説明

光機能性膜およびその製造方法

【課題】 光取り出しの向上を図る。
【解決手段】 発光素子は、光を発する発光層(102) と、発光層(102) から出射された光の光路上に配置された屈折率複合構造層(103) とを有する。屈折率複合構造層(103) は下記(1)〜(4)の特性を有する構造体を含む。(1)内部構造が屈折率の異なる2種類以上の相からなり、(2)前記2種類以上の相のうち少なくとも1つの相は、1nm以上、かつ可視波長光域の波長の4分の1以下の大きさの構造単位から構成され、(3)平均屈折率が1よりも高く、発光体と屈折率複合構造層(103) との間に存在する複数の層のうちガス相を含む層以外の層の屈折率よりも低く、(4)厚さ方向の内部構造は、屈折率複合構造層(103) に接する他層との界面からエネルギ的に光が入射可能な近接場領域内において、前記2種類以上の相が接する界面を複数有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光機能性膜およびその製造方法に関する。本発明の光機能性膜は光を発する発光素子と組み合せて取り扱われる。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイとしては、光源と組み合せて透過率変調を行う液晶ディスプレイが主流であった。しかし、液晶自体の応答速度の問題により、動画表示用途のディスプレイとしては、性能的に制約があった。一方、液晶ディスプレイと性能面や価格面で競合させるべく、様々な自発光型ディスプレイが開発されている。液晶ディスプレイと競合できる性能や価格のディスプレイとして現状で注目されているのが、有機EL(Electro Luminescence;電界発光)ディスプレイである。
【0003】
有機ELディスプレイは、1層ないし多層の有機エレクトロルミネッセンス材料層が2つの電極に挟持された有機EL発光素子構造を有する表示素子である。この表示素子では、表示画像を構成する1つの表示単位毎に、言い換えれば画素毎に、それぞれ独立して有機EL発光素子構造が基板面上にマトリクス状に形成されている。
【0004】
この素子は、その駆動方法から、アクティブ方式とパッシブ方式とに分類される。アクティブ方式の素子は、1つの絵素ごとに2端子あるいは3端子構造のアクティブ素子を有する。パッシブ方式の素子は、互いに交差する縦方向の電極と横方向の電極により、発光に必要な個々の画素が駆動し、近年の携帯電話にサブディスプレイとして搭載されている。
【0005】
有機ELディスプレイは、光の取出し方の違いから、基板側から光を取り出すボトムエミッション型構造と、基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型構造とに分類される。ボトムエミッション型構造は、2つの電極のうちの少なくとも基板側の電極が透明電極であり、他方の電極が光反射性であるか、あるいはその電極の外側に光反射層が形成された構造を有する。これに対して、トップエミッション型構造は、透明電極と光反射層の位置が逆転しており、基板側に反射層が形成された構造を有する。
【0006】
通常、発光層中の蛍光体から放射された光は、蛍光体を中心として全方位に出射されるので、表示面の反対側に出射された光は、その光路上に設けられた反射板(典型的には反射電極)により鏡面反転させて、全方位に出射された光を表示面の方向に取り出せるようにしている。その過程で、光は、陰極、正孔輸送層、電子輸送層、陽極、ブロッキング層、ガラス基板などの複数の異なった機能を有する層(以下、「媒質」ともいう。)を経由して空気中へ放射される。
【0007】
ここで、異なる媒質の境界面における、光の屈折角と媒質の屈折率との関係は、スネルの法則に従う。スネルの法則によると、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質へ光が進行する場合、入射角θ1と屈折角θ2の間に、n1×sinθ1=n2×sinθ2なる関係が成り立つ。n1>n2が成り立つ場合、θ2=90°となる入射角θ1=sin-1(n2/n1)は臨界角としてよく知られている。入射角が臨界角よりも大きい場合、光は媒質間の境界面において全反射されることとなる。
【0008】
したがって、等方的に光が放射される有機EL素子において、この臨界角よりも大きな角度で界面に入射する光は、境界面において全反射し、隣接する層に光が入射できなくなる。隣接する層に入射できない光は、その層内で全反射を繰り返し、閉じ込められた状態になる。
【0009】
このことは、発光層で放射される光のうち、素子内部の複数の層を透過する過程で素子外部へ出射されずに閉じ込められる光が存在し、見かけ上の発光効率の低下原因となることを意味する。一般に、有機EL素子の発光層で得られる放射光は、大部分が全反射によって素子内部に閉じ込められ、有効な放射光として利用されるのは、全体の17%から20%程度であることが知られている〔Advanced Material 6(1994)491等を参照〕。
【0010】
このように、光を発する層から隣接する層へ臨界角以上の角度で入射する光が存在し、光として取り出せない成分が存在する素子は、発光体、光源、表示素子として現在使われている自発光素子のほとんどすべてが該当する。例えば、近紫外光や紫外光により蛍光色素を励起発光させ、ガラスを透過して光が出射する蛍光管、電子線により蛍光色素を励起発光させ、ガラスを透過して光が出射するCRT(陰極線管)、微小なサイトからの電子線により蛍光色素を励起発光させ、ガラスを透過して光が出射するFED(電界放出表示装置)、プラズマ励起により発生する紫外線で蛍光色素を励起発光させ、ガラスを透過して光が出射するPDP(プラズマ表示パネル)、有機材料内での正孔と電子の会合により材料を励起発光させ、電極やガラス等を透過して光が出射する有機EL素子、無機材料内での正孔と電子との会合により材料を励起発光させ、電極やガラス等を透過して光が出射する無機EL素子、半導体材料内でのP−N接合面での正孔−電子の会合により励起発光させ、樹脂層を透過して光が出射するLED(発光ダイオード)、特に近紫外でのLED発光で蛍光色素を励起発光させ、樹脂を透過して光が出射する白色や青色LEDが挙げられる。
【0011】
自発光素子において、発光部位での光へのエネルギ変換は、その発光原理、材料、素子構成等によりそもそも制約が存在する。例えば、蛍光体を使って非可視光のエネルギを可視光に変換する方式においては、蛍光色素での光へのエネルギ効率に限界があり、ある単位面積に配することができる色素の量は限界があり、また励起エネルギが到達可能な厚さにも制約がある。そのため、単位面積から取り出せる光の量は、色素が固定である限り、蛍光色素の密度、厚さを変数としてある値で極大値を持つ特性になる。
【0012】
また、有機EL素子では、素子の構成や使用する有機材料、電極構成等に起因する様々な制約があり、電界発光の量子効率には限界がある。現状の有機EL素子では、発光層での輝度を高めるために、有機EL層に流入させる電流の密度を大きくする必要がある。しかし、電流密度を大きくすると、有機EL層の劣化が早まり、輝度が経時的に急激に低下する。したがって、表示の明るさ優先すると素子の寿命が短くなるという問題があり、実際に電流密度を上げて輝度を上げることができない。
【0013】
さらに、実際の自発光素子においては、光を発する層から放射されたすべての光を利用できていないのも現実である。これは、屈折率が1以上の媒体から光が発生し、屈折率が高い層から低い層へと光が入射する場合に、ある角度以上の入射光成分は、臨界角を超えるので、界面で全反射され、界面を透過し、隣接する層に入射できないという現象があるからである。
【0014】
有機ELを一例として説明すると、発光層、透明電極層、素子基板といった素子を構成する個々の層の屈折率がいずれも1. 5以上と高いので、発光層内部で発生し、空間的に全方位に放射される光が、素子を構成する層の様々な界面のうち屈折率に0.1以上の差がある界面(特に、駆動用電極と素子基板との界面や素子基板と空気との界面)で全反射され、導波成分として取り出すことができない。この現象は、発光する部位の屈折率が1. 5以上の層である無機ELや半導体デバイス、あるいは基板上に形成され、屈折率が1以上の蛍光色素等を用いて、素子内部で発生する近紫外光や紫外光を可視光に変換する素子においても、同様に発生する。発光層の屈折率をnE 、光を取り出す雰囲気の屈折率をnA (通常は空気であり、屈折率は約1である)とすると、光の利用効率の概算は〔Arcsin(nA /nE )/90〕^2で表される。したがって、液体や固体から光が発する限り、光量効率が32%(屈折率1.3 の水から空気への取出し効率の概算値)を超えることは困難である。
【0015】
これまでにも、LEDや有機EL素子などの自発光素子において、光に変換されたエネルギを効率的に利用するために様々な提言がなされている。特に、材料や電極構造に起因する発光効率の制約下で、素子特性や寿命を高めるために、光取出し効率を向上させた様々な素子構造が提案されている。例えば、散乱層を発光層に隣接して設ける素子構造が提案されている。一般に散乱層と呼ばれる構造は、ある屈折率を持つ透明な媒体中にサブミクロン(約0.5μm)ないしミクロン(約100μm)の粒子を分散させた構造を指し、散乱性を発現させるためには、分散させた粒子径以上の膜厚を必要とする。
【0016】
現在の高解像度ディスプレイにおいては、その画素間の抜け部は10μm近傍と小さく、散乱層が厚くなると画素境界のボヤケ、表示のにじみやボケにつながる。また、散乱体として分散させる微粒子自体も完全な反射体ではないので、光がこのような散乱体を透過する過程では、光の散乱と同じく光の吸収による減衰も発生する。このように、散乱体を用いた従来の素子においては、光取出し効率の向上と素子内部での光のロスとが相容れない要素として存在し、劇的な取出し効率の改善にはつながらない。
【0017】
発光層に近い位置に低屈折率の層を配置する構成として、例えば空気層を設ける素子も提案されている(特許文献1を参照)。この構造においては、界面が仮に完全な平面であれば、発光層から出射した光が空気層に出射する過程で全反射が生じるので、取出し効率は向上しない。具体的には、特許文献1では、基板上に形成された犠牲層をエッチングすることにより空気層を形成しているので、発光層/空気層界面が完全な平面でなくランダムな凹凸を持つ。これにより光の一部が導波する過程で臨界角以下になる条件が生じ、導波光として空気層に取り出される。したがって、特許文献1の有機EL素子では、常に臨界角の制約以上の光を取り出している訳ではなく、取り出し効率を局所的に向上させているに過ぎない。
【0018】
シリカエアロゲル層により取出し効率を向上させる構造も提案されている(特許文献2を参照)。しかし、シリカエアロゲルの構造は明確でなく、一般には、波長以下の網目状の多孔体シリカゲル膜のシリカゲルがシリカに変化した結果、ナノオーダの網目の間隔がそのままの状態で、網目を構成するフレーム部の体積が減少した結果、空孔径が大きくなるものと考えられる。このような高い空孔率の膜は、光学的に低屈折率を実現するアプローチの1つとして有効であるが、(1)元のシリカゲルの網目構造を制御するのが困難である、(2)シリカゲルをシリカへと変化させるための高いプロセス温度が必要である、(3)空孔率が高いので以降の成膜やパターン化に制約が多い、(4)機械的な強度が低いといったプロセス的な課題や構造体自体の課題が多い。また、エアロゲル層を有するものの光取出し効率が高いという報告がなされているが、積極的に効率を向上させるための制御や改善手段が不明であり、あくまでシリカエアロゲルという特殊な構造体において発現する効果によって光取出し効率が向上されているので、適用可能なデバイスは限定される。
【0019】
特許文献3には、所定の配列を有する微小球から構成された光学部材を含む発光装置が開示されている。この発光装置によれば、光学部材がフォトニックバンドギャップまたは不完全フォトニックバンドを形成するように、微小球を規則的に配列させることにより、発光効率を向上させることができる。しかし、この発光装置により得られる発光は指向性が高く、基板面の法線方向では高い輝度が得られるものの、法線方向から僅かにずれた方向では輝度が極端に低下するという問題がある。
【0020】
有機ELではないが、LEDの技術において、素子表面にナノメートルサイズの凹凸構造を形成することにより取出し効率を高める技術が提案されている(特許文献4を参照)。この先行技術においては、ナノメートルサイズの凹凸形状によりもたらされる3つの効果が考えられる。
【0021】
1つ目は、波長以下のナノメートルサイズの凹凸面を持つことにより、凹凸を有する層からそれに接する層へと光が出射する光路の屈折率を膜厚方向に連続的に変化させる効果である。屈折率が連続的に変化することで、大きな屈折率差を有する界面で発生する光の損失を低減することが可能となる。しかし、屈折率の高い層から低い層に出射する際に全反射する光を取り出すことはできない。
【0022】
2つ目は、微小な範囲の界面への光の入射角が臨界角以下(全反射条件外)となる凹凸面の効果である。しかし、2つの層間に存在する1つの界面で、表面に形成された波長以下のナノメートルサイズの凹凸面への入射角が臨界角以下になる条件は、表面の凹凸形状がプリズムのように制御された形状になった場合にのみ満足するので、表面の凹凸形状に起因する特性の異方性が発現しやすくなる。実際のプロセスでこのような凹凸面をナノオーダで作ることは技術的に課題が多く、光や電磁波のエネルギ分布で加工される表面や通常の化学的なプロセスで形成される凹凸面においては、このプロファイルを恣意的に制御することは困難である。たとえ、ある微小部分で性能が実現できても、面としてみると効率の悪くなる領域も同時に形成されるので、取り出される光量には限界がある。
【0023】
3つ目は、界面のエバネッセント領域による光取り出し効果である。光が高屈折率の層から低屈折率の層に入射する場合、臨界角を超える光は全反射されて低屈折率の層に入射できないというのが古典的な光学的な考え方である。しかし、光をエネルギとして捉えると、高屈折率の層に接する低屈折率の層の内部には、光のエネルギが到達可能な領域が存在することが知られている。この領域がエバネッセント領域と呼ばれている。エバネッセント領域内で、光のエネルギのベクトルを変化させるもの(具体的には界面)が存在すると、その界面において光は反射や屈折されて光路が変化し、低屈折率の層に入射する光成分が生じる。しかし、この先行技術の構成においては、2つの層間に存在する界面が1つであるので、光がエネルギ的に界面を越えて低屈折率層側に入ったとしても、その光がその光路を変化させるような界面に到達できる可能性は低く、エバネッセント領域での光取出し効果を十分に期待できない。
【0024】
以上のように、この先行技術においては、界面近傍に波長以下のnmオーダの凹凸構造を形成するという極めて限定された構造を採用しているので、「屈折率を連続にする」という効果しか光取り出しに活用できない。
【特許文献1】特開2003-45642号公報
【特許文献2】特開2003-77647号公報
【特許文献3】特開2003-100458 号公報
