説明

光学式ピックアップ

【課題】対物レンズ駆動機構をシャーシ内へ組み込む際に懸念されるFPCの組み付け不良を確実に防止できる「光学式ピックアップ」を提供する。
【解決手段】光学式ピックアップ1に備えられるFPC5には、背面基板11に接続される先部51aに曲げ部51bを連続させた第1帯状部51と、受発光ユニット3に接続される第2帯状部52とが設けられており、第1帯状部51は曲げ部51bからベース部材6の一側面6cに沿って斜め上方へ延伸する傾斜部51cを有する。この第1帯状部51はベース部材6や背面基板11等を含むレンズアクチュエータ4と一緒にシャーシ2内へ組み込まれるが、その際、傾斜部51cをベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間に配置させて、傾斜部51cの上端部分を一側壁25越しに露出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDやCD等のディスク状記録媒体に対して情報を記録/再生する光学式ピックアップに係り、特に、フレキシブル配線基板の一部を対物レンズ駆動機構と一緒にシャーシ内に組み付けるようにした光学式ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式ピックアップは、ディスク状記録媒体(以下、「ディスク」と略称する)の半径方向へ移送されるシャーシと、このシャーシに担持された受発光ユニットと光学手段および対物レンズ駆動機構と、シャーシから導出されて外部回路に接続されるフレキシブル配線基板(以下、「FPC」と略称する)とによって概略構成されている。受発光ユニットには光源(半導体レーザ)と光検出器が一体的に配設されており、レンズアクチュエータと呼称される対物レンズ駆動機構には、対物レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダを弾性的に支持している複数本の導電性のワイヤと、各ワイヤの固定端部が接続された背面基板と、マグネットを含む磁気回路が設けられたベース部材とが具備されている。この背面基板はベース部材に保持されており、ワイヤには対物レンズを駆動するための制御信号がFPCを介して供給される。また、受発光ユニットと対物レンズ間の光路中には光学手段として反射ミラー等が配設されている。
【0003】
この種の光学式ピックアップでは、通常、光学ベースであるシャーシ内でFPCが第1帯状部と第2帯状部とに分岐されている。第1帯状部は背面基板に接続されており、この第1帯状部を介してワイヤに制御信号が供給されると、対物レンズがフォーカス方向やトラッキング方向へ駆動(フォーカス補正やトラッキング補正)されるようになっている。一方、第2帯状部は受発光ユニットに接続されており、この第2帯状部を介して受発光ユニットに電源信号や制御信号が供給されると共に、光検出器が検出した信号が第2帯状部を介してセット側の信号処理回路へ送出されるようになっている。FPCはシャーシの外方へ導出された長尺な主部を有しており、この主部の先端部分がセット側の外部駆動回路や信号処理回路等にコネクタ接続される部位となる。そして、主部から分岐した第1帯状部と第2帯状部のうち、第2帯状部は受発光ユニットの存するシャーシの一端側に組み付けられ、第1帯状部はシャーシの他端側へ引き回されて略直角に折り曲げられた後、背面基板に接続される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−320060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した構成の光学式ピックアップを組み立てる際には、対物レンズ駆動機構(レンズアクチュエータ)の構成部材である背面基板の中央部にFPCの第1帯状部の先端部分を接続した後、この状態で対物レンズ駆動機構と第1帯状部をシャーシ内の所定位置に組み込むようにしている。その際、FPCの第2帯状部は予め受発光ユニットに接続されてシャーシの一端側に拘束された状態となっているため、FPCの第1帯状部は先端側(背面基板側)と基端側(第2帯状部側)の両方が拘束部位となっている。したがって、対物レンズ駆動機構をシャーシ内へ組み込む際には、第1帯状部の両拘束部位の中間付近に延在する動きやすい部位(変位容易部位)の組み付け位置に配慮しつつ作業を行う必要があり、こうして組み込んでからベース部材をシャーシにねじ止め固定する。しかる後、シャーシに対する対物レンズの光軸の傾きを調整(スキュー調整)して光学式ピックアップの組立作業が完了する。
