説明

光機能性積層体

【課題】各種の光機能、特に発光強度、発光効率、さらには蛍光寿命、光増幅性、に優れた光機能性積層体を提供する。
【解決手段】透明基材(L0)、基材(L0)上に形成されてなる含フッ素ポリマー(A)および希土類金属化合物(B)からなる光機能性層(L1)および層(L1)上に形成されてなる低屈折率層(L2)からなり、各層の屈折率をn(L0)、n(L1)、およびn(L2)としたとき、下式:
n(L0)≧n(L1)>n(L2)
の関係を有することを特徴とする光機能性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光(発光)現象や光増幅現象などの光機能性を発現可能な希土類金属化合物を含有する光機能層を透明性基材に設けてなる光機能性積層体に関する。
【0002】
詳しくは、より高効率で光機能性を付与できる希土類金属化合物と含フッ素ポリマーからなる光機能性層と低屈折率層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
LEDはPN接合を持つ結晶体であって、順電圧を印加するとN領域から電子が、P領域から正孔がPN接合に移動して、電子と正孔が再結合する際に光を発する。従って、自由な電子が結合状態になり、この際放出されたエネルギーが光となって放出されるため、限られた色調のLEDしか存在しない。
【0004】
つまり、赤色LEDチップを有するLEDは赤色、緑色LEDチップを有するLEDは緑色、青色LEDチップを有するLEDは青色の発光のみであった。
【0005】
しかしながら、多目的の用途に応じて、色変化をさせ得る発光ダイオードが強く求められている。
【0006】
通常、色変化の方法としては、例えば発光ダイオードの中に赤色LEDチップ、緑色LEDチップ、青色LEDチップを組み合わせてセットし、それぞれのチップの組合せを変えて発光させることにより、色変化を実現させていた。
【0007】
このような発光ダイオードでは、上記3色のLEDチップの異なる併せて4つの端子が必要となるため、構造として複雑な設計となる点、またさらには3色のうちのいずれかのLEDチップが破損したとき色調のバランスが崩れ、目的とする発光が得られなくなる点などの課題があった。
【0008】
また、一方、青色発光ダイオードのチップ上にYAG(アルミン酸イットリウム)系蛍光体の層を設けた白色LEDランプが提案されている。
【0009】
この白色LEDランプは、蛍光体の層によって励起された光と青色発光ダイオードの残光とによって白色光を作り出すものである。
【0010】
しかしながら、上記の白色LEDランプは青色発光ダイオードチップ上の蛍光物質が微量であり、その微量の誤差や加工方法によって色調が大きく変化しやすいこと等により、均一なLEDを生産するのが困難で、色や輝度などにバラツキが不可避的に発生する。そのため、歩留まりが悪く、結果的にコスト高となってしまう。
【0011】
これらの課題を解決するために、特許文献1において、蛍光物質とそれらのバインダーの働きをする樹脂を含む被覆材を、発光ダイオードに装着し、目的の色調に調整することを提案している。つまり、上記被覆材の含める蛍光物質の種類や含有量を調整し、さらには必要に応じて着色剤を含有させ、その被覆材をシートや、キャップ形状などに加工し、発光ダイオードに装着することで、所望の色調を自由に再現良く作り出したものである。
【0012】
【特許文献1】特開平11−87784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、本発明者らの検討では、特許文献1に記載されている被覆材の発光強度、発光効率において不充分であり、目的の色調、発色を達成するためには、被覆材中の蛍光物質の含有比率を高めたり、被覆材の厚みなどを高く設定する必要がある。
【0014】
ただし、発光強度を向上させるために、被覆材中の蛍光物質の含有比率を高める試みを行っても、混合できる蛍光物質量には限界があり、蛍光物質の比率を高めすぎると分散不良や白濁などを起こし、光の透過性事態が悪化し目的の発色や発光が得られなくなる。
【0015】
本発明者らは蛍光(発光)現象や光増幅現象などを発現可能な希土類金属化合物を含有する光機能層を有する積層体について種々検討を重ねた結果、第一に、光機能層のマトリックスポリマー(バインダー樹脂)に特定のポリマーを使用すること、第二に、光機能層上に低屈折率層を設けさらに透明基材、光機能層、低屈折率層の各層の屈折率を特定の値に選択することで、積層体の発光強度、発光効率、さらには蛍光寿命がより向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、各種の光機能、特に発光強度、発光効率、さらには蛍光寿命、光増幅性、に優れた光機能性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち本発明は、
(L0)透明基材、
(L1)基材(L0)上に形成されてなる含フッ素ポリマー(A)および希土類金属化合物(B)からなる光機能性層、および
(L2)層(L1)上に形成されてなる低屈折率層
からなり、各層の屈折率をn(L0)、n(L1)、およびn(L2)としたとき、下式:
n(L0)≧n(L1)>n(L2)
の関係を有することを特徴とする光機能性積層体に関する。
【0018】
光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)は、フッ素含有率が30質量%以上の非晶性ポリマーであるか、または含フッ素アクリル重合体であってガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の含フッ素アクリル重合体であるか、または含フッ素アクリル重合体であってガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の含フッ素アクリル重合体であることが好ましい。
【0019】
また、光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)が、
(a1−1):式(1):
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、X1はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1はエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の炭化水素基およびエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の含フッ素炭化水素基から選ばれ、ただし、X1、R1の少なくとも一方にフッ素原子を含む)から選ばれる少なくとも1種の含フッ素アクリレート類由来の構造単位および
(a1−2):式(4):
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、X2、X3は同じかまたは異なり、H、F、Cl、CH3またはCF3;n1は1〜6の整数;R2は炭素数1〜50の(n1+1)価の有機基)から選ばれる少なくとも1種の多官能アクリレート類由来の構造単位からなる含フッ素アクリル重合体であるものが好ましい。
【0024】
透明基材(L0)の材料としては、ガラス系材料または透明性樹脂が挙げられ、透明性樹脂としては、アクリル樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、透明ポリエチレンテレフタレート類、メチルセルロース樹脂類およびシクロオレフィン樹脂類から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられる。
【0025】
透明基材(L0)はフィルム形状をとることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光機能性積層体によれば、各種の光機能、特に発光強度、発光効率、さらには蛍光寿命、光増幅性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の積層体は、
(L0)透明基材、
(L1)基材(L0)上に形成されてなる含フッ素ポリマー(A)および希土類金属化合物(B)からなる光機能性層、および
(L2)層(L1)上に形成されてなる低屈折率層
からなる光機能性積層体に関するものであって、各層の屈折率をn(L0)、n(L1)、およびn(L2)としたとき、下式
n(L0)≧n(L1)>n(L2)
の関係を有することを特徴とするものである。
【0028】
つまり、本発明の光機能性積層体は、光機能性層(L1)として、光源光(励起光)の供給によって、蛍光(発光)や光増幅などの光機能を発現できる希土類金属化合物(B)と、含フッ素ポリマー(A)からなる層を有すること、さらに該光機能性層(L1)上に、低屈折率層(L2)が設けられていることを特徴とする。
【0029】
光機能性層(L1)中の希土類金属化合物は、発光ダイオードなどの光源等からの入射光(励起光)によって蛍光(発光)や光増幅などの光機能を発現できるものであり、光機能性層(L1)のマトリックスポリマー(バインダー樹脂)として、フッ素原子を有するポリマー、特に高フッ素化率の非晶性ポリマーを用いることで、光源光(励起光)をより効率的に蛍光(発光)に変化させることができるものであり、その結果、発光強度、発光量子収率および発光寿命を改善することが可能となる。
【0030】
さらに光機能性層(L1)上に、低屈折率層(L2)を設けることが重要であり、発光ダイオードなどからの入射光側の位置に低屈折率層(L2)を設置した場合において、空気層と積層体の界面での入射光(励起光)の反射現象が抑制でき、より効率的に入射光(励起光)が光機能性層(L1)の希土類金属化合物に提供される点で好ましい。
【0031】
またさらに、低屈折率層(L2)の設置は、入射光を供給され光機能性層(L1)の希土類金属化合物によってなされた発光(蛍光)を、目的の方向、例えば入射光の反対方向(透明基材(L0)方向)に、より優先的に向けることができる点で好ましい。
【0032】
つぎに、本発明の光機能性積層体における各層の構成について説明する。
【0033】
本発明の積層体において、光機能性層(L1)は、含フッ素ポリマー(A)中に希土類金属化合物(B)が相溶または分散したものであって、含フッ素ポリマー(A)によって、高強度で高効率の発光が可能となる。
【0034】
希土類金属化合物の発光現象は、通常、作用される紫外光などの励起光を吸収することで希土類金属イオン自体のエネルギー準位が上昇し、次いでそれが基底状態に戻る際に、そのエネルギー差に相当するものが、特定波長(可視光または近赤外光)の光として発生する現象である。
【0035】
必要とする励起光の波長や発光する光の波長は、希土類金属イオンそれぞれによって異なり、希土類金属イオン特有の性質に由来するものである。
【0036】
一般に上記発光現象において加えられた励起光のすべてが発光エネルギーに変換されるわけではなく、励起光の一部は希土類金属イオンに隣接する分子または原子の振動エネルギー(つまり熱エネルギー)に変化するため、その発光強度、発光量子収率(発光効率)が不充分なものとなると考えられる。
【0037】
含フッ素ポリマー、特にフッ素含有率の高い非晶性含フッ素ポリマーを希土類金属化合物(B)のマトリックスポリマーに用いることで希土類金属イオンからマトリックスポリマーへのエネルギー移動を抑制させることができ、その結果として希土類金属化合物の発光強度、量子収率を増大させることができたものである。
【0038】
本発明の光機能性層(L1)に用いる含フッ素ポリマー(A)は、目的や、発光(蛍光)波長によって異なり適宜選択されるが、それ自体、無色で、広い波長範囲で透明性の高い非晶性フッ素ポリマーであることが好ましい。
【0039】
含フッ素ポリマー(A)のフッ素含有率は、出来る限り高い方が望ましいが、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に50質量%以上である。
【0040】
ポリマーの構造によって異なるが、逆にフッ素含有率が高くなりすぎると、希土類金属化合物(B)との相溶性、分散性が低下してしまうため好ましくない。
【0041】
また、含フッ素ポリマー(A)は、広い光の波長範囲において透明であることが望ましいが、実際の利用の場面で取り扱う光の種類、例えば入射光(励起光)や発光光(蛍光光)の波長に対して透明であることが重要である。
【0042】
具体的には、入射光(励起光)および発光光(蛍光光)の波長に対して含フッ素ポリマー(A)自体の吸光係数で5.0×10-5μm-1以下、好ましくは1.0×10-5μm-1以下、より好ましくは5.0×10-6μm-1以下、特に好ましくは2.0×10-6μm-1以下である。
【0043】
含フッ素ポリマー(A)の透明性が不十分であると、発光強度を低下させてしまうため好ましくない。
【0044】
含フッ素ポリマー(A)は具体的には、上記特徴の非晶性ポリマーであればよいが、好ましい含フッ素ポリマーの第一は含フッ素アクリレート系重合体(A1)である。
【0045】
含フッ素アクリレート系重合体(A1)は、ポリマー側鎖を形成し得る部分またはポリマー主鎖を形成し得る部分のいずれか少なくとも一方に、フッ素原子を有する含フッ素アクリレート類由来の構造単位を有するものであり、具体的に、含フッ素アクリレート系重合体(A1)は、式(1):
【0046】
【化3】

