説明

充電制御装置、キャパシタモジュール及び充電制御方法

【課題】鉛蓄電池とキャパシタとを用いた蓄電システムにおいて、鉛蓄電池の性能劣化を抑えることのできる充電制御装置を提供する。
【解決手段】
鉛蓄電池5と鉛蓄電池5に並列接続されるキャパシタ4とを含む蓄電装置の充電を制御するための充電制御装置3であって、キャパシタ4に流れる電流を制限する電流制限部11と、充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、電流制限部11による電流の制限を実行させる制御回路12と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に接続された鉛蓄電池及びキャパシタに対する充電を制御する充電制御装置及び充電制御方法、並びに当該充電制御装置を含んだキャパシタモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道、建設機械などの移動体の駆動により得られる回生電力を回収するシステムがある。このようなシステムによって得られる電気エネルギーを利用するためには、この電気エネルギーを二次電池や電気二重層キャパシタなどを含んだ蓄電システムに供給して、蓄積する必要がある。このような蓄電システムの一つとして、高出力と高エネルギー密度を両立させるために、並列に接続された鉛蓄電池及びキャパシタを用いたものが提案されている。(例えば特許文献1,2,3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−252546号公報
【特許文献2】特開平10−184506号公報
【特許文献3】特開2006−152820号公報
【特許文献4】特開2006−152940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉛蓄電池は、長時間にわたって充放電を行わずに放置すると、電極の活物質が不活性になるなどの要因により、一時的に充電をしにくくなることがある。このような状態になると、例えば車両の走行時に得られる回生電力によって蓄電システムを充電する場合など、1回の充電時間が限られる用途においては、鉛蓄電池の充電効率の低下によって、1回の充電時間中に十分に鉛蓄電池を充電しきれなくなってしまうことがある。このような現象が起こると、鉛蓄電池の充電状態が一時的に低下し、鉛蓄電池の劣化を速めてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、鉛蓄電池とキャパシタとを用いた蓄電システムにおいて、鉛蓄電池の性能劣化を抑えることのできる充電制御装置、キャパシタモジュール及び充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る充電制御装置は、鉛蓄電池と当該鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタとを含む蓄電装置の充電を制御するための、充電制御装置であって、前記キャパシタに流れる電流を制限する電流制限手段と、前記蓄電装置の充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記充電制御装置において、前記制御手段は、前記鉛蓄電池の充電状態に応じて決まるタイミングまで、前記電流の制限を実行させることとしてもよい。
【0008】
さらに、前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの少なくとも一方に流れる電流及び/又は印加される電圧の時間変化に応じて、前記所定のタイミングを決定することとしてもよい。
【0009】
また、上記充電制御装置は、前記キャパシタ及び前記鉛蓄電池のそれぞれに流れる電流を測定する測定手段をさらに含み、前記制御手段は、前記測定手段により測定される電流の時間変化に応じて、前記所定のタイミングを決定することとしてもよい。
【0010】
さらに、前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの全体に流れる電流が時間とともに減少し、かつ、当該電流の単位時間あたりの減少量が時間とともに減少していることを検知した場合に、前記電流制限手段による電流の制限を解除することとしてもよい。
【0011】
あるいは、前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの全体に供給される電力が時間とともに減少し、かつ、当該電力の単位時間あたりの減少量が時間とともに減少していることを検知した場合に、前記電流制限手段による電流の制限を解除することとしてもよい。
【0012】
また、前記制御手段は、前記蓄電装置の充電を開始してから、前記鉛蓄電池に対して充電された電気量が所定の条件を満たすタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させることとしてもよい。
【0013】
