説明

光信号検査装置及び光信号検査方法

【課題】様々なビットレートの被検査光信号に可変に対応して品質の検査を行うことができる光信号検査装置及び光信号検査方法を提供する。
【解決手段】被検査光信号S101に波長分散を与え、被検査光信号の隣接ビットのパルス同士を干渉させることによって強度変換光信号S103を生成する分散付与部と、強度変換光信号の波形を表示する表示部とを備える。分散付与部は、前記被検査光信号のビットレートに対応して可変に波長分散を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検査光信号の品質、特に隣接ビット間の位相差のばらつきを検査するための光信号検査装置及び光信号検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において、送受信するデータに応じて搬送波の位相を変調させる位相偏移変調(PSK:Phase Shift Keying)を行う技術が知られている。その代表例として、例えば差動位相変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)や差動4相位相変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)がある。
【0003】
PSKが与えられた光信号について、例えば各隣接ビット間におけるパルスの位相差のばらつきの有無等の品質を検査するために、被検査光信号の位相変調の情報を、振幅強度の情報に変換する技術がある(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。そして、振幅強度の情報に変換した光信号(以下、強度変換光信号)の波形を、例えばオシロスコープ等で表示して観測することによって、上述した品質を検査することができる。
【0004】
特許文献1に開示されている装置では、1ビット遅延を与える遅延器を利用して、検査対象の光信号(以下、被検査光信号)の隣接ビットのパルスを干渉させて、強度変換光信号を生成する。
【0005】
また、非特許文献1に開示されている装置では、バンドパスフィルタを用いて、任意の帯域の周波数を通過させ、その他の帯域の周波数を減衰させることによって、被検査光信号のパルスを時間軸方向に拡幅する。そして、この拡幅によって、隣接ビットのパルス同士が部分的に重なり合う。その結果、パルスの重なり合った部分が干渉し、強度変換光信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−44377号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,VOL.17,NO.2,FEBRUARY 2005,pp.492−494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、被検査光信号のビットレートを変更した場合、ビットレートに応じて遅延器の遅延時間を調整する必要がある。そのために、遅延器に、遅延時間を調整するための回路を付加するか、又は遅延器自体を交換する必要がある。
【0009】
また、非特許文献1に開示されている装置では、被検査光信号のビットレートを変更した場合、ビットレートに応じてバンドパスフィルタの通過帯域を変更する必要がある。しかし、バンドパスフィルタの通過帯域は、固定されているため、被検査光信号のビットレートに対応させるためには、バンドパスフィルタを交換する必要がある。
【0010】
そのため、特許文献1及び非特許文献1に開示されている装置では、様々なビットレートの被検査光信号に対応して品質の検査を行う場合、コストが増大する、又はスループットが悪化するという問題があった。
【0011】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、様々なビットレートの被検査光信号に対応して品質の検査を行うことができる光信号検査装置及び光信号検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、この発明による光信号検査装置は、以下の特徴を具えている。
【0013】
すなわち、この発明による光信号検査装置は、被検査光信号に波長分散を与え、被検査光信号の隣接ビットのパルス同士を干渉させることによって強度変換光信号を生成する分散付与部と、強度変換光信号の波形を表示する表示部とを備えて構成されている。
【0014】
分散付与部が被検査光信号に与える波長分散は、ビットレートに対応して可変である。
【発明の効果】
【0015】
この発明による光信号検査装置では、上述したように、分散付与部において被検査光信号に与える波長分散がビットレートに対応して可変であるので、隣接ビットのパルス同士を干渉した強度変換光信号を生成することができる。そして、この強度変換光信号の波形を観測することによって被検査光信号の品質を検査することができる。従って、この発明による光信号検査装置では、様々なビットレートに対応して、被検査光信号の品質を検査することができる。
【0016】
