説明

光学フィルムの反りを防止する方法および材料

【課題】本発明により、寸法安定性が改良された多層光学体を提供する。
【解決手段】本発明は、第1および第2の光学層を交互に有する複屈折性の多層反射光学フィルムを提供する工程、および可撓性透明寸法安定性層を該複屈折性の多層反射光学フィルムの第1主面上に押出コーティングする工程を含む、光学体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学体、および光学体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、繰り返し温度変化が起こった場合に反りが生じにくい光学体、およびそのような光学体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層ポリマー光学フィルムは、ミラーや偏光子などを含む種々の目的で広範囲に使用されている。これらのフィルムは、反射率が非常に高い場合が多く、さらに軽量であり破壊に対して抵抗性である。したがってこのようなフィルムは、移動電話、個人情報機器、およびポータブルコンピューターに取り付けられる液晶ディスプレイ(LCD)などの小型電子ディスプレイの反射体および偏光子としての使用に好適である。
【0003】
ポリマー光学フィルムは好都合な光学的性質および物理的性質を有する場合があるが、このようなフィルムの一部の制限の1つは、温度変動にさらされた場合に(通常使用時に遭遇する温度変動でさえも)有意な寸法不安定性を示すことである。このような寸法不安定性のために、フィルムが膨張や収縮した場合にしわが形成されることがある。温度が80℃以上になると、このような寸法不安定性が特によく発生する。これらの温度では、フィルムは平滑な表面を維持することができず、反りが生じるためにしわが形成される。この反りは、デスクトップのLCDモニターやノートブックコンピューターに使用されるようなより大型のフィルムの場合に特に顕著となることが多い。60℃で相対湿度70%などの高温多湿条件にフィルムが繰り返しさらされる場合にも反りが観察される。
【0004】
したがって、好都合な光学的性質を有するが、寸法不安定性により生じる反りは制限される改良された光学フィルムが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、温度変動にさらされた場合に反りが生じにくい多層光学体を目的としている。特に、本発明は、1つ以上の寸法安定性層と接合させた光学フィルムを含む多層光学体を目的としている。寸法安定性層は光学フィルムを支持し、それによって、光学フィルムの軽量、耐久性、および可撓性を維持しながら、温度変動にさらされた後でも複合多層光学体に反りが生じにくくなる。本発明は、光学体の製造方法、および光学体を含むディスプレイ(LCDなど)も目的としている。
【0006】
光学フィルムや1つ以上の寸法安定性層を含む以外に、本発明の光学体は1つ以上の追加層を有することができる。これらの追加層は、光学フィルムと寸法安定性層の間に配置することができ、さらに光学フィルムと寸法安定性層を互いに固定する押出可能な熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0007】
多層光学体に使用される光学フィルムとしては、例えば、偏光反射体およびミラーフィルムが挙げられる。通常、光学フィルムは延伸光学フィルムであり、通常はこれ自体が複数の層で構成される。ある実施態様では、光学フィルムは、ポリ(エチレンナフタレート)のポリマーまたはコポリマー(PENおよびCoPEN)、ならびにポリエチレンテレフタレートのポリマーまたはコポリマー(PETおよびCoPET)などのポリエステルを含有する少なくとも1つの層を含む。
【0008】
寸法安定性層は、温度変化にさらされた場合に実質的に反りが生じないようにするために十分な寸法安定性を複合多層体に付与する。通常、寸法安定性層は、一般的にはガラス転移温度(T)が80〜250℃、より一般的には100〜200℃であるポリマー材料である。好適な寸法安定性層は、ポリカーボネート、あるいはポリカーボネートと、PEN、CoPEN、PET、およびCoPETとの混和性混合物を含むことができる。別の好適な寸法安定性層は、ポリスチレン、あるいはスチレン−アクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、およびスチレン−メタクリル酸メチルなどのポリスチレンコポリマーを含む。高Tのナイロンおよびポリエーテルイミドも寸法安定性を付与するために使用することができる。
【0009】
任意に使用される追加層は種々の機能を果たすことが可能であり、通常は光学フィルムの寸法安定性層への接着を促進する機能を果たす。追加層は中間層であってもよく、通常はポリマー組成物であり、好ましくは250℃よりも高い温度で溶融相中で熱安定性を有する。したがって、通常このような中間層は、250℃よりも高い温度における押出中に実質的な劣化を示さない。特定の実施態様では、中間層は透明または実質的に透明である。ある実施態様では、中間層は、拡散性を増加させるために屈折率の異なる粒子を含むことができる。
【0010】
本発明の光学体は、寸法安定性層が光学フィルム上に共押出されるか、あるいは光学フィルム上に押出コーティングされる方法によって製造することができる。光学フィルムが延伸光学フィルムである場合、寸法安定性層に接合させる前または後のいずれかで延伸することによって延伸することができる。追加層が使用される場合、その追加層も光学フィルム上に押出コーティングされる。それぞれの層は、高温における共押出または押出コーティングに十分耐えられる熱安定を有するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【図1】本発明の第1の実施態様により作製され配置された光学体の側面図であり、光学フィルム、寸法安定性層、および中間層を有する光学体を示している。
【図2】本発明の第2の実施態様により作製され配置された光学体の側面図であり、中間層のない光学体を示している。
【図3】本発明の第3の実施態様により作製され配置された光学体の側面図であり、2つの寸法安定性層を有する光学体を示している。
【図4】本発明の実施態様による光学体を作製するためのシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述したように、本発明は、反りが生じにくい光学体を提供する。このような反りは、一部の光学フィルム、特に延伸ポリマー光学フィルムなどのポリマー光学フィルムで発生する。本発明の光学体は、光学フィルム、1つ以上の寸法安定性層、および1つ以上の任意の追加層を含む。任意の追加層は、光学フィルムと寸法安定性層との間の中間接合層であってよい。