さらに、前記制御手段は、前記蓄電装置の充電を開始してから、前記鉛蓄電池に対して充電された電気量と、当該充電の開始前に前記鉛蓄電池が放電した電気量と、が所定の条件を満たすタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させることとしてもよい。
【0014】
さらに、前記制御手段は、前記充電された電気量を前記放電した電気量で除した値が所定の閾値を超えるタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させることとしてもよい。
【0015】
また、上記充電制御装置において、前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続された可変抵抗であって、前記制御手段の制御に応じて抵抗値を増大させることによって、前記キャパシタに流れる電流を制限することとしてもよい。
【0016】
あるいは、前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続されたスイッチ素子であって、前記制御手段の制御に応じてオフ状態に切り替わることで、前記キャパシタに流れる電流を制限することとしてもよい。
【0017】
また、前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続されたトランジスタスイッチであって、前記制御手段の制御に応じてオン状態とオフ状態との間の切り替えが交互に繰り返され、前記制御手段は、前記所定のタイミングまで、前記所定のタイミング到来後よりもオン状態の時間の割合を減少させることによって、電流の制限を実行させることとしてもよい。
【0018】
また、本発明に係るキャパシタモジュールは、鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタと、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタに対する充電を制御する充電制御装置と、前記鉛蓄電池の一方の極を前記キャパシタに接続するための第1端子と、外部電源及び負荷を前記キャパシタ及び前記鉛蓄電池の前記一方の極に接続するための、前記第1端子とは独立した第2端子と、を含み、前記充電制御装置は、前記キャパシタに流れる電流を制限する電流制限手段と、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタに対する充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る充電制御方法は、鉛蓄電池と当該鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタとを含む蓄電装置の充電を制御する充電制御方法であって、前記蓄電装置の充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記キャパシタに流れる電流を制限することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る充電制御装置を含んだ蓄電システムの回路構成を示す回路図である。
【図2】蓄電システムにおける電流の時間変化の一例を示す図である。
【図3】蓄電システムに供給される電流、電圧及び電力の時間変化の一例を示す図である。
【図4】蓄電システムに供給される電流、電圧及び電力の時間変化の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るキャパシタモジュール2を含んだ蓄電システム1の回路構成を示す回路図である。この蓄電システム1は、キャパシタモジュール2と、鉛蓄電池5と、を含み、さらにキャパシタモジュール2は、充電制御装置3と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ4と、を含んで構成されている。また、蓄電システム1は、外部電源6及び負荷7のそれぞれと接続される。
【0023】
本実施形態では、蓄電システム1はアイドリングストップを行う車両に搭載されることとする。具体的に、蓄電システム1は、当該車両の駆動によって得られる回生電力を蓄積し、停止中のエンジンを再起動させたりするために蓄積した電力を負荷7に対して供給する。この場合、外部電源6は、オルタネータ等であって、車両のエンジン等から伝達される動力を電気エネルギーに変換し、蓄電システム1に供給する。また、負荷7は、車両に備えられた計器類や、車両の走行再開時にエンジンを始動するセルモータなどであって、蓄電システム1から供給される電力によって動作する。
【0024】
蓄電システム1は、電力を蓄積する蓄電装置としてキャパシタ4及び鉛蓄電池5を含んでいる。キャパシタ4及び鉛蓄電池5は、互いに並列に接続され、外部電源6から供給される電力によって充電される。なお、例えばキャパシタ4は、互いに直列接続された複数の電気二重層キャパシタセル、及び各キャパシタセルに印加される電圧を均等化するための均等化回路を備えた電気二重層キャパシタユニットであってもよい。鉛蓄電池5も、複数の鉛蓄電池セルからなる電池ユニットであってもよい。ここでいうセルとは、少なくとも一対の電極で構成された単一のキャパシタまたは電池であり、ユニットとは、互いに接続された複数のキャパシタセルまたは電池セルに、必要に応じてその制御に必要な回路を組み合わせた蓄電装置の構成要素である。
