説明

充電装置

【課題】バッテリ等に対して数十V〜数百Vの広い電圧範囲で、充電電力を精度良く出力することができる充電装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る充電装置1は、バッテリ20に充電電圧を出力するコンバータ部4と、充電電圧の電圧値に基づいて決定したパルス幅の制御信号をコンバータ部4のスイッチング素子に対して出力することにより該スイッチング素子をパルス幅に応じた時間だけ導通状態とする制御部5とを備えている。制御部5は、充電電圧の電圧値に応じて制御信号の出力間隔を変化させ、また、制御信号の出力間隔を、充電電圧の電圧値が低くなるにつれて長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリ等を充電するための充電装置に関し、特に、数十V〜数百Vの広い電圧範囲での充電電力をバッテリ等に対して出力する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車の普及に伴い、大容量の車載バッテリを10分程度の短時間で急速充電可能な充電装置のニーズが高まってきている。
このような充電装置は、通常、外部から供給される交流電圧を整流平滑して直流化した後、コンバータ部で昇降圧することにより所望の電圧値による充電電力を生成し、この電力を車載バッテリに出力することにより該車載バッテリを充電する。
【0003】
車載バッテリ用の充電装置は従来から種々検討されているが、特許文献1および特許文献2に見られるように、充電電圧は、該充電電圧の電圧値に基づいてコンバータ部を構成するスイッチング素子のデューティ比を変更するPWM制御により所望の電圧値とされるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−112465号公報
【特許文献2】特開2009−240001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電スタンド等に設置される設置型の充電装置は、充電対象となる車載バッテリが特定されていないという、車載型の充電装置(車載バッテリとセットで車両に組み込まれる充電装置)にはない特有の問題を抱えている。
このため、設置型の充電装置は、あらゆる車載バッテリの充電に対応するべく、数十V〜数百Vという広い電圧範囲での充電電力を出力可能であることが求められている。しかしながら、従来の充電装置は、数十V程度の比較的低い充電電圧を精度良く出力することができなかった。
以下、図4を参照しつつ、この問題について説明する。
【0006】
車載バッテリ用の充電装置では、PWM制御の下、充電電圧の電圧値を上げる際にはスイッチング素子のデューティ比を高くし、充電電圧の電圧値を下げる際にはデューティ比を低くする。
言い換えると、充電装置は、スイッチング素子を導通状態とする制御信号のパルス幅を広げることで数百Vの充電電圧を出力し、制御信号のパルス幅を狭めることで数十Vの充電電圧を出力する。
【0007】
しかしながら、デューティ比(パルス幅)と充電電圧の線形性が保たれているのは、デューティ比がある程度高い領域(図4では、20%以上の領域)だけであり、それよりもデューティ比が低い領域(20%未満の領域)、すなわち制御信号のパルス幅が細い領域においては、コンバータ部を構成する各素子が制御信号に追従することができず、充電電圧の電圧値を所望の電圧値とすることができなかった。
【0008】
なお、この問題は、高速スイッチングに対応した高価な素子を使用したり、安価な素子を複数個、並列に接続して高価な素子と同等の性能を発揮させることで、ある程度は解消することができるが、このような手法では、生産コストの増大や部品点数の増加に伴う大形化が避けられない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、バッテリ等に対して数十V〜数百Vの広い電圧範囲で、充電電力を精度良く出力することができる充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電装置は、充電対象に充電電力を出力するコンバータ部と、充電電圧の電圧値に基づいて決定したパルス幅の制御信号をコンバータ部のスイッチング素子に対して出力することにより該スイッチング素子をパルス幅に応じた時間だけ導通状態とする制御部とを備えた充電装置であって、制御部は、充電電圧の電圧値に応じて制御信号の出力間隔を変化させることで、制御信号の出力間隔を、充電電圧の電圧値が低くなるにつれて長くすることを特徴とする。
【0011】
この構成では、制御信号のパルス幅に加え、制御信号の出力間隔も変更することができるので、制御信号のパルス幅を狭めるのではなく、制御信号の出力間隔を長くすることにより、出力する充電電圧の電圧値を低くすることができる。
すなわち、この構成によれば、常にデューティ比と充電電圧の線形性が保たれている領域でコンバータ部を動作させることができるので、数十V〜数百Vの広い電圧範囲で充電電力を精度良く出力することができる。