【0047】
(式中、X1はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1はエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の炭化水素基およびエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の含フッ素炭化水素基から選ばれ、ただし、X1、R1の少なくとも一方にフッ素原子を含む)で表される含フッ素アクリレート類(a1−1)から選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位を有するものが好ましく、具体的には、R1を除いた構造として、
【0048】
【化4】

【0049】
などの構造を有するものが挙げられ、なかでも、
【0050】
【化5】

【0051】
の構造を有するものが重合性の面で好ましく、さらには、
【0052】
【化6】

【0053】
の構造を有するものが希土類金属化合物(B)との組成物とした場合、発光強度、発光効率を向上できる点で好ましく、さらに得られた重合体に透明性と耐熱性を付与できる点で、また機械的強度を付与できる点で好ましい。
【0054】
含フッ素アクリレート(a1−1)におけるXがFまたはCF3である場合、側鎖のR1は、フッ素原子を含んでいなくてもよいが、通常、エーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の含フッ素アルキル基、エーテル結合を有していても良い芳香族環状構造を含む炭素数2〜50の一価の含フッ素アリール基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
それによって、含フッ素アクリレート系重合体(A1)のフッ素含有率を大幅に向上させることができ、希土類金属化合物(B)との組成物とした場合、発光強度、発光効率を向上できる点で好ましい。
【0056】
なかでもエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種であることが、透明性の点で、発光強度、発光効率の面でさらに向上し、好ましい。
【0057】
式(a1−1)の含フッ素アクリレートにおいて、側鎖R1の好ましい具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0058】
(i)直鎖状の含フッ素アルキル基
具体的には、
式(R1−1):
【0059】
【化7】

【0060】
(式中、Z11はH、F、ClおよびBrから選ばれる少なくとも1種;q1は0または1〜5の整数;q2は1〜20の整数)で示される基である。
【0061】
式(R−1)において、q1は、好ましくは1〜4の整数、特に1または2である。q2は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。
【0062】
q1が大きすぎると、希土類金属化合物(B)との組成物の発光強度、発光効率の改善効果が低くなる傾向にある。またq2が大きすぎると、含フッ素アクリレート系重合体(A1)自体の透明性が低下したり、希土類金属化合物(B)の分散性が低下し、その結果、希土類金属化合物(B)との組成物の透明性が低下してしまう傾向にある。
【0063】
より具体的には、
−CH2CF3
−CH2CF2CF3
−CH2CF2CF2H、
−CH2(CF2CF22H、
−CH2CH2(CF2CF22F、
−CH2CH2(CF2CF23F、
−CH2(CF2CF22Cl、
−CH2CF2CF2Cl
などが挙げられる。
【0064】
またさらには、上記式(R1−1)において側鎖末端のZ11がH、Clであることが好ましく、特にはH原子であることが好ましい。それによって、F原子であるときに比べて、希土類金属化合物(B)との分散性や溶解性(相溶性)を改善できる。
【0065】
これらの観点から、具体的には、
−CH2CF2CF2H、
−CH2(CF2CF22H、
−CH2(CF2CF23H、
−CH2(CF2CF24H、
−CH2(CF2CF22Cl、
−CH2CF2CF2Cl
が好ましく、なかでも、
−CH2CF2CF2H、
−CH2(CF2CF22
が好ましい。
【0066】
(ii)分枝状の含フッ素アルキル基
具体的には、
式(R1−2):
【0067】
【化8】

【0068】
(式中、R10は炭素数1〜10の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換されていても良い直鎖状のアルキレン基;R11は炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいても良い直鎖の含フッ素アルキル基;R12は炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基および炭素数1〜5のエーテル結合を含んでいても良い直鎖状の含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種;R13はH、F、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基および炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいても良い直鎖状の含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種;q3は0または1)で表される分岐構造の含フッ素アルキル基であり、具体的には、式(R1−2−1):
【0069】
【化9】

【0070】
(式中、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R14は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基、HまたはF;q4+q5が1〜10の整数)で表される含フッ素アルキル基であることが好ましく、より具体的には、
【0071】
【化10】

【0072】
などが好ましく挙げられる。
【0073】
これらは、本発明の含フッ素アクリレート系重合体(A1)に、より向上した透明性を付与できる点で好ましい。
【0074】
またR1は、式(R1−2−1)のうちで式(R1−2−2):
【0075】
【化11】

【0076】
(式中、Rf1、Rf2およびR14は式(R1−2−1)と同じ)で表される含フッ素アルキル基であることが好ましく、より具体的には、
【0077】
【化12】

【0078】
などが好ましく挙げられる。
【0079】
これらは、ガラス転移点をより高く設定できる点で、また希土類金属化合物に対して分散性に優れる点で好ましい。
【0080】
またさらに、R1は式(R1−2−3):
【0081】
【化13】

【0082】
(式中、Rf1、Rf2およびR14は式(R1−2−1)と同じ)で表される含フッ素アルキル基であることが好ましく、より具体的には、
【0083】
【化14】

【0084】
などが好ましく挙げられる。
【0085】
これらの分枝状の含フッ素アルキル基(ii)の例示において、なかでも、
【0086】
【化15】

【0087】
で表される含フッ素アルキル基であることが、より広範囲の希土類金属化合物に対して分散性に優れ、ガラス転移温度を向上させ、耐熱性に優れた重合体を得ることができるため好ましい。
【0088】
これらの効果により、希土類金属化合物(B)との組成物の発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を向上させることができる。
【0089】
(iii)エーテル結合を有する含フッ素アルキル基
含フッ素アルキレンエーテル構造の部位を有する含フッ素アルキル基であり、具体的には式(1−1):
【0090】
【化16】

【0091】
(Z1はFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数であって、ただしm1+m2+m3+m4が1〜10の整数)で表される構造を含む含フッ素アルキル基である。
【0092】
これらの部位を持つ含フッ素アクリレート単量体を用いた本発明の重合体(A)は、高いフッ素含有率を有し、透明性が高く、希土類金属化合物(B)との組成物において発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を高くすることができる。
【0093】
式(1−1)の部位を有する側鎖部分R1は、具体的には、
(1−2):
【0094】
【化17】

【0095】
式(1−3):
【0096】
【化18】

【0097】
式(1−4):
【0098】
【化19】

【0099】
式(1−5):
【0100】
【化20】

【0101】
式(1−6):
【0102】
【化21】

【0103】
式(1−7):
【0104】
【化22】

【0105】
などがあげられる。
【0106】
これらの中でもフッ素含有率が高く、希土類金属化合物(B)との組成物において、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率をより効果的に高くすることができる点で、式(1−2):
【0107】
【化23】

【0108】
の側鎖構造のものがより好ましい。
【0109】
本発明の光機能性積層体において、含フッ素アクリレート系重合体(A1)を構成する構造単位A1−1を与える含フッ素アクリレート(a1−1)としては、具体的には以下の単量体が好ましく挙げられる。
(a1−i)直鎖状の含フッ素アルキル基を有する単量体
【0110】
【化24】

【0111】
が好ましく挙げられ、なかでも
CH2=CF−COO−CH2CF2CF2H、
CH2=CF−COO−CH2(CF2CF22
が特に好ましく挙げられる。
【0112】
また、
(a1−ii)分枝状の含フッ素アルキル基を有する単量体
【0113】
【化25】

【0114】
が特に好ましく挙げられる。
(a1−iii)エーテル結合を有する含フッ素アルキル基を側鎖にもつ単量体
【0115】
【化26】

【0116】
が特に好ましく挙げられる。
【0117】
また、含フッ素アクリレート系重合体(A1)の重量平均分子量は500〜1,000,000、さらには5,000〜800,000、特に10,000〜500,000が好ましい。
【0118】
本発明の含フッ素アクリレート系重合体(A1)の好ましい第一は、
(A1−I)ガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上である含フッ素アクリル重合体である。
【0119】
ガラス転移温度が40℃より低いと室温で変形して形状安定性に問題があり、また希土類金属イオンが移動し再分布して相分離を惹き起こすことがある。ガラス転移温度は、発光素子などにした際に自己発熱によりマトリックスの重合体自体が加熱されるため、耐熱性の点から好ましくは65℃以上、さらには100℃以上である。上限は特に限定されないが、含フッ素アクリル重合体では通常200℃程度である。
【0120】
もちろん、フッ素含有率が高い方が好ましく、52質量%以上、特に55質量%以上である。フッ素含有率の上限も特に限定されないが、希土類金属イオンとの相溶性を悪化させない点、および化学構造的な制限から、通常76質量%程度である。
【0121】
含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、なかでも、式(2):
【0122】
【化27】

【0123】
(式中、Rf1はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基)の構造を含む含フッ素アクリル重合体が、単独重合体でも、さらには共重合体としても、ガラス転移温度が40℃以上、フッ素含有率が50質量%以上を示す重合体となりやすく、しかも発光強度も充分高く好ましい。Rf1としてはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有していてもよい炭素数3〜40の含フッ素アリール基が好ましくあげられる。
【0124】
上記式(2)の含フッ素アクリル重合体を形成しうる、α位がフッ素原子であるアクリレート(以下、「αFアクリレート」という)としては、たとえばつぎのものが好ましく例示できる。なお、各モノマーの後の記載は、(略称)そして(単独重合体のガラス転移温度とフッ素含有率(質量%))である(以下同様)。
CH2=CFCOOCH225 (5FF)(101℃、51%)、
CH2=CFCOOCH2CF2CFHCF3 (6FF)(70℃、52%)、
CH2=CFCOOCH248H (8FF)(65℃、56%)、
CH2=CFCOOC24817 (17FF)(66℃、64%)、
CH2=CFCOOC(CF32H (HFIP−F)(104℃、55%)、
CH2=CFCOOC(CF3265 (147℃、56%)、
【0125】
【化28】

【0126】
なかでもHFIP−F、8FFは錯体との親和性が高く好ましい。また、αFアクリレートは、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度を高くすることができる点で好ましい。
【0127】
また、含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、式(3):
【0128】
【化29】

