説明

光プリントヘッド

【目的】 温度上昇又は温度下降した時に、発光ダイオードに加わる熱歪みを少なくし寿命の長い発光ダイオードを提供する。
【構成】 長尺な基台と、基台上の長尺方向に各々整列して近接して載置された複数の回路基板と、整列した複数の発光領域を有しかつ基台上又は回路基板上に整列して近接して載置された複数の発光ダイオードを設ける。そして、基台の1方の長辺の近傍に載置され隣接する回路基板間の隙間の位置を基台の他方の長辺の近傍に載置され隣接する回路基板間の隙間の位置と長尺方向に異なる位置とし又は整列され隣接する回路基板間の隙間が長尺方向に対して斜交し又は長尺方向に対して階段状に設けるものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は発光ダイオードを整列させてなる光プリントヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、狭い間隔で複数の発光ダイオードを整列させた光プリントヘッドが開発されている。その中で例えば、本出願人が特願平3−151963号にて出願した光プリントヘッドを図7の平面図及び図8のCC断面図に示す。これらの図に於て、回路基板51a乃至51d及び回路基板52a乃至52dがそれぞれ長尺な基台53の1方の長辺近傍と他方の長辺近傍に固定されている。複数の発光ダイオード54が基台53に形成された導電パターン55上に接着剤56を介して固定されている。集積回路57、58が基台53上に固定され配線されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかして上述の光プリントヘッドが繰り返しON−OFF運転された時に、発光ダイオード54の寿命が短くなるという欠点がある。本発明者がその原因を究明したところ、回路基板51aと51bの隙間59に対応する位置にある発光ダイオード54の隙間60に隣接する発光ダイオード54が損傷する事が判った。光プリントヘッドを駆動して温度上昇すると、基台53と回路基板51a、52aの熱膨張係数の違いにより回路基板51a、52aの方が基台53より熱による伸び量が大きいため、しかも回路基板の隙間59と61が長尺方向に同じ位置にあるので、上向きに凸に曲がる。光プリントヘッドの駆動を停止して温度下降すると、光プリントヘッドは下向きに凸が曲がる。この様に発光ダイオード54に熱歪みが加わる。故に本発明は上述の欠点を鑑みて、温度上昇又は温度下降した時に、発光ダイオードへの熱歪みを少なくし寿命の長い発光ダイオードを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決するために、長尺な基台と、基台上の長尺方向に各々整列して近接して載置された複数の回路基板と、整列した複数の発光領域を有しかつ基台上又は回路基板上に整列して近接して載置された複数の発光ダイオードを設ける。そして、基台の1方の長辺の近傍に載置され隣接する回路基板間の隙間の位置を基台の他方の長辺の近傍に載置され隣接する回路基板間の隙間の位置と長尺方向に異なる位置とし、又は整列され隣接する回路基板間の隙間が長尺方向に対して斜交し又は長尺方向に対して階段状に設けるものである。
【0005】
【作用】本発明は上述の様に、基台の1方及び他方の長辺に各々載置された回路基板間の隙間の位置を長辺方向に異ならせ、又は回路基板間の隙間を長辺方向に斜交させ又は階段状に設ける事により、回路基板と基台の熱膨張係数の差による熱歪みが1つの回路基板間の隙間に対応する位置にある基台に局部的に加わる事が軽減される。故に隣接する発光ダイオードの中間に対応する位置に回路基板間の隙間がある場合は、発光ダイオード同士がぶつからない。また発光ダイオードの略中央に対応する位置に回路基板間の隙間がある場合は、発光ダイオードの略中央を境にして発光ダイオードが反る量が軽減される。
【0006】
【実施例】以下に本発明の第1実施例を図1乃至図3に従い説明する。図1は本実施例に係る光プリントヘッドの平面図、図2は図1のAA断面図、図3は図1のBB断面図である。これらの図に於て、基台1は例えばニッケル鉄合金(42Ni−Fe)等からなり、厚さは0.8mm程度で幅は30mm程度で長さは1000mm程度の長尺なものである。基台1の熱膨張係数は4.6×10-6であり、熱伝導率は14.6W/mkである。導電パターン2は例えば金メッキ層からなり、基台1の中央の長尺方向に形成されている。絶縁層3は例えば、ポリイミド樹脂からなり、導電パターン2を除く基台1の表面上に形成されている。
【0007】回路基板4a乃至4d及び5a乃至5dは例えばガラス入りエポキシ樹脂等からなり、厚さは0.5mm程度で幅は10mm程度で長さは230mm程度である。回路基板4a乃至5dの熱膨張係数は15×10-6であり、熱伝導率は0.2W/mkである。回路基板4a乃至4dは基台1の1方の長辺6の近傍上に接着剤7を介して固定されている。回路基板5a乃至5dは基台1の他方の長辺8の近傍上に接着剤7を介して固定されている。回路基板4a乃至5dに於て、隣接する回路基板の隙間は1mm程度である。回路基板4a乃至5dの表面には、外部からの信号や電源電圧を供給する信号線や電源線及び端子等の導電パターンが形成されている。そして特徴的な事は、基台1の1方の長辺6の近傍に固定された回路基板4a乃至4dの隙間9、10、11と他方の長辺8の近傍に固定された回路基板5a乃至5dの隙間12、13、14の位置が基台1の長尺方向15に対して異なる事である。
