【0034】
本実施形態の保護部材30は、図2の(b)に示すように、筒状のカバーシート31と留具32とにより構成されている。
【0035】
カバーシート31は、合成樹脂製であり、一方の開口部がすぼめられた状態で留具32により抜け止め部材20の雄ネジ部21に固定されている。
留具32の構成は限定されるものではなく、いわゆる留め金具や結束線等を使用すればよい。
【0036】
計測部12は、図1に示すように、収納ケース40と傾斜計50とを有している。
【0037】
収納ケース40は、筒状の部材からなる。
収納ケース40の内部には、傾斜計50が収納されている。
【0038】
収納ケース40は、図2の(c)に示すように、先端部が縮径されている。この先端部には、雄ネジ部21に螺着可能な雌ネジ部41が形成されている。
また、収納ケース40の下端面は開口している。
【0039】
収納ケース40は、抜け止め部材20に着脱可能に接続されている。本実施形態では、図1に示すように、抜け止め部材20の雄ネジ部21に雌ネジ部41を螺着し、ナット24で締め付けることで、抜け止め部材20に接続され、雌ネジ部41を緩めることで抜け止め部材20から離脱する。
【0040】
傾斜計50は、図2の(c)に示すように、傾斜計本体(図示省略)と、六角ヘッド51とを備えて構成されている。
【0041】
傾斜計本体は、傾斜角度を計測する電子機器(センサ)であって、収納ケース40の内部に配設されている。傾斜計本体は、六角ヘッド51に固定されている。
【0042】
六角ヘッド51は、収納ケース40の内空側(計測部の基端)に一体に固定されている。
【0043】
六角ヘッド51をレンチ等を利用して回転させることで、収納ケース40が回転し、収納ケース40を抜け止め部材20から取り外すことができる。
【0044】
スペーサー13は、図1に示すように、装置挿入孔2の孔口において装置挿入孔2と収納ケース40との隙間を遮蔽する。
【0045】
スペーサー13には、図2の(d)に示すように、収納ケース40を挿通するための挿通孔13aが中央部に形成されているとともに、挿通孔13aの周囲に複数の貫通孔13b,13bが形成されている。
【0046】
本実施形態のスペーサー13は、装置挿入孔2の内径および六角ヘッド51の外幅よりも大きい外径を有した円板により構成されている。なお、スペーサー13の形状は、必ずしも円形である必要はなく、例えば矩形であってもよい。
【0047】
挿通孔13aの径は、収納ケース40の外径よりも大きく、六角ヘッド51の外幅よりも小さい。
【0048】
本実施形態では、挿通孔13aを挟んで対向するように二つの貫通孔13b,13bが形成されている。
貫通孔13b同士の間隔は装置挿入孔2の直径よりも短く、スペーサー13を装置挿入孔2の孔口に設置すると、貫通孔13bを介して装置挿入孔2の内空とトンネル1の内空とが連通する。なお、貫通孔13bの数や配置は限定されるものではない。
【0049】
傾斜計測装置10は、傾斜計測装置10と装置挿入孔2の孔壁との間に充填材3を充填することにより、装置挿入孔2内に固定されている。
【0050】
本実施形態では、傾斜計測装置10の露出部(トンネル1の内空側に突出した部分)が防護カバー4により覆われている。防護カバー4は、トンネル掘削時に飛散した岩石等から傾斜計測装置10の露出部を保護している。なお、防護カバー4は、トンネル1の坑口側が開口している。
【0051】
防護カバー4の構成は限定されるものではない。また、本実施形態では防護カバー4をアンカー4aにより固定しているが、防護カバー4の固定方法も限定されない。
【0052】
つぎに、本実施形態の傾斜計測装置をトンネル坑内に設置する傾斜計設置方法について説明する。
傾斜計設置方法は、準備工程と、削孔工程と、挿入工程と、注入工程とを備えている。
【0053】
準備工程は、図3の(a)に示すように、傾斜計測装置10を準備する工程である。
準備工程では、まず、抜け止め部材20に保護部材30を固定するとともに、収納ケース40に傾斜計50を固定する。また、スペーサー13の貫通孔13b,13bに排気用チューブ70または注入用チューブ71を挿通する。排気用チューブ70および注入用チューブ71の先端は、傾斜計測装置10の先端(上端)付近に位置させておく。
【0054】
次に、定着部11に計測部12を固定して傾斜計測装置10を形成する。
収納ケース40は、スペーサー13の挿通孔13aに挿通し、羽根部22bと六角ヘッド51との間にスペーサー13を配設する。
【0055】
削孔工程は、トンネル1の壁面に装置挿入孔2を削孔する工程である。
