説明

光学可変磁気ストライプアセンブリ

【課題】OVMストライプを含むカードが、金属層を経由する静電放電、特にカードホルダーの本体と取引装置またはリーダー中の導電性素子を電気的に結ぶ端部間放電に関連した操作上の問題を起こす分野において危険性を除くために、修正されたOVMストライプ構造を提供する。
【解決手段】磁性層、前記磁性層上の光学可変効果発生層、前記磁性層と前記光学可変効果発生層の間の非導電性透明反射向上層を含み、
前記非導電性透明反射向上層と前記磁性層の間に光学的不明瞭化層をさらに含み、
前記光学的不明瞭化層が、単色または多色設計規定視覚読み取り情報で提供されている
光学可変磁気ストライプアセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データストライプ、特に金融取引カードに見られるものなどの光学可変磁気ストライプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカード、デビットカード、小切手保証カード、乗車券、貯金通帳その他の形態のセキュリティ書類などの支払い書類や身元確認書類に磁気ストライプを付与することが長年行なわれてきた。磁気ストライプが存在するので、そのような書類は視覚によらない機械可読データのキャリアになれる。
【0003】
多くの場合、上記の書類は、エンボス加工されたホログラムまたは回折画像の形態で、視覚的なセキュリティまたは認証のデバイスも備えている。しかし、上記の書類に上記のデバイスが両方存在すると、他の情報、セキュリティ項目(security feature)および設計要素を記すのに利用可能な書類の残りの表面積がかなり減る。
【0004】
したがって、2つのデバイスを1つの一体構造にまとめる要求があり、発明者らは、以下でこの一体構造を光学可変磁気(optically variable-magnetic:OVM)ストライプと称する。一体構造にしたデバイスは、視覚的に安全確保された磁気データキャリアあるいは機械可読データにより個人化できる(オープンアーキテクチャ環境で可読な)「ホログラム」と見なすことができる。
【0005】
OVMストライプの従来技術構造は、米国特許第4,684,795号、米国特許第4,631,222号、米国特許第5,383,687号およびEP-A-0998396に詳述されている。原則として、OVMストライプは、現在、高保磁力および低保磁力テープが適用される全ての用途で代替でき、金額的に最も大きい用途は、OVMストライプがプラスティック金融取引カードに適用される場合である。
【0006】
図1は、上記で引用した従来技術に記載の金融カードに付与される従来技術OVMストライプの断面略図である。
【0007】
基本的に、それは2の機能的な基礎構造を含んでなる:
1.透明ラッカー層1が、ホログラフィまたは回折表面浮彫り構造2によりエンボス加工され、且つ、金属、典型的にはアルミニウムの連続的な反射向上層(reflection-enhancing layer)3により被覆されており、接着促進プライマー層4により、
2.このプライマー層4上に被覆された磁気層5に結合している。磁気層5は、熱活性化した接着層6にさらに被覆され、カード基材7に構造を結合する。
【0008】
プラスティック取引カード7は、典型的にはトリラミネート構造(図示せず)、すなわち両面に情報が印刷された不透明な中央ポリマーコア層を2つの透明ポリマーオーバーレイシートの間に挟んだ積層構造である。
【0009】
先ず、OVMストライプを熱活性化連続ロールオン転写プロセスにより、カード背面の透明オーバーレイシートに貼着する。次いで、ラミネートする3層を、ラミネートプレス中で溶融接合(fusion bond)する。実質的にホットスタンピングプロセスにより磁気テープを透明オーバーレイシートに貼着するため、OVMストライプ構造をリリース・コーティング付きキャリア(release coated carrier)または裏当て層(backing layer)上に与えることがまず必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来技術OVMストライプの構造的欠陥が確認された。従来の非ホログラフィ磁気ストライプと異なり、従来技術OVMストライプは連続金属反射向上層3を備えている。この金属反射向上層は導電性であり、これが、現金自動預入支払機における静電放電の問題を引き起こす。
【0011】
低環境湿度の条件下で、不良導体または逆に言うと良好な絶縁体である物品または体に、著しい表面静電荷が蓄積することは知られている。例えば、絶縁性の(例えばゴムの)靴底の靴を履いてカーペットをひいた部屋で歩き回っている人は、非常に大量の表面静電荷を得ることがあり、これはその人が金属のドアハンドルなどの良導体を触った時に明らかになるであろうが、静電荷の急速な放電が起こり、小さな電気ショックを経験する。