【0008】発光ダイオード16は例えば燐化ガリウム砒素等からなり、表面に1列又は千鳥配置の2〜3列に整列された発光領域及びその領域とオーミック接触された表面電極が形成され、裏面に共通電極が形成されたものである。複数の発光ダイオード16は1列に整列する様に基台1の表面に形成された導電パターン2上に導電性接着剤17を介して固定されている。発光ダイオード16の発光領域は光プリンターの印字解像度に対応して20〜500μmピッチで整列されており、光プリンターの主走査長さの全長を網羅する様に、1列(千鳥配置のときはその列数)に整列されている。そして発光ダイオード16同志の継目の間隔は10〜50μmである。
【0009】集積回路18、19はそれぞれ発光ダイオード16の両側に位置し、基台1の表面に形成された絶縁層3上に絶縁性接着剤20を介して固定されている。金属細線21、22、23、24はそれぞれ回路基板4a乃至4dの端子と集積回路18の入力端子との間、及び集積回路18の出力端子と発光ダイオード16の表面電極との間、及び発光ダイオード16の表面電極と集積回路19の出力端子との間、及び集積回路19の入力端子と回路基板5a乃至5dの端子との間で配線されている。これらの部品により本実施例の光プリントヘッド25が構成されている。
【0010】上述の様に、回路基板5a及び5bの隙間12に対応する位置にある発光ダイオード16の隙間26と回路基板4a及び4bの隙間9に対応する位置にある発光ダイオード16の隙間27の位置を異ならせる様に設けられている。この光プリントヘッドが温度上昇すると、基台1と回路基板5aの熱膨張係数の違いにより、隙間26を基点としてこの光プリントヘッドは上方に凸に曲がる。しかし隙間26に於ては、回路基板4aの隙間9からずれているので、回路基板4aによる熱歪みの影響はない。故に、隙間26に隣接する発光ダイオード16の熱歪みは従来と比べて半減し、熱歪みによる発光ダイオード16同士が損傷することがない。
【0011】次に第1実施例より構造の簡単な本発明の第2実施例を図4の平面図に従い説明する。回路基板28a乃至28dは基台29の長辺30の近傍上に接着剤を介して固定されている。これらの回路基板28a乃至28dの隙間31、32、33は基台29の長尺方向34に対して斜交して形成されている。発光ダイオード35は基台29の導電パターン上に導電性接着剤を介して固定され、集積回路36は基台29の絶縁層上に絶縁性接着剤を介して固定されている。上述の様に回路基板28a乃至28dの隙間31、32、33を長尺方向34に斜交させることにより、隙間31、32、33に対応する発光ダイオード35a、35b、35cに加わる熱歪みが長尺方向34に沿って分散する。故に発光ダイオード35a、35b、35cが損傷しない。
【0012】次に第2実施例の変形態様として、本発明の第3実施例を図5の平面図に従い説明する。回路基板37a乃至37dの隙間38、39、40は基台29の長尺方向34に対して階段状に形成されている。故にこれらの隙間に対応する発光ダイオード35a乃至35dに加わる熱歪みは長尺方向34に沿って分散する。
【0013】更に第1実施例の変形態様として、本発明の第4実施例を図6の断面図に従い説明する。回路基板41上に集積回路18が固定され、回路基板42上に発光ダイオード16と集積回路19が固定されている。第1実施例と異なり、発光ダイオード16が基台1上ではなく回路基板42上に固定されている。そして回路基板41の隙間と回路基板42の隙間を基台1の長尺方向の異なる位置に設けることにより、発光ダイオード16に加わる熱歪みを長尺方向に分散させることができる。
【0014】
【発明の効果】本発明は上述の様に、基台の1方及び他方の長辺近傍に配置された回路基板間の隙間の位置を長尺方向に異ならせ、又は回路基板間の隙間を長尺方向に対して斜交又は階段状に設ける事により、回路基板と基台の熱膨張係数の差による熱歪みが1つの回路基板間の隙間に対応する位置にある基台に局部的に加わる事が軽減される。
【0015】故に隣接する発光ダイオードの中間に対応する位置に回路基板間の隙間がある場合は、発光ダイオード同士がぶつからない。また発光ダイオードの略中央に対応する位置に回路基板間の隙間がある場合は、発光ダイオードの略中央を境にして発光ダイオードが反る量が軽減される。その結果、発光ダイオードの寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る光プリントヘッドの平面図である。
【図2】図1のAA断面図である。
【図3】図1のBB断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る光プリントヘッドの平面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る光プリントヘッドの平面図である。
【図6】本発明の第4実施例に係る光プリントヘッドの断面図である。
【図7】従来の光プリントヘッドの平面図である。
【図8】図7のCC断面図である。
【符号の説明】
1、29 基台
4a、4b、4c、4d、5a、5b、5c、5d、28a28b、28c28d、37a、37b、37c、37d 回路基板
15、35 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 長尺な基台と、その基台上の長尺方向に各々整列して近接して載置された複数の回路基板と、整列した複数の発光領域を有しかつ前記基台上又は前記回路基板上に整列して近接して載置された複数の発光ダイオードを具備し、前記基台の1方の長辺の近傍に載置され隣接する前記回路基板間の隙間の位置が前記基台の他方の長辺の近傍に載置され隣接する前記回路基板間の隙間の位置と長尺方向に異なる位置にあり、又は整列され隣接する前記回路基板間の隙間が長尺方向に対して斜交し又は長尺方向に対して階段状に設けられた事を特徴とする光プリントヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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