光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シート
【課題】構造が簡易で、かつ良好に組付可能な光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シートを提供する。
【解決手段】帯状体25に1m間隔で固定された第1、第2余長光ファイバ16b,16cのたるみ部分に仮止め32を施した。これにより、組付けなどの作業性の向上を図ることができる。帯状体25及び保護カバー間に潤滑剤を介在した。これにより、重量物の荷重を受けても、たるみ部分は容易に変位し、確実にひずみ計測を行うことができる。
【解決手段】帯状体25に1m間隔で固定された第1、第2余長光ファイバ16b,16cのたるみ部分に仮止め32を施した。これにより、組付けなどの作業性の向上を図ることができる。帯状体25及び保護カバー間に潤滑剤を介在した。これにより、重量物の荷重を受けても、たるみ部分は容易に変位し、確実にひずみ計測を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場、調整池、人工池などに用いる遮水構造物に使用される光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の歪変形の計測などのために光ファイバを用いた光ファイバセンサが用いられている。また、光ファイバにたるみ(長さ余裕)を持たせ被計測体の大きな変形の計測を行えるようにした光ファイバセンサも考えられている。このようなたるみ(長さ余裕)を持った光ファイバを備えた光ファイバセンサの一例として、特許文献1に示す光ファイバセンサがある。
【0003】
特許文献1に示す光ファイバセンサは、地すべり発生予想地点(地山)の地すべり斜面に沿って、固定金具を有する固定杭が所定間隔で打設され、これら杭間に光ファイバが、一部分はコイルばねと並列に、連続して取り付けられている。固定杭間における光ファイバは、コイルばねと長さに余裕をもたせた光ファイバとを並列にしてなる光ファイバ長さ余裕有り部分(コイルばね・光ファイバ並列部)と、長さに余裕がなく、張った状態の光ファイバだけで構成される光ファイバ長さ余裕無し部分(光ファイバのみ部分)と、が交互に連続的に接続されている。また、光ファイバ長さ余裕無し部分が固定金具に固定されている。
光ファイバ長さ余裕有り部分及び光ファイバ長さ余裕無し部分は、伸縮性のある保護パイプで被覆されている。
【0004】
そして、この装置の地すべり斜面への設置は、斜面の掘削により得られたセンサ設置用の溝に、光ファイバ固定金具を杭により固定し、光ファイバ固定金具間の前記溝に、光ファイバの両部分〔光ファイバ長さ余裕有り、無し部分〕を被覆した保護パイプを配置し、光ファイバ長さ余裕無し部分を固定金具に固定して行われる。
【特許文献1】特開2004−163329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した光ファイバセンサは、コイルばね及び保護パイプを備え、かつコイルばねを含む光ファイバを保護パイプで被覆する必要があり、構造が複雑で、かつこれに伴い生産性(組付性)が劣るものになっている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡易で、かつ良好に組付可能な光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、柔軟性を有する帯状体と、前記帯状体の長手方向に沿って延び、かつ幅方向に並んで前記帯状体上に配置される複数本の光ファイバとからなり、前記帯状体が配置される被計測部の変形を計測するための光ファイバセンサであって、前記複数本の光ファイバは、各光ファイバに対応して前記帯状体の長手方向に所定間隔毎に設けられる固定部で固定され、前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバは、該1本の光ファイバに対応する前記固定部間で蛇行した状態で前記帯状体に仮止めされたたるみを有する余長光ファイバとされ、前記複数本の光ファイバを覆うように柔軟性の保護カバーが重ねられ、前記帯状体と前記保護カバーの周囲とを接合して閉空間を形成することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光ファイバセンサにおいて、前記閉空間内に潤滑剤を充填することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の光ファイバセンサにおいて、前記保護カバーに代えて耐圧縮部材を設けることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記帯状体は、遮水シートであることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記余長光ファイバは、複数本、備えられ、該複数本の余長光ファイバのたるみ量は異なっていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記光ファイバの前記帯状体への固定は、ホットメルト接着剤で行うことを特徴とする。
【0008】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記余長光ファイバの前記帯状体への仮止めは、粘着テープにより行うことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記複数本の光ファイバのうち1本の光ファイバは、たるみが無いように前記固定部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項9記載に係る光ファイバセンサ付き遮水シートの発明は、連接されることにより大面積の遮水シートの形成が可能とされる帯状の遮水シート基礎体を幅方向に連接して得られる、前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを有し、前記遮水シートユニットの表面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか一方向に一定間隔毎に接合したことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光ファイバセンサ付き遮水シートにおいて、複数の光ファイバセンサが接合された前記遮水シートユニット上に、更に請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか他方向に所定の間隔毎に接合することを特徴とする。
【0010】
請求項11記載の発明は、前記帯状体が、前記帯状体の複数を幅方向に連接することにより大面積の遮水シートの形成が可能の帯状の遮水シート基礎体とされる請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する遮水シート基礎体側光ファイバセンサの複数個と、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する帯状体側光ファイバセンサの複数個と、を含んで構成される光ファイバセンサであって、