【0006】
しかしながら、対物レンズ駆動機構をシャーシ内へ組み込む作業時に、FPCの第1帯状部の中間付近に延在する変位容易部位がふらついて対物レンズ駆動機構の下方へ潜り込みやすいため、第1帯状部の一部が対物レンズ駆動機構の底面部(ベース部材の底面等)とシャーシの内底部との間に挟持されたまま光学式ピックアップが組み立てられてしまうことがある。その場合、スキュー調整等でベース部材の姿勢が変更されたときに、FPCの第1帯状部が強く加圧されて断線に至る可能性が高まるため、製品の信頼性が低下してしまう。また、対物レンズ駆動機構をシャーシ内に組み込むと、FPCの第1帯状部はシャーシの外壁部に覆われて外部から見えなくなるため、第1帯状部が正しく組み付けられているか否かを目視で確認することも困難であった。
【0007】
なお、特許文献1に開示された光学式ピックアップでは、FPCの第1帯状部の大部分をシャーシの外側へ引き回しているため、シャーシ内で第1帯状部の組み付け不良が発生する可能性は低くなっているが、その反面、シャーシの外側で第1帯状部にたるみが生じて外部機器等と干渉しやすくなり、第1帯状部のたるみを低減するための追加措置も必要となる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、対物レンズ駆動機構をシャーシ内へ組み込む際に懸念されるFPCの組み付け不良を確実に防止できる光学式ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、マグネットを含む磁気回路が設けられたベース部材と、対物レンズを保持するレンズホルダと、前記対物レンズを弾性的に支持する複数本の導電性のワイヤと、これらワイヤの固定端側が接続されると共に前記ベース部材に支持された横長形状の背面基板と、前記対物レンズを介してディスク状記録媒体に光ビームを照射する光源を含む受発光ユニットと、この受発光ユニットおよび前記ベース部材を担持してディスク状記録媒体の半径方向へ移送されるシャーシと、前記背面基板と外部回路との間を導通するフレキシブル配線基板とを備え、前記フレキシブル配線基板が前記背面基板に接続された第1帯状部と前記受発光ユニットに接続された第2帯状部とを有する光学式ピックアップにおいて、前記フレキシブル配線基板の前記第1帯状部が、前記背面基板との接続箇所から側端部に向かって延伸する先部と、この先部に連続して略直角に折り曲げられた曲げ部と、この曲げ部から前記ベース部材の一側面に沿って斜め上方へ延伸する傾斜部とを有しており、この傾斜部から前記曲げ部の逆側へ延伸する部分を前記第2帯状部に連続させると共に、前記傾斜部を前記ベース部材の一側面と前記シャーシの外壁部との間の空隙に配置させて、その上端部分を該シャーシの外壁部から上方へ露出させる構成とした。
【0010】
このように構成された光学式ピックアップでは、FPCの第1帯状部の曲げ部付近(曲げ部とその隣接箇所)が自由に動きやすい変位容易部位となるが、ベース部材やレンズホルダや背面基板等を含む対物レンズ駆動機構を第1帯状部と一緒にシャーシ内へ組み込む際に、この変位容易部位のうち、傾斜部側はベース部材の一側面とシャーシの外壁部との間に配置させて位置規制することができる。また、第1帯状部の傾斜部は曲げ部からベース部材の一側面に沿って斜め上方へ延伸しているため、この変位容易部位は、対物レンズ駆動機構の下方へ潜り込める下端部分が比較的小さくなっている。したがって、対物レンズ駆動機構を第1帯状部と一緒にシャーシ内へ組み込む際に、第1帯状部の変位容易部位がふらついて対物レンズ駆動機構の下方へ潜り込んでしまう可能性は低い。また、この第1帯状部は大部分をシャーシ内で引き回せるため、たるみを抑制できて外部機器等との干渉も回避できる。