説明

光の水景装置

【課題】なめらかな表面を持ち、全反射効果で水柱の内部を伝わる光を効果的に水柱の外部へ導き、視覚効果を得ることのできる光水景の装置を提供すること。
【解決手段】水柱の表面形状を操作する装置を採用した。すなわち、境界層を整えて放出されたなめらかな表面を持つ水柱の噴出部分にフロート(浮き)1を設置し、そのフロートに接続した機械装置11,40によって、フロートを振動または変位させる構造とした。この構造により、水柱表面の形状に意図する変化を動的に与えることのできる機能が得られる。また、水柱の内部を伝わる光の光源を発光制御できる構造とした。これらの構造により、豊かな観賞用の水景を演じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば公園や庭園に設置して光と水の流れを組み合わせた、光と水景を楽しむ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
境界層を整えたノズルから噴出する水流の内部に、流れの方向に照射した光源(または光ファイバーなどで誘導された光の出口)を置くと、水内面における全反射現象によって、光が流れに沿って伝わる物理現象が知られている[学術文献1、学術文献2]。
この現象には、通信用に用いられる光ファイバーと同様に、水柱の側面方向には光が漏れにくい特徴があることも知られている。
この特徴は水景用の機能としては変化が乏しくて不都合なため、気泡を混入させる装置を併用する方法が提案されている[特許文献1]。
通常の光ファイバーの繊維断面においては光が著しく拡散することが知られているが、
内部に光を伝える水柱を適時に切断することによって、光ファイバーの場合と同様の効果を得ることのできる噴水装置が提案されている[特許文献2]。
【非特許文献1】D. Colladon,“On the reflections of a ray of light inside a parabolic liquid stream”, Comptes Rendus 15, 800-802(1842).
【非特許文献2】Jeff Hecht,“Illuminating the Origin of Light Guiding”, Optics & Photonics News Vol.10,No.10, 26-30(1999)
【特許文献1】日本国特許出願公開番号:特開平8−243453
【特許文献2】日本国特許出願公開番号:特開2004−188351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
気泡を混入させる方法では、気泡の量によっては水流の境界層が不安定になり、ノズル付近での光の発散にとどまりがちになるという問題がある。
また水柱を切断する方法では、光量は豊富であるが、水柱の一部が発光して水流に沿って移動する比較的単純な機能にとどまる。
【0004】

本発明は上記の課題を解決し、自然で、複雑な動きのある水景装置用の機能を付加するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、内部に光を伝えることのできる滑らかな表面を持った水柱の表面形状をフロートによって動的に変化させる装置により、水中の側面など外部に導かれる光を積極的に制御する機能を与える手段であり、かつ、水の動きにも変化を与えることのできる手段であることを要旨とする。
【0006】

請求項2に記載の発明は、水柱の内部を伝わる光を発光制御し、外部照明や請求項1に記載の発明と組み合わせて、視覚効果(運動錯覚など)を与える手段であることを要旨とする。
【0007】

請求項3に記載の発明は、水柱の表面形状を動的に変化させる装置と水柱内部の光を発光制御する装置に加え、これらをプログラム制御することのできる制御装置を用いて自由度のある多様な演出効果を実現する機能を与える手段であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】

請求項1の発明によれば、全反射効果で水柱内部を伝わる光を外部に効果的に導くことができ、発光部分の長さや光量を動的に制御することができるため、光の動きと変化のある水景装置を得ることができる。
請求項2の発明によれば、発光制御した水柱内部を伝わる光による照明と、通常の外部からの照明とを組み合わせることにより、これまでには無かった視覚効果(錯覚や非日常的な視覚の効果)のある水景装置を得ることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1と請求項2の装置を積極的にプログラム制御することにより、豊かで自由度の高い水景を設計かつ実施する機能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】

以下、本発明の一実施形態を添付図に基づいて説明する。図1は全体の構成図である。図2,図3,図4および図5は請求項1の装置を説明するための図である。また、図6および図7は請求項2の装置を説明するための図である。
【実施例1】
【0010】

図1は本実施例の全体構成図であり、貯蔵された水などの流体32はポンプ30によって加圧され、配管31を介して、ノズル格納容器10内にあるノズルへと送られ、なめらかな表面を持つ水柱3となって外部に放出される。
ノズル格納容器は、すぐ外側に設置されている、変位発生装置11を介して外部の変位制御装置と接続されており、おなじく外部に設置されている発光制御装置41とも接続されている。
【0011】

(ノズル格納容器)
図2に示すように、ノズル格納容器10中にはフロート1とそのリンク機構2・11・14および内部に光源15を備えたノズル13が収められている。ノズルは、水柱の内部で光の全反射効果を得るに必要な、表面がなめらかな水柱3を発生させる役割をはたす。フロートとそのリンク機構は水柱の表面形状を変化させる役割をもっている。
光源は水柱の内部に光を供給する。また格納容器のすぐ外側にはフロート用の変位発生装置11が設置されており、水柱の表面形状を動的に変化させる役割をもつ。
【0012】

