説明

光パルス圧縮装置および光パルス圧縮方法

【課題】
パルスの振幅と位相をフィードバック系により操作することで所望形状のパルス波形を形成するパルス圧縮技術を提供する。
【解決手段】
光パルス圧縮装置1は、周波数コム光発生装置11と、光パルスシンセサイザ12と、光増幅器13と、帯域拡大用光ファイバー141,分散補償用光ファイバー142とからなる光ファイバーモジュール14と、光ファイバーモジュール14からの光パルスPを入射して、光パルスPの波形を測定して、実測波形データDwavを生成する光パルス波形測定装置15と、光パルスPのスペクトルを測定して、実測スペクトルデータDspcを生成する光スペクトラムアナライザ16と、光パルスシンセサイザ12に振幅フィードバック制御信号SAと位相フィードバック制御信号SPを送出する光パルスシンセサイザ制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスを圧縮する技術に関し、具体的にはパルスの振幅と位相をフィードバック系により操作することで所望形状のパルス波形を形成する光パルス圧縮装置および光パルス圧縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルスを圧縮する技術が記載された技術文献として、本発明者が発明者である特許文献1(「光周波数コム発生装置および光周波数コム発生方法」)が公知である。
図7に示される光周波数コム発生装置8(特許文献1の図6に対応する)は、レーザ81と、RF信号発生器821を備えた種コム発生部82と、光パルス生成部83と、RF信号発生器840を備えた位相変調器(パルス圧縮部)84と、光増幅器85と、光ファイバー86と、パルス波形測定器88を備えている。
また、図8に示される光周波数コム発生装置8′(特許文献1の図5に対応する)は、レーザ81と、RF信号発生器821を備えた種コム発生部82と、光パルス生成部83と、第1の光増幅器851と、第1の光ファイバー841と、第2の光増幅器85と、第2の光ファイバー86と、光スペクトラムアナライザ87を備えている。
光周波数コム発生装置8,8′では、測定結果を、光パルス生成部83にフィードバックすることで、GHzオーダのコム間隔周波数をもつ広帯域(たとえば、10〜100THz)の光周波数コムを低コストで生成し、かつ周波数間隔とスペクトル形状を可変にでき、絶対周波数確度を高くすることができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−217365
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.Tanaka, R.Kobe, T.Shioda, H.Tsuda and T.Kurokawa, “Generation of 100−Gb/s packets having 8−Bit return−to−zero patterns using an optical pulse synthesizer with a lookup table ”IEEE Photon. Technol. Lett., Vol. 21, No.1, pp.39−41, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7の光周波数コム発生装置8(特許文献1の図6の技術)では、位相変調器84によりパルス圧縮する構成のため、帯域圧縮はされるが分散の調整がなされない。したがって、適切な(所望の波形と所望のチャープをもつ)パルスに圧縮することができない。波形測定にはパルス波形測定器88が使われているため、スペクトルの制御が十分にできないので、やはり適切な(所望の波形と所望のチャープをもつ)光パルスに圧縮することができない。
【0006】
図8の光周波数コム発生装置8′(特許文献1の図5の技術)では、第1の光ファイバー841からなるパルス圧縮部と光スペクトラムアナライザ87とにより帯域圧縮はされるが、やはり分散の調整がなされない。しかも、光スペクトラムアナライザ87はSC(スーパコンティニューム光)発生のための光ファイバー86の後段に設置され、SCのスペクトルを測定するので、図8の光周波数コム発生装置8′では、所望形状の光パルスに圧縮することができない。
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、光パルスを、所望の波形と所望のチャープをもつ短いパルスに圧縮することが困難である。そのため、ペデスタル雑音が比較的大きなパルス波形となる(ペデスタル雑音は、後述するようにチャープに起因する)。
【0008】