装置挿入孔2は、図3の(b)に示すように、トンネル1の吹き付けコンクリート1aを削孔するとともに、吹き付けコンクリート1aの背面側の地山Gを所定長削孔することにより形成する。
【0056】
挿入工程は、装置挿入孔2に傾斜計測装置10を挿入し、抜け止め部材20を装置挿入孔2の孔壁に掛止する工程である。
図3の(c)に示すように、抜け止め部材20は、地山G内に配設する。
【0057】
傾斜計測装置10を装置挿入孔2に挿入すると、排気用チューブ70および注入用チューブ71が装置挿入孔2内に配管される。なお、排気用チューブ70および注入用チューブ71は、保護部材30と装置挿入孔2の内壁面との間に配管される。
【0058】
傾斜計測装置10は、先端部が掛止部22により地山に掛止められているため、これを支点として、傾斜計測装置10の設置角度も微調整を行う。傾斜計測装置10の設置角度の微調整は、例えば水準器を傾斜計測装置10の基端部に当てた状態で行えばよい。
【0059】
注入工程は、装置挿入孔2の孔壁と傾斜計測装置10との隙間に充填材3(図1参照)を注入する工程である。
このとき、傾斜計測装置10の設置角度がずれることのないように、傾斜計測装置10を支持した状態で注入作業を実施する。
【0060】
充填材3の注入は、注入用チューブ71を介して装置挿入孔2の先端(上端)側から行う。
注入用チューブ71は、充填材3の注入に伴い、徐々に装置挿入孔2から引き出す。
【0061】
充填材3の注入に伴い、排気用チューブ70により装置挿入孔2内の空気を排気することで、装置挿入孔2の内部に空気が残留することを防止する。
【0062】
本実施形態では、充填材3として発泡ウレタンを使用するが、充填材3を構成する材料は限定されるものではない。
【0063】
充填材3が硬化すると、傾斜計測装置10が装置挿入孔2に固定される。
【0064】
本実施形態の傾斜計測装置10および傾斜計設置方法によれば、簡易に傾斜計50をトンネル1の坑内に設置することが可能なため、傾斜計の設置作業によりトンネルの掘削作業を長期にわたって中断することがない。
【0065】
また、傾斜計50の設置角度を調整しつつ、充填材3を注入することで、確実に孔壁に固定することができる。
【0066】
計測部12は、定着部11に着脱可能に固定されているため、計測部12を他の位置に転用することも可能であり、経済的である。
しかも、計測部12および定着部11と計測部12の接合部が、保護部材30により覆われていて、充填材3と縁切りされているため、計測部12の定着部11からの取り外しが容易である。
【0067】
なお、定着部11と計測部12との接合は、雄ネジ部21と雌ネジ部41との螺着により行われているため、計測部12を定着部11から取り外す際は、レンチ等の工具により六角ヘッド51を回転させるのみで容易に行うことができる。
【0068】
つまり、傾斜計測装置10は、簡易に取り外すことができ、したがって、トンネル1の掘進に伴い、切羽から離れることで、傾斜角度に変化が生じなくなった傾斜計測装置10については、計測部12を取り外して、切羽近傍に転用(配置換え)することができる。
【0069】
また、排気用チューブ70により装置挿入孔2の排気を行うため、上向きに削孔された装置挿入孔2の内部に空気が残存することを防止でき、トンネルの品質が低下することもない。
【0070】
傾斜計測装置10は、装置挿入孔2に挿入するのみで、抜け止め部材20が地山Gに掛止められて、抜け出すことが防止されるため、意図しない傾斜計測装置の脱落を予防することができる。
また、傾斜計50の設置角度の微調整も、抜け止め部材20を支点に回転させることで容易に実施することができる。
【0071】
計測部12は、保護部材30(カバーシート31)により充填材3と縁切りされているが、カバーシート31はシート状である故、充填材3の圧力は計測部12に作用する。すなわち、計測部12は充填材3の圧力によって固定される。
【0072】
充填材3は、放射状に形成された羽根部22b,22b,…隙間を通って、装置挿入孔2の内部に充填されるため、傾斜計測装置10を安定的に固定することができる。
【0073】
装置挿入孔2の孔口には、スペーサー13が配設されているため、六角ヘッド51が装置挿入孔2の内部に入り込むことを防止することができる。
【0074】
傾斜計測装置10の設置は、トンネル1の一次支保の施工と同時期に行うことが可能なため、掘削作業に影響を与えることはない。
【0075】
以上、本発明に係る実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0076】