前記複数個の遮水シート基礎体側光ファイバセンサについて、その遮水シート基礎体を幅方向に連接することにより得られ前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを含む遮水シート基礎体側光ファイバセンサユニットの表面に、前記複数個の帯状体側光ファイバセンサを、前記遮水シート基礎体の長手方向に、所定の間隔毎に接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜11記載の発明によれば、所定間隔で固定された余長光ファイバのたるみ部分に仮止めが施されているので、組付けなどの作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサを図面に基づいて説明する。光ファイバセンサ1は、図1〜図4に示すように、廃棄物処分場2に載置された大面積の遮水シート9上に配置して用いられるようになっている。
廃棄物処分場2は、第1、第2廃棄物護岸3,4及び第1、第2中仕切護岸5,6で周囲を囲んで構成される廃棄物海面処分場である。第1、第2廃棄物護岸3,4、第1、第2中仕切護岸5,6は、その延長がそれぞれ約280m、240m、290m、180mとされている。
大面積の遮水シート9は、長方形(本実施の形態では40m×2m)の遮水シート9(以下、遮水シート基礎体9aという。)の複数枚(本実施の形態では20枚)を幅方向に接合して得られる遮水シートユニット9b(40m×40m)を複数枚、接合することにより得られている。
【0013】
本実施の形態では、便宜上、遮水シートユニット9bは、遮水シート基礎体9aが第1廃棄物護岸3の護岸法線ngに直交するように配置されているとして説明する。このように配置された遮水シートユニット9bの上に、多数個の光ファイバセンサ1が配置されている。
光ファイバセンサ1の複数個は、遮水シート基礎体9aと平行で、かつ遮水シート基礎体9aの幅方向(遮水シート基礎体9aと直交する方向)に一定間隔を空けて配置されている。このように配置された光ファイバセンサ1を便宜上、遮水シート基礎体平行光ファイバセンサ1hという。また、光ファイバセンサ1の複数個は、遮水シート基礎体9aと直交し、かつ遮水シート基礎体9aの長さ方向に一定間隔を空けて配置されている。このように配置された光ファイバセンサ1を便宜上、遮水シート基礎体直交光ファイバセンサ1tという。
光ファイバセンサ1に設けられている光ファイバ16は測定器8に光ファイバケーブル8aを介して接続されている。測定器8は、光ファイバ16のひずみを計測する。測定器8は、光ファイバ16に発生したひずみをブリルアン散乱光によって計測するいわゆるBOTDR方式(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer:光パルスの散乱光の反射時間を利用したひずみ分布計測方法)の測定器を用いている。
【0014】
光ファイバセンサ1は、図4〜図6に示すように、柔軟性を有し光ファイバ16を載置する帯状体25と、光ファイバ16を間にして帯状体25に重ねられる柔軟性を有する保護カバー41と、を備えている。帯状体25は遮水シート9に接着される。なお、遮水シート基礎体と直交する光ファイバセンサ1h及び遮水シート基礎体に平行な光ファイバセンサ1tの交叉部分においては、上側に相当する光ファイバセンサ1の帯状体25は、遮水シート9への接着は行っていない。
保護カバー41の周囲は帯状体25に接合されて、保護カバー41及び帯状体25により閉空間42が形成されている。この閉空間42には、潤滑剤19が充填されている。潤滑剤19としては、グリース、シリコンオイルなどが用いられる。
帯状体25は、軟質塩化ビニル(PVC)製であり、厚さは1mmとされている。
【0015】
帯状体25上には、図6に示すように、長さ(配置形状)の異なる3本の光ファイバ16が長手方向に沿って略平行に配置されている。光ファイバ16は、その伸びが5%までは許容されるようになっている。光ファイバ16は、外周部にポリエステルエラストマー樹脂製の被覆材を備えて構成されており、その被覆材の外径寸法は、0.9mmとされている。
帯状体25には、1m間隔で固定部30が設けられており、3本の光ファイバ16は、その固定部30に固定されている。帯状体25上の3種類の光ファイバ16は、たるみ(余長)の無い余長無し光ファイバ16aと、それぞれ、たるみを有しそのたるみ寸法が異なる大きさの第1、第2余長光ファイバ16b,16cと、からなっている。
【0016】
余長無し光ファイバ16aは、帯状体25の固定部30に接続される部分(以下、固定箇所という。)31,31間の長さが1000mm〔帯状体25の固定部30,30間距離に対して100%〕とされている。第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、帯状体25上に略正弦波状でかつその振幅値が異なるように配置されている。第1余長光ファイバ16bの固定箇所31,31間の長さは、1050mm(105%)とされている。第2余長光ファイバ16cの固定箇所31,31間の長さは、1100mm(110%)とされている。
第1、第2余長光ファイバ16b,16cがなす正弦波の振幅中心部が、第1、第2余長光ファイバ16b,16cの固定箇所31とされており、第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、固定箇所31,31間に4つの波長を持つ正弦波(波長が250mm)を形成するように配置されている。
【0017】
第1余長光ファイバ16bは、その固定箇所31を結んで得られる直線Tとの交叉部分は、仮止め32が施されている。この仮止め32を施すことにより、たるみの部分がばたついたり、よれたりしないようにし、移送、組付け、敷設などの諸作業に際し、たるみの部分が作業の妨げにならないようにすると共に、計測中に際しても光ファイバ同士がからまることのないようにしている。また、仮止め32は、被計測体の変形の計測に際しては、容易に帯状体25から離脱し得る大きさの固定力を持つようにされており、本装置の目的とする被計測体の変形の計測を良好に果たし得るようにされている。
【0018】
仮止め32は、固定箇所31間に7点、設けられており、仮止め32,32間の長さは125mmとされている。
第2余長光ファイバ16cについても、第1余長光ファイバ16bの場合と同様に、仮止め32が施されている。
上述したように、本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cの固定及び仮止め32は、正弦波の山谷の頂点でなく、振幅の基準線上に設けている。
【0019】
光ファイバ16の帯状体25の固定部30に対する固定は、光ファイバ16の被覆材と同材質であるポリエステル系の材料からなるホットメルト〔例えば、バイロンGM400(東洋紡製)〕により行う。
また、光ファイバ16のホットメルトによる固定部分の両脇部分は、少量のエポキシ樹脂で固められている。これにより、光ファイバ16は、引き抜けが防止され、より強固に固定される。
仮止め32は、セロハンテープ、接着剤が塗布されている紙テープなどにより行われる。
