説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、PCB一体化構造のトレイが衝撃力を受けたとき、PCBが筐体に衝突して破損することを防止する。
【解決手段】トレイ2には、ユニットメカアッセンブリ1(スピンドルモータや光ピックアップモジュール)とともに、筐体の底板(シャーシメイン5)に対向する面には、プリント回路基板(PCB)3が取り付けられる。トレイ2のうちPCB3が配置される近傍には、シャーシメイン5側に向う凸部25を形成する。シャーシメイン5には、トレイ2の凸部25と対向する位置に凸部55を形成する。トレイ2を筐体に収納した際に、トレイ2の凸部25とこれに対向するシャーシメイン5の凸部55の間には所定の間隙を設け、トレイ2が変形したとき、凸部25をこれに対向する凸部55が支持してトレイ2の変形を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置に係り、特に光ディスクを載置するトレイを筐体に収納した際の耐衝撃性の向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子機器に搭載される光ディスク装置では、装置本体(筐体)に出入自在に保持されたトレイを備え、このトレイを筐体から引き出した状態で光ディスクを載置し、再びトレイを筐体に収納することで光ディスクを装置本体に装着する構造となっている。薄型の光ディスク装置では、光ディスクを回転させるスピンドルモータや、光ディスク半径方向に移動可能でディスク記録面にレーザ光を照射して情報を記録または再生する光ピックアップなどの、いわゆるユニットメカアッセンブリ(ユニットメカ)と称される機構がトレイに取り付け、光ディスクと一緒に移動する。
【0003】
ノートパソコンのように小型の電子機器に搭載する場合、装置の薄型化が図られ、また軽量化が要求される。このため構成部材の板厚も薄い材料を用いることになり、外部から衝撃力を受けると、筐体(シャーシ)やトレイにたわみや反りが発生しやすくなる。衝撃力が大きい場合には、筐体とこれに収納されているトレイとが衝突したり、トレイが筐体に対しスムーズに収納/引き出しすることが困難になる。
【0004】
これに関し特許文献1では、トレイの底板部にリブ状の当り部を下向きに突出させ、シャーシの受け部がこの当り部を下から支えることで、トレイが下向きに反り変形することを阻止する構造を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−279717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ディスク装置の薄型化のため、トレイとユニットメカ(スピンドルモータや光ピックアップ)とが一体化した構造が採用され(この構造は、スリム型とも呼ばれる)、更にはトレイの下面側に、ユニットメカを駆動するための回路を搭載するプリント回路基板(Printed Circuit Board、以下、PCBと略す)を取り付けた構造(以下、PCB一体化構造と呼ぶ)のものも採用されている。PCB一体化構造によれば、トレイの下面を有効に使用することで、筐体内の部品をより効率的に配置することができる。しかしながら、このようなPCB一体化構造ではPCB表面と筐体内面との間隙が狭くなることから、外部から衝撃力を受けるとPCBが筐体であるシャーシに衝突し、その結果PCBが破損する恐れがある。
【0007】
前記特許文献1では、トレイの底板部に設けたリブ状の当り部とシャーシに設けた受け部とを接触させることで、トレイが下向きに反り変形することを阻止し、ディスクローディングやディスクアンローディングの動作を安定させようとするものである。その場合、トレイの当り部とシャーシの受け部とを接触する構造としているので、トレイからの振動がシャーシに伝達して、騒音が大きくなりやすい。また、特許文献1に開示される装置はユニットメカとトレイが分離され、ディスクを載置したトレイがディスククランプ位置へ進入した後、クランプ機構によってディスクをユニットメカにクランプする方式である。この構造は、ハーフハイト型とも呼ばれ、上記スリム型よりも筐体の高さ(厚み)が大きく、よってトレイ下面と筐体との間隙を大きくとることができる。特許文献1にはトレイとPCBを一体化することは記載されていないが、仮にPCBを取り付けたとしても、PCBがシャーシと衝突する恐れは少ないと予想される。
【0008】
本発明の目的は、PCB一体化構造のトレイが衝撃力を受けたとき、PCBが筐体(シャーシ)に衝突して破損することを防止する光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光ディスクが載置されたトレイを筐体に収納して該光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、上記トレイには、スピンドルモータと光ピックアップモジュールを含むユニットメカアッセンブリとともに、上記筐体の底板(シャーシメイン)に対向する上記トレイの面には、上記ユニットメカアッセンブリを駆動する回路を搭載したプリント回路基板が取り付けられ、上記トレイのうち上記プリント回路基板が配置される近傍には、上記シャーシメイン側に向う第1の凸部を形成するとともに、上記シャーシメインには、上記トレイを収納した際に上記第1の凸部と対向する位置に、上記トレイ側に向う第2の凸部を形成した。
【0010】
