説明

光ケーブル

【課題】防湿性に優れた光ケーブルを実現する。
【解決手段】光ケーブル10に用いる防湿性フィルム5を選定する際に、予めJIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化試験を行い、外被6の溶融温度に相当する200℃で1分間加熱処理した後の寸法変化率が3.0%以下であった防湿性フィルム5を選定するようにすることで、防湿性フィルム5の初期透湿度の値からだけでは予測が付き難かった光ケーブル10としての防湿性能の良否を判断しやすくなり、防湿性に優れた光ケーブル10を製造することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルに係り、特に光ファイバーを収容したケーブルコアの外周を防湿性フィルムで覆い、その外側を外被で被覆した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の光ファイバーが収納された集合コアの外周を防湿層で覆い、その外側をシース(外被)で被覆した光ケーブルが知られている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
光ファイバーは水分に弱く、吸湿してしまうと強度の低下や伝送特性の悪化が生じてしまうので、光ケーブルのシースの内側に防湿層を備えることで、光ケーブル内部への透湿を抑制し、シースを透過した湿気が光ファイバーに達しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−99978号公報
【特許文献2】特開2011−107258号公報
【特許文献3】特開2011−107232号公報
【特許文献4】特開2011−145363号公報
【特許文献5】特開2011−118353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献の場合、防湿層は、樹脂製の基材(例えば、PET、OPP、ポリエチレンなどのプラスチックフィルム)の表面に、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機系の防湿性物質を含む防湿膜が形成されてなる防湿性フィルムによって構成されているため、光ケーブルの製造過程で受ける熱、特に、防湿層の外側にシースを押出成形する工程で溶融したシース材料(例えば、ポリエチレンやポリオレフィン系の難燃性樹脂材料など)と接した際に受ける熱によって基材が収縮するなど寸法変化を起こしてしまうことがある。
防湿性フィルムの基材が熱収縮すると、基材上に形成された防湿膜に亀裂が生じるなどして防湿層が損傷してしまうので、当初防湿性フィルムが有していた防湿性が得られず、光ケーブルの防湿性は設計値よりも低くなってしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、防湿性に優れた光ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
光ファイバーを収容したケーブルコアの外周を防湿性フィルムで覆い、その外側を外被で被覆した光ケーブルであって、
前記防湿性フィルムは、JIS C 2151、21項のb)に準拠した寸法変化試験により、前記外被を押出成形する際の溶融温度で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%以下であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ケーブルにおいて、
前記防湿性フィルムは、非導電性材料からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ケーブルにおいて、
前記防湿性フィルムは、ノンハロゲン系の材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ケーブルに用いる防湿性フィルムを選定する際に、予めJIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化試験を行い、外被を押出成形する際の溶融温度で1分間加熱処理した後の寸法変化率が3.0%以下である防湿性フィルムを選定するようにすることで、防湿性に優れた光ケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光ケーブルであるスロット型光ファイバーケーブルを示す断面図である。
【図2】光ケーブルからコア部分を引き抜いた、防湿性フィルムと外被とからなる2層構成のチューブを示す断面図である