【0025】
また、本実施形態において、キャパシタ4及び鉛蓄電池5に対する充電は、充電制御装置3によって制御される。この充電制御装置3は、キャパシタ4と一体化されて、キャパシタモジュール2として提供される。図1に示されるように、充電制御装置3は、電流制限部11と、制御回路12と、第1電流測定部13aと、第2電流測定部13bと、A/Dコンバータ14と、を含んで構成される。
【0026】
また、キャパシタモジュール2は、外部との接続端子として第1正極端子T1、第2正極端子T2、及び負極端子T3を備えており、第1正極端子T1は鉛蓄電池5の正極側と、第2正極端子T2は外部電源6及び負荷7の正極側と、それぞれ接続される。一方、負極端子T3は、鉛蓄電池5、外部電源6及び負荷7の負極側と共通に接地される。このように、キャパシタモジュール2には、鉛蓄電池5の正極をキャパシタ4の正極と並列に接続するための第1正極端子T1と、外部電源6及び負荷7の正極を鉛蓄電池5及びキャパシタ4双方の正極に接続するための第2正極端子T2と、が互いに独立に設けられている。そのため、キャパシタモジュール2に対して鉛蓄電池5を備える既存の蓄電装置を簡便に接続することができる。これにより、既存の鉛蓄電池5にキャパシタモジュール2を組み合わせて、鉛蓄電池5の性能劣化を抑制して鉛蓄電池5を長寿命化することのできる蓄電システム1を構成できる。なお、ここでは正極側に複数の接続端子を設けることとしたが、これに代えて、またはこれに加えて、負極側に複数の接続端子を設けることとしてもよい。
【0027】
電流制限部11は、キャパシタ4と直列に接続され、制御回路12から入力される制御信号に従って、外部電源6からの充電時にキャパシタ4に流れる電流Icを制限する。図1の例では、電流制限部11は第2正極端子T2とキャパシタ4の正極との間に配置されている。制御回路12は、マイクロプロセッサ等であって、A/Dコンバータ14から入力される情報に応じて、電流制限部11の動作を制御する。電流制限部11の具体的な構成、及び制御回路12による電流制限部11の制御の例については、後述する。
【0028】
2個の電流測定部13a及び13bは、それぞれの接続箇所に流れる電流を測定し、測定された電流に応じたアナログ信号をA/Dコンバータ14に入力する。具体的に、第1電流測定部13aは、キャパシタ4と直列に接続され、キャパシタ4に流れる電流Icを測定する。また、第2電流測定部13bは、第1正極端子T1と第2正極端子T2との間に接続される。このように、キャパシタモジュール2が備える2個の正極端子間に第2電流測定部13bを配置し、かつ、当該2個の正極端子のうち、キャパシタ4側の正極端子(図1では第2正極端子T2)に外部電源6及び負荷7を、他方の正極端子(図1では第1正極端子T1)に鉛蓄電池5を、それぞれ接続することによって、第2電流測定部13bは鉛蓄電池5に流れる電流Ibを測定できる。なお、ここではキャパシタ4の正極側に電流制限部11や2個の電流測定部13a及び13bを設けることとしたが、これらの回路素子はキャパシタ4の負極側に接続されてもよい。その場合、キャパシタモジュール2は少なくとも2個の負極端子を備え、この2個の負極端子の間に鉛蓄電池5に流れる電流を測定する電流測定部が設けられる。
【0029】
A/Dコンバータ14は、2個の電流測定部13a及び13bのそれぞれから入力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換し、その結果を制御回路12に入力する。A/Dコンバータ14が所定時間おきにこのような処理を実行することによって、制御回路12は、キャパシタ4及び鉛蓄電池5のそれぞれに流れる電流の時間変化を示すデジタル情報を取得できる。また、A/Dコンバータ14には、キャパシタ4の正極、第1正極端子T1、及び負極端子T3それぞれの電圧を示す信号も入力される。A/Dコンバータ14は、これらの電圧信号を所定時間ごとにデジタル信号に変換して、制御回路12に入力する。これによって、制御回路12は、キャパシタ4及び鉛蓄電池5それぞれの両端の間に印加される電圧Vc及びVbの時間変化を示すデジタル情報を取得できる。
【0030】
ここで、充電制御装置3によるキャパシタ4に流れる電流の制限を行わない場合に、蓄電システム1内に流れる電流の時間変化について、図2を用いて説明する。図2は、アイドリングストップを行う車両に蓄電システム1を適用する場合に、蓄電システム1が1回の放電を行った後、これに続いて1回の充電を行ったときの電流の時間変化のモデルケースを示している。なお、同図においては、横軸が時間、縦軸が電流をそれぞれ表しており、正の電流値は充電時に外部電源6から蓄電システム1に流れ込む電流を、負の電流値は放電時に蓄電システム1から負荷7に流れ出る電流を、それぞれ示している。また、実線が蓄電システム1全体に流れる全体電流Isを、一点鎖線がキャパシタ4に流れる電流Icを、破線が鉛蓄電池5に流れる電流Ibを、それぞれ示している。
【0031】