そして、この発明による光信号検査装置では、分散付与部が被検査光信号に与える波長分散が可変であるため、被検査光信号のビットレートが変更された場合であっても、品質を評価するに当たり、分散付与部の交換、又は分散付与部に対する素子の追加を行う必要がない。従って、この発明による光信号検査装置では、様々なビットレートの被検査光信号の品質検査を、従来と比して低コストで、かつ良好なスループットで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の光信号検査装置を説明するための概略構成図である。
【図2】(A)〜(C)は、信号の包絡線を示す図である。
【図3】(A)〜(C)は、この発明の光信号検査装置の特性を確認するシミュレーションの結果を示す図である。
【図4】この発明の光信号検査装置の変形例を説明するための概略構成図である。
【図5】この発明の光信号検査装置の変形例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0019】
(光信号検査装置)
図1〜3を参照して、この発明による光信号検査装置について説明する。
【0020】
図1は、この発明による光信号検査装置の概略構成図である。なお、図1では、各構成要素が線で結ばれているが、これは信号が伝播する伝送路を模式的に示したものである。各構成要素間は、例えば光ファイバや光導波路で接続されていても良いし、いわゆる空間結合で接続されていても良い。
【0021】
また、図2(A)〜(C)では、各信号について、横軸に時間を任意単位でとって示し、縦軸に信号強度を任意単位でとって示している。
【0022】
光信号検査装置100(以下、第1の光信号検査装置100)は、分散付与部10と表示部20とを具えて構成される。第1の光信号検査装置100は、入力された被検査光信号(図1中、矢印S101で示す)から強度変換光信号(図1中、矢印S103で示す)を生成し、この強度変換光信号S103の波形を観測することによって、被検査光信号S101の品質を検査する。
【0023】
被検査光信号S101は、光パルス列をDPSK方式によって位相変調して得られる光パルス信号である、1ビットに1つのパルスを含んでいる(図2(B))。被検査光信号S101は、図2(A)に示す2値デジタル電気信号S11で位相変調された2値のデータを有していて、これらのデータに対応して、光搬送波の変調位相(0、π)が定まっている。
【0024】
第1の光信号検査装置100に入力された被検査光信号S101は、まず分散付与部10に入力される。
【0025】
分散付与部10は、例えば、SG−D200−SP(株式会社アルネアラボラトリ)又はTDC−800(株式会社オキサイド)等の可変波長分散補償器で構成することができる。以下、分散付与部10を可変波長分散補償器10とも称する。
【0026】
ここで、被検査光信号S101には、被検査光信号S101の伝送経路である例えば光ファイバ等の欠陥等に起因して、残留分散が生じていることがある。このような残留分散は、光信号の品質劣化に繋がる。
【0027】
そこで、まず、可変波長分散補償器10を利用して、被検査光信号S101の残留分散値を検出するのが好ましい。そのために、可変波長分散補償器10を用いて、残留分散を変化させて、被検査光信号S101の時間軸方向に沿ったパルス幅(以下、単にパルス幅)が最小となる条件を求める。このパルス幅が最小となる条件は、残留分散を補償する条件であるため、この条件に基づいて被検査光信号S101に生じた残留分散値を求めることができる。
【0028】
次に、可変波長分散補償器10を用いて、被検査光信号S101に波長分散を与える。これによって、被検査光信号S101のパルスのパルス幅が時間軸方向に拡幅する。そして、隣接ビットのパルスのボトム同士が、ビットスロットの境界において時間軸上で重なり合う。その結果、重なり合ったパルスの領域において、隣接ビットのパルス同士を、互いに干渉させることができる。この干渉によって、隣接ビットのパルス同士が干渉した領域(以下、干渉領域とも称する。図2(C)中に103a、103b、103c、及び103dの符号を付して示す)において位相変調の情報が振幅強度の情報に変換され、強度変換光信号S103を生成する(図2(C))。
【0029】
被検査光信号S101の各隣接ビット間の位相差にばらつきがない場合には、隣接ビットのパルスが逆位相(すなわち一方が0で他方がπ)で干渉した各干渉領域103a及び103cの振幅強度は、0となる。また、隣接ビットのパルスが同位相(すなわち0同士、又はπ同士)で干渉した各干渉領域103b及び103dの振幅強度は、それぞれ互いに等しい一定の値となる。
【0030】
被検査光信号S101の各隣接ビット間の位相差にばらつきがある、すなわち品質に劣化がある場合には、隣接ビットのパルスが干渉した領域の振幅強度が、上述した位相差にばらつきがない場合の値からずれる。
【0031】
各隣接ビット間のパルスを干渉させるために、被検査光信号S101に与える波長分散の値は、被検査光信号S101のビットレートに対応して調整する。
【0032】
表1に、被検査光信号S101のデューティ比(パルス半値幅/ビット周期)が0.5である場合の、被検査光信号S101のビットレートに対する、可変波長分散補償器10が付与する好適な波長分散値の一例を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