【0129】
(式中、Rf3はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基でフッ素原子の数が7個以上)の構造を含む含フッ素メタクリレート重合体が、単独重合体でもガラス転移温度が40℃以上、フッ素含有率が50質量%以上を示し、発光強度も充分高く好ましい。Rf3としてはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有していてもよい炭素数3〜40の含フッ素アリール基が好ましくあげられる。
【0130】
式(3)で示される構造を与えるモノマーとしては、たとえばつぎのものが好ましく例示できる。
CH2=C(CH3)COOCH248H (8FM)(47℃、51%)、
CH2=C(CH3)COOC24817 (17FM)(40℃、61%)、
CH2=C(CH3)COOC(CF33 (9FtBuM)(156℃、56%)、
CH2=C(CH3)COOC(CF3265 (132℃、52%)
【0131】
なかでも8FMは錯体との親和性が良く好ましい。また、含フッ素メタクリレートは、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度が高くなることから好ましい。
【0132】
またさらに、含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、前記αFアクリレートと前記含フッ素メタクリレートとの共重合体であっても良く、共重合の組成および共重合比は、ガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の共重合体となる組成と共重合比が選択される。
【0133】
この場合の、好ましい共重合体の組合せとしては、HFIP−Fと8FMの共重合体、6FON0と8FMの共重合体、17FFと8FMの共重合体などの組合せが、発光強度や機械的強度に優れる点から好ましい。
【0134】
含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)には、前記例示のαFアクリレートおよび/または含フッ素メタクリレートに加えて、共重合可能な他のモノマーを導入しても良い。
【0135】
他のモノマーとしては、得られる共重合体のガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0136】
他のモノマーとしては、たとえばつぎのものが例示できる。
CH2=C(CH3)COOCH3 (MMA)(120℃、0%)、
CH2=C(CH3)COOCH2C(CF32H (6FiP−M)(72℃、48%)、
CH2=C(CH3)COOCH2C(CF32CH3 (6FNPM)(120℃、43%)、
CH2=CFCOOCH2CF3 (3FF)(125℃、44%)、
CH2=CFCOOCH2C(CF32CH3 (6FNPF)(135℃、49%)、
CH2=CFCOOC(CH32H (IP−F)(93℃、14%)、
CH2=CFCOOC65 (PFPh−F)(160℃、45%)
【0137】
他のモノマーとしては、なかでもMMAが機械的強度が向上改善される点で好ましい。また、6FNPM、6FNPF、PFPh−Fはフッ素含有率をほとんど低下させずにガラス転移点を上げられる点で好ましい。
【0138】
また、好ましい共重合体の組合せとしては、HFIP−FとMMAの2元共重合体、HFIP−FとMMAと6FNPFの3元共重合体、5FFと6FNPFの2元共重合体などの組合せが、機械的強度と発光強度のバランスが良好な点から好ましい。
【0139】
本発明の含フッ素アクリレート系重合体(A1)の好ましい第二は、
(A1−II)ガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満である含フッ素アクリル重合体である。
【0140】
ガラス転移温度が100℃より高い場合、フッ素含有率が比較的小さくても充分な発光強度が得られる。もちろん、フッ素含有率が高い方が好ましく、35質量%以上、特に40質量%以上である。
【0141】
ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、含フッ素アクリル重合体では通常200℃程度である。
【0142】
含フッ素アクリル重合体(A1−II)の具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0143】
(A1−IIa)含フッ素アクリル系モノマーの単独重合体:
式(1)で示される構造を与えるモノマーのうち、単独重合体で100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満を満たすものとしては、たとえば前記の(A1−I)で例示した3FF(125℃、44%)、6FNPF(135℃、49%)、PFPh−F(160℃、45%)、6FNPM(120℃、43%)などがあげられる。
【0144】
なかでも6FNPFおよび6FNPMは希土類金属化合物、特には希土類金属錯体との親和性が高く好ましい。また、得られる含フッ素アクリル重合体は、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度が高くなることから好ましい。
【0145】
(A1−IIb)前記(A1−IIa)で示す含フッ素アクリル系モノマー同士または他の含フッ素アクリル系モノマーとの共重合体:
共重合の組成および共重合比は、ガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0146】
他の含フッ素アクリル系モノマーとしては、たとえば6FiP−M、IP−Fなどがあげられる。
【0147】
また、好ましい共重合体の組合せとしては、3FFと6FNPMの共重合体、PFPh−Fと6FNPMの共重合体、6FNPFと6FNPMの共重合体などの組合せが、発光強度や機械的強度が良好な点から好ましい。また、他の含フッ素アクリル系モノマーとして6FiP−MやIP−Fを使用するときは、ガラス転移温度を低下させずに機械的強度を付与できる点から好ましい。
【0148】
(A1−IIc)前記(A1−IIa)で示す含フッ素アクリル系モノマーと非フッ素系アクリル系モノマーとの共重合体:
非フッ素系アクリル系モノマーとしては、得られる共重合体のガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0149】
非フッ素系アクリルモノマーとしては、たとえばMMA(120℃、0%)は機械的強度を改善できる点で特に好ましい。
【0150】
好ましい共重合体としては、たとえば6FNPMとMMAの2元共重合体、6FNPFとMMAの2元共重合体、6FNPMとMMAとIP−Fの3元共重合体、6FNPFとMMAとIP−Fの3元共重合体が、さらにMMAと5FFの2元共重合体が、機械的強度と発光強度のバランスが良好な点から好ましく例示できる。
【0151】
本発明の含フッ素アクリル重合体(A1)の好ましい第三は、
(A1−III)前記含フッ素アクリレート(a1−1)由来の構造単位に加えて、多官能アクリレート(a1−2)由来の構造単位を有することを特徴とする重合体である。
【0152】
その多官能アクリレート(a1−2)由来の構造単位を導入することで、希土類金属化合物との組成物からなる光機能性光学材料の発光(増幅)強度および発光(増幅)効率を大幅に向上させることができる。
【0153】
多官能アクリレート(a1−2)は、式(4):
【0154】
【化30】

【0155】
(式中、X2、X3は同じかまたは異なり、H、F、Cl、CH3またはCF3;n1は1〜6の整数;R2は炭素数1〜50の(n1+1)価の有機基)から選ばれる少なくとも1種である。
【0156】
式(4)の多官能アクリレートにおいてX2およびX3はH、CH3、F、CF3またはCl、特にCH3、Fが好ましく、さらにはFが好ましい。
【0157】
2は、炭素数1〜50の(n1+1)価の有機基であり、具体的には、
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n1+1)価の有機基、
(2)芳香族環状構造を有する(n1+1)価の有機基、
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n1+1)価の有機基、
(4)ウレタン結合を含む(n1+1)価の有機基
などが挙げられ、これら有機基において、炭素−水素結合を形成する水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換されたものであってもよい。
【0158】
まず、上記R2のそれぞれの好ましい態様について、具体例を挙げて説明する。
【0159】
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n1+1)価の有機基:
前記多官能アクリレート(a1−2)を示す式(4)におけるn1=1のもの(二官能アクリレート)としては、たとえば
式(R2−1):
−(CH2p1−(CF2p2−(C(CH3))p3− (R2−1)
(式中、p1+p2+p3=1〜30)で示される有機基が例示できる。
【0160】
具体例としては、
−CH2CH2−、
−CH2CH(CH3)−、
−CH2CH2CH(CH3)−、
−(CH24−、
−(CH26−、
−(CH22(CF22(CH22−、
−(CH22(CF24(CH22−、
−(CH22(CF26(CH22−、
−CH2C(CH32CH2
などがあげられる。
【0161】
また、式(R2−1−1):
【0162】
【化31】

【0163】
(式中、p1、p2、p3は前記式(R2−1)と同じ)も挙げられる。
【0164】
より具体的には、
【0165】
【化32】

【0166】
などが好ましく挙げられる。
【0167】
その他、式(R2−1−2)、(R2−1−3):
【0168】
【化33】

【0169】
(式中、p4は0または1〜20の整数、Z15、Z16、Z17は同じかまたは異なり、HまたはCH3)なども挙げられる。
【0170】
また、n1=2以上(三官能以上)のものとしては、式(R2−2):
【0171】
【化34】

【0172】
(式中、p5は0または1〜5の整数)があげられる。
【0173】
具体的には、
【0174】
【化35】

【0175】
などが挙げられる。
【0176】
また、式(R2−2)以外のものとして、たとえば
【0177】
【化36】

【0178】
などが挙げられる。
【0179】
また、含フッ素アルキレン基を含むものとして、式(R2−3)、(R2−4):
【0180】
【化37】

【0181】
(式中、p6、p8は同じかまたは異なり、1〜10の整数;p7は1〜30の整数)などが挙げられる。
【0182】
具体的には、
【0183】
【化38】

【0184】
などが好ましく挙げられる。
【0185】
2としてこれら例示の直鎖または分枝状のアルキレン基からなる二価以上の有機基は、重合体に柔軟性や弾性を付与できる点で好ましい。また、希土類金属化合物(B)との相溶性に優れる点で好ましい。さらにフッ素原子を導入する際、高含有率で導入でき、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率の点で有利となるため好ましい。
【0186】
(2)芳香族環状構造を含む(n1+1)価の有機基:
たとえば、式(R2−5):
【0187】
【化39】

【0188】
(式中、R21およびR22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z21およびZ22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r1およびr2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基、
または式(R2−6):
【0189】
【化40】

【0190】
(式中、R23、R24、R25およびR26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z23は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基があげられる。
【0191】
そのほか、つぎの式(R2−7)〜(R2−11)で表わされる部位を含む二価の有機基もあげられる。
【0192】
式(R2−7):
【0193】
【化41】

【0194】
式(R2−8):
【0195】
【化42】

【0196】
式(R2−9)
【0197】
【化43】

【0198】
式(R2−10):
【0199】
【化44】

【0200】
式(R2−11):
【0201】
【化45】

【0202】
上記式中、R27、R28、R29およびR30は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R31およびR32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z24、Z25およびZ26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r4およびr5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;r6は1〜2の整数;r7およびr8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
【0203】
式(R2−5)の具体例としては、
【0204】
【化46】

【0205】
【化47】

【0206】
(式中、r4、r5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z21、Z22、r1、r2は前記式(R2−5)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0207】
(R2−6)の具体例としては、
【0208】
【化48】

【0209】
(式中、Z23、r3は前記式(R2−6)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0210】
式(R2−7)の具体例としては、
【0211】
【化49】

【0212】
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−7)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0213】
式(R2−8)の具体例としては、
【0214】
【化50】

【0215】
(式中、Z24およびr6は前記式(R2−8)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0216】
式(R2−9)の具体例としては、
【0217】
【化51】

【0218】
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−9)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0219】
式(R2−10)の具体例としては、
【0220】
【化52】

【0221】
【化53】

【0222】
(式中、Z24、Z25、r7およびr8は前記式(R2−10)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0223】
式(R2−11)の具体例としては、
【0224】
【化54】

【0225】
【化55】

【0226】
(式中、Z24、Z25、Z26、r6、r7およびr8は前記式(R2−11)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0227】
21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
【0228】
これらの芳香族環状構造を有する二価以上の有機基は、耐熱性と機械的特性に優れる点で好ましく、ガラス転移点を高く設定でき、その結果、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を向上できる点で好ましい。
【0229】
なかでもフッ素原子を有するものが、通信用の光増幅時において、近赤外領域の光に対して透明性が高い点で好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに発光効率、増幅効率において効果的に作用するため好ましい。
【0230】
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n1+1)価の有機基:
具体的には、式(R2−12):
【0231】
【化56】

【0232】
(式中、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z27およびZ28は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s1およびs2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基、または式(R2−13):
【0233】
【化57】

【0234】
(式中、R35、R36、R37およびR38は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z29は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基があげられる。
【0235】
そのほか、つぎの式(R2−14)〜(R2−18)で表わされる部位を含む二価の有機基もあげられる。
【0236】
式(R2−14):
【0237】
【化58】