この図に示されるように、車両が停止すると、まず蓄電システム1は期間t1において一定電流による放電を行う。これは、車両停止期間中における計器類等への電力供給に相当する。続いて期間t2において、瞬間的に大きな電流が蓄電システム1から負荷7に流れる。これは、エンジンを再始動させる際のセルモータへの電力供給に相当する。
【0032】
その後、車両が走行を開始すると、エンジン駆動によって得られる回生電力が外部電源6から蓄電システム1に対して供給され、蓄電システム1の充電が開始される。ここでは外部電源6は、CC−CV(定電流−定電圧)方式で蓄電システム1の充電を行うこととする。すなわち、まず期間t3において一定電流で蓄電システム1への電力供給が行われる。この期間においては、まずキャパシタ4に大きな電流が流れ、鉛蓄電池5には相対的に小さな電流しか流れない。そして、蓄電システム1内の電圧値が所定の目標値に到達した後、期間t4においては、この電圧値を保つように電流を徐々に減少させながら、外部電源6から蓄電システム1への電力供給が行われる。この期間では、キャパシタ4に流れる電流は小さくなり、逆に鉛蓄電池5に流れる電流が大きくなる。
【0033】
なお、この図2に示される蓄電システム1全体の充放電パターンは、電池工業会規格(SBA)の規格番号S0101「アイドリングストップ車用鉛蓄電池」において、鉛蓄電池の寿命試験用として規定されているモデルパターンに沿ったものになっている。当該規格においては、同図に示すようなパターンによる充放電を所定回数繰り返した後、所定時間にわたって鉛蓄電池を休止させる制御を複数回繰り返す寿命試験の方法が規定されている。
【0034】
充電制御装置3による制御を行わずに、このようなモデルパターンで蓄電システム1を使用した場合、特に所定時間の休止が行われた後は、電極が不活性になるなどの要因で、鉛蓄電池5の充電効率が一時的に低下する。そのため、所定時間の休止の後、蓄電システム1の使用を再開してから最初の数十回程度の充放電サイクルにおいては、1回の放電によって減少した電力が次の充電において鉛蓄電池5に十分に充電されずに、鉛蓄電池5の充電状態が充放電サイクルを繰り返すごとに低下していく。その後は、さらに充放電サイクルを繰り返す過程で鉛蓄電池5の充電効率は徐々に回復し、これに伴って鉛蓄電池5の充電状態も元の満充電に近い状態に戻っていく。しかしながら、一時的にせよ充電状態が低下する状態が生じると、鉛蓄電池5の劣化を速めてしまうことになる。そこで本実施形態では、充電制御装置3によって効率よく鉛蓄電池5の充電を行うことにより、鉛蓄電池5の充電状態が低下しにくくなるよう制御している。以下では、この充電制御装置3による制御について、詳しく説明する。
【0035】
本実施形態では、図1に示されるように、電流制限部11は可変抵抗であることとしている。制御回路12は、蓄電システム1の充電開始時には可変抵抗の抵抗値を大きな値に設定し、当該充電の終了前における所定の制御タイミングtcまでその状態を保つこととする。これによって、キャパシタ4に流れる電流が小さな値に制限され、相対的に鉛蓄電池5には大きな電流が流れる。そのため、キャパシタ4に流れる電流の制限が行われない場合と比較して、鉛蓄電池5には大きな電力が供給され、その充電が早く進行する。その後、所定の制御タイミングtcが到来すると、制御回路12は可変抵抗の抵抗値をこれまでより小さな値に変更する。これによって、キャパシタ4に流れる電流の制限は解除され、これまでより大きな電流がキャパシタ4に流れ、キャパシタ4の充電が進行する。
【0036】
特に鉛蓄電池5は、満充電に近い状態よりも、ある程度放電された状態、すなわち充電状態(SOC)が低い間のほうが、充電効率がよい。そこで、放電が行われた後の1回の充電期間のうち、前半の期間においてキャパシタ4に流れる電流を制限して、優先的に鉛蓄電池5に電力供給を行うことによって、効率よく鉛蓄電池5を充電できる。
【0037】
なお、電流制限部11は、可変抵抗に限られず、その他の回路素子であってもよい。例えば電流制限部11がリレーやトランジスタ等のスイッチ素子である場合、制御回路12が充電開始時にこのスイッチ素子をオフ状態に切り替えることで、キャパシタ4に流れる電流を完全に遮断し、優先的に鉛蓄電池5を充電できる。
【0038】
また、電界効果トランジスタ等のトランジスタスイッチを電流制限部11として用いる場合、制御回路12は、このトランジスタスイッチのオン状態とオフ状態との間の切り替えを交互に繰り返す制御を実行してもよい。この例では、制御回路12は、充電開始時には相対的にオン状態の時間の割合が減少するようにオン/オフの切り替えを繰り返し、所定の制御タイミングtcが到来すると、相対的にオン状態の時間の割合を増大させる。これによって、制御タイミングtcの到来まで、キャパシタ4に流れる電流を低下させることができる。
【0039】
さらにこの場合、制御回路12は、制御タイミングtcの到来時には、単にオン状態の時間の割合を所定値に変化させるのではなく、オン状態の時間の割合を徐々に増加させることによって、電流の制限を解除することとしてもよい。こうすれば、制御タイミングtcの到来時に、急激に大きな電流がキャパシタ4に流れることを避けられる。なお、電流制限部11が可変抵抗の場合も、制御回路12はその抵抗値を徐々に変化させることによって、キャパシタ4に流れる電流の制限を解除してもよい。