なお、上記の実施の形態では、廃棄物海面処分場における場合を例にしたが、陸上に築造される廃棄物処分場でも同様な形態で実施できる。また、上記の実施の形態では、廃棄物海面処分場の規模についても一例を示したが、本発明の実施に当たっては、規模の大小を問わない。
【0020】
上述したように構成される光ファイバセンサ1の作製方法を説明する。
ステップS1:
帯状体25を複数枚、さらに、帯状体25毎に3本の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)を用意する。第1、第2余長光ファイバ16b,16cには、所定の余長が確保されるように固定箇所31となる部分に、マジックペン等でマーキングする。
【0021】
ステップS2:
各帯状体25上に、3本の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)を次のようにして固定し、また仮止め32を施す。
まず、帯状体25の固定部30に熱風をあてて表面を溶融し、その後、帯状体25の固定部30に、ホットメルトを、約5mm幅×20mm長で、厚さ1mm、先塗りとして塗布する。ホットメルトの塗布は、ホットメルトガンを用いて行う。このホットメルトの塗布は迅速に行うことが大切である。また、ホットメルトがダマにならないように注意が必要である。
塗布後、迅速に、さらに、追加ホットメルトを厚さ1mm後塗りする。前記帯状体25の固定部30の溶融は、例えばハンドライスター(200℃)を用いて行う。
上記処理を行った後、ホットメルトの両脇を少量のエポキシ樹脂で固め、光ファイバ16をより強固に保持し、光ファイバ16の抜け止めを図るようにしている。
【0022】
第1、第2余長光ファイバ16b,16cについて、幅90mm内で蛇行する(正弦波状になる)ように、セロハンテープ又は接着剤を塗布した紙テープを用いて仮止め32を施す。この仮止め32は、帯状体25が引っ張られた際に容易に外れるように粘着力が弱いもので行うのが良い。
本実施の形態では、1mの固定部30,30間に7箇所で仮止め32を施している。しかし、8箇所で仮止めするようにしても良い。この場合、光ファイバ16を山なりにさせてセンター位置を決めて、その位置に仮止めし、半分の長さになった2箇所の部分をそれぞれ山なりにさせてセンター位置を決め、同様な作業を繰返して1m長さの部分に8箇所の仮止めを施す。
さらに、保護カバー41の帯状体25への接合を、閉空間42に潤滑剤19を介在させて行って光ファイバセンサ1を得る。
【0023】
上述した光ファイバセンサ1は、溶着台船上あるいは陸上溶着ヤードで遮水シート9に載置され、図3に示すように廃棄物処分場に配置される。そして、光ファイバセンサ1に含まれる光ファイバ16に測定器8が接続され、被計測体の変形の測定体制が整えられる。
【0024】
前記余長無し光ファイバ16aは、帯状体25ひいては遮水シート9が変形し(ひずみを発生し)、その変形が5%以下の場合、これを検出し、変形の大きさが5%を超える場合には破断する。
同様に、第1余長光ファイバ16bは、帯状体25(遮水シート9)の変形が5〜10%の場合、これを検出し、変形の大きさが10%を超える場合には破断する。また、第2余長光ファイバ16cは、帯状体25(遮水シート9)の変形が10〜15%の場合、これを検出し、変形の大きさが15%を超える場合には破断する。
【0025】
測定器8は、光ファイバ16が破断するまでの間は、遮水シート9ひいては帯状体25の変形があった場合、そのひずみの位置及び大きさを検出する。
また、ひずみの大きさが5%を超えた場合には、余長無し光ファイバ16aの破断に伴い、余長無し光ファイバ16aを用いた計測は行えなくなるが、第1、第2余長光ファイバ16b,16cを用いた計測が継続される。ひずみの大きさが10%を超えた場合には、第1余長光ファイバ16bの破断に伴い、第1余長光ファイバ16bを用いた計測は行えなくなるが、第2余長光ファイバ16cを用いた計測が継続される。
【0026】
上述した余長光ファイバ16を採用したことにより、大きなひずみに対しても適切にそのひずみの発生を検出できる。すなわち、余長無し光ファイバ16aのみを用いた場合、検出できるひずみの大きさは5%までに制約されるが、余長光ファイバ16bと16cにより連続的に15%までのひずみが適切に検出できる。
【0027】
本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cについて、たるみの部分を仮止めしているので、運搬や組付に際し、たるみの部分が、いたずらに変位することがなくなり、作業の支障を招くことがない。
本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、帯状体25と保護カバー41の間に介在され、両者間には潤滑剤19が充填されており、第1、第2余長光ファイバ16b,16cのたるみ部分が、動き易くなっている。このため、第1、第2余長光ファイバ16b,16cが帯状体25あるいは遮水シート9の変形により破断する場合にも、前記たるみの部分は十分伸びきって破断することになり、この分、破断時の変形の大きさを精度高く把握することができる。
【0028】
上記実施の形態では、ホットメルトガンを用いてホットメルトを塗布する場合を例にしたが、これに代えてホットメルト塗布マシーンを用いるようにしてもよい。
上記実施の形態では、ホットメルトを用いて光ファイバ16を固定する場合を例にしたが、これに代えて熱溶着により光ファイバ16を固定するようにしてもよい。
【0029】
上記実施の形態では、帯状体25に、長さの異なる3種類の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1,第2余長光ファイバ16b,16c)を配置した場合を例にしたが、本発明はこれに限らず、第1,第2余長光ファイバ16b,16cのいずれか一方及び余長無し光ファイバ16aを設けるようにしてもよい。また、余長無し光ファイバ16aを廃止し、第1,第2余長光ファイバ16b,16cを設けるようにしてもよい。
上記実施の形態では、余長光ファイバの余長が5%と10%の場合を示したが、被計測体に発生するひずみの大きさに応じて余長光ファイバの余長を任意に設定することができる。
上記実施の形態では、3本の光ファイバからなる例を示したが、光ファイバの本数は、被計測体の受けるひずみの大きさと測定するひずみの大きさに応じて、4本以上であってもよい。これにより上記実施の形態よりも大きいひずみを計測することが可能になる。
【0030】
上記実施の形態では、帯状体25の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)の固定部30は、帯状体25を幅方向(図6左右方向)に見て同等の位置に設けられているが、固定部30の配置は、これに限定されるものではない。例えば、図6において、第1余長光ファイバ16bの固定部30を、余長無し光ファイバ16aの固定部30より、図6上方にずらして設定してもよい。この場合、第1余長光ファイバ16bの固定部30,30間の距離は、余長無し光ファイバ16aの固定部30,30間の距離と同等に設定する。
【0031】