あるいはまた、パルスの波形とパルスのスペクトルを共に所望の分布にすることが困難であり、とりわけチャープのないフーリエ変換リミットの短いパルス波形にすることが困難である。
【0009】
本発明の目的は、パルスの波形とパルスのスペクトルをフィードバック系により操作することで、所望形状のパルス波形と所望形状のスペクトルをもつパルスに圧縮する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光パルス圧縮装置は、(1)から(4)を要旨とする。
(1)
周波数コム光FCを生成する周波数コム光発生装置と、
前記周波数コム光FCを入射し、コム光成分(コム光の周波数成分)ごとに位相変調および振幅変調して、当該位相変調および振幅変調したコム光成分からなる光パルスPを出射する光パルスシンセサイザと、
前記光パルスシンセサイザからの光パルスPを増幅する光増幅器と、
帯域拡大用光ファイバーと分散補償用光ファイバーとからなり(直列接続からなり)、前記光増幅器により増幅された光パルスPを入射し、当該光パルスPの周波数帯域を拡大するとともに、前記光パルスPの分散を補償する光ファイバーモジュールと、
を備え、前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを信号光として出射する光パルス圧縮装置であって、
さらに、
前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを入射して、当該光パルスPの波形を測定して、実測波形データDwavを生成する光パルス波形測定装置と、
前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを入射して、当該光パルスPのスペクトルを測定して、実測スペクトルデータDspcを生成する光スペクトラムアナライザと、
光パルスPの目標波形データD*wavおよび目標スペクトルデータD*spcを記憶する目標データ記憶装置と、
前記目標波形データD*wavと前記光パルスPの実測波形データDwavとの差分、および前記目標スペクトルデータD*spcと前記実測スペクトルデータDspcとの差分を、繰り返し検出しつつ、前記光パルスシンセサイザにフィードバックするべき前記振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成し、前記差分がゼロになるように前記光パルスシンセサイザを制御する光パルスシンセサイザ制御部と、
を備えたことを特徴とする光パルス圧縮装置。
【0011】
(2)
前記光パルスシンセサイザ制御部は、遺伝的アルゴリズムに基づき前記振幅フィードバック制御信号および位相フィードバック制御信号を生成することを特徴とする(1)に記載の光パルス圧縮装置。
【0012】
(3)
1540〜1560nmの波長域において、帯域拡大用光ファイバーの特性が非線形定数10W/km以上かつ分散値1ps・nm-1・km-1以下であり、分散補償用光ファイバーの特性が、非線形定数2W/km以下かつ分散値10ps・nm-1・km-1以上であることを特長とする(1)または(2)に記載の光パルス圧縮装置。
【0013】
(4)
光周波数コム発生装置が、単一周波数レーザと、マイクロ波発生器によりコム間隔の設定が可能な光コム発生器とからなることを特徴とする(1)から(3)の何れかに記載の光パルス圧縮装置。
【0014】
本発明の光パルス圧縮方法は、(5)から(7)を要旨とする。
(5)
光パルスシンセサイザに周波数コム光FCを入射し、コム光成分(コム光の周波数成分)ごとに位相変調および振幅変調して、当該位相変調および振幅変調したコム光成分からなる光パルスPを出射するステップと、
前記光パルスシンセサイザからの光パルスPを増幅するステップ、
前記光増幅器により増幅された光パルスPを、帯域拡大用光ファイバーおよび分散補償用光ファイバーからなる光ファイバーモジュールに導入することで、前記光パルスPの周波数帯域を拡大するとともに分散を補償し、
前記帯域を拡大し分散が補償された光パルスPを信号光として出射する光パルス圧縮方法であって、
さらに、
前記帯域が拡大し分散が補償された光パルスPを入射して、当該光パルスPの波形を測定し実測波形データDwavを生成するステップと、
前記帯域が拡大し分散が補償された光パルスPを入射して、当該光パルスPのスペクトルを測定し実測スペクトルデータDspcを生成するステップと、
光パルスPの目標波形データD*wavおよび目標スペクトルデータD*spcを予め記憶するステップと、