【0040】
ここで、制御回路12が電流の制限を解除する制御タイミングtcの具体例について、説明する。既に述べたように、鉛蓄電池5の充電状態が低い間にキャパシタ4の電流を制限して、優先的に鉛蓄電池5の充電を行うことが望ましい。そこで制御回路12は、鉛蓄電池5の充電状態に応じて決まる制御タイミングtcまで、電流制限部11による電流の制限を実行させることとする。具体的に、制御回路12は、A/Dコンバータ14からの入力によって得られる、蓄電システム1の充電時に鉛蓄電池5及びキャパシタ4のそれぞれに流れる電流Ib及びIc、並びに鉛蓄電池5及びキャパシタ4のそれぞれに印加される電圧Vb及びVcの一部又は全部の時間変化に応じて、制御タイミングtcを決定する。
【0041】
図3は、CC−CV充電が行われる場合の蓄電システム1に流れる全体電流Is(=Ib+Ic)、印加される全体電圧Vs(=Vb)、及び供給される全体電力Ps(=Is×Vs)の時間変化を示すグラフである。同図に示されるように、定電流充電から定電圧充電に移行すると、一定電圧が保たれるように電流を減少させながら電力供給が行われるため、外部電源6によって供給可能な電力のうち、鉛蓄電池5への充電には用いられない余剰分が生じることになる。そこで、例えば制御回路12は、このような状態になるまでキャパシタ4に流れる電流を制限し、定電圧制御に移行した後は電流の制限を解除する。すなわち、定電流充電から定電圧充電に移行したタイミングを制御タイミングtcとする。これによって、1回の充電期間中において、定電流充電時には鉛蓄電池5の充電を優先させながら、定電圧充電時にはキャパシタ4への充電も行うことができる。
【0042】
この例において、制御タイミングtcは、例えば以下のようにして決定される。すなわち、蓄電システム1への充電中であって(条件1)、蓄電システム1全体に流れる全体電流Isが時間とともに減少し(条件2)、かつ、全体電流Isの単位時間あたりの減少量が時間とともに減少している(条件3)ことを検知した場合に、制御回路12は制御タイミングtcが到来したと判定し、キャパシタ4に対する電流の制限を解除する。これらの3つの条件は、それぞれ、時間を表す変数tの関数である全体電流Is(t)について、条件1はIs(t)が正の値をとること、条件2はIs(t)の変数tについての1階微分が負であること、条件3は条件2の前提においてIs(t)の変数tについての2階微分が正であること、にそれぞれ相当する。定電圧制御時には、図3に示すように電流の時間変化は下に凸の減少関数となり、この条件を満たすことになる。この演算は、所定時間おきにIb,Ic,Vb及びVcの値を取得し、その単位時間あたりの変化量を算出することによって実現できる。このとき、異常値の検出によって誤判定を行うことを避けるため、制御回路12は、過去の所定回数の測定によって得られた複数個のIb,Ic,Vb及びVcの値それぞれの移動平均を算出し、この移動平均値を用いて全体電流Isの時間変化を評価してもよい。ここで、2階微分の正負(条件3)まで判定条件として用いているのは、瞬間的な異常変化などを排除して、充放電サイクル全体の中での定電圧制御が行われている期間を精度よく特定するためである。
【0043】
あるいは、制御回路12は、蓄電システム1に供給される全体電力Ps(=Is×Vs)を所定時間おきに算出し、この全体電力Psが正であって(条件1)、全体電力Psが時間とともに減少し(条件2)、かつ、全体電力Psの単位時間あたりの減少量が時間とともに減少している(条件3)ことを検知した場合に、制御タイミングtcが到来したと判定してもよい。この場合も、全体電流Isの場合と同様に、Ps(t)が正、Ps(t)の1階微分が負、Ps(t)の2階微分が正であるとの判定条件を用いることによって、制御タイミングtcの到来を判定できる。
【0044】
なお、以上の説明においては、外部電源6による蓄電システム1の充電は、CC−CV充電によって行われることとしたが、これ以外の方法によって行われることとしてもよい。例えばCC−CP−CV(定電流−定電力−定電圧)方式によって蓄電システム1の充電が行われる場合における、全体電流Is、全体電圧Vs、及び全体電力Psの時間変化を示すグラフが、図4に示されている。この場合、まず電力値が所定の目標値に達するまで一定電流で充電が行われ、その後は電圧値が所定の目標値に達するまで一定電力で充電が行われるよう電流値が制御される。そして、電圧値が所定の目標値に達すると、その後はCC−CV充電の場合と同様に定電圧充電が行われる。この場合において、定電力充電から定電圧充電への切り替えタイミングを制御タイミングtcとすることとすると、全体電流Isの時間変化だけでは定電力充電と定電圧充電の判別が難しい。そこで、この例では、制御回路12は、全体電力Psについて前述した3つの条件を満たすことを検知した場合に、制御タイミングtcが到来したと判定すればよい。
【0045】