【図3】光ケーブルの透湿度の測定方法を示す説明図である。
【図4】光ケーブルであるスロットレス型光ファイバーケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る光ケーブル10を示す断面図である。
光ケーブル10は、図1に示すように、所定数の光ファイバー(光ファイバー心線)を収容したケーブルコア11の外周を防湿性フィルム5で覆い、その外側を外被6で被覆してなるスロット型光ファイバーケーブルである。
【0013】
光ケーブル10のケーブルコア11は、光ファイバーテープ心線3(以下、光心線3)を収容したスロットロッド2の外周に、押え巻きテープ4が巻かれた構成を有している。
スロットロッド2は、樹脂製の長尺部材であり、その中心部にテンションメンバ1が長手方向に沿って設けられている。このスロットロッド2の外周面には、長手方向に沿って複数条のスロット溝2aが形成されており、各スロット溝2aに複数枚の光心線3が積層状態で収容されている。
つまり、この光ケーブル10のケーブルコア11は、テンションメンバ1と、スロットロッド2と、光心線3と、押え巻きテープ4を備えている。
【0014】
テンションメンバ1は、光ケーブル10の敷設時などにおいて、光ケーブル10にかかる張力から光ファイバーを守るための部材であり、例えば、単鋼線、鋼撚線、FRP等を用いることができる。
スロットロッド2は、光心線3をスロット溝2a内に保持する部材である。スロットロッド2は、ノンハロゲン系の材料からなることが好ましく、例えば、高密度ポリエチレン等の樹脂材料からなる。
光心線3は、複数本(例えば図中4本)の光ファイバーを横一列に並べて樹脂で一体化したものであり、各スロット溝2aにおいて、複数枚(例えば図中4枚)の光心線3が積層されている。
押え巻きテープ4は、スロット溝2aに収容した光心線3が、スロット溝2aから出ないように封入する機能を有している。なお、後述する防湿性フィルム5によってスロット溝2a内に光心線3を封入する場合、押え巻きテープ4を用いなくてもよい。
また、押え巻きテープ4を、例えば、不織布と吸水性ポリマーの複合体で構成して、吸水性を有する押え巻きテープとすれば、外被6の破損箇所などから浸み込む水滴をスロット溝2aに侵入させないように防ぐことができる。
なお、押え巻きテープ4は、ノンハロゲン系の材料からなることが好ましい。
【0015】
防湿性フィルム5は、ケーブルコア11の周囲に縦添え巻き、あるいは横巻き(螺旋巻き)などにより巻き付けられて設けられている。防湿性フィルム5は、樹脂製の基材(樹脂フィルム)の表面に防湿性物質を含む防湿膜が形成されてなる防湿性を有するフィルム部材である。
この防湿性フィルム5は、ノンハロゲン系の材料からなることが好ましい。防湿性フィルム5の基材には、例えば、PET、OPP、ポリエチレンなどの樹脂材料を用いることができる。また、防湿性フィルム5の防湿膜(防湿性物質)には、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機系の材料や、シロキサンなどの有機ケイ素化合物などを用いることができる。
【0016】
また、防湿性フィルム5は、非導電性材料からなることが好ましい。防湿性フィルムの防湿性を向上させるために、防湿性フィルムにアルミ蒸着などを施す技術が知られている。しかしながら、アルミ蒸着などが施された導電性のフィルム材料を防湿性フィルムとして光ケーブル10に用いると、光ケーブル10が電力ケーブルと併設された際に電力ケーブルの誘導電界の影響を受けて光ケーブル10に不具合が生じることがあり、また落雷による被害を受け易くなる。そのため、防湿性フィルム5には、導電性材料を用いないことが好ましいのである。
【0017】
特に、本発明に係る光ケーブル10には、JIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化についての試験により、外被6を押出成形する際の溶融温度(例えば190℃)で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%以下である防湿性フィルム5を用いる。
防湿性フィルム5は、外被6を押出成形する際に、溶融した樹脂材料に覆われて高温に晒されることで、熱収縮する寸法変化を起こす。本発明者が鋭意検討した結果、この熱収縮の収縮率である寸法変化率が3.0%以下であれば、防湿性フィルム5の防湿性能が機能低下しないことが分かった。
【0018】
外被6は、防湿性フィルム5の周囲を覆うように、押出成形によって設けられている。