例えば、前記実施形態では、傾斜計測装置10をトンネル1の天端部に上向きに形成された装置挿入孔2に配置する場合について説明したが、傾斜計測装置10は必ずしもトンネル1の天端に設置する必要はないし、上向きに設置する必要もない。
【0077】
前記実施形態では、保護部材30として、シート状の部材を使用する場合について説明したが、保護部材30の構成は限定されるものではない。
例えば、図4に示すように、保護部材30を例えば塩化ビニル管等の管状部材により構成し、収納ケース40をこの保護部材30に固定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 トンネル
2 装置挿入孔
10 傾斜計測装置
11 定着部
12 計測部
20 抜け止め部材
21 雄ネジ部
30 保護部材
31 カバーシート
40 収納ケース
41 雌ネジ部
50 傾斜計
51 六角ヘッド
60 スペーサー
70 排気用チューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜計設置方法および傾斜計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工において、切羽前方の地山の状態を把握することができれば、掘削をより安全かつより経済的に実施することが可能になる。
【0003】
トンネル施工時における地山状況の計測方法としては、先進ボーリングや坑内弾性探査が一般的である。
ところが、先進ボーリングや坑内弾性探査は、切羽近傍で作業を行うため、計測時にはトンネルの掘削作業を中断する必要あり、工期短縮化の妨げとなる場合があった。
【0004】
そのため、本出願人は、日常の施工管理の一環として実施可能な地山状況予測方法として、トンネル坑内に設置された傾斜計によりトンネル軸方向での傾斜角度を計測することで、簡易に切羽前方の地山の状況を予測する方法を開発した(特願2010−145208)。
【0005】
なお、トンネル坑内に設置可能な傾斜計測装置としては、例えば、特許文献1に示すように、坑内に設置された2箇所の固定点を結ぶように配設された検知ロッドの傾斜角度を計測するものや、特許文献2に示すように、下向きに削孔した観測孔内にパイプを挿入し、このパイプの底部に傾斜計を配設するとともに、パイプを乾燥硅砂等により埋設したもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−181176号公報
【特許文献2】特開2001−116548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の傾斜計測装置は、トンネルの吹き付けコンクリート面に長尺の検知ロッドを固定する必要がある。切羽前方地山予測を目的として、切羽の直近で上記の傾斜計測装置を用いる場合には、発破による飛び石などから装置を防護するために、吹付けコンクリート面から坑内に露出した検知ロッドを金属金具などにより覆う必要がある。この防護金具は、比較的大きな形状であるため、設置作業に手間を要し、トンネル掘削作業の妨げになる場合があった。
【0008】
特許文献2に記載の計測方法は、作業車両走行面に傾斜計を設置することになるため、トンネル掘削作業の妨げになるおそれがある。また、傾斜計は観測孔の底部に埋設するため、傾斜計設置時の微調整が困難な場合があった。
なお、特許文献2の傾斜計をトンネル天端部に上向きに設置することは、パイプ内に充填する乾燥硅砂が流出するおそれがあるため、困難である。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、トンネルの掘削作業に影響をおよぼさないよう短時間で設置することが可能な傾斜計設置方法および傾斜計測装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の傾斜計設置方法は、抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有する定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有する計測部とを備える傾斜計測装置を準備する準備工程と、トンネルの壁面に装置挿入孔を削孔する削孔工程と、前記装置挿入孔に傾斜計測装置を挿入し、前記抜け止め部材を前記装置挿入孔の孔壁に掛止する挿入工程と、前記装置挿入孔の孔壁と前記傾斜計測装置との隙間に充填材を注入する注入工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