【0012】
空気の湿度が25%未満に低下すると特に、大気への静電荷の漏洩を妨げるほど空気の導電率が低くなり、そのような場合数キロボルトを超える静電位が人体に貯まることがある。
【0013】
次に、従来の磁気ストライプを含むプラスティック、典型的にはPVCの取引カードを考察しよう。
【0014】
人体と比べてPVCは非常によい絶縁体であり、したがって、カードの外部の第2の導体と接触するカード内の導電性素子がなければ、カードの表面に静電荷の分布があると考えるのが当然である。
【0015】
現在、公知の非ホログラフィ磁気ストライプ内の磁性酸化物層はカードの両端部で露出しており、したがって、電位が存在し、カードが自動取引装置(ATM)または磁気カードリーダーに挿入される時、露出した端部はリーダー内の導電体部品と接触し、カードの表面上の静電気の蓄積をATMまたはリーダー中の電気回路に迅速に放電する。これに関連する電圧スパイクは非常に大きいので、機械に損傷を与え、または停止することがある。しかし、発明者らが実施した試験により、磁性酸化物層の導電性は低いので、最悪の場合でもカード上の静電電位蓄積の非常に遅い移動または放電しか起こさないことが確認された。
【0016】
しかし、標準的な磁気ストライプを含むカードを使用するシナリオからカードがOVMストライプを含む場合にこの静電放電問題に関する発明者らの考察を移すと、ホログラフィ回折層上に存在する表面浮き彫り2に貼着された反射金属層3により伝導および静電放電の機会がある。発明者らが実施した試験は、OVMストライプの露出端部(PVC取引カード上に存在)を、金属球に移動した電荷または電圧の通過動的変化を測定できる装置に接続した金属球と接触させるものであるが、反射金属層が非常に迅速かつ効率的に、カードの外側に存在した静電荷を金属球上に放電することを確認する。
【0017】
さらに、そのような試験は、OVMストライプの近い端部に指が接触するように個人がカードを持ち、OVMストライプのもう片方の端部を導電性球に触らせる場合、個人に存在する静電荷および電位が導電性球に迅速に放電されることも確認する。
【0018】
明らかに、適当な環境条件下で個人への静電気の蓄積は相当になりうるので、記載された方法(カードおよびカードホルダー上に存在する静電気の機械回路中への放電を起こす)で取引カードがATMまたはリーダー中におかれる場合、機械が損傷を受けたり、操作が中断したりする危険性が著しい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によると、光学可変磁気ストライプアセンブリは、磁気層、前記磁気層上の光学可変効果発生層および前記磁気層と前記光学可変効果発生層との間に非導電性反射層を含む。
【0020】
発明者らは、OVMストライプを含むカードが、金属層を経由する静電放電、特にカードホルダーの本体と取引装置またはリーダー中の導電性素子を電気的に結ぶ端部間放電(end to end discharge)に関連した操作上の問題を起こす分野において危険性を除くために、修正されたOVMストライプ構造が要求されていることを認識した。
【0021】
本発明の第1の態様において、発明者らは、従来技術の金属反射層を非導電性反射層に代える。これは、磁気ストライプアセンブリを備えているセキュリティ書類の端部が触れる時の放電の問題を低減または回避する。
【0022】
非導電性反射層は、例えば、高屈折率材料などの非金属性材料を利用して、いくつかの方法で製造できる。
【0023】
本発明の第2の態様によると、光学可変磁気ストライプアセンブリは、磁気層、前記磁気層上の光学可変効果発生層および前記磁気層と前記光学可変効果発生層との間に反射層を含み、前記反射層は少なくとも1つの金属部分を含んでなり、その金属部分または金属部分のそれぞれは、前記光学可変効果発生層の全長に沿って部分的にのみ延びている。
【0024】
この態様において、少なくとも1つの金属部分の形態で、光学可変効果発生層の全長に沿って導電経路がないことを確実にすれば、金属反射層を使用できる。いくつかの金属部分をその間に不連続な切れ目を入れて与えるか、金属部分がアセンブリの端部に延びないことを確実にすれば、これが達成できるであろう。
【0025】
本発明の第3の態様によると、光学可変磁気ストライプアセンブリは、磁気層、前記磁気層上の光学可変効果発生層、前記磁気層と前記光学可変効果発生層の間の不連続金属反射層および静電荷を制御された方法で放散できるように配置された静電抵抗層(static resistive layer)を含む。
