説明

光学素子、光学素子アレイ、表示装置および電子機器

【課題】低電圧で正確な駆動を実現することができる光学素子を提供する。
【解決手段】この光学素子は、対向配置された電極11,12と、電極11,12をそれぞれ覆う誘電体膜13,14と、誘電体膜13と誘電体膜14との間のキャビティ部15を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有する極性液体16および無極性液体17とを備える。電極12は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、電極11は、電極12を透過した光を反射するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロウェッティング現象を利用した光学素子および光学素子アレイ、ならびにその光学素子アレイを備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ、電子ペーパなどの各種の表示装置が提案され、商品化されている。
【0003】
近年、カラーフィルタを用いない表示方式の1つとして、半導体MEMS技術により干渉、選択反射を行うようにしたMEMSディスプレイなるものも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7944601号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、このような表示装置に対し、低消費電力でありながら、高輝度かつ高速応答性を有するなど、いっそうの高性能化が要求されている。そのうえ、大画面化にも対応可能であることが求められている。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、より低い駆動電圧であっても応答性に優れ、かつ、より高輝度の光を発することのできる光学素子および光学素子アレイを提供することにある。また、本開示の第2の目的は、そのような光学素子アレイを備え、低消費電力でありながら、高い表示性能を発揮する表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光学素子は、対向配置された第1および第2の電極と、それら第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間領域に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体とを備える。第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、第2の電極は、第1の電極を透過した光を反射するものである。
【0008】
本開示の光学素子アレイは、第1の電極と、その第1の電極とそれぞれ対向配置された複数の第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間領域に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体とを備える。第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、第2の電極は、第1の電極を透過した光を反射するものである。
【0009】
本開示の光学素子および光学素子アレイでは、第1の電極において反射した反射光と、第1の電極を透過してキャビティ部に入射したのち、第2の電極で反射した戻り光との干渉が生じる。ここで、第1の電極と第2の電極との間の電圧印加により、第1および第2の電極と、第1および第2の媒体の一方である極性液体との界面エネルギーが変化し、その極性液体の表面形状が変化する現象が生じる。このため、その極性液体がキャビティ部に引き込まれることとなる。第1の媒体と第2の媒体との屈折率が異なることから、キャビティ部に存在する媒体によって干渉条件が変化することとなる。すなわち、第1の媒体がキャビティ部に存在する場合に生じる干渉状態と、第2の媒体がキャビティ部に存在する場合に生じる干渉状態とが異なる。
【0010】
本開示の表示装置は、対向配置された第1および第2の電極と、第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間領域に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体とをそれぞれ有する複数種の表示素子を備える。第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、第2の電極は、第1の電極を透過した光を反射するものである。複数種の表示素子における第1の電極と前記第2の電極との間隔は、相互に異なっている。また、本開示の電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0011】