さらに、第1帯状部が正しくシャーシ内へ組み付けられると、傾斜部の上端部分がシャーシの外壁部越しに露出するようにしてあるため、対物レンズ駆動機構と一緒に第1帯状部をシャーシ内へ組み込んだときに、傾斜部の上端部分の露出位置を確認することによって、第1帯状部が正しく組み付けられているか否かを目視で容易に判定できる。つまり、第1帯状部の変位容易部位の下端部分が対物レンズ駆動機構の下方へ万一潜り込んでしまった場合は、傾斜部の上端部分が所定位置に露出しなくなるため、第1帯状部の組み付け不良が瞬時に判明され、よって組み込み作業を速やかにやり直すことができる。
【0011】
上記の構成において、シャーシの内底面にFPCの第1帯状部の変位容易部位(曲げ部とその隣接箇所)の下端部分を収容して位置規制する溝部が設けられていると、対物レンズ駆動機構と一緒に第1帯状部をシャーシ内へ組み込む際に、溝部によって該変位容易部位のふらつきを一層確実に抑制できるため、第1帯状部の組み付け不良を防止する効果が高まる。この場合において、第1帯状部の溝部に収容された部分の上端部が背面基板の側端部と非接触で対向していると、背面基板の側端部がワイヤの軸線方向へ撓んでも第1帯状部と干渉する虞がなくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学式ピックアップは、FPCの第1帯状部を対物レンズ駆動機構と一緒にシャーシ内へ組み込む際に、第1帯状部の変位容易部位(曲げ部とその隣接箇所)のうち、傾斜部側をベース部材の一側面とシャーシの外壁部との間に配置させて位置規制することができ、しかも、この変位容易部位は対物レンズ駆動機構の下方へ潜り込める下端部分が比較的小さくなっているため、第1帯状部の変位容易部位がふらついて対物レンズ駆動機構の下方へ潜り込んでしまう可能性は低い。また、第1帯状部はその大部分をシャーシ内で引き回せるため、たるみを抑制できて外部機器等との干渉も回避できる。また、傾斜部の上端部分の露出位置を確認することによって、第1帯状部が正しく組み付けられているか否かを目視で容易に判定できるため、仮に第1帯状部の組み付け不良が発生したとしても速やかに作業をやり直すことができる。それゆえ、この光学式ピックアップは、FPCの第1帯状部の組み付け不良を確実に防止できて信頼性が高く、組立性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係る光学式ピックアップの斜視図である。
【図2】該光学式ピックアップを図1の奥側から見た斜視図である。
【図3】該光学式ピックアップの平面図である。
【図4】該光学式ピックアップの側面図である。
【図5】該光学式ピックアップの底面図である。
【図6】該光学式ピックアップの分解斜視図である。
【図7】該光学式ピックアップに備えられるシャーシの平面図である。
【図8】該光学式ピックアップの内部構造を示す斜視図である。
【図9】図8に対応する側面図である。
【図10】図8の右側方から見た外観図である。
【図11】図8に対応する背面図である。
【図12】図10と図11に対応する要部斜視図である。
【図13】該光学式ピックアップに備えられるレンズアクチュエータの斜視図である。
【図14】該レンズアクチュエータの平面図である。
【図15】該レンズアクチュエータの側面図である。
【図16】該レンズアクチュエータの背面図である。
【図17】該レンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図18】該レンズアクチュエータの構成要素であるベース部材の斜視図である。
【図19】該ベース部材の平面図である。
【図20】該ベース部材の右側面図である。
【図21】該ベース部材の左側面図である。
【図22】該ベース部材の背面図である。
【図23】該ベース部材の展開図である。
【図24】図23に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図6は本発明の実施形態例に係る光学式ピックアップの全体を示している。
【0015】