なお、本明細書で用いられる用語「出力間隔」は、ある制御信号が出力され始めてから次の制御信号が出力され始めるまでの時間を意味する。制御信号が出力されていない時間ではない点に注意されたい。
【0012】
上記充電装置の制御部は、所定の間隔で出力され続ける制御信号を規則的に間引くことによって実際に出力される制御信号の出力間隔を長くする構成とすることができる。
「所定の間隔」とは、通常、ハードウェアの特性により最速で出力される制御信号(パルス信号)の間隔を意味する。
【0013】
また、制御信号を規則的に間引くためには、制御部を、充電電圧の電圧値に対応したカウント初期値を格納した記憶部と、充電電圧の電圧値および記憶部に格納されているカウント初期値に基づいて制御信号のパルス幅を決定するパルス幅決定部と、カウント値をカウント初期値からカウントダウンしていき、カウント値がゼロになるとパルス幅決定部によって決定されたパルス幅の制御信号を出力する制御信号出力部とで構成すればよい。
この場合は、充電電圧の電圧値が低くなるにつれてカウント初期値を大きくすることが必要である。
【0014】
また、充電電圧の電圧値に基づいて最適なパルス幅を決定するために、パルス幅決定部は、カウント値がゼロになったタイミングの充電電圧の電圧値に基づいて制御信号のパルス幅を決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バッテリ等に対して数十V〜数百Vの広い電圧範囲で充電電力を精度良く出力することができる充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る充電装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る充電装置における制御部の動作を示す波形図である。
【図3】本発明に係る充電装置における制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】充電装置におけるスイッチング素子のデューティ比と充電電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下では、車載バッテリを充電する設置型の充電装置を一例に挙げて説明するが、本発明に係る充電装置は設置型のものに限定されない。
【0018】
[充電装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態に係る充電装置のブロック図を示す。
充電装置1は、外部にある交流電源10から供給された交流電圧をバッテリ20に出力すべき所望の電圧値を有する充電電圧に変換し、これをバッテリ20に出力するものである。バッテリ20の種類や使用状況(残存容量)が異なれば、当然ながら、出力すべき充電電圧の電圧値も異なる。
【0019】
同図に示すように、充電装置1は、交流電源10から供給された交流電圧を整流・平滑して直流化する整流平滑部2と、力率を改善するために整流平滑部2の後段に接続されたPFC回路からなる力率改善部3と、整流・平滑および力率改善後の直流電圧をバッテリ20に出力すべき所望の電圧値に基づく充電電力に変換するコンバータ部4と、充電電圧の電圧値に基づいてコンバータ部4を制御する制御部5とを備えている。
【0020】
コンバータ部4は、前段から出力された直流電圧がトランスの一次巻線とスイッチング素子とからなる直列回路に供給され、トランスの二次巻線に整流平滑回路が接続されたDC−DCコンバータである。このDC−DCコンバータは、スイッチング素子の導通期間(デューティ比)、すなわちスイッチング素子の制御端子に入力される制御信号のパルス幅を調整することにより、出力する充電電圧の電圧値が変更可能となっている。
具体的には、充電電圧の電圧値を上げたい場合には制御信号のパルス幅を広げ、スイッチング素子の導通期間を長くすればよい。また、充電電圧の電圧値を下げたい場合には制御信号のパルス幅を狭め、スイッチング素子の導通期間を短くすればよい。
【0021】
制御信号の出力間隔がd(以下、“基本間隔”という)の場合、制御信号のデューティ比および充電電圧の電圧値は図4に示す関係を有している。すなわち、本実施形態に係るコンバータ部4は、“基本間隔d×0.2”未満のパルス幅を有する制御信号に追従することができないものとする。
【0022】
なお、コンバータ部4の構成は上記したシンプルなDC−DCコンバータに限定されず、制御信号のパルス幅に応じて充電電圧の電圧値を変更可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
【0023】
再び図1を参照する。
制御部5は、制御信号出力部6、パルス幅決定部7および記憶部8を有する。このうち、制御信号出力部6は、充電電圧の電圧値に基づいて制御信号の出力間隔を決定し、決定した出力間隔おきに制御信号を出力する。