本開示の表示装置および電子機器では、第1の電極において反射した第1の反射光と、第1の電極を透過してキャビティ部に入射したのち、第2の電極で反射した第2の反射光との干渉が生じる。また、第1の電極と第2の電極との間隔が相互に異なる複数種の表示素子を備えることから、同一の媒体がキャビティ部に存在した場合であっても、干渉条件が変化することとなる。すなわち、表示素子の種類ごとに、異なる特定波長光が外部へ射出し、あるいは外部への光の射出の遮断が行われる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の光学素子および光学素子アレイによれば、エレクトロウェッティング現象を利用して、キャビティ部に存在する媒体の切り替えを速やかに行うことができる。そのため、第1および第2の媒体の各屈折率のほか、第1の電極と第2の電極との間隔、入射光の入射角度を適切に選択することで、外部からの入射光を利用して異なる特定波長光を外部へ射出させ、あるいは、外部への光の射出を遮断することができる。このため、より低い駆動電圧であっても応答性に優れ、かつ、より高輝度の光を発することができる。
【0013】
本開示の表示装置および電子機器によれば、簡素な構成でありながら、外部からの入射光を利用して、表示素子ごとに異なる色の表示を素早く、かつ再現性よく行うことができる。このため、この光学素子アレイを備えた本開示の表示装置および電子機器によれば、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確な画像表示を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の一実施の形態としての表示装置の全体構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した表示装置の全体構成を表す平面図である。
【図3】図1に示した表示装置の要部構成を表す斜視図である。
【図4】図1に示した表示装置の作用を説明するための要部拡大断面図である。
【図5】表示装置を用いた電子機器としてのタブレット型PCの構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態および適用例について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(図1〜図4):表示装置
2.表示装置の適用例(図5):電子機器
【0016】
[実施の形態]
<表示装置の構成>
図1は、本開示における一実施の形態としての表示装置1の全体構成を表す断面図であり、図2は、表示装置1の全体構成を表す平面図である。なお、図1は、図2に示したI−I切断線に沿った矢視方向の断面を示している。また、図3は、表示装置1の要部構成を表す斜視図である。なお、図2および図3では、視認性を確保するため、誘電体膜13,14、極性液体16、無極性液体17、電極12、基板22などの各構成要素についての図示を省略している。
【0017】
表示装置1は、表示素子10がアレイ状に複数配置されたものである。なお、図2では9つの表示素子10を表しているが、その数はこれに限定されない。図2に示したように、各表示素子10は、例えば正方形をなしている。表示素子10は、それぞれ制御部40と接続され、エレクトロウェッティング現象を利用して静電的な濡れ性を制御し、キャビティ部15(後出)への極性液体16または無極性液体17の選択的な導入を行うものである。そうすることで、外光の入射により、内部で反射した経路の異なる2種の反射光を干渉させ、特定波長光の射出もしくは遮断を行うようになっている。なお、本実施の形態の表示素子10および表示装置1は、本開示の光学素子および光学素子アレイを具現化した一態様でもある。
【0018】
表示素子10には、相互に異なる色光を発する複数種が存在する。具体的には、例えば赤色光を発することの可能な赤色表示素子10Rと、緑色光を発することの可能な緑色表示素子10Gと、青色光を発することの可能な青色表示素子10Bとが、各々複数設けられている。なお、それらの配列については、適宜選択可能である。
【0019】
各々の表示素子10は、対向配置された電極11,12と、それらの電極11,12をそれぞれ覆う誘電体膜13,14とを有している。ここで、電極11は表示素子10ごとに分割されて複数設けられている。一方、第2の電極12は、ある一群の表示素子10ごとに共通して1つずつ設けられ、あるいは、全ての表示素子10に共通して1つ設けられている。誘電体膜13と誘電体膜14との間には、密閉された空間が設けられている。その空間のうち、特に、電極11と電極12とによって挟まれた部分をキャビティ部15と呼ぶこととする。このキャビティ部15を含む空間には、第1および第2の媒体としての極性液体16および無極性液体17が封入されている。これらの極性液体16および無極性液体17は、互いに異なる屈折率を有している。
【0020】
制御部40は、スイッチ部40Aおよび電源40Bを有している。電極11および電極12は電源40Bと接続されている。制御部40は、スイッチ部40Aの操作と電源40Bの電圧制御とにより、電極11と電極12との間に所定の電圧を印加するものである。その際、ゲートドライバ(図示せず)によって特定の表示素子10の駆動素子41(後出)を選択して駆動することができるようになっている。なお、電極12は接地されていてもよい。
【0021】
電極11は、基板21の上に設けられた台座23の上面を覆うように形成されている。台座23および電極11は、表示素子10ごとに独立して設けられている。すなわち、隣り合う表示素子10同士における台座23および電極11は、互いに分離されている。