上記実施の形態において、遮水シート基礎体に平行な光ファイバセンサ1h、遮水シート基礎体に直交する光ファイバセンサ1t及び遮水シートユニット9bから光ファイバセンサ付き遮水シート9a(請求項10の光ファイバセンサ付き遮水シート)が構成されている。
なお、光ファイバセンサ付き遮水シート9aにおいて、遮水シート基礎体平行光ファイバセンサ1h及び遮水シート基礎体直交光ファイバセンサ1tのうちいずれか一方を廃止して、光ファイバセンサ付き遮水シート(請求項9の光ファイバセンサ付き遮水シート)を構成してもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、光ファイバ16を帯状体25に載置する場合を例にしたが、帯状体25に代えて、被計測体である遮水シート基礎体9aを採用し、この遮水シート基礎体9aに光ファイバ16を直接載置し、かつ保護カバー41及び潤滑剤19を含めて遮水シート基礎体側光ファイバセンサを構成し、この遮水シート基礎体側光ファイバセンサの表面に、前記実施の形態の複数本の光ファイバセンサ(ここでは、便宜上、帯状体側光ファイバセンサという。)を、前記遮水シート基礎体9aの長手方向に、所定の間隔毎に接合するようにして光ファイバセンサ(請求項11の光ファイバセンサ)を構成してもよい。
【0033】
上記実施の形態では、閉空間42内に潤滑剤19を充填した場合を例にしたが、光ファイバセンサ1に大きな荷重がかからない場合には、潤滑剤19の使用を廃止してもよい。
また、上記実施の形態で用いた柔軟性の保護カバー41に代えて硬化プラスチック又はスチール等の耐圧縮部材を用いるようにしてもよい。この場合は、光ファイバセンサ1上に大きな荷重がかかる場合にも、光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1,第2余長光ファイバ16b,16c)は、耐圧縮部材に守られて、前記荷重を受けて破損するようなことがなく、かつスムーズに移動して良好な計測を行うことができる。
【0034】
また、上記実施の形態において、光ファイバ16を載置する帯状体25自体に遮水シートを用いて、上記実施の形態の遮水シート9を廃止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサが用いられる廃棄物処分場及び光ファイバセンサに接続される測定器を模式的に示す一部断面の図である。
【図2】図1の廃棄物処分場を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサの配置状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図3の光ファイバセンサを示す断面図である。
【図5】図3の光ファイバセンサ及び遮水シート基礎体を示す平面図である。
【図6】図5の光ファイバセンサの詳細を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…光ファイバセンサ、9…遮水シート、16…光ファイバ、16b,16c…第1,第2余長光ファイバ、19…潤滑剤、25…帯状体、32…仮止め、41…保護カバー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場、調整池、人工池などに用いる遮水構造物に使用される光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の歪変形の計測などのために光ファイバを用いた光ファイバセンサが用いられている。また、光ファイバにたるみ(長さ余裕)を持たせ被計測体の大きな変形の計測を行えるようにした光ファイバセンサも考えられている。このようなたるみ(長さ余裕)を持った光ファイバを備えた光ファイバセンサの一例として、特許文献1に示す光ファイバセンサがある。
【0003】
特許文献1に示す光ファイバセンサは、地すべり発生予想地点(地山)の地すべり斜面に沿って、固定金具を有する固定杭が所定間隔で打設され、これら杭間に光ファイバが、一部分はコイルばねと並列に、連続して取り付けられている。固定杭間における光ファイバは、コイルばねと長さに余裕をもたせた光ファイバとを並列にしてなる光ファイバ長さ余裕有り部分(コイルばね・光ファイバ並列部)と、長さに余裕がなく、張った状態の光ファイバだけで構成される光ファイバ長さ余裕無し部分(光ファイバのみ部分)と、が交互に連続的に接続されている。また、光ファイバ長さ余裕無し部分が固定金具に固定されている。
光ファイバ長さ余裕有り部分及び光ファイバ長さ余裕無し部分は、伸縮性のある保護パイプで被覆されている。
【0004】
そして、この装置の地すべり斜面への設置は、斜面の掘削により得られたセンサ設置用の溝に、光ファイバ固定金具を杭により固定し、光ファイバ固定金具間の前記溝に、光ファイバの両部分〔光ファイバ長さ余裕有り、無し部分〕を被覆した保護パイプを配置し、光ファイバ長さ余裕無し部分を固定金具に固定して行われる。
【特許文献1】特開2004−163329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した光ファイバセンサは、コイルばね及び保護パイプを備え、かつコイルばねを含む光ファイバを保護パイプで被覆する必要があり、構造が複雑で、かつこれに伴い生産性(組付性)が劣るものになっている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡易で、かつ良好に組付可能な光ファイバセンサ及び光ファイバセンサ付き遮水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、柔軟性を有する帯状体と、前記帯状体の長手方向に沿って延び、かつ幅方向に並んで前記帯状体上に配置される複数本の光ファイバとからなり、前記帯状体が配置される被計測部の変形を計測するための光ファイバセンサであって、前記複数本の光ファイバは、各光ファイバに対応して前記帯状体の長手方向に所定間隔毎に設けられる固定部で固定され、前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバは、該1本の光ファイバに対応する前記固定部間で蛇行した状態で前記帯状体に仮止めされたたるみを有する余長光ファイバとされ、前記複数本の光ファイバを覆うように柔軟性の保護カバーが重ねられ、前記帯状体と前記保護カバーの周囲とを接合して閉空間を形成することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光ファイバセンサにおいて、前記閉空間内に潤滑剤を充填することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の光ファイバセンサにおいて、前記保護カバーに代えて耐圧縮部材を設けることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記帯状体は、遮水シートであることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記余長光ファイバは、複数本、備えられ、該複数本の余長光ファイバのたるみ量は異なっていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記光ファイバの前記帯状体への固定は、ホットメルト接着剤で行うことを特徴とする。