【0238】
式(R2−15):
【0239】
【化59】

【0240】
式(R2−16):
【0241】
【化60】

【0242】
式(R2−17):
【0243】
【化61】

【0244】
式(R2−18):
【0245】
【化62】

【0246】
上記式中、R39、R40、R41およびR42は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R43およびR44は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z30、Z31およびZ32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s4およびs5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;s6は1〜2の整数;s7およびs8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
【0247】
式(R2−12)の具体例としては、
【0248】
【化63】

【0249】
【化64】

【0250】
(式中、s4、s5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z27、Z28、s1、s2は前記式(R2−12)と同じ)
などが好ましく挙げられる。
【0251】
(R2−13)の具体例としては、
【0252】
【化65】

【0253】
(式中、Z29、s3は前記式(R2−13)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0254】
式(R2−14)の具体例としては、
【0255】
【化66】

【0256】
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−14)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0257】
式(R2−15)の具体例としては、
【0258】
【化67】

【0259】
(式中、Z30およびs6は前記式(R2−15)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0260】
式(R2−16)の具体例としては、
【0261】
【化68】

【0262】
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−16)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0263】
式(R2−17)の具体例としては、
【0264】
【化69】

【0265】
【化70】

【0266】
(式中、Z30、Z31、s7およびs8は前記式(R2−17)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0267】
式(R2−18)の具体例としては、
【0268】
【化71】

【0269】
【化72】

【0270】
(式中、Z30、Z31、Z32、s6、s7およびs8は前記式(R2−18)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0271】
27、Z28、Z29、Z30、Z31およびZ32の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
【0272】
これらの脂肪族環状構造を有する二価以上の有機基は、ガラス転移温度を高く設定でき、耐熱性、機械的特性に優れる点で好ましい。また、発光の励起光に通常に用いられる紫外光に対して、透明性が高い点で好ましく、結果的に発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を向上できるため特に好ましい。また、耐紫外線性にも優れる点で好ましい。
【0273】
なかでもフッ素原子を有するものが、通信用の光増幅時において、近赤外領域の光に対して透明性が高い点で好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに発光効率、増幅効率において効果的に作用するため好ましい。
【0274】
(4)ウレタン結合を含む(n1+1)価の有機基
具体的には、
【0275】
【化73】

【0276】
などの有機基が挙げられる。
【0277】
以上にR2を中心に説明したが、式(4)で示される多官能アクリレート(a1−2)の具体例としては次のものが例示できる。
【0278】
【化74】

【0279】
【化75】

【0280】
【化76】

【0281】
【化77】

【0282】
【化78】

【0283】
【化79】

【0284】
【化80】

【0285】
【化81】

【0286】
【化82】

【0287】
【化83】

【0288】
【化84】

【0289】
【化85】

【0290】
【化86】

【0291】
【化87】

【0292】
などの多官能アクリレート化合物が好ましく挙げられる。
【0293】
本発明の光機能性積層体に用いる含フッ素アクリレート系重合体(A1−III)は、前記含フッ素アクリレート(a1−1)と多官能アクリレート(a1−2)に加えて、必要に応じ、任意の単量体(n)を共重合し、任意の構造単位Nを導入してもよい。
【0294】
任意の単量体(n)は、(a1−1)、(a1−2)と共重合可能なものであれば制限されないが、通常、(a1−1)、(a1−2)以外のアクリレート系単量体、(メタ)アクリル酸類、含フッ素アクリル酸類、マレイン酸誘導体、塩化ビニル、エチレン類、スチレン誘導体、ノルボルネン誘導体などから選択され、フッ素含有率を低下させすぎない範囲で導入される。
【0295】
これら任意の構造単位Nは、例えば、希土類金属化合物(B)との分散性、相溶性を改善する目的、基材との密着性を改善する目的、他素材の基材との密着性を改善する目的、耐熱性や機械的特性を改善する目的、屈折率や透明性を調整する目的などのため導入される。
【0296】
なかでも具体的には、(a1−1)、(a1−2)以外のアクリレート系単量体、(メタ)アクリル酸類、含フッ素(メタ)アクリル酸類、マレイン酸誘導体などの単量体由来の構造単位から選ばれるのが好ましい。
【0297】
アクリレート系単量体としては、直鎖または分枝状の炭素数1〜20のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系単量体、具体的にはメチルメタクリレート(MMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルメタアクリレート(EMA)、エチルアクリレート(EA)、イソプロピルメタアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクタデシルメタアクリレート、オクタデシルアクリレートなどが好ましく挙げられる。
【0298】
また、側鎖にヒドロキシル基、エポキシ基、カルボキシル基などの官能基を有する(メタ)アクリレート系単量体、具体的には、ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタアクリレート(GMA)、グリシジルアクリレートなども挙げられる。
【0299】
また、芳香族環状構造を含む炭素数3〜20の炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系単量体、例えばベンゼン環構造、ナフチル環構造、複素環構造などを側鎖に含むもの、具体的には、フェニルメタアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルメタアクリレート、ナフチルアクリレートなども挙げられる。
【0300】
また、脂肪族環状構造を含む炭素数3〜20の炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、シクロヘキシル構造、ノルボルナン構造、デカリン構造、アダマンチル構造などを側鎖に含むもの、具体的には、シクロヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アダマンチルメタアクリレート、アダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルメタアクリレート、エチルアダマンチルアクリレートなども挙げられる。
【0301】
(メタ)アクリル酸類および含フッ素(メタ)アクリル酸類としては、例えばメタアクリル酸、アクリル酸、α−フロロアクリル酸、α−トリフロロメチルアクリル酸などが挙げられる。
【0302】
マレイン酸誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル類(例えば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノプロピルエステルなど)、マレイン酸ジエステル類(例えば、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジプロピルエステルなど)などが好ましい。
【0303】
本発明の光機能性積層体に用いる含フッ素アクリレート系重合体は前記含フッ素アクリレート(a1−1)と多官能アクリレート(a1−2)を重合してなるものであって、単量体(a1−1)由来の構造単位A1−1と単量体(a1−2)由来の構造単位A1−2を必須成分とし、構造単位A1−1を20〜99.9モル%、構造単位A1−2を0.1〜80モル%含むものである。
【0304】
本発明の光機能性積層体に用いる含フッ素アクリレート系重合体は、多官能アクリレート(a1−2)の構造単位A1−2を含むことに特徴があり、それによって、光機能性積層体の発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を大きく向上できる。
【0305】
一方、構造単位A1−1を導入することで、重合体のフッ素含有率を向上させることができ、それによってもさらに光機能性積層体の発光(増幅)強度、発光(増幅)効率を向上できる。
【0306】
本発明の含フッ素アクリレート系重合体のフッ素含有率は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
【0307】
構造単位A1−1とA1−2の好ましい存在比率は、単量体(a1−1)、(a1−2)の種類によって異なるが、構造単位A1−1/A1−2モル比率で、30/70〜99/1モル比、より好ましくは40/60〜98/2モル比、特に好ましくは50/50〜95/5モル比である。
【0308】
構造単位A1−1の比率が少なすぎると含フッ素アクリレート系重合体(A1)中のフッ素含有率が低下してしまい、充分な発光(増幅)強度、発光(増幅)効率が得られにくくなる傾向にある。
【0309】
構造単位A1−2の比率が少なすぎると、重合体分子自体の運動性を抑制することが困難となり、結果的に充分な発光(増幅)強度、発光(増幅)効率が得られにくくなる傾向にある。
【0310】
逆に構造単位A1−2の比率が大きくなりすぎると、含フッ素アクリレート系重合体(A1)自体の機械的物性が低下、例えば脆くなったり、また、希土類金属化合物(B)との相溶性が低下し、相分離などを起こし、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率への効果を低下させてしまう傾向にある。
【0311】
任意の構造単位Nは、構造単位A1−1、A1−2による、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率に対する効果を損なわない範囲で導入され、通常、含フッ素アクリレート系重合体(A1)の全単量体に占める割合を60モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特には10モル%以下とするのが好ましい。
【0312】
本発明の光機能性積層体において、光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)の好ましい第二は、硬化性の部位を側鎖又は主鎖末端に有する含フッ素ポリマー(A2)である。
【0313】
硬化性部位を有する含フッ素ポリマー(A2)としては、WO02/72706公報やWO2004/016689公報に記載と同様のものが、具体的に好ましく挙げられる。
【0314】
さらに、本発明の光機能性積層体において、光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)の好ましい第三は、光機能性層(L1)に用いる希土類金属化合物(B)中の希土類金属イオンと配位結合することが可能な官能基または錯体形成可能な官能基を側鎖又は主鎖末端に有する含フッ素ポリマー(A3)である。
【0315】
錯形成可能な官能基を有する含フッ素ポリマー(A3)としては、WO02/72696公報やWO03/91343公報に記載と同様のものが、具体的に好ましく挙げられる。
【0316】
つぎに、本発明の光機能性積層体において、光機能性層(L1)に用いる希土類金属化合物について説明する。
【0317】
希土類金属化合物(B)に用いられる希土類元素は、周期律表においてアクチニウムを除くスカンジニウム族元素とランタノイドの17種の元素から選ばれる少なくとも1種であり、なかでも、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、プラセオジウム(Pr)、ホルミウム(Ho)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などが好ましく挙げられる。
【0318】
これらのなかから、発光、光増幅および波長変換などの用途に応じ、また必要とする光の種類(波長)に応じて用いる希土類元素の種類が選択される。
【0319】
例えば、波長1300〜1550nmの近赤外光を用いた光通信の光増幅用途では、近赤外領域の蛍光発生能を有する希土類元素から選択するのが好ましい。
【0320】
具体的には、プラセオジウム(蛍光波長:1300nm)、エルビウム(蛍光波長:1550nm)などの希土類元素があげられ、波長850nmの近赤外光を用いた光通信の光増幅用途では、ネオジウム(蛍光波長:850nm)が好ましい。波長650nmの可視光を用いた光通信の光増幅用途では、ユーロピウム(蛍光波長:615nm)などが好ましい。
【0321】
発光素子および波長変換材料としての用途では、それぞれ必要とする波長の光を蛍光として発生する希土類元素が選択される。
【0322】
例えば、発光用途では、緑色発光のテルビウム(蛍光波長:532nm)、赤色発光のユーロピウム(蛍光波長:615nm)などから選択するのが好ましい。
【0323】
本発明の光機能性積層体中における希土類金属化合物(B)とは、希土類金属錯体(配位子と錯体を形成している状態)(B1)、希土類付活無機蛍光体(無機塩中に付活された状態)(B2)、希土類金属イオン(通常のイオン結合で存在した状態)(B3)のことであり、なかでも希土類金属錯体、希土類付活無機蛍光体が好ましい。なかでも特に、希土類金属錯体が好ましい。
【0324】
以下、各希土類金属化合物について説明する。
【0325】
(B1)希土類金属錯体
希土類金属錯体はそれ自体の発光(増幅)効率が高く、また本発明で用いる含フッ素ポリマー(A)との分散性、相溶性に優れる点で好ましい。
【0326】
つまり、通常、希土類金属錯体は、希土類元素に1つ以上の配位子が配位結合したものであり、希土類金属イオンと比べ、希土類元素の周りを配位子がとり囲んでいる。そのため励起した希土類元素が発光する過程で、その蓄えられた希土類元素のエネルギーが周りのマトリックス分子(ポリマー分子など)へ逃げるのを抑えられ、その結果、希土類金属からの発光強度・発光効率が増大するものである。
【0327】
希土類金属錯体の配位子は、π電子を有する原子(例えばヘテロ原子など)や不飽和結合などを含むものであれば無機系、有機系のいずれのものであってもよいが、炭素−炭素二重結合、炭素−ヘテロ原子間の二重結合、ヘテロ原子−ヘテロ原子間二重結合を有する有機系化合物であることが、特に、本発明に用いる含フッ素ポリマー(A)への分散性や相溶性に優れる点で好ましい。
【0328】
さらには、配位子自体アニオンを形成し、希土類金属イオン(カチオン)と配位結合とイオン結合を形成する電荷補償タイプの配位子を含むことが希土類金属錯体の安定性、耐熱性、耐紫外線性に優れる点で好ましい。
【0329】
電荷補償タイプの配位子は具体的には、例えば、式(b1):
【0330】
【化88】