【0022】
電極12は、基板21とほぼ平行に配置された基板22の、基板21と対向する面を例えば全面的に覆うように設けられている。
【0023】
各表示素子10における台座23には、1または2以上の格納部23Kが設けられている(図1〜3では1箇所のみ設けた場合を示す)。この格納部23Kは、電極11と電極12との間に電位差が生じていない状況下において、例えば極性液体16を格納しておくためのリザーバーとして機能する。なお、格納部23Kは、例えば図1〜3に示したように電極11の周縁部の一箇所に設けられた切り欠き状のものに限らず、例えば貫通孔であってもよい。また、格納部23Kは、厚さ方向に台座23を貫くものに限定されず、例えば台座23を厚さ方向に途中まで掘り下げた穴状のものであってもよい。
【0024】
また、台座23同士の間隙は、電極11と電極12との間の印加電圧の有無によって極性液体16および無極性液体17が流動する際の移動経路(ダクト)23Dとなっている。ダクト23Dには、例えば基板21の上に、入射光を吸収する光吸収膜(または遮光膜)18が隙間無く設けられている。不要な反射光や透過光の発生を抑止し、表示性能を向上させるためである。光吸収膜(遮光膜)18は、カーボンブラックなどの所定の波長光(例えば可視光)を吸収する顔料や染料を含む絶縁性材料によって構成される。
【0025】
台座2の高さ23hは、発する光の色に応じて異なっている。ここでは、赤色表示素子10Rの高さ23hが最大であり、青色表示素子10Bの高さ23hが最小となっている。よって、電極11の厚さはほぼ一定であることから、対向する電極11と電極12との間隔dは、赤色表示素子10Rにおいて最も狭く、次いで、緑色表示素子10G、青色表示素子10Bの順に大きくなっている。なお、各表示素子10における間隔dは、面内においてばらつきの無いことが望ましい。各表示素子10から発せられる干渉光の波長を一定とするためである。
【0026】
下部基板11および上部基板18は、図示しない側壁によって支持されて対向するように配置され、例えばガラスや透明なプラスチックなど、可視光を透過する透明な絶縁材料によって構成される。なお、プラスチックとしては、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)およびポリオレフィン(PO)などを用いることができる。
【0027】
電極12は、外部から基板22を透過して入射する入射光(太陽光や室内灯の光など)の一部を透過すると共に他の一部を反射する、いわゆるハーフミラーとしても機能する電極である。電極12は、例えば酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電膜の表面に、Cr(クロム)などの金属膜、あるいは誘電体多層膜を被覆した構造を有している。
【0028】
一方、電極11は、電極12を透過した光を反射するミラーとしても機能するものであり、例えばAg(銀)やアルミニウム(Al)などによって構成される。
【0029】
誘電体膜13,14は、例えばAl2 3 ,Ta2 5 ,ZrO2 ,ZnO2 ,TiO2 ,MgOおよびHfO2 のうちの少なくとも1種を含む絶縁材料層(図示せず)の上に撥水層(図示せず)が設けられた透明体である。絶縁材料層は、例えば原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法、スパッタ法、もしくは化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などによって、緻密に成膜されていることが望ましい。また、撥水層は、極性液体16に対して撥水性(疎水性)を示す(より厳密には無電界下において極性液体16よりも無極性液体17に対して親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料によって構成される。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0030】
無極性液体17は、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。また、屈折率を高めるために、ブロモナフタレンなどの高屈折率材料を炭化水素系材料もしくはシリコンオイルと混合して使用するようにしてもよい。この無極性液体15に対して電圧を印加した場合、その直接の影響が絶縁膜13に対する濡れ性に及ぶことはほとんどない。この無極性液体15は、下部電極12と上部電極17との間に電圧を印加しない場合において、絶縁膜13の表面を所望の範囲で覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0031】
一方、極性液体16は、極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウム、あるいは塩化リチウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。この極性液体16に電圧を印加すると、誘電体膜13,14に対する濡れ性(無極性液体15と絶縁膜13との接触角)が比較的大きく変化する。
【0032】