かかる傾斜計設置方法によれば、簡易に傾斜計を設置することが可能なため、トンネルの掘削作業を長期にわたって中断する必要がない。
また、孔壁と装置の間に充填材を注入するので、掘削作業に伴う振動等によって装置にズレが生じることを防ぐことができる。
さらに、計測部は、定着部に着脱可能に固定されているため、計測部を他の位置に転用することも可能であり、経済的である。
【0012】
前記挿入工程において前記装置挿入孔の孔口から前記定着部の先端部まで排気用チューブを配管し、前記注入工程において前記排気用チューブを介して前記装置挿入孔内の空気を排気すれば、上向きに削孔された装置挿入孔に傾斜計測装置を設置する場合であっても、より確実に装置挿入孔内に充填材を充満させて、傾斜計測装置は孔壁に固着させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の傾斜計測装置は、トンネル内に形成された装置挿入孔内に配設される傾斜計測装置であって、前記装置挿入孔内に固定される定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された計測部とを備え、前記定着部は、前記装置挿入孔内に掛止される抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有し、前記計測部は、前記保護部材に内装された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有していることを特徴としている。
【0014】
かかる傾斜計測装置は、抜け止め部材を備えているため、装置挿入孔内への設置が容易である。
また、計測部が定着部に着脱可能に固定されているため、計測部を転用することが可能である。
【0015】
前記収納ケースが前記抜け止め部材に着脱可能に接続されており、前記保護部材が前記収納ケースを覆うとともに前記収納ケースと前記抜け止め部材との接続部を覆っていれば、収納ケースおよび接合部が保護部材により充填材と縁切りされるため、収納ケースの着脱が容易である。
【0016】
前記抜け止め部材に雄ネジ部が形成されており、前記収納ケースに雌ネジ部が形成されており、前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺着されていれば、計測部を回転させることで、容易に定着部に脱着できる。
また、前記収納ケースの基端部に六角ヘッドが形成されていれば、レンチ等を利用して計測部を回転させることができる。
【0017】
前記保護部材が筒状のカバーシートを有していれば、比較的安価に傾斜計測装置を構成することができる。計測部は、充填材の圧力により固定されるが、保護部材により充填材とは縁切りされているため、撤去も容易である。
【0018】
前記装置挿入孔の孔口において前記装置挿入孔と前記収納ケースとの隙間を遮蔽するスペーサーを有していれば、傾斜計測装置の全てが装置挿入孔内に入り込んで、回収(撤去)不可能になるということが防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の傾斜計設置方法および傾斜計測装置によれば、トンネルの掘削作業を長期にわたって中断する必要がなく、簡易、かつ、高精度に傾斜計を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る傾斜計測装置を示す断面図である。
【図2】(a)は抜け止め部材を示す正面図、(b)は保護部材を示す正面図、(c)は計測部を示す斜視図、(d)はスペーサーを示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、傾斜計設置方法の各段階を示す断面図である。
【図4】傾斜計測装置の他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、トンネル1の坑内に設置された傾斜計50によりトンネル軸方向での傾斜角度を計測する場合に使用する傾斜計測装置10と傾斜計設置方法について説明する。
【0022】
傾斜計測装置10は、図1に示すように、トンネル1の壁面に形成された装置挿入孔2内に配設されてトンネル軸方向の傾斜角度を計測するものである。
本実施形態では、トンネル1の頂部に形成された装置挿入孔2に傾斜計測装置10を配設する場合について説明する。
【0023】
傾斜計測装置10は、装置挿入孔2の内部に固定される定着部11と、定着部11に着脱可能に固定された計測部12と、装置挿入孔2の孔口に配設されるスペーサー13とを備えている。
【0024】
定着部11は、抜け止め部材20と保護部材30とを有している。