【特許文献4】特開2003-258296 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、既存技術や先行技術では飛躍的に解決できなかった光取り出し向上を実現することを目的とする。より具体的には、本発明の目的は、自発光素子の特性に影響を与えることなく、取り出された輝度を向上させることが可能な素子構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
近年、近接場光が様々な応用を含め研究されている。上述したように、高屈折率層から低屈折率層へ光が入射したとき、両層の界面で光学的に臨界角を超え全反射する光が存在する。このような入射条件の光が界面に入射した場合であっても、高屈折率層−低屈折率層界面から低屈折率層内部に光エネルギが到達し得る領域(エバネッセント領域あるいは近接場領域)が存在する。この領域の光エネルギは、高屈折率層−低屈折率層接合界面からの距離が大きくなるに従い、入射角が大きくなるに従い、あるいは高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が大きくなるに従い、急激に減衰する挙動を示す。
【0027】
光の進路を変換する構造体をエバネッセント領域内に設ければ、その構造体の界面からの距離に応じて、光エネルギの取り出しが可能になることが知られている。屈折率1.5の媒体(例えばガラス)から屈折率1.0の媒体(例えば空気)へと光(波長450nm)が入射する場合を想定する。
【0028】
図1は、界面での光のエネルギ(強度)を1としたときの界面からの距離と、光の持つエネルギ(強度)との関係を示すグラフである。それぞれのプロットされた線は、界面への光の入射角度に対する、界面からの距離で検出(取出し)可能な光のエネルギを表す。プロットされたデータは、エバネッセント領域での光(近接場光)のエネルギを求めるための式として一般に公知の式から導き出される(大津元一,小林潔著,「近接場光の基礎」,オーム社を参照)。
【0029】
図1に示すように、界面から100nm以下の領域では、界面での光のエネルギの約15%以上のエネルギが到達する。言い換えれば、界面から100nm以下の領域では、本来なら全反射し、入射する成分がないために取り出すことができない光であっても、光としてのエネルギを有する。したがって、エネルギとして存在し得る位置で光の出射方位を変化させることができれば、その位置でのエネルギに相当する光を取り出すことが可能になる。
【0030】
本発明は、この光学現象を積極的に素子内で発現させることで、光取り出し効率を向上させている。具体的には、本発明の発光素子は、可視光などの光を発する発光層と、前記発光層から出射された光の光路上に配置された単層ないし複数層の光機能性膜(以下、「屈折率複合構造層」あるいは単に「構造層」ともいう。)とを有する。
【0031】
屈折率複合構造層は、下記(1)〜(4)の特性を有する屈折率複合構造体(以下、単に「構造体」ともいう。)を含む。(1)内部構造が屈折率の異なる2種類以上の相からなり、(2)前記2種類以上の相のうち少なくとも1つの相は、1nm以上、かつ可視波長光域の波長の4分の1(例えば可視光の最短波長を400nm とすると100nm )以下の大きさの構造単位から構成され、(3)平均屈折率が1よりも高く、発光体と前記光機能性膜との間に存在する複数の層のうちガス層(真空状態または大気圧よりも低圧状態が好ましい)を含む層以外の層の屈折率よりも低く、(4)厚さ方向の内部構造は、前記光機能性膜に接する他層との界面からエネルギ的に光が入射可能な近接場領域内において、前記2種類以上の相が接する界面を複数有する。屈折率複合構造層が単層の場合には、光が入射する他層との界面付近に構造体が形成され、屈折率複合構造層が複数層の場合には、光が入射する側の層に構造体が形成される。
【0032】
構造単位の大きさは、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がさらに好ましい。
【0033】
前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成された小胞状構造体であっても良い。この場合、前記構造単位は前記小胞状構造体を構成する壁の厚さおよび/または前記壁と前記壁に対向する壁との間隙の大きさである。「小胞状構造体」とは、細胞の細胞壁やシャボン玉の泡の塊のように、空間が膜構造により区切られた構造体をいう。小胞を区切る壁は、典型的には穴がないが、穴を有していても良い。
【0034】
また、前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成されたネットワーク状構造体であっても良い。この場合、前記構造単位は、前記ネットワーク状構造体を構成する繊維の径、前記繊維間の距離および前記ネットワーク状構造体により形成される間隙の大きさからなる群のうち少なくとも1つである。
【0035】
さらに、前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成された塊状構造体であっても良い。この場合、前記構造単位は前記塊状構造体の径または前記塊状構造体同士の間隙の大きさである。
【0036】
構造体は屈折率の異なる少なくとも2種類の相を有しており、少なくとも2種類の相のうち一方の相は、他方の相よりも屈折率が低い。以下、屈折率がより低い相を低屈折率相(第1相)と呼び、屈折率がより高い相を高屈折率相(第2相)と呼ぶ。なお、屈折率複合構造層が3種類以上の相を有するときは、高屈折率相よりも屈折率がより高い相、低屈折率相よりも屈折率がより低い相が存在し得る。
【0037】
2種類以上の相のうち少なくとも1つの相(例えば高屈折率相)は、室温を中心とする少なくとも素子動作温度範囲内において、構造体を自己保持できる特性を有することが好ましい。「自己保持」は、ある温度範囲内(一般には室温)においてある材料自体が任意の形状に形成されることが可能で、かつその形状が静置状態で安定に保持されることを表し、自己組織化等により自発的に特定の形状を形成する場合も包含する。例えば、シャボン玉の泡の塊は、時間の経過に伴って消失していくので、自己保持できる特性はない。一方、発泡スチロールや発泡ウレタンでは、泡構造が形成され、任意の形状を形成することができるとともに、静置した状況では、経時的にその多孔構造が壊れないので、このような構造を形成できる材料は自己保できる特性を有する。
【0038】
高屈折率相は、低屈折率相よりも屈折率が高い材料から形成される。高屈折率相は、低屈折率相よりも屈折率が高ければ良いが、好ましくは1. 3以上の屈折率を有する。
【0039】
低屈折率相としては、一般に基板材料として用いられるガラス、樹脂、シリコン等の屈折率よりも低い屈折率を有する固体相、液体相、ガス相が適用可能である。低屈折率相の屈折率は、典型的には1.4以下であり、1に近いことが好ましい。具体的には、1.2以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
【0040】
固体相としては、例えば低屈折率化された化合物や重合体が挙げられる。例えば、フッ素置換されたアルキル鎖を有する化合物(重合体)の様な分子構造的にヘテロ原子として電子密度が低いフッ素を置換基として多く持つ化合物、フラーレンC60 のような分子の三次元的な結合構造により空間的に嵩高く密度が上がらない化合物、多孔体シリカゲルの構造を熱処理して得られるネットワーク構造のシリカの様に化合物の化学変化の結果空間的な充填状態を変化しないで体積収縮する化合物などが挙げられる。これらの化合物や重合体を用いることにより、物性値としての屈折率が低くなる。
【0041】
液体相としては、屈折率が約1.3 〜約1.4 の液状組成物が挙げられる。例えば、構造体を保持する樹脂材料との相分離性が高く、樹脂材料に対する濡れ性の制御が可能な水、あるいは相分離性を良くする為の界面活性剤等が添加された水溶液、フッ素置換されたアルキル鎖を有する低分子化合物ないし組成物が挙げられる。
【0042】
ガス相としては、空気やガスあるいは真空の相が挙げられる。ガス相は屈折率が約1であるので、光取出し効率の点で低屈折率相として望ましい。
【0043】
構造体を作製する方法として、微粒子を使う方法、自己組織化可能なブロックポリマまたは樹脂組成物中にナノメートルサイズのバブルを発生させる方法が挙げられ、製造プロセスに応じて固体、液体、ガスなどの相状態での適用があり得る。例えば、低屈折率相として気体の相を用いる場合では、気体の相部分を形成する方法として、以下の方法が考えられる。
【0044】
1.空間占有体(例えば粒子)をランダムに積み上げることにより、個々の空間占有体間に発生する間隙を低屈折率相として利用する。
【0045】
2.内部に気泡を含んだ空間占有体(例えば粒子)をランダムに積み上げることにより、個々の空間占有体間に発生する間隙を低屈折率相として利用する。
【0046】
3.物性の異なる2種類以上のドメインを自己組織化で形成した後、エッチング速度や溶解性の違いを利用して、2種類以上のドメインのうち1つまたは複数(但し、全てのドメインではない)のドメインを選択的に排除する。これにより形成された空間を低屈折率相として利用する。
【0047】
4.樹脂原料中にμm以下の微小気泡を発生させ、微小気泡の径を何らかの要因により制御して、ナノオーダーサイズの低屈折率相を形成する。
【0048】
低屈折率相として液体の相を用いる場合では、液体の相部分を形成する方法として、相溶性のない液体を組み合わせて(例えば水と油の組合せ)ミセル構造を形成する方法(いわゆるミセル化や乳化)が挙げられる。但し、通常のミセル化や乳化の方法では、粒径制御がきわめて困難であるので、近年開発されている様々な方法を採用することが好ましい。例えば、SPG(シラス多孔質ガラス) を使った液相粒子形ミセル化技術、マイクロカプセル化技術を採用することが望ましい。マイクロカプセル化技術は、微小ノズルから相溶性のない液体を滴下して液滴ドメインを形成し、ドメインを安定化させ、かつドメイン同士の再結合が起こらないように液滴ドメインの表面を処理する技術である。但し、精密な粒径制御の困難な乳化重合の様に、一般的に反応制御の都合で粒子形成した時点で幅広い粒子径分散を持つプロセスで微粒子分散溶液を調製する方法であっても、ある粒子径分散幅の微小の液相を取り出す“分球技術”を適用し、目的とする粒子径と粒子径分散を持った微粒子分散溶液を調製することも可能である。
【0049】
低屈折率相として固体の相を用いる場合では、固体の相部分を形成する方法として、固体化させる時点で微細化する方法や大きな粒子を粉砕処理して微粒子化する方法が挙げられる。固体化させる時点で微細化する方法としては、例えば、微小な液相を作る方法により重合性化合物を微小な液相にし、微小な液相をこの状態で重合させて固体化させる方法が挙げられる。
【0050】
低屈折率相の作製方法は、上記の通り固体、液体、ガスなどの各相状態で色々あるが、どのような相状態を採用するかによって、構造体自体の性能に違いが生じる。
【0051】
固体や液体の相状態を採用するのであれば、低屈折率相の屈折率を小さくすることが困難である。しかし、個々の相は非圧縮性なので、外部からの圧力に対する構造体の強度が高い。一方、気体の相状態を採用するのであれば、最大の取出し効率が得られるが、構造体自体の強度が低下するという欠点がある。
【0052】
以上のように、低屈折率の相の作り方や性能が低屈折率相の状態で異なるので、最終的なデバイスに求められる性能に応じて、低屈折率相の状態やプロセスを適宜選択することができる。
【0053】
構造体は大きさが可視光の波長以下の構造単位(例えば空孔ないし気泡)を有するので、構造体そのものの屈折率は、屈折率複合構造層の平均屈折率とみなすことが可能になる。また、構造体の内部に構造単位(例えば空孔ないし気泡)を有するので、屈折率複合構造層には屈折率の異なる相間の微小な界面が多数形成される。
【0054】
この微小なかつ多数の界面を光が通過すると、1つ1つの微小な界面において透過/反射が発生し、この構造体を透過する光は、短い距離の透過であっても出射する方位角エネルギ分布はランダム化され、きわめて効率的に光散乱に近い効果が生じ得る。但し、この現象が散乱体で得られる効果と異なる点が少なくとも1つある。それは、一般的な散乱体では、散乱反射および吸収の2つの現象が発生し、散乱体による吸収自体をゼロにすることが極めて困難であるという点である。
【0055】
一方、本発明の構造体では、光が、界面から界面に進行する間に、高屈折率ないし低屈折率の相(媒質) を透過する。しかし、媒質内を透過する光路長は、本発明の構造体では1μ以下と小さい為に無視することができる。したがって、屈折率を持った媒質中の透過時の“吸収がない”とみなせ、界面での“反射”と“屈折”のみで考慮できる。その結果、一般の散乱体で見られる現象、具体的には層厚が大きくなるに従って、取り出せる光が減衰する現象がほとんど発生しない。
【0056】
構造層が高屈折率を有する層に接するかもしくは挟まれた場合、構造体によりエバネッセント光を取り出すことができる。具体的には、高屈折率を有する層と構造層との界面近傍のエバネッセント領域(近接場領域)において発生するエネルギを光として取り出すことができる。またエバネッセント領域において、複数の微小な構造体(例えば空気と高屈折率媒体とから構成された屈折率複合構造体)が有する微小かつ複数の界面を光が透過することによって、光路がランダムに分散される。これにより、光エネルギがこの構造体層を透過できる光へと変換され、素子として取り出される光の量が増加する。
【0057】
また、この構造体内部で散乱された光は、光学的には、この構造体の平均屈折率の層から出射した光とほぼ同じと扱うことができるので、高屈折率層(例えば発光層)からの発光が構造体の平均屈折率層からの発光と同一視することができるという効果が得られる。この効果により、発光層からの発光のうち素子として取り出される光の量が増加する。したがって、この構造体は平均屈折率が、多孔体構造層(屈折率複合構造層)を形成する固体相としての樹脂材料の屈折率よりも低く、また微小な界面を複数有することから、光取出し効率の著しい向上が可能となる。
【0058】
なお、高屈折率を有する層は、発光型デバイスの場合、屈折率が、1.4以上である。高屈折率を有する層としては、有機ELの発光層(屈折率1.5 〜1.8 )そのもの、電極(屈折率1.8 〜2.0 )、LED における半導体デバイスのnチャネル層やpチャネル層(屈折率1.5 以上)、電極材料、蛍光灯、PDP の様に紫外光により可視光を発する蛍光体(屈折率1.5 以上)などがあげられる。特に自発光型のデバイス(但し、白熱球は除く)では、光を発する部分および発光に関与する層は、屈折率が1.5 以上である。
【0059】
発光層で発光した光が出射する光路上に、多孔体構造層(屈折率複合構造層)があれば、光取出し効率を上げるのに有効であるが、途中の界面への入射時の損失を考慮すると、多孔体構造層は可視光を発する層に近いほど、取り出せる光の量が増加する。特に有機ELまたは無機ELの場合、発光する層の構造を多孔体構造化することで、発光した光の取出し効率が高くなる。したがって、多孔体構造層(屈折率複合構造層)が電極と発光層とで挟まれた構造、言い換えれば構造体が高屈折率を有する層に挟まれた構造を採用する。
【0060】
本発明を実際の素子へ適用する方法として、様々な方式が採用され得る。例えば、構造体がガスと高分子から構成される場合であれば、以下の方式を採用することができる。
【0061】
方式1.目標とする単位構造を有する微粒子をターゲットとして、発光素子基板上に塗布した後、粒子間および粒子−基板間で粒子を接合する方式。