【0331】
11は水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるもの)で示される構造単位を有するもの、
式(b2):
【0332】
【化89】

【0333】
(式中、Y1、Y2は式(b1)と同じ)で示される構造単位を有するもの、
式(b3):
【0334】
【化90】

【0335】
[式中、Y3はO、SまたはN−R′(R′は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるもの)から選ばれるもの;Y4は、
【0336】
【化91】

【0337】
(式中、R1′は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるものであって、またさらにR1′はC=N中の炭素原子を伴って環構造を形成していてもよい;R2′、R3′は同じかまたは異なり、炭素数1〜20の炭化水素基および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるものであって、またさらにR2′、R3′はリン原子を伴って環構造を形成してもよい)から選ばれる少なくとも1種]で示される構造単位を有するものなどが挙げれる。
【0338】
式(b1)の構造を有する配位子としては具体的には、たとえばつぎのものがあげられる。
【0339】
(b1−1)β−ジケトン構造を有する配位子
具体的には、式(b1−1):
【0340】
【化92】

【0341】
(式中、Rb1、Rb2は同じかまたは異なり、炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基、および複素環構造を有する炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種;X11は前記式(b1)と同じ)で示される配位子であり、これらは、発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素アクリレート系重合体(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0342】
具体的には、
【0343】
【化93】

【0344】
が例示でき、なかでも
【0345】
【化94】

【0346】
が好ましく挙げられる。
【0347】
(b1−2)β−ジスルフォニル構造を有する配位子
具体的には、式(b1−2):
【0348】
【化95】

【0349】
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b1−1)と同じ;X11は前記式(b1)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素アクリレート系重合体(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0350】
具体的には、
【0351】
【化96】

【0352】
が例示でき、なかでも
【0353】
【化97】

【0354】
が好ましく挙げられる。
【0355】
また、式(b2)の構造を有する配位子としては、具体的には、つぎのものがあげられる。
【0356】
(b2−1)カルボニルイミド構造を有する配位子
具体的には、式(b2−1):
【0357】
【化98】

【0358】
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b1−1)と同じ)で示される配位子であり、これらは、発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素アクリレート系重合体(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0359】
具体的には、
【0360】
【化99】

【0361】
が例示でき、なかでも
【0362】
【化100】

【0363】
が好ましく挙げられる。
【0364】
(b2−2)スルホンイミド構造を有する配位子
具体的には、式(b2−2):
【0365】
【化101】

【0366】
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b2−1)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素ポリマー(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0367】
具体的には、
【0368】
【化102】

【0369】
が例示でき、なかでも
【0370】
【化103】

【0371】
が好ましく挙げられる。
【0372】
式(b1−1)、(b1−2)、(b2−1)および(b2−2)において、Rb1、Rb2はなかでも、少なくとも一方が水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
【0373】
さらに式(b1−1)、(b1−2)において、X11はなかでも、重水素原子またはフッ素原子であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
【0374】
また、式(b3)の構造を有する配位子としては、具体的には、つぎのものがあげられる。
【0375】
(b3−1)式(b3−1):
【0376】
【化104】

【0377】
(式中、Rb3は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基、および複素環構造を有する炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種;Rb4は水素原子、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなるエーテル結合を有していてもよい含フッ素炭化水素基;Y3は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素ポリマー(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0378】
具体的には、
【0379】
【化105】

【0380】
【化106】

【0381】
が例示でき、なかでも
【0382】
【化107】

【0383】
が好ましく挙げられる。
【0384】
(b3−2)式(b3−2):
【0385】
【化108】

【0386】
(式中、Rb3およびRb4は前記式(b3−1)と同じ;Y3は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素ポリマー(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0387】
具体的には、
【0388】
【化109】

【0389】
【化110】

【0390】
が例示でき、なかでも
【0391】
【化111】

【0392】
が好ましく挙げられる。
【0393】
(b3−3)式(b3−3):
【0394】
【化112】

【0395】
(式中、Rb3およびRb4は前記式(b3−1)と同じ;Y3、R2′は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と含フッ素ポリマー(A)との相溶性が良好な点で好ましい。
【0396】
具体的には、
【0397】
【化113】

【0398】
【化114】

【0399】
が例示でき、なかでも
【0400】
【化115】

【0401】
が好ましく挙げられる。
【0402】
式(b3)、(b3−1)、(b3−2)および(b3−3)において、Rb3は、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
【0403】
式(b3)および(b3−3)において、R1′、R2′、R3′は、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
【0404】
本発明の光機能性積層体に用いる希土類金属錯体は、さらに電荷(負の電荷)を有さない電荷非補償型の配位子を導入したものであってもよい。
【0405】
電荷非補償型の配位子とは、配位子全体で電荷を有さず、希土類金属の空のd起動に配位可能なπ電子対を有するもので、
【0406】
【化116】

【0407】
などの部位を有する化合物から通常選択される。
【0408】
具体的には、
【0409】
【化117】

【0410】
【化118】

【0411】
などが挙げられ、好ましくは
【0412】
【化119】

【0413】
【化120】

【0414】
などが挙げられる。
【0415】
電荷非補償型の配位子において、一部にフッ素原子を導入したものが発光(増幅)効率の点で好ましい。
【0416】
本発明に用いる希土類金属錯体はプラス三価の希土類金属イオンに、前述の電荷補償型または電荷非補償型の配位子から選ばれる少なくとも1種の配位子が配位結合したものであればよく、好ましくは3または4個の配位子が配位結合したものである。希土類金属錯体において配位子は、電荷補償型または電荷非補償型のいずれか一方のみで構成されていても、電荷補償型と電荷非補償型の両方を含んでいてもよい。
【0417】
なかでも、電荷補償型の配位子を少なくとも1個含むものが好ましく、特には3個の電荷補償型の配位子が配位結合したものが好ましい。さらに必要に応じて4個目の配位子として電荷非補償型の配位子を導入したものであってもよい。これら電荷補償型の配位子を含む錯体は、それ自体安定性が高く発光(増幅)効率に優れ、さらには本発明に用いる含フッ素ポリマー(A)への分散性や相溶性に優れる点で好ましい。
【0418】
その結果、本発明の光機能性積層体において、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率において、特に効果的に作用する点で好ましい。
【0419】
(B2)希土類付活無機蛍光体
希土類付活無機蛍光体は、無機塩中に希土類金属が付活されたものであり、耐熱性が高い点で好ましい。
【0420】
希土類付活無機蛍光体の具体例としては、
(1)YAG(黄色発光材料)
具体的には(YaGdl−a)(AlbGal−b)O12Ce3+など
(2)YOS(赤色発光材料)
具体的にはY22S:Erなど
(3)BAM:Eu(青色発光材料)
具体的には(Ba,Mg)Al1017:Erなど
(4)SCA(青色発光材料)
具体的には(Sr、CaBaMg)10(PO46Cl2:Euなど
(5)GN4(緑色発光材料)
ZnS:Cu,Alなど
(6)BAM:Eu,Mn(緑色発光材料)
具体的には(Ba,Mg)Al1017:Eu,Mnなど
の蛍光体があげられる。
【0421】
(B3)希土類金属イオン
本発明で用いる希土類金属化合物(B)において、希土類金属イオンは通常、希土類金属イオンとイオン結合できる対アニオンとの塩の形態で混合される。希土類金属陽イオンは価数には制限はなく、通常2価または3価あるいは4価の金属カチオンの塩として用いられる。
【0422】
希土類金属塩としては、前記例示の希土類元素の塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;硝酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの塩などが挙げられる。また、有機酸の塩、有機スルホン酸の塩など、希土類金属の有機塩であってもよい。また、複硝酸塩、複硫酸塩、キレート化物も使用可能である。
【0423】
具体的な希土類金属塩としては、塩化プラセオジウム、臭化プラセオジウム、ヨウ化プラセオジウム、硝酸プラセオジウム、過塩素酸プラセオジウム、臭素酸プラセオジウム、酢酸プラセオジウム、硫酸プラセオジウム、リン酸プラセオジウム等のプラセオジウム塩;塩化ネオジウム、臭化ネオジウム、ヨウ化ネオジウム、硝酸ネオジウム、過塩素酸ネオジウム、臭素酸ネオジウム、酢酸ネオジウム、硫酸ネオジウム、リン酸ネオジウム等のネオジウム塩;塩化ユーロピウム、臭化ユーロピウム、ヨウ化ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、過塩素酸ユーロピウム、臭素酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、リン酸ユーロピウム等のユーロピウム塩;塩化エルビウム、臭化エルビウム、ヨウ化エルビウム、硝酸エルビウム、過塩素酸エルビウム、臭素酸エルビウム、酢酸エルビウム、硫酸エルビウム、リン酸エルビウム等のエルビウム塩;塩化テルビウム、臭化テルビウム、ヨウ化テルビウム、硝酸テルビウム、過塩素酸テルビウム、臭素酸テルビウム、酢酸テルビウム、硫酸テルビウム、リン酸テルビウム等のテルビウム塩;塩化サマリウム、臭化サマリウム、ヨウ化サマリウム、硝酸サマリウム、過塩素酸サマリウム、臭素酸サマリウム、酢酸サマリウム、硫酸サマリウム、リン酸サマリウム等のサマリウム塩などをあげることができる。
【0424】
本発明の光機能性層(L1)において、含フッ素ポリマー(A)と希土類金属化合物(B)の存在比率は(A)が1〜99.99質量%、(B)0.01〜99質量%(イオンとしての質量%。希土類金属化合物(B)含有量に関しては、以下同様)であり、使用する希土類金属化合物(B)および含フッ素ポリマー(A)の種類、用途、目的などによって適宜選択される。
【0425】
光増幅器や光導波路等の光通信用部品や発光体として利用する場合には、この希土類金属化合物の含有量は、蛍光強度の向上の観点から0.01〜20質量%の範囲で選ぶのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%である。
【0426】
希土類金属化合物(B)の含有量が少なすぎると目的とする光増幅作用、発光強度、波長変換効果などの目的の性能が発揮されなくなる。
【0427】
一方、希土類金属化合物(B)の含有量が多すぎると、希土類金属化合物(B)とマトリックスポリマーを形成する含フッ素ポリマー(A)との分散性、相溶性が悪くなるため好ましくない。
【0428】
なお、希土類金属イオンの含有量は、約600℃の温度の電気炉中で有機成分を燃焼してその灰分を定量するか、または蛍光X線分析などの物理化学的手法により定量的に測定することができる。
【0429】
本発明の光機能性層(L1)には、前述の含フッ素ポリマー(A)と希土類金属化合物(B)のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、酸化防止剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
【0430】
本発明の光機能性積層体において、低屈折率層(L2)は、通常、前記光機能性層(L1)上に直接接触されてなる層であり、光機能性層(L1)より低屈折率の透明層である。
【0431】
光機能性層(L1)と低屈折率層(L2)の好ましい屈折率差(nL1−nL2)は、対象とする光の種類によって異なるが、具体的には光機能性層(L1)に供給される光の波長(励起光波長)および/または光機能性層(L1)自体が発する光の波長(蛍光波長)における屈折率差において、0.005以上、より好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上である。
【0432】
低屈折率層(L2)の好ましい屈折率は上記対象となる光の波長に対して、1.30〜1.45、より好ましくは1.30〜1.40、特に好ましくは1.30〜1.38である。
【0433】
さらに、低屈折率層(L2)は、対象とする光の種類において透明性が高いものが好ましい。具体的には、少なくとも光機能性層(L1)に供給される光の波長(励起光波長)に対して、透明であることが好ましく、具体的には、上記光の波長に対して、吸光係数で1.0×10-5μm以下、好ましくは5.0×10-6μm以下、特に好ましくは2.0×10-6μm以下である。
【0434】
したがって、低屈折率層(L2)は、非晶性の含フッ素ポリマーからなる層であることが好ましい。
【0435】
低屈折率層(L2)に用いる含フッ素ポリマーは、具体的にはつぎのものが例示できる。
含フッ素アクリレート系重合体
ポリマー側鎖を形成し得る部分またはポリマー主鎖を形成し得る部分のいずれか少なくとも一方に、フッ素原子を有する含フッ素アクリレート類由来の構造単位を有する重合体である。
【0436】
なかでも、フッ素含有率が高いものが好ましく、その点でもポリマー側鎖を形成し得る部分にフッ素原子を含む含フッ素アクリレート由来の構造単位を有する重合体でることが好ましい。
【0437】
含フッ素アクリレート系重合体のガラス転移点は、機械的強度、表面硬度を改善できる点で高い方が好ましく、40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは100℃以上である。
【0438】
低屈折率層(L2)において、含フッ素アクリレート系重合体を構成する含フッ素アクリレートとしては、具体的には、前記光機能性層(L1)で利用した含フッ素アクリレート類から選ばれるものが、同様に好ましく利用できる。
【0439】
なかでも具体的には、前述の(A1−I)、(A1−II、)および(A1−III)で示した含フッ素アクリレート重合体から選ばれるものが好ましい。
【0440】
(2)硬化性部位を有する非晶性含フッ素ポリマーまたはその硬化物
ポリマー側鎖または主鎖末端に硬化性(または架橋性)の官能基を有する含フッ素重合体からなるもの、またはポリマー自身または、硬化剤(架橋剤)の存在下で硬化(架橋)してなる硬化物を含むものである。
【0441】
具体的には、側鎖末端に硬化性(架橋性)の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位を有する含フッ素重合体であって、例えば、WO02/18457公報やWO02/073255公報で記載の炭素−炭素二重結合を含む含フッ素プレポリマー、またはそれらを硬化してなる硬化物やWO2004/016689公報で記載の架橋性環状エーテル構造を含む含フッ素ポリマー、およびそれらを硬化してなる硬化物などが好ましく挙げられ、これらの中の少なくとも1種の含フッ素ポリマーが選択される。
【0442】
これら硬化性部位を有する含フッ素ポリマーからなる層は、光や熱などによって容易に硬化させることができ、機械的強度や硬度が飛躍的に改善できる点で好ましく、その結果、最表面層としたときに傷や磨耗を起こしにくくなる。
【0443】
(3)主鎖に脂肪族環状構造を有する含フッ素重合体
具体的に好ましくは含フッ素脂肪族環状構造の構造単位を有する含フッ素重合体であることが好ましく、例えば、含フッ素脂肪族環状の構造単位としては式(5):
【0444】
【化121】