【0025】
抜け止め部材20は、装置挿入孔2の孔壁に掛止される部材である。
本実施形態の抜け止め部材は、図2の(a)に示すように、雄ネジ部21と、掛止部22と、ナット23,23,24とにより構成されている。
【0026】
雄ネジ部21は、外周面にネジ加工が施された棒状部材であって、いわゆる寸切りボルトにより構成されている。なお、雄ネジ21を構成する材料は限定されるものではない。また、雄ネジ部21の形状寸法は限定されるものではない。
【0027】
掛止部22は、筒状部22aと羽根部22b,22b,…とにより構成されている。
【0028】
筒状部22aは、筒状の部材からなり、下端部(計測部側の端部)には複数の羽根部22b,22b,…が一体に形成されている。筒状部22aには、雄ネジ部21が挿通される。
筒状部22aの材質は限定されるものではないが、本実施形態では鋼管により構成している。
【0029】
複数の羽根部22b,22b,…は、筒状部22aの下端部から斜め下方に向かって放射状に形成されている。
本実施形態では、羽根部22bが4枚形成されている場合について説明するが、羽根部22bの数は限定されるものではない。また、羽根部22bの形状も限定されるものではない。
【0030】
複数の羽根部22b,22b,…は、下方(トンネル内空側)に向かうにしたがって、互いの間隔が広がるように形成されている。
こうすることで、羽根部22bは、装置挿入孔2に挿入する際は抵抗無く挿入され、抜け止め部材20に引き抜き力が作用した際は、装置挿入孔2の孔壁に掛止められる。
【0031】
掛止部22は、筒状部22aの上下において、雄ネジ部21に螺着されたナット23,23により固定されている。
ナット24は、計測部12(収納ケース40)の位置決め用として、雄ネジ部21に螺着されている。
【0032】
なお、ナット23,24の配置や数は限定されるものではない。また、ナット23,24は、必要に応じて配設すればよく、掛止部22や計測部12の固定方法によっては、省略してもよい。
【0033】
保護部材30は、抜け止め部材20に固定されている。
保護部材30は、図1に示すように、計測部12(収納ケース40)を覆うとともに計測部12と抜け止め部材20との接続部も覆っている。
【0034】
本実施形態の保護部材30は、図2の(b)に示すように、筒状のカバーシート31と留具32とにより構成されている。
【0035】
カバーシート31は、合成樹脂製であり、一方の開口部がすぼめられた状態で留具32により抜け止め部材20の雄ネジ部21に固定されている。
留具32の構成は限定されるものではなく、いわゆる留め金具や結束線等を使用すればよい。
【0036】
計測部12は、図1に示すように、収納ケース40と傾斜計50とを有している。
【0037】
収納ケース40は、筒状の部材からなる。
収納ケース40の内部には、傾斜計50が収納されている。
【0038】
収納ケース40は、図2の(c)に示すように、先端部が縮径されている。この先端部には、雄ネジ部21に螺着可能な雌ネジ部41が形成されている。
また、収納ケース40の下端面は開口している。
【0039】
収納ケース40は、抜け止め部材20に着脱可能に接続されている。本実施形態では、図1に示すように、抜け止め部材20の雄ネジ部21に雌ネジ部41を螺着し、ナット24で締め付けることで、抜け止め部材20に接続され、雌ネジ部41を緩めることで抜け止め部材20から離脱する。
【0040】
傾斜計50は、図2の(c)に示すように、傾斜計本体(図示省略)と、六角ヘッド51とを備えて構成されている。
【0041】
傾斜計本体は、傾斜角度を計測する電子機器(センサ)であって、収納ケース40の内部に配設されている。傾斜計本体は、六角ヘッド51に固定されている。
【0042】
六角ヘッド51は、収納ケース40の内空側(計測部の基端)に一体に固定されている。
【0043】
六角ヘッド51をレンチ等を利用して回転させることで、収納ケース40が回転し、収納ケース40を抜け止め部材20から取り外すことができる。
【0044】
スペーサー13は、図1に示すように、装置挿入孔2の孔口において装置挿入孔2と収納ケース40との隙間を遮蔽する。
【0045】
スペーサー13には、図2の(d)に示すように、収納ケース40を挿通するための挿通孔13aが中央部に形成されているとともに、挿通孔13aの周囲に複数の貫通孔13b,13bが形成されている。
【0046】
本実施形態のスペーサー13は、装置挿入孔2の内径および六角ヘッド51の外幅よりも大きい外径を有した円板により構成されている。なお、スペーサー13の形状は、必ずしも円形である必要はなく、例えば矩形であってもよい。