【0062】
方式2.目標とする単位構造を自己組織化ないし相分離により形成した後、エッチングレートの違いや溶解速度の違いを利用して、一方の構造を取り除く方式。
【0063】
方式3.重合性樹脂材料と、相溶性のない非重合性の適当な溶剤との混合溶液を乳化してミセルを形成した状態で重合性樹脂材料を反応させ、樹脂材料が重合により保持する構造体から非重合性溶剤を気化させて空孔を持つ構造体を作製する方式。
【0064】
方式4.1nm以上0.1μm以下の微小な気泡を硬化前の樹脂内に発生させ、気泡が安定に分散している状態で樹脂を硬化させる方式。
【0065】
なお、実際に素子化するに当たっては、発光層自体、発光層を保持する周辺部材あるいは屈折率複合構造層を保持する部材は、本発明で規定する屈折率複合構造体を形成する過程で用いる薬液や処理条件に対する耐性が求められる。そのため、発光層自体、発光層を保持する周辺部材、あるいは屈折率複合構造層を保持する部材の耐性が不明確あるいは不十分な場合には、以下に示すa)〜d)のような方法で形成することも可能である。
【0066】
a)発光層、発光素子、発光素子を形成する周辺部材、屈折率複合構造層を保持する部材上に、屈折率複合構造体を形成する過程で用いる薬液や処理条件に対して耐性を有する1層以上の保護層を形成した後、本発明で規定する屈折率複合構造体の形成過程を適用する。
【0067】
b)屈折率複合構造体を形成する過程で用いる薬液や処理条件に対して耐性を有する基板に、形成後の構造層が剥離可能となるように表面処理を施した後、本発明で規定する屈折率複合構造体の形成過程を適用して、その基板上に構造層を形成する。その後、形成された構造層を基板から剥離し、発光層、発光素子、発光素子を形成する周辺部材、屈折率複合構造層を保持する部材上に載せ密着させる。
【0068】
c)屈折率複合構造体を形成する過程で用いる薬液や処理条件に対して耐性を有する基板上に、本発明で規定する屈折率複合構造体の形成過程を適用して構造層を形成する。その後、形成された構造層を基板と一体で、発光層、発光素子、発光素子を形成する周辺部材、屈折率複合構造層を保持する部材上に固定する。
【0069】
d)上記のc)の方法で構造層を基板と一体で固定した後、基板を除去する。
【0070】
また、素子によっては、発光素子を形成する以前に、本発明で規定する屈折率複合構造体を形成することで、発光素子の作製を屈折率複合構造体付きの基板上で行うことも可能になる。この場合、本発明で規定する屈折率複合構造体自体に、発光素子形成の過程で用いる薬液や処理条件に対する耐性が求められる。例えば、以下のA)およびB)のような手順で形成することが可能となる。
【0071】
A)本発明で規定する屈折率複合構造体を形成した後、その上に発光素子形成プロセスで用いる薬液や処理条件に対して耐性を有する1層以上の保護層を形成し、発光素子形成プロセスを実施する。
【0072】
B)発光素子形成プロセスで用いる基板の裏面側に、本発明で規定する屈折率複合構造体を形成する。屈折率複合構造体が形成された基板の面上に、発光素子形成プロセスで用いる薬液や処理条件に対して耐性を有する1層以上の保護層を形成するか、あるいは保護基板を固定する。その後、発光素子形成プロセスを実施する。
【0073】
上記の保護層や保護基板として、それぞれ求められるプロセス耐性に応じて、各々のデバイスのプロセスに適合した部材を適用することができる。例えば、薄厚ガラスや緻密性の高いSiN 、SiONx 、SiO2といった無機膜、重合性膜や高分子膜のような有機系膜が適用可能である。
【0074】
可視光を発する部位が蛍光色素等の蛍光材料の場合、蛍光材料から可視光を発する為に使う励起エネルギ源に応じて、素子構造を変えるほうが良い場合がある。例えば、非可視の光(一般的には、紫外ないし近紫外域の光)により励起する素子(蛍光管やPDPなど)の場合では、励起光自体が効率よく蛍光材料に入射する必要がある。一般的に、蛍光灯のようにガス中での放電で発する光や、PDP のようにプラズマから発生する励起光は、真空ないし減圧雰囲気での発光であるので、屈折率1の層からの発光として捕らえることができる。屈折率1の層から屈折率1以上の層に光が入射する場合には、臨界角条件が存在しないので、ガス中で放出された光が高効率で入射可能である。一方、屈折率差が存在する2つの層間では、入射角が大きいほど、また2つの層の屈折率が高いほど光の注入効率が低下する。
【0075】
このような構成においても、本発明で規定する屈折率複合構造体は、有効に機能しうる。これは、ガス中で発せられた光が本発明で規定する屈折率複合構造体に入射する場合、屈折率複合構造体の屈折率がガス相の屈折率よりは高いが、蛍光材料に比べて十分に低いので、臨界角による全反射もなければ、大きな屈折率差による光注入効率の低下も引き起こさないで光を入射することができるからである。
【0076】
一方、蛍光体の層と本発明で規定する屈折率複合構造層との界面では、屈折率の関係が蛍光体>屈折率複合構造体であるので、臨界角による全反射は発生しない。また屈折率の差に関しても、屈折率複合構造体の屈折率が蛍光体の屈折率とガス相の屈折率との少なくとも間の値になるので、蛍光体と屈折率複合構造体との屈折率差が蛍光体とガス相との屈折率差より小さく、したがって光の注入効率が向上する。
【0077】
また、本発明の屈折率複合構造体では、内部の構造分布を制御することにより、光を注入する側の屈折率を低く、取出す側を高くすることが可能なので、構造層のガス相側の屈折率を低く、蛍光体側の屈折率を高くした構成とすることにより、ガス相で発せられた励起光が最小の損失で蛍光体に入射可能になる。
【0078】
屈折率複合構造体の内部構造を制御可能とする因子としては、本発明の構造体を形成するために用いる、先に説明した手法の場合、粒子や気泡、自発的な相分離が挙げられる。構造体を1つの均質な層として形成する以外に、途中でのプロセス条件変更(例えば、使用する粒子径、ガス圧や流速といった気泡発生条件、相分離時の温度)を変更することで、形成される構造体をある範囲内で制御することができる。
【0079】
このように屈折率複合構造体を使うことで、ガス相で励起光を発光する素子においても、蛍光体への励起光入射効率の改善が期待でき、発光素子におけるエネルギ−光変換の効率の改善に寄与できる。
【0080】
実際のデバイスにおいて適用しうる屈折率複合構造体の素子構成の例を図2から図5に示す。
【0081】
図2は、外部励起光により蛍光発光するデバイスでの構成例を示す図であり、実際のデバイスとして、蛍光管やPDP での発光構造に適用可能な構成を示している。図2に示すデバイスは、真空またはガス中で発せられた非可視の励起光が蛍光体に照射し、可視光を発する。図2(a1)および図2(a2)は反射型での構成例、図2(b1)および図2(b2)は透過型での構成例である。図中、参照符号1は基板、参照符号2は反射膜(反射板ないし反射層)、参照符号3は自発光層(なお実際のデバイス部分の構成は省略)、参照符号4は蛍光色素を含む蛍光体層、参照符号5および5’は本発明の屈折率複合構造層、参照符号6は蛍光体層(4) を励起するエネルギ(励起光)の入射方向を略記したもの(実際には様々な入射角成分を含む)、参照符号7は取り出される光(出射光)の出射方向を略記したもの(実際には様々な出射角成分を含む)である。
【0082】
図2(a1)は、素子構造を保持する為の基板(1) 上に屈折率複合構造層(5) が形成されている構成例を示す図である。図2(a2)は、素子を構成する反射膜(2) 、蛍光色素を含む蛍光体層(4) 、屈折率複合構造層(5) のいずれかが素子構造および形状を保持するのに十分な強度を有する場合にとりうる構成例を示す図である。例えば、反射膜(2) として一般に金属膜が使われるが、金属板自体を基板として用いれば、金属板が構造を保持できるので、別途、素子構造を保持する為の基板を設ける必要がない。
【0083】
また、反射型の構成では、励起光の入射時に入射効率を向上させる働きをする本発明の屈折率複合構造体が、出射時においても光の取り出し効率向上に寄与できるので、1層の適用で十分な特性向上が期待できる。なお、図示していないが、反射膜(2) と蛍光体層(4) との間に屈折率複合構造体(5) を配する構造もありうる。
【0084】
図2(b1)は、素子構造を保持する為の基板(1) 上に屈折率複合構造層(5) が形成されている構成例を示す図である。図2(b2)は、素子を構成する蛍光体層(4) 、屈折率複合構造層(5) のいずれかが素子構造および形状を保持するのに十分な強度を有する場合にとりうる構成例を示す図である。例えば、素子構造を保持することが可能な板材(例えば樹脂基板)の表面やバルク内に屈折率複合構造層(5) が存在する場合もあり、この場合には別途、素子構造を保持する為の基板を設ける必要がない。
【0085】
但し、励起光(6) の入射効率を上げる目的と、蛍光体層(4) からの出射光(7) の取出し効率を向上させる目的とを達成するために、2つの屈折率複合構造層(5) および(5’) が必要となる。
【0086】
この構成での蛍光体層(4) からの光取出し効率向上効果は、導波する光の範囲が、図2(b1)に示す蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5’) −基板(1) と、図2(b2)に示す蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5’) とで異なる。しかし、図2(a1),(a2) を参照して説明したように、屈折率複合構造層(5’) 自体が発光領域の屈折率を見かけ上、下げる効果と散乱させる効果とを見込めるので、十分に光取出し効率向上が期待できる。なお、励起光(6) 自体が屈折率複合構造体に対しダメージを与えて、性能劣化を引き起こす場合であれば、図3の(b1),(b2) の様に屈折率複合構造層(5’) を設けない構成もありうる。
【0087】
図3は、外部励起エネルギにより蛍光発光するデバイスでの構成例を示す図であり、実際のデバイスとして、電子線による蛍光体励起発光を使う素子にて適用可能な構成を示している。例えば、一般的な CRT、FED(フィールドエミッション型ディスプレイ) 、PDP の一部などに使われる構成である。図3に示すデバイスは、蛍光体を励起するエネルギ線が真空またはガス中で蛍光体に照射され、可視光を発する。図3(a1)および図3(a2)は反射型での構成例、図3(b1)および図3(b2)は透過型での構成例である。
【0088】
この構成は、励起エネルギ線を蛍光体層(4) に直接当てることが蛍光体層(4) の発光効率を上げる上で好ましい場合や、励起エネルギ線により屈折率複合構造体自体がダメージを受ける場合に適用すべき構造である。
【0089】
図3(a1)は、素子構造を保持する為の基板(1) 上に屈折率複合構造層(5) が形成されている構成例を示す図である。図3(a2)は、素子を構成する反射膜(2) 、蛍光体層(4) 、屈折率複合構造層(5) のいずれかが素子構造および形状を保持するのに十分な強度を有する場合にとりうる構成例を示す図である。例えば、反射膜(2) として一般に金属膜が使われるが、金属板自体を基板として用いれば、金属板が構造を保持できるので、別途、素子構造を保持する為の基板を設ける必要がない。
【0090】
この場合、反射膜(2) と蛍光体層(4) との間に屈折率複合構造層(5) が配された構造になるが、この構造においても蛍光体層(4) から発せられた光(7) の取り出しに対して十分な効果が期待できる。これは以下の理由によるものと考えられる。蛍光体層(4) から発せられた光のうち蛍光体層(4) から直接外部に出射する光成分以外の光は、蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5) −反射板(2) 間で導波する。蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5)
の界面近傍における屈折率複合構造体内部では、近接場での光取出し効率を向上させる効果がある。また、取り出された光は、屈折率複合構造体の構造単位が波長以下であるので、屈折率複合構造体の平均屈折率の層から出射する光と同等に使うことができる。したがって、この取り出し領域を透過する光は、一定の割合で蛍光体から出射可能な光へと変換される。
【0091】
また、屈折率複合構造体自体の内部構造を制御し、光散乱性を高めることで、さらに蛍光体層(4) から取り出せる光の量を多くすることが可能であるので、図3に示す構成でも十分な光取出し効率向上効果が期待できる。
【0092】
図3(b1)は、素子構造を保持する為の基板(1) 上に屈折率複合構造層(5) が形成されている構成例を示す図である。図3(b2)は、素子を構成する蛍光体層(4) 、屈折率複合構造層(5) のいずれかが素子構造および形状を保持するのに十分な強度を有する場合にとりうる構成例を示す図である。例えば、素子構造を保持することが可能な板材(例えば樹脂基板)の表面やバルク内に屈折率複合構造層(5) が存在する場合もあり、この場合には別途、素子構造を保持する為の基板を設ける必要がない。
【0093】
この構成での蛍光体層(4) からの光取出し効率向上効果は、導波する光の範囲が、図3(b1)に示す蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5) −保持基板1と、図3(b2)に示す蛍光体層(4) −屈折率複合構造層(5) とで異なる。しかし、図3(a1),(a2) を参照して説明したように、屈折率複合構造層(5) 自体が発光領域の屈折率を見かけ上、下げる効果と散乱させる効果とを見込めるので、十分に光取出し効率向上が期待できる。
【0094】
図4は、光として直接取り出す方式の自発光型素子と組み合わせた場合のデバイスでの構成例を示す図であり、一般的な半導体 LED, 有機EL、無機ELで使われる構成を示している。図4(a1)および(a2)は、有機EL、無機ELで多く適用される素子の構成例であり、各素子は自発光層(3) およびこれに隣接する反射層(2) を有する。現実には、自発光層(3) と本発明の屈折率複合構造層(5) との間に何らかの膜や構造が入る構造もありうるが、図としては省略している。また、自発光層(3) は、自発光層(3) を駆動させるための電極を含む一層以上からなる構造体であるが、図では構造の記載を省略している。図4(b1),(b2)
は、半導体 LEDでよく見られる構造であり、自発光層(3) を構成する基板自体が光を通さないか、あるいは自発光層(3) を構成する電極が光反射性を有する場合の素子構成例である。また、図4(a1)および(b1)の素子は屈折率複合構造層(5) が強度的に不十分な場合の構成例であり、屈折率複合構造層(5) を保護するための光透過性基板(1’) を有する。図4(a2)および(b2)の素子は、屈折率複合構造層(5) が強度的に十分な場合の構成例である。
【0095】
図5は、自発光型素子から出射する光を励起光として使い、蛍光色素等により発光波長変換した光を表示として使うデバイスでの構成例を示す図である。図5はLED 、有機EL、無機ELで使われる構成例であり、自発光層(3) 、光波長変換層(14)、屈折率複合構造層(5) が配置されている。例えば、単色発光を自発光層(3) で行い、光波長変換層(14)により自発光層(3) からの発光色を別の色に変換して多色表示するか、あるいは光波長変換層(14)により自発光層(3) からの発光色を特定の波長光表示に変換する。