【0013】
本発明の種々の一般的な実施態様を示している図1〜3をこれより参照する。図1において、光学体10は、光学フィルム12、寸法安定性層14、および中間層16を有する。図1に示される実施例の3層は、最も厚い層である寸法安定性層14と、それに続く厚さの光学フィルム12と、中間層16とを示している。しかしながら、これらの層は図1に示されるものと異なる相対的厚さで構成されてもよい。したがって、場合によっては光学フィルム12が寸法安定性層14よりも厚いこともある。
【0014】
図2において、光学体10は、光学フィルム12と寸法安定性層14を有するが、これらとは別の独立した中間層は含まない。図3は、本発明の光学体10のさらに別の実施態様を示しており、1層の光学フィルム12と2層の寸法安定性層14とを有する。光学体10は2層の中間層16も有する。図面に示されていない本発明の他の実施態様は、2層の寸法安定性層を有するが中間層は存在しない。
【0015】
本発明の光学体のこれらの種々の成分ならびに製造方法を以下に説明する。
【0016】
A.光学フィルム
多種多様の光学フィルムが本発明の使用に好適である。特に、延伸ポリマー光学フィルムなどのポリマー光学フィルムは、温度変動にさらされることによる反りが生じやすいため、本発明を使用すると好適である。
【0017】
光学フィルムとしては、広い帯域幅で高い反射率を有する多層フィルムを含む多層光学フィルム、および連続/分散相光学フィルムが挙げられる。光学フィルムとしては偏光子とミラーが挙げられる。一般に、多層光学フィルムは鏡面反射体であり連続/分散相光学フィルムは拡散反射体であるが、これらの性質は普遍的なものではない(例えば、米国特許第5,867,316号に記載される拡散多層反射偏光子を参照されたい)。これらの光学フィルムは単なる例であり、本発明が有用となる好適なポリマー光学フィルムを網羅的に挙げたものではない。
【0018】
多層反射光学フィルムと連続/分散相反射光学フィルムはどちらも、少なくとも1つの偏光方向の光を選択的に反射する少なくとも2種類の異なる材料(好ましくはポリマー)の間の屈折率差に依存する。好適な拡散反射偏光子としては、発明の名称「Diffusely Reflecting Polarizing Element Including a First Birefringent Phase and a Second Phase(第1の複屈折相と第2の相とを有する拡散反射偏光要素)」の米国特許第5,825,543号(この記載内容を本明細書に援用する)に記載される連続/分散相光学フィルム、ならびに発明の名称「Multilayer Film Having a Continuous and Disperse Phase(連続相および分散相を有する多層フィルム」の米国特許第5,867,316号(この記載内容を本明細書に援用する)に記載の拡散反射光学フィルムが挙げられる。
【0019】
本発明での使用に特に好適な光学フィルムは、発明の名称「Optical Film(光学フィルム)」の米国特許第5,882,774号、ならびにPCT公開WO95/17303号、WO95/17691号、WO95/17692号、WO95/17699号、WO96/19347号、およびWO99/36262号に記載されるような多層反射フィルムが挙げられ、これらすべての記載内容を本明細書に援用する。本発明のフィルムは、Brewster角(p偏光の反射率が0になる角度)が非常に大きいかまたは存在しないポリマー層の多層スタックが好ましい。p偏光の反射率反射率が、入射角とともに緩やかに減少するか、入射角に依存するか、あるいは入射角が法線方向から外れるに伴って増加するか、である多層ミラーまたは偏光子が本発明のフィルムより作製される。この多層光学フィルムは、あらゆる入射方向で高い反射率(s偏光とp偏光の両方)を示す。市販される多層反射偏光子の1つは、3M(St.Paul,Minnesota)よりDual Brightness Enhanced Film(DBEF)として販売されている。本明細書では、本発明の光学フィルムの構造と、本発明の光学フィルムの製造方法および使用方法とを示す例として多層反射光学フィルムを使用している。本明細書に記載される構造、方法、および技術は、他の種類の好適な光学フィルムへの適用および使用が可能である。
【0020】
好適な多層反射光学フィルムは、一軸延伸または二軸延伸された複屈折性第1の光学層と第2の光学層を交互(例えば1つおき)に配置することによって製造することができる。ある実施態様では、延伸層の面内屈折率の一方とほぼ等しい等方性屈折率を第2の光学層が有する。2つの光学層の間の界面が光反射面を形成する。2つの層の屈折率がほぼ等しくなる方向と平行な面内に偏光した光が実質的に透過する。2つの層で異なる屈折率を有する方向と平行な面内に偏光した光は少なくとも部分的に反射する。層の数を増加させるか、あるいは第1の層と第2の層の間の屈折率差を増加させるかによって、反射率を増加させることができる。一般に、多層光学フィルムは約2〜5000層の光学層を有し、通常は約25〜2000層の光学層を有し、多くの場合は約50〜1500層の光学層または約75〜1000層の光学層を有する。複数の層を有するフィルムは、ある範囲の波長にわたってフィルムの反射率を増加させる目的で種々の光学的厚さの層を含むことができる。例えばフィルムは、特定の波長の光の最適な反射を実現するためにそれぞれが調整された(例えば垂直入射光に対して)層の組を有することができる。さらに、1つのみの多層スタックについて説明しているかもしれないが、複数のスタックを後に組み合わせてフィルムにすることによって本発明の多層光学フィルムを作製することができることを理解されたい。本明細書に記載の多層光学フィルムは、米国特許出願第09/229724号により作製することができ、この記載内容を本明細書に援用する。
【0021】