これらの図に示す光学式ピックアップ1は、樹脂成形品であるシャーシ2と、このシャーシ2に担持された受発光ユニット3やレンズアクチュエータ4や反射ミラー17(図6参照)等と、シャーシ2から導出されて外部回路に接続されるFPC(フレキシブル配線基板)5とによって概略構成されている。対物レンズ駆動機構であるレンズアクチュエータ4は、マグネット10を含む磁気回路が設けられたベース部材6と、対物レンズ8を保持するレンズホルダ7と、一端部(自由端部)がレンズホルダ7を弾性的に支持している4本の導電性のワイヤ9と、各ワイヤ9の他端部(固定端部)が半田付けされた横長形状の背面基板11とを備えている。また、FPC5はシャーシ2外に導出された長尺で幅広な主部50を有しており、この主部50がシャーシ2内で第1帯状部51と第2帯状部52とに分岐されている。これら両帯状部51,52のうち、第1帯状部51は背面基板11に接続され、第2帯状部52は受発光ユニット3に接続されている。
【0016】
なお、受発光ユニット3には光源(半導体レーザ)と光検出器が一体的に設けられている。また、反射ミラー17等の光学手段は、受発光ユニット3と対物レンズ8間の光路中に配設されている。
【0017】
シャーシ2は、図示せぬガイド主軸が挿通される第1ガイド部21と、図示せぬガイド副軸に弾接状態で係合する第2ガイド部22とを有しており、これらガイド主軸とガイド副軸に案内されながらディスクの半径方向へ移送されるようになっている。このシャーシ2内には、第1ガイド部21が突設されている一方側の端部にレンズアクチュエータ4の背面基板11が設置され、第2ガイド部22が突設されている他方側の端部に受発光ユニット3が設置されている。また、シャーシ2の他方側の端部には金属薄板からなる押え板15が取着されており、この押え板15を受発光ユニット3に圧接させることによって、受発光ユニット3に対する放熱効果が高められている。なお、図8〜図12は、光学式ピックアップ1からシャーシ2や押え板15を省略した状態の外観図である。
【0018】
図7の平面図に示すように、シャーシ2には上部を開放する収納空間23が設けられており、この収納空間23に組み込まれたレンズアクチュエータ4のベース部材6がシャーシ2にねじ止め固定されている。また、シャーシ2の内底部には収納空間23の一隅に沿って平面視L字状に延びる溝部24が設けられており、図9の2点鎖線で示すように、この溝部24にFPC5の第1帯状部51の下端部を挿入(収容)することによって、組立時に懸念される第1帯状部51の組み付け不良が回避されるようになっている。溝部24の一端側はシャーシ2の一側壁(外壁部)25に沿って延びており、この一側壁25は溝部24の近傍においてFPC5の第1帯状部51を露出させうる高さ寸法に設定されている(図4参照)。
【0019】
図13〜図17はレンズアクチュエータ4を示しており、図18〜図22はレンズアクチュエータ4の構成要素であるベース部材6を示している。ベース部材6は磁性材料からなる板金製の一体部品であり、図23と図24に示す展開形状の金属板16を折曲加工して形成される。このベース部材6には、レンズホルダ7を配置させるホルダ収納部6aが画成されていると共に、2本の調整ねじ13(図1〜図6参照)を用いてシャーシ2に固定される一対の取付片60と、背面基板11の長手方向の中央部を接着固定する第1折曲片61と、ワイヤ9を挿通させる透孔62aを有する一対の第2折曲片62とが設けられている。また、このベース部材6には、一対の第2折曲片62の近傍にそれぞれ第3折曲片63と第4折曲片64が設けられていると共に、ホルダ収納部6aの上方の四隅に第5折曲片65が設けられている。なお、図23と図24の展開図において、図18〜図22と対応する部分には括弧付きで同一符号を付してある。
【0020】
ベース部材6の第1折曲片61と第2折曲片62および第3折曲片63は上向きに折曲された起立片であり、取付片60と第4折曲片64および第5折曲片65は横向きに折曲された突出片である。そして、一対の取付片60に螺着した各調整ねじ13を適宜回転すことにより、シャーシ2に対するベース部材6の姿勢が変化して対物レンズ8の光軸の傾き調整(スキュー調整)を行えるようになっている。