【0026】
前記静電抵抗層は金属反射層と接触することもあるが、これは本質的でない。金属層は、金属部分の間に不連続な切れ目を取り込むか、ドットデメット(dot demet)構造を利用することにより不連続にできる。
【0027】
この手法において、静電抵抗層(または高抵抗)層は、電荷を制御された方法でゆっくりと放散できる。そのような「静電抵抗層」は、106−1010オーム/スクエアの範囲の、特に108−109オーム/スクエアの表面抵抗率を持つ必要がある。好適な静電抵抗層は、非導電性バインダー中の導電性顔料の組み合わせを含んでなる。好適な導電性顔料の例にはカーボンブラックおよび酸化アンチモンがある。VMCHは好適なバインダーの例である(VMCHは、例えば、http://www.dow.com/svr/prod/cmvc.htmなど多くのサイトから入手可能な一般的に使用されているバインダー/接着剤である)。
【0028】
磁気ストライプアセンブリは、当業者には容易に分かるようにセキュリティ書類を含む広範囲のセキュリティ物品に使用可能である。
【0029】
本発明による光学可変磁気ストライプアセンブリのいくつかの例を説明し、添付する図面に関連して比較例と対照させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、カード基材に接着した従来アセンブリによる略断面図(比率どおりではない)である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施例の図1に類似した図である。
【図3】図3は、キャリア層に支持されカード基材に取り付ける前の図2のアセンブリを断面(比率どおりではない)で示す。
【図4】図4は、第1の比較例の、図2に類似した図である。
【図5】図5は、第1の比較例の、図3に類似した図である。
【図6】図6は、図4比較例の平面図である。
【図7】図7は、カード基材に取り付けた本発明によるアセンブリの第2の実施例の図2に類似した図である。
【図8】図8は、図7に示したアセンブリの平面図である。
【図9】図9は、第2の比較例のアセンブリの、図2に類似した図である。
【図10】図10は、第2の比較例のアセンブリの、図3に類似した図である。
【図11】図11は、図9に示された実施例の異なる実施形態の平面図である。
【図12】図12は、図10に示された実施例の異なる実施形態の平面図である。
【図13】図13は、本発明によるアセンブリの第3の実施例の図2に類似の図である。
【図14】図14は、第3の実施例の図3に類似の図である。
【図15】図15は、本発明によるストライプアセンブリの第4の実施例の図14に類似した図である。
【図16】図16は、カード基材に取り付けられた本発明によるストライプアセンブリの第5の実施例の図2に類似した図である。
【図17】図17は、金属促進反射層への2つの異なる金属の使用を表す断面略図である。
【図18】図18は、金属促進反射層への2つの異なる金属の使用を表す平面図である。
【0031】
以下の記載では、先に記載した層と実質的に同じ層には同じ参照番号を与える。
【実施例】
【0032】
実施例1
図2および3は、第1の解決法の断面図を示す。図2は、カード基材7に貼着した後の構造を示す。図3はカード基材に貼着する前の構造を示す。図3は、支持ポリマーキャリア層10およびリリース・コーティング層11の存在を示す。典型的にはキャリア層10は19−23ミクロンのPET層であり、リリース・コーティング層11は典型的には厚さ0.01から0.1ミクロンのワックスまたはシリコーン層である。ここで、従来技術の高導電性金属反射向上層3を非導電性反射向上層に代えた。好適な代替の反射向上層の第1の例は、光学屈折率が少なくとも2.0であり、絶縁体(電磁理論では誘電体として知られる)として分類されるような電気的には不良導体である材料のコーティング12である。
【0033】
2.0以上の屈折率は、典型的には屈折率がおよそ1.4であるエンボス加工されたラッカー層1と誘電反射コーティング12の間に最小でも0.5以上の屈折率変化を確保するために通常必要である。当業者は、経験と反射効率に関するフレネル式による算出の両方から、この屈折率の段差によって、ほとんどの周囲光条件下で許容可能な視覚上の明るさを持つホログラフィ画像または回折画像が得られることを知るであろう。
【0034】
屈折率が2.0以上で良好な光学透明性を持ち、真空蒸着のプロセスにより被覆できる好適な誘電材料は、TiO2、ZnSおよびZrO2であるが、他の好適な金属酸化物材料もある。
【0035】