【0445】
(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じかまたは異なり、HまたはF;X21およびX22は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF3;Rf6は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1)で示されるものが好ましい。
【0446】
具体的には、たとえば、
【0447】
【化122】

【0448】
(式中、Rf6、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位を有するものが好ましくあげられ、
さらに具体的には、
【0449】
【化123】

【0450】
(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などの構造単位を有するものがあげられる。
【0451】
これら含フッ素重合体は真空紫外光領域から近赤外領域の広い波長領域で透明性が高く、さらに高いガラス転移温度を有する点で好ましい。
なかでも、式(6)
【0452】
【化124】

【0453】
(式中、R41およびR42は、同じかまたは異なり、F、H、Clまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;X41およびX42は、同じかまたは異なり、F、H、Clまたは−OR43(R43は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)。ただし、R41またはR42の少なくとも一方は、Fまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で表される1,3−ジオキソール環構造含有化合物と、エチレン性不飽和単量体とから得られる環状エーテル共重合体であることが好ましい。
【0454】
具体的には、式(6)の1,3−ジオキソール環構造含有化合物は、X41およびX42がフッ素原子、R41およびR42がCF3であるパーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)〔PDD〕であることが好ましく、さらに環状エーテル共重合体中のエチレン性不飽和単量体の構造単位は、含フッ素エチレン性不飽和単量体、なかでもテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる単量体由来の構造単位であることが、透明性、低屈折率性の点で好ましい。
【0455】
さらには、上記環状エーテル共重合体は、ガラス転移点が100〜135℃、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン中35℃における固有粘度が0.01〜0.4dl/gであるものが、低屈折率層(L2)を形成する際、成膜性に優れる点で特に好ましい。
【0456】
そのほか、ノルボルネン誘導体の構造単位を有するもの、例えばテトラフルオロエチレンやクロロトリフルオロエチレンなどの含フッ素オレフィン類とノルボルネン誘導体との共重合体、含フッ素アクリル類とノルボルネン誘導体との共重合体なども好ましく挙げられる。
【0457】
本発明の光機能性積層体において、透明基材(L0)は、前記光機能性層(L1)で発生した目的の光(蛍光)が、通過し目的物に照射する際の支持基材の働きをするものであり、目的や用途、使用方法によって、材質、形状など適宜選択される。
【0458】
なお、透明基材(L0)は、その上に施される光機能性層(L1)と同じかまたは大きな屈折率を有する層であり、その結果、光機能性層(L1)で発生した光(蛍光)が、より優先的に透明基材(L0)側を通過し、目的物に効率的に照射されるものである。
【0459】
材質としては、無機系の透明基材および有機系、特に樹脂系の透明基材の中から選択される。
【0460】
無機系の透明基材としては、ガラス系基材、具体的にはソーダ石灰ガラス、ソーダカリ鉛ガラス、硬質ガラス(一級、二級)、タングステンガラス、石英(各種金属をドープしたものも含む)など、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムなどの結晶などが好ましく挙げられ、なかでもガラス系基材が好ましく挙げられる。
【0461】
有機系透明基材としては、通常、透明性樹脂から選ばれ、具体的には、アクリル樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、透明ポリエステル樹脂類、透明ポリエチレン類、透明プロピレン樹脂類、透明ABS樹脂類、メチルセルロース樹脂類、透明ポリスチレン類、透明エポキシ樹脂類、ポリアリレート類、ポリサルフォン類、ポリエーテルサルフォン類、透明ナイロン樹脂類、透明ポリブチレンテレフタレート類、透明ポリエチレンテレフタレート類、透明フッ素樹脂、TPX(ポリ−4−メチルペンテン−1)、透明フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シクロオレフィン樹脂類(ノルボルネン系樹脂類など)、シリコーン系エラストマー類、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー類、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー類、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー類、および有機非線形光学材料などがあげられる。
【0462】
なかでも、アクリル樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、透明ポリエチレンテレフタレート類、メチルセルロース樹脂類、シクロオレフィン樹脂類等が透明性において優れ、光学用途として有用である点で好ましく、フィルム状として利用した場合においても、良好な機械的物性、フレキシブル性を有する点でも好ましい。
【0463】
本発明の、透明基材(L0)の形状は、目的、用途によって、具体的には光機能性層(L1)で発生した光(蛍光)を照射する対象物の構造、積層体を含めたデバイスの構成、構造などによって適宜選択され、特に限定はされないが、板状、シート状、フィルム状、繊維状、棒状、球状、粒子状、さらには予め成型された各種形状の基材が採用される。
【0464】
特に、フィルム状の透明樹脂系基材を用いたものが、本発明の積層体自体を作製する場合の加工性に優れ、さらに種々の対象物に合わせて後加工などで容易に適用できる点で好ましい。
【0465】
フィルム状の透明樹脂系基材の厚さは、そのフィルムの材質によって異なるが、通常、0.5〜5,000μm、好ましくは1〜1,000μm、より好ましくは5〜500μm、特に好ましくは10〜300μmである。
【0466】
本発明の光機能性積層体において、光機能性層(L1)の厚さは、光機能性層(L1)自体の発光(蛍光)強度やその用途やその目標によって異なり、適宜選択されるが、通常、1nm〜1mm程度であり、好ましくは、0.05〜5,000μm、より好ましくは0.1〜1,000μm、特に好ましくは0.5〜500μm、さらに好ましくは1〜100μmである。
【0467】
低屈折率層(L2)の厚さの好ましい第一は、光機能性層(L1)に供給される光(励起光)に対して反射防止効果を得ることを目的とした膜厚であり、通常、膜厚dL2は、数式:
L2=x・λ/4nL2
(式中、dL2は低屈折率層の膜厚(nm);xは奇数の整数;λは励起光の波長(nm);nL2は低屈折率層の波長(λ)で測定した屈折率)で算出される膜厚に調整することが好ましい。
【0468】
また、低屈折率層(L2)の厚さの好ましい第二は、励起光の供給によって光機能性層(L1)で発生した光(蛍光)を、目的の方向、例えば透明基材(L0)方向に、より優先的に向けることを目的としたものであり、通常、1.0×10-1〜1.0×104μm、好ましくは1.0×10-1〜5.0×103μm、より好ましくは1.0×10-1〜1.0×103μm、特に好ましくは1.0×10-1〜5×102μm、さらには1.0×10-1〜1.0×102μmである。
【0469】
本発明の積層体の作製方法としては、透明基材(L0)上に含フッ素ポリマー(A)と希土類金属化合物(B)からなる塗料用組成物などを塗布後、乾燥などにより成膜、さらに場合によっては、熱や光の照射による硬化反応を行い光機能性層(L1)を形成した後、その上に低屈折率のフッ素ポリマーを含む塗料用組成物を用い、同様に塗布法により低屈折率層(L2)を形成できる。
【0470】
光機能性層(L1)、低屈折率層(L2)の各層の塗布法としては、公知の方法が広く採用でき、例えば、回転塗布(スピンコート)、流延塗布、ロール塗布、グラビア塗装などが利用できる。
【0471】
また、光機能性層(L1)、低屈折率層(L2)、それぞれの単層フィルムを溶融押出成型などにより形成した後、透明基材(L0)上に熱圧着等により積層してもよい。
【0472】
また、さらに、共押出法により、光機能性層(L1)と低屈折率層(L2)との積層フィルムを、また透明樹脂フィルムを加えた3層積層フィルムを、同時に成型して得ても良い。
【0473】
本発明の光機能性積層体において、光機能性層(L1)と低屈折率層(L2)の好ましい組合せとしては、
(I)光機能性層(L1)を構成する含フッ素ポリマー(A)と低屈折率層(L2)を構成するポリマーが同じ含フッ素ポリマーで構成された積層体:
これらは前述の共押出法による積層体の製造法などにおいて、より効率的に積層体を得ることができる点で好ましい。
(II)光機能性層(L1)を構成する含フッ素ポリマー(A)が硬化性部位を持つポリマーであって、硬化操作による硬化物である積層体:
この場合、塗布法により次の低屈折率層(L2)を形成する際、光機能性層(L1)と低屈折率層(L2)の界面のインターミキシングを起こしにくい点で好ましい。
(III)光機能性層(L1)を構成する含フッ素ポリマー(A)および低屈折率層(L2)を構成するポリマーのいずれもが硬化性部位を持つポリマーであって、硬化操作による硬化物である積層体:
この場合、発光(蛍光)効率、表面の機械的特性が良好な点で好ましい。
【0474】
本発明の光機能性積層体は、その中の低屈折率層(L2)の側から供給された光(励起光)を効率よく、光機能性層(L1)に伝搬させ、その励起光を受けて光機能性層(L1)にて発光(蛍光)効率良く、高強度の光を発生させることができる。
【0475】
さらに、光機能性層(L1)で発した光を、より効率よく目的の方向、つまり透明基材(L0)の方向に供給できるものである。
【0476】
そのため、種々の光学機能用途に適用可能となる。
【0477】
例えば、
(i)波長変換用途
太陽光などからの入射光を低屈折率層(L2)より照射することで、太陽光の特定の波長(帯域)から、目的とする別の波長(帯域)に変換し、透明基材(L0)側に選択的に照射する波長変換積層体、例えば波長変換フィルム。
【0478】
例えば、太陽電池用素子表面に波長変換フィルムを、太陽光側に低屈折率層(L2)を向けて施すことで、太陽光の特定の波長を効率よく、太陽電池素子特有の光−電気変換効率の高い波長帯域に変換し、結果的に増幅し、エネルギー変換効率の向上を可能とする。
【0479】
(ii)画像の色補正用途
プロジェクターなどのレンズに本発明の積層体を施し、赤み(光機能性層にユウロピウム化合物を利用)などを増加させ、画像に自然な色合いを付与する等の用途。
【0480】
例えば、本発明の積層体の低屈折率層(L2)を光源側に向けてレンズ上などに施すことで、より効率的に画像の色補正が可能となる。
【0481】
(iii)LED等の演色用途
LED等からなる発光ダイオード上に本発明の積層体を施し、LEDの光の一部を励起光に利用してのLED自体の発光色を所望の色に変換することが可能となる。
【0482】
具体的には、本発明の積層体の低屈折率層(L2)を光源側にLED上に装着することで効率よく、単一のLEDで安定した色調バランスに調整できるものである。
【0483】
さらには、光機能性層(L1)中の希土類金属化合物を調整し、青色発光ダイオード上に上記と同様に本発明の積層体を装着することで、より効率よく白色発光も可能となる。
【実施例】
【0484】
つぎに本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0485】
ここで、本発明で使用する各種の物性およびパラメータの測定法について、まとめて述べる。
(1)NMR
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR分析
IR分析:Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定する。
(3)ガラス転移温度Tg
DSC(示差走査熱量計:SEIKO社、RTG220)を用いて、30℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)−降温−昇温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とした。
(4)フッ素含有率
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求める(質量%)。
(5)透過率の測定
分光光度計(HITACHI社製 Spectrophotometer U−4100)を用い、各サンプルの透過率を測定する。
(6)屈折率の測定
アッベ屈折計を用いて25℃で550nmの波長の光について屈折率を測定する。
(7)発光強度の測定
蛍光分光光度計(HITACHI社製 Fluorescence Spectrophotometer F−4010)を用い、各サンプルの発光スペクトルを測定し、特定波長のピーク面積を比較し相対発光強度を算出する。
【0486】
合成例1(Eu(CF3COCHCOCF33の調製)
100mlのガラス製フラスコに、酢酸ユーロピウム4水和物の2.0g(5mmol)、ヘキサフルオロアセチルアセトンの3.0g(20mmol)および純水の50mlを投入し、25℃で3日間攪拌した。
【0487】
ついで、析出した固形物をろ過により取り出し、固形物を水洗後、水−メタノール混合溶媒で再結晶したところ白色の結晶が得られた(収率60%)。
【0488】
この結晶をIR分析、1H−NMRおよび19F−NMR分析し、目的の錯体、Eu(CF3COCHCOCF33であることを確認した。
【0489】
また、得られた白色結晶はTg−DTA測定により、2水和物であることが推測された。
【0490】
合成例2(PMMAの合成)
50mlのガラス製三つ口フラスコに、メチルメタクリレート10g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgを入れ、撹拌したところ均一溶液となった。ついで、窒素置換しながら、60℃で10時間加熱撹拌し、塊状重合させたところ、透明な固体を得た。
【0491】
ついで、得られた固体をアセトン50mlに溶解させ、ヘキサンに滴下し再沈澱し、沈殿物を60℃で5時間真空乾燥し、無色透明な固体8.0gを得た。得られたポリマーは1H−NMR、IR分析の結果、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。
【0492】
合成例3(含フッ素アクリレート重合体の合成)
メチルメタクリレートに代えて、下式(a−1):
【0493】
【化125】