偏光子は、1軸延伸された第1の光学層と、延伸された層の一方の面内屈折率にほぼ等しい等方性屈折率を有する第2の光学層とを組み合わせることによって作製することができる。あるいは、両方の光学層が複屈折ポリマーから作製され、1つの面内方向の屈折率がほぼ等しくなるように多重延伸工程で延伸される。これら2つの光学層の界面は、1つの偏光に対する光反射面を形成する。2つの層の屈折率がほぼ等しくなる方向と平行な面内に偏光した光は実質的に透過する。2つの層で異なる屈折率を有する方向と平行な面内に偏光した光は少なくとも部分的に反射する。等方性屈折率または小さな面内複屈折(例えば約0.07以下)を有する第2の光学層を有する偏光子の場合、第2の光学層の面内屈折率(nおよびn)は第1の光学層の一方の面内屈折率(例えばn)とほぼ等しい。したがって、第1の光学層の面内複屈折は、多層光学フィルムの反射率の指標となる。通常、面内複屈折が大きいほど、多層光学フィルムの反射率も大きくなることが分かっている。第1および第2の光学層の面外屈折率(n)が等しいかほぼ等しい場合(例えば差が0.1以下、好ましくは差が0.05以下)、多層光学フィルムはオフアングル(off−angle)色も少ない。オフアングル色は、多層光学フィルム面に対して垂直以外の角度で光を不均一に透過することによって生じる。
【0022】
ミラーは、2つの屈折率(通常は、x軸とy軸に沿った屈折率、すなわちnとn)がほぼ等しく、第3の屈折率(通常はz軸に沿った屈折率、すなわちn)は異なる少なくとも1種類の一軸性複屈折材料を使用して作製することができる。x軸およびy軸は、多層フィルムの所与の層の面を表すので、面内軸として定義され、それぞれの屈折率nおよびnは面内屈折率と呼ばれる。一軸性複屈折系を形成するための方法の1つは、多層ポリマーフィルムを二軸延伸(2つの軸に沿って延伸)することである。応力によって誘導される複屈折が隣接する層で異なる場合、多層フィルムを二軸延伸することによって、両方の軸と平行な面における屈折率の差が隣接する層の間で生じ、そのため両方の偏光面の光を反射する。一軸性複屈折材料は、正または負の一軸性複屈折を有することができる。正の一軸性複屈折は、z方向の屈折率(n)が面内屈折率(nおよびn)よりも大きい場合に起こる。負の一軸性複屈折は、z方向の屈折率(n)が面内屈折率(nおよびn)よりも小さい場合に起こる。n1zがn2x=n2y=n2zと一致するように選択され、さらに多層フィルムが二軸延伸される場合、p偏光のBrewster角は存在せず、したがってすべての入射角で反射率は一定となる。互いに直行する2つの面内軸で延伸された多層フィルムは、層の数、f比、屈折率などに依存して非常に高い比率で入射光を反射することができ、非常に効率的なミラーである。ミラーは、面内屈折率が大きく異なる複数の一軸延伸層を組み合わせて使用して作製することもできる。
【0023】
材料の選択
第1の光学層は、一軸延伸または二軸延伸された複屈折ポリマー層が好ましい。第1の光学層は、延伸した場合に大きな複屈折を得ることができる。用途によるが、複屈折は、フィルム面内の直交する2つの方向の間、1つ以上の面内方向とフィルム面と直交する方向との間、またはこれらの組み合わせで生じうる。第1のポリマーは、延伸後も複屈折を維持すべきであり、それによって最終フィルムに所望の光学的性質が付与される。第2の光学層は、複屈折性であり一軸延伸または二軸延伸されるポリマー層であってもよいし、あるいは第2の光学層は、延伸後の第1の光学層の少なくとも1つの屈折率とは異なる等方性屈折率を有することもできる。好都合には延伸後に第2のポリマーは複屈折をほとんどまたは全く示さないか、あるいは逆(正−負、または負−正)の複屈折を示し、それによってフィルム面の屈折率と最終フィルム中の第1のポリマーの屈折率との差ができる限り大きくなる。ほとんどの用途では、第1のポリマーと第2のポリマーのどちらも、問題となるフィルムで対象となる帯域幅内で吸光帯が存在しないことが好都合である。したがって、その帯域幅内のすべての入射光は反射するか透過するかのいずれかである。しかしある用途では、第1および第2のポリマーの一方または両方が特定の波長のすべてまたは一部を吸収すると有用となる場合がある。
【0024】
本発明の多層光学フィルムの第1および第2の光学層、ならびに任意の非光学層は、ポリエステルなどのポリマーで構成される。用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーを含み、さらに、共押出や、エステル交換などの反応などによって混和性混合物として生成可能なポリマーまたはコポリマーを含むものと理解されたい。用語「ポリマー」、「コポリマー」、および「コポリエステル」は、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方を含む。
【0025】
一般に、本発明の多層光学フィルムに使用されるポリエステルは一般にカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを含み、カルボキシレートモノマー分子とグリコールモノマー分子の反応によって生成する。各カルボキシレートモノマー分子2つ以上のカルボン酸またはエステル官能基を有し、各グリコールモノマー分子は2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマー分子はすべて同種であってもよいし、2種類以上の異なる種類の分子であってもよい。これと同じことがグリコールモノマー分子に関しても適用される 用語「ポリエステル」には、グリコールモノマー分子と炭酸エステルとの反応によって誘導されるポリカーボネートも含まれる。
【0026】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットの形成に使用すると好適なカルボキシレートモノマー分子としては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体、イソフタル酸t−ブチル、トリメリット酸、スルホン酸ナトリウム化イソフタル酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体、ならびにこれらの酸のメチルエステルやエチルエステルなどの低級アルキルエステルが挙げられる。この場合、用語「低級アルキル」はC1〜C10直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。
【0027】
ポリエステル層のグリコールサブユニットの形成に使用すると好適なグリコールモノマー分子としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびその異性体、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングルコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体、ナルボルナンジオール、ビシクロ−オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体、ビスフェノールA、1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体、ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0028】