そのような材料は、高屈折率(HRI)材料として光学コーティング産業内に公知である。
【0036】
これらの材料を堆積すると、選択した特定の誘電体および必要な光学効果に応じて、0.07μm〜0.15μmの厚さ範囲の層12を作る。
【0037】
これらのHRIコーティングは透明であるので、ホログラフィ画像が、下のコーティングにより与えられる反射色相に対して見られることに留意されたい。驚くべきことに、発明者らは、完全に不明瞭にする金属層が過去に使用されていたという事実にもかかわらず発明者らはこれが必ずしも不利益でないことを見いだした。
【0038】
実際にそれは利点にもなりうる。例えば、高屈折率層を通して見ることができるのが利点である着色磁気材料が存在する。色またはインディシア(indicia)が磁気層上に付与されるのでアセンブリのコピーがはるかに難しくなる。
【0039】
高屈折率層の使用は、腐食など金属層に関連する問題も回避する。
【0040】
接着促進層またはプライマー4に着色剤が無く、ほどほどの光透過性を有する場合、背景色相は黒色(Hi−Co)または茶色(Lo−Co)の磁性酸化物層により与えられるだろう。これらの暗い色は、当然、ホログラフィ画像の知覚される明度およびコントラストを増す望ましい効果を有するであろう。美的理由からHRI層12を通して下にあるコーティングが見えないことが望ましい場合、着色または金属インク被覆層(図示せず)などのさらなる光学的不明瞭化層(optical obscuring layer)をHRIと磁気層の間に与えることができる。非導電性である限り金属インクを使用してよい。実際、非導電性樹脂バインダーが金属顔料粒子を完全に囲んでいるため、金属インクの大多数は非導電性である。さらなる増強として、この追加の被覆層を、単色または多色設計規定視覚読み取り情報(single or multicolour design defining visibly readable information)の形態で与えることができる。
【0041】
追加の層を提供するのではなく、プライマー4および/または接着層6に着色剤を加えても類似の効果が得られる。
【0042】
プライマー層4は、厚さが約0.7ミクロンの純粋に有機的な層(おそらく架橋している)でよい。無機材料も好適である。具体的な例は米国特許第5,383,687号に記載されているが、前記層は、少なくとも無機顔料が添加されている少なくとも1種の有機ポリマーの層である。使用されるポリマーは、例えば、高分子アクリル樹脂、ポリビニリデンクロライドPVC、PVCコポリマー、塩素化ゴム、ポリエステルおよびシリコーン修飾バインダーでよい。使用される無機顔料は、例えば、ケイ酸塩および/または二酸化チタンでよい。
【0043】
発明者らは接着促進プライマー層4を単一の層またはコーティングとして示してきたが、この層のシステムが、副層(sub-layer)またはコーティングであって、それぞれ反射層および磁気層との接着に対して最適化された別々な異なる配合を持つ副層またはコーティングから事実上構成されていてよいことを発明者らが予期していることを認識されたい。
【0044】
そのような場合、着色剤(有機染料または無機顔料の形態をとることがある)をこれらの副層の1つにのみ提供することが好ましい。
【0045】
発明者らは、OVMストライプの色相または色の変更に加え、あるいはその代替として、発光材料を提供するのも有利なことを認識した。そのような材料は、セキュリティ印刷に広く使用されて追加のセキュリティを加え、非可視光源を利用して確認できる。
【0046】
HRI層12を使用するさらなる代替として、他の非導電性反射向上層を使用してもよい。例えば、HRIの代わりに非導電性金属インクを使用して許容できる効果を得ることができる。これは、金属インクがHRI層と組み合わせて使用されている上述の実施例とは異なる。
【0047】
第1の比較例
図4、5および6は、第1の比較例を示す。ここで、従来技術構造の連続金属層は、一様な不連続な金属層40、具体的にはスクリーンデメタライズされた(screen de-metallised)反射金属層に代えられており、前記金属はドットまたはセル(直径およそ50−150マイクロメートル)の規則的な行列にされている。このデメタライズ化は、当業界に公知のいくつかの方法で実施できるが、例えば、米国特許第5,145,212号を参照されたい。
【0048】
好ましい方法は、金属化の前のエンボス加工層1上への水溶性顔料マスク(所望の金属セルスクリーンパターンのネガである)のグラビア印刷であろう。金属化の後、箔を脱イオン水に浸し、下のマスクおよび関連した金属廃棄物マトリックス(metal waste matrix)を溶解させる。
【0049】