【0096】
この構成では、屈折率複合構造層(5) が、自発光層(3) から光波長変換層(14)への光の注入効率と、光波長変換層(14)から出射する光の取り出し効率の2つの効率を向上させる機能を有する。光の取り出しには空気中への光出射を伴うので、光波長変換層(14)から出射する光の取り出し効率を向上させるには、屈折率複合構造層(5) が光波長変換層(14)から空気中へ出射する光路上に存在することが望ましい。
【0097】
一方、図4(a1)および(a2)に示すように、自発光層(3) の屈折率に対して光波長変換層(14)の屈折率がほぼ等しいか、あるいは大きい場合には、自発光層(3) から光波長変換層(14)への光の注入効率を向上させるために、屈折率複合構造層(5’) を挿入することは必ずしも要しない。しかし、図4(b1)および(b2)に示すように、自発光層(3) の屈折率に対して光波長変換層(14)の屈折率が小さい場合には、屈折率複合構造層(5’) を挿入した構成が、最終的な光取り出し効率向上のために望ましい。
【0098】
図5(a1)および(b1)の素子は屈折率複合構造層(5) が強度的に不十分な場合の構成例であり、屈折率複合構造層(5) を保護するための光透過性基板(1’) を有する。図5(a2)および(b2)の素子は、屈折率複合構造層(5) が強度的に十分な場合の構成例である。
【0099】
なお、素子の構成や機能から反射膜(2) が必要ない構成もありえるが、図2から図4の各(b1)および(b2)に示す構成を参照すれば、反射膜(2) がない構成を容易に予見できるので、そのような構成を示す図は省略している。
【0100】
本発明における有効性は、本発明により新規に作成されたデバイス(素子) のみに限られるのではなく、既存のデバイスに追加できることも含まれる。例えば、本発明は、光を発する発光層を有する発光素子に貼り合わせ、押し付けまたは載せて使うフィルムまたは板状材をも提供する。このフィルムまたは板状材は、発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に本発明の光機能性膜を1層以上有しており、既存の発光素子(例えば、蛍光灯、CRT 、PDP 、ELなどの光を取り出す構成の素子)全般に対して後付けで適用することができる。なお、本明細書における「フィルム」と「板状材」の相違は、フレキシビリティや厚さの相違に基づくが、両者を明確に区別することを意図するものではない。
【0101】
図6は、既存の発光素子全般に対して貼り付けるなどにより後付けで適用するための構成例を示す図である。図6(a) 〜図6(c) に示す構成例は、屈折率複合構造層(5) の一方面側に粘着材(接着材)層(9) を有する。また、図6(a) に示す構成例は、屈折率複合構造層(5) の他方面側に第2の粘着材(接着材)層(8) を有する。図6(a) 〜図6(c) に示す構成例は、ターゲットの素子に貼り付けるまで粘着材(接着材)層(9) を保護するために、離型性のあるフィルム等を粘着材(接着材)層(9) に貼り付けた状態で供給される。第2の粘着材(接着材)層(8) は、基材(11)から屈折率複合構造層(5) が剥離しないようにする機能を有する。典型的には、第2の粘着材(接着材)層(8) の接着強度が粘着材(接着材)層(9) の接着強度よりも高い。
【0102】
粘着材(接着材)層(9) および第2の粘着材(接着材)層(8) は、光硬化型や熱硬化型の接着剤(アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等) や粘着剤を含み、粘着性(接着性)を有する。使用する接着剤や粘着剤は、ターゲットの素子の表面部材、屈折率複合構造層(5)
、基材(11)等に対して、含浸や膨潤、伸縮、反りや割れといった影響を与えないものが望ましい。
【0103】
図6(b) に示す構成例は、基材(11)上に屈折率複合構造層(5) を直接形成したものであり、基材(11)と屈折率複合構造層(5) との間に第2の粘着材(接着材)層(8) が介在していない。図6(c) に示す構成例は、屈折率複合構造層(5) が強度的に十分な場合の構成例であり、基材(11)がない。
【0104】
図6(a) に示す構成例は、基材(11)上に接着剤や粘着剤を塗布して粘着材(接着材)層(8) を形成した後、後述の実施形態に示す方法により屈折率複合構造層(5) を形成し、さらに接着剤や粘着剤を塗布して粘着材(接着材)層(9) を形成することにより作成することができる。図6(b) に示す構成例は、粘着材(接着材)層(8) を形成しないことを除いて、図6(a) に示す構成例と同様の方法により作成することができる。
【0105】
図6(a) および図6(b) に示す構成例の汎用性の高い供給形態は、既存の発光素子に貼り合わせ、押し付けまたは載せて使うフィルムや板状材である。例えば、基材(11)としてポリカーボネートなどからなる光透過性フィルムを用いて、ターゲットの素子に粘着材(接着材)層(9) を介して貼り付けることができる。
【0106】
既存の素子に対して本発明のフィルムまたは板状材を適用する場合、光取出し面が平面や平板を一軸方向に曲げた形状などの単純な曲面である発光素子に限られる。既存の発光素子が平面や単純な曲面でない複雑な形状表面を有する場合には、さらに工夫が必要となる。例えば、LED のように一部の自発光素子は、光取出し効率の向上のために、あるいはある光学特性を得るために、何らかの形状加工が既に施され、成形されている。既存の自発光素子の光取し効率を改善するために、フィルムや板状材の形状のまま適応したのでは、光取り出し効率の向上が得られないだけでなく、既存の自発光素子が持っていた光機能性を損なうことがあり得る。このような場合、既存の自発光素子の形状に接合し、かつ自発光素子の機能(例えば、既存の自発光素子に含まれるレンズによる光機能性)を再現できるように、光取り出し効率を向上させる屈折率複合構造体を有する何らかの成型物を適切に成型する必要がある。但し、必ずしも既存の自発光素子の形状をスケールアップしただけでは、同じ光機能性が得られるとは限らないので、既存の自発光素子の機能に応じ適切な形状設計が必要になる場合もあり得る。
【0107】
なお、成型物は既存の自発光素子の形状に密着していても良いが、成型物と自発光素子との距離が数nm〜数十nm程度存在していても良い。この程度の距離であれば、効果的に光取り出し効率を向上させる本発明の屈折率複合構造体により、自発光素子からの光を近接場光として光を導くことができる。
【0108】
LED を例にして説明すると、正面方向にて最大の光量を取り出すために、一般的には、LED素子の光取り出し部は、レンズの外形(プロファイル)またはそれに類似した形状に施されている。このような形状を有する既存の素子に対しては、フィルムや板状材のような平面のものを変形させて取り付けるよりも、キャップ状の形状を有する成型物をLED
に被せるほうが適切である。このキャップ状の成形型に、本発明の屈折率複合構造体を含有させることにより、光を取り出し効率が向上する。本発明の成型物は、それ自体が光機能性膜である場合だけでなく、光機能性膜と他の膜との積層体である場合を含む。
【0109】
キャップ状の成形物とLED と間に粘着材(接着材)層が介在していても良いが、成形物自体の変形等によりLED との光学的接合が十分であれば、粘着材(接着材)層はなくても良い。成型物の加工精度を考慮すると、LED と成型物とを物理的に固定するための粘着材(接着材)層が存在することが好ましい。このように、後付けの用の構造体が成型物であることで、LED と組合せた状態で光機能性を再現することが可能となる。なお、粘着材(接着材)としては、通常は、光学的な減衰の小さなものが好ましい。
【0110】
本発明は、光を発する発光層を有する発光素子の形状に合わせた成型物をも提供する。この成型物は、発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に配置された本発明の光機能性膜を1層以上有する。成型物としては、例えば照明装置のグローブ、LED のブランケット、蛍光管やネオン管からの異方的な光を取り出すための器具などが挙げられる。このような成型物を用いることにより、曲面をもつ既存の様々な発光素子に対して後付で適用が可能になる。
【0111】
図6(c) は本発明の成型物の構成例を概念的に示す図である。図6(c) に示す構成例は、成型物としての屈折率複合構造層(5) と、既存の発光素子と接合する屈折率複合構造層(5) の面に形成された粘着材(接着材)層(9) 層とを有する。
【0112】
成型物としての屈折率複合構造層(5) は、自己形状を保持可能な特性と成型加工可能な特性を持つ樹脂(アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂など)を成型加工することで作製可能である。例えば、樹脂を成型加工する前に、本発明で規定される微小な屈折率複合構造体を樹脂内に形成する。屈折率複合構造体の形成方法としては、例えば、ナノオーダの気泡を発生させる方法やナノオーダの構造物を作成する方法が挙げられる。具体的には、粘性ずれ応力でナノキャビティと呼ばれるnmオーダの微小な気泡を発生させる方法やnmオーダの微小な穴からガスを発生させる方法により、ナノオーダの気泡を発生させることができる。また、nmオーダの微小な穴から屈折率の異なり、媒質に溶解しない高分子モノマや液体を分散させる方法、nmオーダの微粒子を分散させる方法により、ナノオーダの構造物を作成することができる。
【0113】
なお、一般に、屈折率の異なる樹脂あるいは液体を樹脂材料中に分散させた場合、構造体の平均屈折率が空気に対し十分小さい値にならないので、一方の相(屈折率の異なる樹脂や液体)を気相に変化させるためのプロセスが成型後に必要な場合がある。具体的には、一方の相に対しての選択的なエッチング、溶解、気化、昇華などを利用することで、一方の相(屈折率の異なる樹脂や液体)を気相に変化させることができる。
【0114】
さらに、樹脂を成型加工した後に、既存の発光素子と接合する屈折率複合構造層(5) の面に接着剤や粘着剤を塗布して粘着材(接着材)層(9) を形成することにより、図6(c)
に示す構成例を作成することができる。
【0115】
本発明の成型物は、既存の成型物に本発明のフィルムまたは板状材を貼り合わせ、押し付けまたは載せたものを包含する。また、既存の成型物の外側面または内側面に屈折率複合構造層を形成したものをも包含する。例えば、発光層を有する既存の発光素子の形状に合わせて光透過性と形状加工性のよいアクリル樹脂を加工し、さらに屈折率複合構造層等を形成することによって作成された成型物も本発明の成型物に含まれる。
【0116】
なお、図6(a) 〜図6(c) に示す構成例では屈折率複合構造層(5) が1層であるが、屈折率複合構造層(5) が2層以上あっても良い。
【0117】
図7は、図6で示す素子を既存の発光素子(例えば、蛍光灯,CRT,PDP,EL といった光を取り出す構成の素子や光源などの発光体全般)(10)に取り付けた後の素子構成の状態を概念的に示す図である。具体的には、図7(a) 〜図7(c) は図6(a) 〜図6(c) に示すに示すフィルムや板状材、成型物をそれぞれ発光素子(10)に貼り付けた状態を示している。図7(a) 〜図7(c) に示す構成は、粘着材(接着材)層(8),(9) を無視して考えると、図2から図5で図示した構成に等しいものと見なすことができ、発光素子(10)からの光(7) を効率良く取り出すことができる。
【発明の効果】
【0118】
本発明は、高屈折率層から発光する全ての素子の光取出し効率の問題を解決する。具体的には、高屈折率の相から発光する現象を用いた素子(例えば半導体LEDや有機または無機エレクトロルミネッセンス素子)、蛍光色素等などの蛍光体を用いて電子線や紫外光などの非可視のエネルギを可視光に変換し、蛍光体を保持する基板越しに可視光を取り出す素子(例えば蛍光灯、蛍光管、CRT、FED、PDP、波長変換型素子(SHG(第二高調波発生)素子)、蛍光型LED)などに本発明を適用することができる。これらの素子に本発明を適用することにより、発光部分の特性に影響を与えることなく、輝度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0120】
(実施形態1)
図8は一般的な発光素子の基本的構成を模式的に示す図である。発光素子は、発光層(102) と、発光層(102) を支える基板(101) とを有する。図中の矢印は、素子として光を取り出す方向を示しており、図1に示す発光素子は、基板(101) 側から光を取り出すボトムエミッション型構造の発光素子である。なお、実際のデバイスとしての発光素子は、発光層(102) と基板(101) 以外にも発光に寄与しない他の層を有することがあり得るが、発光に寄与しない層は、光学的には、基板(101) と同一視することができるので、図8の様に簡略化して表記できる。
【0121】
図9は、本実施形態の発光素子の基本的構成を模式的に示す図であり、図8に示す発光素子に対して屈折率複合構造層の配置を示している。図9(a)に示す発光素子は、発光層(102) と、発光層(102) を支える基板(101) と、発光層(102) および基板(101) の間に介在する屈折率複合構造層(103) とを有する。屈折率複合構造層(103) は、発光層(102)
側に、光の波長以下の大きさ(例えば1nm以上100nm以下)の屈折率複合構造体を有する。屈折率複合構造層(103) の平均屈折率は、発光層(102) の屈折率以下であり、例えば1.0 〜1.3 である。なお、屈折率複合構造層(103) の平均屈折率は、多孔体を構成する高屈折率相成分の総体積と低屈折率相の総体積の割合で決まる。近似的には〔平均屈折率nAVR 〕=Σ〔ある屈折率ni を持った相の体積割合〕×〔屈折率ni 〕で求まる。
【0122】
屈折率複合構造層(103) は、屈折率複合構造体の大きさ以上の膜厚、例えば50nm以上500nm以下の膜厚を有する。なお、エバネッセント領域での光取出しだけでなく、取り出した光を散乱させ、取り出す光のプロファイルをより平均化する場合には、屈折率複合構造層(103) の膜厚を例えば500nm以上数μm以下に設定する。
【0123】
発光層(102) の屈折率は、例えば有機ELで用いられるπ電子系共役型有機材料では1.6
〜1.8 であり、蛍光色素や半導体材料に用いられるn-チャンネル材料やp-チャンネル材料では1.5 以上であり、屈折率複合構造層(103) の平均屈折率以上である。したがって、発光層(102) に隣接する屈折率複合構造層(103) との界面に臨界角を超える角度で入射する光は、本来ならば全反射し、光を取り出すことができない。しかし、本実施形態の発光素子は、屈折率複合構造層(103) が光の波長以下の大きさ(例えば1nm以上100nm以下)の屈折率複合構造体を発光層(102) 側に有するので、本来全反射する光のエネルギをエバネッセント光として取り出すことができる。
【0124】