前記目標波形データD*wavと前記光パルスPの実測波形データDwavとの差分、および前記目標スペクトルデータD*spcと前記実測スペクトルデータDspcとの差分を、繰り返し検出しつつ、前記光パルスシンセサイザにフィードバックするべき前記振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成し、前記各差分がゼロになるように前記光パルスシンセサイザを制御するステップと、
を備えたことを特徴とする光パルス圧縮方法。
【0015】
(6)
光パルスシンセサイザを制御するステップでは、遺伝的アルゴリズムに基づき前記振幅フィードバック制御信号および位相フィードバック制御信号を生成することを特徴とする(5)に記載の光パルス圧縮方法。
【0016】
(7)
1540〜1560nmの波長域において、帯域拡大用光ファイバーの特性が非線形定数10W/km以上かつ分散値1ps・nm-1・km-1以下であり、分散補償用光ファイバーの特性が、非線形定数2W/km以下かつ分散値10ps・nm-1・km-1以上であることを特長とする(5)または(6)に記載の光パルス圧縮方法。
【発明の効果】
【0017】
超短パルスの形状・周波数チャープが制御可能となる。
ペデスタル雑音の抑制(1桁以上小さくする)・制御が可能となる。
中心周波数可変の超短パルスが生成可能となる。
繰り返し間隔可変の超短パルスが生成可能となる。
パルス幅が可変となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光パルス圧縮装置の概要を示す図である。
【図2】単一周波数レーザとマイクロ波発生器とからなる周波数コム光発生装置を示す図である。
【図3】AWGと振幅・位相変調器とが一つの基板に構成された光パルスシンセサイザを示す図である。
【図4】(A)は光ファイバーモジュールを伝搬する光パルスの目標の振幅波形を示す図、(B)は光パルス波形測定装置により測定される光パルスの目標の強度波形を示す図である。
【図5】光パルス圧縮装置におけるフィードバック制御系を示す説明図である。
【図6】(A)はペデスタルノイズが現れた波形を示す図、ペデスタルノイズに対応した特性(この領域を符号bで示す)が現れたスペクトルを示す図である。
【図7】光周波数コム発生に際して、光パルスを圧縮する従来例の説明図である。
【図8】光周波数コム発生に際して、光パルスを圧縮する他の従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の光パルス圧縮装置の概要を示す図である。図1において、光パルス圧縮装置1は、周波数コム光発生装置11と、光パルスシンセサイザ12と、光増幅器13と、光ファイバーモジュール14と、光パルス波形測定装置15、光スペクトラムアナライザ16と、目標データ記憶装置17と、光パルスシンセサイザ制御部18とを備えている。
【0020】
周波数コム光発生装置11は、周波数コム光FCを生成する。周波数コム光発生装置11は、図2に示すように、単一周波数レーザ111と、マイクロ波発生器113によりコム間隔の設定が可能な光コム発生器112から構成できる。単一周波数レーザ111として、周波数可変レーザを用いることで、超短パルスの中心波長を選択することができる。また、光コム発生器112は、たとえば、ニオブ酸リチウム(LN)材料の位相変調器からなる。
【0021】
マイクロ波発生器113により光コム発生器112を高出力のマイクロ波で駆動することにより、光周波数コムを発生することができる。特に、クリーン度の高いマイクロ波を発生できるマイクロ波発生器113を用いることで、光コム発生器112は、低雑音・高安定性の光周波数コムを発生することができる。光コム発生器112が発生する光周波数コムの周波数間隔および生成するパルス列の繰り返し周波数は、このマイクロ波の周波数と等しくなるため、マイクロ波の絶対周波数確度と安定性は重要である。
【0022】
光パルスシンセサイザ12は、図3に示すように、AWG(Arrayed Waveguide Grating)1211と、振幅変調部1212と位相変調部1213とが一つの基板にモノリシックに集積された光回路121の構成となっている。この光回路121は公知である(非特許文献1)。
【0023】
光回路121は、AWG1211と、光導波路群Gと振幅変調部1212と、位相変調部1213と、ミラー1214とからなり、各周波数成分の光を異なる導波路へ分岐することができる。AWG1211は、周波数コム光発生装置11からの周波数コム光FCを入射し、コム光成分(コム光の周波数成分)ごとに位相変調および振幅変調する。そして、位相変調および振幅変調したコム光成分からなる光パルスPを出射することができる。
【0024】