【0021】
一対の第2折曲片62にはそれぞれ上下一対の透孔62aが形成されており、図12と図13に示すように、各透孔62a内にはワイヤ9を挿通した状態で緩衝用ゲル剤12が充填される(図1や図2、図8、図10等では緩衝用ゲル剤12を図示省略)。具体的には、未硬化のゲル剤を透孔62aに注入して充填させた後、このゲル剤にUV光を照射して硬化させるという充填硬化作業を行って緩衝用ゲル剤12となしている。そして、この緩衝用ゲル剤12が透孔62a内のワイヤ9に対してダンパー効果を及ぼすため、レンズホルダ7の動きを阻害しないように各ワイヤ9を弾性変形させることができる。なお、背面基板11の長手方向の中央部を第1折曲片61に固定すると、この背面基板11の両側端部(長手方向の両端部)がそれぞれ第2折曲片62と所定間隔を存して対向するようになっているため、ワイヤ9の固定端部に近接し過ぎない箇所で効果的にダンピングを行うことができる。また、緩衝用ゲル剤12の充填硬化作業を行なう場合に、ゾル状態のゲル剤をその表面張力を利用して透孔62a内に容易に充填させることができると共に、このゲル剤の透孔62a内における基準面の位置も安定させることができ、しかも、透孔62aと背面基板11との間のスペースを有効利用してUV光を効率良く照射させることができる。
【0022】
一対の第3折曲片63は透孔62aに挿通されたワイヤ9と干渉しない位置で第2折曲片62と対向しており、ベース部材6を側方から見ると、第3折曲片63は第2折曲片62と背面基板11の側端部との間に立設されている。したがって、背面基板11の長手方向の中央部を第1折曲片61に固定すると、この背面基板11の両側端部がそれぞれ第3折曲片63に近接して対向することになり、背面基板11の側端部が第2折曲片62側へ押し撓められたとても、該側端部がすぐに第3折曲片63に当接して位置規制されるようになっている。つまり、これら一対の第3折曲片63は、背面基板11の両側端部(自由端)がワイヤ9のスラスト方向(軸線方向)へ過度に撓まないように規制するためのものである。
【0023】
一対の第4折曲片64は第2折曲片62の上部から近傍の第3折曲片63を覆うように横向きに延びており、第2折曲片62と背面基板11との間に延在するワイヤ9は各第4折曲片64の下方空間内に位置している。つまり、各ワイヤ9の固定端側が第2折曲片62と背面基板11との間の空所に遮蔽されることなく露出していると、組立作業時などに誤ってワイヤ9を塑性変形させてしまう危険性があるため、これら第4折曲片64によってワイヤ9を保護している。
【0024】
ベース部材6にはホルダ収納部6aを挟んで対向する一対のヨーク部6bが立設されており、各ヨーク部6bの上部から線対称な位置関係で2片ずつ、計4片の第5折曲片65が横向きに延びている。これら第5折曲片65は、光学式ピックアップ1に振動や衝撃が加わってもレンズホルダ7が過度に上昇しないように規制するためのものである。また、各ヨーク部6bの対向面にはそれぞれマグネット10が密着固定されており、このようなヨーク部6bから第5折曲片65が延設されているため、各第5折曲片65は磁気回路のヨーク体積の増大化にも寄与している。
【0025】
対物レンズ8はレンズホルダ7の中央部に保持されており、ディスクに対する情報の記録や再生が行われる際に、受発光ユニット3の光源(半導体レーザ)から出射された光ビームが反射ミラー17等の光学手段を経て対物レンズ8に入射された後、この対物レンズ8で収束されてディスクの信号記録面に照射されるようになっている。また、ディスクの信号記録面で反射された戻り光は、対物レンズ8へ入射された後、前記光学手段を経て受発光ユニット3の光検出器で光電変換されて電気信号が取り出される。
【0026】