(フロート)
なめらかな表面を有する水柱3の内部を全反射効果で伝わる光は、通常の光ファイバーと同じく、側面から観察することが困難である。
そこで、図3と図4に示すように、フロート1は水柱3の水面に接触して、水面の形状を変化させることにより、内部全反射の一部または大部分を妨げて光を水柱の外に導く(4の現象)。フロートは変位発生装置11に接続されており、動的な変位の変化を水柱表面に伝える。
【0013】

(変位等の制御装置)
図5に示すように、フロートの変位を制御する変位制御装置40は、ノズルの格納容器のすぐ外側に設置された変位発生器11に接続されており、プログラム制御によって動的な変位を積極的に制御する機能をもっている。
変位制御装置によって、水柱の発光部4−1(発光量が多くなるように表面形状を変化)に続き水柱の発光部4−2(発光量が少ない表面形状)を発生させれば、下流の発光部4−1に適度な光量を伝えることができる。
また、この変位制御装置は、後述する発光制御装置41にリンクしており、この発光制御装置の機能を取り扱うことができる。
【0014】

(発光制御装置)
図6に示すように、本実施例では、水柱の内部に光を供給する光源を制御することによって、指定した位置で光が点滅するなど視覚効果を観賞者に与えることができる。
光源は応答性が良くて単色性に優れている高輝度のLEDを採用している。
光量や発光時間および発光間隔を変化させることができるので、他の視覚効果もプログラム次第で可能である。例えば、図7−Bに示すように、連続的な照明を用いた場合には、人は時間平均された水や流体の流れを観測するが、図7−Aに示すように、人の目には点滅していることを感じさせない点滅照明を用いた場合には、人は変形した水柱の動きを感じ取ることができるために幻想的な視覚効果が得られる。
【実施例2】
【0015】

尚、上記の実施形態は以下に示す別例に変更して実施してもよい。
フロートの形状は上記の実施形態で示した以外の物でもよいものとする。また、フロートと変位発生機とのリンク機構も上記の実施形態で示した以外の物でもよいものとする。
光源は上記の実施形態で使用したLEDに限らなくてもよいものとする。また、光源は光ファイバーなどで、先の実施形態で示した、光源の位置に導いた物でもよいものとする。
【産業上の利用可能性】
【0016】

本発明によれば、内部を光が伝わる表面(内表面)が滑らかな水柱の表面形状をフロートによって積極的に変化させる装置、および内部を伝わる光を発光制御する装置によって豊かな視覚効果を与える水景装置を得ることができる。
また、これらの装置をプログラム制御することにより、同じ設備でもって、目的(季節の演出、催し物のテーマや鑑賞者の望むイメージなど)に合わせた光水景の装置を適時に実現して観賞者や顧客に提供する機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】

【図1】請求項1から3の発明の一実施例による水景装置を説明するための概略構成図。
【図2】上記実施例におけるノズル本体の要部の断面図。
【図3】フロートの形状を示す概略図。
【図4】上記ノズルにおけるフロートとその設置を示す要部の概略図。
【図5】上記実施例における水柱表面の形状を変化させた場合の効果を示す概略図。
【図6】上記実施例における発光制御された光の位置を示す概略図。
【図7】上記実施例における発光制御された光の効果を示す概略図。
【符号の説明】
【0018】
1…水柱の表面形状を変化させるフロート(浮き)
2…フロートを変位発生器に接続する部品(ロッド)
3…表面のなめらかな水柱
4…表面形状が変化し、外部から光を観察できるようになった部分
5…水柱の流れる方向
10…ノズル格納器
11…変位発生器
12…ロッドと変位発生器の接続点
14…ロッドの支点
15…発光器
16…配線用パッキン
17…締具
30…水圧ポンプ
31…流体供給用の配管
32…流体を貯める貯水槽
40…変位発生器の制御装置(発光制御装置とリンクしている)
41…発光制御装置
50…発光制御された照明において、外部から観察できる光
51…発光制御された照明における、外部から観察できる水柱の形状
52…連続照明における、外部から観察できる光
53…連続照明における、外部から観察できる水柱の形状
60…外部電源供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝える滑らかな表面を有する水柱の表面を、フロートでもって、動的かつ積極的に形状を変化させることによって観察者に光の動き(光量も含む)があり、かつ、水の動きにも変化のある観賞効果を与えることができる装置。
【請求項2】
上記請求項1の装置に加えて、水柱内部に伝える光の光源を発光制御することによって変化(視覚効果)のある観賞効果を与える装置。

【請求項3】
上記請求項の1と2を用い、光の動きを積極的にプログラム制御することによって自由度のある動的な光水景を作り出すことのできる機能。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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