ここで、例えば上述したSG−D200−SPでは、−36〜26ps/nmの範囲内の波長分散を可変に与えることができる。また、TDC−800では、−800〜800ps/nmの範囲内の波長分散を可変に与えることができる。そして、SG−D200−SPでは、与える波長分散の値を微調整することができる。また、TDC−800では、与える波長分散の値を粗調整することができる。従って、被検査光信号S101のビットレートの範囲に応じて、好適な特性を有する可変波長分散補償器10を適宜選択して用いることができる。例えば、50Gbit/s以上の被検査光信号S101を検査する場合には、可変波長分散補償器10としてSG−D200−SPを用いることができる。また、8〜40Gbit/sの範囲内の被検査光信号S101を検査する場合には、可変波長分散補償器10としてTDC−800を用いることができる。
【0035】
なお、SG−D200−SPを可変波長分散補償器10として用いた場合には、0.3psの微分群遅延(DGD:Differential Group Deray)量が被検査光信号S101に付加される。DGD量が、被検査光信号S101のビット周期の例えば10%以下であれば、被検査光信号S101の品質(例えば位相差のばらつき)への影響を抑えることができる。従って、160Gbit/s以下の被検査光信号S101であれば、DGD量の影響を考慮することなくSG−D200−SPを利用することができる。
【0036】
可変波長分散補償器10によって生成された強度変換光信号S103は、表示部20に入力される。
【0037】
表示部20は、例えば周知のオシロスコープ等など好適な表示手段とすることができる。そして、強度変換光信号S103の波形(図2(C))は、この表示部20において視認可能な状態で表示される。
【0038】
表示部20に表示された強度変換光信号S103の波形、特に干渉領域の波形を観測することによって、被検査光信号S101の隣接ビット間の位相差のばらつきの有無を検査することができる。
【0039】
ここで、発明者は、第1の光信号検査装置100の特性を確認するためのシミュレーションを行った。このシミュレーションでは、DPSK方式によって位相変調された、40Gbit/sの光信号を被検査光信号S101として用いた。被検査光信号S101に含まれるパルスの半値幅は12psとした。また、可変波長分散補償器10において、被検査光信号S101に対して38ps/nmの波長分散を与えて強度変換光信号S103を生成した。そして、被検査光信号S101の光信号雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio)の変化に対する位相のばらつきをQ値で評価した。なお、OSNRは、光信号の強度に対する雑音の強度の比として定義される値である。また、デシベル(db)単位のQ値は、次式(1)で定義される値であり、Q値が大きいほど位相差のばらつきが小さい。μは1の信号レベルの平均値、μは0の信号レベルの平均値、σは1の信号レベルの標準偏差、及びσは0の信号レベルの標準偏差を示す。
Q=10log{|μ−μ|/(σ+σ)}・・・(1)
このシミュレーションの結果を図3(A)〜(C)に示す。
【0040】
図3(A)は、横軸にOSNRをdB単位でとって示し、縦軸にQ値をdB単位でとって示している。また、図3(B)は、OSNRが30dBのとき(図3(A)中に301の符号を付して示す)に、表示部20に表示される強度変換光信号S103の波形を示している。図3(C)は、12dBのとき(図3(A)中に303の符号を付して示す)に、表示部20に表示される強度変換光信号S103の波形を示している。これら図3(B)及び(C)は、横軸に時間をns単位でとって示し、縦軸に振幅強度を任意単位でとって示している。そして、図3(B)及び(C)では、強度変換光信号S103の波形が、一定周期毎に重ねて表示されている。
【0041】
図3(A)に示すように、第1の光信号検査装置100を用いて生成した強度変換光信号S103では、OSNRとQ値とに一定の相関が認められる。この相関は、従来の遅延器を利用した装置で生成される強度変換光信号の相関と同様である。従って、第1の光信号検査装置100では、従来と同様に、隣接ビット間の位相のばらつきに関する品質を検査することができる。
【0042】
また、図3(B)に示すように、隣接ビット間の位相のばらつきが小さい場合(すなわちQ値が大きい場合)には、強度変換光信号S103の周期毎の波形が一致して表示され、アイパターンの開口が大きい。また、図3(C)に示すように、隣接ビット間の位相のばらつきが大きい場合(すなわちQ値が小さい場合)には、強度変換光信号S103の周期毎の波形がずれて表示され、アイパターンの開口が小さい。従って、表示部20に表示された、強度変換光信号S103の波形を観測することによって、隣接ビット間の位相のばらつきの有無及びその程度を評価することができる。
【0043】
以上説明したように、第1の光信号検査装置100では、分散付与部10において被検査光信号S101のビットレートに対応して可変に波長分散を与えることによって、強度変換光信号S103を生成することができる。そして、この強度変換光信号S103の波形を観測することによって被検査光信号S101の品質を評価することができる。従って、第1の光信号検査装置100では、様々なビットレートに対応して、被検査光信号S101の品質を評価することができる。