【0494】
で示される含フッ素アクリレート(8FFA)の10gを用いた以外は、合成例2と同様にして含フッ素アクリレート重合体を合成し、さらに単離・精製し、無色透明な固体7.5gを得た。
【0495】
得られたポリマーは1H−NMR、19F−NMR、IR分析の結果、前記式(a−1)で示される8FFAの単独重合体であった。
【0496】
前記酸素フラスコ燃焼法により測定したフッ素含有率は56質量%であった。
【0497】
また、DSC測定によるガラス転移点は65℃であった。
【0498】
合成例4(含フッ素アクリレート重合体の合成)
メチルメタクリレートに代えて、下式(a−2):
CH2=CFCOOCH2CF3 (a−2)
で示される2,2,2−トリフルオロエチル−αフルオロアクリレート(3FFA)の10gを用いた以外は、合成例2と同様にして含フッ素アクリレート重合体を合成し、さらに単離・精製し、無色透明な固体7.8gを得た。
【0499】
得られたポリマーは1H−NMR、19F−NMR、IR分析の結果、前記式(a−2)で示される3FFAの単独重合体であった。
【0500】
前記酸素フラスコ燃焼法により測定したフッ素含有率は44質量%であった。
【0501】
また、DSC測定によるガラス転移点は125℃であった。
【0502】
合成例5(OH基を有する含フッ素アリルエーテルホモポリマーの合成)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)、式(a−3):
【0503】
【化126】

【0504】
の20.4gと下式:
【0505】
【化127】

【0506】
で示される含フッ素パーオキサイドの8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液、21.2gを入れ、十分に窒素置換を行ったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
【0507】
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の固体、17.6gを得た。
【0508】
この固体をIR分析、1H−NMRおよび19F−NMR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり、側鎖末端にOH基を有する含フッ素重合体であった。
【0509】
合成例6(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200mlの四つ口フラスコに、ジエチルエーテル80ml、前記合成例6で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gとピリジン1.0gを仕込み、5℃以下に冷却した。
【0510】
ついで、窒素気流下、撹拌を行いながら、α−フルオロアクリル酸フルオライド1.0gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
【0511】
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水溶液で洗浄し、さらに水洗を繰り返した。
【0512】
エーテル溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでエーテル溶液を濾過により分離した。このエーテル溶液を19F−NMRにより調べたところ、
【0513】
【数1】

【0514】
が85/15モル%の共重合体であった。
【0515】
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
【0516】
得られたエーテル溶液をガラス版上に塗布し室温にてキャスト膜とした被膜の一部とり、前記酸素フラスコ燃焼法によりフッ素含有率を測定したところ55質量%であった。
【0517】
合成例7(TFE/パーフルオロ−1,3−ジオキソール共重合体の合成)
内容積300mLのSUS316製オートクレーブに、HCFC225の300gと4,4’−ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの1.47g(仕込んだモノマーの総モル数に対して1.53モル%に相当)を入れ、0℃に冷却し、反応系内を3回窒素で置換した。その後、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3―ジオキソール(PDD):下式:
【0518】
【化128】