キャビティ部15を含む空間に封入された極性液体16および無極性液体17は、互いに混在することなく分離し、2つの相を形成している。なお、本実施の形態では、極性液体16および無極性液体17は、いずれも透明である。
【0033】
基板21には、表示素子10ごとに薄膜トランジスタなどの駆動素子41が設けられていると共に、それらの駆動素子41を個別に駆動させるための、制御部40と接続されたゲート線およびデータ線などからなる信号線対(図示せず)が設けられている。なお、駆動素子41や信号線対は、基板21とは別の基板に設けるようにしてもよい。
【0034】
電極11は駆動素子41の一端と接続されて電位が変化する一方、電極12は一定の電位に保たれている。すなわち、制御部40によって電極11と電極12との間に表示素子10ごとに電圧を印加することで、表示素子10ごとに外部からの入射光に基づく反射光の干渉状態を制御することができるようになっている。すなわち、表示素子10ごとに、ある特定の波長を有する特定波長光の射出とその停止との切り替えを行うことができるようになっている。
【0035】
無極性液体17は、電極11と電極12との間に電圧を印加しない場合において、すなわち、極性液体16が格納部23Kに収容されている場合において、キャビティ部15を全て満たす程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0036】
<表示装置1の動作>
次に、図1に加えて図4を参照して、上記のように構成された表示装置1の動作について説明する。図4は、表示装置1における任意の表示素子10を拡大して表したものであり、(A)が電圧を印加しない状態を表し、(B)が電圧印加時の状態を表す。
【0037】
まず、制御部40においてスイッチ部40Aを切断状態とし、電極11と電極12との間に電圧を印加しない場合には、例えば図4(A)に示したように、無極性液体17がキャビティ部15の全体を占めるように広がった状態となる。この場合、入射光Linが入射すると、特定波長を有する干渉光Loutが射出される。すなわち、特定の色が表示される。電極11と電極12との間隔、すなわちキャビティ部15の厚さdに応じた干渉が発生するからである。
【0038】
以下のような理由により、特定波長を有する干渉光Loutが発生する。例えば入射光L1は、基板22および電極12を透過したのち、その一部が電極12の表面において反射し、反射光L11となる。その一方、残りの成分の光L12は電極12の表面において屈折したのち、キャビティ部15に存在する無極性液体17の内部を透過する。そののち、光L12は電極11の表面で反射し、電極12の表面において再度屈折したのち、戻り光として基板22を透過して外部へ射出される。入射光L1と平行な入射光L2は、電極11の表面で反射して戻ってきた光(戻り光)L12が再度、電極12の表面に到達した位置に入射するものである。入射光L2は、その一部は電極12の表面において反射し、反射光L21となる。そのため、戻り光L12と反射光L21とは、互いに同じ位置から同じ方向へ射出することとなるが、相互に位相が一致しているので、干渉により互いに強め合うこととなる。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、戻り光L12が以下の条件式(1)を満足するように設計されているので、戻り光L12と反射光L21とが同相となり互いに強め合い、特定波長を有する干渉光Loutが発生する。
2×N1×d×cosθ=m1×λ ……(1)
但し、
N1:無極性液体17の屈折率
d:電極11と電極12との間隔
θ:電極12から無極性液体17へ進入する際の屈折角
m1:整数
λ:戻り光の波長
【0040】
これに対し、制御部40においてスイッチ部40Aを投入状態とし、電極11と電極12との間に電圧を印加した場合には、例えば図4(B)に示したように、極性液体16がキャビティ部15の全体を占めるように広がった状態となる。この場合、入射光Linが入射しても、表示素子10からは干渉光Loutが発生せず、暗いままである。この場合は、反射光と入射光とが逆相となり、それらが互いに打ち消し合うからである。例えば、光L12と反射光L21とは、互いに同じ位置から同じ方向へ射出することとなるが、相互に位相が180°異なっているので、互いに干渉により弱めあってしまう。
【0041】
本実施の形態では、光L12が以下の条件式(2)を満足するように設計されているので、戻り光L12と反射光L21とが逆相となり、互いに打ち消しあう。
2×N2×d×cosθ=(m2+0.5)×λ ……(2)
但し、
N2:極性液体16の屈折率
d:電極11と電極12との間隔
θ:電極12への入射光Linの入射角
m2:整数
λ:戻り光の波長
【0042】
したがって、 下記の条件式(3)を満たすように極性液体16と無極性液体17とを選択すれば、スイッチ部40Aのオン、オフの切り替えにより、表示素子10ごとに表示状態と消灯状態との切り替えが可能となる。
N1={(m1+0.5)/m2}×N2 ……(3)
但し、
N1:無極性液体17の屈折率
N2:極性液体16の屈折率
m1,m2:整数
とする。
【0043】