図9(a)に示す発光素子は、屈折率複合構造層(103) が発光層(102) に接しているので、発光層(102) からの光を最も効率よく取り出すことができる。但し、図9(b)に示すように、屈折率複合構造層(103) が基板(101) の光取り出し側面に形成されていても良い。透明な基板に使われる材料は、一般に、発光層(102) の屈折率と略等しい屈折率を有する。例えば樹脂材料の屈折率は1.3以上1.7以下であり、ガラスの屈折率は1.5以上1.8以下である。したがって、発光層(102) からの光のほとんどは、基板(101) との界面で全反射せず、基板(101) を透過する。一方、大気の屈折率は約1であるので、図9(a)に示す発光素子では、基板(101) と大気との界面において全反射する光が存在する。これに対して図9(b)に発光素子では、屈折率複合構造層(103) が基板(101) の光取り出し側面に形成されているので、屈折率複合構造層(103) と基板(101) との界面付近に生じるエバネッセント光を取り出すことができる。
【0125】
図9では、屈折率複合構造層(103) と発光層(102) との間には、屈折率複合構造層(103) の屈折率以下の層が介在しないが、屈折率複合構造層(103) の屈折率以下の低屈折率層が介在しても良い。但し、低屈折率層の膜厚は100nm以下が好ましい。
【0126】
図10(a)〜(f)は、実際の発光素子の構成を模式的に示す図である。図10(a)〜(f)に示す発光素子は、基板(101) 、発光層(102) および屈折率複合構造層(103)以外に、何らかの役割を持つ機能層(104) を少なくとも1層有する。このような機能層(104) としては、SiO2 やSiNx などの無機の保護層や絶縁層、発光層(102) に通電するための透明電極層(例えばITO (インジウム錫酸化物)やIZO (インジウム亜鉛酸化物))、発光層(102) に対して正孔や電子を移動させるためのp-チャンネル/n-チャンネル型の半導体層や有機導電体層、貼り合せにより層構造を形成するための接着層、外光を偏光させるための偏光層などが挙げられる。
【0127】
(実施形態2)
図11は一般的な蛍光管の素子断面構造を模式的に示す図である。蛍光管は、蛍光管の外形をなすガラス管(203) と、ガラス管(203) の内側面に形成された蛍光体(202) と、ガラス管(203) 内部に封入された水銀蒸気(201) とを有する。水銀蒸気(201) の雰囲気下で放電を行うと、紫外線が発生し、蛍光体(202) に照射される。これにより、蛍光体(202)
から可視光の光が発せられる。しかし、蛍光体(202) はガラス管(203) よりも一般に屈折率が高く、また蛍光体(202) から発せられた光は無指向性であるので、図11に示す一般的な蛍光管では、蛍光体(202) とガラス管(203) との界面において全反射して、ガラス管(203) に入射できない光の成分(以下、成分1ともいう。)が存在する。さらに、ガラス管(203) と空気とで屈折率のマッチングが取れていないので、ガラス管(203) に入射した光が空気中に出射されるときにも、全反射して取り出せない光の成分(以下、成分2ともいう。)が存在する。
【0128】
図12は本実施形態の蛍光管の素子断面構造を模式的に示す図である。図12(a)に示す蛍光管は、蛍光管の外形をなすガラス管(203) と蛍光体(202) との間に介在する屈折率複合構造層(204) を有するので、成分1の光をガラス管(203) に導くことができる。以下、具体的に説明する。
【0129】
蛍光体(202) から発せられた光が蛍光体(202) に比べて屈折率が低い(屈折率が1に近い)屈折率複合構造層(204) に入射するとき、スネルの法則に従って、全反射される成分1の光が存在する。しかし、全反射される光であっても、蛍光体(202) と屈折率複合構造層(204) との界面から入射光の波長以下の距離内の領域(一般に近接場領域あるいはエバネッセント領域と呼ばれる)において、元の光のエネルギの数割程度のエネルギを有する(詳細は図1を参照)。屈折率複合構造層(204) は、構造単位が波長以下のオーダの屈折率複合構造体を有する。屈折率複合構造体は屈折率の異なる相同士の界面を有する。蛍光体(202) と屈折率複合構造層(204) との界面から屈折率複合構造層(204) に入り込んだ光(エバネッセント光)は、屈折率複合構造体の界面を透過するときに屈折するので、この界面に入射したときの方位角と異なる方位角の方向へ導かれ得る。
【0130】
その結果、入射したときの方位角と異なる方位角の方向へ導かれた光は、蛍光体(202)
と屈折率複合構造層(204) との界面から蛍光体(202) 側へは戻らず、屈折率複合構造層(204) を透過することが可能になる。この効果により、本来ならば全反射して蛍光体(202)
から出ることができなかった成分1の光は、蛍光体(202) と屈折率複合構造層(204) との界面を透過する光と共に、屈折率複合構造層(204) に入射することが可能になる。
【0131】
また、屈折率複合構造層(204) は、屈折率の異なる相の界面を層(204) 内に多数有するので、それ自体が光散乱性を示すことがある。屈折率複合構造層(204) で散乱された光は、本来、蛍光体(202) で発光された光である。しかし、屈折率複合構造層(204) は平均屈折率が1に近いので、散乱された光は、ガラス管(203) に入射する際には、屈折率複合構造層(204) から発した光と同一視することができる。屈折率複合構造層(204) の平均屈折率はガラス管(203) の屈折率よりも低く設定されているので、屈折率複合構造層(204) から発した光が界面で全反射する条件は存在しない。その結果、蛍光体(202) で発光された殆ど全ての光をガラス管(203) に入射させることが可能になる。
【0132】
さらに、低屈折率の層(204) から高屈折率の層(203) に光が入射する場合には臨界角が存在しないので、低屈折率の層(204) から入射するすべての入射角成分の光が高屈折率の層(203) に入射可能である。
【0133】
一方、低屈折率の層(204) から高屈折率の層(203) を透過し、屈折率1の空気層へ出射する場合、高屈折率の層(203) から空気層へと出射するときの臨界角は、低屈折率の層(204) から空気層へ直接出射するときの臨界角と同じになる。そのため、低屈折率の層(204) から高屈折率の層(203) に入射した光は、高屈折率の層(203) から空気層に出射する際に、低屈折率の層(204) から空気層に出射する際に臨界角を超えない入射角成分の光しか出射できないので、高屈折率の層(203) があっても、空気層へ出射できる入射角成分の光は、低屈折率の層(204) から空気層に出射できる(取り出される)成分の光と同じになる。
【0134】
なお、厳密には、臨界角以下の光であっても、屈折率の異なる2層間では、すべての入射角成分の光に反射する成分の光が存在するので、100 %の光が入射できるわけではない。しかし、2つの層間で入射する光の注入効率は、2つの層の屈折率差で決まる界面での注入率よりも、隣接する層にある入射角の光が入射できるかあるいは全反射するかの条件としての臨界角により大きく支配される。
【0135】
したがって、高屈折率の層(203) が存在することで減衰する成分は、低屈折率の層(204) が無い場合に比べると、低屈折率の層(204) から高屈折率の層(203) に入射する界面での表面反射成分と、高屈折率の層(203) から空気層に出射する際の表面反射成分と、高屈折率の層(203) を透過する際に減衰する成分との3つの成分に低減される。
【0136】
本発明における屈折率複合構造層の平均屈折率は、典型的には1.4以下であり、さらに理想的な低屈折率化ができれば、1.1 以下にすることができる。すなわち、屈折率が1.5
以上である従来の発光層よりも低い屈折率の層(204) からの光取出しが可能になる。したがって、素子の内部で臨界角を超えて全反射し取り出せない光が取り出せるようになるので、従来の素子構造に比べ極めて大きな光取出しが可能になる。
【0137】
図12(b)に示す蛍光管には、ガラス管(203) と蛍光体(202) との間に屈折率複合構造層(204) がないので、成分1の光をガラス管(203) に導くことができない。しかし、図12(b)に示す蛍光管は、ガラス管(203) の外側面に形成された屈折率複合構造層(204) を有するので、成分2の光をガラス管(203) から出射させることができる。以下、具体的に説明する。
【0138】
屈折率複合構造層(204) の平均屈折率がガラス管(203) の屈折率よりも低いので、ガラス管(203) から屈折率複合構造層(204) に入射する光の一部は、ガラス管(203) と屈折率複合構造層(204) との界面で全反射する。しかし、屈折率複合構造層(204) は、ガラス管−屈折率複合構造層界面近傍であって、全反射成分の光がエネルギ的に入射する領域(エバネッセント領域)内に、構造単位が波長以下のオーダの屈折率複合構造体を有する。屈折率複合構造体は屈折率の異なる相同士の界面を有する。全反射成分の光は、この界面に入射した方位角と異なる方位角の方向へ導かれるので、全反射する光が減少し、屈折率複合構造層(204) に入射できる光が増加する。したがって、屈折率複合構造層(204) から空気に出射する光が屈折率複合構造層(204) で発生した光と同一視することができる。
【0139】
また、屈折率複合構造層(204) の内部に存在する多数の界面によって、屈折率複合構造層(204) に入射した光は複雑に反射/屈折されるので、この層(204) から出射するとき、散乱光として出射される。さらに屈折率複合構造層(204) の平均屈折率が空気の屈折率と近似しているので、屈折率複合構造層(204) と空気との界面(すなわち屈折率複合構造層(204) の外側面)で全反射する光の成分が少ない。その結果、成分2の光の損失が減少され、取り出される光の量が増加する。
【0140】
本実施形態では本発明を蛍光管に適用した場合について説明したが、蛍光色素を励起発光させるエネルギが紫外線ではなく電子線であるCRTやFEDにも本発明を適用することができる。CRTやFEDでも、原理的に蛍光色素から可視光が発せられるので、本実施形態の蛍光管と同様に、光取り出しの向上効果が得られる。
【0141】
(実施形態3)
図13は一般的なLEDの素子断面構造を模式的に示す図である。LEDは、電極としてのアノード(305) およびカソード(304) と、アノード(305) 側に電子を輸送するn-チャンネル層(301) と、カソード(304) 側に正孔を輸送するp-チャンネル層(303) と、両チャンネル層(301)(303)の間に介在する発光層(302) と、素子全体を封止するモールド樹脂層(306) とを有する。なお、実際のLEDにおいては、n-チャンネル層とp-チャンネル層の接合界面が発光層として機能し、別組成の発光層が存在しない構造もあり得る。
【0142】
LEDにおいて、半導体の発光層(302) から発せられた光は、その光取り出し方向にn-ないしp-チャンネル層(301)(303)や電極層(304) が存在するので、これらの層を導波して、モールド樹脂層(306) に到達する。このとき、LEDを形成する各層は、いずれも素子の基本素材である半導体化合物(例えば Si,Ge,Ga )に微量の不純物を注入して形成されているので、個々の層間で屈折率の著しい差が生じない。具体的には、一般的な材料から形成された層の屈折率は1.8以上である。したがって、これらの層間の透過において光の大きな損失が生じることはない。
【0143】
しかし、発光する半導体層に接する樹脂層(306) は、一般的にエポキシやアクリルなどの屈折率が1.5前後の樹脂から形成されるので、半導体層に対して屈折率で0. 3以上の差が存在する。したがって、図13に示す一般的なLEDにおいては、屈折率1.8以上(典型的には屈折率約2)の層から屈折率約1. 5の層へ出射する光のうち界面で全反射して入射できない光の成分(以下、成分3ともいう。)が存在する。言い換えれば、図13に示す一般的なLEDでは、半導体層とモールド樹脂層との界面で光損失が発生することを回避できない。
【0144】
また、モールド樹脂層(306) の屈折率が約1. 5であるのに対して、空気の屈折率が約1であるので、屈折率1.5の層から屈折率約1の層へ出射する光のうち界面で全反射して入射できない光の成分(以下、成分4ともいう。)が存在する。言い換えれば、図13に示す一般的なLEDでは、最終的に光を取り出すときに、モールド樹脂層と空気との界面で光損失が発生することを回避できない。
【0145】
従来、LEDの光取り出し効率向上のために様々な提案がなされ、実際のデバイスに適応されてきた。最も一般的には、素子の出射側をレンズ形状にした構造が採用され、商品化されている。しかし、基本的には半導体デバイスから面状に発光されるので、レンズにより取り出し効率向上を図ったとしても、その取り出し効率向上には限界がある。
【0146】
図14は、本実施形態のLEDの素子断面構造を模式的に示す図である。図14(a)に示すLEDでは屈折率複合構造層(307) が出射面に形成され、図14(b)に示すLEDでは屈折率複合構造層(307) が素子全体を覆うとともに、モールド樹脂層(306) で封止されている。また図14(c)に示すように、モールド樹脂(306) の代わりに屈折率複合構造層(307) が素子全体を封止しても良い。さらに、光取り出し効率の点では図14(a)〜図14(c)のLEDに及ばないが、図14(d)に示すように出射光の光路途上に屈折率複合構造層(307) を形成してもよく、図14(e)に示すように屈折率複合構造層(307) がモールド樹脂層(306) を覆って形成されていても良い。さらに、図14(f)に示すように屈折率複合構造層(307) が成型物としてのブランケットであり、ブランケットがモールド樹脂層(306) を覆っていても良い。
【0147】
図14(a)〜図14(c)のLEDは、素子全体に対して屈折率複合構造層(307) の占める割合が異なるものの、基本的な構成として、発光する半導体層に屈折率複合構造層(307) が接する点で共通する。図14(a)および図14(b)のLEDでは、屈折率複合構造層(307) を透過した光がモールド樹脂層(306) 内を透過した後に空気中に出射されるので、屈折率複合構造層(307) とモールド樹脂層(306) との界面およびモールド樹脂層(306) と空気との界面において光の透過効率の差が発生し得る。しかし、図14(a)および図14(b)のLEDによれば、成分3の光を取り出すことができ、光取り出し効率の向上の効果が得られる。また図14(a)および図14(b)のLEDは、屈折率複合構造層(307) の機械的な強度を補うための構成として有効と考えられる。
【0148】
一方、図14(c)のLEDは、平均屈折率が空気に近似している屈折率複合構造層(307) が空気に接しているので、成分3だけでなく成分4の光をも取り出すことができ、光取り出し効率のさらなる向上の効果が得られる。
【0149】
実際のデバイス構成として、図14(d)〜図14(f)に示すように、屈折率複合構造層(307) と半導体層との間にモールド樹脂層(306) が介在する構成も考えられる。図13に示すLEDでは、屈折率が約1. 5のモールド樹脂層(306) から屈折率が約1の空気層へ出射するとき、臨界角を超える為に入射できない成分4の光が存在する。
【0150】