外被6は、ノンハロゲン系の材料からなることが好ましく、例えば、ポリエチレン(LDPEやL−LDPEなど)や、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)等のポリオレフィン系の難燃性樹脂材料からなる。
この外被6を押出成形する際、外被材料(例えば、LDPE、L−LDPE、EEA等のポリオレフィン系の難燃性樹脂材料)の溶融温度は190℃である。なお、外被6となる外被材料の種類や、外被6の成形条件(厚みや表面性状など)等に応じて溶融温度を調整することがあるが、溶融温度は190±10℃であることが好ましい。
【0019】
なお、光ケーブル10を構成するスロットロッド2、押え巻きテープ4、防湿性フィルム5、外被6等をノンハロゲン系の材料とすることによって、火災時や焼却時に光ケーブル10から有毒ガスが発生し難くなるので、環境に優しいなどのメリットが期待できる。
【0020】
次に、防湿性フィルム5の寸法変化率の測定方法について説明する。
本発明では、JIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化試験によって、防湿性フィルム5の寸法変化率を測定した。
【0021】
試験片のサイズは、幅約20mm、長さ約150mmとし、試験対象の防湿性フィルム5の縦方向から5個の試験片を切り出した。各試験片には、試験片の中央部を中心にして間隔100mm±2mmの標線を付けた。なお、試験片を切り出した防湿性フィルム5は、ケーブルコア11の周囲に巻き付ける前のものである。
まず、恒温槽に入れる前の試料片の寸法(L)を測定した。その試験片を1個、熱風循環式の恒温槽内に無荷重の状態で垂直に吊り下げ、恒温槽の扉を閉じ、槽内が200℃に安定してから1分後に試験片を取り出した。試験片を室温まで冷却した後、加熱処理前に寸法測定した同じ部分でJISに規定する方法により試験片の寸法(L)を測定した。
試験片の寸法変化率S(%)は、以下の式で計算して求めた。
S(%)=((L−L)/L)×100
:試験前の寸法(mm)
L:試験後の寸法(mm)
そして、5個の試験片の寸法変化率の平均値を、試験対象の防湿性フィルム5の寸法変化率とした。
この寸法変化率が3.0%以下の防湿性フィルム5を、本発明に係る光ケーブル10に適用するようにした。
【0022】
なお、外被6を押出成形する際の溶融温度は約190℃に設定されているが、防湿性フィルム5がより過酷な高温条件に晒される可能性を考慮して、試験温度を200℃とした。
また、防湿性フィルム5の周囲に外被6が押出成形された後、冷却工程で外被6は冷却されるが、押出成形後の約1分間は外被6が100℃以上の高温を維持している。そのため、少なくとも1分間、防湿性フィルム5は高温に晒されることを考慮して、試験時間を1分間とした。
【0023】
次に、防湿用途に市販されているフィルム材料(表1参照、フィルムNo.1〜11)を防湿性フィルムとして用いた光ケーブルの防湿性能と、フィルム材料(防湿性フィルム)の寸法変化率(%)の相関について説明する。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、フィルムメーカー各社から市販されているフィルム材料を11種類用意した(フィルムNo.1〜11)。
防湿性フィルム5として用いる各フィルム材料(フィルムNo.1〜11)の基材と防湿素材(防湿性物質)は表1に示す通りである。なお、フィルム材料が同一基材、同一防湿素材であっても、基材と防湿膜の厚さや、基材と防湿膜の積層方法などはフィルム材料毎に異なる。但し、各フィルム材料の厚さは0.025mmに統一した。
表1に示した各フィルム材料の寸法変化率(%)は、上記した方法によって求めたものである。また、各フィルム材料の初期透湿度(g/m・day)は、JIS K 7129Aに準拠した乾湿センサー法(40℃−90%RH)により測定した値である。
【0026】
このようなフィルム材料を防湿性フィルムとして用いた光ケーブル10の防湿性能の判定に関し、光ケーブル10における防湿性フィルム5と外被6の2層、つまり光ケーブル10の外側2層の防湿性能の判定を行った。
この光ケーブルの防湿性能の判定用に、図1に示した構成のスロット型光ファイバーケーブルを作製した。
具体的に、スロットロッド2の外周に吸水性を有する押え巻きテープ4を1/3ラップで横巻きしてケーブルコア11を形成し、そのケーブルコア11の外周にフィルム材料(フィルムNo.1〜11)をそれぞれ防湿性フィルム5として用い、1/3ラップ巻きで約20mの長さ間隔でフィルム材料(フィルムNo.1〜11)を連続的に横巻きして、外径約15mmで、長さ220mのコアを作製した。