この非腐食液手法の利点は、一般的に全ての金属種に適用可能である点である。磁気的な符号化および読み取りプロセスと干渉するかもしれない、ストライプに沿って存在する空間的に不連続なレジストマスクもない。
【0050】
セルマトリックスに保持される金属のパーセンテージは要求される視覚効果によるが、隣接する金属セルまたは画素が接触せず、導電経路を元に戻すという技術的要求もあるであろう。
【0051】
図4および5は、連続金属層が、上述の部分的にデメタライズされたドットスクリーン構造と代えられているカード構造の断面略図を示す。
【0052】
図6は、ドットデメタライズされたスクリーンセル構造の拡大図の付いた上述の構造の平面図である。上述のとおり、ドットスクリーンの密度は、要求される視覚効果により変えることができる。デメタライズ化後に残される高密度の金属は人間の目に連続した金属層の印象を与えるであろうし、低密度の金属は半透明に見えるOVMストライプを生むであろう。
【0053】
実施例1のとおり、追加の印刷またはコーティング層をドットスクリーンの下に任意に与えることができる。
【0054】
規則的なドットスクリーンの使用をここに記載する。不規則または確率的なドットスクリーンも使用できることに留意されたい。ドットの他に、スクリーン要素はインディシアまたはロゴを含むこともできるが、これはさらなるレベルのセキュリティを加えるであろう。
【0055】
実施例2
第2の実施例において、不連続金属反射向上層30が与えられる。
【0056】
図7および8に示すこの実施例の第1の実施形態において、金属反射向上層30は、金属を含まない分離した領域またはギャップ32により分離されている多くの金属領域31により形成されている。これらのデメタライズされた金属のない領域32は、OVMストライプの幅全体にわたって延び、導電経路に切れ目を与えている。金属のない領域32は、比較例に関して上述したものなどデメタライゼーションプロセスにより与えられる。反射向上層30中に存在する金属のない領域32は、合計で9から10mmのギャップ幅を持たなければならない。しかし、合計で5から15mm以上のギャップ幅も企図される。より小さいギャップの使用も可能であるが、ギャップをまたぐ静電放電の危険性が高まる。単一のギャップの幅よりも存在するギャップ幅の合計が重要であることに留意されたい。例えば、図7および8に示すOVMストライプは合計で3のギャップ32を有する。この場合、各ギャップ32が2−4mmの幅を有し、存在する合計ギャップ幅は6−12mmであることが好ましいであろう。OVMが2つのギャップ32のみを持つ場合、各ギャップは3−10mmである必要があり、より好ましくは4−6mmである必要があろう。ギャップの大きさは、ギャップをまたぐ静電放電の危険性の低減と美的外観の間の折衷である。
【0057】
金属のない領域32が存在する場合、プライマー層4を見ることが可能であり、プライマー層4が透明である場合薄黒い磁気層5を見ることが可能である。実施例1と同じく、これらの薄暗い色は、ホログラフィ画像の明度およびコントラストを増す望ましい効果を持つであろう。美的理由から下のコーティングが見えないことが望ましい場合、着色または金属インク被覆層などのさらなる光学的不明瞭化層を与えるか、好適な着色材料で着色したプライマー/磁気層。
【0058】
OVMストライプの非金属領域中のホログラフィ画像の可視性を保持するさらなる代替策および手段として、追加のHRI層を貼着してもよい(図示せず)。HRI層はOVMストライプの表面全体の上に貼着され、金属反射向上層31の上にでも、下にでも貼着できる。美的目的で、金属およびHRI反射向上層の両方の組み合わせを使用する場合、金属31と非金属32領域の間に鋭い切れ目がないことが好ましい。例えば、図8に関して、金属と非金属領域は、はっきりとした切れ目32で別れている。この場合、はっきりとした切れ目であるよりも金属がHRI領域へ移り変わるように見えれば好ましいであろう。これはいくつかの方法で達成できる。
【0059】
● ある領域にかけて100%金属から0%金属へと移る段階的なスクリーンの使用
● 金属領域の端部での微細線設計加工の利用
● 微細線設計加工は、マイクロテキストまたは他のグラフィック要素を取り入れることがある。
【0060】
これらの可能性は、以下の第2の比較例により詳細に説明する。
【0061】
遷移がどのように達成されようと、OVMストライプの幅全体にわたって延びる好適な寸法の非金属ギャップを保持して非導電経路を与えることが重要である。
【0062】
第2の比較例