本発明の光学フィルムに有用なポリエステルの1つは、ポリエチレンナフタレート(PEN)であり、これは例えばナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの反応などによって得ることができる。ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)は第1のポリマーとして選択されることが多い。PENは大きな正の応力光学係数を有し、延伸後も実質的に複屈折が残存し、可視範囲内の光をほとんどまたはまったく吸収しない。さらにPENは等方性状態で大きな屈折率を有する。波長550nmの偏光入射光の場合のこの材料の屈折率は、偏光面が延伸方向と平行である場合には、約1.64から最大約1.9まで増加する。分子配向が増大することによってPENの複屈折が増加する。分子配向は、材料をより大きな延伸比で延伸し、他の延伸条件は固定することによって増加させることができる。第1のポリマーとして好適なその他の半結晶質ナフタレンジカルボン酸ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびそれらのコポリマーが挙げられる。
【0029】
第1のポリマーとして有用な他のものは、例えば、米国特許出願第09/229724号、第09/232332号、第09/399531号、および第09/444756号に記載されており、これらの記載内容を本明細書に援用する。第1のポリマーとして有用なポリエステルの1つは、90mol%のナフタレンジカルボン酸ジメチルと10mol%のテレフタル酸ジメチルから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100mol%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットとから誘導され固有粘度(IV)が0.48dL/gであるcoPENである。この屈折率は約1.63である。本明細書ではこのポリマーを低融点PEN(90/10)と呼ぶ。もう1つの有用な第1のポリマーは、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)より入手可能な固有粘度が0.74dL/gであるPETである。非ポリエステルポリマーも偏光子フィルムの製造に有用である。例えば、ポリエーテルイミドをPENやcoPENなどのポリエステルと併用して多層反射ミラーを作製することができる。その他のポリエステル/非ポリエステルの組み合わせ、例えばポリエチレンテレフタレートとポリエチレン(例えば、Dow Chemical Corp.(Midland,MI)より商品名Engage 8200で入手可能なもの)なども使用することができる。
【0030】
第2のポリマーは、最終フィルム中における少なくとも1つの方向の屈折率が、同じ方向での第1のポリマーの屈折率と有意に異なるように選択すべきである。ポリマー材料は通常は分散性であり、すなわち屈折率が波長に応じて変動するため、これらの条件は対象となる特定のスペクトル帯域幅に関して考慮する必要がある。上記議論から、第2のポリマーの選択は、問題となる多層光学フィルムの意図する用途のみに依存するのではなく、第1のポリマーの選択ならびに加工条件にも依存することが理解できるであろう。
【0031】
第2の光学層は、第1のポリマーのガラス転移温度に適合したガラス転移温度を有し、第1のポリマーの等方性屈折率と同等の屈折率を有する種々の第2のポリマーから作製することができる。好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートなどのモノマーから生成されるビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。このようなポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などのポリメタクリレート、およびイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。その他のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、およびポリイミドなどの縮合ポリマーが挙げられる。さらに、第2の光学層は、ポリエステルやポリカーボネートなどのポリマーおよびコポリマーから作製することができる。
【0032】
代表的な第2のポリマーとしては、Ineos Acrylics, Inc.(Wilmington,DE)より商品名CP71およびCP80として入手可能なものなどのポリメタクリル酸メチル(PMMA)ホモポリマー、またはPMMAよりもガラス転移温度が低いポリメタクリル酸エチル(PEMA)が挙げられる。さらに別の第2のポリマーとしては、PMMAのコポリマー(coPMMA)、例えば、75重量%のメタクリル酸メチル(MMA)モノマーと25重量%のアクリル酸エチル(EA)モノマーから生成されるcoPMMA(Ineos Acrylics,Inc.より商品名Perspex CP63で入手可能)、MMAモノマー単位とメタクリル酸n−ブチル(nBMA)コモノマー単位とから生成されるcoPMMA、またはSolvay Polymers,Inc.(Houston,TX)より商品名Solef 1008として入手可能なものなどのPMMAとポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)の混合物が挙げられる。
【0033】
さらに別の第2のポリマーとしては、Dow−Dupont Elastomersより商品名Engage 8200で入手可能なポリ(エチレン−コ−オクテン)(PE−PO)、Fina Oil and Chemical Co.(Dallas,TX)より商品名Z9470で入手可能なポリ(プロピレン−コ−エチレン)(PPPE)、およびHuntsman Chemical Corp.(Salt Lake City,UT)より商品名Rexflex W111で入手可能なアタクチックポリプロピレン(aPP)とイソタクチックポリプロピレン(iPP)とのコポリマーなどのポリオレフィンコポリマーが挙げられる。第2の光学層は、E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE)より商品名Bynel 4105で入手可能なもののような線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)などの官能化ポリオレフィンから作製することもできる。