この試験用のコアの外周に、押出成形時の樹脂溶融温度を190〜200℃に設定した条件で、厚さ1.7±0.1mmとなる外被6を形成して、光ケーブル10を作製した。
なお、外被6を形成した後にケーブルコア11に横巻きしたそれぞれのフィルム材料(フィルムNo.1〜11)の位置が判別できるように、外被6を形成する際に外被6の外表面におけるそれぞれのフィルムの切り替わり位置に白色ペンにて印を付けた。
なお、ダイスから押し出された直後の溶融樹脂の温度を非接触タイプの赤外線センサー温度計にて実測して調整しながら押出被覆を施した。この外被6には、ポリオレフィン系の難燃性樹脂材料(EEAをベース樹脂に難燃剤として水酸化マグネシウムを配合した難燃被覆材料)を用いた。
こうして作製した光ケーブル10からケーブルコア11部分を引き抜き、図2に示すような、防湿性フィルム5と外被6とからなる2層構成のチューブ56を得て、このチューブ56の防湿性能の判定を行った。
【0027】
光ケーブル10の防湿性能の判定の基準となる、防湿性フィルム5と外被6の2層構成のチューブ56の透湿度(防湿性)は、図3に示す方法で測定した。
まず、防湿性能の判定用に作製した上記光ケーブル10を40cmの長さに切断し、その切断したケーブルからケーブルコア11部分を引き抜いて、試料となるチューブ56を得た。
このチューブ56の両端に、送気管60が接続された金属キャップ50を水密構造で取り付けて、そのチューブ56を40℃の恒温水槽40に浸した。一方の送気管60はガス供給源70に接続され、他方の送気管60は試料採取装置80に接続されている。そして、ガス供給源70からチューブ56に向けて一定量のキャリアガスが送られるようになっており、試料採取装置80はチューブ56内に浸透した水蒸気を含むキャリアガスを採取するようになっている。
試料採取装置80で採取されたキャリアガスに含まれる水蒸気量は、ガスクロマトグラフ90により測定される。この水蒸気量の測定は3時間おきに行なわれ、直前に測定された値に対する差が±5%以内に4回連続しておさまったときに定常状態になったと判断し、測定された水蒸気の量を「一日あたりに試料(チューブ56)を透過する水蒸気の量」に換算し、試料の表面積(外被の表面積)で割って、単位面積当たりの値を透湿度とした。
【0028】
そして、その内部に浸透する水蒸気量が定常状態になったと判断されたチューブ56を恒温水槽40から取り出し、そのチューブ56の内壁面に微小な水滴や結露が生じているか否か、ルーペ等を用いて観察した。なお、24時間後にも定常状態にならない試料(チューブ56)は、その時点で恒温水槽40から取り出して観察した。
防湿性判定は、チューブ56の内壁面に水滴が生じていない試料(チューブ56)を合格「○」、チューブ56の内壁面に水滴が生じていることが認められた試料(チューブ56)を不合格「×」とした。その判定結果を表1に示す。
【0029】
表1に示すように、フィルムNo.3,6,7,9,10,11の6つの試料(チューブ56)は、防湿性判定が合格「○」となった。防湿性判定が合格になったフィルムNo.3,6,7,9,10,11のフィルム材料(防湿性フィルム)は、上記した200℃×1分の加熱処理後の寸法変化率が3.0%以下であった。なお、防湿性判定が合格になった6つの試料(チューブ56)の定常状態での透湿度は0.50g/m・day以下であった。
一方、フィルムNo.1,2,4,5,8の5つの試料(チューブ56)は、防湿性判定が不合格「×」となった。防湿性判定が不合格になったフィルムNo.1,2,4,5,8のフィルム材料(防湿性フィルム)は、上記した200℃×1分の加熱処理後の寸法変化率が3.0%を超える値であった。なお、防湿性判定が不合格になった5つの試料(チューブ56)は定常状態にならず、その透湿度は0.60g/m・dayを超える値であった。
【0030】
以上のように、初期透湿度の値が小さい防湿性フィルム5であっても、JIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化試験で、外被6の溶融温度に相当する200℃(190±10℃)で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%を超えてしまう防湿性フィルム5は、外被6を押出成型する際の熱により収縮してしまい、防湿性フィルム5表面の防湿膜に亀裂・破損が生じるなどして防湿性が悪化し、光ケーブル10(チューブ56)の防湿性能が低下してしまうことが分かった。