図14(d)のLEDでは、半導体層からの発光がモールド樹脂層(306) を介して平均屈折率が空気に近似している屈折率複合構造層(307) に入射する。屈折率複合構造層(307) は屈折率複合構造体を有するので、屈折率が約1. 5のモールド樹脂層(306) で発せられた光は、臨界角を超える為に本来ならば入射できない成分4の光も屈折率複合構造層(307) に入射可能になる。また、屈折率複合構造体の層内部に入射した光は、複数の界面を透過する過程で光散乱に近い特性の光へと変換される。言い換えれば、屈折率が約1.5 の層(306) で発せられた光であっても、見かけ上、屈折率複合構造層(307) から発せられたのと同じに変換できる。したがって、図14(d)のLEDによれば、半導体層からの発光がモールド樹脂層(306) に入射する際の界面での損失と、モールド樹脂層(306) から空気に出射するときの損失と、モールド樹脂層(306) を透過する際の減衰との3つの影響を回避することはできないが、モールド樹脂層(306) と屈折率複合構造層(307) との界面で臨界角を超える成分4による損失を減少させることができる。なお、実際の素子において、光取出しを下げる要因は界面での損失よりも臨界角を超える成分4による損失が大きいので、図14(d)に示すように、屈折率複合構造層(307) が空気層に接していなくても、本発明の効果を奏することができる。
【0151】
図14(e)に示すLEDでは、平均屈折率が空気に近似している屈折率複合構造層(307) が空気層に接しているので、図14(d)のLEDによる効果に加えて、空気層へ出射するときの光取り出し効率が向上するという利点がある。
【0152】
図14(f)に示すLEDでは、屈折率複合構造層(307) としての成型物(ブランケット)を後付けにて適用することができるので、図14(e)のLEDによる効果に加えて、図13に示す既存のLEDに対しても光取り出し効率を向上させるという利点がある。
【0153】
図14(d)〜図14(f)のLEDによる効果は成分4の光取出しに限定されるので、光取出し効率の改善の点では、図14(a)〜図14(c)のLEDと比べると、必ずしも優れていない。
【0154】
しかしながら、素子からの光取出し時の損失について検討すると、発光層からモールド樹脂層(306) へ入射する際の損失と、モールド樹脂層(306) から空気層へ入射する際の損失とが略同じである。具体的には、屈折率約2の層から屈折率約1. 5の層への光出射時の損失と、屈折率約1. 5の層から屈折率約1への光出射時の損失は、いずれも発光光の約30%である。言い換えれば、成分4の光を取り出すことによる効果は、成分3の光を取り出すことによる効果と略同等である。したがって、成分4の光取出しが可能となるだけでも、他の光取出し効率の改善のための方式に比べて十分な効果が得られるので、図14(d)〜図14(f)のLEDは有効である。
【0155】
(実施形態4)
図15(a)および図15(b)は、本実施形態の有機EL素子の断面構造を模式的に示す図である。図15(a)の有機EL素子は、素子を保持するための基板(401) と、基板(401) 上に形成され、絵素を駆動するための陽極(405) および陰極(409) と、陽極(405) 上に形成された正孔輸送層(406) と、陰極(409) および正孔輸送層(406) に挟まれた発光層(407) とを有する。以下、陽極(405) 、正孔輸送層(406) 、発光層(407) および陰極(409) を総括的に「発光素子部」とも呼ぶ。なお、デバイス構成として、正孔輸送層(406) と発光層(407) との間に正孔注入層などの他の層が介在することもある。
【0156】
図15(a)の有機EL素子は、発光素子部を封止するためのシール材(408) およびシール基板(410) を有する。一般に、シール材(408) およびシール基板(410) により封止された空間内には不活性ガスや油などの不活性材が封入される。
【0157】
図15(a)の有機EL素子は基板側から光を取り出すボトムエミッション型であり、陽極(405) はITOなどの透明な電極材料を用いて形成され、陰極(409) はアルミニウムなどの反射性を有する電極材料を用いて形成される。図15(a)の有機EL素子は基板(401) の外側面に屈折率複合構造層(403) を有する。基板(401) の屈折率は屈折率複合構造層(403) の平均屈折率よりも高いので、基板(401) と屈折率複合構造層(403) との界面に全反射する条件で入射する光が存在する。しかし、屈折率複合構造層(403) は、光の波長以下の大きさ(例えば1nm以上100nm以下)の屈折率複合構造体を有するので、本来全反射する光のエネルギをエバネッセント光として取り出すことができる。また屈折率複合構造層(403) の平均屈折率は空気の屈折率と近似しているので、屈折率複合構造層(403) と空気との界面(すなわち屈折率複合構造層(403) の外側面)で全反射する光の成分が少ない。したがって、光の損失が減少され、取り出される光の量が増加する。
【0158】
なお、陽極(405) と基板(401) との間に別の屈折率複合構造層が介在していても良い。これにより、陽極(405) と基板(401) との屈折率の差によって全反射する光の成分を減少させ、取り出される光の量をさらに増加させることができる。
【0159】
図15(b)の有機EL素子は基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型であり、陽極(415) がアルミニウムなどの反射性を有する電極材料を用いて形成され、陰極(419) がITOなどの透明な電極材料を用いて形成される点で、図15(a)の有機EL素子と異なる。また図15(b)の有機EL素子は、封止された空間内で発光素子部を覆う屈折率複合構造層(403) を有する点でも、図15(a)の有機EL素子と異なる。
【0160】
図15(a)の有機EL素子では、発光素子部と不活性材との界面において、屈折率の相違により全反射する光の成分が存在する。しかし、図15(b)の有機EL素子は、封止された空間内で発光素子部を覆う屈折率複合構造層(403) を有するので、発光素子部からの発光を効率良く不活性材へ導くことができる。
【0161】
なお、シール材(408) およびシール基板(410) により封止された空間が屈折率複合構造層(403) で満たされていても良い。またシール基板(410) の外側面に別の屈折率複合構造層が形成されていても良い。これにより、シール基板(410) と空気との界面で全反射する光の成分を減少させることができる。
【0162】
本実施形態の有機EL素子は、マトリクス状に配置された複数の絵素を有するパッシブマトリクス方式のディスプレイである。絵素は、ストライプ状に設けられた陽極(405) と、陽極(405) に交差して設けられた陰極(409) とが互いに交差することにより規定される。但し、本発明の素子はアクティブマトリクス方式にも適用することができ、陽極(405)または陰極(409) がスイッチ素子に接続され駆動されても良い。スイッチ素子としては、TFT(薄膜トランジスタ)などの3端子素子、MIM(Metal-Insulator-Metal )などの2端子素子が挙げられる。
【0163】
本実施形態では有機EL素子について説明したが、本発明は無機EL素子にも適用することができる。有機EL素子と無機EL素子とでは、発光素子部の構成や細かい原理が異なるが、光取出しのための構成に大差がないので、本発明を無機EL素子に適用することにより、本実施形態の有機EL素子と同等の効果が得られる。
【0164】
(実施形態5)
図16(a) 、(b) および(c) は、本実施形態のPDP素子の断面構造を模式的に示す図である。図16(a) 、(b) および(c) のPDP素子は、素子を保持するための基板(501)
と、基板(501) に対向して配置された対向基板(506) と、両基板(501)(506)間の空間を複数のセルに分割する隔壁(一般的にはリブと呼ばれている)(504) と、セル内の空間に放電を発生させるための一対の電極(502) と、放電によりプラズマを発生させるための不活性ガスが注入された空間(503) と、赤,緑,青の3色の蛍光材料層(505R)(505G)(505B)とを有する。
【0165】
図16(a) および(b) のPDP素子では、プラズマ放電により発生した紫外線が各色の蛍光材料層(505R)(505G)(505B)を照射することによって各色の可視光が発生し、可視光が対向基板(506) を透過することにより表示が行われる。図16(c)のPDP素子では、プラズマ放電により発生した紫外線は、屈折率複合構造層(507) を透過して各色の蛍光材料層(505R)(505G)(505B)を照射する。紫外線光が蛍光材料に照射された結果、各色の可視光が発生し、可視光が対向基板(506) を透過することにより表示が行われる。なお、基板(501)(506)の材料は、典型的にはガラスである。
【0166】
図16(a)のPDP素子は、対向基板(506) の外側面に形成された屈折率複合構造層(507) を有する。対向基板(506) の屈折率は屈折率複合構造層(507) の平均屈折率よりも高いので、対向基板(506) と屈折率複合構造層(507) との界面に全反射する条件で入射する光が存在する。しかし、屈折率複合構造層(507) は、光の波長以下の大きさ(例えば1nm以上100nm以下)の屈折率複合構造体を有するので、本来全反射する光のエネルギをエバネッセント光として取り出すことができる。また屈折率複合構造層(507) の平均屈折率は空気の屈折率と近似しているので、屈折率複合構造層(507) と空気との界面(すなわち屈折率複合構造層(507) の外側面)で全反射する光の成分が少ない。したがって、光の損失が解消され、取り出される光の量が増加する。
【0167】
図16(b)のPDP素子は、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)と対向基板(506) との間に形成された屈折率複合構造層(507) を有する。一般に用いられる蛍光材料層(505R)(505G)(505B)の屈折率は、通常の対向基板(506) に使われるガラスの屈折率よりも高いので、図16(a)のPDP素子では、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)と対向基板(506) との界面において、全反射する光の成分が存在する。しかし、図16(b)のPDP素子では、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)と対向基板(506) との間に屈折率複合構造層(507) を有するので、本発明によるエバネッセント領域での光取出しが可能となり、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)で発生した光が効率良く対向基板(506) へ導かれる。
【0168】
また、屈折率複合構造層(507) の平均屈折率は、対向基板(506) の屈折率よりも低いので、屈折率複合構造層(507) から対向基板(506) に入射する光の内、屈折率複合構造層(507) から対向基板(506) を介して空気に出射できる入射角成分が取り出せるようになる。したがって、高屈折率の層からの出射時に生じる光の損失が減少され、取り出される光の量が増加する。なお、図16(a)のPDP素子のように、対向基板(506) の外側面にさらに他の屈折率複合層が形成されていることが好ましい。
【0169】
図16(c)のPDP素子は、基板(501) 上に蛍光材料層(505R)(505G)(505B)、さらにその表面に屈折率複合構造層(507) を有する。この素子構造では、一対の電極(502) 間に発生したプラズマから発せられる紫外線が屈折率複合構造層(507) を透過して蛍光材料層(505R)(505G)(505B)に到達する過程で透過損失が存在する。しかし、屈折率複合構造層(507) の屈折率が、真空に近い空間(503) の屈折率1と蛍光材料層(505R)(505G)(505B)の屈折率との間の値であるので、屈折率複合構造層(507) に入射することによる損失を低減する効果がある。さらに屈折率複合構造層(507) 自体の膜厚が薄いので、透過損失は無視することが可能である。したがって、プラズマの空間(503) から蛍光材料層(505R)(505G)(505B)へ到達するUV光に対して光の損失は小さいと考えられる。
【0170】
一方、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)に到達したUV光により蛍光発光した光のうち、真空に近い空間(503) に直接出射できる光の成分の出射効率は、蛍光材料自体の屈折率が1より高い(一般的な蛍光材料であれば1.5 以上)ので、屈折率1.5 から屈折率1の媒体に出射する効率に等しい。したがって、単純計算で、蛍光発光した光のうち約70%の光は取り出せていない。しかし、蛍光材料層(505R)(505G)(505B)に接して屈折率複合構造層(507) が存在することにより、蛍光材料層で発光された光はエバネッセント領域で取り出され、見かけ上、屈折率複合構造層(507) の平均屈折率の層から発光しているのと等価の状態が作り出される。この状態から真空層(503) へ出射できる光は、屈折率複合構造層(507) の平均屈折率から屈折率1の層に出射するのと同じ効率になる。
【0171】
また、真空層(503) に出射した光は、表示光として対向基板(506) やその表面に形成されている電極(502) を透過する。この光透過時には、各層に入射する際の表面での反射損失と透過減衰を受けるが、最大の光損失を生む、臨界角を超える入射条件が存在しないので、取り出される光の量が増加する。なお、図16(a)のPDP素子のように、対向基板(506) の外側面にさらに他の屈折率複合層が形成されていることが好ましい。
【0172】
次に、本発明の発光素子をさらに具体的に説明するために、図面を参照しながら、デバイス構造についての実施例および比較例を示す。図17は、実施例1〜8および比較例1のデバイス構造を模式的に示す図であり、図17(a)は実施例1〜4のデバイス構造、図17(b)は実施例5〜8のデバイス構造、図17(c)は比較例1のデバイス構造をそれぞれ示している。
【0173】
(実施例1)
53nmの粒子を含む微粒子材料(スチレン樹脂(コア)/アクリル樹脂(クラッド)型樹脂、日本ペイント社製、NC-56 )2gをイソプロピルアルコール(IPA)20ml中に分散した。その後、0.2μmの水系粒子除去用ミリポアフィルタにて200nm以上の粒子を除去した。
【0174】
なお、微粒子が溶液中に分散されていることは、分散液が入った容器にコリメートさせた光(例えばレーザ光)を入射させると、レーザの光路にてチンダル現象がおきることで確認できる。
【0175】
ろ過後の分散液をエアブラシ用溶液タンクに移し、エアブラシにてガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) に向けて噴霧した。噴霧に際しては、ガラス基板(601) をホットプレート上に置き、基板温度を150 ℃以上にし、霧状の分散液がガラス基板(601) に降りかかったときに、粒子分散媒としてのIPAが気化する条件下で行った。分散液の噴霧は、エアブラシから出た噴霧液滴がIPAを含んだ状態でガラス基板(601) に当たらないように十分な空間を取って、約50秒間行った。これにより、屈折率複合構造層(603) としての構造体膜がガラス基板(601) 上に形成された。
【0176】