電流制御器122は、振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを入力し、これらのフィードバック制御信号に基づき振幅変調部1212と位相変調部1213とに電流を送出する。
【0025】
光増幅器13は、光パルスシンセサイザ12からの光パルスPを高強度に増幅することができる。
【0026】
光ファイバーモジュール14は、帯域拡大用光ファイバー141と分散補償用光ファイバー142との直列接続からなり、光増幅器13により増幅された光パルスPの周波数帯域を拡大するとともに分散補償することができる。図1では、帯域拡大用光ファイバー141が分散補償用光ファイバー142よりも光増幅器側に位置するように配置してあるが、分散補償用光ファイバー142が帯域拡大用光ファイバー141よりも光増幅器側に位置するように配置してもよい。
【0027】
1540〜1560nmの波長域において、帯域拡大用光ファイバー141の特性が非線形定数10W/km以上、かつ分散値1ps・nm-1・km-1以下であり、分散補償用光ファイバー142の特性が、非線形定数2W/km以下かつ分散値10ps・nm-1・km-1以上とすることで、帯域拡大と分散調整をほぼ独立に制御できるので、良好な圧縮を行うことができる。
【0028】
帯域拡大用光ファイバー141は、非線形定数が大きくかつ分散が小さくなるように設計されている。帯域拡大用光ファイバー141に、高強度に増幅した光パルスPを伝搬させることで、その大きな非線形効果のために、入射した光パルスPよりも拡大した光スペクトルを得ることができる。しかし広い振幅スペクトルを有していても、その位相スペクトルが揃っていない場合には、光パルスを十分に短くできず、また所望のパルス波形も得られない。そのため、分散補償用光ファイバー142が併せて使用され、また、光パルスシンセサイザへのフィードバック制御がなされる。
【0029】
分散補償用光ファイバー142は、帯域拡大用光ファイバー141で生じた分散を補償するために使用される。帯域拡大用光ファイバーの非線形光学効果で生じた分散は一般に大きいため、光パルスシンセサイザ12だけでは十分に分散を補償することが難しい。そこで本発明では、分散補償用光ファイバー142を設けて分散の大部分はこれで補償し、残りの僅かな分散を光パルスシンセサイザ12により補償する。すなわち、分散補償用光ファイバー142を用いることで、光パルスシンセサイザ12による光パルスPの所望形状への整形性が向上する。これにより、圧縮率が高く、かつ雑音やチャープがないパルスの生成が可能となる。
【0030】
光ファイバーモジュール14からの光パルスPは信号光として出射されるとともに、光パルス波形測定装置15と、光スペクトラムアナライザ16とに送出される。
【0031】
光パルス波形測定装置15は、光サンプリングオシロスコープやオートコリレータにより構成できる。光パルス波形測定装置15は、光ファイバーモジュール14からの光パルスPを入射して、光パルスPの波形を測定して、実測波形データDwavを生成する。図4(A)に、光ファイバーモジュール14から出射する光パルスPの目標振幅波形を示す。この振幅波形は、|u(t)|を包絡線とする周波数ω0の搬送波である。また、図4(B)に、光パルス波形測定装置15により測定される光パルスPの目標強度波形を示す。この波形は、|u(t)|2で表される。
【0032】
光スペクトラムアナライザ16は、光ファイバーモジュール14からの光パルスPを入射して、光パルスPのパワースペクトルを測定して、実測スペクトルデータDspcを生成する。図4(C)に光ファイバーモジュール14を伝搬する光パルスPの目標スペクトルを示す。
【0033】
目標データ記憶装置17は、光パルスPの目標波形データD*wavおよび目標スペクトルデータD*spcを記憶している。
【0034】
光パルスシンセサイザ制御部18は、目標波形データD*wavと光パルスPの実測波形データDwavとの差分、および目標スペクトルデータD*spcと実測スペクトルデータDspcとの差分を、繰り返し検出しつつ、光パルスシンセサイザ12にフィードバックするべき振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成する。
【0035】
図5は、光パルス圧縮装置1におけるフィードバック制御系を示す説明図である。以下、図1の光パルス圧縮装置1を参照しつつ、図5のフィードバック制御系の動作を説明する。
【0036】
光パルス圧縮装置1の出射光である光パルスPは、光パルス波形測定装置15および光スペクトラムアナライザ16に入射され、光パルス波形測定装置15により波形測定がなされ(図5のA11)、光スペクトラムアナライザ16によりスペクトル測定がなされる(図5のA12)。