これに対し、外被6の溶融温度に相当する200℃(190±10℃)で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%以下の防湿性フィルム5は、外被6を押出成型する際の熱による収縮は僅かであり、防湿性フィルム5表面の防湿膜に亀裂・破損は生じず、光ケーブル10(チューブ56)の防湿性能を維持することができる。
【0031】
このように、光ケーブル10に用いる防湿性フィルム5を選定する際に、予めJIS C 2151「電気用プラスチックフィルム試験方法」、21項のb)に準拠した寸法変化試験を行い、外被6の溶融温度に相当する200℃(190±10℃)で1分間加熱処理した後の寸法変化率が3.0%以下であった防湿性フィルム5を選定するようにすればよい。
そうすることで、これまで防湿性フィルム5の初期透湿度の値からだけでは予測が付き難かった、光ケーブル10としての防湿性能の良否を判断しやすくなり、防湿性に優れた光ケーブル10を製造することが可能になる。
【0032】
なお、以上の実施の形態において、光ケーブル10は、スロット型光ファイバーケーブルを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スロットレス型光ファイバーケーブルに本発明を適用してもよい。
例えば、図4に示すように、光心線3の周囲に、例えば4本の巻き付け材7を螺旋状に巻回して緩衝層を形成したケーブルコア21を有し、そのケーブルコア21の外周を防湿性フィルム5で覆い、その外側を外被6で被覆してなるスロットレス型の光ケーブル20に本発明を適用してもよい。つまり、図4に示す光ケーブル20の防湿性フィルム5が、JIS C 2151、21項のb)に準拠した寸法変化試験により、外被6を押出成形する際の溶融温度で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%以下の条件を満たすものも、本発明に含まれる。
なお、スロットレス型の光ケーブル20の場合、例えば、2本のテンションメンバ1が外被6に埋設され、その長手方向に配されている。また、押え巻きとして機能する防湿性フィルム5の周面に沿い、2本の引裂紐8がケーブルの長手方向に埋設されている。この引裂紐8は、外被6の剥ぎ取りを容易にすべく設けられた部材である。
【0033】
また、以上の実施の形態において市販品の防湿性フィルム5(フィルム材料No.1〜11)を用いたが、防湿性フィルム5は、基材(樹脂フィルム)の表面に予め防湿性物質を含む防湿膜が形成されている既製品を用いるのでなく、例えば、光ケーブルの製造過程におけるケーブルコアに防湿性フィルム5を巻き付ける工程において、基材(樹脂フィルム)の表面に防湿性物質を塗布するなどコーティングして形成した防湿性フィルム5であってもよい。この場合、防湿性フィルム5を形成しつつ、形成された防湿性フィルム5をケーブルコア11に直ちに巻き付けるようにしてもよい。
【0034】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 光ケーブル
11 ケーブルコア
1 テンションメンバ
2 スロットロッド
2a スロット溝
3 光心線(光ファイバー)
4 押え巻きテープ
5 防湿性フィルム
6 外被
20 光ケーブル
21 ケーブルコア
7 巻き付け材
8 引裂紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーを収容したケーブルコアの外周を防湿性フィルムで覆い、その外側を外被で被覆した光ケーブルであって、
前記防湿性フィルムは、JIS C 2151、21項のb)に準拠した寸法変化試験により、前記外被を押出成形する際の溶融温度で1分間処理した後の寸法変化率が3.0%以下であることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記防湿性フィルムは、非導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記防湿性フィルムは、ノンハロゲン系の材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104989(P2013−104989A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248274(P2011−248274)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】