【0034】
偏光子の場合に特に好ましい層の組み合わせとしては、PEN/co−PEN、ポリエチレンテレフタレート(PET)/co−PEN、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/Eastar、およびPET/Eastarが挙げられ、ここで「co−PEN」はナフタレンジカルボン酸を主成分とするコポリマーまたは混合物を意味し(前述の通り)、EastarはEastman Chemical Co.より市販されるポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである。
【0035】
ミラーの場合に特に好ましい層の組み合わせとしては、PET/PMMAまたはPET/coPMMA、PEN/PMMAまたはPEN/coPMMA、PET/ECDEL、PEN/ECDEL、PEN/sPS、PEN/THV、PEN/co−PET、およびPET/sPSが挙げられ、ここで「co−PET」はテレフタル酸を主成分とするコポリマーまたは混合物を意味し(前述の通り)、ECDELはEastman Chemical Co.より市販される熱可塑性ポリエステルであり、THVは3M Co.より市販されるフルオロポリマーである。PMMAはポリメタクリル酸メチルを意味し、coPETはテレフタル酸を主成分とするコポリマーまたは混合物を意味し(前述の通り)、PETGは第2のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマーを意味する。sPSはシンジオタクチックポリスチレンを意味する。
【0036】
非光学層
第1および第2の光学層以外に、本発明の多層反射フィルムは、1つ以上のスキン層、または1つ以上の内部非光学層(例えば、光学層の組の間の保護境界層など)などの1つ以上の非光学層を任意に含む。非光学層を使用することによって、多層フィルム構造を形成したり、加工中または加工後の損傷や破壊を防止したりすることができる。ある用途の場合では、犠牲保護スキンを有することが望ましい場合もあり、この場合には、使用前に光学スタックからスキン層を剥がせるようにスキン層と光学スタックの間の界面接着力が制御される。
【0037】
多層光学体の引き裂き抵抗性、貫入抵抗性、靱性、耐候性、および耐溶剤性などの性質の付与または向上のために非光学層の材料を選択することができる。通常、1つ以上の非光学層は、第1および第2の光学層による透過、偏光、または反射が起こる光の少なくとも一部がこれらの層も通過するように配置される(すなわち、これらの層は第1および第2の光学層による透過または反射が起こる光路内に配置される)。通常、非光学層は、対象となる波長領域にわたって光学フィルムの反射性に実質的な影響を与えない。大きく湾曲する基材に積層する場合に亀裂やしわが形成されない本発明のフィルムを得るためには、結晶化度や収縮特性などの非光学層の性質を、光学層の性質とともに考慮する必要がある。
【0038】
非光学層は任意の適切な材料であってよく、光学スタックに使用される材料のうちの1つと同じものであってもよい。当然ながら、光学スタックの光学特性に有害な光学特性を有さないようにこれらの材料を選択することが重要である。非光学層は、第1および第2の光学層に使用されるあらゆるポリマーを含むポリエステルなどの種々のポリマーから作製することができる。ある実施態様では、非光学層用に選択される材料は、第2の光学層用に選択される材料と類似しているか同一である。スキン層にcoPEN、coPET、またはその他のコポリマー材料を使用すると、多層光学フィルムの剥離(すなわち、延伸方向でポリマー分子の大部分の結晶化および配列が応力によって誘導されることが原因のフィルムの分断)が軽減される。通常、非光学層のcoPENは、第1の光学層の延伸に使用される条件下で延伸した場合にほとんど配向せず、そのため応力により誘導される結晶化もわずかである。
【0039】
好ましくは、流れが乱れずに共押出可能となるように、第1の光学層、第2の光学層、および任意の非光学層のそれぞれのポリマーは同様のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有するように選択される。通常、第2の光学層、スキン層、および任意の非光学層のガラス転移温度Tは、第1の光学層のガラス転移温度より低温であるか約40℃未満高温であるかのいずれかである。好ましくは、第2の光学層、スキン層、および任意の非光学層のガラス転移温度は、第1の光学層のガラス転移温度よりも低温である。多層光学フィルムの延伸に長手方向延伸(LO)ローラーが使用される場合、低T材料はローラーに固着するため、望ましい低Tスキン材料を使用することができない。LOローラーが使用されない場合は、この制限は問題とならない。一部の用途では、耐久性がありUV線から光学スタックを保護できることから、好ましいスキン層材料としてPMMAとポリカーボネートが挙げられる。
【0040】
スキン層および他の任意の非光学層は、第1および第2の光学層よりも厚い場合もあるし、薄い場合もあるし、同じ厚さの場合もある。スキン層と任意の非光学層の厚さは、個々の第1および第2の光学層の少なくとも一方の厚さの一般に少なくとも4倍、通常は少なくとも10倍であり、さらに少なくとも100倍になる場合もある。非光学層の厚さは、特定の厚さの多層反射フィルムを作製するために変動させることができる。
【0041】
追加のコーティングも非光学層として見なすことができる。その他の層としては、帯電防止コーティングまたはフィルム、難燃剤、UV安定剤、耐摩耗性材料またはハードコート材料、光学コーティング、防曇性材料などが挙げられる。さらに別の機能層またはコーティングは、例えばWO97/01440号、WO99/36262号、およびWO99/36248号に記載されており、これらの記載内容を本明細書に援用する。これらの機能成分は1つ以上のスキン層に混入することができるし、あるいは独立したフィルムまたはコーティングとして適用することができる。
【0042】