レンズホルダ7には磁気回路の磁束を横切るコイル(フォーカスコイルとトラッキングコイル)14が取着されており、これらのコイル14がワイヤ9の一端部(自由端部)に接続されていると共に、ワイヤ9の他端部(固定端部)が背面基板11に接続されている。そして、この背面基板11がFPC5を介して外部駆動回路に接続されるため、所定のワイヤ9を介してフォーカスコイルに通電することにより、対物レンズ8の光軸に沿った方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ8のフォーカス補正が可能となる。同様に、別のワイヤ9を介してトラッキングコイルに通電することにより、対物レンズ8の光軸と直交する方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ8のトラッキング補正が可能となる。なお、前述したように、透孔62a内のワイヤ9に対して緩衝用ゲル剤12がダンパー効果を及ぼすため、レンズホルダ7を弾性的に支持している各ワイヤ9は、通電時にレンズホルダ7の動きを阻害しないように弾性変形できる。また、透孔62aのトータル数は使用するワイヤ9の本数に対応しており、本実施形態例では4本のワイヤ9に対応して計4つの透孔62aが形成されているが、ワイヤ9を6本配設する構成の場合は、各第2折曲片62にそれぞれ3つの透孔62a(計6つ)を形成すれば良い。
【0027】
背面基板11の長手方向の中央部はベース部材6の第1折曲片61に接着固定され、該中央部にFPC5の第1帯状部51が半田付けされている。ただし、背面基板11には第1折曲片61に接着されずにベース部材6の下方へ突出する突出部11aが形成されており、この突出部11aを含む背面基板11の中央部がFPC5との接続箇所となっている。また、背面基板11の両側端部(長手方向の両端部)にはワイヤ9が半田付けされており、これら両側端部はワイヤ9のスラスト方向の動きを阻害しないように撓み変形可能な自由端部となっている。なお、前述したように、背面基板11の両側端部は、透孔62aを有する第2折曲片62と所定間隔を存して対向していると共に、位置規制用の第3折曲片63と近接して対向している。
【0028】
次に、FPC5の構成について詳しく説明する。FPC5の長尺で幅広な主部50はシャーシ2の外方へ導出されており、この主部50の先端部分がセット側の外部回路(外部駆動回路や信号処理回路等)とコネクタ接続される部位となる。主部50は第1帯状部51と第2帯状部52とに分岐しており、そのうち第1帯状部51は、シャーシ2内でベース部材6の一側面6cに沿って引き回されて略直角に折り曲げられた後、背面基板11の自由端側の下方から突出部11aを経て中央部に接続されている。一方、第2帯状部52はシャーシ2の上面に沿って引き回された後、下方へ折り曲げられて受発光ユニット3に接続されているが、図8に示すように、この第2帯状部52は受発光ユニット3と一緒にシャーシ2に組み付けられて半固定状態となっている。
【0029】
図8〜図12に示すように、FPC5の第1帯状部51は、背面基板11との接続箇所である突出部11aから該背面基板11の下方を通って側端部へ延伸する先部51aと、この先部51aに連続して略直角に折り曲げられた曲げ部51bと、この曲げ部51bからベース部材6の一側面6cに沿って斜め上方へ延伸する傾斜部51cとを有しており、傾斜部51cから曲げ部51bの逆側へ延伸する部分を第2帯状部52に連続させている。この第1帯状部51は、先部51aを背面基板11の中央部に半田付けした状態で、レンズアクチュエータ4と一緒にシャーシ2内へ組み込まれる。その際、第1帯状部51の傾斜部51cはベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間の空隙に配置されるが、こうしてシャーシ2内に第1帯状部51を組み付けると、傾斜部51cの上端部分がシャーシ2の一側壁25よりも上方に位置して光学式ピックアップ1の側方に露出するようになっている(図4参照)。
【0030】
この光学式ピックアップ1では、対物レンズ8をフォーカス方向やトラッキング方向へ駆動(フォーカス補正やトラッキング補正)するための制御信号がFPC5の第1帯状部51を介してワイヤ9に供給されるようになっている。また、FPC5の第2帯状部52を介して受発光ユニット3に電源信号や制御信号が供給されると共に、光検出器が検出した信号(電気信号)が第2帯状部52を介してセット側の信号処理回路へ送出されるようになっている。
【0031】