【0008】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記余長光ファイバの前記帯状体への仮止めは、粘着テープにより行うことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記複数本の光ファイバのうち1本の光ファイバは、たるみが無いように前記固定部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項9記載に係る光ファイバセンサ付き遮水シートの発明は、連接されることにより大面積の遮水シートの形成が可能とされる帯状の遮水シート基礎体を幅方向に連接して得られる、前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを有し、前記遮水シートユニットの表面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか一方向に一定間隔毎に接合したことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光ファイバセンサ付き遮水シートにおいて、複数の光ファイバセンサが接合された前記遮水シートユニット上に、更に請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか他方向に所定の間隔毎に接合することを特徴とする。
【0010】
請求項11記載の発明は、前記帯状体が、前記帯状体の複数を幅方向に連接することにより大面積の遮水シートの形成が可能の帯状の遮水シート基礎体とされる請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する遮水シート基礎体側光ファイバセンサの複数個と、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する帯状体側光ファイバセンサの複数個と、を含んで構成される光ファイバセンサであって、
前記複数個の遮水シート基礎体側光ファイバセンサについて、その遮水シート基礎体を幅方向に連接することにより得られ前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを含む遮水シート基礎体側光ファイバセンサユニットの表面に、前記複数個の帯状体側光ファイバセンサを、前記遮水シート基礎体の長手方向に、所定の間隔毎に接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜11記載の発明によれば、所定間隔で固定された余長光ファイバのたるみ部分に仮止めが施されているので、組付けなどの作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサを図面に基づいて説明する。光ファイバセンサ1は、図1〜図4に示すように、廃棄物処分場2に載置された大面積の遮水シート9上に配置して用いられるようになっている。
廃棄物処分場2は、第1、第2廃棄物護岸3,4及び第1、第2中仕切護岸5,6で周囲を囲んで構成される廃棄物海面処分場である。第1、第2廃棄物護岸3,4、第1、第2中仕切護岸5,6は、その延長がそれぞれ約280m、240m、290m、180mとされている。
大面積の遮水シート9は、長方形(本実施の形態では40m×2m)の遮水シート9(以下、遮水シート基礎体9aという。)の複数枚(本実施の形態では20枚)を幅方向に接合して得られる遮水シートユニット9b(40m×40m)を複数枚、接合することにより得られている。
【0013】
本実施の形態では、便宜上、遮水シートユニット9bは、遮水シート基礎体9aが第1廃棄物護岸3の護岸法線ngに直交するように配置されているとして説明する。このように配置された遮水シートユニット9bの上に、多数個の光ファイバセンサ1が配置されている。
光ファイバセンサ1の複数個は、遮水シート基礎体9aと平行で、かつ遮水シート基礎体9aの幅方向(遮水シート基礎体9aと直交する方向)に一定間隔を空けて配置されている。このように配置された光ファイバセンサ1を便宜上、遮水シート基礎体平行光ファイバセンサ1hという。また、光ファイバセンサ1の複数個は、遮水シート基礎体9aと直交し、かつ遮水シート基礎体9aの長さ方向に一定間隔を空けて配置されている。このように配置された光ファイバセンサ1を便宜上、遮水シート基礎体直交光ファイバセンサ1tという。
光ファイバセンサ1に設けられている光ファイバ16は測定器8に光ファイバケーブル8aを介して接続されている。測定器8は、光ファイバ16のひずみを計測する。測定器8は、光ファイバ16に発生したひずみをブリルアン散乱光によって計測するいわゆるBOTDR方式(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer:光パルスの散乱光の反射時間を利用したひずみ分布計測方法)の測定器を用いている。
【0014】
光ファイバセンサ1は、図4〜図6に示すように、柔軟性を有し光ファイバ16を載置する帯状体25と、光ファイバ16を間にして帯状体25に重ねられる柔軟性を有する保護カバー41と、を備えている。帯状体25は遮水シート9に接着される。なお、遮水シート基礎体と直交する光ファイバセンサ1h及び遮水シート基礎体に平行な光ファイバセンサ1tの交叉部分においては、上側に相当する光ファイバセンサ1の帯状体25は、遮水シート9への接着は行っていない。
保護カバー41の周囲は帯状体25に接合されて、保護カバー41及び帯状体25により閉空間42が形成されている。この閉空間42には、潤滑剤19が充填されている。潤滑剤19としては、グリース、シリコンオイルなどが用いられる。
帯状体25は、軟質塩化ビニル(PVC)製であり、厚さは1mmとされている。
【0015】
帯状体25上には、図6に示すように、長さ(配置形状)の異なる3本の光ファイバ16が長手方向に沿って略平行に配置されている。光ファイバ16は、その伸びが5%までは許容されるようになっている。光ファイバ16は、外周部にポリエステルエラストマー樹脂製の被覆材を備えて構成されており、その被覆材の外径寸法は、0.9mmとされている。
帯状体25には、1m間隔で固定部30が設けられており、3本の光ファイバ16は、その固定部30に固定されている。帯状体25上の3種類の光ファイバ16は、たるみ(余長)の無い余長無し光ファイバ16aと、それぞれ、たるみを有しそのたるみ寸法が異なる大きさの第1、第2余長光ファイバ16b,16cと、からなっている。
【0016】
余長無し光ファイバ16aは、帯状体25の固定部30に接続される部分(以下、固定箇所という。)31,31間の長さが1000mm〔帯状体25の固定部30,30間距離に対して100%〕とされている。第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、帯状体25上に略正弦波状でかつその振幅値が異なるように配置されている。第1余長光ファイバ16bの固定箇所31,31間の長さは、1050mm(105%)とされている。第2余長光ファイバ16cの固定箇所31,31間の長さは、1100mm(110%)とされている。