本実施形態では、充電電圧の電圧値が100V以上の場合は出力間隔が基本間隔dとされ、50V以上100V未満の場合は出力間隔がd(=d×2)とされ、さらに、50V未満の場合は出力間隔がd(=d×4)とされる。
【0024】
図2は、制御信号が出力され始めるタイミングを比較した図である。
同図に示すように、出力間隔をdとした場合のタイミング(B)は、タイミング(A)を1つおきに間引いたものとなっている。また、出力間隔をdとした場合のタイミング(C)は、タイミング(B)を1つおきに間引いたものとなっている。なお、図2は、制御信号が出力され始めるタイミングだけを図示したものであり、パルス幅は考慮されていない点に注意が必要である。
【0025】
パルス幅決定部7は、既知のPWM制御の制御則にしたがって制御信号のパルス幅を決定する。上記の通り、本実施形態に係る充電装置では、制御信号の出力間隔(=スイッチング素子のスイッチング周期)が一定ではないので、パルス幅を決定するにあたっては、充電電圧の電圧値のみならず、制御信号の出力間隔も考慮される。これについては、後で具体例を挙げて詳細に説明する。
【0026】
記憶部8には、制御信号の出力間隔に関するデータ(後述する“カウント初期値”)が予め格納されている。該データは、充電電圧の電圧値に対応付けられており、充電電圧の電圧値が分かれば、それに対応するデータを取得することができるようになっている。
【0027】
[充電装置の動作]
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る充電装置1(特に、制御部5)の動作についてさらに詳細に説明する。
【0028】
充電が開始されると、ステップS1として、制御信号出力部6およびパルス幅決定部7が充電電圧の電圧値を取得し、続いて、ステップS2として、制御信号出力部6およびパルス幅決定部7が取得した電圧値に対応するカウント初期値を取得する。
本実施形態では、記憶部8に3つのカウント初期値n、n(=2×n)、n(=2×n=4×n)が電圧値に応じたカウント初期値として格納されており、充電電圧の電圧値が100V以上の場合はカウント初期値n、電圧値が50V以上100V未満の場合はカウント初期値n、電圧値が50V未満の場合はカウント初期値nが取得される。
なお、カウント初期値n、n、nは、ハードウェアの特性に応じて予め決定されたものであり、電圧に応じた間引き数を入れた値でカウンタを減じていく際の初期値である。
【0029】
ステップS3では、制御信号出力部6が取得したカウント初期値をカウント値とし、カウント値が“0”になるまでカウント値を“1”減じ続けるループ処理(時間待ち処理)を行う(ステップS4〜S6)。すなわち、カウント値が“1”だけ減少するのに要する時間が基本間隔dに相当し、カウント値が“0”になるまで、基本間隔d×カウント初期値に応じた、パルス出力タイミングの時間待ちが行われる。 このとき、カウント初期値を変更することで、制御信号の出力間隔が変わり、図2(A)に示す状態に対し制御信号が間引かれる。
取得したカウント初期値がnの場合、ステップS5の減算処理はn回実行される。カウント値が“0”になると、ステップS4〜S6のループ処理は終了し、ステップS7に進む。
【0030】
上記の通り、取得されるカウント初期値は充電電圧の電圧値に応じて変化する。
また、ステップS4における基本間隔時間は一定なので、ステップS4〜S6のループ処理が終了するまでの時間はカウント初期値に比例する。したがって、本実施形態では、ステップS4〜S6のループ処理が終了するまでの時間が充電電圧の電圧値に応じて変化する。
具体的には、充電電圧の電圧値が50V以上100V未満の場合は、電圧値が100V以上の場合の2倍の時間が経過した後にループ処理が終了する。
また、充電電圧の電圧値が50V未満の場合は、電圧値が100V以上の場合の4倍の時間が経過した後にループ処理が終了する。
【0031】
ステップS7では、取得した充電電圧の電圧値およびカウント値に基づいてパルス幅決定部7がパルス幅を決定する。パルス幅は、
[数1]

デューティ比=パルス幅/{基本間隔d×(カウント初期値/n)}

により、次式により決定される。
[数2]

パルス幅=基本間隔d×デューティ比×(カウント初期値/n

例えば、充電電圧の電圧値が100Vの充電電圧の場合は、対応するデューティ比およびカウント初期値がそれぞれ20%(図4参照)、nなので、パルス幅は“d×0.2”となる。
充電電圧の電圧値が50Vの場合は、対応するデューティ比およびカウント初期値がそれぞれ10%、nなので、パルス幅は“d×0.1×2”となる。
また、充電電圧の電圧値が25Vの場合は、対応するデューティ比およびカウント初期値がそれぞれ5%、nなので、パルス幅は“d×0.05×4”となる。
上記は、小さいデューティ比が必要なときに、同じパルス幅で対応できることを示している。
【0032】
ステップS8では、制御信号出力部6が決定されたパルス幅を有する制御信号の出力を開始する。ステップS7の実行に要する時間はごく僅かなので、制御信号は、カウント値が“0”になると直ちに出力され始める。