次に、レンズアクチュエータ4をシャーシ2内へ組み込む作業について説明する。この場合、FPC5は予め第1帯状部51の先端部分を背面基板11の中央部に接続しておくと共に、第2帯状部52を受発光ユニット3に接続してシャーシ2に組み付けておき、この状態でレンズアクチュエータ4を第1帯状部51と一緒にシャーシ2内の所定位置に組み込む。すなわち、レンズアクチュエータ4のベース部材6をシャーシ2の収納空間23に組み付けると共に、FPC5の第1帯状部51をシャーシ2の内壁面に沿わせて組み付け、しかる後、一対の取付片60に調整ねじ13を螺着してベース部材6をシャーシ2に固定する。
【0032】
より詳しく説明すると、レンズアクチュエータ4をシャーシ2内へ組み込む際には、ベース部材6を収納空間23に位置合わせして搭載すると共に、FPC5の第1帯状部51をベース部材6の一側面6cに巻き掛けるようにしてシャーシ2内へ組み付ける。この第1帯状部51は、第2帯状部52に近い基端側はシャーシ2に拘束されているが、基端側と先端側の途中に位置する曲げ部51b付近(曲げ部51bとその隣接箇所)は自由に動きやすい変位容易部位なので、この変位容易部位を収納空間23の一隅に沿って延びる溝部24に挿入することにより、組み込み作業時における該変位容易部位の勝手な動き(ふらつき)を規制するようにしている。なお、第1帯状部51の変位容易部位と背面基板11の突出部11aはベース部材6の底面から下方へ突出しているが、ベース部材6を収納空間23に搭載したときに、これら変位容易部位と突出部11aの下端部分を溝部24に挿入することによって、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下面とシャーシ2の内底面との間に挟まれないようになっている。つまり、溝部24は第1帯状部51と突出部11aの下端部を収容する逃げスペースとして機能するため、ベース部材6を収納空間23に搭載した後も、第1帯状部51の変位容易部位は背面基板11の側端部と重なることなく非接触で対向した状態を維持することになる。また、この組み込み作業時に第1帯状部51の傾斜部51cはベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間に挟まれて位置規制されるが、前述したように、傾斜部51cの上端部分はシャーシ2の一側壁25よりも高い位置に配置される。
【0033】
このようにFPC5の第1帯状部51の変位容易部位(曲げ部51bとその隣接箇所)を位置規制してふらつきを抑制しつつ、レンズアクチュエータ4と一緒に第1帯状部51をシャーシ2内へ組み込むと、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下方へ潜り込む可能性が低くなるため、第1帯状部51がベース部材6とシャーシ2の内底部との間に挟持されてしまうという組み付け不良を回避しやすくなる。なお、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下方へ万一潜り込んでしまった場合には、傾斜部51cの上端部分が所定位置に露出しなくなることで、第1帯状部51の組み付け不良が瞬時に判明されるため、このような場合は組み込み作業を速やかにやり直すことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る光学式ピックアップ1では、FPC5の第1帯状部51の曲げ部51b付近が自由に動きやすい変位容易部位となるが、レンズアクチュエータ4を第1帯状部51と一緒にシャーシ2内へ組み込む際に、第1帯状部51の変位容易部位のうち、曲げ部51bから傾斜部51cに至る部分はベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間に配置させて位置規制することができる。また、第1帯状部51の傾斜部51cは曲げ部51bからベース部材6の一側面6cに沿って斜め上方へ延伸しているため、第1帯状部51の変位容易部位は、レンズアクチュエータ4の下方へ潜り込める下端部分が比較的小さくなっている。