【0047】
挿通孔13aの径は、収納ケース40の外径よりも大きく、六角ヘッド51の外幅よりも小さい。
【0048】
本実施形態では、挿通孔13aを挟んで対向するように二つの貫通孔13b,13bが形成されている。
貫通孔13b同士の間隔は装置挿入孔2の直径よりも短く、スペーサー13を装置挿入孔2の孔口に設置すると、貫通孔13bを介して装置挿入孔2の内空とトンネル1の内空とが連通する。なお、貫通孔13bの数や配置は限定されるものではない。
【0049】
傾斜計測装置10は、傾斜計測装置10と装置挿入孔2の孔壁との間に充填材3を充填することにより、装置挿入孔2内に固定されている。
【0050】
本実施形態では、傾斜計測装置10の露出部(トンネル1の内空側に突出した部分)が防護カバー4により覆われている。防護カバー4は、トンネル掘削時に飛散した岩石等から傾斜計測装置10の露出部を保護している。なお、防護カバー4は、トンネル1の坑口側が開口している。
【0051】
防護カバー4の構成は限定されるものではない。また、本実施形態では防護カバー4をアンカー4aにより固定しているが、防護カバー4の固定方法も限定されない。
【0052】
つぎに、本実施形態の傾斜計測装置をトンネル坑内に設置する傾斜計設置方法について説明する。
傾斜計設置方法は、準備工程と、削孔工程と、挿入工程と、注入工程とを備えている。
【0053】
準備工程は、図3の(a)に示すように、傾斜計測装置10を準備する工程である。
準備工程では、まず、抜け止め部材20に保護部材30を固定するとともに、収納ケース40に傾斜計50を固定する。また、スペーサー13の貫通孔13b,13bに排気用チューブ70または注入用チューブ71を挿通する。排気用チューブ70および注入用チューブ71の先端は、傾斜計測装置10の先端(上端)付近に位置させておく。
【0054】
次に、定着部11に計測部12を固定して傾斜計測装置10を形成する。
収納ケース40は、スペーサー13の挿通孔13aに挿通し、羽根部22bと六角ヘッド51との間にスペーサー13を配設する。
【0055】
削孔工程は、トンネル1の壁面に装置挿入孔2を削孔する工程である。
装置挿入孔2は、図3の(b)に示すように、トンネル1の吹き付けコンクリート1aを削孔するとともに、吹き付けコンクリート1aの背面側の地山Gを所定長削孔することにより形成する。
【0056】
挿入工程は、装置挿入孔2に傾斜計測装置10を挿入し、抜け止め部材20を装置挿入孔2の孔壁に掛止する工程である。
図3の(c)に示すように、抜け止め部材20は、地山G内に配設する。
【0057】
傾斜計測装置10を装置挿入孔2に挿入すると、排気用チューブ70および注入用チューブ71が装置挿入孔2内に配管される。なお、排気用チューブ70および注入用チューブ71は、保護部材30と装置挿入孔2の内壁面との間に配管される。
【0058】
傾斜計測装置10は、先端部が掛止部22により地山に掛止められているため、これを支点として、傾斜計測装置10の設置角度も微調整を行う。傾斜計測装置10の設置角度の微調整は、例えば水準器を傾斜計測装置10の基端部に当てた状態で行えばよい。
【0059】
注入工程は、装置挿入孔2の孔壁と傾斜計測装置10との隙間に充填材3(図1参照)を注入する工程である。
このとき、傾斜計測装置10の設置角度がずれることのないように、傾斜計測装置10を支持した状態で注入作業を実施する。
【0060】
充填材3の注入は、注入用チューブ71を介して装置挿入孔2の先端(上端)側から行う。
注入用チューブ71は、充填材3の注入に伴い、徐々に装置挿入孔2から引き出す。
【0061】
充填材3の注入に伴い、排気用チューブ70により装置挿入孔2内の空気を排気することで、装置挿入孔2の内部に空気が残留することを防止する。
【0062】
本実施形態では、充填材3として発泡ウレタンを使用するが、充填材3を構成する材料は限定されるものではない。
【0063】
充填材3が硬化すると、傾斜計測装置10が装置挿入孔2に固定される。
【0064】
本実施形態の傾斜計測装置10および傾斜計設置方法によれば、簡易に傾斜計50をトンネル1の坑内に設置することが可能なため、傾斜計の設置作業によりトンネルの掘削作業を長期にわたって中断することがない。
【0065】
また、傾斜計50の設置角度を調整しつつ、充填材3を注入することで、確実に孔壁に固定することができる。
【0066】
計測部12は、定着部11に着脱可能に固定されているため、計測部12を他の位置に転用することも可能であり、経済的である。