【0037】
制御がなされていない場合、あるいは制御が十分でない場合には、光パルス波形測定装置15により測定される波形には、図6(A)に示すようにペデスタルノイズが現れる(この領域を符号aで示す)。このペデスタルノイズを対数軸で評価することで、当該ペデスタルノイズの抑制を容易に行うことができる。
【0038】
また、制御がなされていない場合、あるいは制御が十分でない場合には、光スペクトラムアナライザ16により測定されるスペクトルには、図6(B)に示すように、ペデスタルノイズに対応した特性(この領域を符号bで示す)が現れる。
【0039】
このペデスタルノイズは、光パルスPが光ファイバーモジュール14を伝搬したときに生じる非線形効果に起因する。
【0040】
目標データ記憶装置17には、図6(C)に示す目標波形に対応する目標波形データD*wav、および図6(D)に示す目標スペクトルに対応する目標スペクトルデータD*spcが記憶されている。
【0041】
波形測定A11により生成した実測波形データDwavと、目標波形データD*wavとの偏差が演算され(A21)、スペクトル測定A12により生成した実測スペクトルデータDspcと、目標波形データD*spcとの偏差が演算さる。
【0042】
そして、振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPが制御量生成プログラムにより作成される(A3)。ここでは、制御量生成プログラムは、遺伝的アルゴリズムにより振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成する。
【0043】
この後、光パルスシンセサイザ12により、光パルスシンセサイザ12に入射された周波数コム光FCの各コム光成分について、振幅変調および位相変調を行う。振幅変調および位相変調が行われた周波数コム光FCは、光パルスPとして、光ファイバーモジュール14に導入され、前述した周波数帯域拡大および分散補償がなされる。
【0044】
遺伝的アルゴリズムでは、実測波形が目的波形に近づき、かつ実測スペクトルが目的スペクトルに近づくように、くり返し、上記した一連の処理(A11,12、A21,A22、A3、A4)の処理が行われる。
【0045】
以上のようにして、光パルスPについて、所望の波形と所望のチャープをもつ短いパルスに圧縮することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 光パルス圧縮装置
8,8′ 光周波数コム発生装置
11 周波数コム光発生装置
12 光パルスシンセサイザ
13 光増幅器
14 光ファイバーモジュール
15 光パルス波形測定装置
16 光スペクトラムアナライザ
17 目標データ記憶装置
18 光パルスシンセサイザ制御部
81 レーザ
82 種コム発生部
83 光パルス生成部
84 位相変調器
85 光増幅器,第2の光増幅器
86 光ファイバー,第2の光ファイバー
87 光スペクトラムアナライザ
88 パルス波形測定器
111 単一周波数レーザ
112 光コム発生器
113 マイクロ波発生器
121 光回路
122 電流制御器
141 帯域拡大用光ファイバー
142 分散補償用光ファイバー
821,840 RF信号発生器
841 第1の光ファイバー
851 第1の光増幅器
1211 AWG
1212 振幅変調部
1213 位相変調部
1214 ミラー
spc 実測スペクトルデータ
wav 実測波形データ
*spc 目標スペクトルデータ
*wav 目標波形データ
FC 周波数コム光
G 光導波路群
P 光パルス
A 振幅フィードバック制御信号
P 位相フィードバック制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数コム光FCを生成する周波数コム光発生装置と、
前記周波数コム光FCを入射し、コム光成分(コム光の周波数成分)ごとに位相変調および振幅変調して、当該位相変調および振幅変調したコム光成分からなる光パルスPを出射する光パルスシンセサイザと、
前記光パルスシンセサイザからの光パルスPを増幅する光増幅器と、
帯域拡大用光ファイバーと分散補償用光ファイバーとからなり(直列接続からなり)、前記光増幅器により増幅された光パルスPを入射し、当該光パルスPの周波数帯域を拡大するとともに、前記光パルスPの分散を補償する光ファイバーモジュールと、
を備え、前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを信号光として出射する光パルス圧縮装置であって、
さらに、