第1、第2余長光ファイバ16b,16cがなす正弦波の振幅中心部が、第1、第2余長光ファイバ16b,16cの固定箇所31とされており、第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、固定箇所31,31間に4つの波長を持つ正弦波(波長が250mm)を形成するように配置されている。
【0017】
第1余長光ファイバ16bは、その固定箇所31を結んで得られる直線Tとの交叉部分は、仮止め32が施されている。この仮止め32を施すことにより、たるみの部分がばたついたり、よれたりしないようにし、移送、組付け、敷設などの諸作業に際し、たるみの部分が作業の妨げにならないようにすると共に、計測中に際しても光ファイバ同士がからまることのないようにしている。また、仮止め32は、被計測体の変形の計測に際しては、容易に帯状体25から離脱し得る大きさの固定力を持つようにされており、本装置の目的とする被計測体の変形の計測を良好に果たし得るようにされている。
【0018】
仮止め32は、固定箇所31間に7点、設けられており、仮止め32,32間の長さは125mmとされている。
第2余長光ファイバ16cについても、第1余長光ファイバ16bの場合と同様に、仮止め32が施されている。
上述したように、本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cの固定及び仮止め32は、正弦波の山谷の頂点でなく、振幅の基準線上に設けている。
【0019】
光ファイバ16の帯状体25の固定部30に対する固定は、光ファイバ16の被覆材と同材質であるポリエステル系の材料からなるホットメルト〔例えば、バイロンGM400(東洋紡製)〕により行う。
また、光ファイバ16のホットメルトによる固定部分の両脇部分は、少量のエポキシ樹脂で固められている。これにより、光ファイバ16は、引き抜けが防止され、より強固に固定される。
仮止め32は、セロハンテープ、接着剤が塗布されている紙テープなどにより行われる。
なお、上記の実施の形態では、廃棄物海面処分場における場合を例にしたが、陸上に築造される廃棄物処分場でも同様な形態で実施できる。また、上記の実施の形態では、廃棄物海面処分場の規模についても一例を示したが、本発明の実施に当たっては、規模の大小を問わない。
【0020】
上述したように構成される光ファイバセンサ1の作製方法を説明する。
ステップS1:
帯状体25を複数枚、さらに、帯状体25毎に3本の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)を用意する。第1、第2余長光ファイバ16b,16cには、所定の余長が確保されるように固定箇所31となる部分に、マジックペン等でマーキングする。
【0021】
ステップS2:
各帯状体25上に、3本の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)を次のようにして固定し、また仮止め32を施す。
まず、帯状体25の固定部30に熱風をあてて表面を溶融し、その後、帯状体25の固定部30に、ホットメルトを、約5mm幅×20mm長で、厚さ1mm、先塗りとして塗布する。ホットメルトの塗布は、ホットメルトガンを用いて行う。このホットメルトの塗布は迅速に行うことが大切である。また、ホットメルトがダマにならないように注意が必要である。
塗布後、迅速に、さらに、追加ホットメルトを厚さ1mm後塗りする。前記帯状体25の固定部30の溶融は、例えばハンドライスター(200℃)を用いて行う。
上記処理を行った後、ホットメルトの両脇を少量のエポキシ樹脂で固め、光ファイバ16をより強固に保持し、光ファイバ16の抜け止めを図るようにしている。
【0022】
第1、第2余長光ファイバ16b,16cについて、幅90mm内で蛇行する(正弦波状になる)ように、セロハンテープ又は接着剤を塗布した紙テープを用いて仮止め32を施す。この仮止め32は、帯状体25が引っ張られた際に容易に外れるように粘着力が弱いもので行うのが良い。
本実施の形態では、1mの固定部30,30間に7箇所で仮止め32を施している。しかし、8箇所で仮止めするようにしても良い。この場合、光ファイバ16を山なりにさせてセンター位置を決めて、その位置に仮止めし、半分の長さになった2箇所の部分をそれぞれ山なりにさせてセンター位置を決め、同様な作業を繰返して1m長さの部分に8箇所の仮止めを施す。
さらに、保護カバー41の帯状体25への接合を、閉空間42に潤滑剤19を介在させて行って光ファイバセンサ1を得る。
【0023】
上述した光ファイバセンサ1は、溶着台船上あるいは陸上溶着ヤードで遮水シート9に載置され、図3に示すように廃棄物処分場に配置される。そして、光ファイバセンサ1に含まれる光ファイバ16に測定器8が接続され、被計測体の変形の測定体制が整えられる。
【0024】
前記余長無し光ファイバ16aは、帯状体25ひいては遮水シート9が変形し(ひずみを発生し)、その変形が5%以下の場合、これを検出し、変形の大きさが5%を超える場合には破断する。
同様に、第1余長光ファイバ16bは、帯状体25(遮水シート9)の変形が5〜10%の場合、これを検出し、変形の大きさが10%を超える場合には破断する。また、第2余長光ファイバ16cは、帯状体25(遮水シート9)の変形が10〜15%の場合、これを検出し、変形の大きさが15%を超える場合には破断する。
【0025】
測定器8は、光ファイバ16が破断するまでの間は、遮水シート9ひいては帯状体25の変形があった場合、そのひずみの位置及び大きさを検出する。
また、ひずみの大きさが5%を超えた場合には、余長無し光ファイバ16aの破断に伴い、余長無し光ファイバ16aを用いた計測は行えなくなるが、第1、第2余長光ファイバ16b,16cを用いた計測が継続される。ひずみの大きさが10%を超えた場合には、第1余長光ファイバ16bの破断に伴い、第1余長光ファイバ16bを用いた計測は行えなくなるが、第2余長光ファイバ16cを用いた計測が継続される。
【0026】
上述した余長光ファイバ16を採用したことにより、大きなひずみに対しても適切にそのひずみの発生を検出できる。すなわち、余長無し光ファイバ16aのみを用いた場合、検出できるひずみの大きさは5%までに制約されるが、余長光ファイバ16bと16cにより連続的に15%までのひずみが適切に検出できる。
【0027】
本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cについて、たるみの部分を仮止めしているので、運搬や組付に際し、たるみの部分が、いたずらに変位することがなくなり、作業の支障を招くことがない。
本実施の形態では、第1、第2余長光ファイバ16b,16cは、帯状体25と保護カバー41の間に介在され、両者間には潤滑剤19が充填されており、第1、第2余長光ファイバ16b,16cのたるみ部分が、動き易くなっている。このため、第1、第2余長光ファイバ16b,16cが帯状体25あるいは遮水シート9の変形により破断する場合にも、前記たるみの部分は十分伸びきって破断することになり、この分、破断時の変形の大きさを精度高く把握することができる。