ガラス基板(601) を室温まで冷却した後、基板(601) の屈折率複合構造層(603) 側表面に金を50nm真空蒸着して、光透過可能な緻密な膜としての保護膜(605) を形成した。なお、保護膜(605) は電極としても機能する。
【0177】
有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を100 ℃ホットプレート上で約30分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0178】
ガラス基板(601) 上の発光層(602) にUVライト(浜松ホトニクス社製,Photocure200)からUV光を照射し、UV光励起により発生する蛍光の輝度をガラス基板(601) 側から測定した。図18は、取り出し光量を測定するのに用いた構成を示す図である。UVライト(110) は、メタルハライドランプ光源からファイバ(111) を介してUV光を導き出す。UV光はレンズ(112) を通して基板(601) 上の発光層(602) に達する。ファイバ(111) 、レンズ(112) およびサンプルの位置関係を調整して、照射面の直径を約1cmに設定した。すべてのサンプル(実施例1〜9と比較例1,2)について、光源からサンプルまでの距離を固定して、光源の電流値が一定になるように調整した。UV光の照射により発光層(602) から蛍光が発生する。光線軸上に配した輝度計(113) を用いて、基板面の法線(正面)方向(UV照射光軸上)および法線から45°傾斜した方向(45°方向)の2方向での蛍光の輝度を測定した。なお、輝度計(113) としてミノルタ製輝度計(LS-100)を用い、クローズアップレンズNo.110を使用し、測定距離を220mm に設定した。測定結果を表1にまとめた。
【0179】
また、アッベ屈折計(NAR-2T・LO、株式会社アタゴ製)を用いて、作製された屈折率複合構造層(603) の屈折率を測定した。測定サンプルとして電極(605) を形成する前のものを用いた。なお、測定に先立って、膜厚が200nm 以上あることを確認した。具体的には、膜の一部をナイフで削り、段差計P-11(KLA-Tencor社製)を用いて、下地のガラス面から構造膜トップ部の高さを読み取って確認した。屈折率複合構造層(603) をマッチングオイルなしで屈折計のプリズム面にコンタクトさせ、上方から50g の錘を置き、プリズム面に密着させて測定した。その結果を「構造体屈折率」として表2に記載する。
【0180】
さらに、微粒子材料自体の屈折率を確認した。具体的には、50mlのトルエンに対し1gの樹脂微粒子を分散させ、開放容器内にて15時間室温で攪拌して溶解させた。攪拌を停止し、5分程度経過した後、上澄み液をガラス製スポイトにて採取した。50℃に加熱したガラス基板上に数滴の上澄み液を直接滴下し、トルエンを加熱除去して膜を形成した。形成された膜は、構造体膜と同じ方法で屈折率を測定した。その結果を「構造体膜素材屈折率」として表2に併記する。
【0181】
(実施例2)
微粒子材料を噴霧して構造体膜を形成する工程以外は実施例1と同様の工程を経て、有機EL素子を製造した。図19は本実施例による塗布方法の説明図である。図19を参照しなから、微粒子材料を噴霧して構造体膜を形成する工程について説明する。
【0182】
微粒子分散液はエアブラシ(701) より噴霧される。図19に示すように、屈折率複合構造体を形成するための基板(601) は、屈折率複合構造体を形成する面を上にして、ホットプレート(702) 上に置く。エアブラシ(701) より飛び出した液滴が直接かかるエリア(705) を避けて、エアブラシ(701) より噴霧された霧状の液がかかるエリア(706)内に基板(601) を置く。噴霧した液中には1μm以下の微粒子が含まれるので、粒子拡散の観点から、衝立(704) を設けて霧状の液の飛散を防ぐ。また、衝立(704) に噴霧することにより生じた気流を利用することによって、エアブラシ(701) から出た微粒子を含んだ薬液の液滴を霧状に分散させる。霧状の液を乱流中で舞わせた後に沈降させることで、微粒子の分散媒として用いた溶剤(IPA )の気化が進み。したがって、屈折率複合構造体を形成する基板(601) の面上には、液中に分散した粒子が主として沈降、堆積することが可能となる。また、基板(601) がホットプレート(702) 上で加熱されているので、少量の分散媒が基板(601) 上に付着しても、短時間で気化可能になる。
【0183】
さらに具体的に述べれば、ろ過後の分散液をエアブラシ用溶液タンクに移し、エアブラシ(701) にてガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) に向けて噴霧した。噴霧に際しては、ガラス基板(601) をホットプレート(702) 上に置き、基板温度を150 ℃以上にした。但し、実施例1の場合と異なり、図19に示すように分散媒を含んだ液が基板全面に直接当たらず、霧状の噴霧液が塗布されるようにエアブラシ(701) の噴霧方向を調節し、1回の噴霧時間を0.5秒程度(エアブラシ(701) のノズルの1クリック分)とした。霧状の液が消え、ガラス基板(601) が乾燥するまで待った後に再び噴霧するという工程を100回繰り返した。
【0184】
実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。また、実施例1と同様にして、構造体屈折率および構造体膜素材屈折率を測定し、測定結果を表2にまとめた。
【0185】
(実施例3)
ポリスチレン(分子量65000 )とポリメタクリレート(分子量13200 )とのブロックコポリマをリビングアニオン重合法にて合成した。分子量分布値(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.04のブロックコポリマを使用して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの5重量%溶液を調製した。この溶液をガラス基板(601) 上にスピンコートした(初期回転500rpmにて5秒間、主回転2000rpm にて20秒間)。
【0186】
窒素置換可能なオーブン内にて、内部を窒素置換後、ガラス基板(601) を210 ℃にて4時間、引き続き135 ℃で40時間保存した(熱アニールによる自己組織化)。熱処理したガラス基板を室温まで放冷した後、CF4 ガスを用いたRIE (リアクティブイオンエッチング)装置により、ガス圧0.1Torr 、ガス供給量30sccm、出力100 Wにて20秒間エッチングを行って、屈折率複合構造層(603) を形成した。
【0187】
RIE でのエッチング後、基板(601) の屈折率複合構造層(603) 側表面に金を50nm真空蒸着して、光透過性の保護膜(605) を形成した。
【0188】
有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を100 ℃ホットプレート上で約30分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0189】
実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。また、実施例1と同様にして、構造体屈折率および構造体膜素材屈折率を測定し、測定結果を表2にまとめた。なお、構造体膜素材屈折率の測定は、次の手順により行った。本実施例で作製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの5重量%溶液の数滴を50℃に加熱したガラス基板上に直接滴下し、溶剤を加熱除去して膜を形成した。形成された膜は、構造体膜と同じ方法で屈折率を測定した。
【0190】
(実施例4)
多孔質ガラスにシンフレックスチューブを繋いだナノバブル発生ヘッド(SP Finger spray として市販されているSPG構造体)を2口フラスコ内に入れ、光硬化型樹脂(フッ素置換されたモノマを含むラジカル重合型アクリル系樹脂)を多孔質ガラスヘッドがつかるまで注いだ。メカニカルスターラで攪拌しながら、ナノバブル発生ヘッドを経て窒素ガス(3Kgf/cm2 )を30分間流し続けた。その後、混濁した光硬化型樹脂をシリンジにて吸い上げ、これをガラス基板(601) 上にスピンコートした(初期回転250rpmにて5秒間、主回転800rpmにて20秒間)。スピンコート終了後、高圧水銀灯(SPOTCURE SP-III 、ウシオ電機製)にて5秒間UV照射し、樹脂膜を硬化させて、屈折率複合構造層(603) を形成した。ガラス基板(601) 上の屈折率複合構造層(603) に対し、基板(601) 面の法線方向にArレーザ光を透過させた。3m離れた場所でのレーザスポットを計測すると、ビーム中心に対し30cmのビーム広がりが検出された。
【0191】
基板(601) の屈折率複合構造層(603) 側表面に金を50nm真空蒸着して、光透過性の保護膜(605) を形成した。有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を100 ℃ホットプレート上で約30分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0192】
実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。また、実施例1と同様にして、構造体屈折率および構造体膜素材屈折率を測定し、測定結果を表2にまとめた。なお、構造体膜素材屈折率の測定は、次の手順により行った。本実施例で作製した光硬化型樹脂(フッ素置換されたモノマを含むラジカル重合型アクリル系樹脂)の数滴をガラス基板上に直接滴下した。別のスライドガラス基板に挟んだ状態にて高圧水銀灯(SPOTCURE SP-III 、ウシオ電機製)にて5秒間UV照射し、樹脂膜を硬化させた。スライドガラス基板を引き剥がし、ガラス基板に密着して残ったフィルムの屈折率を構造膜と同じ手順にて測定した。
【0193】
(実施例5)
ガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) 上に有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を200 ℃ホットプレート上で約30分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0194】
53nmの粒子を含む微粒子材料(実施例1と同じ材料)2gをIPA20ml中に分散した。その後、0.2μmの水系粒子除去用ミリポアフィルタにて200nm以上の粒子を除去した。
【0195】
ろ過後の分散液をエアブラシ用溶液タンクに移し、エアブラシにてガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) の発光層(602) に対して反対側に向けて噴霧した。噴霧に際しては、発光層(602) がホットプレートに直接接しないように0. 1mmのアルミ板でガラス基板(601) の4角を支えてホットプレート上に置き、基板温度を150
℃以上にし、霧状の分散液がガラス基板(601) に降りかかったときに、粒子分散媒としてのIPAが気化する条件下で行った。分散液の噴霧は、エアブラシから出た噴霧液滴がIPAを含んだ状態でガラス基板(601) に当たらないように十分な空間を取って、約50秒間行った。これより、屈折率複合構造層(603) としての構造体膜がガラス基板(601) 上に形成された。
【0196】
実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0197】
(実施例6)
微粒子材料を噴霧して構造体膜を形成する工程以外は実施例5と同様の工程を経て、有機EL素子を製造した。微粒子材料を噴霧して構造体膜を形成する工程は、次の通りである。ろ過後の分散液をエアブラシ用溶液タンクに移し、エアブラシ(701) にてガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) に向けて噴霧した。噴霧に際しては、ガラス基板(601) をホットプレート上に置き、基板温度を150 ℃以上にした。但し、実施例5の場合と異なり、図19に示すように分散媒を含んだ液が基板全面に直接当たらず、霧状の噴霧液が塗布されるようにエアブラシ(701) の噴霧方向を調節し、1回の噴霧時間を0.5秒程度(エアブラシ(701) のノズルの1クリック分)とした。霧状の液が消え、ガラス基板(601) が乾燥するまで待った後に再び噴霧するという工程を100回繰り返した。
【0198】
実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0199】
(実施例7)
実施例3と同様にして、ガラス基板(601) 上に屈折率複合構造層(603) を形成した。RIE でのエッチング後、基板(601) の屈折率複合構造層(603) 側表面の四隅に約100 μm厚の両面テープを貼り付けた。この4角の両面テープでガラス基板(601) と同寸法の別のガラス基板(以下、保護基板と呼ぶ。)を貼合せ固定した。
【0200】
ガラス基板(601) の屈折率複合構造層(603) に対して反対側に、有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を100 ℃ホットプレート上で約60分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0201】
保護基板を剥がした後、実施例1と同様にして、ガラス基板(601) 上の発光層(602) にUVライト(浜松ホトニクス社製,Photocure200)から325nm のUV光を照射し、UV光励起により発生する蛍光の輝度をガラス基板(601) の屈折率複合構造層(603) 側から測定した。正面方向および45°方向での輝度を測定した結果を表1にまとめた。
【0202】
(実施例8)
実施例4と同様にして、ガラス基板(601) 上に屈折率複合構造層(603) を形成した。実施例7と同様にして、保護基板を貼り合わせた後、ガラス基板(601) の屈折率複合構造層(603) に対して反対側に発光層(602) を形成した。
【0203】
保護基板を剥がした後、実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0204】
(比較例1)
ガラス基板(コーニング社製、#1736、無アルカリガラス)(601) の表面に金を50nm真空蒸着して、光透過性の保護膜(605) を形成した。有機EL用発光材料(蛍光材料1)のトルエン溶液を大気雰囲気中でスピンコータにより塗布した(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1500rpm にて15秒間)。ガラス基板(601) を200 ℃ホットプレート上で約30分間焼成して、発光層(602) を形成した。実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0205】
次に、図20を参照しながら、ボトムエミッション型有機EL素子の実施例および比較例を示す。図20(a)は比較例2の有機EL素子、図20(b)は実施例9の有機EL素子をそれぞれ示している。
【0206】
(比較例2)