このような条件を満たすには、例えば極性液体16として屈折率N2=1.33の水と、無極性液体17として屈折率N1=1.773またはN1=2.66のオイルとの組み合わせが挙げられる。なお、本実施の形態の構成では、電源オフのときに無極性液体17がキャビティ部15に充填され、干渉光Loutが発生する状態となる。よって、全ての表示素子10に対して電圧を印加しない状態で画面が白表示となる、いわゆるノーマリーホワイトの表示装置1である。ここで、例えば入射角θを30°とした場合、キャビティ部15の厚さdは、赤色表示素子10Rで263nm(λ=700nm)、緑色表示素子10Gで205nm(λ=546nm)、青色表示素子10Bで164nm(λ=436nm)とすればよい。
【0044】
一方、表示装置1をノーマリーブラックとするには、例えば極性液体16として屈折率N2=1.33の水と、無極性液体17として屈折率N1=1.995のオイルとの組み合わせを選択すればよい。ここで、例えば入射角θを30°とした場合、キャビティ部15の厚さdは、赤色表示素子10Rで132nm(λ=700nm)、緑色表示素子10Gで103nm(λ=546nm)、青色表示素子10Bで82nm(λ=436nm)とすればよい。
【0045】
<表示装置の効果>
このように、本実施の形態の表示装置1では、電極12において反射した反射光と、電極12を透過してキャビティ部15に入射したのち、電極11で反射した戻り光との干渉が生じる。ここで、電極11と電極12との間に電圧印加することで、極性液体16をキャビティ部15に引き込み、干渉条件を変化させることができる。すなわち、無極性液体17がキャビティ部15に存在する場合に生じる干渉状態と、極性液体16がキャビティ部15に存在する場合に生じる干渉状態とを適宜選択することができる。
【0046】
よって、この表示装置1では、エレクトロウェッティング現象を利用してキャビティ部15に存在する媒体の切り替えを速やかに行うことができる。その結果、屈折率N1,N2、間隔d、入射光の入射角θを適切に選択することで、外部からの入射光を利用して異なる特定波長光を外部へ射出させ、あるいは、外部への光の射出を遮断することができる。このため、表示装置1は、消費電力を低減しつつ、所定の映像信号に対応した正確かつ応答性に優れた画像表示を実現することが可能となる。また、この表示装置1では、カラーフィルタを使用しないことから、高い輝度が得られやすい。
【0047】
<表示装置の適用例(電子機器)>
次に、上記した表示装置の適用例について説明する。
【0048】
上記の表示装置1は、各種用途の電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されない。表示装置1は、例えば、以下の電子機器に搭載可能である。ただし、以下で説明する電子機器の構成はあくまで一例であるため、その構成は適宜変更可能である。
【0049】
図5は、いわゆるタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)の外観構成を表している。このタブレット型PCは、例えば、表示部110と、それを保持する筐体などの非表示部120と、電源スイッチなどの操作部130とを備えている。なお、操作部130は、図5(A)に示したように非表示部120の前面に設けられていてもよいし、図5(B)に示したように上面に設けられていてもよい。表示部120は、映像表示機能のほか、位置入力機能(ポインティング機能)を備えたタッチスクリーン(タッチパネル)である。
【0050】
本技術の表示装置は、図5に示したタブレット型PCのほか、例えばノート型PC、モバイルフォン、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラあるいはカーナビゲーションシステムにおける映像表示部分として用いることができる。
【0051】
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、表示素子10ごとに間隔dの大きさを変えることで、射出される干渉光の波長(色)を調整するようにしたが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば、表示素子10ごとに極性液体16および無極性液体17の材料種(すなわち屈折率)の組み合わせを選択するようにしてもよい。その場合であっても、所望の波長の干渉光を得ることができる。その場合、例えば、複数の表示素子を、絶縁性の隔壁によって個別に仕切ることで、隣り合う表示素子同士での極性液体16および無極性液体17の各々の混在や、流出を回避することができ、良好な表示動作が可能となる。
【0052】
また、上記実施の形態では、極性液体16および無極性液体17の双方を透明なものとしたが、いずれか一方が所定の波長光(例えば可視光)を吸収する顔料や染料によって着色されて不透明となっていてもよい。その場合、着色された不透明な媒体がキャビティ部15を占めた状態において黒表示を行うこととなる。その黒表示は干渉を利用して行うものではないので、着色された不透明な媒体の屈折率は特に制限されない点で有利である。
【0053】
また、上記実施の形態では、第1および第2の媒体として、極性液体と無極性液体との組み合わせを採用したが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば、一方を極性液体とすれば、他方は気体(空気)であってもよい。