【0519】
の30g、次いでテトラフルオロエチレン(TFE)11.7gを供給し、40℃で10時間撹拌した。
【0520】
反応後、重合溶液にヘキサンを加えポリマーを析出させ、分離し、乾燥したところ、白色固体、32gが得られた。
【0521】
得られたポリマーは19F−NMR分析の結果、TFE/PDD=49/51モル%、であった。
【0522】
また、DSC測定によるガラス転移点は110℃であった。
【0523】
またさらに、固有粘度(η)および見掛けの溶融粘度(AMV)を以下の方法で測定した。
【0524】
〔固有粘度η〕
ウベローデ型毛細管粘度計を用いて35℃においてパーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランに溶解させた充分希薄な溶液の濃度を4点以上変えて測定し得られた還元粘度の値を濃度0に外挿し得た。
固有粘度(η)は0.2(dl/g)であった。
【0525】
〔見掛けの溶融粘度(AMV)〕
AMVは230℃で383.1gの荷重をかけ、ASTM D 2116法により、溶融流速度〔MFR〕から、以下の式を用いて計算されたものである。
AMV(パスカル・秒)=6.4×荷重(g)/MFR(g/10分)
見掛けの溶融粘度(AMV)は100(パスカル・秒)以下であった。
【0526】
実施例1(光機能性積層体の作製)
(1)光機能性層(L1)の作製
(光機能性組成物の調整)
合成例6で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー(エーテル溶液)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えた後、エーテルをエバポレーターにより留去することで、ポリマー濃度で15質量%のMIBK溶液に調製した。
【0527】
得られたポリマー溶液2.0gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの3mgおよび合成例1で得たユーロピウム錯体(Eu(CF3COCHCOCF33)の9mgを添加し、溶解させた。
【0528】
(光機能性層(L1)の作製)
上記光機能性組成物をマイクロスライドガラス:屈折率1.521(透明基材(L0))上にアプリケーターを用いて膜厚が約50μmになるように塗布し、室温で10時間乾燥させた。
【0529】
次いで、乾燥後の被膜に、高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射した。
【0530】
得られた光照射後の光機能性層(L1)の膜厚は、マイクロメーターを用いて測定し、詳しくは積層体全体の膜厚から予め同様に測定したマイクロスライドガラス(透明基材(L0))の厚みを差し引いて算出したところ、70μmであった。
【0531】
(2)低屈折率層(L2)の作製
(低屈折率層用組成物の調製)
合成例7で得たTFE−PDD共重合体2gをパーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランに溶解させ、ポリマー濃度10質量%に調整した。
【0532】
(低屈折率層(L2)の作製)
上記低屈折率層用組成物を前記(1)で得た光機能性層上に、アプリケーターを用いて膜厚が約20μmになるように塗布し、室温で12時間乾燥させた。
【0533】
低屈折率層(L2)の膜厚は、前記と同様マイクロメーターを用いて測定し、光機能性積層体全体の膜厚から、透明基材(L0)および光機能性層(L1)の膜厚を差し引いて算出した。その結果、低屈折率層(L2)は30μmであった。
【0534】
実施例2(光機能性積層体の作製)
(1)光機能性層(L1)の作製
(光機能性組成物の調製)
メチルイソブチルケトン50mlに、合成例3で得た含フッ素アクリレート重合体の3g、合成例1で得たユーロピウム錯体(Eu(CF3COCHCOCF33)0.09gを混合、溶解させた。
【0535】
(光機能性層(L1)の作製)
上記組成物を用い、マイクロスライドガラス(透明基材(L0))上にアプリケーターを用いて膜厚が50μmになるように塗布し、室温で10時間乾燥させ、光機能性層(L1)を形成した。得られた光機能性層(L1)の膜厚を実施例1と同様に測定したところ55μmであった。
【0536】
(2)低屈折率層(L2)の作製
上記(1)で得た光機能性層(L1)上に実施例1と同様にして、TFE−PDD共重合体からなる低屈折率層(L2)を作製した。
【0537】
低屈折率層(L2)の膜厚は35μmであった。
【0538】
実施例3(光機能性積層体の作製)
(1)光機能性層(L1)の作製
合成例3で得た含フッ素アクリレート重合体に代えて、合成例4で得た含フッ素アクリレート重合体を用いた以外は、実施例2と同様にして、光機能性組成物を調製し、さらに実施例2と同様にしてマイクロスライドガラス上に光機能性層(L1)を作製した。光機能性層(L1)の膜厚は45μmであった。
【0539】
(2)低屈折率層(L2)の作製
上記(1)で得た光機能性層(L1)上に実施例1と同様にして、TFE−PDD共重合体からなる低屈折率層(L2)を作製した。
【0540】
低屈折率層(L2)の膜厚は43μmであった。
【0541】
実施例4(光機能性積層体の作製)
(1)光機能性層(L1)の作製
(光機能性組成物の調製)
式(a−1):
【0542】
【化129】

【0543】
で示される含フッ素アクリレート(8FFA)の1.16g、式(a−4):
【0544】
【化130】

【0545】
で示される二官能含フッ素アクリレート1.83g、合成例1で得たユーロピウム錯体(Eu(CF3COCHCOCF33)0.09g、および2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの0.03gを混合、溶解させた。
【0546】
(光機能性層(L1)の作製)
上記光機能性組成物をマイクロスライドガラス(透明基材(L0))上にアプリケーターを用いて膜厚が約50μmになるように塗布した後、直ちに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したところ、膜厚60μmの均一透明被膜からなる光機能性層(L1)を得た。
【0547】
(2)低屈折率層(L2)の作製
上記(1)で得た光機能性層(L1)上に実施例1と同様にして、TFE−PDD共重合体からなる低屈折率層(L2)を作製した。
【0548】
低屈折率層(L2)の膜厚は40μmであった。
【0549】
比較例1(光機能性積層体の製造)
実施例1において、低屈折率層(L2)を、設けなかった点以外は、実施例1と同様にしてマイクロスライドガラス(透明基材(L0))上に光機能性層(L1)のみを有する光機能性積層体を得た。
【0550】
光機能性層(L1)の膜厚は75μmであった。
【0551】
比較例2(光機能性積層体の製造)
(1)光機能性層(L1)の作製
合成例3で得た含フッ素アクリレート重合体に代えて、合成例2で得たポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた以外は、実施例2と同様にして、光機能性組成物を調製し、さらに実施例2と同様にして光機能性層(L1)を作製した。光機能性層(L1)の膜厚は83μmであった。
【0552】
本比較例においては、上記光機能性層(L1)上には低屈折率層(L2)は設けなかった。
【0553】
比較例3(光機能性積層体の製造)
合成例2で得た含フッ素アクリレートに代えて、合成例3で得た8FFAを用いた以外は、実施例2と同様にして、光機能性組成物を調製し、さらに実施例2と同様にして光機能性層(L1)を作製した。光機能性層(L1)の膜厚は40μmであった。
【0554】
本比較例においては、上記光機能性層(L1)上には低屈折率層(L2)は設けなかった。
【0555】
比較例4(光機能性積層体の製造)
合成例3で得た含フッ素アクリレートに代えて、合成例4で得た2,2,2−トリフルオロメチルαフルオロアクリレート(3FFA)を用いた以外は、実施例2と同様にして光機能性組成物を調製し、さらに実施例2と同様にして、光機能性層(L1)を作製した。光機能性層(L1)の膜厚は50μmであった。
【0556】
本比較例においては、上記光機能性層(L1)上には低屈折率層(L2)は設けなかった。
【0557】
比較例5(光機能性積層体の製造)
(1)光機能性層(L1)の作製
比較例2と同様にして光機能性組成物を調製し、さらに比較例2と同様にして、光機能性層(L1)を作製した。光機能性層(L1)の膜厚は25μmであった。
【0558】
(2)低屈折率層(L2)の作製
上記(1)で得た光機能性層(L1)上に実施例1と同様にして、TFE−PDD共重合体からなる低屈折率層(L2)を作製した。
【0559】
低屈折率層(L2)の膜厚は49μmであった。
【0560】
試験例1(光機能性積層体における各層の物性の測定)
実施例1〜4、および比較例1〜5のそれぞれの光機能性積層体について各層の物性を以下の方法で測定した。
【0561】
(1)光機能性層(L1)の屈折率の測定
実施例1〜4、および比較例1〜5で作製した光機能性組成物のそれぞれをアルミ箔上に、アプリケーターを用いて、成膜後の膜厚が約100μmとなるように塗布した以外は各実施例および各比較例で記載した方法と同様にして、光機能性層(L1)の被膜を作製した。
【0562】
アルミ箔を希塩酸で溶かしたところ透明なフィルムが得られた。
【0563】
アッベ屈折率計を用いて上記希土類金属化合物を含むフィルムの550nm波長での屈折率(nL1)を測定した。
【0564】
(2)低屈折率層(L2)の屈折率の測定
実施例1で作製した低屈折率層用組成物をアルミ箔上に、アプリケーターを用いて、成膜後の膜厚が約100μmとなるように塗布した以外は実施例1に記載した方法と同様にして、低屈折率層(L2)の被膜を作製した。
【0565】
アルミ箔を希塩酸で溶かしたところ透明なフィルムが得られた。
【0566】
アッベ屈折率計を用いて上記フィルムの550nm波長での屈折率(nL2)を測定した。
【0567】
さらに、上記(1)、(2)の結果より、光機能性層(L1)と低屈折率層(L2)の屈折率差(nL1−nL2)を算出した。
【0568】
各試験結果を表1に示す。
【0569】
試験例2(光機能性積層体の光学特性の測定)
実施例1〜4、および比較例1〜5で作製した光機能性積層体の光学特性、外観を以下の方法で測定した。
【0570】
(1)光機能性積層体の透過率の測定
実施例1〜4、比較例1〜5で得た光機能性積層体のそれぞれについて、低屈折率層(L2)側を前記分光光度計の入射光側にセットし、394nm、615nmのそれぞれでの透過率を測定した。
【0571】
(2)相対発光強度
前記蛍光分光光度計に実施例1〜4、比較例1〜5の光機能性積層体をセットし、励起波長として一定量の394nmの波長光を照射し、蛍光スペクトルを測定した。
【0572】
蛍光スペクトルの測定において、照射される励起光は、透明基材(L0)側より、透明基材(L0)の水平面に対して45度の角度で入射した。
【0573】
蛍光スペクトルは、透明基材(L0)側に入射光に対して90度の角度に設置した受光部により測定した。
【0574】
得られた蛍光スペクトルにおいて、615nmの発光ピーク面積に着目し、比較例2の光機能性積層体の615nm発光ピーク強度を100としたときの、各光機能性積層体の相対的な発光ピーク面積比を算出し、相対発光強度とした。
【0575】
(3)光機能性積層体の外観
実施例1〜4、および比較例1〜5の光機能性積層体のそれぞれについて、目視により透明性について、次の基準で評価した。
○:光機能膜中の希土類金属錯体の析出無く完全に透明なもの
×:希土類金属錯体の析出が観察され、濁りを生じているもの
各試験結果を表1に示す。
【0576】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(L0)透明基材、
(L1)基材(L0)上に形成されてなる含フッ素ポリマー(A)および希土類金属化合物(B)からなる光機能性層、および
(L2)層(L1)上に形成されてなる低屈折率層
からなり、各層の屈折率をn(L0)、n(L1)、およびn(L2)としたとき、下式:
n(L0)≧n(L1)>n(L2)
の関係を有することを特徴とする光機能性積層体。
【請求項2】
光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)がフッ素含有率が30質量%以上の非晶性ポリマーである請求項1記載の光機能性積層体。
【請求項3】
光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)が、含フッ素アクリル重合体であって、ガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の含フッ素アクリル重合体である請求項1記載の光機能性積層体。
【請求項4】
光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)が、含フッ素アクリル重合体であって、ガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の含フッ素アクリル重合体である請求項1記載の光機能性積層体。
【請求項5】
光機能性層(L1)における含フッ素ポリマー(A)が、
(a1−1):式(1):
【化1】

(式中、X1はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1はエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の炭化水素基およびエーテル結合を有していても良い炭素数1〜50の一価の含フッ素炭化水素基から選ばれ、ただし、X1、R1の少なくとも一方にフッ素原子を含む)から選ばれる少なくとも1種の含フッ素アクリレート類由来の構造単位および
(a1−2):式(4):
【化2】

(式中、X2、X3は同じかまたは異なり、H、F、Cl、CH3またはCF3;n1は1〜6の整数;R2は炭素数1〜50の(n1+1)価の有機基)から選ばれる少なくとも1種の多官能アクリレート類由来の構造単位からなる含フッ素アクリル重合体である請求項1または2記載の光機能性積層体。
【請求項6】
透明基材(L0)が、ガラス系材料からなる基材である請求項1〜5のいずれかに記載の光機能性積層体。
【請求項7】
透明基材(L0)が、透明性樹脂からなる基材である請求項1〜5のいずれかに記載の光機能性積層体。
【請求項8】
透明性樹脂がアクリル樹脂類、ポリカーボネート樹脂類、透明ポリエチレンテレフタレート類、メチルセルロース樹脂類およびシクロオレフィン樹脂類から選ばれる少なくとも1種である請求項7記載の光機能性積層体。
【請求項9】
透明基材(L0)がフィルム形状である請求項7または8記載の光機能性積層体。

【公開番号】特開2006−27260(P2006−27260A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21193(P2005−21193)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】