図9、10、11および12は第2の比較例を図式的に表している。実施例2に記載したのと類似の手法において、従来技術の連続金属層が、間に切れ目32を入れた金属領域31により形成されている。しかし、この解決法で、切れ目32は完全に金属を含まないわけでなく、比較例に記載したのと類似のデメタライズされたドットスクリーン33を含んでいる。
【0063】
図9および10において、金属反射向上層には、部分的にデメタライズされた領域33が与えられていることがわかる。ドットスクリーンを含むこれらの部分的にデメタライズされた領域。ドットスクリーンは、水溶性顔料マスクが選択された領域にのみ貼着された点を除いて、比較例に記載したのと同じ方法で作ることができる。典型的には、ドットスクリーンの密度は金属領域31にかけて段階的に増している。
【0064】
図11および12は、OVMストライプ構造のデメタライズされたスクリーン領域の拡大の付いた例証となる平面図を示す。図11および12から分かるように、部分的にデメタライズされたスクリーン領域33は、OVMストライプの幅全体にわたって延び、導電経路に切れ目を与えている。実施例2と同様に、ドットデメタライズされた切れ目は0.5から5mmの、好ましくは0.1から0.4mmの、より好ましくは0.2から0.3mmのギャップを含まなければならない。上述のものより幅広いギャップを与えることも可能であるが、静電荷はギャップを越えてジャンプできるのでより狭いギャップを与えることは望ましくない。
【0065】
図11のデメタライズされたスクリーン領域33は、一連の金属ドットを含んでなる構造として与えられた。金属ドットのそれぞれは、導電経路が全くないことを確実にするよう周囲の他の金属ドットと全く接触しないようになっている。比較例に記載したとおり、金属ドットの密度はデメタライズされた領域の外観に影響を与えるだろう。
【0066】
図12は、規則的なドットスクリーンではなく、異なるデメタライゼーションパターンが使用されている別な配置を示す。この例において、NDICIAという言葉がポジティブスクリプトとしてデメタライズされている。これは導電経路中の切れ目および追加のセキュリティ項目の両方を与える。NDICIAと言う言葉を形成する文字は小さいので人間の目には見えず、拡大した場合のみ見える。
【0067】
当業者には明らかであろうが、テキストの使用は単に設計の選択であり、OVMストライプの幅全体にわたって導電経路中に切れ目が与えられる限り、どのようなインディシア、ライン設計、ロゴまたは画像を使用することもできる。特に、情報のポジ(非金属背景上の金属)表示およびネガ(金属背景上の非金属)表示の両方が利用可能であることに留意されたい。
【0068】
実施例3
図13は、上述の問題のさらなる解決法を示す。基本的に、金属反射向上層の導電経路中に切れ目が与えられているという点で、構造は実施例2に記載のものと同じである。しかし、ここでは導電性の切れ目35がカードの端部に位置している。
【0069】
上記の解決法と同様に、最終的に仕上げたカードの端部に存在する非導電性切れ目35は、全部で5から15mm以上、好ましくは9−10mmの領域を含まなければならない。上述のより幅広い領域を与えることは可能であるが、静電荷はギャップを越えてジャンプできるのでより狭い領域を与えることは望ましくない。しかし、互いにすぐに隣り合う2つの切れ目ならびにダイカットおよびマトリックスストリッピング(matrix stripping)操作のための十分な余裕を効果的に与える必要のため、カードに貼着する前の箔上の実際の非導電性切れ目領域は、上記で引用した寸法よりもはるかに大きいことに留意されたい。
【0070】
カードの端部に非導電性領域35を持つことにより、金属導電領域31は実際には密封され直接触ることができない。したがって、金属領域31は、カードを提示する人にも、カードを受け入れるATM装置の金属部品にも直接接触しない。
【0071】
この構造では、ストライプがカードに位置を合わせて貼着されることが必要である。図13は、カードの端部に非導電性切れ目が与えられているOVMストライプ構造の断面略図を示す。図14はカードへ貼着する前の同じ構造であるが、ダイカットされ製造の間に除去される、隣接カードとの間にある領域36を含む同じ構造を示す。
【0072】
この場合、非導電性切れ目35を、デメタライズされている非金属領域または上述のものなどのデメタライズされているスクリーン構造により与えてもよい。上記の実施例と同様に非金属または部分的にデメタライズされている領域に、追加の着色または金属インク層を任意に与えて、プライマー層および薄黒い磁気層を見えなくすることもできる。
【0073】
同様に、追加の着色層を与える代わりに、顔料または染料を使用してプライマー層および/または磁気層を着色することもできる。
【0074】