前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを入射して、当該光パルスPの波形を測定して、実測波形データDwavを生成する光パルス波形測定装置と、
前記光ファイバーモジュールからの光パルスPを入射して、当該光パルスPのスペクトルを測定して、実測スペクトルデータDspcを生成する光スペクトラムアナライザと、
光パルスPの目標波形データD*wavおよび目標スペクトルデータD*spcを記憶する目標データ記憶装置と、
前記目標波形データD*wavと前記光パルスPの実測波形データDwavとの差分、および前記目標スペクトルデータD*spcと前記実測スペクトルデータDspcとの差分を、繰り返し検出しつつ、前記光パルスシンセサイザにフィードバックするべき前記振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成し、前記差分がゼロになるように前記光パルスシンセサイザを制御する光パルスシンセサイザ制御部と、
を備えたことを特徴とする光パルス圧縮装置。
【請求項2】
前記光パルスシンセサイザ制御部は、遺伝的アルゴリズムに基づき前記振幅フィードバック制御信号および位相フィードバック制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項3】
1540〜1560nmの波長域において、帯域拡大用光ファイバーの特性が非線形定数10W/km以上かつ分散値1ps・nm-1・km-1以下であり、分散補償用光ファイバーの特性が、非線形定数2W/km以下かつ分散値10ps・nm-1・km-1以上であることを特長とする請求項1または2に記載の光パルス圧縮装置。
【請求項4】
光周波数コム発生装置が、単一周波数レーザと、マイクロ波発生器によりコム間隔の設定が可能な光コム発生器とからなることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の光パルス圧縮装置。
【請求項5】
光パルスシンセサイザに周波数コム光FCを入射し、コム光成分(コム光の周波数成分)ごとに位相変調および振幅変調して、当該位相変調および振幅変調したコム光成分からなる光パルスPを出射するステップと、
前記光パルスシンセサイザからの光パルスPを増幅するステップ、
前記光増幅器により増幅された光パルスPを、帯域拡大用光ファイバーおよび分散補償用光ファイバーからなる光ファイバーモジュールに導入することで、前記光パルスPの周波数帯域を拡大するとともに分散を補償し、
前記帯域を拡大し分散が補償された光パルスPを信号光として出射する光パルス圧縮方法であって、
さらに、
前記帯域が拡大し分散が補償された光パルスPを入射して、当該光パルスPの波形を測定し実測波形データDwavを生成するステップと、
前記帯域が拡大し分散が補償された光パルスPを入射して、当該光パルスPのスペクトルを測定し実測スペクトルデータDspcを生成するステップと、
光パルスPの目標波形データD*wavおよび目標スペクトルデータD*spcを予め記憶するステップと、
前記目標波形データD*wavと前記光パルスPの実測波形データDwavとの差分、および前記目標スペクトルデータD*spcと前記実測スペクトルデータDspcとの差分を、繰り返し検出しつつ、前記光パルスシンセサイザにフィードバックするべき前記振幅フィードバック制御信号SAおよび位相フィードバック制御信号SPを生成し、前記各差分がゼロになるように前記光パルスシンセサイザを制御するステップと、
を備えたことを特徴とする光パルス圧縮方法。
【請求項6】
光パルスシンセサイザを制御するステップでは、遺伝的アルゴリズムに基づき前記振幅フィードバック制御信号および位相フィードバック制御信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の光パルス圧縮方法。
【請求項7】
1540〜1560nmの波長域において、帯域拡大用光ファイバーの特性が非線形定数10W/km以上かつ分散値1ps・nm-1・km-1以下であり、分散補償用光ファイバーの特性が、非線形定数2W/km以下かつ分散値10ps・nm-1・km-1以上であることを特長とする請求項5または6に記載の光パルス圧縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159546(P2012−159546A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17310(P2011−17310)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】