ここに、前記トレイを前記筐体に収納した際に、前記第1の凸部とこれに対向する前記第2の凸部の間には所定の間隙を設け、前記トレイが変形したとき、前記第1の凸部をこれに対向する前記第2の凸部が支持して前記トレイの変形を阻止する。
【0011】
さらに前記トレイと前記シャーシメインとの間には、前記トレイに取り付けられ前記ユニットメカアッセンブリや前記プリント回路基板を覆うカバーボトムを有し、該カバーボトムには前記シャーシメイン側に向う第3の凸部を形成した。
【0012】
ここに、前記トレイを前記筐体に収納した際に、前記第3の凸部と前記シャーシメインの間には所定の間隙を設け、前記トレイが変形したとき、前記第3の凸部は他の部分よりも先に前記シャーシメインに当接する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PCB一体化構造のトレイが衝撃力を受けても、PCBが筐体(シャーシ)に衝突して破損することがなく、光ディスク装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示す分解斜視図。
【図2】本実施例の光ディスク装置の平面図。
【図3】図2のA−A、B−B部分の断面図。
【図4A】トレイ2を下面側から見た斜視図と部分拡大図。
【図4B】シャーシメイン5を上面側から見た斜視図と部分拡大図。
【図5】カバーボトム4を下面側から見た斜視図と部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明による光ディスク装置の一実施例を示す分解斜視図である。本実施例の装置は、スピンドルモータなどを含むユニットメカアッセンブリ(以下、ユニットメカと略す)1、光ディスクを載置するトレイ2、プリント回路基板(以下、PCBと略す)3、カバーボトム4、及び筐体の底板であるシャーシメイン5などの部品で構成される。以下の説明では、ユニットメカ1側を上面側、シャーシメイン5側を下面側と呼ぶことにする。
【0016】
各部の構成を説明すると、ユニットメカ1は、スピンドルモータ11や光ピックアップモジュール12を含む。光ピックアップモジュール12は、光ディスクにレーザ光を照射して情報の記録再生を行う。トレイ2の開口部21には、上記ユニットメカ1を取り付け、載置面22には光ディスクを載置する。PCB3は、ユニットメカ1内のスピンドルモータ11や光ピックアップモジュール12の駆動回路と、光ディスクへの記録再生信号の処理回路を搭載する。PCB3はトレイ2の後部の下面に一体的に取り付け、PCB3とユニットメカ1の間は、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)で接続して信号を伝送する。カバーボトム4はトレイ2の下面側に取り付けられ、ユニットメカ1やPCB3を覆いこれらを保護するとともに、PCB3からの信号線(FPC)がシャーシメイン5に飛び出すことを防止する。シャーシメイン5は、上記したトレイ2をこれに一体的に取り付けられたユニットメカ1、PCB3、カバーボトム4とともに収納する。トレイ2とシャーシメイン5の間には図示しないレールを設けて、トレイ2がシャーシメイン5にスムーズに出入りできるようにしている。なお、図では省略しているが、トレイ2の上面側には上カバーであるトップケースが配置され、シャーシメイン5に取り付けられて箱型の筐体となっている。
【0017】
図2は、本実施例の光ディスク装置の平面図で、トレイ2がシャーシメイン5に収納された状態を示す。上面から見た場合、PCB3とカバーボトム4はトレイ2やユニットメカ1の裏側に隠れているが、PCB3の位置を破線で示す。PCB3は、トレイ2の後部でユニットメカ1や他の部品と干渉しない位置に配置される。この状態で外部から衝撃力(例えば紙面に垂直方向の力)を印加すると、トレイ2が反り変形する。そして反り量が大きいと、PCB3が下方にあるシャーシメイン5に接触あるいは衝突することになる。
本実施例では、トレイ2が衝撃力を受けてもPCB3がシャーシメイン5に衝突しないように、以下の構造としたことに特徴がある。
【0018】
図3は、図2の光ディスク装置の部分断面図であり、図2におけるA−A位置、B−B位置での断面を示す。
構造1:A−A断面に示すように、トレイ2にはシャーシメイン5側に向かってリブ状の凸部25を形成した。一方シャーシメイン5には、トレイ2側に向って上記凸部25と対向する位置に凸部55を形成した。トレイ2の凸部25はPCB3よりも後方に配置し、その高さはPCB3の上面よりも高くする。そして、トレイ2の凸部25とシャーシメイン5の凸部55に隙間Sを設け、両者は通常は非接触の状態とする。隙間Sの大きさは例えば0.1mm程度が適している。この構造により、衝撃を受けたトレイ2が反り変形してシャーシメイン5側に接近しても、トレイ2の凸部25をシャーシメイン5の凸部55が支持することで、トレイ2がそれ以上変形することを阻止する。その結果、トレイ2に取り付けたPCB3がシャーシメイン5に接触または衝突することを防止し、PCB3が破損することがなくなる。
【0019】
構造2:上記構造1に加え、B−B断面に示すように、カバーボトム4にシャーシメイン5側に向かって凸部45を形成した。凸部45の高さは例えば0.1mm程度とし、凸部45とシャーシメイン5との間には、間隙を設けている。この構造により、トレイ2が反り変形してシャーシメイン5側に接近しても、カバーボトム4の凸部45が他の部品(例えばPCB3)よりも先にシャーシメイン5に当接する。その結果、PCB3がシャーシメイン5に衝突することを防止するだけでなく、トレイ2に搭載する各部品への衝撃を緩和させる。