実施例4
図15は、その構造内に導電性金属層を有する磁気ストライプカードの静電放電に関連する問題を克服する他の手法を示す。
【0075】
この解決法において、金属反射向上層に切れ目を与えるのではなく、接着層6’が選択的な方法で貼着される。図15に示されるOVMストライプがカード表面に貼着される場合、それに関連する接着剤を有するストライプの領域のみがカードに転写される。ダイカットの後で仕上げたカード中の接着剤無被覆領域37の大きさは、非導電性切れ目について記載されていたもの、すなわち合計で5から15mm以上の、好ましくは9−10mmの幅を有する領域とほぼ同じでなくてはならない。その結果は、金属のない分離した領域が、接着剤のない領域37に対応するアセンブリの端部に形成されるであろう。転写後の最終製品は図13に類似なものである。
【0076】
図15は、カードの端部での接着無被覆領域37を表すが、接着無被覆領域はOVMストライプの長さに沿ってどこにでも設けることができる。接着剤は、局所的に、またはストライプの表面全体にわたってドットパターンで塗布できる。金属層中の切れ目を、接着剤層中の切れ目と重ねて位置があうように設置することが可能なことに留意されたい。
【0077】
接着剤の選択的被覆が、本願ですでに記載した解決法のいずれと組み合わせても利用できる。特に、選択的に塗布した接着剤の利用は、実施例4と組み合わせれば有利であろう。
【0078】
実施例5
この実施例では、不連続金属層31が、さらなる静電抵抗(または高抵抗)層45(図16)と組み合わせて使用される。静電放電は常に最も抵抗の少ない経路をとるので、不連続金属層を使用しなくてはならない。連続金属層が存在すると、静電放電は静電抵抗層を単に迂回するであろう。層45は、金属層31の下で金属層31に接触して与えられており、静電荷が制御された方法で放散される手段を提供している。カード中の電荷の蓄積は、ゆっくりとより制御された方法で放電層45により放電される。
【0079】
静電抵抗層は、表面抵抗率が106−1010オーム/スクエア、特には108−109オーム/スクエアの範囲の層である。好適な静電抵抗層は、非導電性バインダー中の導電性顔料の組み合わせを含んでなる。好適な導電性顔料の例には、カーボンブラックおよび酸化アンチモン(例えば、Keeling and Walkersの市販品Stanosat CPM10Cナノ分散液グレード)がある。VMCHは好適なバインダーの一例である(VMCHは、http://www.dow.com/svr/prod/cmvc.htmなど多くのサイトから入手可能な一般的に使用されているバインダー/接着剤である)。実験により、静電抵抗層は、0.5から2gsmの被覆重量で付与すべきであることが示された。
【0080】
カーボンブラックを使用する場合、バインダー中のカーボンブラックの添加量を変えることにより表面抵抗率を制御するのが困難であることが見いだされた。例えば、乾燥被膜中の0.3:1のカーボンブラック対バインダーの比はおよそ107オーム/スクエアの表面抵抗率を与えるが、0.25:1の比は1011オーム/スクエアの表面抵抗率(実際上絶縁している)を与える。したがって、比較的わずかな比の変化で、はるかに著しい変化が表面抵抗率にある。より高度の制御が好ましいため、これは問題を提示する。この制御の欠如は、非全面的な形態でカーボンブラック静電抵抗材料を被覆することにより克服できる。すなわち、上記の材料を、OVMストライプの長い端部に平行に延びている一連の細い平行なトラックとして印刷して、連続したブロックとする。存在する静電抵抗材料の量を減らすことにより、2つの金属領域間のギャップをわたる導電経路の面積を実質的に減らすと、表面抵抗率を増加させることができる。
【0081】
酸化アンチモンを使用する場合、酸化アンチモン対バインダーの比を変えることにより表面抵抗率のより高い制御を得ることが可能である。発明者らの実験によると、乾燥被膜中の1.6:1の酸化アンチモン対バインダーの比がおよそ107オーム/スクエアの表面抵抗率を与えることが示された。1:1の比は1011オーム/スクエアの表面抵抗率を与える。さらなる実験として、1.3:1の比は108オーム/スクエアの表面抵抗率を与える。
【0082】
取りかかった仕事によると、最大15kVの入力電圧に対して静電放電効果を除去するために、カードの、より正確にはOVMストライプの両端間抵抗は、106から109オーム、典型的にはほぼ5×108オームである必要があることが示された。例えば、金属層と接触している静電抵抗層を有するOVMストライプおよび2×5mmギャップまたは3×3.3mmギャップを有する金属層では、両端間抵抗はギャップの全抵抗であり、すなわちこの実験に対しておよそ全体で10mmである。この場合、両端間抵抗は静電抵抗層の表面抵抗率に近く、5×109オームの両端間抵抗は、静電抵抗層が5×109オーム/スクエアの表面抵抗率を持つことを要求するであろう。