したがって、レンズアクチュエータ4をシャーシ2内へ組み込む際に、第1帯状部51の変位容易部位がふらついてレンズアクチュエータ4の下方へ潜り込んでしまう可能性は低い。また、この第1帯状部51は大部分をシャーシ2内で引き回せるため、第1帯状部51のたるみを抑制できて外部機器等との干渉も回避できる。しかも、傾斜部51cの上端部分の露出位置を確認することにより、第1帯状部51が正しく組み付けられているか否かを目視で容易に判定できるため、第1帯状部51の組み付け不良が発生した場合は速やかに作業をやり直すことができる。それゆえ、この光学式ピックアップ1は、FPC5の第1帯状部51の組み付け不良を確実に防止でき、信頼性が高く組立性も良好なものとなっている。
【0035】
また、この光学式ピックアップ1では、シャーシ2の内底面に第1帯状部51の変位容易部位の下端部分を収容して位置規制する溝部24が設けられているため、レンズアクチュエータ4と一緒に第1帯状部51をシャーシ2内へ組み込む際に、変位容易部位のふらつきを一層確実に抑制でき、第1帯状部51の組み付け不良を防止する効果が高められている。さらに、このような溝部24を設けることによって、第1帯状部51の先部51aから曲げ部51bに至る部分を背面基板11の側端部の下方に非接触な状態で配置させやすくなるため、ワイヤ9の弾性変形に伴って背面基板11の側端部が撓んでも第1帯状部51と干渉することはなく、信頼性の高い光学式ピックアップ1を実現できる。
【符号の説明】
【0036】
1 光学式ピックアップ
2 シャーシ
3 受発光ユニット
4 レンズアクチュエータ(対物レンズ駆動機構)
5 FPC(フレキシブル配線基板)
6 ベース部材
6b ヨーク部
6c 一側面
7 レンズホルダ
8 対物レンズ
9 ワイヤ
10 マグネット
11 背面基板
11a 突出部
13 調整ねじ
14 コイル
15 押え板
23 収納空間
24 溝部
25 一側壁(外壁部)
50 主部
51 第1帯状部
51a 先部
51b 曲げ部
51c 傾斜部
52 第2帯状部
60 取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットを含む磁気回路が設けられたベース部材と、対物レンズを保持するレンズホルダと、前記対物レンズを弾性的に支持する複数本の導電性のワイヤと、これらワイヤの固定端側が接続されると共に前記ベース部材に支持された横長形状の背面基板と、前記対物レンズを介してディスク状記録媒体に光ビームを照射する光源を含む受発光ユニットと、この受発光ユニットおよび前記ベース部材を担持してディスク状記録媒体の半径方向へ移送されるシャーシと、前記背面基板と外部回路との間を導通するフレキシブル配線基板とを備え、前記フレキシブル配線基板が前記背面基板に接続された第1帯状部と前記受発光ユニットに接続された第2帯状部とを有する光学式ピックアップにおいて、
前記フレキシブル配線基板の前記第1帯状部が、前記背面基板との接続箇所から側端部に向かって延伸する先部と、この先部に連続して略直角に折り曲げられた曲げ部と、この曲げ部から前記ベース部材の一側面に沿って斜め上方へ延伸する傾斜部とを有しており、この傾斜部から前記曲げ部の逆側へ延伸する部分を前記第2帯状部に連続させると共に、前記傾斜部を前記ベース部材の一側面と前記シャーシの外壁部との間の空隙に配置させて、その上端部分を該シャーシの外壁部から上方へ露出させたことを特徴とする光学式ピックアップ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記シャーシの内底面に前記曲げ部とその隣接箇所の下端部分を収容して位置規制する溝部が設けられていることを特徴とする光学式ピックアップ。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記第1帯状部の前記溝部に収容された部分の上端部が前記背面基板の側端部と非接触で対向していることを特徴とする光学式ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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