他のポリマー光学フィルムも本発明を使用すると好適である。特に、本発明は、温度変動にさらされると過度の反りが生じるポリマーフィルムに使用すると好適である。通常、本発明の光学フィルムは薄い。好適なフィルムとしては種々の厚さのフィルムが挙げられるが、特にフィルムの厚さは15ミル未満であり、より一般的には厚さは10ミル未満であり、好ましくは厚さは7ミル未満である。加工中、250℃を超える温度で寸法安定性層が光学フィルム上に押し出される。したがって、光学フィルムは250℃を超える温度への曝露に耐えられることが好ましく、より好ましくは250℃を超える温度に耐えられる。光学フィルムは加工中に種々の接合工程およびロール掛け工程にも通常はかけられるので、フィルムは可撓性であるべきである。
【0043】
B.寸法安定性層
寸法安定性層は光学フィルムの不規則な反りに対する抵抗性を付与し、通常は脆くはない可撓性光学体が得られる。通常、寸法安定性層は、光学体を曲げたりロール掛けしたりが可能となるのに十分な可撓性を有し、さらに不規則な反りを防止するのに十分な安定性がこの層によって得られる。これに関して、寸法安定性層は光学体のしわおよびたるみを形成されにくくしながら、ロール上に保持するなどによる光学体の取り扱いおよび保管は容易なままである。
【0044】
複合光学体の反りは防止されるが、極端な温度範囲、特に高温では光学体の劣化が起こりうる。通常、寸法安定性層を使用することによって光学フィルムは、1.5時間ごとに−30℃〜85℃の温度のサイクルを400時間繰り返しても反りが生じないか、わずかな反りが生じるのみである。対照的に、寸法安定性層を使用せずに光学フィルム単独であると、これらと同じ状況では反りが生じる。さらに、寸法安定性層を使用せずに光学フィルム単独であると、室温〜60℃および相対湿度70%のサイクルで反りが生じる。
【0045】
通常、寸法安定性層は透明または実質的に透明である。反射率の高い光学体が望ましい実施態様では、露出した寸法安定性層の透明性が高いことが特に重要である。さらに、望ましくない光の変化を防止するため、寸法安定性層の屈折率を、光学フィルム(またはいずれかの中間層)の屈折率に近づけることができる。
【0046】
押出可能であり、高温で加工した後でも透明性が維持され、少なくとも約−30℃〜85℃の温度で実質的に安定となるように、寸法安定性層のポリマー組成が選択されることが好ましい。通常、寸法安定性層は可撓性であるが、−30℃〜85℃の温度範囲にわたって長さまたは幅の実質的な伸張が起こらない。寸法安定性層がこの温度範囲で伸張する場合、その伸張は実質的に均一であり、そのためフィルムに過剰のしわは形成されない。
【0047】
寸法安定性層は、一般にガラス転移温度(T)が85〜200℃、より一般的には100〜160℃であるポリマー材料である。寸法安定性層の厚さは、用途に応じて変動させることができる。しかしながら、寸法安定性層の厚さは通常0.5〜10ミルであり、より一般的には厚さは1〜8ミルであり、さらにより一般的には厚さは1.5〜7ミルである。
【0048】
好適な寸法安定性層は、ポリカーボネート、あるいはポリカーボネートとPEN、CoPEN、PET、およびCoPETとの混和性混合物を含んでもよい。別の実施態様では、寸法安定性層は、ポリスチレン、あるいはスチレン−アクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、およびスチレン−メタクリル酸メチルなどのポリスチレンコポリマーを含む。具体的な組成物としては、GE PolymersのLexan 121ポリカーボネート、GE PolymersのLexan HF1110ポリカーボネート、Dow CorporationのCalibre 5101ガラス充填ポリカーボネート、およびDow CorporationのTyril 880bスチレン−アクリロニトリルが挙げられる。
【0049】
寸法安定性層は、光を拡散するように作製することができる。この拡散性は、本来拡散性であるポリマー材料を使用して得ることができるし、あるいは製造中に寸法安定性層上に拡散パターンをエンボス加工することによって得ることができる。このエンボスパターンは、フィルムに対して垂直から離れた角度の光を、フィルムに対して垂直により近い角度に方向を変えることもできる。寸法安定性層による拡散は、寸法安定性層とは異なる屈折率を有する小さな粒子を混入することによっても実現可能である。さらに、ブタジエンやエチレン−プロピレン−ジメタクリレートなどの選らすとマー成分や、その他のゴム状粒子を寸法安定性層に混入して、拡散性を増加させることができる。このような拡散性によって、光学体の種々の層の不具合または不規則性が隠れやすくなる。
【0050】
拡散性の向上した光学体は、拡散させるために少量の寸法安定性材料をCoPENまたはCoPETと混合することによって実現することもできる。さらに、このようなCoPENまたはCoPETは、CoPENまたはCoPETを含有する光学フィルムの寸法安定性層に対する接着を促進することができる。拡散を増加させるとともに層を互いに保持するために、任意にこのような組成物を中間層として使用することができる。通常、このようなCoPENまたはCoPETには、約1〜30%の寸法安定性材料が加えられ、より一般的には5〜20%の量で加えられる。
【0051】
通常、寸法安定性層は光学フィルムの両側に取り付けられる。しかしながら、ある実施態様では、蛍光灯の周囲に巻き付ける光学体を作製する場合などで、フィルムが湾曲しやすいようにするために、光学フィルムの片側だけに寸法安定性層が取り付けられる。
【0052】
C.中間層
本発明の光学体は、光学フィルムおよび寸法安定性層以外に1つ以上の層を任意に有することもできる。1つ以上の追加層が存在する場合、通常これらの層は複合光学体の完全性を向上させる機能を果たす。特に、これらの層は、光学フィルムを寸法安定性層に接合させる機能を果たす場合がある。ある実施態様では、寸法安定性層と光学フィルムは、直接的には互いに強い接合を形成しない。このような実施態様では、これらの層を互いに接着させる中間層が必要である。
【0053】
通常、中間層の組成は、中間層が接触する光学フィルムおよび寸法安定性層に適合するように選択される。中間層は、光学フィルムおよび寸法安定性層の両方と十分に接合するべきである。したがって、中間層に使用される材料の選択は、光学体の他の成分の組成によって異なる場合も多い。
【0054】