大気中にて、標準評価用の電極パターン(605) を形成したITO付きガラス基板(旭硝子社製、AN-100)(601) に正孔輸送材料の9倍水希釈液をスピンコートし(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1200rpm にて15秒間)、ガラス基板(601) を200 ℃ホットプレート上で約15分間焼成して、正孔輸送層(606) を形成した。
【0207】
基板(601) を放冷した後、露点−40℃のグローブボックス内に移動させ、グローブボックス内で蛍光材料1(10mg/10mlトルエン溶液)をスピンコートし(初期回転500rpmにて5秒間、主回転1200rpm にて15秒間)、ガラス基板(601) を200 ℃ホットプレート上で約15分間焼成して、発光層(602) を形成した。
【0208】
焼成後、ガラス基板(601) を気密型の容器に移して、グローブボックスから取り出し、蒸着装置に付属のグローブボックスに移動させた。移動後、このグローブボックス内で基板(601) を容器から取り出し、蒸着機の成膜用トレイに移した。蒸着装置内で真空成膜により、約50nmのCa膜を電子輸送層(611) として蒸着した後、連続して500 nmのAl膜を陰極(609) として形成した。これにより、1つの有機EL素子部が2mm 角の単位面積を有する素子基板が形成された。
【0209】
陰極の成膜が完了した基板(601) を蒸着装置付属グローブボックス内で気密容器に戻し、さらに露点−40℃のグローブボックスに戻して、気密容器から開放して取り出した。水分を含む空気に発光素子部が触れないように、取り出された基板(601) の発光素子部をシール材(608) およびシール基板(610) を用いて封止した。シール基板(610) は発光素子部を覆う大きさであり、シール貼付け部以外の領域をサンドブラストにて掘り込んだカップガラスである。またシール材(608) は貼合せ用の光硬化型樹脂であり、貼り合わせ後に6000mJ/cm2 のUV露光を行って硬化させた。
【0210】
定電流電源を用いて素子を通電した。通電は、各有機EL素子部に印加する電流値をすべて0.1mA に固定して行った。実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0211】
(実施例9)
比較例2と同じ方法で有機EL素子を作製した後、実施例2と同様にして、発光取出し側の面に屈折率複合構造層(603) を形成した。但し、ホットプレート上の基板(601) の温度を80℃以上とし、図19に示すような構成にて分散液を噴霧した。具体的には、エアブラシから出た噴霧液滴がイソプロピルアルコールを含んだ状態でガラス基板(601) に当たらないように噴霧方向と距離を調節し、かつ1回の噴霧時間を1秒程度(エアブラシのノズル長押しクリック1回分)にした。その後、噴霧した霧が消えるまで待った後に再び噴霧するという工程を50回繰り返した。
【0212】
比較例9と同様に、定電流電源を用いて、各有機EL素子部に印加する電流値をすべて0.1mA に固定して通電を行なった。実施例1と同様にして、正面方向および45°方向での輝度を測定し、測定結果を表1にまとめた。
【0213】
さらに、屈折率複合構造層(603) が形成された有機EL素子の輝度を測定した後、光取出し側の素子ガラス表面に形成された屈折率複合構造層(603) を削り取った。削り取ったガラス表面をエタノールで十分に拭き取った後、ほぼ同一測定場所を同一条件で再度測定した。その結果も合わせて表1中に「実施例9構造体除去後」として表記した。
【0214】
【表1】

【0215】
【表2】

【0216】
表1の結果から、実施例1〜9の特性値と比較例1,2の特性値を比較しても、また実施例9(構造体がガラス基板上にある条件)の特性値と実施例9の構造体除去後の特性値を比較しても、本発明の構造体によって正面方向および45°方向における輝度が向上することが確認された。言い換えれば、実施例1〜8に示す原理構成での実証や実施例9に示す実際の有機EL素子によって、素子内部での発光により放射された光のうち、従来の素子構造では素子を構成する様々な機能を持った各層間の界面で臨界角を超える為に取り出せない光が本発明により取り出されることが確認できた。
【0217】
実施例では有機EL素子について説明したが、本発明は他の素子にも適用することができる。適用対象とする個々の素子毎に、目的とする屈折率複合構造体を形成する高屈折率や低屈折率の相の選定と、材料やプロセス条件の設定とを適宜行い、既存のデバイス作製工程に屈折率複合構造体を形成する工程を追加して、発光素子内部もしくは素子外部に屈折率複合構造体を形成することで、実施例で示した有機EL素子と同様に、光取出し効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明は多くの自発光素子に適用可能であり、いずれの自発光素子においても光取出し効率の向上効果が得られる。自発光素子は発光体、光源、表示素子として現在使われており、具体的には、蛍光管、蛍光表示管、CRT、FED、PDP、白色や青色LEDなどの発光ダイオード、有機EL素子、無機EL素子、液晶表示装置などに用いられるバックライトが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】界面での光のエネルギ(強度)を1としたときの界面からの距離と、光の持つエネルギ(強度)との関係を示すグラフである。
【図2】外部励起光により蛍光発光するデバイスでの構成例を示す図である。
【図3】外部励起エネルギにより蛍光発光するデバイスでの構成例を示す図である。
【図4】光として直接取り出す方式の自発光型素子と組み合わせた場合のデバイスでの構成例を示す図である。
【図5】自発光型素子から出射する光を励起光として使い、蛍光色素等により発光波長変換した光を表示として使うデバイスでの構成例を示す図である。
【図6】既存の発光素子全般に対して、貼り付けるなどにより後付けで適用するための構成例を示す図である。
【図7】図6で示す素子を既存の発光素子(10)に取り付けた後の素子構成の状態を示す図である。
【図8】一般的な発光素子の基本的構成を模式的に示す図である。
【図9】実施形態1の発光素子の基本的構成を模式的に示す図である。
【図10】実際の発光素子の構成を模式的に示す図である。
【図11】一般的な蛍光管の素子断面構造を模式的に示す図である。
【図12】実施形態2の蛍光管の素子断面構造を模式的に示す図である。
【図13】一般的なLEDの素子断面構造を模式的に示す図である。
【図14】実施形態3のLEDの素子断面構造を模式的に示す図である。
【図15】実施形態4の有機EL素子の断面構造を模式的に示す図である。
【図16】実施形態5のPDP素子の断面構造を模式的に示す図である。
【図17】実施例1〜8および比較例1のデバイス構造を模式的に示す図である。
【図18】取り出し光量を測定するのに用いた構成を示す図である。
【図19】実施例2,6,9にて用いた塗布方法の説明図である。
【図20】ボトムエミッション型有機EL素子の実施例および比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0220】
1,1’ 基板(光透過性基板)
2 反射膜(反射板ないし反射層)
3 自発光層
4 蛍光色素を含む蛍光体層
5,5’ 屈折率複合構造層
6 励起光
7 出射光
8 基材(11)と屈折率複合構造層(5) を接合するための接着剤層もしくは粘着材層
9 屈折率複合構造層(5) を既存の光取出し型の素子(10)に接合するための接着剤層もしくは粘着材層
10 発光素子
11 基材
14 光波長変換層
101 基板
102 発光層
103 屈折率複合構造層
104 機能層
110 UVライト
111 ファイバ
112 レンズ
113 輝度計
201 水銀蒸気
202 蛍光体
203 ガラス管
204 屈折率複合構造層
301 n-チャンネル層
302 発光層
303 p-チャンネル層
304 カソード
305 アノード
306 モールド樹脂層
307 屈折率複合構造層
401 基板
403 屈折率複合構造層
405,415 陽極
406 正孔輸送層
407 発光層
408 シール材
409,419 陰極
410 シール基板
501 基板
502 電極
503 不活性ガス
504 隔壁
505R,505G,505B 蛍光材料層
506 対向基板
507 屈折率複合構造層
601 ガラス基板
602 発光層
603 屈折率複合構造層
605 電極
606 正孔輸送層
608 シール材
609 陰極
610 シール基板
701 エアブラシ
702 ホットプレート
704 衝立(液飛散防止用)
705 液滴が直接かかるエリア
706 霧状の液がかかるエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)の特性を有する構造体を含む光機能性膜。
(1)内部構造が屈折率の異なる2種類以上の相からなり、
(2)前記2種類以上の相のうち少なくとも1つの相は、1nm以上、かつ可視波長光域の波長の4分の1以下の大きさの構造単位から構成され、
(3)平均屈折率が1よりも高く、発光体と前記光機能性膜との間に存在する複数の層のうちガス相を含む層以外の層の屈折率よりも低く、
(4)厚さ方向の内部構造は、前記光機能性膜に接する他層との界面からエネルギ的に光が入射可能な近接場領域内において、前記2種類以上の相が接する界面を複数有する。
【請求項2】
前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成された小胞状構造体であり、前記構造単位は前記小胞状構造体を構成する壁の厚さおよび/または前記壁と前記壁に対向する壁との間隙の大きさである請求項1に記載の光機能性膜。
【請求項3】
前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成されたネットワーク状構造体であり、前記構造単位は、前記ネットワーク状構造体を構成する繊維の径、前記繊維間の距離および前記ネットワーク状構造体により形成される間隙の大きさからなる群のうち少なくとも1つである請求項1に記載の光機能性膜。
【請求項4】
前記構造体は前記2種類以上の相のうち一方の相により形成された塊状構造体であり、前記構造単位は前記塊状構造体の径または前記塊状構造体同士の間隙の大きさである請求項1に記載の光機能性膜。
【請求項5】
前記2種類以上の相のうち少なくとも1つの相は、室温を中心とする少なくとも素子動作温度範囲内において、前記構造体を自己保持できる特性を有しており、前記2種類以上の相は、屈折率が1.4以下の第1相と、屈折率が1.3以上の第2相とを含む請求項1に記載の光機能性膜。
【請求項6】
前記第1相が気相である請求項5に記載の光機能性膜。
【請求項7】
前記第1相が真空または大気圧よりも低い低圧力の状態である請求項6に記載の光機能性膜。
【請求項8】
前記2種類以上の相のうち少なくとも1つの相は液相である請求項5に記載の光機能性膜。
【請求項9】
光を発する発光層を有する発光素子であって、
前記発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に配置された請求項1に記載の光機能性膜を1層以上有する発光素子。
【請求項10】
光を発する発光層を有する発光素子に貼り合わせ、押し付けまたは載せて使うフィルムであって、
前記発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に配置された請求項1に記載の光機能性膜を1層以上有するフィルム。
【請求項11】
光を発する発光層を有する発光素子に貼り合わせ、押し付けまたは載せて使う板状材であって、
前記発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に配置された請求項1に記載の光機能性膜を1層以上有する板状材。
【請求項12】
光を発する発光層を有する発光素子の形状に合わせた成型物であって、
前記発光層から出射された光が素子外へと出射する光路上に配置された請求項1に記載の光機能性膜を1層以上有する成型物。
【請求項13】
前記構造体は前記光機能性膜と前記他層との界面における光エネルギの15%以上が到達可能な位置に形成されている請求項9に記載の発光素子。
【請求項14】
前記構造体は前記光機能性膜と前記他層との界面における光エネルギの15%以上が到達可能な位置に形成されている請求項10に記載のフィルム。
【請求項15】
前記構造体は前記光機能性膜と前記他層との界面における光エネルギの15%以上が到達可能な位置に形成されている請求項11に記載の板状材。
【請求項16】
前記構造体は前記光機能性膜と前記他層との界面における光エネルギの15%以上が到達可能な位置に形成されている請求項12に記載の成型物。
【請求項17】
請求項1に記載の光機能性膜を製造する方法であって、
前記構造単位の大きさを有する微粒子を塗布溶剤中に分散させて、微粒子分散液を調製する工程と、
前記微粒子分散液を基板上に液体状態で塗布する工程と、
前記塗布溶媒を除去した後、前記微粒子同士間および/または前記微粒子と前記基板間で前記微粒子を接合させることにより、前記構造体を形成する工程とを有する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の光機能性膜を製造する方法であって、
前記構造単位の大きさを有する微粒子を塗布溶剤中に分散させて、微粒子分散液を調製する工程と、
前記微粒子分散液を微小な液滴として散布し、前記液滴が気相中にある間に前記塗布溶剤を気化させて、前記微粒子を基板上に堆積させる工程と、
前記微粒子同士間および/または前記微粒子と前記基板間で前記微粒子を接合させることにより、前記構造体を形成する工程とを有する方法。
【請求項19】
請求項1に記載の光機能性膜を製造する方法であって、
互いに安定に相溶せずに分離する2つ以上の成分が起こす自己組織化ないし相分離により複合構造体を形成する工程と、
前記複合構造体に応じた特定のエッチング雰囲気下でのエッチングレートまたは特定溶剤に対する溶解速度の違いを利用して、前記構造体の一方の成分を取り除くことにより、前記構造体を形成する工程とを有する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の光機能性膜を製造する方法であって、
溶液中でミセルの状態で反応させることにより、前記構造体を形成する工程とを有する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の光機能性膜を製造する方法であって、
硬化前の樹脂中に1nm以上0.1μm以下の気泡を発生させる工程と、
前記気泡が安定に分散している状態で前記樹脂を硬化させることにより、前記構造体を形成する工程とを有する方法。
【請求項22】
前記気泡は1nm以上0.1μm以下の空孔径を有する多孔質構造体からガスを導入することにより形成される請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−60092(P2008−60092A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23236(P2005−23236)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】