しかも、計測部12および定着部11と計測部12の接合部が、保護部材30により覆われていて、充填材3と縁切りされているため、計測部12の定着部11からの取り外しが容易である。
【0067】
なお、定着部11と計測部12との接合は、雄ネジ部21と雌ネジ部41との螺着により行われているため、計測部12を定着部11から取り外す際は、レンチ等の工具により六角ヘッド51を回転させるのみで容易に行うことができる。
【0068】
つまり、傾斜計測装置10は、簡易に取り外すことができ、したがって、トンネル1の掘進に伴い、切羽から離れることで、傾斜角度に変化が生じなくなった傾斜計測装置10については、計測部12を取り外して、切羽近傍に転用(配置換え)することができる。
【0069】
また、排気用チューブ70により装置挿入孔2の排気を行うため、上向きに削孔された装置挿入孔2の内部に空気が残存することを防止でき、トンネルの品質が低下することもない。
【0070】
傾斜計測装置10は、装置挿入孔2に挿入するのみで、抜け止め部材20が地山Gに掛止められて、抜け出すことが防止されるため、意図しない傾斜計測装置の脱落を予防することができる。
また、傾斜計50の設置角度の微調整も、抜け止め部材20を支点に回転させることで容易に実施することができる。
【0071】
計測部12は、保護部材30(カバーシート31)により充填材3と縁切りされているが、カバーシート31はシート状である故、充填材3の圧力は計測部12に作用する。すなわち、計測部12は充填材3の圧力によって固定される。
【0072】
充填材3は、放射状に形成された羽根部22b,22b,…隙間を通って、装置挿入孔2の内部に充填されるため、傾斜計測装置10を安定的に固定することができる。
【0073】
装置挿入孔2の孔口には、スペーサー13が配設されているため、六角ヘッド51が装置挿入孔2の内部に入り込むことを防止することができる。
【0074】
傾斜計測装置10の設置は、トンネル1の一次支保の施工と同時期に行うことが可能なため、掘削作業に影響を与えることはない。
【0075】
以上、本発明に係る実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0076】
例えば、前記実施形態では、傾斜計測装置10をトンネル1の天端部に上向きに形成された装置挿入孔2に配置する場合について説明したが、傾斜計測装置10は必ずしもトンネル1の天端に設置する必要はないし、上向きに設置する必要もない。
【0077】
前記実施形態では、保護部材30として、シート状の部材を使用する場合について説明したが、保護部材30の構成は限定されるものではない。
例えば、図4に示すように、保護部材30を例えば塩化ビニル管等の管状部材により構成し、収納ケース40をこの保護部材30に固定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 トンネル
2 装置挿入孔
10 傾斜計測装置
11 定着部
12 計測部
20 抜け止め部材
21 雄ネジ部
30 保護部材
31 カバーシート
40 収納ケース
41 雌ネジ部
50 傾斜計
51 六角ヘッド
60 スペーサー
70 排気用チューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有する定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有する計測部と、を備える傾斜計測装置を準備する準備工程と、
トンネルの壁面に装置挿入孔を削孔する削孔工程と、
前記装置挿入孔に前記傾斜計測装置を挿入し、前記抜け止め部材を前記装置挿入孔の孔壁に掛止する挿入工程と、
前記装置挿入孔の孔壁と前記傾斜計測装置との隙間に充填材を注入する注入工程と、を備えることを特徴とする、傾斜計設置方法。
【請求項2】
前記挿入工程において、前記装置挿入孔の孔口から前記定着部の先端部まで排気用チューブを配管し、
前記注入工程において、前記排気用チューブを介して前記装置挿入孔内の空気を排気することを特徴とする、請求項1に記載の傾斜計設置方法。
【請求項3】
トンネル内に形成された装置挿入孔内に配設される傾斜計測装置であって、
前記装置挿入孔内に固定される定着部と、
前記定着部に着脱可能に固定された計測部と、を備え、
前記定着部は、前記装置挿入孔内に掛止される抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有し、
前記計測部は、前記保護部材に内装された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有していることを特徴とする、傾斜計測装置。