【0020】
上記構造1と構造2について、さらに他の図面を用いて説明する。
図4Aは、トレイ2を下面側から見た斜視図と部分拡大図である。トレイ2の後部にはPCB3が取り付けられるが(ここではPCB3を外した状態を示す)、PCB3の取り付け位置の後方近傍に、上記構造1に対応する凸部25を形成する。凸部25の形成は、トレイ2全体の成型工程の中で容易に実現できる。ここでは凸部25を1個形成したが、PCB3の取り付け領域に沿って複数個形成すれば、サイズの大きなPCB3であってもシャーシメイン5との衝突を防止することができる。
【0021】
図4Bは、シャーシメイン5を上面側から見た斜視図と部分拡大図である。図4Aで示したトレイ2を収納した際にトレイ2に設けた凸部25に対向する位置に、上記構造1に対応する凸部55を1個あるいは複数個形成する。シャーシメイン5の凸部55はその側面をなだらかに傾斜させることで、トレイ2を収納するとき、仮にトレイ2の凸部25がシャーシメイン5の凸部55に接触する場合でも、容易に乗り上げることができる。また、シャーシメイン5の凸部55の面積を、対向するトレイ2の凸部25の面積よりも大きくすることで、両者間に少々位置ずれがあっても、トレイ2の凸部25をシャーシメイン5の凸部55で確実に支持することができる。この場合も、凸部55の形成は、シャーシメイン5全体の成型工程の中で容易に実現できる。
【0022】
図5は、カバーボトム4を下面側から見た斜視図と部分拡大図である。
カバーボトム4には、その下面側に向けて上記構造2に対応する凸部45を複数個(この例では4個)形成している。凸部45の形成位置は、トレイ2の変形し易い領域に配置する。凸部45を設けることで、トレイ2が衝撃を受けたとき、カバーボトム4が他の部品より先にシャーシメイン5に当たって衝撃を緩和することと、シャーシメイン5との衝突場所を限定することで衝撃対策を行いやすくなる。具体的には、トレイ2の重心はユニットメカ1が取り付けられる領域に偏り、他の領域よりも変形し易いので、凸部45をその近傍に配置するのが良い。この例では凸部45の形状は円形としたが、これに限定することなく四角形としても良い。この場合も、凸部45の形成は、カバーボトム4全体の成型工程(絞り加工)の中で容易に実現できる。
【0023】
以上のように本実施例によれば、トレイ2とシャーシメイン5の対向する位置にそれぞれ凸部25,55を設けることで、トレイ2に取り付けたPCB3がシャーシメイン5に衝突することを防止できる。さらに、カバーボトム4のシャーシメイン5側に凸部45を設けることで、トレイ2への衝撃を緩和することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…ユニットメカアッセンブリ(ユニットメカ)、
2…トレイ、
3…プリント回路基板(PCB)、
4…カバーボトム、
5…シャーシメイン、
11…スピンドルモータ、
12…光ピックアップモジュール、
21…開口部、
22…載置面、
25,45,55…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクが載置されたトレイを筐体に収納して該光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、
上記トレイには、スピンドルモータと光ピックアップモジュールを含むユニットメカアッセンブリとともに、上記筐体の底板(以下、シャーシメインと呼ぶ)に対向する上記トレイの面には、上記ユニットメカアッセンブリを駆動する回路を搭載したプリント回路基板が取り付けられ、
上記トレイのうち上記プリント回路基板が配置される近傍には、上記シャーシメイン側に向う第1の凸部を形成するとともに、
上記シャーシメインには、上記トレイを収納した際に上記第1の凸部と対向する位置に、上記トレイ側に向う第2の凸部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記トレイを前記筐体に収納した際に、前記第1の凸部とこれに対向する前記第2の凸部の間には所定の間隙を設け、
前記トレイが変形したとき、前記第1の凸部をこれに対向する前記第2の凸部が支持して前記トレイの変形を阻止することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記第1の凸部の面積よりも前記第2の凸部の面積を大きくしたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記第1の凸部の高さは前記プリント回路基板の高さよりも大きくしたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記トレイと前記シャーシメインとの間には、前記トレイに取り付けられ前記ユニットメカアッセンブリや前記プリント回路基板を覆うカバーボトムを有し、
該カバーボトムには前記シャーシメイン側に向う第3の凸部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光ディスク装置において、
前記トレイを前記筐体に収納した際に、前記第3の凸部と前記シャーシメインの間には所定の間隙を設け、
前記トレイが変形したとき、前記第3の凸部は他の部分よりも先に前記シャーシメインに当接することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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