また、以上の説明においては、全体電流Is又は全体電力Psの時間変化を用いて制御タイミングtcを決定することとしたが、制御回路12は、その他の指標値を用いて制御タイミングtcを決定してもよい。具体的に、例えば制御回路12は、鉛蓄電池5の電圧Vbの単位時間あたりの変化量を算出し、当該算出された値を用いて制御タイミングtcを決定してもよい。あるいは、1回の充電期間中における典型的な電流や電力の時間変化のモデルが予め想定される場合、制御回路12は、充電が開始された後、このようなモデルに基づいて予め決定された時間が経過したタイミングで、キャパシタ4に流れる電流の制限を解除してもよい。
【0046】
あるいは、制御回路12は、蓄電システム1の充電を開始してから、鉛蓄電池5に対して充電された電気量(以下、充電電気量Q1という)が所定の条件を満たすタイミングまで、電流制限部11を制御してキャパシタ4に流れる電流を制限することとしてもよい。例えば制御回路12は、充電電気量Q1と、当該充電の前に鉛蓄電池5が放電した電気量(以下、放電電気量Q2という)と、が所定の条件を満たすように、電流の制限を解除する制御タイミングtcを決定する。この場合、制御回路12は、第2電流測定部13bによって測定される電流Ibを継続的にモニタすることで、その電流値の正負の反転によって鉛蓄電池5に対する充放電の切り替わりを判断できる。また、1回の充電又は放電が行われている間の電流Ibの値を時間積分することによって、充電電気量Q1及び放電電気量Q2のそれぞれの値を算出できる。
【0047】
具体例として、制御回路12は、鉛蓄電池5が放電を行っている間の電流Ibの値を定期的に取得し、時間積分することによって、蓄電システム1に対する充電開始の直前の1回の放電における放電電気量Q2を算出する。その後、鉛蓄電池5に対する充電が開始されると、やはり定期的に電流Ibの値を取得することで、充電が継続している間、定期的に充電電気量Q1の値を更新し続ける。そして、充電が継続されて充電電気量Q1が増加し、充電電気量Q1を放電電気量Q2で除した値(Q1/Q2)が所定の閾値thを超えるタイミングまで、電流制限部11に電流の制限を実行させることとし、(Q1/Q2)が閾値thを超えたタイミングで、電流の制限を解除する。なお、この閾値thは、前述した電池工業会規格の規格番号S0101における試験パターンで充放電が行われると想定される場合、0.60以上の値とするのが好ましく、より好ましくは0.70、さらに好ましくは0.80以上の値とするのがよい。このような制御によれば、制御回路12は、過去に鉛蓄電池5が放電した電気量に対して決まる一定の電気量が鉛蓄電池5に充電されるまで、キャパシタ4に流れる電流を制限し、優先的に鉛蓄電池5を充電することができる。
【0048】
また、以上の説明においては、蓄電システム1を車両の駆動によって得られる回生電力の蓄積に用いることとしたが、本発明の実施の形態に係る充電制御装置を含む蓄電システムは、その他の用途に用いられることとしてもよい。具体的には、例えば、電車・船舶・飛行機等の加速・減速運動、エレベータの昇降運動、自動倉庫のスタッカークレーン、保冷・冷蔵・冷凍車における冷却機の媒体圧縮運動、開閉扉の開閉運動、スライド式移動棚の移動・停止運動、各種製造機械及び電気機器における回転体の回転・停止運動、振り子運動、ばね振動の制動エネルギーなどによって、モータを介して発電された電力の蓄積に用いるものであってもよい。あるいは、この蓄電システムは、太陽光発電、風力発電、流水による水力発電、揚水による水力発電等によって発電された電力の蓄積に用いるものであってもよい。この場合、1回あたりの充電期間は不定期になることが想定されるが、このような場合であっても、前述したように例えば全体電力Psの時間変化などに応じて制御タイミングtcを定めることで、キャパシタ4への充電も実行しつつ、鉛蓄電池5への充電を優先して行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 蓄電システム、2 キャパシタモジュール、3 充電制御装置、4 キャパシタ、5 鉛蓄電池、6 外部電源、7 負荷、11 電流制限部、12 制御回路、13a 第1電流測定部、13b 第2電流測定部、14 A/Dコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池と当該鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタとを含む蓄電装置の充電を制御するための、充電制御装置であって、
前記キャパシタに流れる電流を制限する電流制限手段と、
前記蓄電装置の充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる制御手段と、
を含むことを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記鉛蓄電池の充電状態に応じて決まるタイミングまで、前記電流の制限を実行させる
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの少なくとも一方に流れる電流及び/又は印加される電圧の時間変化に応じて、前記所定のタイミングを決定する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の充電制御装置であって、