【0028】
上記実施の形態では、ホットメルトガンを用いてホットメルトを塗布する場合を例にしたが、これに代えてホットメルト塗布マシーンを用いるようにしてもよい。
上記実施の形態では、ホットメルトを用いて光ファイバ16を固定する場合を例にしたが、これに代えて熱溶着により光ファイバ16を固定するようにしてもよい。
【0029】
上記実施の形態では、帯状体25に、長さの異なる3種類の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1,第2余長光ファイバ16b,16c)を配置した場合を例にしたが、本発明はこれに限らず、第1,第2余長光ファイバ16b,16cのいずれか一方及び余長無し光ファイバ16aを設けるようにしてもよい。また、余長無し光ファイバ16aを廃止し、第1,第2余長光ファイバ16b,16cを設けるようにしてもよい。
上記実施の形態では、余長光ファイバの余長が5%と10%の場合を示したが、被計測体に発生するひずみの大きさに応じて余長光ファイバの余長を任意に設定することができる。
上記実施の形態では、3本の光ファイバからなる例を示したが、光ファイバの本数は、被計測体の受けるひずみの大きさと測定するひずみの大きさに応じて、4本以上であってもよい。これにより上記実施の形態よりも大きいひずみを計測することが可能になる。
【0030】
上記実施の形態では、帯状体25の光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1、第2余長光ファイバ16b,16c)の固定部30は、帯状体25を幅方向(図6左右方向)に見て同等の位置に設けられているが、固定部30の配置は、これに限定されるものではない。例えば、図6において、第1余長光ファイバ16bの固定部30を、余長無し光ファイバ16aの固定部30より、図6上方にずらして設定してもよい。この場合、第1余長光ファイバ16bの固定部30,30間の距離は、余長無し光ファイバ16aの固定部30,30間の距離と同等に設定する。
【0031】
上記実施の形態において、遮水シート基礎体に平行な光ファイバセンサ1h、遮水シート基礎体に直交する光ファイバセンサ1t及び遮水シートユニット9bから光ファイバセンサ付き遮水シート9a(請求項10の光ファイバセンサ付き遮水シート)が構成されている。
なお、光ファイバセンサ付き遮水シート9aにおいて、遮水シート基礎体平行光ファイバセンサ1h及び遮水シート基礎体直交光ファイバセンサ1tのうちいずれか一方を廃止して、光ファイバセンサ付き遮水シート(請求項9の光ファイバセンサ付き遮水シート)を構成してもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、光ファイバ16を帯状体25に載置する場合を例にしたが、帯状体25に代えて、被計測体である遮水シート基礎体9aを採用し、この遮水シート基礎体9aに光ファイバ16を直接載置し、かつ保護カバー41及び潤滑剤19を含めて遮水シート基礎体側光ファイバセンサを構成し、この遮水シート基礎体側光ファイバセンサの表面に、前記実施の形態の複数本の光ファイバセンサ(ここでは、便宜上、帯状体側光ファイバセンサという。)を、前記遮水シート基礎体9aの長手方向に、所定の間隔毎に接合するようにして光ファイバセンサ(請求項11の光ファイバセンサ)を構成してもよい。
【0033】
上記実施の形態では、閉空間42内に潤滑剤19を充填した場合を例にしたが、光ファイバセンサ1に大きな荷重がかからない場合には、潤滑剤19の使用を廃止してもよい。
また、上記実施の形態で用いた柔軟性の保護カバー41に代えて硬化プラスチック又はスチール等の耐圧縮部材を用いるようにしてもよい。この場合は、光ファイバセンサ1上に大きな荷重がかかる場合にも、光ファイバ16(余長無し光ファイバ16a、第1,第2余長光ファイバ16b,16c)は、耐圧縮部材に守られて、前記荷重を受けて破損するようなことがなく、かつスムーズに移動して良好な計測を行うことができる。
【0034】
また、上記実施の形態において、光ファイバ16を載置する帯状体25自体に遮水シートを用いて、上記実施の形態の遮水シート9を廃止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサが用いられる廃棄物処分場及び光ファイバセンサに接続される測定器を模式的に示す一部断面の図である。
【図2】図1の廃棄物処分場を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る光ファイバセンサの配置状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図3の光ファイバセンサを示す断面図である。
【図5】図3の光ファイバセンサ及び遮水シート基礎体を示す平面図である。
【図6】図5の光ファイバセンサの詳細を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…光ファイバセンサ、9…遮水シート、16…光ファイバ、16b,16c…第1,第2余長光ファイバ、19…潤滑剤、25…帯状体、32…仮止め、41…保護カバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する帯状体と、前記帯状体の長手方向に沿って延び、かつ幅方向に並んで前記帯状体上に配置される複数本の光ファイバとからなり、前記帯状体が配置される被計測部の変形を計測するための光ファイバセンサであって、
前記複数本の光ファイバは、各光ファイバに対応して前記帯状体の長手方向に所定間隔毎に設けられる固定部で固定され、
前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバは、該1本の光ファイバに対応する前記固定部間で蛇行した状態で前記帯状体に仮止めされたたるみを有する余長光ファイバとされ、
前記複数本の光ファイバを覆うように柔軟性の保護カバーが重ねられ、
前記帯状体と前記保護カバーの周囲とを接合して閉空間を形成することを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記閉空間内に潤滑剤を充填することを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記保護カバーに代えて耐圧縮部材を設けることを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記帯状体は、遮水シートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記余長光ファイバは、複数本、備えられ、該複数本の余長光ファイバのたるみ量は異なっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記光ファイバの前記帯状体への固定は、ホットメルト接着剤で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
前記余長光ファイバの前記帯状体への仮止めは、粘着テープにより行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項8】