【0044】
(光信号検査装置の変形例)
図4及び図5を参照して、この発明による光信号検査装置の2つの変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例において、上述した第1の光信号検査装置100と共通する構成要素及び信号については、同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0045】
図4及び図5は、この発明による光信号検査装置の変形例を示す概略構成図である。なお、図4及び図5では、各構成要素が線で結ばれているが、これは信号が伝播する伝送路を模式的に示したものである。各構成要素間は、例えば光ファイバや光導波路で接続されていても良いし、いわゆる空間結合で接続されていても良い。
【0046】
まず、図4を参照して、第1の変形例による光信号検査装置200(以下、第2の光信号検査装置200)について説明する。
【0047】
第2の光信号検査装置200では、分散付与部110が、複数の可変波長分散補償器を備えて構成されている。図4では、2つの可変波長分散補償器(第1可変波長分散補償器15a及び第2可変波長分散補償器15b)を備える構成例を示している。以下、分散付与部110が、第1可変波長分散補償器15a及び第2可変波長分散補償器15bの2つの可変波長分散補償器を備える構成例について説明する。
【0048】
第1可変波長分散補償器15a及び第2可変波長分散補償器15bは、各々可変幅が異なる可変波長分散補償器とされている。例えば、第1可変波長分散補償器15aとして上述したSG−D200−SPを、また、第2可変波長分散補償器15bとして上述したTDC−800を用いることができる。既に説明したように、SG−D200−SPでは、−36〜26ps/nmの範囲内の波長分散を、微調整して与えることができる。また、TDC−800では、−800〜800ps/nmの範囲内の波長分散を、粗調整して与えることができる。
【0049】
そして、被検査光信号S101のビットレートの範囲に応じて、第1可変波長分散補償器15a及び第2可変波長分散補償器15bのいずれか一方を用いて、波長分散を与える。
【0050】
例えば、50Gbit/s以上の被検査光信号S101を検査する場合には、第1可変波長分散補償器15a(SG−D200−SP)において被検査光信号S101に波長分散を与えて強度変換光信号(図4中に矢印S201で示す)を生成する。また、8〜40Gbit/sの範囲内の被検査光信号S101を検査する場合には、第1可変波長分散補償器15aでは波長分散を与えず、第2可変波長分散補償器15b(TDC−800)において被検査光信号S101に波長分散を与えて、強度変換光信号(図4中に矢印S202で示す)を生成する。
【0051】
ここで、TDC−800の動作帯域は、50GHz程度である。そのため、TDC−800に、50GHzを越える帯域の被検査光信号S101を入力した場合、品質が著しく劣化する。従って、第2可変波長分散補償器15bとしてTDC−800を用いる構成例において、ビットレートの大きい(例えば50Gbit/s以上)被検査光信号S101を検査する場合には、第1可変波長分散補償器15aから出力された強度変換光信号S201を、第2可変波長分散補償器15bを経ずに表示部20へ入力するのが好ましい。
【0052】
そこで、図4に示すように、スイッチ素子30a及び30bを用いることにより、被検査光信号S101のビットレートに応じて、第1可変波長分散補償器15aの通過後の経路を変更するのが好ましい。すなわち、被検査光信号S101のビットレートが大きい場合には、第1可変波長分散補償器15aにおいて生成された強度変換光信号S201が、スイッチ素子30aを経て第1経路31に入力される。そして、第1経路31から、スイッチ素子30bを経て表示部20に入力される。また、被検査光信号S101のビットレートが小さい(例えば8〜40Gbit/s)場合には、波長分散が与えられずに第1可変波長分散補償器15aを通過した被検査光信号S101が、スイッチ素子30aを経て、第2経路33に入力される。そして、第2経路33から第2可変波長分散補償器15bに入力される。このように、第1経路31及び第2経路33を形成することによって、被検査光信号S101のビットレートが大きい場合において、強度変換光信号S201を、第2可変波長分散補償器15bを経ずに表示部20へ入力することができる。
【0053】
以上説明したように、第2の光信号検査装置200では、各々可変幅が異なる複数の可変波長分散補償器で分散付与部110を構成することによって、単一の可変波長分散補償器で分散付与部を構成する場合と比して、より広い範囲のビットレートに対応して、被検査光信号S101の品質を評価することができる。
【0054】
次に、図5を参照して、第2の変形例による光信号検査装置300(以下、第3の光信号検査装置300)について説明する。
【0055】
第3の光信号検査装置300では、多値のDPSK方式によって位相変調された被検査光信号(図5中に矢印S301で示す)を、2値のDPSK方式の位相変調信号である被検査光信号S303に変換する変換部40を備えている。