【0054】
また、本技術の光学素子および光学素子アレイは、表示装置に限定して適用されるものではなく、光学的作用を必要とする種種のデバイスへの応用が可能である。
【0055】
また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものである
光学素子。
(2)
前記第1および第2の媒体の他方は、空気または無極性液体である
上記(1)記載の光学素子。
(3)
前記第2の電極の周囲の一部には、前記第1および第2の媒体の一方を格納するリザーバーが設けられている
上記(1)または(2)に記載の光学素子。
(4)
前記第1の電極における第1の反射光と、前記第2の電極における第2の反射光との干渉による特定波長光を外部へ射出する
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光学素子。
(5)
下記の条件式(1)および条件式(2)を満たす
上記(4)に記載の光学素子。
2×N1×d×cosθ=m1×λ ……(1)
2×N2×d×cosθ=(m2+0.5)×λ ……(2)
但し、
λ:戻り光の波長
d:第1の電極と第2の電極との間隔
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
θ:第1の電極への入射光の入射角
m1,m2:整数
とする。
(6)
下記の条件式(3)を満たす
上記(4)または(5)に記載の光学素子。
N1={(m1+0.5)/m2}×N2 ……(3)
但し、
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
m1,m2:整数
とする。
(7)
前記極性液体は、顔料または染料により着色されている
上記(1)から(6)の少なくとも1つに記載の光学素子。
(8)
前記第1および第2の媒体の他方は、着色された無極性液体である
上記(1)から(7)の少なくとも1つに記載の光学素子。
(9)
第1の電極と、
前記第1の電極とそれぞれ対向配置された複数の第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものである
光学素子アレイ。
(10)
前記複数の第2の電極は、互いに離間している
上記(9)に記載の光学素子アレイ。
(11)
前記第2の電極同士の間に、第1および第2の媒体が通過する通路が設けられている
上記(10)に記載の光学素子アレイ。
(12)
前記第2の電極同士の間隙領域に、遮光膜または光吸収膜が設けられている
上記(10)または(11)に記載の光学素子アレイ。
(13)
前記第1および第2の媒体の他方は、空気または無極性液体である
上記(9)から(12)の少なくとも1つに記載の光学素子アレイ。
(14)
各々の前記第2の電極の周囲の一部には、前記第1および第2の媒体の一方を格納するリザーバーがそれぞれ設けられている
上記(9)から(13)の少なくとも1つに記載の光学素子アレイ。
(15)
前記第1の電極における第1の反射光と、前記第2の電極における第2の反射光との干渉による特定波長光を外部へ射出する
上記(9)から(14)の少なくとも1つに記載の光学素子アレイ。
(16)
下記の条件式(1)および条件式(2)を満たす
上記(15)記載の光学素子アレイ。
2×N1×d×cosθ=m1×λ ……(1)
2×N2×d×cosθ=(m2+0.5)×λ ……(2)
但し、
λ:戻り光の波長
d:第1の電極と第2の電極との間隔
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
θ:第1の電極への入射光の入射角
m1,m2:整数
とする。
(17)
下記の条件式(3)を満たす
上記(15)または(16)に記載の光学素子アレイ。
N1={(m1+0.5)/m2}×N2 ……(3)
但し、
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
m1,m2:整数
とする。
(18)
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
をそれぞれ有する複数種の表示素子を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものであり、
前記複数種の表示素子における前記第1の電極と前記第2の電極との間隔は、相互に異なっている
表示装置。
(19)
表示装置を備えた電子機器であって、
前記表示装置は、
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
をそれぞれ有する複数種の表示素子を含み、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものであり、
前記複数種の表示素子における前記第1の電極と前記第2の電極との間隔は、相互に異なっている
電子機器。
【符号の説明】
【0056】
1…表示装置、10(10R,10G,10B)…表示素子、11…電極(第2の電極)、12…電極(第1の電極)、13,14…誘電体膜、15…キャビティ部、16…極性液体、17…無極性液体、18…遮光膜、40…制御部、40A…スイッチ、40B…電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものである
光学素子。
【請求項2】
前記第1および第2の媒体の他方は、空気または無極性液体である
請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記第2の電極の周囲の一部には、前記第1および第2の媒体の一方を格納するリザーバーが設けられている
請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の電極における第1の反射光と、前記第2の電極における第2の反射光との干渉による特定波長光を外部へ射出する
請求項1記載の光学素子。
【請求項5】
下記の条件式(1)および条件式(2)を満たす
請求項4記載の光学素子。
2×N1×d×cosθ=m1×λ ……(1)
2×N2×d×cosθ=(m2+0.5)×λ ……(2)
但し、
λ:戻り光の波長
d:第1の電極と第2の電極との間隔
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
θ:第1の電極への入射光の入射角
m1,m2:整数
とする。
【請求項6】
下記の条件式(3)を満たす
請求項4記載の光学素子。
N1={(m1+0.5)/m2}×N2 ……(3)
但し、
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
m1,m2:整数
とする。
【請求項7】
前記極性液体は、顔料または染料により着色されている
請求項1記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1および第2の媒体の他方は、着色された無極性液体である
請求項1記載の光学素子。
【請求項9】
第1の電極と、
前記第1の電極とそれぞれ対向配置された複数の第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものである
光学素子アレイ。
【請求項10】
前記複数の第2の電極は、互いに離間している
請求項9に記載の光学素子アレイ。
【請求項11】
前記第2の電極同士の間に、第1および第2の媒体が通過する通路が設けられている
請求項10に記載の光学素子アレイ。
【請求項12】
前記第2の電極同士の間隙領域に、遮光膜または光吸収膜が設けられている
請求項10に記載の光学素子アレイ。
【請求項13】
前記第1および第2の媒体の他方は、空気または無極性液体である
請求項9記載の光学素子アレイ。
【請求項14】
各々の前記第2の電極の周囲の一部には、前記第1および第2の媒体の一方を格納するリザーバーがそれぞれ設けられている
請求項9記載の光学素子アレイ。
【請求項15】
前記第1の電極における第1の反射光と、前記第2の電極における第2の反射光との干渉による特定波長光を外部へ射出する
請求項9記載の光学素子アレイ。
【請求項16】
下記の条件式(1)および条件式(2)を満たす
請求項15記載の光学素子アレイ。
2×N1×d×cosθ=m1×λ ……(1)
2×N2×d×cosθ=(m2+0.5)×λ ……(2)
但し、
λ:戻り光の波長
d:第1の電極と第2の電極との間隔
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
θ:第1の電極への入射光の入射角
m1,m2:整数
とする。
【請求項17】
下記の条件式(3)を満たす
請求項15記載の光学素子アレイ。
N1={(m1+0.5)/m2}×N2 ……(3)
但し、
N1:第1の媒体の屈折率
N2:第2の媒体の屈折率
m1,m2:整数
とする。
【請求項18】
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
をそれぞれ有する複数種の表示素子を備え、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものであり、
前記複数種の表示素子における前記第1の電極と前記第2の電極との間隔は、相互に異なっている
表示装置。
【請求項19】
表示装置を備えた電子機器であって、
前記表示装置は、
対向配置された第1および第2の電極と、
前記第1および第2の電極をそれぞれ覆う第1および第2の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜と前記第2の誘電体膜との間のキャビティ部を含む空間に封入され、互いに異なる屈折率を有し、一方が極性液体である第1および第2の媒体と
をそれぞれ有する複数種の表示素子を含み、
前記第1の電極は、入射光の一部を透過すると共に他の一部を反射するものであり、
前記第2の電極は、前記第1の電極を透過した光を反射するものであり、
前記複数種の表示素子における前記第1の電極と前記第2の電極との間隔は、相互に異なっている
電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−109163(P2013−109163A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254286(P2011−254286)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】