前記複数本の光ファイバのうち1本の光ファイバは、たるみが無いように前記固定部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項9】
連接されることにより大面積の遮水シートの形成が可能とされる帯状の遮水シート基礎体を幅方向に連接して得られる、前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを有し、
前記遮水シートユニットの表面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか一方向に一定間隔毎に接合したことを特徴とする光ファイバセンサ付き遮水シート。
【請求項10】
請求項9記載の光ファイバセンサ付き遮水シートにおいて、複数の光ファイバセンサが接合された前記遮水シートユニット上に、更に請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか他方向に所定の間隔毎に接合することを特徴とする光ファイバセンサ付き遮水シート。
【請求項11】
前記帯状体が、前記帯状体の複数を幅方向に連接することにより大面積の遮水シートの形成が可能の帯状の遮水シート基礎体とされる請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する遮水シート基礎体側光ファイバセンサの複数個と、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する帯状体側光ファイバセンサの複数個と、を含んで構成される光ファイバセンサであって、
前記複数個の遮水シート基礎体側光ファイバセンサについて、その遮水シート基礎体を幅方向に連接することにより得られ前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを含む遮水シート基礎体側光ファイバセンサユニットの表面に、前記複数個の帯状体側光ファイバセンサを、前記遮水シート基礎体の長手方向に、所定の間隔毎に接合したことを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項1】
柔軟性を有する帯状体と、前記帯状体の長手方向に沿って延び、かつ幅方向に並んで前記帯状体上に配置される複数本の光ファイバとからなり、前記帯状体が配置される被計測部の変形を計測するための光ファイバセンサであって、
前記複数本の光ファイバは、各光ファイバに対応して前記帯状体の長手方向に所定間隔毎に設けられる固定部で固定され、
前記複数本の光ファイバのうち少なくとも1本の光ファイバは、該1本の光ファイバに対応する前記固定部間で蛇行した状態で前記帯状体に仮止めされたたるみを有する余長光ファイバとされ、
前記複数本の光ファイバを覆うように柔軟性の保護カバーが重ねられ、
前記帯状体と前記保護カバーの周囲とを接合して閉空間を形成することを特徴とする光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記閉空間内に潤滑剤を充填することを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記保護カバーに代えて耐圧縮部材を設けることを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記帯状体は、遮水シートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記余長光ファイバは、複数本、備えられ、該複数本の余長光ファイバのたるみ量は異なっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記光ファイバの前記帯状体への固定は、ホットメルト接着剤で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
前記余長光ファイバの前記帯状体への仮止めは、粘着テープにより行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項8】
前記複数本の光ファイバのうち1本の光ファイバは、たるみが無いように前記固定部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項9】
連接されることにより大面積の遮水シートの形成が可能とされる帯状の遮水シート基礎体を幅方向に連接して得られる、前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを有し、
前記遮水シートユニットの表面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか一方向に一定間隔毎に接合したことを特徴とする光ファイバセンサ付き遮水シート。
【請求項10】
請求項9記載の光ファイバセンサ付き遮水シートにおいて、複数の光ファイバセンサが接合された前記遮水シートユニット上に、更に請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサの複数を、前記遮水シート基礎体の長手方向及び幅方向のうちいずれか他方向に所定の間隔毎に接合することを特徴とする光ファイバセンサ付き遮水シート。
【請求項11】
前記帯状体が、前記帯状体の複数を幅方向に連接することにより大面積の遮水シートの形成が可能の帯状の遮水シート基礎体とされる請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する遮水シート基礎体側光ファイバセンサの複数個と、請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバセンサに相当する帯状体側光ファイバセンサの複数個と、を含んで構成される光ファイバセンサであって、
前記複数個の遮水シート基礎体側光ファイバセンサについて、その遮水シート基礎体を幅方向に連接することにより得られ前記大面積の遮水シートの1区画分に相当する遮水シートユニットを含む遮水シート基礎体側光ファイバセンサユニットの表面に、前記複数個の帯状体側光ファイバセンサを、前記遮水シート基礎体の長手方向に、所定の間隔毎に接合したことを特徴とする光ファイバセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−303976(P2007−303976A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133000(P2006−133000)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【出願人】(593157091)株式会社タツノ化学 (4)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【出願人】(593157091)株式会社タツノ化学 (4)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
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