特定の実施態様では、中間層は、押出可能で透明なホットメルト接着剤である。このような層は、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、テレフタル酸ジメチル(DMT)、ヘキサンジオール(HD)、トリメチロールプロパン(TMP)、およびエチレングリコール(EG)の1種類以上を含有するCoPENを含むことができる。NDCを含有する層は、PENおよびCoPENを含有する光学フィルムに寸法安定性層を接着する場合に特に好適である。このような実施態様では、中間層は通常20〜80部のNDCを含有し、好ましくは30〜70部のNDC、より好ましくは40〜60部のNDCを含有する。前述のコモノマーなどの種々の別の化合物を光学フィルムに加えることができる。加工性を向上させ他の層への接着を促進するために、可塑剤や潤滑剤などの押出助剤を加えることができる。また、無機球体やポリマービーズなどの接着性ポリマーとは異なる屈折率を有する粒子を使用することもできる。
【0055】
ある実施態様では、光学フィルム、寸法安定性層、またはその両方と一体となるように中間層が形成される。光学フィルムの露出面上のスキンコートとして中間層を光学フィルムと一体となるように形成することができる。通常、このようなスキンコートは、一体的に形成され層と接合するようにするため、光学フィルムと共押出することによって形成される。このようなスキンコートは、光学フィルムと別の層の接合性を向上させるように洗濯される。ポリカーボネートなどの特定の寸法安定性層への光学フィルムの親和性が非常に低い場合に、スキンコートは特に有用である。このような場合、CoPENとポリカーボネート、またはPETとポリカーボネートの混和性混合物をスキン層として押出すことができる。同様に、光学フィルム上に同時に共押出または連続して押出すことによって、寸法安定性層と一体となるように中間層を形成することができる。本発明のさらに別の実施態様では、スキン層を光学フィルム上に形成し、別の中間層を寸法安定性層とともに形成することができる。
【0056】
中間層は、250℃を超える温度において溶融相で熱安定性を有することが好ましい。したがって、250℃を超える温度による押出中に中間層は実質的に劣化しない。通常、中間層は、フィルムの光学性質を低下させないようにするため、透明であるかまたは実質的に透明である中間層の厚さは通常2ミル未満であり、より一般的には厚さは1ミル未満であり、さらにより一般的には厚さは約0.5ミルである。薄い光学体を維持するため、中間層の厚さは最小限であることが好ましい。
【0057】
D.方法およびシステム
さまざまな方法を、本発明の複合光学体の製造に使用することができる。前述したように、本発明の光学体は種々の構造をとることができ、そのため最終光学体の構造によって製造方法も異なる。
【0058】
複合光学体のすべての製造方法に共通の工程は、光学フィルムを寸法安定性層に接着する工程である。この工程は、種々の層の共押出、層の押出コーティング、または複数の層の共押出コーティング(寸法安定性層と中間層が光学フィルム上に同時に押出コーティングされる場合など)などの種々の方法によって実施することができる。
【0059】
図4は、本発明の実施態様の1つによる光学体の製造システムの平面図を示している。光学フィルム22を有するスプール20は巻き出されて、赤外線熱ステーション24で加熱される。光学フィルム22の温度は通常50℃を超えるまで上昇し、より一般的には約65℃の温度まで上昇する。寸法安定性層を形成するための組成物26と、中間接着層を形成するための組成物28がフィードブロック30から供給されて、あらかじめ加熱された光学フィルム22上に共押出コーティングされる。その後、光学フィルムはロール32、34の間で加圧される。ロール32および/またはロール34は、寸法安定性層上にわずかな拡散面を形成するためのマット仕上を任意に有する。冷却後、コーティングされた光学フィルム36は、シートへの切断などのさらなる加工が行うことができ、それによって完成光学体が得られ、巻取機38に巻き取られる。
【0060】
押出されたフィルムは、光学体材料のそれぞれのシートを熱風中で延伸することによって配向させることができる。経済的に製造するためには、延伸はは、標準的な長さ延伸機、テンターオーブン、またはその両方によって連続的に実施することができる。標準的なポリマーフィルム製造の経済的な規模およびライン速度を実現でき、そのため市販の吸光偏光子の場合よりも実質的に製造コストが低くなる。
【0061】
ミラーを製造する場合、2枚の一軸延伸偏光シートが、それぞれの配向軸が90℃回転して配置されるか、1枚のシートが二軸延伸される。多層シートを二軸延伸することによって、両方の軸に対して平行な面における屈折率に関して隣接する層の間で差が生じ、その結果偏光方向の両方の面の光の反射が起こる。
【0062】
複屈折系を形成するための方法の1つは、スタックの少なくとも1種類の材料は延伸工程の影響を受ける屈折率を有する(例えば屈折率が増加または減少する)多層スタックの二軸延伸(例えば、2つの方向に沿った延伸)を行うことである。多層スタックの二軸延伸によって、両方の軸に対して平行な面における屈折率に関して隣接する層の間で差が生じることがあり、その場合には両方の偏光面の光を反射する。具体的な方法および材料は発明の名称「An Optical Film and Process for Manufacture Thereof(光学フィルムおよびその製造方法)」のPCT特許出願WO99/36812号に教示されており、この記載内容を本明細書に援用する。
【0063】
予備延伸温度、延伸温度、延伸速度、延伸比、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット緩和、および横方向延伸緩和は、所望の屈折率関係を有する多層装置が得られるように選択される。これらの変数は相互依存性であり、例えば、比較的遅い延伸速度は、例えば比較的低い延伸温度と組み合わせて使用することができる。所望の多層装置を得るために適切なこれらの変数の組み合わせの選択方法は当業者には明らかであろう。しかしながら、一般に延伸比は、好ましくは延伸方向で1:2〜1:10(より好ましくは1:3〜1:7)の範囲であり、延伸方向と直交する方向で1:0.5〜1:10(より好ましくは1:0.5〜1:7)の範囲である。
【0064】
E.実施例
これより、以下の実施例を参照して本発明を説明する。
【0065】
実施例1