【請求項4】
前記収納ケースは、前記抜け止め部材に着脱可能に接続されており、
前記保護部材は、前記収納ケースを覆うとともに前記収納ケースと前記抜け止め部材との接続部を覆うことを特徴とする、請求項3に記載の傾斜計測装置。
【請求項5】
前記抜け止め部材には雄ネジ部が形成されていて、
前記収納ケースには雌ネジ部が形成されており、
前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺着されていることを特徴とする、請求項4に記載の傾斜計測装置。
【請求項6】
前記計測部の基端部に六角ヘッドが形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の傾斜計測装置。
【請求項7】
前記保護部材は、筒状のカバーシートを有することを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項8】
前記装置挿入孔の孔口において前記装置挿入孔と前記収納ケースとの隙間を遮蔽するスペーサーを有していることを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項1】
抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有する定着部と、前記定着部に着脱可能に固定された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有する計測部と、を備える傾斜計測装置を準備する準備工程と、
トンネルの壁面に装置挿入孔を削孔する削孔工程と、
前記装置挿入孔に前記傾斜計測装置を挿入し、前記抜け止め部材を前記装置挿入孔の孔壁に掛止する挿入工程と、
前記装置挿入孔の孔壁と前記傾斜計測装置との隙間に充填材を注入する注入工程と、を備えることを特徴とする、傾斜計設置方法。
【請求項2】
前記挿入工程において、前記装置挿入孔の孔口から前記定着部の先端部まで排気用チューブを配管し、
前記注入工程において、前記排気用チューブを介して前記装置挿入孔内の空気を排気することを特徴とする、請求項1に記載の傾斜計設置方法。
【請求項3】
トンネル内に形成された装置挿入孔内に配設される傾斜計測装置であって、
前記装置挿入孔内に固定される定着部と、
前記定着部に着脱可能に固定された計測部と、を備え、
前記定着部は、前記装置挿入孔内に掛止される抜け止め部材および前記抜け止め部材に固定された保護部材を有し、
前記計測部は、前記保護部材に内装された収納ケースおよび前記収納ケースに収納された傾斜計を有していることを特徴とする、傾斜計測装置。
【請求項4】
前記収納ケースは、前記抜け止め部材に着脱可能に接続されており、
前記保護部材は、前記収納ケースを覆うとともに前記収納ケースと前記抜け止め部材との接続部を覆うことを特徴とする、請求項3に記載の傾斜計測装置。
【請求項5】
前記抜け止め部材には雄ネジ部が形成されていて、
前記収納ケースには雌ネジ部が形成されており、
前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺着されていることを特徴とする、請求項4に記載の傾斜計測装置。
【請求項6】
前記計測部の基端部に六角ヘッドが形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の傾斜計測装置。
【請求項7】
前記保護部材は、筒状のカバーシートを有することを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項8】
前記装置挿入孔の孔口において前記装置挿入孔と前記収納ケースとの隙間を遮蔽するスペーサーを有していることを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−53444(P2013−53444A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191847(P2011−191847)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(510009267)東亞エルメス株式会社 (1)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(510009267)東亞エルメス株式会社 (1)
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