【0033】
制御信号が出力され始め、かつ充電が未だ終了していない場合(ステップS9の“No”)は、ステップS1に戻って同じステップが順次実行される。一方、充電が終了した場合(ステップS9の“Yes”)は、本フローは終了する。
【0034】
なお、ステップS9は、制御信号の出力が終わってから実行されるのではなく、制御信号の出力開始と同時に実行される。また、ステップS9の判定に要する時間はごく僅かである。
したがって、2回目のステップS1においては、カウント値が“0”になったタイミングの充電電圧の電圧値が取得される。これにより、1スイッチング周期の途中の中途半端なタイミングの充電電圧の電圧値に基づいてパルス幅が決定されることによる、フィードバック制御の過不足およびこれに伴う充電電圧の変動を防ぐことができる。
言い換えると、本実施形態に係る充電装置1によれば、充電電圧の電圧値を所望の電圧値とするための最適なデューティ比、カウント初期値を決定することができる。
【0035】
結局、本実施形態に係る充電装置1によれば、制御信号のパルス幅を狭めるのではなく、制御信号の出力間隔を長くする(制御信号を間引く)ことにより、出力する充電電圧の電圧値を低くすることができる。
すなわち、本実施形態に係る充電装置1によれば、常にデューティ比と充電電圧の線形性(図4参照)が保たれている領域でコンバータ部4を動作させることができるので、数十V〜数百Vの広い範囲で充電電圧を精度良く出力することができる。
【0036】
以上、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
例えば、本発明に係る充電装置は、車載バッテリ以外の充電対象、例えば、キャパシタを充電することもできる。キャパシタは放電により電圧がほぼ0Vになるので、充電開始直後は制御信号の出力間隔が最も広い間隔とされ、その後、充電が進むにつれて出力間隔は段階的に狭められていく。
なお、リチウムイオン電池等からなる車載バッテリは、通常、電圧が大きく低下する程放電させられることはないので、充電の途中で出力間隔が変更されることはない。
【0037】
また、上記実施形態では、カウント値を用いて制御信号の出力間隔を変更したが、出力間隔を変更するための方法は任意に変更することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、100V以上の領域、50V以上100V未満の領域、および50V未満の領域で出力間隔を切り替えたが、領域の数(上記実施形態では、3つ)および境界となる電圧値(上記実施形態では、100V、50V)は、使用するコンバータ部の特性(図4参照)に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 充電装置
2 整流平滑部
3 力率改善部
4 コンバータ部
5 制御部
6 制御信号出力部
7 パルス幅決定部
8 記憶部
10 交流電源
20 バッテリ(充電対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電対象に充電電圧を出力するコンバータ部と、前記充電電圧の電圧値に基づいて決定したパルス幅の制御信号を前記コンバータ部のスイッチング素子に対して出力することにより該スイッチング素子を前記パルス幅に応じた時間だけ導通状態とする制御部と、を備えた充電装置であって、
前記制御部は、前記充電電圧の電圧値に応じて前記制御信号の出力間隔を変化させることで、前記制御信号の出力間隔を、前記充電電圧の電圧値が低くなるにつれて長くすることを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定の間隔で出力され続ける前記制御信号を規則的に間引くことによって実際に出力される前記制御信号の出力間隔を長くすることを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記充電電圧の電圧値に対応したカウント初期値を格納した記憶部と、
前記充電電圧の電圧値および前記記憶部に格納されている前記カウント初期値に基づいて前記制御信号のパルス幅を決定するパルス幅決定部と、
カウント値を前記カウント初期値からカウントダウンしていき、前記カウント値がゼロになると前記パルス幅決定部によって決定されたパルス幅の前記制御信号を出力する制御信号出力部と、を有し、
前記カウント初期値を、前記充電電圧の電圧値が低くなるにつれて大きくすることを特徴とする請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記パルス幅決定部は、前記カウント値がゼロになったタイミングの前記充電電圧の電圧値に基づいて前記制御信号のパルス幅を決定することを特徴とする請求項3に記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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