PENおよびCoPEN(55モル部のNDCと45モル部のDMTを含有)層と、2つのCoPENスキン層(55モル部のNDCと45モル部のDMTをカルボキシレート成分として含有)とを有する多層反射偏光子を、赤外線加熱によって65℃に予備加熱した後、ニップロールに7.5フィート/分で供給した。共押出したCoPEN接着層と高Tgポリカーボネート溶融層を、多層反射偏光子上に押出コーティングした。このCoPEN接着層は、20モル部のNDC、80モル部のDMT、4モル部のHD、0.2モル部のTMP、および95.8モル部のEGを含有した。上記高T溶融層は、GE PolymersのLexan 121ポリカーボネートを含有した。CoPEN接着層の厚さを0.5ミル、ポリカーボネートの厚さを6ミルに維持しながら、これらのポリマーを271℃で共押出した。押出コーティング層を有する偏光子は、150rmsマット仕上げを有し83℃に加熱されたキャスティングホイールで加圧することで、ポリカーボネートに拡散面をエンボス加工した。同じ工程を繰り返して、光学フィルムの反対側に接着層とポリカーボネート層を適用した。得られた試料をオーブンに入れて、1.5時間ごとに−30℃〜85℃を変動する400時間のサイクルにかけても、反りは観察されなかった。
【0066】
実施例2
PENおよびCoPEN(55モル部のNDCと45モル部のDMTを含有)層と、2つのCoPENスキン層(55モル部のDMTと45モル部のNDCを含有)とを有する多層反射偏光子を、赤外線加熱によって65℃に予備加熱した後、ニップロールに7.5フィート/分で供給した。共押出したCoPEN接着層と高Tgスチレン−アクリロニトリル溶融層を、多層反射偏光子上に押出コーティングした。このCoPEN接着層は、20モル部のNDC、80モル部のDMT、4モル部のHD、0.2モル部のTMP、および95.8モル部のEGを含有した。上記高T溶融層は、DOW CorporationのTyril 880bスチレン−アクリロニトリルを含有した。CoPEN接着層の厚さを0.5ミル、スチレン−アクリロニトリルの厚さを6ミルに維持しながら、これらのポリマーを271℃で共押出した。押出コーティング層を有する偏光子は、150rmsマット仕上げを有し83℃に加熱されたキャスティングホイールで加圧することで、スチレン−アクリロニトリルに拡散面をエンボス加工した。同じ工程を繰り返して、光学フィルムの反対側に接着層とスチレン−アクリロニトリル層を適用した。得られた試料をオーブンに入れて、1.5時間ごとに−30℃〜85℃を変動する400時間のサイクルにかけても、反りは観察されなかった。
【0067】
実施例3
PENおよびCoPEN(55モル部のNDCと45モル部のDMTを含有)層と、2つのCoPENスキン層(55モル部のDMTと45モル部のNDCを含有)とを有する多層反射偏光子を、赤外線加熱によって65℃に予備加熱した後、ニップロールに7.5フィート/分で供給した。共押出したCoPEN接着層と高Tgスチレン−アクリロニトリル溶融層を、多層反射偏光子上に押出コーティングした。このCoPEN接着層は、55モル部のNDC、45モル部のDMT、4モル部のHD、0.2モル部のTMP、および95.8モル部のEGを含有した。上記高T溶融層は、DOW CorporationのTyril 880bスチレン−アクリロニトリルを含有した。CoPEN接着層の厚さを0.5ミル、スチレン−アクリロニトリルの厚さを6ミルに維持しながら、これらのポリマーを271℃で共押出した。押出コーティング層を有する偏光子は、150rmsマット仕上げを有し83℃に加熱されたキャスティングホイールで加圧することで、スチレン−アクリロニトリルに拡散面をエンボス加工した。同じ工程を繰り返して、光学フィルムの反対側に接着層とスチレン−アクリロニトリル層を適用した。得られた試料をオーブンに入れて、1.5時間ごとに−30℃〜85℃を変動する400時間のサイクルにかけても、反りは観察されなかった。
【0068】
実施例4
PENおよびCoPEN(55モル部のNDCと45モル部のDMTを含有)層と、2つのCoPENスキン層(55モル部のDMTと45モル部のNDCを含有)とを有する多層反射偏光子を、赤外線加熱によって65℃に予備加熱した後、ニップロールに7.5フィート/分で供給した。共押出したCoPEN接着層と高Tgポリカーボネート溶融層を、多層反射偏光子上に押出コーティングした。このCoPEN接着層は、20モル部のNDC、80モル部のDMT、4モル部のHD、0.2モル部のTMP、および95.8モル部のEGを含有した。このCoPEN接着層は、光学体の拡散性を増加させるために、Zeelan IndustriesのX273 zeeeospheresを10重量%さらに含有した。上記高T溶融層は、GE PolymersのLexan 121ポリカーボネートを含有した。CoPEN接着層の厚さを0.5ミル、ポリカーボネートの厚さを6ミルに維持しながら、これらのポリマーを271℃で共押出した。押出コーティング層を有する偏光子は、150rmsマット仕上げを有し83℃に加熱されたキャスティングホイールで加圧することで、ポリカーボネートに拡散面をエンボス加工した。接着層にzeeospheresを加えなかったことを除けば、同じ工程を繰り返して、光学フィルムの反対側に接着層とポリカーボネート層を適用した。得られた試料をオーブンに入れて、1.5時間ごとに−30℃〜85℃を変動する400時間のサイクルにかけても、反りは観察されなかった。
【0069】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の意図および範囲から逸脱せずに形態および詳細を変更可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の光学層を交互に有する複屈折性の多層反射光学フィルムを提供する工程、および
可撓性透明寸法安定性層を該複屈折性の多層反射光学フィルムの第1主面上に押出コーティングする工程
を含む、光学体の製造方法。
【請求項2】
前記可撓性透明寸法安定層が、スチレン−アクリロニトリルまたはポリカーボネートを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の可撓性透明寸法安定層を、前記複屈折性の多層反射光学フィルムの第2主面上に押出コーティングする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−18406(P2012−18406A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177382(P2011−177382)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【分割の表示】特願2008−191235(P2008−191235)の分割
【原出願日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】