【0083】
別な場合において、静電抵抗層は金属層と直接接触していない。典型的に遭遇する入力電圧の大きさに対して、静電抵抗層と金属層の間に1種または複数のバインダーまたは材料層が存在することはほとんど影響がない。入力電圧が大きいので、バインダー層を通って効果的にショートする。ここでは、連続静電抵抗層がバインダー層の下または実際には光学可変層の一部として提供される。このシナリオでは、両端間抵抗は表面抵抗率の10倍に等しくなければならない。したがって、5×109オームの両端間抵抗要件に対して、静電抵抗層の表面抵抗率は5×108オーム/スクエアに等しくなければならない。
【0084】
図17および18は、すでに記載した実施例の向上を示している。ここで、単一の金属促進層を使用するのではなく、異なる2つの着色金属促進層31Aおよび31Bが使用されている。例えば、金属31Aはアルミニウムでよく、金属31Bは銅でよい。明らかに他の金属または金属合金の組み合わせが使用できる。上記実施例に非導電経路を与えることがやはり必要である。図17および18に示される構造は、セキュリティおよび美的な点の両方で製品の著しい向上を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層、前記磁性層上の光学可変効果発生層、前記磁性層と前記光学可変効果発生層の間の非導電性透明反射向上層を含み、
前記非導電性透明反射向上層と前記磁性層の間に光学的不明瞭化層をさらに含み、
前記光学的不明瞭化層が、単色または多色設計規定視覚読み取り情報で提供されている
光学可変磁気ストライプアセンブリ。
【請求項2】
前記磁性層が、磁性酸化物層である、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記反射層が少なくとも2.0の光学屈折率を有する、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記光学可変効果発生層と前記反射層の間に、少なくとも0.5の屈折率変化がある、請求項1から3のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記反射層が、TiO2、ZnSまたはZrO2などの高屈折率材料である、請求項1から4のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記反射層が0.07〜0.15ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1から5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記反射層が非導電性金属インクを含んでなる、請求項1から6のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記磁性層と前記反射層の間に接着促進層をさらに含んでなる、請求項1から7のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記接着促進層が光学的不明瞭化材料を含む、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記光学的不明瞭化層が非導電性金属インクである、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記接着促進層が、関連する層への接着に対して最適化された配合をそれぞれ有する複数の副層により形成されている、請求項8から10のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記光学的不明瞭層が、単色または多色設計が視覚読み取り情報を規定する請求項1から11のいずれかに記載のアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−129248(P2011−129248A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57697(P2011−57697)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2008−549061(P2008−549061)の分割
【原出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】