【0056】
被検査光信号S301は、例えばDQPSK方式によって位相変調された被検査光信号とすることができる。DQPSKによる被検査光信号は、4値のデータを有していて、これらのデータに対応して、光搬送波の変調位相(0、π/2、π、3π/2)が定まっている。
【0057】
第3の光信号検査装置300に入力された被検査光信号S301は、まず変換部40に入力される。
【0058】
変換部40は、例えば高非線形光ファイバ、PPLN、又はKTP等の周知の非線形光学素子から構成することができる。
【0059】
また、変換部40には、変換CW(Continuos Wave)光源50から出力された変換用CW光(図5中に矢印302で示す)が入力される。
【0060】
そして、変換部40では、非線形光学効果によって、例えばDQPSK方式の位相変調信号である被検査光信号S301と、変換CW光源50とから、DPSK方式の位相変調信号である被検査光信号S303が生成される。なお、変換部40において、DQPSK方式の被検査光信号S301を、DPSK方式の被検査光信号S303に変換する詳細な方法は、例えば文献「Optical phase erasure based on FWM in HNLF enabling format conversion from 320−Gb/s RZ−DQPSK to 160−Gb/s RZ−DPSK Guo−Wei Lu,and Tetsuya Miyazaki OPTICS EXPRESS Vol.17,No.16 2009 PP.13346〜13353」により開示された技術を用いることができる。
【0061】
変換部40から出力された被検査光信号S303は、分散付与部10に入力される。
【0062】
分散付与部10に入力された被検査光信号S303は、上述した第1の光信号検査装置100と同様に、被検査光信号S303のビットレートに応じた波長分散が付与されて、強度変換光信号S103とされる。そして、その波形から品質を検査することができる。
【0063】
なお、図5では、第3の光信号検査装置300における分散付与部10として、単一の可変波長分散補償器10を用いた構成例を示したが、上述した第2の光信号検査装置200と同様に、複数の可変波長分散補償器で分散付与部を構成することもできる。
【0064】
以上説明したように、第3の光信号検査装置300では、変換部40において、多値のDPSK方式による被検査光信号S301を、DPSK方式による被検査光信号S303に変換することができる。従って、第3の光信号検査装置300では、多値のDPSK方式による被検査光信号S301についても、上述した第1の光信号検査装置100及び第2の光信号検査装置200と同様に、品質を検査することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、110:分散付与部
15a:第1可変波長分散補償器
15b:第2可変波長分散補償器
20:表示部
30a、30b:スイッチ素子
40:変換部(非線形光学素子)
50:変換CW光源
100、200、300:光信号検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査光信号に波長分散を与え、前記被検査光信号の隣接ビットのパルス同士を干渉させることによって強度変換光信号を生成する分散付与部と、
前記強度変換光信号の波形を表示する表示部と
を備え、
前記波長分散は、ビットレートに対応して可変である
ことを特徴とする光信号検査装置。
【請求項2】
前記分散付与部は、可変波長分散補償器である
ことを特徴とする請求項1に記載の光信号検査装置。
【請求項3】
前記分散付与部は、複数の可変波長分散補償器を備えて構成され、
前記複数の可変波長分散補償器は、各々可変幅が異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の光信号検査装置。
【請求項4】
前記被検査光信号は、DPSK方式で位相変調された光信号である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光信号検査装置。
【請求項5】
多値のDPSK方式で位相変調された光信号を、DPSK方式で位相変調された前記被検査光信号に変換する変換部を備えている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光信号検査装置。
【請求項6】
被検査光信号に、該被検査光信号のビットレートに対応して調整した波長分散を与えて、前記被検査光信号の隣接ビットのパルス同士を干渉させることによって強度変換光信を生成する過程と、
前記強度変換光信号の波形を観測することによって、前記被検査光信号の品質を検査する過程と
を含むことを特徴とする光信号検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74602(P2013−74602A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214459(P2011−214459)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】