前記キャパシタ及び前記鉛蓄電池のそれぞれに流れる電流を測定する測定手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記測定手段により測定される電流の時間変化に応じて、前記所定のタイミングを決定する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの全体に流れる電流が時間とともに減少し、かつ、当該電流の単位時間あたりの減少量が時間とともに減少していることを検知した場合に、前記電流制限手段による電流の制限を解除する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項6】
請求項3記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記鉛蓄電池及び前記キャパシタの全体に供給される電力が時間とともに減少し、かつ、当該電力の単位時間あたりの減少量が時間とともに減少していることを検知した場合に、前記電流制限手段による電流の制限を解除する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項7】
請求項2記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記蓄電装置の充電を開始してから、前記鉛蓄電池に対して充電された電気量が所定の条件を満たすタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記蓄電装置の充電を開始してから、前記鉛蓄電池に対して充電された電気量と、当該充電の開始前に前記鉛蓄電池が放電した電気量と、が所定の条件を満たすタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項9】
請求項8記載の充電制御装置であって、
前記制御手段は、前記充電された電気量を前記放電した電気量で除した値が所定の閾値を超えるタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続された可変抵抗であって、前記制御手段の制御に応じて抵抗値を増大させることによって、前記キャパシタに流れる電流を制限する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続されたスイッチ素子であって、前記制御手段の制御に応じてオフ状態に切り替わることで、前記キャパシタに流れる電流を制限する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記電流制限手段は、前記キャパシタと直列に接続されたトランジスタスイッチであって、前記制御手段の制御に応じてオン状態とオフ状態との間の切り替えが交互に繰り返され、
前記制御手段は、前記所定のタイミングまで、前記所定のタイミング到来後よりもオン状態の時間の割合を減少させることによって、電流の制限を実行させる
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項13】
鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタと、
前記鉛蓄電池及び前記キャパシタに対する充電を制御する充電制御装置と、
前記鉛蓄電池の一方の極を前記キャパシタに接続するための第1端子と、
外部電源および負荷を前記キャパシタ及び前記鉛蓄電池の前記一方の極に接続するための、前記第1端子とは独立した第2端子と、
を含み、
前記充電制御装置は、
前記キャパシタに流れる電流を制限する電流制限手段と、
前記鉛蓄電池及び前記キャパシタに対する充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記電流制限手段による電流の制限を実行させる制御手段と、
を含むことを特徴とするキャパシタモジュール。
【請求項14】
鉛蓄電池と当該鉛蓄電池に並列接続されるキャパシタとを含む蓄電装置の充電を制御する充電制御方法であって、
前記蓄電装置の充電を開始してから、当該充電の終了前における所定のタイミングまで、前記キャパシタに流れる電流を制限する
ことを特徴とする充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279173(P2010−279173A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129315(P2009−129315)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2009年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー技術開発 系統連系円滑化蓄電システム技術開発/要素技術開発/高エネルギー密度を有する新型電気二重層キャパシタ及びその蓄電システムの研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】